説明

調味料シート及び調味料シートの製造方法

【課題】被調理物に所望量の調味料成分を容易且つ的確に添加することができ汎用性に富む調味料シート及びその製造方法の提供する。
【解決手段】調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層2を備え、この調味料層2に、短手方向に沿って複数の切断容易線3(複数の孔又は溝が好ましい。)が所定間隔で形成されている調味料シート1とする。また調味料層2が三層以上のマイクロ層からなる積層体であり、上記積層体が最外層から最内層にかけて異なる調味料成分を含有し、最外層から最内層にかけて砂糖、塩、酢、醤油、味噌の順であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料シート及び調味料シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
料理に使用される調味料は、液体や粉末など様々な形態のものが知られている。また、料理の種類に合わせて複数の調味料が予め混合されたものや、1回の料理分の調味料が小袋等に充填されている使い切りタイプのものが市販されている。
【0003】
このような1回分の使い切りタイプの調味料としては、例えば、調味スープを粉末化させた粉末調味料と食品用結着剤との混練物からなる調味料シートが公知である(特開2007−195518号公報参照)。この公報所載の調味料シートは、カップ麺等において好適に用いられるべく、湯を注いだ際の分散性を考慮してシート状に形成されている。
【0004】
しかし、上記公報所載の調味料シートにあっては、カップ麺等の調理物それぞれ1食分に対応して形成されており、複数の人数分の調理に対応することは考慮されていない。また、上記公報所載の調味料シートは、味の好みや塩分制限等に応じて調味料成分を増減して味や塩分等を調整することが困難である。さらに、上記公報所載の調味料シートは、予め定めた調理物に対応して形成されているため他の料理に利用することは困難である。つまり、上記公報所載の調味料シートは、使用用途が限定され、汎用性に劣るという不都合を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−195518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、被調理物に所望量の調味料成分を容易且つ的確に添加することができ、汎用性に富む調味料シート及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層を備え、
この調味料層に、短手方向に沿った複数の切断容易線が所定間隔で形成されている調味料シートである。
【0008】
当該調味料シートは、調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層を備えているため、水分を含む被調理物に投入されると、被調理物の水分に水溶性の賦形剤とともに調味料成分が溶け、被調理物に調味料成分を添加することができる。また、当該調味料シートは、調味料層の短手方向に沿った複数の切断容易線を有するため、この切断容易線に沿って上記調味料層を切断することができ、これにより所望量の調味料成分を被調理物に添加することができる。このため、使用者が長尺シート状の調味料層を所望の長さに切断することにより、例えば複数の人数分の料理を一度に調理する場合や味の好み等に応じて適宜用いることができ汎用性に優れる。
【0009】
当該調味料シートは、上記切断容易線が、短手方向に沿って形成された複数の孔又は溝であるとよい。これにより、ハサミ等の切断器具を特に用いることなく当該調味料シートを容易に手で切断することができる。
【0010】
当該調味料シートは、上記調味料層が三層以上のマイクロ層からなる積層体であり、上記マイクロ層に、最外層から最内層にかけて異なる調味料成分が含有されているとよい。これにより、複数種類の調味料成分を1枚の調味料層に含有させることができる。また、上記三層以上のマイクロ層が、最外層から最内層にかけて異なる調味料成分を含有することにより、当該調味料シートを調理鍋等に投入した場合には、被調理物に含まれる水分によって調味料層の最外層に含有される調味料成分から順に溶け出すため、各調味料成分を被調理物へ添加するタイミングに時間差をつけることができる。
【0011】
また、当該調味料シートは、上記マイクロ層に、砂糖、塩、酢、醤油及び味噌の何れか一つの調味料成分が含有され、上記マイクロ層が含有するそれぞれの調味料成分が、最外層から最内層にかけて、砂糖、塩、酢、醤油、味噌の順であるとよい。これにより、当該調味料シートを調理鍋等に投入した場合には、被調理物に含まれる水分によって調味料層の最外層に含有される調味料成分から順に溶け出すため、上記調味料成分を、料理の基本といわれる添加順序である「さしすせそ」の順で被調理物に添加させることができる。
【0012】
当該調味料シートは、上記調味料層の平均厚さが10μm以上3000μm以下であるとよい。上記調味料層の平均厚さが上記下限値を下回ると、調味料層に十分な量の調味料成分を含有させることができなくなるおそれがあり、一方、上記調味料層の平均厚さが上記上限値を超えると、当該調味料シートを調理鍋等に投入した場合、当該調味料シートが溶けにくくなるおそれがある。
【0013】
当該調味料シートは、上記調味料層のみからなる構成を採用することができる。これにより、当該調味料シートを調理鍋等に投入した後は、当該調味料シートが全て溶け、出汁パックのような不織布等の残存物が残らない。よって、使用後に残存物を調理鍋等から取り出し廃棄する手間が省け調理作業がより簡便となる。
【0014】
また、当該調味料シートは、上記調味料層に剥離可能に積層された剥離層をさらに備えた構成を採用することができる。これにより、当該調味料シートを重ねて保管する場合等に、調味料層同士が接着してしまうことを防止することができる。また、この剥離層は調味料層と剥離可能に積層されているため、被調理物に投入する際には容易に剥離させることができる。
【0015】
当該調味料シートは、上記水溶性の賦形剤として増粘安定剤が用いられているとよい。これにより、当該調味料シートの食品としての安全性を高めることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた発明は、
水と調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する調味料層形成材料を調製する形成材料調製工程、
上記調味料層形成材料を長尺シート体に成形する成形工程、
上記長尺シート体を乾燥する乾燥工程、及び
上記長尺シート体の短手方向に沿った複数の切断容易線を所定間隔に形成する切断容易線形成工程を備える調味料シートの製造方法である。
【0017】
