説明

調理装置

【課題】 調理の各ステップに必要な装置及び材料が一箇所に集中配置されてユニット化し、ラーメン等の調理を一定の品質を維持しながら効率良く行うことができてチェン店の展開が容易にすることである。
【解決手段】 平坦な作業面2を備えた本体ケース1に、ヒータが設けられた上面開口の複数個のスープタンク4と、これらのスープタンク4に接続された容積の大きい熱湯タンク13と、複数の具材が取出自在に収納される具材収納部21と、この具材収納部21にスチームを供給して収納された具材を暖めるスチーム発生器29と、多数の食器47を出し入れ自在に収納する食器収納部45と、を配設して一体構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格別な技能を要することなく、例えば、ラーメン等を一定の品質を維持しながら効率良く調理することができる調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラーメンのようにスープを生命としている調理においては、スープを仕込むことが非常に重要な作業になっている。すなわち、店舗における作業は、厨房の片隅に設けられたガスコンロの上に、100〜150リットルもの大きな容積の寸胴を載せてその日に使うスープを仕込むことから始まる。この寸胴の中に、鶏ガラ、豚骨、豚の背骨、キャベツ、昆布、煮干、人参、にんにく、生姜その他の材料をその店の主人が工夫して作り上げたレシピに基づいて投入され、そして、数時間煮込むことが行われている。この煮込作業においては、浮き出すアクを時々取り除くなどの作業やガスコンロの火力の調節などを必要とするものであり、大変な労力がかかるものである。従来のこのような方法によれば、上述の労力がかかる問題の他につぎのような欠点がある。
・鶏ガラや豚骨などの沢山の生ごみが出る。
・100〜150リットルの容積の寸胴は大き過ぎて女性従業員などの手に負えるものではなく、また、ガスコンロの上に不安定に載っていて、何らかの拍子、例えば調理人が接触した場合や地震などが原因で倒れた場合は大事故になりかねない。
・あまりにも手間がかかり過ぎるので、店舗の主人がこだわりを持ってラーメン店を経営している分には成り立つかも知れないが、チェン店で多店化することはできない。
・スープが足りなくなった場合には、すぐに作って補充することができないため、その時点で売り切れ閉店となる。
【0003】
このように、おいしいスープを作るには、大変な労力を伴うため、店舗のチェン化は困難であった。そのため、スープを作る作業を専門工場に任せる発想がある。すなわち、濃縮したスープの素を専門工場で作って、冷蔵又は冷凍した状態でそのスープの素を1.2〜2リットルぐらいの袋詰めして各店舗に配送し、店舗では、これを指定された倍率(例えば、10倍)に薄めて微沸騰させながら使うという方法がとられるようになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、専門工場で製造したスープの素を用いる場合においても、厨房の片隅に設けられたガスコンロの上に、100〜150リットルもの大きな容積の寸胴を載せて微沸騰させて使うという姿はよく見られ、やはり危険であると共に、使用後の寸胴を洗浄しなければならない等の問題があり、女性従業員には適さない職場になっているものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、平坦な作業面を備えた本体ケースに、ヒータが設けられた上面開口の複数個のスープタンクと、これらのスープタンクに接続された容積の大きい熱湯タンクと、複数の具材が取出自在に収納される具材収納部と、この具材収納部にスチームを供給して収納された具材を暖めるスチーム発生器と、多数の食器を出し入れ自在に収納する食器収納部と、を配設して一体構造とした。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の調理装置において、電磁弁を介して水道管が接続されるとともにヒータと温度センサとが設けられ、蓄えられた熱湯は前記温度センサにより沸騰前の温度に維持され、前記スープタンクに送り出した熱湯相当分の水は前記電磁弁を開いて前記水道管から補充されるようにした。