説明

調理器具の蓋

【課題】調理器具の蓋がガラスであっても水滴でくもり、視認性が下がる。
【解決手段】蓋100は調理器具に用いられ、強化ガラスによる蓋本体10と、蓋本体10の縁を保護および強化する金属リング12と、上部につけられた把手14と、把手14を蓋本体10にネジで固定する台座16を備える。蓋本体10の内面10aは金属酸化物による薄い膜がコーティングされ、いわゆるLow−Eガラスとなっている。そのため内面10aには微小な凹凸が生じ、親水性を有する。蓋本体10には複数の水滴誘導要素である突起20が90度ごとに4個所設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理器具の蓋、とくに透明な蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製の鍋蓋が普及している。ガラス製の蓋の場合、いちいち蓋をとらなくても調理具合がわかるため、熱のロスが少なく、調理時間も短くなる。最近ではおでんを置くコンビニエンスストアーもあり、中の商品を見せる意味でもガラスの蓋は有利である。例えば、特許文献1にも強化ガラスの鍋蓋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−41628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理は加熱を伴い、加熱により具材から湯気が出る。この湯気が蓋の内面に付着すると、ガラスがくもったり水滴がつき視認性が悪くなる。このため、たとえばコンビニエンスストアーによっては蓋を外してしまうこともあり、衛生面、省エネ面で課題がある。家庭での使用においても、もちろん鍋の中はよく見えるほうが好ましい。
【0005】
本発明はそうした観点からなされたものであり、その目的は、具材から湯気がでても視認性を確保しやすい蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は調理器具の蓋に関し、この蓋の本体の内面に親水処理を施すとともに、当該内面の所定個所に水滴誘導要素を設けた。「蓋の本体」は蓋がその機能を発揮する領域をいい、一例として、ガラスの蓋の場合、そのガラス部分をいい、ガラスを囲繞する金属リング等がある場合はそれを含まない趣旨である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓋の内面の親水処理により、付着した水が薄く広がって水膜となりやすい。そのためくもりや水滴による問題が減り、通常のガラスの蓋よりも視認性が高くなる。しかし、それでも水が貯まるにしたがって水滴は発生し、視認性は低くなる。そこで蓋内面の所定個所の水滴誘導要素に水を集めて効率的に滴下させ、視認性を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は実施例1に係る蓋の側面図、図1(b)は同上面図である。
【図2】実施例2に係る蓋の上面図である。
【図3】実施例2において別の境界線を示す図である。
【図4】実施例3に係る蓋の上面図である。
【図5】実施例4に係る蓋の上面図である。
【図6】実施例5に係る蓋の上面図である。
【図7】実施例6に係る蓋の上面図である。
【図8】実施例7に係る蓋の上面図である。
【図9】実施例8に係る蓋の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例1.
図1(a)は実施例1に係る蓋100の上面図、図1(b)は同側面図である。蓋100は鍋やホットプレートなどの調理器具に用いられ、ここでは円形である。蓋100は強化ガラスによる蓋本体10と、蓋本体10の縁を保護および強化する金属リング12と、上部につけられた把手14と、把手14を蓋本体10にネジ(図示せず)で固定するために蓋本体10に対して把手14と反対側に設けられたネジの台座16を備える。蓋本体10の内面10aは金属酸化物、具体的にはSnOによる薄い膜がコーティングされ、低放射ガラスとなっている。そのため内面10aには微小な凹凸が生じ、親水性を有する。さらに、低放射性能によって調理器具の蓄熱性能が向上し、省エネ効果も得られる。
【0010】
さらに蓋本体10には複数の水滴誘導要素である突起20が上から見て90度ごとに4個所設けられている。突起20は蓋本体10の親水加工よりも後の工程で形成される。この部分は水滴が伝わればよいため、ガラスや樹脂など素材は広く選びうるが、目立たない外観のためには蓋本体10同様透明のほうが望ましい。突起20は円錐形で、下が尖っているため水切り効果が高い。
【0011】
以上の蓋100を利用して調理をする際、発生する水蒸気が内面10aにつく。内面10aは親水性をもつため水蒸気はべったりと水膜状になり、くもりになりにくい。このため蓋100は視認性を確保しやすくなる。さらに、水膜状に貯まった水は突起20に導かれて速やかに調理器具内に滴下する。水膜が厚くなるとレンズのように作用して視認性が悪くなったり、水滴が発生しはじめるが、突起20によりそうした事態を軽減することができる。
【0012】
実施例2.
