説明

調剤システム

【課題】無線受信可能なラベル装置50を導入して搬器40のラベル書換が自由に行えるようにするとともに、格段の能率向上も図る。
【解決手段】電子ペーパー51と内蔵電子回路52と無線受信部53とを一体化したラベル装置50を搬器40に装着させ、薬剤が有ればそれを搬器40に投入するが薬剤欠品発生時には薬剤投入に代えて欠品情報の通知を出す調剤機22〜25を搬器搬送機構11の搬送路に臨ませ、その欠品情報57を目視読取可能な態様で電子ペーパー51に表示させる書込指令をラベル装置50へ無線で送信する。また、搬器40の内部空間を小器41〜43の平面配置で分割しうる分割情報58が視認可能に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、注射薬等の各種薬剤をストックしておき処方箋データやそれから派生した調剤指示データにて指示された薬剤を自動で搬器に投入して払い出す調剤システムに関し、詳しくは、視認可能かつ書換可能なラベルを搬器に装着しておき搬器のラベルの表示を目視や機械で読み取って搬器の識別に利用する調剤システムに関する。
なお、本願発明において、搬器は、薬剤を収容して搬送機構や人手で運搬しうる器を意味し、例えば浅皿状のトレーや角箱状のボックス等が挙げられる。
また、本願発明において、ラベルは、搬器表面に張付状態で装着しうる情報表示部材を指し、搬器使用時さえ搬器に固定されていれば着脱式であっても良い。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤等の薬剤を対象とした自動調剤機として、PTP包装の薬剤を扱う薬剤払出装置や、ばらの薬剤を扱う薬剤分包機、注射薬を扱う注射アンプル自動供給装置などが実用化されている。さらに、それらの調剤機をトレー(搬器)の搬送機構に臨ませたうえで、トレーを搬送するとともに調剤対象薬剤を調剤機からトレーに投入することで、指示された薬剤をトレーに収集して払い出す調剤システムも、実用化されている(例えば特許文献1参照)。この調剤システムでは、例えばバーコードからなるトレー識別情報を書き込み可能なラベルがトレーに装着されており、そのラベルに対する視認可能な再書込がレーザ光にて非接触で行えるようになっている。
【0003】
また、電子データと印刷物との長所を兼ね備えた情報表示手段である電子ペーパーと、その表示に係る駆動制御とデータ記憶とを行う内蔵電子回路と、そのデータや表示情報書換指令等の指令を受け取る無線受信部とを一体化した電子棚札が実用化されている(例えば特許文献2参照)。この電子棚札を多数設置した電子棚札システムでは、サーバ(無線制御ユニット)にLAN接続された固定設置のトランシーバ(無線送信器)を用いて電子棚札にアクセスできる他、可搬性のリモコン(無線操作器)にて電子棚札の表示情報を切り替えることもできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−153542号公報
【特許文献2】特開2009−026329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、上述した従来の調剤システムでは、搬器のラベルに感熱式の物が採用されていたことから、ラベルへの書込みが接触式であれ非接触式であれ、ラベルを静止させなければ的確な書込みが行えないので、搬器の搬送を停止した状態でラベル書込みが行われていた。このため、その搬送停止時間の分だけ、スループット(能率)が低下していた。そして、そのような能率低下をなるべく小さくするために、ラベル書込みの回数は、例えば空の搬器を供給しようとするときだけ等、最少に抑制されていた。
【0006】
ところで、上述した電子棚札や電子棚札システムが安価かつ安定に提供されるようになったことから、調剤システムについても、搬器に装着されるラベルに上述の電子棚札を転用するといったことにより、搬器のラベルを無線受信可能なラベル装置にしてラベル書換の自由度や柔軟性を高めることが思い浮かぶ。
しかし、それだけでは無線導入に要した費用を補償するに足りないので、満足なコストパフォーマンスが得られるレベルまで、処理能力を高めることが要請される。