当該製造方法は、長尺シート体に形成された調味料層形成材料を乾燥するので、調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層を備えた調味料シートを製造することができる。このため、当該調味料シートを、水分を含む被調理物に投入することによって被調理物に調味料成分を添加することができる。また、当該製造方法は、長尺シート体の短手方向に沿った切断容易線を形成するので、当該調味料シートの調味料層には短手方向に沿った切断容易線が形成される。このため、この切断容易線に沿って上記調味料層を切断することができ、これにより所望量の調味料成分を被調理物に添加することができる。
【0018】
ここで「賦形剤」とは、調味料成分をシート状に形成するために用いられる可食性の添加物である。また「増粘安定剤」とは、被添加物に粘度を付与するための食品添加物である。「平均厚さ」とは、JIS K 7130に準拠して測定される値である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明は、水分を含む被調理物に所望量の調味料成分を容易且つ的確に添加することができ、汎用性に富む調味料シート及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係る調味料シートを示す模式的斜視図である。
【図2】図1の調味料シートを示す模式的部分平面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る調味料シートを示す模式的平面図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る調味料シートを示す模式的部分断面図である。
【図5】本発明の第四実施形態に係る調味料シートを示す模式的部分断面図である。
【図6】図1、図3、図4及び図5の調味料シートとは異なる形態に係る調味料シートを長手方向に沿って切断した場合の切断面を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説する。まずは、本発明の第一実施形態の調味料シート1について図1及び図2を参酌しつつ説明する。
【0022】
<調味料シート1>
図1及び図2に示す当該調味料シート1は、調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層2を備えている。当該調味料シート1は、上記調味料層2のみから構成されている。この調味料層2には、当該調味料シート1の短手方向に沿った複数の切断容易線3が所定間隔に形成されている。
【0023】
上記調味料層2は、水に調味料成分と水溶性の賦形剤とを加えて溶かし、フィルム状に形成及び乾燥させたものであり、当該調味料シート1は、図1に示すように、このフィルム状の調味料層2をロール状に巻回したロール体から構成されている。ここで、当該調味料シート1は、幅(短手方向の長さ)が約7cm程度で、全長(長手方向の長さ)が約80cm程度に形成されている。
【0024】
ここで、図1に示すようなロール体から構成される当該調味料シート1の幅の下限値としては2cmが好ましく、3cmがより好ましく、4cmがさらに好ましい。一方、当該調味料シート1の幅の上限値としては15cmが好ましく、13cmがより好ましく、10cmがさらに好ましい。当該調味料シート1の幅が上記下限値を下回ると、切断容易線以外の箇所で不意に生じた切れ目が当該調味料シート1の端縁まで達しやすく、当該調味料シート1が切断容易線以外の箇所で不用意に切断されてしまうおそれがある。一方、当該調味料シート1の幅が上記上限値を超えると、切断容易線が長くなるので当該調味料シート1の切断が困難となるおそれがある。
【0025】
また、当該調味料シート1の全長の下限値としては、20cmが好ましく、30cmがより好ましく、50cmがさらに好ましい。一方、当該調味料シート1の全長の上限値としては5mが好ましく、3mがより好ましく、1mがさらに好ましい。当該調味料シート1の全長が上記下限値を下回ると、複数の人数分の料理を一度に調理する場合に対応できなくなるおそれがあり、一方、当該調味料シート1の全長が上記上限値を超えると、調味料シート1が長すぎて、当該調味料シート1のロール体の体積が大きくなり、保管が困難となるおそれがある。
【0026】
当該調味料シート1の上記調味料層2の平均厚さの下限値としては、10μmが好ましく、25μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚さの上限値としては、3mmが好ましく、2mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。当該調味料シート1の平均厚さが上記下限値を下回ると、上記調味料層2を均一に形成することが困難となるおそれがあり、一方、当該調味料シート1の平均厚さが上記上限値を超えると、当該調味料シート1を調理鍋等に投入した際に、当該調味料シート1が溶けにくくなるおそれがある。
【0027】
当該調味料シート1の含水率としては少ないほど好ましく、例えば10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。このように、当該調味料シート1に含まれる含水率を少なくすることにより、当該調味料シート1に含まれる調味料成分の変質や品質劣化を抑制し、当該調味料シート1の保存安定性を向上させることができる。なお、上記含水率とは、被験物質に含まれる水の割合、すなわち被験物質の水以外の質量に対する被験物質の水の質量の割合を意味する。含水率の測定方法は、公知の測定方法を適宜用いることができ、例えば、当該調味料シート1の質量を測定し、その後減圧下(−750mmHg以下)で12時間真空乾燥させた後の乾燥後質量を測定する。乾燥前後の当該調味料シート1の質量の差を減量とした場合に(減量/乾燥後質量)×100で求めることができる。
【0028】
上記調味料成分としては、特に限定されず、例えば砂糖、塩、酢、醤油、味噌、酒、みりん、ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、サルサ、チリソース(タバスコ)、マスタード、マヨネーズ、油脂、ラー油、香辛料、ハーブ、カレー粉、豆板醤、XO醤、甜面醤、コチュジャン、焼き肉等のタレ、めんつゆ、出汁又は割下等の調味料に含まれる調味料成分が挙げられる。これらの中でも様々な料理に頻繁に用いられる砂糖、塩、酢、醤油、味噌、酒、みりん及び出汁が好ましい。上記調味料成分は1種を単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
上記水溶性の賦形剤は、調味料成分をシート状に形成するために、調味料成分に粘性又は結着性を付与するための可食性の添加剤である。このような賦形剤としては、粘性又は結着性を付与できるものあれば特に限定されず、例えば、食品添加物である増粘安定剤又は結着剤等が挙げられる。
【0030】
