誘電率特定装置、誘電率特定方法及び誘電率特定プログラム
【課題】植生等が存在する地域においても、高精度に地表面の誘電率を特定することを目的とする。
【解決手段】ブリュースター角特定部32は、観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入射角毎にプロットし補間して描かれる線における凹みの底の位置の入射角を、観測対象のブリュースター角として特定する。ブリュースター角は、被観測体の誘電率に応じて異なるため、誘電率特定部33は、特定したブリュースター角から観測対象の誘電率を特定する。
【解決手段】ブリュースター角特定部32は、観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入射角毎にプロットし補間して描かれる線における凹みの底の位置の入射角を、観測対象のブリュースター角として特定する。ブリュースター角は、被観測体の誘電率に応じて異なるため、誘電率特定部33は、特定したブリュースター角から観測対象の誘電率を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観測対象の誘電率を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地表面の誘電率の計測は、地表面の水含有量や、海水の塩分濃度等を知る上で非常に重要な技術である。また、地表面の水含有量からは、砂漠化の状態、地球上の水循環等を知ることができる。これらは、地球温暖化の影響を知る上でも非常に重要な情報である。
【0003】
被観測体から得られる反射又は放射の信号強度を、観測角度毎にプロットして得られる曲線の形状が、誘電体毎に異なることが知られている。そこで、レーダにより、複数の観測角度で地表面の信号強度を観測し、得られた曲線の形状からその地表面の誘電体を推定することで、地表面の誘電率を推定することが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山口芳雄著、「レーダポーラリメトリの基礎と応用−偏波を用いたレーダリモートセンシング−」、電子情報通信学会、2007年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
曲線の形状からその地表面の誘電体を推定する方法は、植生等の存在しない裸地については有効である。しかし、植生等が存在する地域では、植生等の影響により、様々な散乱、放射が輻輳するため、観測対象からの反射、放射の正確な信号強度を測ることができない。そのため、曲線の形状からその地表面の誘電体を推定する方法で、植生等が存在する地域の地表面の誘電体を推定することは困難である。つまり、誘電率を推定することは困難である。
この発明は、植生等が存在する地域においても、高精度に地表面の誘電率を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る誘電率特定装置は、
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力部と、
前記信号強度入力部が入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を処理装置により特定するブリュースター角特定部と、
前記ブリュースター角特定部が特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を処理装置により特定する誘電率特定部と
を備えることを特徴とする。
【0007】
前記ブリュースター角特定部は、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0008】
前記ブリュースター角特定部は、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0009】
前記信号強度入力部は、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする。
【0010】
前記ブリュースター角特定部は、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定部は、前記ブリュースター角特定部が特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする。
【0011】
前記誘電率特定装置は、さらに、
誘電率毎に、地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置と、
前記誘電率特定部が特定した誘電率を前記被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る誘電率特定プログラムは、
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力処理と、
前記信号強度入力処理で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定処理と、
前記ブリュースター角特定処理で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
前記ブリュースター角特定処理では、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0014】
前記ブリュースター角特定処理では、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0015】
前記信号強度入力処理では、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする。
【0016】
前記ブリュースター角特定処理では、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定処理では、前記ブリュースター角特定処理で特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする。
【0017】
前記誘電率特定プログラムは、さらに、
前記誘電率特定処理で特定した誘電率を、誘電率毎に地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る誘電率特定方法は、
入力装置が、複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力工程と、
処理装置が、前記信号強度入力工程で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定工程と、
処理装置が、前記ブリュースター角特定工程で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定工程と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る誘電率特定装置は、観測対象のブリュースター角を特定することにより、観測対象の誘電率を特定する。これにより、植生等が存在する場合においても、地表面の誘電率を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】誘電体毎の曲線を示す図。
【図2】観測角の説明図。
【図3】植生が存在する地域における反射の様子を示す図。
【図4】観測により得られた曲線と、地表面の誘電体に固有の曲線との比較図。
【図5】垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図。
【図6】図5における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図。
【図7】植生等が存在する場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図。
【図8】図7における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図。
【図9】植生が存在する場合におけるブリュースター角の説明図。
【図10】誘電率特定システム1の機能を示す機能ブロック図。
【図11】誘電率特定システム1の動作を示すフローチャート。
【図12】土地の被覆を特定する機能を有する誘電率特定システム1の機能を示す機能ブロック図。
【図13】誘電率特定装置3のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に基づき、この発明の実施の形態について説明する。
なお、以下の説明において、処理装置は後述するCPU911等である。記憶装置は後述するROM913、RAM914、磁気ディスク920あるいはCPU911が有するキャッシュメモリやレジスタ等である。入力装置は後述するキーボード902、通信ボード915等である。つまり、処理装置、記憶装置、入力装置はハードウェアである。
【0022】
実施の形態1.