そこで、無線受信可能なラベル装置を導入したことによりラベル書換がより自由に行えるようになったことにとどまらず、格段の能率向上をも図るべく、調剤システムを更に改良することが、技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の調剤システムは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、電子ペーパーと内蔵電子回路と無線受信部とを一体化したラベル装置が装着された搬器と、この搬器を搬送する搬器搬送機構と、その搬送路に臨んで設けられ薬剤が有ればそれを前記搬器に投入するが薬剤欠品発生時には薬剤投入に代えて欠品情報の通知を出す調剤機と、その欠品情報を目視読取可能な態様で前記電子ペーパーに表示させる書込指令を前記ラベル装置へ無線で送信する手段と、前記調剤機から前記搬器へ投入される各薬剤について薬剤を収容可能な小器を示す薬品小器対応データを記憶保持する手段と、その薬品小器対応データを参照して前記搬器の内部空間を分割できる前記小器の平面配置を試行演算する手段と、それで得られた分割情報を前記電子ペーパーに表示させる手段とを備えている。
【0008】
より具体的な本発明の調剤システムは(解決手段2)、視認可能かつ書換可能なラベルを装着した搬器と、この搬器を搬送する搬器搬送機構と、その搬送路に臨んで設けられた調剤機とを具備していて、薬剤を前記調剤機から前記搬器に投入して払い出す調剤システムにおいて、電子ペーパーと内蔵電子回路と無線受信部とを一体化したラベル装置が前記ラベルとして前記搬器に装着されており、前記搬送機構と前記調剤機との連携動作を制御する調剤制御装置が前記電子ペーパーの表示情報の書込指令を前記ラベル装置へ無線で送信するようになっており、前記調剤機が薬剤欠品発生時には前記搬器への薬剤投入に代えて欠品情報の通知を前記調剤制御装置へ送出するようになっており、その欠品情報を目視読取可能な態様で前記電子ペーパーに表示させる書込指令も前記調剤制御装置から前記ラベル装置へ無線で送信されるようになっており、更に、前記調剤制御装置が、前記調剤機から前記搬器へ投入される各薬剤について薬剤を収容可能な小器を示す薬品小器対応データを記憶保持する手段と、その薬品小器対応データを参照して前記搬器の内部空間を分割できる前記小器の平面配置を試行演算する手段と、それで得られた分割情報を前記電子ペーパーに表示させる手段とを備えたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような本発明の調剤システムにあっては(解決手段1,2)、調剤機は、欠品が無ければ薬剤を搬器に投入するので従来通り自動払出が継続されるのに対し、欠品が有れば、従来のように自動払出を一時停止して欠品補充後に再開するのでなく、欠品情報の通知を出して薬剤の投入や補充待ちを回避するので、自動払出が中断することなく継続される。そして、このように欠品の有無に拘わらず自動払出が継続されるようにしたことにより、欠品の発生した搬器に係る処理だけでなく後続の多数の搬器に係る処理も滞ることなく円滑かつ迅速に遂行されることから、自動払出継続による能率向上の利益は大きい。なお、欠品の発生した搬器については後から欠品の薬剤が補充されるが、欠品情報が目視読取可能に表示されるため、例え欠品補充を人手で行うにしても、欠品補充作業は容易である。
【0010】
また、この調剤システムにあっては(解決手段1,2)、搬器投入薬剤を収容可能な小器を示す薬品小器対応データが記憶保持されていて、搬器の内部空間を分割できる小器の平面配置が試行演算されるとともに、それで得られた分割情報が電子ペーパーに表示される。このように、搬器の内部空間を小器の平面配置で分割しうる分割情報が視認可能に表示されるようにもしたことにより、搬器の内部空間を幾つかの小器の平面配置で仕切って薬剤を整理整頓する際、作業者は分割情報を見れば整理整頓作業を容易かつ迅速に行うことができる。
したがって、この発明によれば、格段の能率向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1について、調剤システムの構造を示し、(a)がシステム全体の平面配置図、(b)が制御系の概要ブロック図、(c)が搬器の外観斜視図、(d)が搬器搬送機構の部分の側面図、(e)が小器で内部空間を分割した搬器の外観斜視図、(f)と(g)が搬器のラベルの第1画面の例、(h)と(i)が搬器のラベルの第2画面の例である。
【図2】調剤制御装置の構造を示すブロック図である。
【図3】(a)〜(d)何れも搬器のラベルの第1,第2画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した解決手段1,2の調剤システムについて、これを実施するのに好適な幾つかの実施形態をその作用効果と共に説明する。