上記増粘安定剤としては、例えばプルラン、ゼラチン、寒天、アルギン酸、カラギーナン、アルブミン、ファーセレラン、タマリンド、ペクチン、マルメロ、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、タマリンドガム、ガラクトマンナン、澱粉等が挙げられる。これらのなかでも、十分な粘性を有し、不溶物が残らず、経時変化の少ないプルラン、ゼラチン及び澱粉が好ましく、無味無臭なプルランがより好ましい。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0031】
上記プルランは、プルラン生産菌であるプルラリア・プルランスを培養する時に培養液中に生産される粘性を有する多糖類であり、例えば、培養液から菌体を分離し、この培養液を脱色、濃縮、乾燥して精製することにより得ることができる。また、市販品として、例えば林原株式会社製の「プルランPF−20」等を用いることもできる。
【0032】
上記プルランの具体的な製造方法としては、例えば、プルラン産生菌をグルコース、マルトース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、水飴、スクロース、フラクトース、糖化転化糖、異性化糖又は糖蜜等の糖質を含有する液体培地中で培養し、その培養液中に産生されたプルランを採取する方法が挙げられる。他の製造方法としては、プルラン産生菌を前記培地中でバッチ式、半連続式又は連続式で培養して得られるプルラン含有培養液を濾過して菌体を除去し、必要に応じて、脱塩、脱色、濃縮してプルランを得る方法が挙げられる。さらに、前記培養後の濃縮液を、必要に応じて精製、乾燥、粉砕してプルラン粉末としてもよいし、前記製造方法の過程で得られる培養液を脱塩した後、アルコール沈澱処理してプルランを沈澱させ、これを乾燥して得たプルランを用いてもよい。
【0033】
上記プルランの重量平均分子量の下限値としては50,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましく、150,000以上がさらに好ましい。一方、上記重量平均分子量の上限値としては300,000が好ましく、250,000がより好ましく、200,000がさらに好ましい。プルランの重量平均分子量が上記下限値を下回ると、当該調味料シート1を製造する際に調味料層2の形成が困難となるおそれがあり、一方、プルランの重量平均分子量が上記上限値を超えると調味料層2の加工特性が低下したり、当該調味料シート1の溶解性が低下するおそれがある。
【0034】
上記ゼラチンはコラーゲンの加水分解タンパク質であり、牛骨、牛皮、豚皮、魚鱗等を原料とする。これらの中でも、食品としての安全性が高く、入手が容易な点で豚皮由来ゼラチン、魚鱗由来ゼラチンが好ましい。ゼラチンの製造方法については特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、塩酸や硫酸などの無機酸に数十時間浸漬させて前処理した後にゼラチンを抽出する酸処理法、消石灰の懸濁液中に数ヶ月含浸させて前処理した後にゼラチンを抽出するアルカリ処理法等を用いることができる。また、上記酸処理法又はアルカリ処理法で製造したゼラチンを酵素処理によって低分子化したゼラチンを用いることもできる。
【0035】
また上記ゼラチンとしては、ゼラチン誘導体を用いることもできる。このゼラチン誘導体としては、公知の誘導体を使用することができ、例えば、ゼラチンの酸無水物付加体(例えばフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンなど)、ラクトン付加体(グルコノ−δ−ラクトン付加ゼラチンなど)、アシル化ゼラチン(アセチル化ゼラチンなど)、エステル化ゼラチン(メチルエステル化ゼラチンなど)、ゼラチン有機酸塩(ゼラチン−酢酸塩、ゼラチン−ステアリン酸塩、ゼラチン−安息香酸塩等)等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0036】
上記澱粉は、多数のα−グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であり、植物の種子や球根などに多く含まれている。このような澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉、ワキシーコンスターチ、コーンスターチ等が挙げられる。またこれらの澱粉を原料とした架橋澱粉、α化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉等の加工澱粉を用いることもできる。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0037】
上記結着剤としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩や、カゼインナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
乾燥重量での上記調味料層2に対する上記調味料成分の含有量の下限値としては20質量%が好ましく、25質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。一方、上記調味料成分の含有量の上限値としては、90質量%が好ましく、85質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記調味料成分の含有量が上記下限値を下回ると、上記調味料層2に十分な量の調味料成分を含有させることができないおそれがあり、一方、上記調味料成分の含有量が上記上限値を超えると、上記賦形剤の含有量が相対的に減少することによって、当該調味料シート1を製造する際に調味料層2の形成が困難となるおそれがある。
【0039】
上記調味料層2には、本発明の目的を阻害しない限り、上記以外にもその他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、可食性のものであれば特に限定されず、例えば食品添加物である保存剤(安息香酸等)、可溶化剤(ノニオン界面活性剤等)、溶剤(エタノール、グリセリン等)、ポリオール類(プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、酸化防止剤(ビタミンC)、香料、着色料(カラメル色素等)又はpH調整剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0040】
上記切断容易線3は、当該調味料シート1の短手方向に沿って形成された複数の孔によって構成されている。この複数の孔はミシン目状に形成され、それぞれの孔は当該調味料シート1を貫通している。
【0041】