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の調理装置において、スープタンクの温度は、湯気が発生しない微沸騰状態に維持されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の調理装置において、本体ケースの作業面には、食器の重量により開放される複数個のスチーム噴出弁を配設し、これらのスチーム噴出弁にスチーム発生器を接続した。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の調理装置において、本体ケースに、常温の具材が取出自在に収納された常温具材収納部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の調理装置において、本体ケースの側部に、茹で麺機を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、格別な技能を要することなく、例えば、ラーメン等の調理を一定の品質を維持しながら効率良く行うことができてチェン店の展開が容易になるものである。特に、ユニットとして調理の各ステップに必要な装置及び材料が一箇所に集中配置されているため、狭いスペースであっても配設することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、スープタンクの温度は、湯気が発生しない微沸騰状態に維持されているため、煮詰まりが少なく、予め調合した所定の濃度を維持して一定の味を保つことができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、熱湯タンクに蓄えられる熱湯は温度センサにより沸騰前の温度に維持され、スープタンクに供給した量の熱湯は、電磁弁を開いて補充されるため、長時間にわたって所定のスープを供給することができ、スープ不足になるおそれがないものである。
【0014】
請求項4記載の発明は、本体ケースの作業面にセットされる食器は、スチーム発生器からのスチームにより暖められるため、ラーメン等をあつあつの状態で客に提供することができるものである。
【0015】
請求項5記載の発明は、本体ケースに常温具材収納部が設けられているため、ゴマや香味野菜等の具材を常温で提供することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、本体ケースの側部に、茹で麺機を配設することにより、最小の作業動線でラーメン等を客に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。まず、略直方体形状の本体ケース1が設けられる。この本体ケース1の上面は平坦な作業面2とされ、この作業面2の奥には、凹部3が形成され、この凹部3内には、三個の寸胴容器、すなわち、スープタンク4が取り出し自在に装着されている。これらのスープタンク4は、その容量が12リットルと比較的小型なものであり、上部には半開き蓋5が設けられている。このスープタンク4の容量が12リットルに設定されている理由は、洗浄のために取り外しが容易な重量であるということが前提であり、また、ラーメン1杯について350ccのスープを使うという店の場合に、レードル(計量杓子)6は、一回の計量値が350ccのものが使われることになり、このレードル6を用いてスープを取り出すと、30人分で10.5リットル(30×350リットル=10.5リットル)となる。この状態では、容量12リットルのスープタンク4の中のスープが1.5リットル残るが、この1.5リットル分は、レードル6で正確に汲み出せない量となる。すなわち、この状態は、レードル6を水平に沈めてもそのレードル6の上縁からスープが流入しないレベルである。この状態になると、残りの1.5リットルのスープを隣のスープタンク4に移し、空にしてから後述するように、新たなスープを作成する過程に移行する。ついで、前記凹部3の底面には、前記スープタンク4を受ける台座7が設けられ、これらの台座7の中には、ヒータ8が鋳込まれている。これらのヒータ8は、前記本体ケース1の前面右側上部に設けられた押し釦タイマースイッチ9にそれぞれ接続されている。