本発明の調剤システムは(実施形態1)、上記解決手段1,2の調剤システムであって、前記ラベル装置への無線送信が前記搬器の搬送中に行われるようになっていることを特徴とする。この場合、表示データや書換指令がラベル装置に無線で送信されるのを利用して、搬器を搬送しながらラベル書込みができるようにしたことにより、その分だけ能率が向上することとなる。しかも、識別情報などの既存情報に加えて新たに欠品情報までラベル装置に書き込まれるが、その書込が搬器搬送中に行われるので、ラベル書込み回数が増えても能率向上の効果を損なうことは無い。
【0013】
また、本発明の調剤システムは(実施形態2)、上記解決手段1,2や上記実施形態1の調剤システムであって、前記分割情報を前記電子ペーパーに表示させるに際して前記欠品情報の表示欄に上書き表示するようになっていることを特徴とする。
この場合、分割情報が欠品情報の表示欄に上書き表示されるため、表示面を過度に広げなくても両方の情報を表示することができるうえ、例え欠品情報を見落として欠品補充を行わないまま搬器を整理整頓の対象に含めてしまったような場合でも、分割情報を見ようとした作業が、その表示欄に残っている欠品情報を見て、誤りに気付くので、薬剤払出の信頼性が高まることとなる。そのため、この実施形態によれば、能率が良いうえ信頼性も高い調剤システムを実現することができる。
【0014】
このような解決手段や実施形態の調剤システムについて、その具体的な実施態様を、以下の実施例1により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜2(出願当初の請求項1〜2)及び実施形態1〜2を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、筐体パネルや,ベース,フレーム,ボルト等の締結具,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0015】
本発明の調剤システムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が調剤システム10の全体的な平面配置図、(b)が制御系の概要ブロック図、(c)が搬器40の外観斜視図、(d)が搬器搬送機構11の部分の側面図、(e)が搬器40の内部空間を小器41〜43で分割したところの外観斜視図、(f)と(g)が搬器40のラベル50の第1画面p1の例、(h)と(i)が40搬器のラベル50の第2画面p2の例であり、図2は、調剤制御装置60の構造を示すブロック図である。
【0016】
この調剤システム10は(図1(a)参照)、薬剤を搬器40に自動で収集して払い出すために、ラベル装置50を装着した複数・多数の搬器40と、搬器40を例えば一方向に搬送する搬器搬送機構11と、搬器搬送機構11の搬器搬送路の始点すなわち最上流位置に臨んで設けられた搬器供給装置21と、搬器搬送機構11の搬器搬送路の途中に臨んで設けられた幾つかの調剤機22〜25と、搬器搬送機構11の搬器搬送路の終点すなわち最下流位置に臨んで設けられた搬器収納装置26,27とを具えている。
また、搬器搬送路から少し離れた所には、不足の薬剤を搬器40に手作業で補充するための薬品棚28と、搬器40に収集して払い出された薬剤の適否を目視確認する調剤監査を行うための監査台29とが、設けられている。
【0017】
さらに、搬器搬送機構11と調剤機22〜25との間にはそれぞれ搬器引込装置12〜15が設置され、搬器搬送機構11と搬器収納装置26,27との間にはそれぞれ搬器引込装置16,17が設置されている。搬器引込装置12〜17は、何れも、搬器搬送機構11の搬器搬送路から処理対象の搬器40を一時的に引き込むことで、搬器搬送路を塞ぐことなく、処理対象の搬器40を対応処理装置22〜27の手前に一時停止させるようになっている。なお、搬器引込装置12〜15,16,17は、それぞれ、調剤機22〜25及び搬器収納装置26,27に対応している。
【0018】
また、搬器供給装置21の搬器送出口の近傍には無線送信器31が設置され、搬器引込装置12〜16の少し上流にはそれぞれ識別情報読取装置32〜36が設置され、搬器引込装置17の近傍には無線送信器37が設置され、薬品棚28の所には無線操作器38が置かれ、監査台29には無線送信器39と識別情報読取装置39aとが設置されている。さらに(図1(b)参照)、これらの装置11〜39aの動作を制御して協働させるために調剤制御装置60も設けられており、調剤制御装置60と各装置11〜39aとが適宜なLANケーブルや信号ケーブルを介して指令やデータあるいは信号を送受できるようになっている。なお、無線送信器31,37,39と調剤制御装置60との間には無線制御ユニット30を介在させることもあるが、制御可能であれば介在させなくても良い。