まず、従来の誘電率の推定方法について簡単に説明する。
図1は、誘電体毎の曲線を示す図である。図1では、横軸が観測角であり、縦軸が被観測体から得られる反射又は放射の信号強度である。
図1に示すように、被観測体から得られる反射又は放射の信号強度を、観測角度毎にプロットして得られる曲線の形状が、誘電体毎に異なることが知られている。そこで、従来は、レーダにより、複数の観測角度で地表面の信号強度を観測し、得られた信号強度をプロットし補間して曲線を描き、描かれた曲線と誘電体毎に異なる曲線とを比較することで、その地表面がどの誘電体であるかを推定している。
【0023】
図2は、観測角の説明図である。
観測角とは、観測対象である地表面に電波が入射する入射角θiのことである。
なお、入射角θiは、地表面のカーブ(地球の丸み)を考慮しなければ、レーダから電波を放射する角度を示すオフナディア角θjと原則として同一である。したがって、観測角は、オフナディア角θjであると考えても構わない。
【0024】
図3は、植生が存在する地域における反射の様子を示す図である。
図3に示すように、レーダから植生が存在する地域へ電波を放射すると、放射された電波は、観測対象である地表面で単純に反射するだけではなく、地表面と植生とで反射する場合がある。つまり、レーダから植生が存在する地域へ電波を放射して得られる反射波には、地表面で単純に反射した表面散乱成分だけでなく、地表面と植生とで反射した二回散乱成分等が含まれる。
そのため、植生が存在する地域では、地表面から直接反射した表面散乱成分のみに基づく信号強度を得ることができない。つまり、植生が存在する地域では、二回散乱成分等が誤差成分として含まれた信号強度しか得ることができない。
【0025】
図4は、観測により得られた曲線と、地表面の誘電体に固有の曲線との比較図である。図4では、図1と同様に、横軸が観測角であり、縦軸が被観測体から得られる反射又は放射の信号強度である。また、図4では、実線がアクティブ方式により観測位置における地表面を観測した場合に得られた信号強度を示す曲線であり、破線が観測位置における地表面の誘電体から本来得られる信号強度を示す曲線である。なお、アクティブ方式とは、レーダのように、自ら電波を放射して、その反射波を観測する方式をいう。
図4に示すように、植生が存在する地域で観測した信号強度は、どの観測角で観測した場合においても、本来地表面から得られるはずの信号強度よりも原則として高くなる。これは、上述したように、植生が存在する地域で観測した信号強度には、二回散乱成分等が誤差成分として含まれるためである。なお、観測した信号強度が、本来地表面から得られる信号強度よりもどの程度高くなるのかを事前に知ることは困難である。
したがって、植生が存在する地域については、観測により得られた曲線と誘電体毎に異なる曲線とを比較しても、地表面がどの誘電体であるかを推定することはできず、誘電率を推定することはできない。
【0026】
なお、上記説明では、植生が存在する地域を一例として説明したが、植生ではなく、建物等の人工物や切り立った地形が存在する地域でも同様に、従来の方法により地表面の誘電率を推定することはできない。以下の説明でも、植生を一例として用いるが、植生ではなく、建物等の人工物や切り立った地形であっても同様のことが言える。
【0027】
次に、この実施の形態における地表面の誘電率の特定方法について説明する。
ここでは、ブリュースター角に基づき、地表面の誘電率を特定する。ブリュースター角とは、屈折率の異なる物質の界面において、反射される光が完全に偏光となるような光の入射角である。
ここで、ブリュースター角は、被観測体の誘電率に応じて異なる。したがって、ブリュースター角を特定することで、被観測体の誘電率を特定することができる。
【0028】
図5は、垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図である。図5では、横軸が入射角であり、縦軸が被観測体から得られる反射波の信号強度である。また、図5において、角θgbは、観測位置の地表面のブリュースター角である。なお、ここでは、植生等が存在しない場合を想定している。
図5に示すように、レーダから観測位置の地表面へ垂直偏波の電波を放射して、その反射波の信号強度を測定し、得られた値を入射角毎にプロットし補間して線を描く。すると、描いた線には、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置を底とする凹みができる。
そこで、まず、レーダから観測位置の地表面へ向けて様々な入射角となるように垂直偏波の電波を放射し、反射波の信号強度を測定しておく。そして、測定された信号強度を入射角毎にプロットし補間して描かれる線における凹みの底の位置の入射角を特定する。これにより、観測位置の地表面のブリュースター角を特定することができる。
【0029】
図6は、図5における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図である。なお、図6は、図5に説明のための線等を加えた図である。
所定の入射角における信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる範囲を特定することで、凹みの位置を特定することができる。
例えば、図6に示すように、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とから各入射角における信号強度を推定できる。図6では、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とを結ぶ直線Aが、各入射角における推定信号強度を示す。次に、信号強度が推定信号強度よりも所定の値以上弱い入射角を特定する。図6では、直線Aと平行して引かれた直線Bが推定信号強度よりも所定の値弱い信号強度を示す。そこで、図6において、直線Bよりも測定された信号強度が弱い入射角が連続して現れる範囲を特定すると、入射角範囲Xが特定される。この入射角範囲Xが凹みである。
そして、凹みとして特定された入射角範囲Xにおいて、最も信号強度が弱い位置が凹みの底である。したがって、入射角範囲Xにおいて最も信号強度が弱い入射角を、観測位置の地表面のブリュースター角として特定すればよい。
なお、推定信号強度を求めるために用いる信号強度は、入射角0°と入射角90°とにおける信号強度に限定されるものではない。例えば、入射角0°と入射角45°と入射角90°とにおける信号強度を用いてもよいし、さらに多くの入射角における信号強度を用いてもよい。ブリュースター角となり得ない2つ以上の角度を用いれば、推定信号強度を求めることができる。
【0030】
図7は、植生等が存在する場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図である。図7では、横軸が入射角であり、縦軸が被観測体から得られる反射波の信号強度である。また、図7において、角θgbは観測位置の地表面のブリュースター角である。
図7に示すように、植生等が存在する場合においても同様に、レーダから観測位置の地表面へ垂直偏波の電波を放射して、その反射波の信号強度を測定し、得られた値を入射角毎にプロットし補間して線を描く。すると、描いた線には、入射角範囲Xに、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置を底とする凹みができる。
しかし、描いた線には、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置以外に、入射角範囲Yにも、垂直偏波の電波の入射角が角θ’gbとなる位置を底とする凹みができる。
つまり、植生等が存在する場合には、信号強度を入射角毎にプロットして描かれる線に2つの凹みがある。したがって、どちらの凹みの底の位置における入射角が、観測位置の地表面のブリュースター角であるかを、さらに特定する必要がある。
【0031】
図8は、図7における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図である。なお、図8は、図7に説明のための線等を加えた図である。
例えば、図6の場合と同様に、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とから各入射角における信号強度を推定する。図8では、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とを結ぶ直線Aが、各入射角における推定信号強度を示す。次に、信号強度が推定信号強度よりも所定の値以上弱い入射角を特定する。図8では、直線Aと平行して引かれた直線Bが推定信号強度よりも所定の値弱い信号強度を示す。そこで、図8において、直線Bよりも測定された信号強度が弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定すると、入射角範囲Xと入射角範囲Yとが特定される。この入射角範囲Xと入射角範囲Yとがそれぞれ凹みである。
したがって、入射角範囲Xと入射角範囲Yとにおいて最も信号強度が弱い入射角を特定すれば、2つの凹みの底の入射角をそれぞれ特定できる。
【0032】
図9は、植生が存在する場合におけるブリュースター角の説明図である。
図9に示すように、レーダから放射された垂直偏波の電波に対する反射には、地表面で単純に反射する表面散乱成分だけでなく、地表面で反射するとともに、植生で反射する二回散乱成分等が含まれる。ここで、垂直偏波の電波の地表面に対する入射角をθi(=θj)とすると、植生に対する入射角は“90°−θi(=θk)”になる。なお、ここでは、植生は地表面に対して垂直に立っていると仮定している。
ここで、垂直偏波の電波の地表面に対する入射角θiが地表面のブリュースター角θgbである場合、垂直偏波の電波の地表面からの反射はない。つまり、植生へ垂直偏波の電波が入射することもない。そのため、表面散乱成分だけでなく、二回散乱成分等も0になり、反射波の信号強度は原則として0になる。そのため、反射波の信号強度を入射角毎にプロットし補間して線を描くと、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置を底とする凹みができる。