これらの押し釦タイマースイッチ9は、具体的には、それぞれ電源10に接続されたスープ加熱ヒータ切換スイッチ11により構成されているものであり、前記ヒータ8を前記電源10に直に接続するか、あるいは、半波整流器12を介して前記電源10に直に接続するかを選択切換しているものである。また、前記本体ケース1内には、その容量が30リットル程度の熱湯タンク13が設けられている。この熱湯タンク13には熱湯送り出しポンプ14が接続されており、この熱湯送り出しポンプ14には、前記スープタンク4のそれぞれに熱湯を供給する熱湯吐出カラン15が接続されている。この熱湯吐出カラン15は、すべての前記スープタンク4の上部位置に吐出口が位置するように前記本体ケース1の後方中心部に回動自在に設けられている。前記熱湯送り出しポンプ14は、ポンプ押し釦スイッチ16を介して前記電源10に接続されている。また、前記熱湯タンク13の上部には、電磁弁17を介して水道管18に接続されている水供給口19が接続されている。
【0018】
ついで、前記本体ケース1の後方上部には、支柱20で保持された具材収納部21が設けられている。この具材収納部21は、スチーム出口管22が接続される接続口23と、排水管24が接続される接続口25とを有する具材ウォーマー箱26を有し、この具材ウォーマー箱26の上面に開口した開口部27に具材容器28が着脱自在に取り付けられている。そして、前記本体ケース1内には、スチーム発生器29が設けられ、このスチーム発生器29と前記具材収納部21とは、前記スチーム出口管22により接続されている。前記スチーム発生器29は、蓋密閉用支柱30で保持された密閉蓋31で密閉されたスチーム発生缶32を備え、このスチーム発生缶32内には、ヒータ制御器33で通電を制御されるヒータ34が設けられている。一方、前記密閉蓋31には、給水口35が設けられ、この給水口35には電磁弁36、電磁弁制御器37を介して前記水道管18が接続されている。また、前記密閉蓋31には、長さの短い第一の水位電極38と、その水位電極38よりは長さが長い第二の水位電極39とが下向きに突出して設けられている。そして、前記第一の水位電極38には、前記電磁弁制御器37が接続されており、前記第二の水位電極39には、前記ヒータ制御器33が接続されている。さらに、前記密閉蓋31には、スチーム分岐出口40が設けられている。このスチーム分岐出口40からは、前記スチーム出口管22の他に四本のスチーム出口管41、42、43、44が分岐している。
【0019】
前記本体ケース1の前面側には、食器収納部45が設けられている。この食器収納部45は、三個の収納容器46を備えている。これらの収納容器46について説明する。まず、この収納容器46は、収納すべき食器47の大きさに合わせた大きさで上方に開口した縦長の直方形状である。この収納容器46の両側の側壁48には、手が入る大きさの上方に開口した切欠き49が形成され、また、これらの側壁48に直交する一辺の側壁48は支持側壁50とされ、この支持側壁50には、垂直方向に連通する二条のスリット51が形成されている。また、前記収納容器46には、積み重ねられた前記食器47を保持する食器保持体52が昇降自在に取り付けられている。この食器保持体52は、その一側縁近傍が二条の前記スリット51に摺動自在に挿入された相対向する二枚の支持部材53と、これらの支持部材53の上縁に取り付けられた台座54とよりなる。そして、前記支持部材53のそれぞれには、前記支持側壁50の外面に接して転動する上方に位置する外部ベアリング55が支軸56に保持されて取り付けられており、前記支持側壁50の内面に接して転動する下方に位置する内部ベアリング57が支軸58に保持されて取り付けられている。すなわち、前記食器保持体52には、二個ずつの外部ベアリング55及び内部ベアリング57が設けられている。また、前記支持部材53の前記支持側壁50から外部に突出した部分の下端に、バネ掛けアングル59が取り付けられている。
【0020】
このように形成された食器保持体52は、前記支持側壁50の外面に設けられたバネリフト構造60で保持されている。すなわち、このバネリフト構造60は、複数本の引張バネ61によるものであり、本実施の形態においては、使用する食器47の重量に対応するように選別した三種類の引張バネ61が用いられている。これらの引張バネ61は、その下端が前記バネ掛けアングル59に引っ掛けられており、上端が前記支持側壁50の上端に屈曲形成されたバネ掛け板62に引っ掛けられている。