【0019】
これら各部の装置やユニットは、既製品の転用や一部改造で具現化されるので、煩雑なな説明は割愛して、簡潔に説明する(例えば特許文献1参照)。
搬器搬送機構11は、ベルトコンベア式が多用されているが、レール式など他の方式の物でも良く、搬器引込装置12〜17は、アームで押し引きする方式が使い易いが、方向転換可能なベルトコンベアなど他の方式の物でも良い。
搬器供給装置21は、空の搬器40を多数ストックしており、そのなかから一つずつ搬器40を取り出して搬器搬送機構11の搬器搬送路の上に送出するようになっている。
【0020】
調剤機22〜25は、各種薬剤をストックしていて搬器引込装置12〜15上の搬器40に払出対象の薬剤を投入する自動調剤機器であり、注射薬を扱う注射アンプル自動供給装置(例えば特開平2−28406号公報を参照)や、PTP包装の薬剤を扱う薬剤払出装置(特開平2−219705号公報)、ばらの薬剤を扱う薬剤分包機(特開平11−226089号公報)、輸液や補助薬品を扱う薬剤払出装置などが挙げられる。ただし、調剤機22〜25は、薬剤欠品発生時には、即ち調剤機22〜25の取り扱う薬剤の何れかがストック切れになったのにも拘わらずその薬剤が払出対象になったために欠品が発生した時には、払出動作を中断して欠品薬剤が補充されるのを待つ従来品と異なり、欠品薬剤の薬品コードや数量などの欠品情報を調剤制御装置60に通知するようになっている。
【0021】
搬器収納装置26,27は、何れも、薬剤を収容した搬器40を搬器引込装置16,17経由で一つずつ受け入れ、人手で取出可能な態様で一時保管しておくものであるが、欠品の有無に応じて使い分けられ、搬器引込装置16は欠品の無い搬器40を収納するのに対し、搬器引込装置17は欠品の有る搬器40を収納するようになっている。
搬器40は、上面解放の角箱が多用されるが(図1(c)参照)、内部空間に薬剤を収容して運搬することができれば他の形状のものでも良い。搬器40の外面には従来のラベルに代えてラベル装置50が装着されている。
【0022】
搬器搬送機構11が搬器40を搬送するときには(図1(d)参照)、搬器40のラベル装置50装着面が進行方向前面になる向きで搬器40が搬送されるようになっており、それに対応して、識別情報読取装置32〜36は、例えば識別情報がバーコードであればレーザ光スキャン方式のバーコードリーダが採用され、搬器40の前方で斜め上から、ラベル装置50に表示されている識別情報を搬器40の搬送中に非接触で読み取るようになっている。なお、監査台29上の識別情報読取装置39aは、ラベル装置50を静止させた状態で読取を行うことができるので、接触式の物であっても良い。もちろん、識別情報読取装置32等と同じ非接触式の物でも良い。
【0023】
また(図1(e)参照)、この調剤システム10では、搬器40を払い出すときや払い出した後に薬剤を整理整頓するために、小器41〜43が搬器40と一緒に用いられる。小器41〜43は、調剤機22〜25から搬器40へ投入される薬剤を収容可能な上面解放の容器であって、搬器40より小さいので、搬器40の内部空間に複数・多数ならべることで搬器40の内部空間を仕切って分割しうるものとなっている。小器41〜43の内部形状は、特定の薬剤に特化していることもあれば、サイズの近い幾種類かの薬剤を整理収容できるものもあるが、小器41〜43の外部形状は、搬器40の内部空間の分割に適した形状になっており、例えば、搬器40の内部空間が角形であれば小器41〜43は小さな角形にされ、搬器40の内部空間が円形であれば小器41〜43は扇形や三角形と弓形との併用などにされる。
【0024】
ラベル装置50は(図1(f)参照)、電子ペーパー51と内蔵電子回路52と無線受信部53とを一体化してカード状にしたものが多用されるが、搬器40の外面に張付状態で装着することができれば他の形状たとえばコイン状であっても良い。ラベル装置50の基本構造は、既述した電子棚札などと同様のもので良いので、簡潔に説明する。電子ペーパー51は、紙の長所である視認性や携帯性を保った表示媒体であって、表示内容を電気的に書き換えることのできるものであり、例えば電気泳動方式や液晶方式などで実用化されている。内蔵電子回路52は、一個または複数個のIC(集積回路)からなり、電子ペーパー51の駆動回路と、表示データ等を記憶保持するメモリと、表示データや表示切替指令を受信する通信回路と、プログラマブルな制御回路とを搭載している。
【0025】
無線受信部53は、赤外線などの光通信では受光部であり、電波通信ではアンテナであり、磁気通信ではコイルやホール素子などである。
