調節弁装置
【課題】腐食性の流体に対しても高度の耐久性を有する調節弁装置を提供する。
【解決手段】シートリング2はケーシング1の隔壁13に配されており、一次室11と二次室12とに連通する開口Oを有する。カバープレート3は、シートリング2と対面する位置でケーシング1に取り付けられている。プラグ4は、カバープレート3を挿通してケーシング1に取り付けられており、シートリング2の開口Oに整合している。ステム5は、プラグ4をシートリング2の開口Oに対して前進後退可能に駆動して、一次室11側と二次室12側とで流体の流量や圧力を調整する。シートリング2は開口Oを形成する部分が、流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。またプラグ4も開口Oと当接する部分も耐腐食性を有するセラミック材料からなる。更にカバープレート3は、流体に接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。
【解決手段】シートリング2はケーシング1の隔壁13に配されており、一次室11と二次室12とに連通する開口Oを有する。カバープレート3は、シートリング2と対面する位置でケーシング1に取り付けられている。プラグ4は、カバープレート3を挿通してケーシング1に取り付けられており、シートリング2の開口Oに整合している。ステム5は、プラグ4をシートリング2の開口Oに対して前進後退可能に駆動して、一次室11側と二次室12側とで流体の流量や圧力を調整する。シートリング2は開口Oを形成する部分が、流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。またプラグ4も開口Oと当接する部分も耐腐食性を有するセラミック材料からなる。更にカバープレート3は、流体に接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学プラントなどで流体の圧力調整や流量調整に使われる調節弁装置(コントロールバルブ)に関する。
【背景技術】
【0002】
調節弁装置は、基本的にケーシング(ボディ)とその上下に位置するボンネット及びボトムフランジとで構成されている。ケーシングの内部には、流体の入口側にある一次室と、流体の出口側にある二次室と、両室を隔てる隔壁とが形成されている。隔壁にはシートリング(弁座)が取り付けられている。このシートリングに対してプラグ(弁体)を前進後退駆動して、一次室側と二次室側とで流体の流量や圧力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−236184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学プラントなどで処理対象となる流体には、アルカリ性もしくは酸性の廃液なども含まれている。このように腐食性の高い廃液処理に用いる調節弁装置では、プラグやシートリングなどの流量制御部にエロージョン・コロージョンが発生する。これにより、プラグやシートリングの肉厚が減少し(いわゆる減肉)問題となっている。またプラグ(弁体)やシートリング(弁座)などの流量制御部に加え、ボンネットの下部にもエロージョン・コロージョンに起因するかなりの減肉が生じている。これら調節弁装置の主要構成部品の減肉により、流量特性が変化しプロセスの制御性が低下するという課題がある。プロセス制御性を維持するためには、減肉が生じたバルブ部品を頻繁に交換しなければならず、メンテナンスが高コスト化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は腐食性の流体に対しても高度の耐久性を有する調節弁装置を提供することを目的とする。係る目的を達成するために以下の手段を講じた。即ち本発明に係る調節弁装置は、基本的にケーシング(ボディ)と、シートリング(弁座)と、プラグ(弁体)と、カバープレートと、ステムとを有する。ケーシングは、流体の入口側にある一次室と、流体の出口側にある二次室と、これら一次室及び二次室を互いに隔てる隔壁とを有する。シートリングは隔壁に配されており、一次室と二次室とに連通する開口を有する。カバープレートは、シートリングと対面する位置でケーシングに取り付けられている。プラグは、カバープレートを挿通してケーシングに取り付けられている。プラグは、ケーシング内でシートリングの開口に整合している。ステムは、ケーシングから突出したプラグの端部に係合しプラグをシートリングの開口に対して前進後退可能に駆動して、一次室側と二次室側とで流体の流量もしくは圧力を調整する。
特徴事項として、シートリングは少なくとも開口を形成する部分が、流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。またプラグも、少なくとも開口と当接する部分が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。更にカバープレートは、ケーシングの内側に露出して流体に接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。