【0021】
さらに、前記収納容器46の前面に位置する側壁48の上方には、把手63が設けられ、両側の側壁48の下縁には、やや手前側に位置させてV字形状の切欠き(回転支点)64が形成されている。この切欠き64は、前記本体ケース1に形成された回転支点(図示せず)に係合する。すなわち、この本体ケース1の回動支点は、横方向に配設されたリブに形成された係合切欠等によるものであり、収納容器46の両側に設けられた前記切欠き64が係合することにより前記収納容器46を前方に傾斜するように保持している。つぎに、前記収納容器46には、前記本体ケース1の中心部に一端が固定された所定長さのチェン(図示せず)が結合され、このチェンの長さにより手前側の倒れ角度が規制されている。
【0022】
ついで、前記スープタンク4の手前側の前記作業面2には、四個のスチーム噴出弁65が並列して設けられている。これらのスチーム噴出弁65のそれぞれは、図7に示す構造のものである。すなわち、本体66がナット67で前記作業面2に固定されている。そして、前記本体66には、下方開口のスチーム入り口69が形成され、段部70を残して上方に開口した空間部71が形成されている。この空間部71の上方部分には、下端が弁座72とされた弁座体73がねじ結合されている。この弁座体73の中央には、断面円形の貫通孔74が形成されている。ついで、前記空間部71内には、前記段部70との間にヘリカルバネ状のばね体75で上方に付勢され、Oリング76を介して前記弁座72に当接する弁体77が上下動自在に取り付けられている。この弁体77には、断面四角状で前記貫通孔74を貫通する四角軸78が一体形成されている。この四角軸78と前記貫通孔74との間には、スチーム噴出隙間79が形成されている。また、前記四角軸78の上端には、傘状に拡開形成された押しカバー80が止めねじ81により固定されている。この押しカバー80の形状が傘型であるのは、蒸し調理中に食材から出てきた肉汁のようなものが滴り落ちて来たとき、それが本体ケース1の内部に入り込むことがないように配慮しているためである。しかして、これらの四個のスチーム噴出弁65のそれぞれの前記スチーム入り口69には、前記スチーム発生器29の前記スチーム分岐出口41、42、43、44がそれぞれ接続されている。また、前記スチーム噴出弁65の上には、別に設けられたスペーサリング82を介在させて食器47がセットされる。すなわち、このスペーサリング82の高さは、食器47を保持した状態でその食器47の重量により前記弁体77が押し下げられて貫通孔74を開放してスチーム発生器29で発生したスチームを食器47の下方に供給し、食器47を暖める。また、食器47を取り去った時には、ばね体75の力で弁体77を押し上げてOリング76により貫通孔74を閉止し、スチームの噴出を停止する。
【0023】
さらに、前記具材収納部21の上には、支柱83で支持された常温具材収納部84が設けられている。この常温具材収納部84には、複数個の収納ケース85が着脱自在に取り付けられているものであるが、これらの収納ケース85は、ゴマや香味野菜等の常温で用いられる具材の残量が見えるように前方に傾斜している。
【0024】
このような構成において、開店に先立ってラーメンスープが準備される。すなわち、三個のスープタンク4は、それぞれの下にヒータ8が鋳込まれた台座7に載置されており、スープ加熱ヒータ切換スイッチ11で、フル電力(例えば、1.2kW)と半分の電力(例えば、0.6kW)に切り換えられるようにしておき、その下部に設けられた熱湯タンク13には、常に30リットルの熱湯(92℃位)が用意されていて、ポンプ押し釦スイッチ16を押すことにより、熱湯タンク13に直結した熱湯送り出しポンプ14をONにして上方に位置するスープタンク4に数秒で熱湯が移送される。この時、消費した量の水は、電磁弁17の動作で自動的に給水補充され、温度センサ13aで温度が検出されつつヒータ13bに通電されて常に92℃位にその温度が保たれる。
【0025】