この実施例で採用したラベル装置50は、表示面積の限られた電子ペーパー51に多くの情報を表示させるため、第1画面p1と第2画面p2とを含む複数画面が内蔵電子回路52に設けられていて、無線受信部53を介して表示切替指令を受信すると、その指令に応じて電子ペーパー51の表示内容を第1画面p1と第2画面p2とのうち何れか一方に切り替えるようになっている。
【0026】
無線送信器31,37,39は、このようなラベル装置50に無線でアクセスするためのものであり、通信対象のラベル装置50が通信可能圏内に入りさえすれば、ラベル装置50を装着した搬器40が搬送中であっても、搬器40及びラベル装置50を停止させることなく、調剤制御装置60から指示された書込データや表示切替指令をラベル装置50に送りつけることができるようになっている(図1(d)参照)。
無線操作器38は、いわゆるリモコンであり、単体で作業者の操作に応じた指令を搬器40に無線送信するが、出せる指令が、調剤制御装置60がラベル装置50を介して搬器40に送信する指令のうち表示切替指令と欠品情報消去指令とに、限定されている。
【0027】
調剤制御装置60は(図1(b)参照)、プログラマブルなコンピュータやシーケンサからなり、搬器搬送機構11と搬器引込装置12〜17と搬器供給装置21と調剤機22〜25と搬器収納装置26,27との連携動作を制御するのに加えて、薬品棚28や監査台29での手作業を支援するために、無線送信器31,37,39及び識別情報読取装置32〜36,39aを介して搬器40にアクセスする幾つかのプログラムがインストールされており、メモリには参照データや更新データの記憶領域が割り付けられている。
【0028】
具体的には(図2参照)、外部の処方オーダリングシステムや専用端末などから入力した処方箋データをそのまま採用した又はその処方箋データから調剤機22〜25の取り扱う薬剤だけを抽出した調剤指示データ61がメモリに蓄積されるようになっている。また、薬剤欠品発生時に更新される欠品データ65には、欠品薬剤の薬品名や数量とが、記録されるようになっている。なお、これらの調剤指示データ61や欠品データ65は、該当する搬器40のラベル装置50の識別情報と対応づけられるようにもなっている。さらに、調剤機22〜25から搬器40へ投入される各薬剤について薬剤を収容可能な小器(41〜43)を示す薬品小器対応データ68も、例えば薬品コードをキーにして検索すると小器の種別やサイズのデータが得られる索引付きテーブル形式で、メモリに予め記憶されている。
【0029】
また、調剤制御装置60にインストールされている主なプログラムとしては、搬器供給管理プログラム62と薬品払出管理プログラム63と欠品管理プログラム64と搬器収納管理プログラム66と調剤監査支援プログラム67とが挙げられる。
搬器供給管理プログラム62は、未処理の調剤指示データ61が有るとその処理開始時に空の搬器40を搬器供給装置21から搬器搬送機構11へ送出させるものであるが、その際、搬器40のラベル装置50の第1画面p1に無線送信器31を介して処方番号や患者名などの文字情報54と識別情報読取装置32〜36で読み取り可能な識別情報55と例えば「未監」などの状態情報56とを書き込むとともに(図1(g)参照)、第2画面p2をクリアするようになっている。識別情報55は、一連番号などで、処理の開始された調剤指示データ61とその指示薬剤を収集する搬器40とを対応付けるものである。
【0030】
薬品払出管理プログラム63は(図2参照)、識別情報読取装置32〜35の手前に搬送されて来た搬器40のラベル装置50の識別情報55が識別情報読取装置32〜35にて読み取られて調剤制御装置60に通知されると、その識別情報に対応する調剤指示データ61を参照して、調剤機22〜25のうち対応する調剤機が払出対象薬剤をストックしているか否かを調べ、ストックしている場合には、調剤機22〜25及び搬器引込装置12〜15のうち対応する組に薬剤投入指示を出すようになっている。
欠品管理プログラム64は、調剤機22〜25から調剤制御装置60に欠品情報の通知が送られて来ると、それを欠品データ65に蓄積するようになっている。
【0031】