一方、垂直偏波の電波の地表面に対する入射角θiが地表面のブリュースター角θgbでない場合、地表面で単純に反射した表面散乱成分に加え、地表面と植生とで反射した二回散乱成分等が観測される。しかし、垂直偏波の電波の植生に対する入射角θkが植生のブリュースター角θvbとなる場合、地表面と植生とで反射する二回散乱成分の信号強度は0となる。したがって、この場合、地表面で単純に反射した表面散乱成分だけが観測される。なお、垂直偏波の電波の植生に対する入射角θk(=90°−θi)が植生のブリュースター角θvbとなる場合の垂直偏波の電波の地表面に対する入射角θiが、図8に示す角θ’gbである。つまり、θ’gb=90°−θvbである。そのため、反射波の信号強度を入射角毎にプロットし補間して線を描くと、垂直偏波の電波の入射角が角θ’gbとなる位置を底とする凹みができる。
【0033】
ここで、一般にブリュースター角は、70〜80°程度である。つまり、地表面のブリュースター角θgbも、植生のブリュースター角θvbも70〜80°程度である。上述したように、θ’gb=90°−θvbであるから、θ’gbは、10〜20°程度である。
このことから、信号強度を入射角毎にプロットして描かれる線に2つの凹みがあり、特定される角度が2つある場合には、大きい方の角度が地表面のブリュースター角θgbであるということができる。
【0034】
なお、図9では、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbである場合の方が、垂直偏波の電波の入射角が角θ’gbである場合よりも、反射波の信号強度が弱く、最も信号強度が弱い。上記説明から明らかなように、理論的には図9に示すように垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbである場合が最も反射波の信号強度が弱くなる。しかし、誤差の影響により、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbである場合が最も反射波の信号強度が弱くならないこともある。
したがって、上記説明のように、特定される角度が2つある場合には、大きい方の角度を地表面のブリュースター角とするのが間違いがない。しかし、処理を単純化する場合には、最も反射波の信号強度が弱くなる入射角をブリュースター角としてもよい。
【0035】
次に、この実施の形態に係る誘電率特定システム1について説明する。
図10は、誘電率特定システム1の機能を示す機能ブロック図である。
誘電率特定システム1は、観測装置2、誘電率特定装置3を備える。観測装置2は、アンテナ21、受信装置22、信号強度記憶装置23を備える。誘電率特定装置3は、信号強度入力部31、ブリュースター角特定部32、誘電率特定部33を備える。
【0036】
図11は、誘電率特定システム1の動作を示すフローチャートである。誘電率特定システム1の動作は、観測装置2によるプロファイル作成処理と、誘電率特定装置3による誘電率特定処理との2つの処理に大きく分けられる。
【0037】
まず、プロファイル作成処理について説明する。
(S11)では、アンテナ21は、観測位置への入射角を変更しながら、垂直偏波の電波を観測位置へ放射する。
(S12)では、受信装置22は、(S11)でアンテナ21が放射した垂直偏波の電波の反射波を受信して、その反射波の信号強度を計測する。
(S13)では、信号強度記憶装置23は、(S12)で受信装置22が計測した入射角毎の反射波の信号強度をプロファイルとして記憶する。
これにより、信号強度記憶装置23には、観測位置の各入射角における反射波の信号強度が記憶される。つまり、信号強度記憶装置23が記憶したデータから、図5や図9に示すような線を描くことが可能である。
【0038】
次に、誘電率特定処理について説明する。
(S21)では、信号強度入力部31は、(S13)で信号強度記憶装置23がプロファイルとして記憶した各入射角における信号強度を入力装置により入力する。
(S22)では、ブリュースター角特定部32は、(S21)で信号強度入力部31が入力した各入射角における信号強度から、観測位置のブリュースター角を処理装置により特定する。つまり、ブリュースター角特定部32は、信号強度をプロットし補間して描かれる線の凹みの底における入射角をブリュースター角として特定する。また、ブリュースター角特定部32は、描かれた線に2つの凹みがあり、2つの入射角が特定される場合には、大きい方の角度を観測位置の地表面のブリュースター角とする。なお、凹み及び凹みの底の特定方法は、上述した通りである。
(S23)では、誘電率特定部33は、(S22)でブリュースター角特定部32が特定したブリュースター角から、観測位置の誘電率を処理装置により特定する。なお、誘電率特定部33は、予めブリュースター角毎の誘電率を記憶装置に記憶しておき、ブリュースター角特定部32が特定したブリュースター角を記憶装置から検索して、対応する誘電率を取得することで、観測位置の誘電率を特定する。
【0039】
以上のように、この実施の形態に係る誘電率特定システム1は、地表面のブリュースター角に基づき、地表面の誘電率を特定する。植生等が存在する場合であっても、地表面のブリュースター角を特定することは可能であるため、誘電率特定システム1は、植生等が存在する場合であっても、地表面の誘電率を特定することができる。
【0040】
なお、上記説明では、地表面のブリュースター角を特定して、地表面の誘電率を特定するとした。
しかし、近傍の角度よりも信号強度が所定の値以上小さい角度が2つ存在する場合には、小さい方の角度から植生等のブリュースター角を求めることができる。つまり、90°から小さい方の角度θ’gbを引いた角度が植生等のブリュースター角θvbである。植生等のブリュースター角θvbが特定できれば、植生等の誘電率を特定することができる。
したがって、誘電率特定システム1は、地表面の誘電率だけでなく、植生等の誘電率も特定することができる。
【0041】
また、上述したように、ブリュースター角は、一般にブリュースター角は、70〜80°程度である。そのため、地表面のブリュースター角のみを特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が70〜80°程度となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度があればよい。つまり、プロファイル作成処理で計測する反射波の信号強度をこの範囲に減らしてもよい。なお、少し範囲を広げて、垂直偏波の電波の入射角が60〜90°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測してもよい。
同様に、植生等の誘電率を特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が10〜20°程度となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度があればよい。そのため、プロファイル作成処理で計測する反射波の信号強度をこの範囲に減らしてもよい。なお、少し範囲を広げて、垂直偏波の電波の入射角が0〜30°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測してもよい。
あるいは、地表面の誘電率を特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が45〜90°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測し、植生等の誘電率を特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が0〜45°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測してもよい。
【0042】
また、垂直偏波の電波の入射角が0〜45°の場合に、近傍の角度よりも信号強度が所定の値以上小さい角度が存在する場合には、その観測位置付近に、植生や建物等が存在すると特定できる。
例えば、都市部は垂直な構造物が多い。そこで、都市開発を行っている地域を観測して、ブリュースター角特定部32が、垂直偏波の電波の入射角が0〜45°の範囲に、近傍の角度よりも信号強度が所定の値以上小さい角度の地点がどの程度存在するかを計測することにより、都市開発の状況を調べることもできる。
【0043】
また、誘電率特定部33が特定した誘電率から、観測位置の物理状態、つまり観測位置の土地の被覆を特定することも可能である。例えば、都市部を観測し、都市部の誘電率を特定することで、都市部の地表面や建物等の材質を特定することができる。また、農地を観測し、農地の誘電率を特定することで、農作物等の種類や生育、伐採等の状況を特定することができる。
この場合、図12に示すように、誘電率特定装置3は、さらに、被覆情報記憶装置34、土地被覆特定部35を備えるようにすればよい。
被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した記憶装置である。例えば、被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、建物等の人口構造物の材質を記憶している。あるいは、被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、農作物等の植生の種類を記憶している。また、あるいは、被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、ある植生の生育状態を記憶している。
土地被覆特定部35は、誘電率特定部33が特定した誘電率を被覆情報記憶装置34から検索して、対応する被覆情報を処理装置により取得する。これにより、土地被覆特定部35は、観測位置の地表面の物理状態、つまり人口構造物の材質や植生の種類、生育状況等を特定する。
【0044】
次に、誘電率特定装置3のハードウェア構成について説明する。
図13は、誘電率特定装置3のハードウェア構成の一例を示す図である。
図13に示すように、誘電率特定装置3は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902(K/B)、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920(固定ディスク装置)の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。磁気ディスク装置920は、所定の固定ディスクインタフェースを介して接続される。
【0045】