この切断容易線3同士の間隔(切断容易線3とこの切断容易線3に隣接する切断容易線3との長手方向の間隔)は、当該調味料シート1の幅の0.4倍以上0.8倍以下であることが好ましい。この当該調味料シート1の幅に対する切断容易線3同士の間隔の下限値は、0.45倍がより好ましく、0.5倍がさらに好ましい。一方、この当該調味料シート1の幅に対する切断容易線3同士の間隔の上限値は、0.75倍がより好ましく、0.7倍であることがさらに好ましい。切断容易線3同士の間隔が上記下限値を下回ると、隣接する切断容易線同士で区画される当該調味料シート1の面積が小さくなり、十分な量の調味料成分を含有させることができなくなるおそれがあり、一方、切断容易線3同士の間隔が上記上限値を超えると、隣接する切断容易線同士で区画される当該調味料シート1の面積が大きくなり、含有される調味料成分の量を細かく調整し難くなるため、塩分、糖分又はカロリー等を気にする消費者の要求に応えられなくなり汎用性が低下するおそれがある。
【0042】
<利点>
当該調味料シート1は、ロール体から所望の長さだけ調味料層2を引き出し、上記切断容易線3に沿って切断して切断片を得た後、この切断片を水分を含む被調理物に投入して用いられる。当該調味料シート1は、調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層2を備えているため、当該調味料シート1の切断片を水分を含む被調理物に投入すると、被調理物の水分に水溶性の賦形剤と調味料成分とが溶けて被調理物に調味料成分を添加することができる。
【0043】
また、当該調味料シート1は、上記調味料層2の短手方向に沿った複数の切断容易線3が一定間隔で形成されており、この切断容易線3は当該調味料シート1の短手方向に沿った複数の孔によって形成されているため、ハサミ等の切断器具を特に用いなくとも容易に当該調味料シート1を切断することができる。
【0044】
また、当該調味料シート1は、複数の切断容易線3のうち切断する切断容易線3を使用者が決定することで所望の長さの切断片を得ることができ、この切断片の長さによって被調理物に添加される調味料成分の量を調節することができる。
【0045】
このため、例えば隣接する切断容易線同士で区画される一区画に含まれる調味料成分が一人分の料理に用いられる調味料成分の三分の一の量である場合において、所望の切断容易線3で切断して三区画分の切断片を得ることで、一人分の料理の調味料成分を被調理物に添加することができる。
【0046】
さらに、当該調味料シート1は、上述のように一人分の料理の調理に用いるほか、複数人数分の料理を調理する場合にも好適に用いることができ、従来の一食分に対応して設けられた調味料シートに比べて汎用性が高い。つまり、一つの調理器具(例えば鍋等)で複数人数分の料理を調理する際に、その人数分に応じた長さの切断片に切断し、この切断片を被調理物に投入することで複数人数分の調味料成分を添加することができる。具体的には、例えば上述のように一区画の調味料成分が料理一人分の三分の一の量である場合において六区画分の切断片を得ることで、この切断片によって二人分の料理の調味料成分を被調理物に添加することができる。
【0047】
また、当該調味料シート1は上述のように切断片の長さによって被調理物に添加される調味料成分の量を調節することができるので、個人の嗜好に応じて味の調製を容易に行うことができ、このため従来の一食分に対応して設けられた調味料シートに比べて汎用性が高い。つまり、例えば上述のように一区画の調味料成分が料理一人分の三分の一の量である場合において二区画分の切断片を得て、この切断片によって調味料成分を抑えた料理(味が薄目の料理)を調理することができる。なお、四区画分の切断片によって味が濃い目の料理を調理することも可能である。
【0048】
さらに、隣接する切断容易線同士で区画される当該調味料シート1に含まれる調味料成分の含有量を使用者が分かるように表示しておくことにより、計量カップ等を特別に用いなくとも、使用する当該調味料シート1に含有される調味料成分の分量を容易に計算することができる。
【0049】
また、当該調味料シート1は、上記調味料層2のみから形成されているため、当該調味料シート1を調理鍋等に投入した後は、当該調味料シート1が全て溶け不織布等の残存物が残らない。これにより、使用後に残存物を調理鍋等から取り出し廃棄する手間が省け調理作業がより簡便となる。
【0050】
また、当該調味料シート1は複数の調味料成分が一枚のシート体に含有されているため液体調味料又は粉末調味料のように飛散したりこぼれたりすることがなく取り扱いが容易であり携帯性に優れている。
【0051】
<調味料シート1の製造方法>
当該調味料シート1の製造方法は、水と調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する調味料層形成材料を調製する形成材料調製工程と、この調味料層形成材料を長尺シート体に形成する成形工程と、上記長尺シート体を乾燥する乾燥工程と、上記長尺シート体の短手方向に沿った複数の切断容易線を一定間隔に形成する切断容易線形成工程と、上記成形工程により成形された調味料層をロール状に巻回する巻回工程と、上記成形工程により成形された調味料層を切断する切断工程とを有している。
【0052】
上記形成材料調製工程としては、例えば水と調味料成分と水溶性の賦形剤とを攪拌機内に投入し、撹拌しながら加熱して調製する方法等が挙げられる。なお、調味料成分が醤油等の液体の場合は、フリーズドライ製法等を用いて予め水分を減少させてから用いても良く、一方、上記調味料成分が砂糖等の固体である場合は、水に溶かして液状にしてから用いても良い。
【0053】
上記成形工程としては、上記形成材料調製工程で得られた調味料層形成材料を、連続的に流される工程紙の上に塗工し、長尺のシート体を成形する方法等が挙げられる。上記調味料層形成材料を塗工する手段としては周知の方法が使用でき、例えばスリットコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、フローコート法、グラビアコート法、スプレー法又はバーコート法等を用いることができる。また、上記調味料層形成材料を塗工する他の手段としては、例えば上記調味料層形成材料を充填機から工程紙上に滴下し、この調味料層形成材料が滴下された工程紙を振動させて調味料層形成材料を均一なシート体に形成する方法が挙げられる。これらのなかでも、上記調味料層形成材料の粘度が高くても塗工が可能であり、塗工幅の変更が容易なコンマコーター等のロールコート法を用いることが好ましい。
【0054】
上記乾燥工程としては、特に限定されず、例えば上記成形工程で得られた長尺シート体を熱風乾燥等、公知の乾燥方法を用いて乾燥すればよい。
【0055】
上記切断容易線形成工程は、上記乾燥工程で乾燥された長尺シート体に短手方向に沿った複数の切断容易線3を形成する工程である。この工程は上記乾燥工程の後に行われる。具体的には、連続的に形成される上記長尺シート体に、その短手方向に沿った切断容易線3を間欠的に形成している。なお、上記切断容易線形成工程は、上記成形工程又は乾燥工程と同時に行うことも可能である。具体的には、調味料層2の形成に際して用いる工程紙に切断容易線形成用の複数の針を設けて調味料層2に切断容易線3(ミシン目)を形成する方法や、工程紙等に塗工された調味料層形成材料に切断容易線3を形成しつつ乾燥する方法等を採用することが可能である。