【0006】
本発明に係る調節弁装置は、好ましくはプラグの先端部分をその駆動方向に沿って案内するボトムガイドを備えている。このボトムガイドは、シートリングを間にしてカバープレートと反対側でケーシングに取り付けられている。このボトムガイドは、ケーシングの内側に露出して流体と接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。更に好ましくは、このボトムガイドはプラグを案内する部分(ブッシング)から突出するプラグの先端を逃がすために凹部を有する。この凹部は、流体に含まれる微粒子が凹部に滞留することを防止する切欠部を有する。
【0007】
好ましくは、プラグはその先端に形成された段付部にナットで取り付けられるプラグインサートを有している。このプラグインサートはシートリング側の開口に当接して流量もしくは圧力の調整を行うもので、前述したセラミック材料からなる。また好ましくは、シートリングはその内側に嵌合するシートリングインサートを有している。このシートリングインサートが開口を形成しており、前述したセラミック材料からなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラグ及びシートリングが互いに当接する部分(減圧部)にセラミック材料を用いている。このセラミック材料は耐腐食性に優れており、酸性もしくはアルカリ性の流体に対してもエロージョン・コロージョンが生じにくく、長時間使用しても減肉の恐れが少ない。また、ボンネットの下部でケーシングとの間にカバープレートを配している。そしてケーシングの内側に露出して流体に接するカバープレートの部分に、耐腐食性の超硬合金材料を用いている。これにより、ボンネット下部のエロージョン・コロージョンを防いでいる。このように、プラグ、シートリング及びカバープレートなど調節弁装置の主要部に高硬度材料を使用することにより、エロージョン・コロージョンによる減肉を防ぎ、以って制御性の改善を達成している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る調節弁装置の全体構成を示す模式的な断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る調節弁装置の部品構成及びその配置関係を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る調節弁装置に組み込まれるプラグの構成を示す模式的な断面図である。
【図4】図4は、プラグの斜視図である。
【図5】図5は、シートリングを示す斜視図である。
【図6】図6は、カバープレートを示す斜視図である。
【図7】図7は、ボトムガイドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る調節弁装置(コントロールバルブ)の全体構成を示す模式的な縦断面図である。この縦断面図は、X軸とZ軸を含む平面を断面とするものである。図示するようにX軸は入口と出口との間で水平方向に伸びている。図示の例は、X軸の左側が入口側になり、右側が出口側となっている。Z軸は垂直方向に伸びており、本調節弁装置の中心軸及び駆動軸となっている。なお理解を容易にするため、Z軸を中心にして左側半分はバルブの全閉状態を表し、右側半分はバルブの全開状態を表している。
【0011】
本調節弁装置は、基本的な構成要素として、ケーシング1とシートリング2とカバープレート3とプラグ4とステム5とを有する。ケーシング(ボディ)1は例えばWCBなどの鋳鋼からなり鋳造品である。この鋳造品でできたケーシング1はバルブ本体(ボディ)を構成している。一方シートリング2、カバープレート3、プラグ4及びステム5は、このケーシング1に組み込まれる主要構成部品群であって、例えばS31600などのステンレスチールからなる金属加工部品である。
【0012】
ケーシング1は、流体の入口側にある一次室11と、流体の出口側にある二次室12と、隔壁13とを有している。隔壁13は、一次室11と二次室12を互いに隔てる境目となっている。図示の例では、ケーシング1の中央部分で一次室11と二次室12が上下に配置している。図示の例では、一次室11が下側(ボトム)に位置し、二次室12が上側(トップ)に位置している。但し本発明は上述した一次室と二次室の配置に限定されるものではなく、コントロールバルブの使用条件に応じて、適宜レイアウトされる。
【0013】
シートリング2は隔壁13に配されており、一次室11と二次室12とに連通する開口Oを有する。シートリング1はケーシング2の内部でほぼ中央に位置し、その開口Oは一次室11から二次室12に向かう流体の流路となっている。
【0014】