ROM913、磁気ディスク装置920は、不揮発性メモリの一例である。RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913とRAM914と磁気ディスク装置920とは、記憶装置(メモリ)の一例である。また、キーボード902、通信ボード915は、入力装置の一例である。また、通信ボード915は、通信装置(ネットワークインタフェース)の一例である。さらに、LCD901は、表示装置の一例である。
【0046】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0047】
プログラム群923には、上記の説明において「信号強度入力部31」、「ブリュースター角特定部32」、「誘電率特定部33」、「土地被覆特定部35」等として説明した機能を実行するソフトウェアやプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、上記の説明において被覆情報記憶装置34が記憶する情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「ファイル」や「データベース」の各項目として記憶される。「ファイル」や「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0048】
また、上記の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体やICチップに記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体や電波によりオンライン伝送される。
また、上記の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜装置」として説明するものは、「〜回路」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。さらに、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、上記で述べた「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、上記で述べた「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 誘電率特定システム、2 観測装置、3 誘電率特定装置、21 アンテナ、22 受信装置、23 信号強度記憶装置、31 信号強度入力部、32 ブリュースター角特定部、33 誘電率特定部、34 被覆情報記憶装置、35 土地被覆特定部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、観測対象の誘電率を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地表面の誘電率の計測は、地表面の水含有量や、海水の塩分濃度等を知る上で非常に重要な技術である。また、地表面の水含有量からは、砂漠化の状態、地球上の水循環等を知ることができる。これらは、地球温暖化の影響を知る上でも非常に重要な情報である。
【0003】
被観測体から得られる反射又は放射の信号強度を、観測角度毎にプロットして得られる曲線の形状が、誘電体毎に異なることが知られている。そこで、レーダにより、複数の観測角度で地表面の信号強度を観測し、得られた曲線の形状からその地表面の誘電体を推定することで、地表面の誘電率を推定することが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山口芳雄著、「レーダポーラリメトリの基礎と応用−偏波を用いたレーダリモートセンシング−」、電子情報通信学会、2007年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
曲線の形状からその地表面の誘電体を推定する方法は、植生等の存在しない裸地については有効である。しかし、植生等が存在する地域では、植生等の影響により、様々な散乱、放射が輻輳するため、観測対象からの反射、放射の正確な信号強度を測ることができない。そのため、曲線の形状からその地表面の誘電体を推定する方法で、植生等が存在する地域の地表面の誘電体を推定することは困難である。つまり、誘電率を推定することは困難である。
この発明は、植生等が存在する地域においても、高精度に地表面の誘電率を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る誘電率特定装置は、
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力部と、
前記信号強度入力部が入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を処理装置により特定するブリュースター角特定部と、
前記ブリュースター角特定部が特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を処理装置により特定する誘電率特定部と
を備えることを特徴とする。
【0007】
前記ブリュースター角特定部は、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0008】
前記ブリュースター角特定部は、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0009】
前記信号強度入力部は、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする。
【0010】
前記ブリュースター角特定部は、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定部は、前記ブリュースター角特定部が特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする。
【0011】
前記誘電率特定装置は、さらに、
誘電率毎に、地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置と、
前記誘電率特定部が特定した誘電率を前記被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る誘電率特定プログラムは、
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力処理と、
前記信号強度入力処理で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定処理と、
前記ブリュースター角特定処理で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
前記ブリュースター角特定処理では、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0014】
前記ブリュースター角特定処理では、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする。
【0015】
前記信号強度入力処理では、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする。
【0016】
前記ブリュースター角特定処理では、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定処理では、前記ブリュースター角特定処理で特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする。
【0017】
前記誘電率特定プログラムは、さらに、
前記誘電率特定処理で特定した誘電率を、誘電率毎に地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る誘電率特定方法は、
入力装置が、複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力工程と、
処理装置が、前記信号強度入力工程で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定工程と、
処理装置が、前記ブリュースター角特定工程で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定工程と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る誘電率特定装置は、観測対象のブリュースター角を特定することにより、観測対象の誘電率を特定する。これにより、植生等が存在する場合においても、地表面の誘電率を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】誘電体毎の曲線を示す図。
【図2】観測角の説明図。
【図3】植生が存在する地域における反射の様子を示す図。
【図4】観測により得られた曲線と、地表面の誘電体に固有の曲線との比較図。
【図5】垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図。
【図6】図5における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図。
【図7】植生等が存在する場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図。
【図8】図7における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図。
【図9】植生が存在する場合におけるブリュースター角の説明図。
【図10】誘電率特定システム1の機能を示す機能ブロック図。
【図11】誘電率特定システム1の動作を示すフローチャート。
【図12】土地の被覆を特定する機能を有する誘電率特定システム1の機能を示す機能ブロック図。
【図13】誘電率特定装置3のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に基づき、この発明の実施の形態について説明する。
なお、以下の説明において、処理装置は後述するCPU911等である。記憶装置は後述するROM913、RAM914、磁気ディスク920あるいはCPU911が有するキャッシュメモリやレジスタ等である。入力装置は後述するキーボード902、通信ボード915等である。つまり、処理装置、記憶装置、入力装置はハードウェアである。
【0022】
実施の形態1.