【0056】
上記巻回工程は、上記成形工程によって形成された後、上記乾燥工程によって乾燥された調味料層2を芯材に巻き付けて調味料層2をロール状に巻回する工程である。また、上記切断工程は、上記成形工程によって形成された調味料層2を所望の長さに切断する工程である。なお、上記切断工程は巻回工程の後に行うことも可能(一枚の調味料層2に切断した後にロール状に巻回することも可能)であるが、巻回工程の後に切断工程を行う(全長分の調味料層2を巻回した後に切断する)ことが好ましい。また、上記巻回工程は、先に上記全長以上の長さの調味料層2を巻回する一次巻回工程と、この一次巻回工程によってロール状に巻回された調味料層2から調味料層2を繰り出して全長分の長さの調味料層2を再度巻回する第二巻回工程とを有することも可能である。また、上記切断工程は、調味料層2を短手方向に切断するほか、長手方向に切断することも可能である。つまり、切断工程の前工程において、調味料層2の幅を最終製品の調味料シート1の幅以上としておき、この切断工程において最終製品の調味料シート1の幅となるよう調味料層2を長手方向に切断することも可能である。
【0057】
[第二実施形態]
<調味料シート11>
次に、本発明の第二実施形態である調味料シート11について、図3を参酌しつつ以下に説明する。
【0058】
図3の調味料シート11は、長尺シート状の調味料層2のみから構成されており、この調味料層2には、当該調味料シート11の短手方向に沿った複数の切断容易線3が所定間隔に形成されている。この切断容易線3は、当該調味料シート11の短手方向に沿って形成された複数の孔によって構成され、それぞれの孔は当該調味料シート11を貫通している。当該調味料シート11は方形状に形成されており、その全長(長手方向の長さ)の幅に対する比が3程度で形成されている。具体的には、当該調味料シート11の全長の幅に対する比が2.5以上3.5以下であることが好ましく、2.8以上3.2以下であることがより好ましい。上記比が1.5より小さいと、当該調味料シート11の面積が小さくなり、十分な量の調味料成分を含有させることができなくなるおそれがあり、一方、上記比が2.6より大きいと当該調味料シート11が長くなり個別包装しにくくなるおそれがある。
【0059】
当該調味料シート11の全長の下限値としては5cmが好ましく、8cmがより好ましく、10cmがさらに好ましい。一方、当該調味料シート11の全長の上限値としては、30cmが好ましく、25cmがより好ましく、20cmがさらに好ましい。当該調味料シート11の全長が上記下限値を下回ると、大量の料理を調理する場合に必要となる当該調味料シート11の枚数が多くなり、取り扱いが煩雑となるおそれがあり、一方、当該調味料シート11の全長が上記上限値を超えると、当該調味料シート11が長すぎて取り扱いが困難となるおそれがある。
【0060】
また、当該調味料シート11の幅の下限値としては2cmが好ましく、3cmがより好ましく、4cmがさらに好ましい。一方、当該調味料シート11の幅の上限値としては10cmが好ましく、8cmがより好ましく、6cmがさらに好ましい。当該調味料シート11の幅が上記下限値を下回ると、切断容易線以外の箇所で不意に生じた切れ目が当該調味料シート11の端縁まで達しやすく、当該調味料シート11が切断容易線以外の箇所で不用意に切断されてしまうおそれがある。一方、当該調味料シート11の幅が上記上限値を超えると、切断容易線が長くなることにより当該調味料シート11の切断が困難となるおそれがある。
【0061】
また、上記切断容易線3同士の間隔は、当該調味料シート1の幅の0.2倍以上1倍以内であることが好ましい。この当該調味料シート1の幅に対する切断容易線3同士の間隔の下限値は、0.4倍がより好ましく、0.5倍がさらに好ましい。一方、この当該調味料シート1の幅に対する切断容易線3同士の間隔の上限値は、0.8倍がより好ましく、0.7倍以下であることがさらに好ましい。切断容易線3同士の間隔が上記下限値を下回ると、隣接する切断容易線同士で区画される当該調味料シート11の面積が小さくなり、十分な量の調味料成分を含有させることができなくなるおそれがあり、一方、切断容易線3同士の間隔が上記上限値を超えると、隣接する切断容易線同士で区画される当該調味料シート11の面積が大きくなり、含有される調味料成分の量を細かく調整し難くなるため、塩分、糖分又はカロリー等を気にする消費者の要求に応えられなくなるおそれがある。
【0062】
なお、当該調味料シート11における調味料層2の平均厚さ、含水率については、上記第一実施形態における調味料層2の平均厚さ、含水率とそれぞれ同様である。
【0063】
<利点>
当該調味料シート11は、上記第一実施形態の調味料シート1と同様の利点を有するとともに、図3に示すように方形状に形成されているため、比較的短期間の間に使い切ることができる。このため、例えばこの調味料シート11を1枚ごとに個別包装した場合は、開封後に当該調味料シート11が空気と触れる時間を少なくすることができ、当該調味料シート11の調味料層2に含有される調味料成分の変質や品質劣化を抑制し、当該調味料シート11の保存安定性をより向上させることができる。
【0064】
<調味料シート11の製造方法>
当該調味料シート11の製造方法としては、特に限定されず、例えば水と調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する調味料層形成材料を調製する形成材料調製工程と、上記調味料層形成材料を長尺シート体に成形する成形工程と、上記長尺シート体を乾燥する乾燥工程と、上記長尺シート体の短手方向に沿った複数の切断容易線を所定間隔に形成する切断容易線形成工程と、上記成形工程により形成された調味料層を切断する切断工程とを採用することができる。上記形成材料調製工程、成形工程、乾燥工程、切断容易線形成工程及び切断工程は、第一実施形態で用いた形成材料調製工程、成形工程、乾燥工程、切断容易線形成工程及び切断工程をそれぞれ採用することができる。
【0065】
[第三実施形態]
<調味料シート21>
次に、本発明の第三実施形態である調味料シート21について、図4を参酌しつつ以下に説明する。
【0066】
当該調味料シート21は、長尺シート状の調味料層22のみから構成されている。この調味料層22は、三層のマイクロ層22a、22b、22cからなる積層体から構成されており、各マイクロ層22a、22b、22cには調味料成分と水溶性の賦形剤とがそれぞれ含有されている。ここで、各マイクロ層22a、22b、22cには最外層から最内層にかけて異なる調味料成分が含有されており、具体的には、最外層となるマイクロ層22a、22cには同種の調味料成分が含有され、最内層となるマイクロ層22bには、上記最外層のマイクロ層に含有される調味料成分とは異なる種類の調味料成分が含有されている。さらに詳述すると、最外層となるマイクロ層22a、22cには砂糖成分が含有され、最内層となるマイクロ層22bには醤油成分が含有されている。