搬器収納管理プログラム66は、識別情報読取装置36の手前に搬送されて来た搬器40のラベル装置50の識別情報55が識別情報読取装置36にて読み取られて調剤制御装置60に通知されると、その搬器40に薬剤欠品が有るか否かを欠品データ65に基づいて判別し、薬剤欠品が無く払出対象薬品が総て搬器40に収集されている場合には、その搬器40の収納指示を搬器収納装置26及び搬器引込装置16に出すが、調剤機22〜25のうち一機でも薬剤欠品が生じていて払出対象薬品が搬器40に収集しきれてない場合には、その搬器40の収納指示を搬器収納装置27及び搬器引込装置17に出すとともに、そのときの欠品情報の書込データとその情報を目視読取可能な態様で電子ペーパー51に表示させる書込指令とを無線送信器37にてラベル装置50へ送信するようになっている。なお、この例では、表示画面が二枚有るので、第1画面p1については状態情報56を例えば「欠品」に書き換えるにとどめ(図1(g)参照)、具体的な欠品情報57は第2画面p2に追記するようになっている(図1(h)参照)。
【0032】
調剤監査支援プログラム67は(図2参照)、調剤監査担当者により調剤監査対象に選定された搬器40のラベル装置50の識別情報55が識別情報読取装置39aにて読み取られて調剤制御装置60に通知されると、その識別情報に対応する調剤指示データ61を図示しないディスプレイに表示して監査作業を支援するとともに、薬品小器対応データ68を参照して搬器分割試行も行うようになっている。具体的には、搬器40に収集済みの各薬剤について整理整頓に使用可能な小器を薬品小器対応データ68から選出し、例えば最初はサイズの大小順に小器を配置し行き詰まったらその直前の小器の配置を後回しするといった試行演算で、搬器40の内部空間を分割できる小器の平面配置を見つけるようになっている。また、それで得られた分割情報の書込データとその情報を視認可能な態様で電子ペーパー51に表示させる書込指令とを無線送信器39にてラベル装置50へ送信するが、その分割情報58を電子ペーパー51に表示させるに際しては欠品情報57の表示欄に上書きしたのに等しい態様で表示するようになっている(図1(i)参照)。
【0033】
この実施例1の調剤システム10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図3(a)〜(d)は、何れも、搬器40のラベル50の第1画面p1及び第2画面p2の例である。
【0034】
調剤指示データ61が調剤システム10に届くと、調剤指示データ61が調剤制御装置60に入力されてそのメモリに蓄積される。それから、調剤指示データ61に基づき調剤制御装置60によって薬剤払出の自動制御が実行され、それに従って先ず空の搬器40が搬器供給装置21から搬器搬送機構11の搬器搬送路上に送出されるとともに、その搬器40のラベル装置50に無線送信器31を介して初期の表示情報が書き込まれる。その書込のデータも指令も搬器40の搬送中に調剤制御装置60からラベル装置50へ無線で送信されるので搬器40の搬送を止めることなくラベル装置50への書込みが行われる。
【0035】
表示情報の初期化の一例を示すと(図3(a)参照)、書込み先のラベル装置50を装着した搬器40に対応づけられた調剤指示データ61に基づいて、電子ペーパー51の第1画面p1には処方番号や患者名などの文字情報54とバーコード形式の識別情報55と「未監」の状態情報56とが書き込まれ、電子ペーパー51の第2画面p2には、自動調剤後の運搬先を案内する「監査台へ」といった文字情報が書き込まれる。なお、それ以前の残情報は総て消去される。また、搬器供給装置21から送り出されて搬器収納装置26,27に収納されるまでの自動調剤中は、識別情報55を識別情報読取装置32〜36で読み取れるよう、電子ペーパー51には常に第1画面p1が表示される。
【0036】
そして、空の搬器40が搬器搬送機構11によって搬送され、その搬送中にラベル装置50の識別情報55が識別情報読取装置32によって読み取られると、その搬器40に調剤機22から払い出すべき薬剤が有るか否かが調剤制御装置60によって確認され、払い出すべき薬剤が無い場合には、搬器40の搬送が続けられて、搬器40が搬器引込装置12のところを通過するが、払い出すべき薬剤が有る場合には、搬器40が搬器引込装置12に引き込まれて、調剤機22から払出対象の薬剤が搬器40に投入され、投入が済んだら搬器40が搬器搬送機構11上に戻されて、搬器40の搬送が再開される。
【0037】
その際、調剤機22が払出対象の薬剤を搬器40に投入しようとしたときに、薬剤のストックが切れて、薬剤欠品が発生してしまった場合には、その薬剤の投入はやめて、代わりに欠品情報が調剤機22から調剤制御装置60に通知され、その情報が欠品データ65に蓄積される。欠品情報を出した調剤機22が欠品薬剤の投入を省略して払出可能な薬剤を搬器40に投入し終えたら、搬器40は搬器搬送機構11上に戻される。
繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、搬器40が搬器搬送機構11によって搬送されるに連れて、識別情報読取装置33と搬器引込装置13と調剤機23のところでも、識別情報読取装置34と搬器引込装置14と調剤機24のところでも、識別情報読取装置35と搬器引込装置15と調剤機25のところでも、同様のことが行われる。
【0038】
そうして薬剤を収集した搬器40が搬器搬送機構11によって搬送されて識別情報読取装置36の手前に来ると、その搬器40の搬送中にラベル装置50の識別情報55が識別情報読取装置36によって読み取られて調剤制御装置60に通知され、調剤制御装置60によって、その搬器40に薬剤欠品が有るか否かが欠品データ65に基づいて判別され、薬剤欠品が無く払出対象薬品が総て搬器40に収集されている場合には、その搬器40が搬器収納装置26に収納され、調剤機22〜25の何処かで薬剤欠品が生じていて払出対象薬品が搬器40に収集しきれていない場合には、その搬器40が搬器収納装置27に収納されるとともに、その搬器40のラベル装置50には無線送信器37を介して欠品データ65に基づく欠品情報が書き込まれる。
【0039】
欠品情報の書込例を示すと(図3(b)参照)、書込み先のラベル装置50を装着した搬器40に対応づけられた欠品データ65に基づいて、電子ペーパー51の第1画面p1の状態情報56の欄には「欠品」といった薬剤の欠品の発生を知らせる文字や記号が書き込まれ、電子ペーパー51の第2画面p2には、不足している薬剤に関する薬品名や数量を記した欠品リストが書き込まれる。この欠品情報の場合も、書込のデータや指令がやはり搬器40の搬送中に調剤制御装置60からラベル装置50へ無線で送信されるので、搬器40の搬送を止めることなくラベル装置50への書込みが行われる。
【0040】
そして、このような自動調剤が繰り返されると、薬剤欠品の無い搬器40は次々に搬器収納装置26に収納され、薬剤欠品の有る搬器40は搬器収納装置27に収納され、搬器40の収納先が薬剤欠品の有無に対応して分かれるため、不足薬剤を人手で追加すべき搬器40を見落とすおそれがない。薬剤の足りない搬器40は、搬器収納装置27から薬品棚28へ移され、そこで不足の薬剤が人手で追加投入される。そのとき、作業者が無線操作器38を操作して表示切替指令をラベル装置50に送信させると、第2画面p2の欠品リストが電子ペーパー51に表示されるので、欠品薬剤の人手投入も容易かつ迅速に行われる。薬剤投入が済んだら更に無線操作器38を操作して欠品情報消去指令をラベル装置50に送信させると、ラベル装置50の表示内容が薬剤欠品の無いときと同じになるので(図3(a)参照)、それを目視確認して搬器40を監査台29へ移す。
【0041】
自動調剤で払出対象の薬剤を総て収集した搬器40は、搬器収納装置26から直に監査台29へ移されて、薬品棚28から移された搬器40とともに、調剤監査の対象になるので、監査担当者は監査対象の搬器40のラベル装置50の識別情報55を識別情報読取装置39aに読み取らせる。そうすると、その識別情報が調剤制御装置60に通知されて、その識別情報に対応する調剤指示データ61がディスプレイ表示され、監査作業が支援される。そして、調剤監査が異常無く終了したことが監査担当者の操作入力等にて調剤制御装置60に通知されると、監査済み搬器40のラベル装置50に無線送信器39を介して表示情報の書き換えが行われる。
【0042】
この実施例では、小器を利用した整理整頓が行われるか否かが例えば調剤制御装置60の動作モード設定や調剤指示データ61の特定パラメータ値を参照すれば分かるようになっており、さらに、小器利用の整理整頓が行われない搬器40については(図3(c)参照)、そのラベル装置50の電子ペーパー51の第1画面p1の状態情報56の欄に監査済みを意味する「監済」の文字が書き込まれ、電子ペーパー51の第2画面p2には、調剤監査後の運搬先を案内する「病棟へ」といった文字情報が書き込まれる。
【0043】
これに対し、小器利用の整理整頓が行われる搬器40については(図3(d)参照)、調剤制御装置60による搬器分割試行が行われ、搬器40の内部空間を分割できる小器の平面配置が探し出されてから、ラベル装置50の電子ペーパー51の第1画面p1の状態情報56の欄に監査済みであって分割案内付きを意味する「監分」の文字が書き込まれ、電子ペーパー51の第2画面p2には、小器の平面配置を図で表す分割情報58が書き込まれる。このように搬器40の内部空間を小器の平面配置で分割しうる分割情報58が視認可能に表示されるようになったので、搬器40の内部空間を幾つかの小器(41〜43)の平面配置で仕切って薬剤を整理整頓する際、作業者は分割情報58を見て作業することで整理整頓作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0044】