まず、従来の誘電率の推定方法について簡単に説明する。
図1は、誘電体毎の曲線を示す図である。図1では、横軸が観測角であり、縦軸が被観測体から得られる反射又は放射の信号強度である。
図1に示すように、被観測体から得られる反射又は放射の信号強度を、観測角度毎にプロットして得られる曲線の形状が、誘電体毎に異なることが知られている。そこで、従来は、レーダにより、複数の観測角度で地表面の信号強度を観測し、得られた信号強度をプロットし補間して曲線を描き、描かれた曲線と誘電体毎に異なる曲線とを比較することで、その地表面がどの誘電体であるかを推定している。
【0023】
図2は、観測角の説明図である。
観測角とは、観測対象である地表面に電波が入射する入射角θiのことである。
なお、入射角θiは、地表面のカーブ(地球の丸み)を考慮しなければ、レーダから電波を放射する角度を示すオフナディア角θjと原則として同一である。したがって、観測角は、オフナディア角θjであると考えても構わない。
【0024】
図3は、植生が存在する地域における反射の様子を示す図である。
図3に示すように、レーダから植生が存在する地域へ電波を放射すると、放射された電波は、観測対象である地表面で単純に反射するだけではなく、地表面と植生とで反射する場合がある。つまり、レーダから植生が存在する地域へ電波を放射して得られる反射波には、地表面で単純に反射した表面散乱成分だけでなく、地表面と植生とで反射した二回散乱成分等が含まれる。
そのため、植生が存在する地域では、地表面から直接反射した表面散乱成分のみに基づく信号強度を得ることができない。つまり、植生が存在する地域では、二回散乱成分等が誤差成分として含まれた信号強度しか得ることができない。
【0025】
図4は、観測により得られた曲線と、地表面の誘電体に固有の曲線との比較図である。図4では、図1と同様に、横軸が観測角であり、縦軸が被観測体から得られる反射又は放射の信号強度である。また、図4では、実線がアクティブ方式により観測位置における地表面を観測した場合に得られた信号強度を示す曲線であり、破線が観測位置における地表面の誘電体から本来得られる信号強度を示す曲線である。なお、アクティブ方式とは、レーダのように、自ら電波を放射して、その反射波を観測する方式をいう。
図4に示すように、植生が存在する地域で観測した信号強度は、どの観測角で観測した場合においても、本来地表面から得られるはずの信号強度よりも原則として高くなる。これは、上述したように、植生が存在する地域で観測した信号強度には、二回散乱成分等が誤差成分として含まれるためである。なお、観測した信号強度が、本来地表面から得られる信号強度よりもどの程度高くなるのかを事前に知ることは困難である。
したがって、植生が存在する地域については、観測により得られた曲線と誘電体毎に異なる曲線とを比較しても、地表面がどの誘電体であるかを推定することはできず、誘電率を推定することはできない。
【0026】
なお、上記説明では、植生が存在する地域を一例として説明したが、植生ではなく、建物等の人工物や切り立った地形が存在する地域でも同様に、従来の方法により地表面の誘電率を推定することはできない。以下の説明でも、植生を一例として用いるが、植生ではなく、建物等の人工物や切り立った地形であっても同様のことが言える。
【0027】
次に、この実施の形態における地表面の誘電率の特定方法について説明する。
ここでは、ブリュースター角に基づき、地表面の誘電率を特定する。ブリュースター角とは、屈折率の異なる物質の界面において、反射される光が完全に偏光となるような光の入射角である。
ここで、ブリュースター角は、被観測体の誘電率に応じて異なる。したがって、ブリュースター角を特定することで、被観測体の誘電率を特定することができる。
【0028】
図5は、垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図である。図5では、横軸が入射角であり、縦軸が被観測体から得られる反射波の信号強度である。また、図5において、角θgbは、観測位置の地表面のブリュースター角である。なお、ここでは、植生等が存在しない場合を想定している。
図5に示すように、レーダから観測位置の地表面へ垂直偏波の電波を放射して、その反射波の信号強度を測定し、得られた値を入射角毎にプロットし補間して線を描く。すると、描いた線には、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置を底とする凹みができる。
そこで、まず、レーダから観測位置の地表面へ向けて様々な入射角となるように垂直偏波の電波を放射し、反射波の信号強度を測定しておく。そして、測定された信号強度を入射角毎にプロットし補間して描かれる線における凹みの底の位置の入射角を特定する。これにより、観測位置の地表面のブリュースター角を特定することができる。
【0029】
図6は、図5における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図である。なお、図6は、図5に説明のための線等を加えた図である。
所定の入射角における信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる範囲を特定することで、凹みの位置を特定することができる。
例えば、図6に示すように、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とから各入射角における信号強度を推定できる。図6では、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とを結ぶ直線Aが、各入射角における推定信号強度を示す。次に、信号強度が推定信号強度よりも所定の値以上弱い入射角を特定する。図6では、直線Aと平行して引かれた直線Bが推定信号強度よりも所定の値弱い信号強度を示す。そこで、図6において、直線Bよりも測定された信号強度が弱い入射角が連続して現れる範囲を特定すると、入射角範囲Xが特定される。この入射角範囲Xが凹みである。
そして、凹みとして特定された入射角範囲Xにおいて、最も信号強度が弱い位置が凹みの底である。したがって、入射角範囲Xにおいて最も信号強度が弱い入射角を、観測位置の地表面のブリュースター角として特定すればよい。
なお、推定信号強度を求めるために用いる信号強度は、入射角0°と入射角90°とにおける信号強度に限定されるものではない。例えば、入射角0°と入射角45°と入射角90°とにおける信号強度を用いてもよいし、さらに多くの入射角における信号強度を用いてもよい。ブリュースター角となり得ない2つ以上の角度を用いれば、推定信号強度を求めることができる。
【0030】
図7は、植生等が存在する場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を示す図である。図7では、横軸が入射角であり、縦軸が被観測体から得られる反射波の信号強度である。また、図7において、角θgbは観測位置の地表面のブリュースター角である。
図7に示すように、植生等が存在する場合においても同様に、レーダから観測位置の地表面へ垂直偏波の電波を放射して、その反射波の信号強度を測定し、得られた値を入射角毎にプロットし補間して線を描く。すると、描いた線には、入射角範囲Xに、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置を底とする凹みができる。
しかし、描いた線には、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置以外に、入射角範囲Yにも、垂直偏波の電波の入射角が角θ’gbとなる位置を底とする凹みができる。
つまり、植生等が存在する場合には、信号強度を入射角毎にプロットして描かれる線に2つの凹みがある。したがって、どちらの凹みの底の位置における入射角が、観測位置の地表面のブリュースター角であるかを、さらに特定する必要がある。
【0031】
図8は、図7における凹みの底の入射角を特定する方法の説明図である。なお、図8は、図7に説明のための線等を加えた図である。