いま、店が開店する前に、三個のスープタンク4に各々12リットルずつのスープが用意されている状態であったとすれば、開店によってラーメン1杯について350ccのスープが使われることになる。すなわち、ラーメン1杯について350ccのスープを使うという店の場合に、レードル(計量杓子)6は、350ccのものが使われることになり、このレードル6を用いてスープを取り出すと、30人分で10.5リットル(30×350リットル=10.5リットル)となる。この状態では、1.5リットル残るが、この1.5リットル分は、レードル6で正確に汲み出せない量となる。すなわち、この状態は、レードル6を水平に沈めてもそのレードル6の上縁からスープが流入しないレベルである。この状態になると、残りの1.5リットルのスープを隣のスープタンク4に移し、一旦、空の状態にする。この空になったスープタンク4に熱湯吐出カラン15の注ぎ口を持ってきてポンプ押し釦スイッチ16を押すと、熱湯タンク13から熱湯送り出しポンプ14の運転によって92℃の熱湯が熱湯吐出カラン15から送り出され、スープタンク4の10リットルの目盛線に達したところでポンプ押し釦スイッチ16をOFFにする(このポンプ押し釦スイッチ16は、タイマー付き切換スイッチとしてもよい)。つぎに、別に用意されている袋詰めされた2リットル入りの濃縮スープの封を切ってスープタンク4に入れ、攪拌することにより、12リットルの新たなスープが作られたことになる。次に、押し釦タイマースイッチ9を「強」に入れると、常温の濃縮スープと92℃の熱湯が混合されて約80℃に低下しているスープは、ヒータ8によって加熱され、約18分で微沸騰状態に達する。予め設定された微沸騰までの時間が経過すると、押し釦タイマースイッチ9は自動的に「弱」側、すなわち、半波整流器12側に切り換わり、一旦、沸騰状態に達したスープは、湯気が立ち上がらない微沸騰状態(100℃)を維持する。これにより、品質の劣化を招く強沸騰ではなく、また、殆ど湯気が立ち上がらないので、煮詰まりも少ない。このようにして、常に、あつあつのスープが準備されていることになる。なお、押し釦タイマースイッチ9の自動切換時間を18分に設定しておけば、強加熱の後、自動的に微沸騰状態となって、さらに、自動化品質維持に役立つことになる。
【0026】
また、熱湯タンク13の熱湯は、常に温度センサ13aとヒータ13bとによって92℃を保つように自動制御されていて、その容量は約30リットルであるため、三個のスープタンク4のスープを同時に新たに作るだけの能力を持たせておくことにより、客の注文が殺到するピーク時にスープの補充を容易にスピーディに行うことができる。さらに、電磁弁17の動作による水供給口19からの給水は、熱湯が92℃以上に達した時だけ動作するように制御されている。この熱湯タンク13内の湯量と温度は、本体ケース1の前面に設けられたレベルゲージ86と温度計87とで確認することができ、スープの仕込み前にこのレベルゲージ86と温度計87とを確認必要はあるものの、その必要性は、開店前にスープを用意するときのみに限られる。そのため、接客中にはその作業は不要であり、作業者の負担とはならない。
【0027】
ついで、スープタンク4は、本体ケース1の箱状に形成された凹部3内にセットされ、それらの開口部のレベルが作業面2に略等しく保たれてスープタンク4から汲み出し易く設定されていることは、非常に効果的なものである。すなわち、従来の大型寸胴によるスープの製造、汲み出しに較べて、小型の三個のスープタンク4とすることにより、全体としては従来よりもスープの量が多いにも係わらず、個々のスープタンク4の取り扱いが容易であり、スープタンク4の出し入れ、掃除、残りスープの移し変え、廃棄等の作業が力を要することなく行うことができ、女性の作業員でも容易に扱うことができるものとなっている。また、従来は、いちいち大型寸胴まで歩いて行ってスープをレードルでくみ上げていた。よって、100杯のスープで100往復するということになっていた。これに対して、本実施の態様では、小型のスープタンク4としたことにより、1個当りのスープタンク4のスープは、30人分位ですぐに新しい仕込み作業をしなければならないものの、この仕込み作業も前述のように、熱湯タンク13に常に熱湯が用意されていて、ポンプ吸い上げ作用でスープタンク4に数秒の単位で移送することができるため、ラーメンを作る作業を継続しながら新たなスープの仕込みまで平行して作業できるという特長があり、短い作業動線で作業できるものである。
【0028】
