説明

調圧弁

【課題】高圧仕様と低圧仕様に容易に使い分けができる調圧弁を提供する。
【解決手段】ばね筒14に螺合された握り16をねじ込むことによって、ばね筒14内のばね12を圧縮させて該ばね12に荷重を生じさせ、この荷重を弁6に作用させつつ該弁6と弁座4の間に液体を通過させて圧力を生じさせるとともに、握り16のねじ込み量の所定間隔毎に握り16が係止されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定可能な調圧弁において、弁座4の表裏面の開口径D1、D2が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの吐出部等に取り付けられて、ポンプの吐出圧の調圧等に用いられる調圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すようなダイヤル式の調圧弁が知られている(例えば、特許文献1、2参照。
この調圧弁においては、ばね筒61に螺合された握り62を回転させて握り62をばね筒61に対して下方に移動させると、握り62に固定されたボルト63によりばね上64を通して圧縮コイルばね65が圧縮され、圧縮コイルばね65の圧縮により生じたばねの荷重がばね下66および弁棒67を通して弁68に作用し、弁68を弁座69に押圧する。そして、ポンプから吐出された液体が弁68を押し上げて弁68と弁座69との間の間隙を通過することにより、ポンプに圧力が発生する。弁座69の穴69aは、円柱状に貫通する穴であり、穴69aの表裏面の開口径(直径)Dは同一である(図5参照)。
【0003】
そして、握り62の内側に周方向に間隔をおいて形成された複数本の縦溝71のうちの何れかに、ばね72に付勢された球体73が係合されている。また、握り62の下部外周面には、前記縦溝71に合わせて例えば0.5[MPa]刻みで圧力値0〜5.0[MPa]が表示されている。また、ばね筒14には、握り62を回転させて前記圧力表示に合わせるための圧力指示部材75が固定されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3685243号公報
【特許文献2】特許第3976306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調圧弁に生じる圧力は、弁座69の穴69aの弁68側の開口径Dと圧縮コイルばね65による荷重とによって決定される。そして、握り62を回転させてばね筒61に対して握り62をねじ込むと、握り62は縦溝71の位置毎に係止され、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定されることになる。この調圧弁の場合には、例えば0.5[MPa]毎の圧力設定となるので、0.5[MPa]より細かい調圧ができないため、低圧仕様とするためには、新たな調圧弁に代える必要があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、高圧仕様と低圧仕様に容易に使い分けができる調圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の調圧弁は、ばね筒(14)に螺合された握り(16)をねじ込むことによって、前記ばね筒(14)内のばね(12)を圧縮させて該ばね(12)に荷重を生じさせ、この荷重を弁(6)に作用させつつ該弁(6)と弁座(4)の間に液体を通過させて圧力を生じさせるとともに、前記握り(16)のねじ込み量の所定間隔毎に該握り(16)が係止されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定可能な調圧弁において、前記弁座(4)の表裏面の開口径(D1、D2)が異なっていることを特徴とする。
また、本発明において、前記握りの前記各係止位置に対応する2通りの圧力表示手段が設けられていることが好ましい。
【0008】
なお、上記における括弧内の符号は、図面において対応する要素を便宜的に表記したものであり、したがって本発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは、「特許請求の範囲」の記載についても同様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、握りのねじ込み量の所定間隔毎にこの握りが係止されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定可能な調圧弁において、弁座の表裏面の開口径が異なっているので、弁座の表裏面を逆にするだけで、高圧仕様と低圧仕様に簡単に使い分けすることができる。また、高圧仕様から低圧仕様に変更した場合には、より細かな間隔の圧力設定を行うことができる。