【0067】
上記マイクロ層22a、22b、22cの平均厚さの下限値としては10μmが好ましく、15μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚さの上限値としては1mmが好ましく、0.8mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。上記マイクロ層22a、22b、22cの平均厚さが上記下限値を下回ると、各マイクロ層を均一に形成することが困難となるおそれがあり、一方、上記平均厚さが上記上限値を超えると、調理鍋等に当該調味料シート21を投入した際に各マイクロ層が溶けにくくなるおそれがある。
【0068】
上記調味料層22の平均厚さの下限値としては、30μmが好ましく、45μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。一方、上記調味料層22の平均厚さの上限値としては3mmが好ましく、2.8mmがより好ましく、2.5mmがさらに好ましい。上記調味料層22の平均厚さが上記下限値を下回ると、十分な量の調味料成分を調味料層22に含有させることができないおそれがあり、一方、上記調味料層22の平均厚さが上記上限値を超えると、調理鍋等に当該調味料シート21投入した際に、当該調味料シート21が溶けにくくなるおそれがある。
【0069】
なお、当該調味料シート21の幅、全長、含水率、切断容易線3及び切断容易線3同士の間隔については、上記第一実施形態における当該調味料シート1の幅、全長、含水率、切断容易線3及び切断容易線3同士の間隔とそれぞれ同様である。また、上記マイクロ層22a、22b、22cが含有する水溶性の賦形剤についても、上記第一実施形態における当該調味料シート1の調味料層2が含有する水溶性の賦形剤と同様である。
【0070】
<利点>
当該調味料シート21は、上記第一実施形態の調味料シート1と同様の利点を有するとともに、上記調味料層22が三層のマイクロ層22a、22b、22cから構成されているため、複数の調味料成分を含有することができる。これにより、特定の料理に用いる複数の調味料成分を1枚の当該調味料シート21に含有させることができるとともに、複数の調味料成分を1回の投入作業で被調理物に添加することができるため調理作業の手間を削減することができる。また、当該調味料シート21の調味料層22は、異なる調味料成分を含有するマイクロ層が最外層から最内層にかけて積層された積層体で形成されているため、当該調味料シート21を調理鍋等に投入した場合には、被調理物に含まれる水分によって調味料層22の最外層に含有される調味料成分から順に溶け出すため、各調味料成分を被調理物へ添加させるタイミングに時間差をつけることができる。具体的には、被調理物に含まれる水分によって最外層に含有される砂糖成分がまず溶けて被調理物に添加された後、最内層に含有される醤油成分が溶けて被調理物に添加される。これにより、いわゆる料理の基本といわれる添加順序である「さしすせそ」の順に各調味料成分を被調理物に添加することができる。
【0071】
また、当該調味料シート21は、複数の調味料成分が一定の比率で配合されているためチェーン店等の各店舗において調理人が異なる場合であっても同じ長さの当該調味料シート21を使用することにより同じ味を再現することができる。
【0072】
<調味料シート21の製造方法>
当該調味料シート21の製造方法としては、特に限定されず、例えば水と調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する調味料層形成材料を調製する形成材料調製工程と、上記調味料層形成材料を長尺シート体に成形する成形工程と、上記長尺シート体を乾燥する乾燥工程と、上記長尺シート体の短手方向に沿った複数の切断容易線を所定間隔に形成する切断容易線形成工程と、上記成形工程により形成された調味料層をロール状に巻回する巻回工程と、上記成形工程により形成された調味料層を切断する切断工程とを採用することができる。
【0073】
上記形成材料調製工程には、各マイクロ層22a、22b、22cに対応したマイクロ層形成材料をそれぞれ調製する工程が含まれている。具体的には、30℃〜90℃に加温した水に調味料成分である醤油成分又は砂糖成分と水溶性の賦形剤とを添加して各マイクロ層形成材料をそれぞれ調製する。
【0074】
また、上記成形工程と上記乾燥工程とを繰り返すことによって上記調味料層22を構成する積層体を形成することができる。具体的には、まず工程紙にマイクロ層22aの材料となるマイクロ層形成材料を塗工して、この塗工されたマイクロ層形成材料を乾燥してマイクロ層22aを形成し、このマイクロ層22aの上面にマイクロ層22bの材料となるマイクロ層形成材料を塗工し、この塗工されたマイクロ層形成材料を乾燥してマイクロ層22bを形成し、さらに、このマイクロ層22bの上面にマイクロ層22cの材料となるマイクロ層形成材料を塗工し、この塗工されたマイクロ層形成材料を乾燥してマイクロ層22cを形成し、三層のマイクロ層22a、22b、22cからなる調味料層22を形成している。なお、塗工方法等については既述の実施形態と同様とすることができる。
【0075】
当該調味料シート21の切断容易線形成工程、巻回工程及び切断工程は、上述の第一実施形態における切断容易線形成工程、巻回工程及び切断工程をそれぞれ採用することができる。
【0076】
[第四実施形態]
<調味料シート31>
次に、本発明の第四実施形態である調味料シート31について、図5を参酌しつつ以下に説明する。
【0077】
当該調味料シート31は、長尺シート状の調味料層22と、この調味料層22の一方の面に剥離可能に積層されている剥離層32とから構成されている。上記調味料層22は、上記第三実施形態における調味料層22と同様である。具体的には、上記調味料層22は三層のマイクロ層22a、22b及び22cからなる積層体から構成されており、各マイクロ層には調味料成分と水溶性の賦形剤とがそれぞれ含有され、各マイクロ層は最外層から最内層にかけて異なる調味料成分が含有されている。さらに詳述すると、最外層となるマイクロ層22a及び22cには砂糖成分が含有され、最内層となるマイクロ層22bには醤油成分が含有されている。
【0078】
上記剥離層32は、調味料シート31の形状を保持するために上記調味料層22の一方の面に剥離可能に積層されるものであり、この剥離層32には、上記調味料層22の切断容易線(図示せず)に対応する位置に、同様の切断容易線(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0079】
