説明

調理器具用衛生シートおよび同シートよりなる袋

【課題】
安全性が極めて高く、しかも調理器具が乾燥した状態で十分な殺菌・除菌作用を得ることができ、さらには水で洗っても殺菌・除菌作用が低下するおそれがなくて衛生的に保つことのできる調理器具用衛生シートおよび同シートよりなる袋を提供する。
【解決手段】
合成樹脂繊維を含有する不織布の前記合成樹脂繊維に溶菌作用を有する酵素を固定化してシート1を構成し、またこのシート1により袋3を構成し、前記合成樹脂繊維は、水酸基を有するポリマーであって、例えば低融点レーヨンとしてあり、前記合成樹脂繊維を40%以上含有する構成のものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はまな板や包丁、箸等の調理器具の衛生状態を保つためのシートおよび袋に関する。
【背景技術】
【0002】
まな板や包丁等の調理器具は、食品に直接接触するものであるため、常に高い衛生状態を保つ必要があることは言を待たないが、調理器具は使用時あるいは洗浄時の水分が付着して残り、この水分は細菌、ウィルスあるいはかび等の人体に害を及ぼすおそれのある雑菌類の温床となる。
【0003】
上記調理器具の殺菌・除菌には、従来から熱湯を掛けたり、塩素系漂白剤等の殺菌薬剤の水溶液に浸したりするのが一般的であり、前者の場合は冷却後の水分が細菌等の温床となる可能性があり、後者の場合は殺菌剤が調理器具に残るおそれがあるという問題がある。
【0004】
上述のように殺菌薬剤の水溶液に調理器具を浸す場合、同水溶液と調理器具との接触を確実ならしめて殺菌効果を高めることを目的とする漬け置き用の袋が各種提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、布帛に担持せしめたキチン・キトサンをまな板に接触させて、キチン・キトサンの抗菌作用によってまな板の衛生状態を保つようにしたものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、従来のものではいずれも殺菌・抗菌作用を有する漂白剤やキチン・キトサンを、水分を介在させて調理器具に接触させ、調理器具に付着している雑菌等を除くようにしており、換言すれば調理器具が濡れた状態でないと殺菌・抗菌作用を奏し得ない。
【0007】
上述のように調理器具が濡れた状態というのは、そのままでは引き出しや棚等の器具保管場所に収容できないため、ふきんや紙製タオル等の雑菌が付着しているかもしれないシートで水分をふき取って雑菌を転移させてしまうおそれがある。
【0008】
また、木製のまな板や柄が木製の包丁の殺菌を行う場合には水分が器具内に浸み込んで器具の寿命を短くしてしまうことがあり、鋼製の包丁の殺菌を行う場合には発錆の問題もある。
【特許文献1】特開2000−107267号公報(第1〜3頁、図1、2参照)
【特許文献2】特開2001−63733号公報(第1〜3頁、図1〜5参照)
【特許文献3】特開平11−208734号公報(第1〜4頁、図1、2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は安全性が極めて高く、しかも調理器具が乾燥した状態で十分な殺菌・除菌作用を得ることができ、さらには水で洗っても殺菌・除菌作用が低下するおそれがなくて衛生的に保つことのできる調理器具用衛生シートおよび同シートよりなる袋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る調理器具用衛生シートは、合成樹脂繊維を含有する不織布の前記合成樹脂繊維に溶菌作用を有する酵素を固定化してなる構成のものとしてある。
【0011】
また、本発明に係る袋は、合成樹脂繊維を含有する不織布の前記合成樹脂繊維に溶菌作用を有する酵素を固定化してなるシートよりなり、内部に調理器具を収容できるように構成したものとしてある。
【0012】
そして前記合成樹脂繊維は、水酸基を有するポリマーであって、例えば低融点レーヨンとしてあり、前記合成樹脂繊維を40%以上含有する構成のものとしてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶菌作用を有する酵素を合成樹脂繊維に固定化し、この合成樹脂繊維を含有する不織布よりなるシートとしてあるので、このシートは通気性が良好であって調理器具に水分が付着していても水分を確実に蒸散させることができ、調理器具が乾燥した状態であっても十分に前記酵素の溶菌作用を発揮せしめて調理器具の衛生状態を高度に維持することができる。
【0014】
そして、調理器具を水分で濡れた状態にしておく必要がないので、調理器具の洗浄による水分をふきん等でふき取って、表面に殆ど水分がない状態にしてからシートを接触させて殺菌・除菌することができるので、調理器具の水分による劣化を防止することができ、また調理器具にシートを被せたあるいは包んだ状態で棚等の保管場所に収納することができるので、管理も容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明のシートよりなる袋では、調理器具をそのまま袋に入れるだけで事が足り、袋に入れた調理器具を袋ごと吊るして乾燥させるというような使い方もでき、調理器具の収納の多様化も図ることができる。
【0016】
さらに、シートを構成する合成樹脂繊維を低融点レーヨンで構成したものでは、シート表面への加熱加工により表面を毛羽立ちの少ない滑らかな風合いのものとすることができ、かくすることによりシートから繊維が抜け落ちて調理器具に付着したり、まわりに飛散したりという不具合が防止される。
【0017】
また、シートを構成する不織布は、前記合成樹脂繊維の含有率を100%とする必要はなく、パルプ繊維等の植物繊維や獣毛等他の繊維を含有するもので構成する場合もあり、この場合、前記合成樹脂繊維の含有率は40%以上であれば事が足り、同含有率が40%未満であると前記溶菌性を有する酵素の量が少なくなり、シートや袋の衛生保持効果が減殺される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る調理器具用衛生シートの実施例について詳細に説明する。