例えば、図6の場合と同様に、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とから各入射角における信号強度を推定する。図8では、入射角0°における信号強度と入射角90°における信号強度とを結ぶ直線Aが、各入射角における推定信号強度を示す。次に、信号強度が推定信号強度よりも所定の値以上弱い入射角を特定する。図8では、直線Aと平行して引かれた直線Bが推定信号強度よりも所定の値弱い信号強度を示す。そこで、図8において、直線Bよりも測定された信号強度が弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定すると、入射角範囲Xと入射角範囲Yとが特定される。この入射角範囲Xと入射角範囲Yとがそれぞれ凹みである。
したがって、入射角範囲Xと入射角範囲Yとにおいて最も信号強度が弱い入射角を特定すれば、2つの凹みの底の入射角をそれぞれ特定できる。
【0032】
図9は、植生が存在する場合におけるブリュースター角の説明図である。
図9に示すように、レーダから放射された垂直偏波の電波に対する反射には、地表面で単純に反射する表面散乱成分だけでなく、地表面で反射するとともに、植生で反射する二回散乱成分等が含まれる。ここで、垂直偏波の電波の地表面に対する入射角をθi(=θj)とすると、植生に対する入射角は“90°−θi(=θk)”になる。なお、ここでは、植生は地表面に対して垂直に立っていると仮定している。
ここで、垂直偏波の電波の地表面に対する入射角θiが地表面のブリュースター角θgbである場合、垂直偏波の電波の地表面からの反射はない。つまり、植生へ垂直偏波の電波が入射することもない。そのため、表面散乱成分だけでなく、二回散乱成分等も0になり、反射波の信号強度は原則として0になる。そのため、反射波の信号強度を入射角毎にプロットし補間して線を描くと、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbとなる位置を底とする凹みができる。
一方、垂直偏波の電波の地表面に対する入射角θiが地表面のブリュースター角θgbでない場合、地表面で単純に反射した表面散乱成分に加え、地表面と植生とで反射した二回散乱成分等が観測される。しかし、垂直偏波の電波の植生に対する入射角θkが植生のブリュースター角θvbとなる場合、地表面と植生とで反射する二回散乱成分の信号強度は0となる。したがって、この場合、地表面で単純に反射した表面散乱成分だけが観測される。なお、垂直偏波の電波の植生に対する入射角θk(=90°−θi)が植生のブリュースター角θvbとなる場合の垂直偏波の電波の地表面に対する入射角θiが、図8に示す角θ’gbである。つまり、θ’gb=90°−θvbである。そのため、反射波の信号強度を入射角毎にプロットし補間して線を描くと、垂直偏波の電波の入射角が角θ’gbとなる位置を底とする凹みができる。
【0033】
ここで、一般にブリュースター角は、70〜80°程度である。つまり、地表面のブリュースター角θgbも、植生のブリュースター角θvbも70〜80°程度である。上述したように、θ’gb=90°−θvbであるから、θ’gbは、10〜20°程度である。
このことから、信号強度を入射角毎にプロットして描かれる線に2つの凹みがあり、特定される角度が2つある場合には、大きい方の角度が地表面のブリュースター角θgbであるということができる。
【0034】
なお、図9では、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbである場合の方が、垂直偏波の電波の入射角が角θ’gbである場合よりも、反射波の信号強度が弱く、最も信号強度が弱い。上記説明から明らかなように、理論的には図9に示すように垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbである場合が最も反射波の信号強度が弱くなる。しかし、誤差の影響により、垂直偏波の電波の入射角がブリュースター角θgbである場合が最も反射波の信号強度が弱くならないこともある。
したがって、上記説明のように、特定される角度が2つある場合には、大きい方の角度を地表面のブリュースター角とするのが間違いがない。しかし、処理を単純化する場合には、最も反射波の信号強度が弱くなる入射角をブリュースター角としてもよい。
【0035】
次に、この実施の形態に係る誘電率特定システム1について説明する。
図10は、誘電率特定システム1の機能を示す機能ブロック図である。
誘電率特定システム1は、観測装置2、誘電率特定装置3を備える。観測装置2は、アンテナ21、受信装置22、信号強度記憶装置23を備える。誘電率特定装置3は、信号強度入力部31、ブリュースター角特定部32、誘電率特定部33を備える。
【0036】
図11は、誘電率特定システム1の動作を示すフローチャートである。誘電率特定システム1の動作は、観測装置2によるプロファイル作成処理と、誘電率特定装置3による誘電率特定処理との2つの処理に大きく分けられる。
【0037】
まず、プロファイル作成処理について説明する。
(S11)では、アンテナ21は、観測位置への入射角を変更しながら、垂直偏波の電波を観測位置へ放射する。
(S12)では、受信装置22は、(S11)でアンテナ21が放射した垂直偏波の電波の反射波を受信して、その反射波の信号強度を計測する。
(S13)では、信号強度記憶装置23は、(S12)で受信装置22が計測した入射角毎の反射波の信号強度をプロファイルとして記憶する。
これにより、信号強度記憶装置23には、観測位置の各入射角における反射波の信号強度が記憶される。つまり、信号強度記憶装置23が記憶したデータから、図5や図9に示すような線を描くことが可能である。
【0038】
次に、誘電率特定処理について説明する。
(S21)では、信号強度入力部31は、(S13)で信号強度記憶装置23がプロファイルとして記憶した各入射角における信号強度を入力装置により入力する。
(S22)では、ブリュースター角特定部32は、(S21)で信号強度入力部31が入力した各入射角における信号強度から、観測位置のブリュースター角を処理装置により特定する。つまり、ブリュースター角特定部32は、信号強度をプロットし補間して描かれる線の凹みの底における入射角をブリュースター角として特定する。また、ブリュースター角特定部32は、描かれた線に2つの凹みがあり、2つの入射角が特定される場合には、大きい方の角度を観測位置の地表面のブリュースター角とする。なお、凹み及び凹みの底の特定方法は、上述した通りである。
(S23)では、誘電率特定部33は、(S22)でブリュースター角特定部32が特定したブリュースター角から、観測位置の誘電率を処理装置により特定する。なお、誘電率特定部33は、予めブリュースター角毎の誘電率を記憶装置に記憶しておき、ブリュースター角特定部32が特定したブリュースター角を記憶装置から検索して、対応する誘電率を取得することで、観測位置の誘電率を特定する。
【0039】
以上のように、この実施の形態に係る誘電率特定システム1は、地表面のブリュースター角に基づき、地表面の誘電率を特定する。植生等が存在する場合であっても、地表面のブリュースター角を特定することは可能であるため、誘電率特定システム1は、植生等が存在する場合であっても、地表面の誘電率を特定することができる。
【0040】
なお、上記説明では、地表面のブリュースター角を特定して、地表面の誘電率を特定するとした。
しかし、近傍の角度よりも信号強度が所定の値以上小さい角度が2つ存在する場合には、小さい方の角度から植生等のブリュースター角を求めることができる。つまり、90°から小さい方の角度θ’gbを引いた角度が植生等のブリュースター角θvbである。植生等のブリュースター角θvbが特定できれば、植生等の誘電率を特定することができる。
したがって、誘電率特定システム1は、地表面の誘電率だけでなく、植生等の誘電率も特定することができる。
【0041】
また、上述したように、ブリュースター角は、一般にブリュースター角は、70〜80°程度である。そのため、地表面のブリュースター角のみを特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が70〜80°程度となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度があればよい。つまり、プロファイル作成処理で計測する反射波の信号強度をこの範囲に減らしてもよい。なお、少し範囲を広げて、垂直偏波の電波の入射角が60〜90°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測してもよい。