カバープレート3は、シートリング2と対面する位置でケーシング1に取り付けられている。このカバープレート3は、ケーシング1のトップに位置し、その下面は二次室12に露出している。カバープレート3はケーシング1とボンネット8との間に介在しており、両者に挟み込まれる状態で取り付けられている。即ち、ケーシング1のトップにカバープレート3を載置し、その上にボンネット8を搭載し、ナット81でボンネット8をケーシング1に取り付けるようになっている。
【0015】
プラグ4はカバープレート3を挿通してケーシング1に取り付けられている。プラグ4は、ケーシング1内でシートリング2の開口に整合している。シートリング2の開口Oに対してプラグ4を前進後退させることにより、一次室11から二次室12に向かう流体の流量もしくは圧力を制御している。図1のZ軸を中心にして左側半分は、プラグ4が前進してシートリング2に当接し、開口Oを閉じた状態を表している。図1のZ軸を中心にして右側半分は、プラグ4が後退してシートリング2から離間し、開口Oを開いた状態を表している。なお、カバープレート3からケーシング1の外部に突出したプラグ4の後端部分はボンネット8の内部に配されたブッシング82によって案内されている。
【0016】
ステム5は、ケーシング1から突出したプラグ4の後端部に係合している。ステム5はボンネット8の中心部を通って外部に延在しており、図示しないアクチュエータと接続している。ステム5はプラグ4をシートリング2の開口Oに対して前進後退可能に駆動して、一次室11側と二次室12側とで流体の流量もしくは圧力を調整する。以上に説明したシートリング2、カバープレート3、プラグ4、ステム5及びボンネット8は中心軸でもあり駆動軸ともなっているZ軸に沿って整合している。
【0017】
本発明の特徴事項として、シートリング2は少なくとも開口Oを形成する部分(21)が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。このセラミック材料は好ましくは窒化珪素を用いることができる。またプラグ4も、少なくとも開口Oと当接する部分(41)が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料(例えば窒化珪素)からなる。加えて、カバープレート3はケーシング1の内側に露出して流体に接する部分31が、耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料(例えばステライト、登録商標)からなる。このように本発明では、コントロールバルブの主要構成部品であるシートリング2、カバープレート3及びプラグ4に耐腐食性の材料を用いており、腐食性の強い流体を制御する場合でもエロージョン・コロージョンの発生を防ぐことができる。ここで用いたセラミック材料や超硬合金材料はいずれも高硬度材料であり、エロージョン・コロージョンによって減肉が生じるおそれが低くなっている。このようにコントロールバルブの主要構成部品に高硬度材料を用いることで、制御性を格段に改善することができる。
【0018】
本実施形態では、プラグ4の先端部分42をその駆動方向(Z軸)に沿って案内するボトムガイド6を備えている。ボトムガイド6は内部にブッシング62を備えており、プラグ4のZ軸方向の移動を案内している。ボトムガイド6はケーシング1とボトムフランジ7との間に配されている。ケーシング1にボトムガイド6を配置した後ボトムフランジ7を重ね、ナット71でケーシング1に取り付けるようになっている。図示するように、ボトムガイド6はシートリング2を間にしてカバープレート3と反対側でケーシング1に取り付けられている。特徴事項として、ケーシング1の内側(図示の例では一次室11側)に露出して流体と接する部分61が、耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。前述したシートリング2、プラグ4及びカバープレート3ばかりでなく、ボトムガイド6も耐腐食性の高硬度材料で被覆することにより、本コントロールバルブの制御性を一層改善することができる。なお、ボトムガイド6の内部に組み付けられたブッシング62の表面も超硬合金材料で被覆している。このボトムガイド6は、プラグ4を案内するブッシング62から突出するプラグ4の先端42を逃がすために凹部63を有する。ボトムガイド6を間にして一次室11側と凹部63側とで圧力差が生じないようにするため、一次室11と凹部63は連通している。このため流体に微粒子などが含まれている場合、凹部63には流体によって運ばれる微粒子が滞留するおそれがある。この微粒子の滞留を防止するため、ボトムガイド6の凹部63には切欠部が形成されている。
【0019】