本発明に係るシートは、合成樹脂繊維を含有する不織布よりなり、合成樹脂繊維には溶菌作用を有する酵素を固定化して担持せしめてある。
【0019】
なお、上記溶菌作用を有する酵素については、公知文献である国際公開WO98/4334号公報に詳細が開示されているので、本稿においては同公報の記載を援用して、詳細なる説明についての記載は省略する。
【0020】
しかして、本発明のシートにおいては前記合成樹脂繊維に前記酵素を固定化させる手段の具体例として、例えば合成樹脂繊維にレーヨン等の水酸基を有するものを採用し、同水酸基に酵素をイオン結合させる。
【0021】
かくすることにより、前記酵素は合成樹脂繊維に固定化され、したがって酵素を単に繊維表面に付着させた場合にように、シートを洗浄しても酵素が剥落してしまったり、洗浄時の水分に溶解して酵素の作用が低下してしまったりするようなおそれはまずなく、酵素による殺菌・除菌作用を長く維持することができる。
【0022】
上述のように構成したシートは、まな板等の調理器具の上に被せたり、調理台等の適宜の台の上に敷いたシート上にまな板、包丁、箸等の調理器具を置き、その上から別のシートを被せたり、あるいはシートで調理器具を巻いたりして使用する。
【0023】
また本発明に係る袋は、上述したシートを用いて構成したものとしてあり、例えば図1に示されるまな板用袋の場合には、シート1を折りたたんで左右の辺部を縫い目2を設けて袋3を構成し、開口端4寄りの前後の胴部に吊り下げ用の孔5をあけてあり、同孔のまわりは補強材6で囲んである。
【0024】
上述のように構成した袋3では、洗浄後のまな板を開口端4から内部に収容し、シートの内面をまな板の表面(表裏両面および側面)を接触させて、シート内面に担持されている酵素がまな板の表面に接触し、前記酵素による殺菌・除菌作用が得られる。
【0025】
そして、シートは不織布で構成されているので、通気性がよく、まな板を乾燥した状態すなわち雑菌等が繁殖しにくい状態を保つことができ、さらに前記孔5を厨房の適宜のフックに掛けてまな板を袋3ごと吊り下げると、より一層通気性が良好となり、まな板を理想的な乾燥状態で保管することができる。
【0026】
図2は本発明に係る袋の他の実施例を示し、調理器具たる包丁や箸を収容できるように構成したものである。
しかして、袋7は、シート1を折りたたんで左右の辺部に縫い目8、8を有するとともに、これらの縫い目と略平行をなす縫い目9、9も有し、隣り合う縫い目間にそれぞれ形成された収容部10、10に包丁や箸等の長さのある調理器具を各開口端11、11から差し込んで収容できるようにしてある。
【0027】
本実施例の袋7においても、まな板用の前記袋3の場合と同様に、シート1が不織布で構成されているので、通気性がよく、包丁や箸等の調理器具を乾燥した状態すなわち雑菌等が繁殖しにくい状態を保つことができ、しかも包丁やその他の金属製調理器具では錆の発生も防止することができる。
【0028】
上述した袋3、7はいずれも開口部を封止しない構成としてあるが、開口部をボタンや面ファスナー等の適宜の係合部材で閉じることができるようにする場合もある。
【0029】
なお、本稿における調理器具とは、広く調理に使用する器具全てを指し、例えば広義の調理器具として食器や食品保存容器をも含む。
また、本稿における殺菌・除菌とは、必ずしも生物学上における厳密な殺菌・除菌を指すものではなく、菌の繁殖を抑える静菌等の緩やかな作用までを包含するものとして使用している語である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る袋の実施例を示す斜視図。
【図2】本発明に係る袋の他の実施例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1 シート
2 縫い目
3 袋
4 開口端
5 孔
6 補強材
7 袋
8、9 縫い目
10 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂繊維を含有する不織布の前記合成樹脂繊維に溶菌作用を有する酵素を固定化してなる調理器具用衛生シート。
【請求項2】
前記合成樹脂繊維は、水酸基を有するポリマーである請求項1に記載の調理器具用衛生シート。
【請求項3】
前記合成樹脂繊維がレーヨンである請求項1、2に記載の調理器具用衛生シート。
【請求項4】
前記合成樹脂繊維が低融点レーヨンである請求項1、2に記載の調理器具用衛生シート。
【請求項5】
前記合成樹脂繊維を40%以上含有する請求項1乃至4に記載の調理器具用衛生シート。
【請求項6】
合成樹脂繊維を含有する不織布の前記合成樹脂繊維に溶菌作用を有する酵素を固定化してなるシートよりなり、内部に調理器具を収容できるように構成してなる袋。
【請求項7】
前記合成樹脂繊維は、水酸基を有するポリマーである請求項6に記載の袋。
【請求項8】
前記合成樹脂繊維がレーヨンである請求項5、6に記載の袋。
【請求項9】
前記合成樹脂繊維が低融点レーヨンである請求項5、6に記載の袋。
【請求項10】
前記合成樹脂繊維を40%以上含有する請求項5乃至9に記載の袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−30968(P2007−30968A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220534(P2005−220534)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000205823)大昭和紙工産業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】