つぎに、本実施の態様においては、スチームを利用することにより、食器47を温める機能と、ラーメンのトッピング(具材、例えば、チャーシュー、メンマ、ゆで卵、ねぎ、油等)を温める機能を有する。
【0029】
まず、ラーメン用の食器47、すなわち、どんぶりは、大きく厚手のものが一般に使われている。このような食器47に最初に微沸騰していた350ccのスープをレードル6で注ぎいれても、食器47が常温程度の冷たい状態であれば、スープの温度は冷たい食器47に熱を奪われて急激に10℃〜20℃は低下する。さらに、麺やトッピングがこのスープに追加されても、一旦、低下した温度を上げることはできず、むしろ、客に提供されるまでの間に更に低下して60℃くらいに下がることがあり、しばしば「ラーメンがぬるくてまずい」と評判を落とすことになる。これを防ぐために、熱湯に食器47を漬けておいてスープを盛り付ける直前に取り出す湯煎方式がとられることが多いが、湯煎容器の置き場所をとり、熱湯の中から食器47を取り出すという作業は危険を伴う作業であり、採用している店舗は少ない。
【0030】
そこで、本実施の態様においては、スチーム発生器29で発生したスチームをスチーム分岐出口40から4本のスチーム出口管41、42、43、44を介して作業面2に設けられた四個のスチーム噴出弁65に導き、食器47をその上にセットするとその重量によりスチーム噴出弁65が開放され、スチームが噴出して食器47を温める。この具体的な構造は、特許第3334871号明細書に開示されている。さらに、説明すると、食器47を置くと、その重量によりスペーサリング82に接するが、同時に弁体77が下に押され、弁座72を開いてスチームをスペーサリング82と食器47の底面で形成される空間をスチームで満たし、スチームが持つ熱量は急速に食器47の底面からその食器47全体に伝わり、約1分30秒から2分で食器は十分に温まることになる。ここで、スチーム噴出弁65は作業面2に四個配置してあるから、4個の食器47を同時に温めることができる。この数は、必要により増減することができるものであり、また、スチーム噴出弁65は作業面2から突出しているものであるが、これを突出しないものとして作業面2の使用性を増すことも可能である。なお、スペーサリング82は、軽いプラスチックス製の帯状リングであり、食器47を温める必要がないときには、それを取り去って作業面2を他の用途に使うこともできる。
【0031】
さらにまた、スチーム発生器29からのスチームをスチーム分岐出口40からスチーム出口管32を介してスチームを具材ウォーマ箱26に導き、その具材ウォーマ26の内部をスチームで満たし、具材容器28の外側から具材を温め、具材のトッピングによって客へ提供するラーメン温度を下げることなく、あつあつの状態を保って提供できるという特長がある。
【0032】
つぎに、スチーム発生器29の動作を説明する。まず、スチーム発生器29は、密閉蓋31で密閉されていて密閉蓋31に取り付けてある給水口35から水位電極38が水と接するまで電磁弁36が開かれて給水されるようになっている。そして、水位が水位電極39の下になると、前述のように給水されることになる。したがって、スチーム発生器29内の水は、水位電極38、39の下端のレベル間の水位に常に維持されている。ヒータ34は、給水された水を加熱し、沸騰させてスチームを発生させる。スチーム発生器29内に発生したスチームは、蒸気圧力を持っていることから、スチーム分岐出口40から4本のスチーム分岐管41、42、43、44を通って四個のスチーム噴出弁65に導かれ、前述のように、弁座72が開かれるとスチームを噴出して食器47を温める。また、スチーム分岐出口40からスチーム出口管22を経て具材ウォーマ箱26にスチームを供給し、前述のように具材を温める。さらに、特に図示しないが、ヒータ34への通電は、フル電力と1/2電力のいずれかで制御されて必要量のスチームを発生させるように構成しても良いものである。
【0033】