図2は実施例2に係る蓋100の上面図である。実施例1と同等の構成には同じ符号を与え適宜説明を略す。以下の実施例においても同様とする。
【0013】
この実施例では、突起20が所定の境界線22の内部に設けられている。ここで境界線22は蓋本体10の半径方向の半分の個所である。図1(a)からもわかるとおり、蓋本体10の内面10aは把手14に近づくほど水平に近づき、逆に金属リング12に近づくほど傾斜がつく。傾斜があれば水はある程度勝手に流れてくれるが、水平に近い領域では水滴が貯まりやすく、視認性を損なう。そのためこの実施例では、蓋本体10の半径方向で半分の位置より内側に突起20を設け、内側に比較的多数発生する水滴を速いタイミングで滴下させ視認性を確保している。
【0014】
図3は別の境界線22の例を示す。内面10aは途中から曲率が変わっており、金属リング12に近づくとある個所で曲率が大きくなっている。同図の境界線22がその変化点を結んでできる円である。この場合も把手14に近い領域のほうが水滴の影響を受けやすいため、やはり図2のごとく境界線22より内側の領域に突起20を設ければよい。
【0015】
実施例3.
図4は実施例3に係る蓋100の上面図である。ここでは水滴誘導要素が点状の突起20ではなく線状突部30になっている。線状突部30は180度離れてふたつ、水滴を流す方向、すなわち把手14から金属リング12へ向けて設けられている。線状突部30も蓋本体10の親水加工より後の工程で内面10aに付着させる。素材は突起20同様である。図示しないが、線状突部30の断面は図1(a)の突起20のごとく下向きに尖ると効果的である。この実施例では突起20よりも広い領域に対して水滴の誘導が可能となる。
【0016】
実施例4.
図5は実施例4に係る蓋100の上面図である。実施例3では蓋本体10に線状突部30を直接付着させたが、ここでは台座16に設けている。すなわち、台座16には180度離れた個所に透明なふたつの線状突部30が取り付けられている。これら線状突部30は台座16が把手14とともに蓋本体10に取り付けられる際、内面10aに沿うよう予め曲げ加工されているか、素材の弾力性で曲がるものとする。いずれにしても、取付後は線状突部30が内面10aに密着する構成とする。この実施例によれば、蓋本体10に線状突部30を付ける後工程が不要となる。なお、線状突部30は台座16と最初から一体成形されてもよい。
【0017】
実施例5.
図6は実施例5に係る蓋100の上面図である。実施例4と違い、ここでは線状突部30を金属リング12に取り付けている。図示しないが、金属リング12は蓋本体10の端部をコの字状に囲繞し、かしめ固定される。その際、線状突部30の端部も共締めにすることで線状突部30を金属リング12に取り付けることができる。その際、共締めしたときに線状突部30が内面10aを密着して沿うよう線状突部30を予め曲げ加工するか、線状突部30がその弾力性で曲がるようにする。この実施例にも実施例4同様の効果がある。
【0018】
実施例6.
図7は実施例6に係る蓋100の上面図である。いままでは蓋100が円形だったが、ここでは非円形で、角の丸い長方形とする。ここでは把手14と金属リング12の距離が最短となる個所、すなわち把手14から蓋本体10の長辺の中心に向かう方向に線状突部30を設けている。この向きは水が落ちる最短距離であり、幾何学でいう最速降下曲線に沿っている。この曲線上に線状突部30を設けて水滴を迅速に流すことで視認性を高めることができる。
【0019】
実施例7.