上記剥離層32としては、種々のものを採用可能であり、例えば紙、布、不織布、ネット、プラスチックシート、ゴムシート、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当なシート状体に剥離処理を施したもの等が挙げられる。上記剥離処理としては、例えばシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等が挙げられ、この中でもシリコーン処理が好ましい。これにより剥離層32は上記調味料層22との良好な剥離性を有することができ、当該調味料シート31を使用する際に容易に調味料層22から剥離することができる。なお、上記剥離層32の剥離性は、剥離処理に用いる薬剤の種類及び/又はその塗工量等を調節することによって適宜制御することができる。
【0080】
上記剥離層32の平均厚さとしては、特に限定されないが、剥離層32の平均厚さの下限値としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。一方、剥離層32の平均厚さの上限値としては、0.5mmが好ましく、0.3mmがより好ましく、0.1mmがさらに好ましい。上記剥離層32の平均厚さが上記下限値を下回ると、当該調味料シート31の形状を保持できなくなるおそれがあり、また、剥離層32の平均厚さが上記上限値を超えると、剥離層32の剛軟度が大きくなってしまい、剥離作業の困難性をもたらすおれそがある。
【0081】
上記剥離層32の透湿度は、例えば、500g/m・24hr以下であることが好ましく、100g/m・24hr以下であることがより好ましく、50g/m・24hr以下であることがさらに好ましい。透湿度が上記値より大きいと、調味料層22に含有される調味料成分が水分を吸収して変質するおそれがある。ここで、この透湿度はJIS Z0208カップ法に準拠して温度40℃、相対湿度90%で測定した測定値である。
【0082】
上記剥離層32の上記調味料層22に対する剥離強度は、0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましく、0.03N/50mm以上0.7N/50mm以下であることがより好ましく、0.05N/50mm以上0.5N/50mm以下であることがさらに好ましく、0.07N/50mm以上0.2N/50mm以下であることが特に好ましい。剥離強度が上記下限値を下回ると、調味料層22と剥離層32との接着力が小さ過ぎて調味料層22が剥離層32から不用意に剥離するおそれがあり、一方、剥離強度が上記上限値を超えると、剥離層32を調味料層22から剥離する際に要する力が大きくなり剥離作業が困難となるおそれがある。なお、この剥離層32の調味料層22に対する剥離強度は、JIS K6854 2:1999に準拠し、引張試験器を用いて剥離層32を剥離速度300mm/分、剥離角度180°、測定巾50mmで調味料層22から剥離して測定した測定値である。
【0083】
なお、当該調味料シート31における調味料層22の幅、全長、切断容易線及び切断容易線3同士の間隔については、上記第一実施形態における当該調味料シート1の調味料層2の幅、全長、切断容易線及び切断容易線3同士の間隔とそれぞれ同様である。また、上記マイクロ層22a、22b及び22cの厚み、含水率、含有する水溶性の賦形剤については、上記第三実施形態の当該調味料シート21におけるマイクロ層22a、22b及び22cの厚み、含水率、含有する水溶性の賦形剤とそれぞれ同様である。
【0084】
<利点>
当該調味料シート31は、ロール体から所望の長さだけ調味料層22と剥離層32とを引き出し、切断容易線に沿って剥離層32ごと上記調味料層22を切断した後、この切断片から剥離層32を剥離して、調味料層22のみを被調理物に添加して用いられる。当該調味料シート31は、上記第三実施形態における調味料シート21と同様の利点を有するとともに、さらに以下の利点を有する。つまり、当該調味料シート31は、調味料層22の一方の面に剥離可能に積層される剥離層32を備えているため、この剥離層32が当該調味料シート31の形状を保持し、調味料シート31の破損を防止するとともに、当該調味料シート31はロール体であるため、調味料層22と調味料層22との間に上記剥離層32が挟まれる状態となり、調味料層22同士が接着することを防止することができる。また、この剥離層32は、上記調味料層22と剥離可能に積層されているため当該調味料シート31を使用する際には容易に剥離することができる。
【0085】
<調味料シート31の製造方法>
当該調味料シート31の製造方法は、特に限定されず、例えば上記第三実施形態で用いた製造方法の成形工程において、工程紙の代わりに剥離層32を用いて、この剥離層32の上に各マイクロ層を順次積層する方法等が挙げられる。
【0086】
また、上記方法以外には、例えば上記第三実施形態の製造方法で得られた調味料層22と、別途用意した剥離層32とを積層接着させて当該調味料シート31を製造する方法が挙げられる。
【0087】
[その他の実施形態]
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0088】
複数の切断容易線は、上記各実施形態では一定間隔で形成されているが、切断容易線の間隔は所定間隔であればよく、例えば2cm間隔、3cm間隔、4cm間隔の周期で切断容易線を配設することも可能である。また、上記各実施形態において、上記切断容易線は複数の孔によって形成され、この孔は調味料層を貫通しているが、この孔は調味料層を貫通していなくてもよい。また、上記切断容易線はこのような複数の孔から構成される以外にも、溝であってもよく、例えば図6(a)に示すように、調味料層42aの一方の面に形成されたV字型の溝からなる切断容易線43aでもよいし、図6(b)に示すように、調味料層42bの両面にV字型の溝が形成された切断容易線43bでもよい。これらの切断容易線よってもハサミ等の切断器具を特に用いることなく当該調味料シートを容易に手で切断することができる。さらに、上記切断容易線は、例えば上記調味料層の外面に印刷された線でもよい。この線に沿って当該調味料シートをハサミ等で切断することにより、所望の長さの当該調味料シートを得ることができる。
【0089】
また、上記剥離層32は、上記第四実施形態では上記調味料層22の一方の面に積層されているが、上記調味料層22の両面に積層されていても良い。このように、剥離層32が上記調味料層22の両面に積層されていることにより、当該調味料シート31を取り扱う際に、調味料成分が調理人の手等に直接接触することを防止することができ、衛生性を向上させることができる。さらに、上記剥離層32には切断容易線が形成されていなくてもよい。このように剥離層32に切断容易線が形成されていないことにより、使用の際には当該調味料シート31から調味料層22のみを切り取ることができ、剥離層32がゴミとして散乱することを防止することができる。
【0090】
また、上記第三実施形態及び第四実施形態において、調味料層は三層のマイクロ層からなる積層体によって構成されているが、この積層体は4層以上のマイクロ層から構成することも可能である。積層されるマイクロ層を増やすことにより、より多くの種類又は量の調味料成分を当該調味料シートに含有させることができる。
【0091】