さらに、握りの各係止位置に対応する2通りの圧力表示を設けるようにすれば、高圧仕様と低圧仕様との切り替えを行っても、この圧力表示を見ながら圧力設定を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る調圧弁を示す断面図であり、図2は、弁座の向きを変更した状態の断面図であり、図3は、弁座の拡大断面図である。
図1に示すように、この調圧弁は、ダイヤル式の調圧弁である。この調圧弁は、ボディ1を備えており、このボディ1にはポンプの吐出部(図示せず)に連通される流入口2と、大気に連通される余液口3とが設けられている。流入口2には弁座4が配設されており、この弁座4の外周にはOリング5が設けられ、弁座4とボディ1との間およびボディ1とポンプの吐出部との間をシールしている。
【0011】
弁座4は、穴4aの表裏面の開口の開口径が異なっており、一方の開口径D1が他方の開口径D2よりも大きく設定されている(図3参照)。弁座4の外周面の中間部には円環状の鍔部4bが形成されている。弁座4の鍔部4bの両側(表裏面側)の外径および長さは同じ径および同じ長さに設定されており、したがって弁座4の外形は長さ方向(弁座4の軸線方向)おいて真ん中を中心に線対称に形成されている。
【0012】
この弁座4は、次のようにして設置されている。すなわち、ボディ1の流入口2のポンプの吐出部側に、流入口2よりも大径でかつポンプの吐出部側が開放されている円環状の溝部31が形成されており、弁座4は鍔部4bが溝部31内に挿入され、溝部31を形成するボディ1の壁面とポンプの吐出部側の部材(図示せず)との間に挟持される。このとき、弁座4の鍔部4bの一方の側(図1においては開口径D2側)が流入口2に挿入されるとともに、他方の側がボディ1の下面から突出しポンプの吐出部に挿入される。この弁座4は、弁座4の外形が長さ方向(表裏面方向)おいて線対称に形成されているので、表裏面を逆にしても組み込むことができるようになっている。
【0013】
また、Oリング5は、溝部31内の弁座4の鍔部4bの外周に配置されている。ボディ1の下面(ポンプの吐出部側の面)は、平面に形成されており、この下面がポンプの吐出部に当接されて、ボディ1がボルト(図示せず)によりポンプの吐出部に接合される。
【0014】
弁座4には球状の弁6が就座されており、この弁6の上部には弁棒7の下端が当接されている。弁棒7は、該弁棒7の外側に嵌挿されたパッキン8、ベローズ9および弁サック10によりガイドされており、これにより弁棒7のがたつきが防止されている。弁棒7の上端部には、ばね下11の下端中央部の凹部に嵌入されている。
【0015】
ばね下11の上端は、圧縮コイルばね(ばね)12の下端を受けており、圧縮コイルばね12の上端は、ばね上13に当接されている。これらばね下11、圧縮コイルばね12およびばね上13は、ボディ1の上端に接合された円筒状のばね筒14内に上下移動自在に収容されている。
【0016】
ばね筒14の上端部外周面には、雄ねじ15が形成されており、この雄ねじ15に握り16の内周面に形成された雌ねじ51が螺合されることにより、握り16がばね筒14にこのばね筒14の上部を覆うようにして取り付けられている。握り16は、概略有底筒状に形成されており、上端部には把持し易いように大径でかつ周方向に凹凸が形成された握り部52が設けられている。雌ねじ51は、握り16の上部の内周面に形成されている。握り16の上端部の中央部(底部)には六角穴付きボルト(ボルト)17が螺合されており、このボルト17の下端がばね上13の上端に当接されている。ボルト17の握り16に対する螺合位置を変えることにより、ばね上13に対する当接位置を変えることができるようになっている。握り16の上面には、キャップ18が嵌合されて固定されており、このキャップ18によりボルト17および握り部52の上面を含む握り16の上面が覆われている。
【0017】