前記本体ケース1の正面側には、食器ディスペンサの機能を備えた食器収納部45が設けられている。従来、ラーメン店における食器47、すなわち、どんぶりは作業テーブルの上に高く積まれていたり、どんぶり収納棚から作業者が一つずつ取り下ろすという作業を伴うものであり、そのために、作業動線が長くなっていたり、高く積まれたどんぶりが客から見えることによる不潔感をイメージさせるものであった。本実施の態様においては、本体ケース1の空いたスペースを利用して収納容器46を手前側に揺動させるように設け、把手63を持って収納容器46を手前に倒し、その上部から順次必要個数の食器47、すなわち、どんぶりを取り出すことができるようにしているのものである。具体的には、一つの収納容器46に20個のどんぶりを収納することができ(皿の場合には、40〜50枚)、三個の収納容器46を設けることにより、60個のどんぶりを収納できるものである。そのため、注文が殺到するピーク時の食器47の移動の動線を殆どなくすことができる。しかして、食器47を使用する場合の作用を繰り返して説明する。前述のように、収納容器46を手前側に引き出して傾斜させることにより、表面に露出した最上部の食器47は取出位置に位置している。そして、使用者が必要枚数の食器47を取り出すことにより、積み重なった食器47の全重量は減少して上昇する。この重量変化と引張バネ61の伸び率の減少とのバランスがとれているため、何枚の食器47を取り出しても、常に最上部の食器47は同一の取出位置に位置している。なお、食器47の種類を変えた場合等は、その食器47の重量に応じてバネ定数の異なる引張バネ61を選択して掛け換える。バネ掛けアングル59とバネ掛け板62とには、予め多数の引掛け部が設けられているため、必要に応じて多数本の引張バネ61を掛け渡すことができる。このような機能を達成するために、食器保持体52が昇降するものであるが、その食器保持体52は支持側壁50に片持状態で保持されているものである。そして、食器保持体52の台座54の中心に食器47の重量が作用し、支持側壁50と逆側に傾くように力が作用している。しかしながら、外部ベアリング55が支持側壁50の外面に圧接され、内部ベアリング57が支持側壁50の内面に圧接されるため、食器保持体52は傾くことなく水平に維持されてスリット51に沿って昇降する。しかも、外部ベアリング55と内部ベアリング57とは、ボールベアリングを使用することが可能であるため、食器47の重量程度では滑らかな動きを示し、しかも、動作速度も低いことから、安価なボールベアリングできわめて円滑な動きを示す。従って、バネリフト構造60を収納容器46の片側だけに設ければ良いため、装置の外形が小さくて良い。
【0034】
ラーメンを客に提供する前に、スチームで温めた具材をトッピングすることは既に説明したが、温めないで済む常温の具材は、その店によって様々なものがある。例えば、ゴマとか香味野菜、調味料など、少なくとも5〜10種類位は必要になる。これらの常温のままで使用する具材を透明又はステンレス製の小型・中型の収納ケース85に入れて高い温度に保温される前述の具材の上に位置させて立体的にストックすることにより、さらに、空間の利用性は高まり、今まで散乱していた常温具材を、殆ど体を動かすことなく手を伸ばす動作のみで無駄のない作業をすることができる。なお、この常温具材収納部84の高さは、調節可能に設計されており、その傾斜も具材収納部21よりも大きくして取り出しやすいように配慮されている。
【0035】
次に、図8に基づいて合理的な応用例を説明する。すなわち、前述のように構成した本体ケース1の両側又は片側に茹で麺機88を並べて配設する。この茹で麺機88は、公知のものであり、具体的な構造の説明は省略するが、麺を入れた茹で籠を熱湯に入れると予め定めた茹で上がり時間が経過したときに、自動的に上昇するように構成されているものである。このように構成することにより、一人で1時間当り100食のラーメンを作ることが可能となる位、従来と較べて約2倍の能力を発揮させることができるようになる。これは、注文が殺到する一つのピーク時を一人の作業員で対応できることであり、しかも、ラーメンの品質を常に一定レベル以上に保つことができる点でその効果が著しく大きい。この理由は、装置の大きさが、間口が僅か1mで奥行き75cmとして、茹でることを除いたすべての機能と必要とする材料を殆ど作業員が移動することなく、手を伸ばす範囲内ですませることができることである。
【0036】
本装置は、今まで雑然として不潔感のあったラーメンつくりの環境と作業性とを格段に向上させることができたために、本装置を厨房内部に設置するのではなく、むしろ、客席に近いところに配置し、オープンカウンタ式として客にラーメンを作る清潔な現場を見せることも可能になり、しかも、出来上がったラーメンを最短距離で客席に届けることも可能になるなど、ラーメン店の有り方を根本的に変えるような効果ももたらすものである。