同様に、植生等の誘電率を特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が10〜20°程度となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度があればよい。そのため、プロファイル作成処理で計測する反射波の信号強度をこの範囲に減らしてもよい。なお、少し範囲を広げて、垂直偏波の電波の入射角が0〜30°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測してもよい。
あるいは、地表面の誘電率を特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が45〜90°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測し、植生等の誘電率を特定する場合には、垂直偏波の電波の入射角が0〜45°となる場合における垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を計測してもよい。
【0042】
また、垂直偏波の電波の入射角が0〜45°の場合に、近傍の角度よりも信号強度が所定の値以上小さい角度が存在する場合には、その観測位置付近に、植生や建物等が存在すると特定できる。
例えば、都市部は垂直な構造物が多い。そこで、都市開発を行っている地域を観測して、ブリュースター角特定部32が、垂直偏波の電波の入射角が0〜45°の範囲に、近傍の角度よりも信号強度が所定の値以上小さい角度の地点がどの程度存在するかを計測することにより、都市開発の状況を調べることもできる。
【0043】
また、誘電率特定部33が特定した誘電率から、観測位置の物理状態、つまり観測位置の土地の被覆を特定することも可能である。例えば、都市部を観測し、都市部の誘電率を特定することで、都市部の地表面や建物等の材質を特定することができる。また、農地を観測し、農地の誘電率を特定することで、農作物等の種類や生育、伐採等の状況を特定することができる。
この場合、図12に示すように、誘電率特定装置3は、さらに、被覆情報記憶装置34、土地被覆特定部35を備えるようにすればよい。
被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した記憶装置である。例えば、被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、建物等の人口構造物の材質を記憶している。あるいは、被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、農作物等の植生の種類を記憶している。また、あるいは、被覆情報記憶装置34は、誘電率毎に、ある植生の生育状態を記憶している。
土地被覆特定部35は、誘電率特定部33が特定した誘電率を被覆情報記憶装置34から検索して、対応する被覆情報を処理装置により取得する。これにより、土地被覆特定部35は、観測位置の地表面の物理状態、つまり人口構造物の材質や植生の種類、生育状況等を特定する。
【0044】
次に、誘電率特定装置3のハードウェア構成について説明する。
図13は、誘電率特定装置3のハードウェア構成の一例を示す図である。
図13に示すように、誘電率特定装置3は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902(K/B)、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920(固定ディスク装置)の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。磁気ディスク装置920は、所定の固定ディスクインタフェースを介して接続される。
【0045】
ROM913、磁気ディスク装置920は、不揮発性メモリの一例である。RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913とRAM914と磁気ディスク装置920とは、記憶装置(メモリ)の一例である。また、キーボード902、通信ボード915は、入力装置の一例である。また、通信ボード915は、通信装置(ネットワークインタフェース)の一例である。さらに、LCD901は、表示装置の一例である。
【0046】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0047】
プログラム群923には、上記の説明において「信号強度入力部31」、「ブリュースター角特定部32」、「誘電率特定部33」、「土地被覆特定部35」等として説明した機能を実行するソフトウェアやプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、上記の説明において被覆情報記憶装置34が記憶する情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「ファイル」や「データベース」の各項目として記憶される。「ファイル」や「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0048】
また、上記の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体やICチップに記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体や電波によりオンライン伝送される。
また、上記の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜装置」として説明するものは、「〜回路」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。さらに、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、上記で述べた「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、上記で述べた「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 誘電率特定システム、2 観測装置、3 誘電率特定装置、21 アンテナ、22 受信装置、23 信号強度記憶装置、31 信号強度入力部、32 ブリュースター角特定部、33 誘電率特定部、34 被覆情報記憶装置、35 土地被覆特定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力部と、
前記信号強度入力部が入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を処理装置により特定するブリュースター角特定部と、
前記ブリュースター角特定部が特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を処理装置により特定する誘電率特定部と
を備えることを特徴とする誘電率特定装置。
【請求項2】
前記ブリュースター角特定部は、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の誘電率特定装置。
【請求項3】
前記ブリュースター角特定部は、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の誘電率特定装置。
【請求項4】
前記信号強度入力部は、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の誘電率特定装置。
【請求項5】
前記ブリュースター角特定部は、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定部は、前記ブリュースター角特定部が特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする請求項4に記載の誘電率特定装置。
【請求項6】
前記誘電率特定装置は、さらに、
誘電率毎に、地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置と、