プラグ4は、その先端42に形成された段付部にナット43で取り付けられるプラグインサート41を有している。このプラグインサート41はプラグ4の上下駆動に伴ってシートリング2の開口Oに当接する部分である。本実施形態では、このプラグインサート41が前述したセラミック材料の成形品からなる。またシートリング2はその内側に嵌合するシートリングインサート21を有している。このシートリングインサート21が開口Oを形成しており、やはり前述したセラミック材料の成形品からなる。
【0020】
プラグ4の先端部はボトムガイド6によって案内されており、後端側もボンネット8内のブッシング82によって案内されている。本装置はトップとボトムにガイドがある両端案内構造のボディとなっている。ボンネット8内のブッシング82とボトムガイド6内のブッシング62によってZ軸方向の移動が案内されており、流体による、振動、騒音、摩耗などの影響を少なくすることができる。
【0021】
上述した調節弁装置は化学プラントに用いて好適である。但し本発明の用途は化学プラントに限られるものではなく、発電設備や他の用途にも適用できることは言うまでもない。本装置は、例えば化学プラントの廃液処理に利用できる。この廃液は例えばpHが10ないし12のアルカリ性を有し、酸化マグネシウムを主成分とする固形物が含まれている。この固形物は例えば直径が0.5mm程度の微粒子である。使用温度は200℃程度に達する。使用圧力は、一次側が3MPaG程度で二次側が例えば2.5MPaG程度である。本コントロールバルブは蒸気や平常の空気はもとより、高粘度で弁内部に溜まりやすい流動物を含んだプロセス流体制御用にも適している。
【0022】
図2は本装置の部品構成ならびに部品配置を示す模式図である。図示するように、カバープレート3、シートリング2及びボトムガイド6がZ軸を中心にして上から順に配置している。カバープレート3は概略環形状を有し、例えばステンレススチールの金属加工品からなる。カバープレート3の中央にはプラグ(図示せず)の後端部を挿通するために穴が開けられている。
【0023】
特徴事項としてカバープレート3の下面側でケーシングの内側に露出して流体に接する部分31が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料(ステライト、登録商標)からなる。この超硬合金材料はコバルト40ないし55%、クロム15ないし35%、タングステン10ないし20%、炭素2ないし4%、鉄5%以下を主成分とする。この超硬合金は硬く耐摩耗性に優れているとともに、耐食性にも優れている。この超硬合金材料は、ハードフェーシング(肉盛)により、母材上に成膜することができる。例えばステンレススチールの母材上に超硬合金材料を粉末、箔、線材などの形で供給し、これにレーザーを照射して溶融接合させる。レーザー照射に代えてアーク溶接で超硬合金のクラッディングを行っても良い。
【0024】
シートリング2も概略環形状を有し、例えばステレススチールの金属加工部品である。シートリングインサート21も概略環形状で、セラミック材料の成形品からなる。シートリング2の内側にシートリングインサート21を嵌め込んだ状態で、シートリングリティナ22により両者をお互いに固定し、一体化する。セラミック材料としては、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、ジルコニアなどが候補として上げられる。本発明では特に窒化珪素が好適である。窒化珪素は化学式Si3N4で表される無機化合物であり、非酸化物セラミックスの代表である。シリコンナイトライドとも云う。シリコンナイトライドの結晶構造は六方晶系で例えば焼結窒化珪素を用いることができる。この窒化珪素は非常に硬質である点に特徴があり、エロージョン・コロージョンによる減肉を防ぐ上で適している。窒化珪素は、例えば珪素粉末と触媒機能を持つ焼結助剤の混合粉末を、ミルで混合し成形、窒化・焼結で作成する。
【0025】
ボトムガイド6も概略環形状を有し、ステンレススチールの金属加工部品である。ボトムガイド6の内径部分にはブッシング62が装着されている。ブッシング62はプラグ(図示せず)の先端部をZ軸方向に沿って案内する。ブッシング62の内面にも超硬合金材料の膜が肉盛溶接により形成されている。またボトムガイド6の肩の部分が、ケーシングの内側に露出して流体と接する部分61となっており、ここにもコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料が肉盛溶接により形成されている。ボトムガイド6の下の部分はブッシング62によって案内されたプラグの先端を逃がすために凹部63が形成されている。
【0026】
図3は、プラグの具体的な構成を示す模式図である。図示するようにプラグ4は例えばステンレススチールの金属加工品からなり、概略棒状である。プラグ4の本体部は直径が比較的大きい径大部となっており、先端42が比較的直径の小さい径小部となっている。径大部(本体部)と径小部(先端部42)との間に段差が形成されている。プラグ4の本体部にはステム5が接続している。このステム5はZ軸に沿って上方に延在しており、図示しないアクチュエータに接続している。