また、薬剤の不足している搬器40が、欠品薬剤を追加投入しないまま誤って払い出されてしまったような場合でも、その後の運搬や整理を担当する作業者が運搬先の案内や分割の案内を見たくて電子ペーパー51に第2画面p2を表示させると、欠品リストが表示されて、所期の内容と異なる表示であることが一目瞭然なため、確実に誤りに気付くので、誤りが見過ごされてしまうことはほとんど無い。そして、誤って先送りされた搬器40は、薬品棚28に戻されるが、ラベル装置50には欠品リストが表示されるので、不足の薬剤の追加投入から不都合なく処理を再開することができる。
【0045】
[その他]
上記実施例では、搬器搬送機構11が直線状で一方向搬送のみ行うようになっていたが、搬器搬送路は、曲がっていても良く、分岐していても良く、循環搬送や双方向搬送を行うようになっていても良い。
また、上記実施例では、分割情報58の書込が監査台29のところで行われるようになっていたが、分割情報58の書込は、小器41〜43を搬器40の内部空間に並べる作業が実際に行われる前であれば、いつ行っても良いので、例えば病棟のナースセンタ等で行われるようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
10…調剤システム、
11…搬器搬送機構、12〜17…搬器引込装置、
21…搬器供給装置、22〜25…調剤機、
26,27…搬器収納装置、28…薬品棚、29…監査台、
30…無線制御ユニット、31…無線送信器、
32〜36…識別情報読取装置、37…無線送信器、
38…無線操作器、39…無線送信器、39a…識別情報読取装置、
40…搬器、41〜43…小器、
50…ラベル装置、51…電子ペーパー、
52…内蔵電子回路、53…無線受信部、54…文字情報、
55…識別情報、56…状態情報、57…欠品情報、58…分割情報、
60…調剤制御装置、61…調剤指示データ、
62…搬器供給管理プログラム、63…薬品払出管理プログラム、
64…欠品管理プログラム、65…欠品データ、66…搬器収納管理プログラム、
67…調剤監査支援プログラム(搬器分割試行)、68…薬品小器対応データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペーパーと内蔵電子回路と無線受信部とを一体化したラベル装置が装着された搬器と、この搬器を搬送する搬器搬送機構と、その搬送路に臨んで設けられ薬剤が有ればそれを前記搬器に投入するが薬剤欠品発生時には薬剤投入に代えて欠品情報の通知を出す調剤機と、その欠品情報を目視読取可能な態様で前記電子ペーパーに表示させる書込指令を前記ラベル装置へ無線で送信する手段と、前記調剤機から前記搬器へ投入される各薬剤について薬剤を収容可能な小器を示す薬品小器対応データを記憶保持する手段と、その薬品小器対応データを参照して前記搬器の内部空間を分割できる前記小器の平面配置を試行演算する手段と、それで得られた分割情報を前記電子ペーパーに表示させる手段とを備えている調剤システム。
【請求項2】
視認可能かつ書換可能なラベルを装着した搬器と、この搬器を搬送する搬器搬送機構と、その搬送路に臨んで設けられた調剤機とを具備していて、薬剤を前記調剤機から前記搬器に投入して払い出す調剤システムにおいて、電子ペーパーと内蔵電子回路と無線受信部とを一体化したラベル装置が前記ラベルとして前記搬器に装着されており、前記搬送機構と前記調剤機との連携動作を制御する調剤制御装置が前記電子ペーパーの表示情報の書込指令を前記ラベル装置へ無線で送信するようになっており、前記調剤機が薬剤欠品発生時には前記搬器への薬剤投入に代えて欠品情報の通知を前記調剤制御装置へ送出するようになっており、その欠品情報を目視読取可能な態様で前記電子ペーパーに表示させる書込指令も前記調剤制御装置から前記ラベル装置へ無線で送信されるようになっており、更に、前記調剤制御装置が、前記調剤機から前記搬器へ投入される各薬剤について薬剤を収容可能な小器を示す薬品小器対応データを記憶保持する手段と、その薬品小器対応データを参照して前記搬器の内部空間を分割できる前記小器の平面配置を試行演算する手段と、それで得られた分割情報を前記電子ペーパーに表示させる手段とを備えたものであることを特徴とする調剤システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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