前記誘電率特定部が特定した誘電率を前記被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定部と
を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の誘電率特定装置。
【請求項7】
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力処理と、
前記信号強度入力処理で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定処理と、
前記ブリュースター角特定処理で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする誘電率特定プログラム。
【請求項8】
前記ブリュースター角特定処理では、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項7に記載の誘電率特定プログラム。
【請求項9】
前記ブリュースター角特定処理では、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項8に記載の誘電率特定プログラム。
【請求項10】
前記信号強度入力処理では、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする請求項7から9までのいずれかに記載の誘電率特定プログラム。
【請求項11】
前記ブリュースター角特定処理では、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定処理では、前記ブリュースター角特定処理で特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする請求項9に記載の誘電率特定プログラム。
【請求項12】
前記誘電率特定プログラムは、さらに、
前記誘電率特定処理で特定した誘電率を、誘電率毎に地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項7から11までのいずれかに記載の誘電率特定プログラム。
【請求項13】
入力装置が、複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力工程と、
処理装置が、前記信号強度入力工程で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定工程と、
処理装置が、前記ブリュースター角特定工程で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定工程と
を備えることを特徴とする誘電率特定方法。
【請求項1】
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力部と、
前記信号強度入力部が入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を処理装置により特定するブリュースター角特定部と、
前記ブリュースター角特定部が特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を処理装置により特定する誘電率特定部と
を備えることを特徴とする誘電率特定装置。
【請求項2】
前記ブリュースター角特定部は、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の誘電率特定装置。
【請求項3】
前記ブリュースター角特定部は、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の誘電率特定装置。
【請求項4】
前記信号強度入力部は、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の誘電率特定装置。
【請求項5】
前記ブリュースター角特定部は、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定部は、前記ブリュースター角特定部が特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする請求項4に記載の誘電率特定装置。
【請求項6】
前記誘電率特定装置は、さらに、
誘電率毎に、地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置と、
前記誘電率特定部が特定した誘電率を前記被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定部と
を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の誘電率特定装置。
【請求項7】
複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力処理と、
前記信号強度入力処理で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定処理と、
前記ブリュースター角特定処理で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする誘電率特定プログラム。
【請求項8】
前記ブリュースター角特定処理では、所定の入射角における前記信号強度から推定される各入射角における推定信号強度よりも、その入射角における前記信号強度が所定の値以上弱い入射角を特定し、特定した入射角において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項7に記載の誘電率特定プログラム。
【請求項9】
前記ブリュースター角特定処理では、前記推定信号強度よりも前記信号強度が所定の値以上弱い入射角が連続して現れる入射角範囲を特定し、複数の入射角範囲を特定した場合、角度が大きい方の入射角範囲において最も信号強度が弱い入射角を前記観測対象の前記ブリュースター角として特定する
ことを特徴とする請求項8に記載の誘電率特定プログラム。
【請求項10】
前記信号強度入力処理では、所定の角度より大きい角度の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度のみを入力する
ことを特徴とする請求項7から9までのいずれかに記載の誘電率特定プログラム。
【請求項11】
前記ブリュースター角特定処理では、2つの入射角のうち角度が小さい方の入射角θを90°から引いた角度θ1=90°−θを前記観測対象の近傍に存在する物体のブリュースター角として特定し、
前記誘電率特定処理では、前記ブリュースター角特定処理で特定した近傍に存在する物体のブリュースター角から、前記の誘電率を特定する
ことを特徴とする請求項9に記載の誘電率特定プログラム。
【請求項12】
前記誘電率特定プログラムは、さらに、
前記誘電率特定処理で特定した誘電率を、誘電率毎に地表面の物理状態を示す被覆情報を対応付けて記憶した被覆情報記憶装置から検索して、対応する被覆情報を取得することにより、前記観測対象の物理状態を特定する土地被覆特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項7から11までのいずれかに記載の誘電率特定プログラム。
【請求項13】
入力装置が、複数の入射角で観測対象へ放射した垂直偏波の電波に対する反射波の信号強度を入力する信号強度入力工程と、
処理装置が、前記信号強度入力工程で入力した反射波の信号強度から、前記観測対象のブリュースター角を特定するブリュースター角特定工程と、
処理装置が、前記ブリュースター角特定工程で特定したブリュースター角から前記観測対象の誘電率を特定する誘電率特定工程と
を備えることを特徴とする誘電率特定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−191097(P2011−191097A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55522(P2010−55522)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】
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