さらに、当該調味料シートは外面に凹凸面が形成されていてもよい。この凹凸面は、例えばエンボス加工によって形成することができる。このように、当該調味料シートの外面に凹凸面が形成されることにより当該調味料シートの表面積が増えるため、当該調味料シートを鍋等に投入した場合、被調理物に含まれる水分と触れる面積が増加し、調味料成分が溶け出す時間を早めることができる。なお、上記凹凸面は、四角柱、三角錐若しくは四角錐等の凹部から構成することができる。また、この凹凸面は、断面半円状の複数の凸条体から構成することも可能である。当該調味料シートの外面に複数の凹凸形状を形成する方法としては、例えば当該調味料シートを成形した後、乾燥させつつ複数の凹凸形状を有する金型等で圧着して形成する方法や、上記剥離層又は成形工程で用いる工程紙に予め上記凹凸形状を転写しておき、これらの上に調味料層形成材料を塗布する方法等が挙げられる。
【0092】
また、上記第一実施形態の説明において一区画の調味料成分が料理一人分の三分の一の量である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば一区画の調味料成分が料理一人分の量である調味料シートも、本発明の意図する範囲内である。このように、調味料層の一区画に含有される調味料成分が料理一人分の量に設けられているものであっても、従来の一食分に対応して設けられた調味料シートと異なり、複数人数分の調理に容易に対応できるので、当該調味料シートは汎用性が高いという利点を有する。
【0093】
なお、当該調味料シートは、一区画に含まれる調味料成分が料理一人分の整数分の一の量であることが好ましい。これにより、上記整数倍の区画の切断片を用いて一人分の料理を調理したり、この一人分の切断片の整数倍の長さの切断片を用いて複数人数分の調理に利用することができ、さらには一人分の切断片よりも短い切断片を用いて味が薄目の料理を調理したり、逆に一人分の切断片よりも長い切断片を用いて味が濃い目の料理を調理することができ、より汎用性に優れるという利点を有する。
【実施例】
【0094】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきものではないことはもちろんである。
【0095】
[実施例1]
調味料層形成材料として、水50質量部と醤油100質量部とを約40℃に加温して攪拌しつつ、これに賦形剤としてプルラン(重量平均分子量約200,000)(商品名『PI20』、株式会社林原商事販売)10質量部を添加・混合し、次いで、カラメル色素1質量部を添加した。得られた調味料層形成材料を、コンマコーターを用いて工程紙上に塗工し、含水率約30%まで乾燥させた後、隣接する切断容易線の間隔が4cmとなるようにミシン目を形成した。その後、温度80〜85℃で乾燥して当該調味料シートを得た。この調味料シートの厚さは約500μm、水分含量は3%(w/w)、隣接する切断容易線で切断した調味料シート1片(幅7cm×長さ4cm)当たりの塩分量は約0.5gだった。この切断後の調味料シート1片(幅7cm×長さ4cm)を約30℃の水1Lを入れたビーカーに浸漬し攪拌したところ約15秒で完全に溶解した。
【0096】
[実施例2]
調味料層が3層のマイクロ層からなる積層体で構成されおり、各マイクロ層に含有される調味料成分が最外層から最内層に向かって砂糖、醤油の順である(シートの一方の面から他方の面に向かって調味料成分が砂糖、醤油、砂糖の順になるように各マイクロ層が積層されている)以外は上記実施例1と同様にして実施例2の調味料シートを得た。この調味料シートの厚さは約1400μm、水分含量は4%(w/w)、切断後の調味料シート1片(幅7cm×長さ4cm)当たりの塩分量は約0.5g、糖分は約2gだった。この調味料シート1片(幅7cm×長さ4cm)を約30℃の水1Lを入れたビーカーに浸漬し、攪拌したところ約30秒で完全に溶解した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明の調味料シートは、被調理物に所望量の調味料成分を容易且つ的確に添加することができ、汎用性に富むため様々な場面や目的に応じて好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 調味料シート
2 調味料層
3 切断容易線
11 調味料シート
21 調味料シート
22 調味料層
22a マイクロ層
22b マイクロ層
22c マイクロ層
31 調味料シート
32 剥離層
41a 調味料シート
42a 調味料層
43a 切断容易線
41b 調味料シート
42b 調味料層
43b 切断容易線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する長尺シート状の調味料層を備え、
この調味料層に、短手方向に沿った複数の切断容易線が所定間隔で形成されている調味料シート。
【請求項2】
上記切断容易線が、短手方向に沿って形成された溝又は複数の孔である請求項1に記載の調味料シート。
【請求項3】
上記調味料層が、三層以上のマイクロ層からなる積層体であり、
上記マイクロ層に、最外層から最内層にかけて異なる調味料成分が含有されている請求項1又は請求項2に記載の調味料シート。
【請求項4】
上記マイクロ層に、砂糖、塩、酢、醤油及び味噌の何れか一つの調味料成分が含有され、
上記マイクロ層が含有するそれぞれの調味料成分が、最外層から最内層にかけて砂糖、塩、酢、醤油、味噌の順である請求項3に記載の調味料シート。
【請求項5】
上記調味料層の平均厚さが10μm以上3000μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の調味料シート。
【請求項6】
上記調味料層のみからなる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の調味料シート。
【請求項7】
上記調味料層に剥離可能に積層された剥離層をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の調味料シート。
【請求項8】
上記水溶性の賦形剤として、増粘安定剤が用いられている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調味料シート。
【請求項9】
水と調味料成分と水溶性の賦形剤とを含有する調味料層形成材料を調製する形成材料調製工程、
上記調味料層形成材料を長尺シート体に成形する成形工程、
上記長尺シート体を乾燥する乾燥工程、及び
上記長尺シート体の短手方向に沿った複数の切断容易線を所定間隔に形成する切断容易線形成工程を備える調味料シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66433(P2013−66433A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207770(P2011−207770)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】