【0037】
このように、本装置は、今まで広いスペースを必要とした厨房のスペースを立体的にコンパクトにラーメンを作るのに必要な機能を凝縮したものであるから、本装置と茹で麺機とを設置するだけでラーメン作りの高機能キッチンが出来上がってしまうということもできる。特に、都会のビル内店舗やショッピングセンタ、スーパーマーケットのフードコートに設置すると、その効果は計り知れないものがある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
前述の説明では、ラーメンを作ることを中心にして述べたが、ラーメンに限ることはなく、うどん専門店やそば専門店、スパゲティ専門店などに利用することもできる。場合によっては、それぞれの特性に応じて多少の改造を必要とするかも知れないが、基本的には同様な構造で利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の態様を示すもので、全体の斜視図である。
【図2】本体ケースの一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】スープタンクと熱湯タンクとの関係を示す縦断正面図である。
【図4】具材収納部とスチーム発生器との関係を示す縦断正面図である。
【図5】食器収納部を裏側から見た一部を切り欠いた斜視図である。
【図6】食器収納部の一部の水平断平面図である。
【図7】食器とスチーム噴出弁との関係を示す縦断側面図である。
【図8】茹で麺機を組み合わせた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 本体ケース
2 作業面
4 スープタンク
8 ヒータ
13 熱湯タンク
17 電磁弁
18 水道管
21 具材収納部
29 スチーム発生器
45 食器収納部
47 食器
65 スチーム噴出弁
84 常温具材収納部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な作業面を備えた本体ケースに、ヒータが設けられた上面開口の複数個のスープタンクと、これらのスープタンクに接続された容積の大きい熱湯タンクと、複数の具材が取出自在に収納される具材収納部と、この具材収納部にスチームを供給して収納された具材を暖めるスチーム発生器と、多数の食器を出し入れ自在に収納する食器収納部と、を配設して一体構造としたことを特徴とする調理装置。
【請求項2】
熱湯タンクには、電磁弁を介して水道管が接続されるとともにヒータと温度センサとが設けられ、蓄えられた熱湯は前記温度センサにより沸騰前の温度に維持され、前記スープタンクに送り出した熱湯相当分の水は前記電磁弁を開いて前記水道管から補充されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項3】
スープタンクの温度は、湯気が発生しない微沸騰状態に維持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の調理装置。
【請求項4】
本体ケースの作業面には、食器の重量により開放される複数個のスチーム噴出弁を配設し、これらのスチーム噴出弁にスチーム発生器を接続したことを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項5】
本体ケースに、常温の具材が取出自在に収納された常温具材収納部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項6】
本体ケースの側部に、茹で麺機を配設したことを特徴とする請求項1記載の調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−247151(P2006−247151A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68480(P2005−68480)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(591052125)日本洗浄機株式会社 (12)
【Fターム(参考)】