図8は実施例7に係る蓋100の上面図である。ここでは実施例6の線状突部30に加え、把手14から蓋本体10の短辺の中心に向かう方向に線状突部30を追加している。実施例6では蓋本体10全体としての最速降下曲線を考慮したが、それは2本しかない。そのため、蓋本体10の短辺側についてもその部分だけを考えたときに定まる最速降下曲線を考慮することで、短辺側でも水滴の流れを促進することができる。
【0020】
実施例8.
図9は実施例8に係る蓋100の上面図である。実施例7では把手14から短辺と長辺それぞれの中心に向けて線状突部30を設けたが、ここでは把手14から蓋本体10の対角線方向に4つの線状突部30を設けている。実施例7はもともと速く水滴が降下する個所を対象としたが、ここでは逆に、傾斜が浅く水滴が流れにくい個所に線状突部30を設けている。実施例7と本実施例のいずれが効果的かは蓋本体10の形状、水滴発生状況等にもよるため、適宜実験で選択すればよい。いずれにしても、実施例7ないし本実施例は線状突部30がない場合に比べ、視認性を向上させることができる。
【0021】
変形例
実施例1では突起20を90度ずつの4個所としたが、角度と個数は任意である。同じ角度で半径方向の違う場所に複数個の突起20を設けてもよい。ほかの実施例における線状突部30についても同様である。
【0022】
実施例2では境界線22の内側に突起20を設けたが、外側でもよい。その場合、水滴が比較的速く流れる個所をさらに促進することで、境界線22の外側の視認性をより高めることができる。とくに、調理器具の利用者の視線が境界線22よりも外側を通る場合、この方法は有利である。ほかの実施例においても、突起20ないし線状突部30を境界線22の内側または外側に設けることができる。その場合、それぞれの実施例の効果を足した効果を得ることができる。
【0023】
実施例4と5ではそれぞれ線状突部30を把手14ないし金属リング12から延ばしたが、それらを組み合わせ、線状突部30を把手14と金属リング12の両方に渡るものとしてもよい。例えば、実施例5のようにまず金属リング12と蓋本体10を接合する際、線状突部30の一端をかしめ、次に台座16と把手14をネジ留めする際、線状突部30の他端を台座16と蓋本体10の間に挟持せしめてもよい。または、実施例4のごとく、最初から台座16に線状突部30が設けられている場合は、その線状突部30の他端を金属リング12と蓋本体10の接合の際にかしめ固定してもよい。いずれの場合も、線状突部30が両持ちの状態となり取付の強度と位置決めの精度が増す。
【0024】
実施例6から8において、線状突部30を蓋本体10に付ける代わりに、実施例4ないし5のごとく、把手14ないし金属リング12から延ばしてもよい。その場合、それぞれの実施例の効果を足した効果を得ることができる。
【0025】
各実施例では親水性を得るためにSnO膜付きの低放射ガラスを採用した。しかし、親水性を得るにはガラス表面が粗面化処理されていれば足りるため、たとえば、TiO膜(光触媒膜)付きのガラスやAR膜(反射防止膜)付きのガラスでもよい。ただし、調理器具内の保温効果まで求める場合はSnO膜付きのガラスが望ましい。
【0026】
いずれの実施例でも、水滴誘導要素は突状であった。しかし、溝状などほかの形状であってもある程度効果は得られ、必ずしも突状である必要はない。平坦な領域において曲率が急に大きくなるような特異点を設けたとき、水滴が誘導されると考えられる。溝状の場合、蓋本体10を形成する一次加工の段階で溝を設けることができ、工数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0027】
10 蓋本体、 12 金属リング、 14 把手、 20 突起、 22 境界線、 30 線状突部、 100 蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に親水処理を施すとともに、内面の所定個所に水滴誘導要素を設けたことを特徴とする調理器具の蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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