握り16の下部は拡径されており、その拡径部53の内周面には、複数本の縦溝20が周方向に間隔をおいて形成されている。縦溝20の横断面形状は円弧状に形成されている。一方、ばね筒14の外周面の上下方向中間部には、ばね筒14の径方向外方に突出する筒部22が形成されており、この筒部22内に球体23が圧縮コイルばね(ばね)24により筒部22内から外方に突出するように付勢されて収容されている。そして、この球体23がばね筒14の複数本の縦溝20のうちの何れかに落ち込み、ばね24により当該縦溝20に押し付けられて係合することにより、握り16がばね筒14に対して係止(仮止め)されるようになっている。したがって、握り16をばね筒14に対してねじ込むと、握り16がばね筒14の周りを周方向に回転し、そして握り16が各縦溝20の位置で係止されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定できるようになっている。縦溝20、球体23およびばね24は、握り16の係止手段を構成している。
【0018】
また、ばね筒14の拡径部53の外周面には、各縦溝20に対応する位置に圧力表示26が設けられている。この圧力表示26は、高圧仕様と低圧仕様の2通りの圧力表示とされている。圧力表示26の高圧仕様のものは、例えば圧力値[MPa]を示す数値として0.5刻みで0から5.0まで表示され、低圧仕様のものは、例えば圧力値[MPa]を示す数値として0.3刻みで0から3.0まで表示されている。また、ばね筒14の下端部の外周面には、握り16を回転させて圧力表示26を合わせるための細長い板状の圧力指示部材27の基端部がビス28により固定されている。この圧力指示部材27の先端部は、球体23の位置に対向するように位置している。
【0019】
また、ボディ1には、ポンプの吐出部と余液口3とを連通するバイパス通路61が設けられている。このバイパス通路61の途中には、レバー62により開閉する開閉弁63が介在されている。この開閉弁63は、通常は閉状態にされているが、作業中に圧力を一気に抜く場合やポンプ始動時に空気抜きを行う場合などに開状態にされて、バイパス通路61を通してポンプの吐出側と予液口3とを連通させるようになっている。バイパス通路61のポンプの吐出部側の開口の周囲には、Oリング65が設けられ、ボディ1とのポンプの吐出部との間をシールしている。
【0020】
この調圧弁においては、加圧状態になるように、握り16の雄ねじ15をばね筒14の雌ねじ51に対してねじ込み、握り16をばね筒14の周りを周方向に回転させると、握り16がばね筒14に対して下方に移動し、握り16に固定されたボルト17がばね筒14に対して下方に移動する。ボルト17が下方に移動すると、ばね上13を通して圧縮コイルばね12が圧縮され、圧縮コイルばね12の圧縮により生じたばねの荷重がばね下11および弁棒7を通して弁6に作用し、弁6を弁座4に押圧する。そして、ポンプから吐出された液体が弁6を押し上げて弁6と弁座4との間の間隙を通過することにより、ポンプに圧力が発生する。
【0021】
そして、この調圧弁では、このように握り16をばね筒14に対してねじ込み、握り16をばね筒14の周りを周方向に回転させると、ばね24により付勢された球体23がばね筒14の各縦溝20に落ち込み、ばね24により各縦溝20に押し付けられて、握り16が各縦溝20の位置で係止(仮止め)されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定される。各係止位置の圧力値は、例えば0.5MPa刻みで0〜5.0MPaまで段階的に加圧される。
【0022】
一方、握り16の雄ねじ15をばね筒14の雌ねじ51に対して緩めて、握り16をばね筒14の周りを周方向に逆回転させると、握り16がばね筒14に対して上方に移動し、握り16に固定されたボルト17がばね筒14に対して上方に移動する。ボルト17が上方に移動すると、圧縮コイルばね12の荷重が小さくなってゆく。
そして、この調圧弁では、このように握り16をばね筒14に対してねじを緩めて、握り16をばね筒14の周りを周方向に逆回転させると、握り16が各縦溝20の位置で係止(仮止め)されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に減圧される。
【0023】
この調圧弁においては、図1の高圧仕様の場合には、弁座4の表裏面のうち、穴4aの開口径が小さい側(開口径D2側)の開口に弁6が押し付けられるようになっている。この高圧仕様の状態では、前述のように、握り16が各縦溝20の位置で係止(仮止め)されるのに対応して、例えば0.5MPa刻みで0〜5.0MPaに段階的に圧力設定できる。
【0024】
そして、この調圧弁をポンプの吐出部から取り外し、弁座4の表裏面を入れ換えてから、調圧弁をポンプの吐出部に再び取り付けて、図2の低圧仕様の状態にすると、弁座4の穴4aの開口径が大きい側(開口径D1側)の開口に弁6が押し付けられるようになる。この低圧仕様の状態では、高圧仕様の状態で、握り16の各縦溝20の係止位置に対応して0.5MPa刻みで0〜5.0MPaまで段階的に圧力設定されていたのに対し、握り16の各縦溝20の係止位置に対応して、例えば0.3MPa(0.5MPaよりも細かい刻み(間隔))で、かつ0MPaから始まり、最高圧力が3.0MPa(5.0MPaよりも低い圧力の最高圧力)まで、段階的に圧力設定できる。すなわち、低圧仕様の状態では、高圧仕様の状態と同じ握り16の各縦溝20の係止位置に対応して、高圧仕様の状態よりも細かな刻み(間隔)で、高圧仕様の状態よりも低い最高圧力まで段階的に圧力設定ができる。
【0025】
このように、握り16のねじ込み量の所定間隔毎にこの握り16が係止されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定可能になっている構造の調圧弁において、弁座4の表裏面の開口径D1、D2が異なっているので、弁座4の表裏面を逆にして組み込むだけで、高圧仕様と低圧仕様に簡単に使い分けすることができる。したがって、作業者が用途に応じて圧力仕様の異なる2種類の調圧弁を準備する必要がなくなる。さらに、高圧仕様から低圧仕様に変更した場合には、より細かな間隔の圧力設定を行うことができる。
また、握り16の各係止位置に対応する2通りの圧力表示26が設けられているので、高圧仕様と低圧仕様との切り替えを行っても、この圧力表示26を見ながら圧力設定を円滑に行うことができる。
【0026】
なお、前述の実施の形態では、圧力表示として圧力値を表示するようにしたが、圧力表示としてはこれに限らず、圧力を段階的に表示することができるものであればよく、例えば1段階、2段階等の段階表記や、さらには記号、図等で表示してもよい。
また、前述の実施の形態では、高圧仕様と低圧仕様に合わせて、2通りの圧力表示をするようにしたが、1通りの圧力表示にして高圧仕様および低圧仕様に使用するようにしてもよい。この場合には、圧力値そのものの表示以外の表示をするのが好ましい。
【0027】
また、前述の実施の形態では、握り16側の各縦溝(係合溝)20と、ばね筒14側の係合部材としての球体23、ばね(付勢手段)24とにより握り16の係止手段を構成したが、握り16の係止手段は握り16のねじ込み量の所定間隔毎にこの握り16を係止する構成のものであればよく、例えば、握り16の内周面に球体23およびばね(付勢手段)24を設け、ばね筒14の外周面に各縦溝20を設けるようにしてもよく、さらには各縦溝20に係合部材としてのばね板等を直接押し付けるような構成などにしてもよい。
また、前述の実施の形態では、調圧弁を縦向きに設置したが、横向きや斜め向き等の他の向きに設置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る調圧弁を示す断面図である。
【図2】図1の調圧弁において弁座の向きを変更した状態の断面図である。
【図3】弁座の拡大断面図である。
【図4】従来の調圧弁を示す断面図である。
【図5】図4の弁座を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
4 弁座
6 弁
12 圧縮コイルばね(ばね)
14 ばね筒
16 握り
D1、D2 開口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね筒(14)に螺合された握り(16)をねじ込むことによって、前記ばね筒(14)内のばね(12)を圧縮させて該ばね(12)に荷重を生じさせ、この荷重を弁(6)に作用させつつ該弁(6)と弁座(4)の間に液体を通過させて圧力を生じさせるとともに、前記握り(16)のねじ込み量の所定間隔毎に該握り(16)が係止されることにより、各係止位置に対応する圧力に段階的に設定可能な調圧弁において、前記弁座(4)の表裏面の開口径(D1、D2)が異なっていることを特徴とする調圧弁。
【請求項2】
前記握り(16)の前記各係止位置に対応する2通りの圧力表示が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の調圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192048(P2009−192048A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36030(P2008−36030)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】