【0027】
プラグインサート41は概略筒形状からなり、窒化珪素の焼結体からなる。プラグインサート41は内部が中空となっており、ここにプラグ4の先端部42が挿入される。プラグインサート41はプラグ4の段差部に度当りし、先端部からはワッシャ44を介してナット43により固定される。ナット43を締め付けることにより、プラグインサート41はプラグ4の段差部とワッシャ44との間で圧縮応力を受けて強固に固定される。セラミック材料は圧縮応力に強いため、機械的に安定した状態でプラグ4に取り付けることができる。
【0028】
本発明では、プラグ4のプラグインサート41側とシートリング2のシートリングインサート21側とが互いに当接離間して流量及び圧力制御を行っている。互いに接触するバルブ部分が高硬度のセラミック材料からなるため、エロージョン・コロージョンの影響を受け難く安定したプロセス制御を実現できる。
【0029】
プラグ4の後端部はボンネットに組み込まれたブッシング82によって案内されている。プラグ4の先端部はボトムガイド6に組み込まれたブッシング62によって案内されている。プラグ4は両端をブッシングで案内された両端支持構造を行っており、耐振動性に優れている。また耐摩耗性にも優れている。
【0030】
図4は、プラグ(弁体)の斜視図である。プラグ4はその先端側にプラグインサート41がナットによって取り付けられている。プラグインサート41は、シートリングの開口に当接する外周部分が湾曲している。
【0031】
図5は、シートリング(弁座)の斜視図である。シートリング2は概略環形状を有し、その内側にシートリングインサートが嵌め込まれている。前述したようにこのシートリングインサートはセラミックの焼結体からなり、弁座の開口を規定している。
【0032】
図6は、カバープレート3の斜視図である。カバープレート3の中央には、プラグ4の後端部を挿通するための穴が形成されている。カバープレート3の下面側には、肉盛溶接で超硬合金材料の膜が形成されている。
【0033】
図7は、ボトムガイド6の斜視図である。ボトムガイド6は上側部分と下側部分に分かれている。上側部分にはプラグ4の先端部をZ軸方向に案内するブッシングが嵌め込まれている。ボトムガイドの下側はプラグの先端を逃がすために凹部が形成されている。特徴事項として、凹部は、流体に含まれる微粒子が滞留することを防止するために切欠部65を有している。またボトムガイド6の肩の部分は、やはり肉盛溶接で超硬合金材料がクラッディングされている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る調節弁装置は、例えば化学プラントのプロセス制御用のコントロールバルブとして産業上利用可能である。本発明に係るコントロールバルブは特に耐腐食性に優れており、廃液処理など過酷な条件下でも安定した制御性能を発揮できる。エロージョン・コロージョンによる弁座や弁体さらにはボンネット下部の減肉が起こり難いため、内弁交換サイクルを延長化でき、メンテナンスコストの削減に繋がる。
【符号の説明】
【0035】
1:ケーシング 2:シートリング 3:カバープレート 4:プラグ 5:ステム 6:ボトムガイド 7:ボトムフランジ 8:ボンネット O:開口 Z:中心軸(駆動軸)
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学プラントなどで流体の圧力調整や流量調整に使われる調節弁装置(コントロールバルブ)に関する。
【背景技術】
【0002】
調節弁装置は、基本的にケーシング(ボディ)とその上下に位置するボンネット及びボトムフランジとで構成されている。ケーシングの内部には、流体の入口側にある一次室と、流体の出口側にある二次室と、両室を隔てる隔壁とが形成されている。隔壁にはシートリング(弁座)が取り付けられている。このシートリングに対してプラグ(弁体)を前進後退駆動して、一次室側と二次室側とで流体の流量や圧力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−236184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学プラントなどで処理対象となる流体には、アルカリ性もしくは酸性の廃液なども含まれている。このように腐食性の高い廃液処理に用いる調節弁装置では、プラグやシートリングなどの流量制御部にエロージョン・コロージョンが発生する。これにより、プラグやシートリングの肉厚が減少し(いわゆる減肉)問題となっている。またプラグ(弁体)やシートリング(弁座)などの流量制御部に加え、ボンネットの下部にもエロージョン・コロージョンに起因するかなりの減肉が生じている。これら調節弁装置の主要構成部品の減肉により、流量特性が変化しプロセスの制御性が低下するという課題がある。プロセス制御性を維持するためには、減肉が生じたバルブ部品を頻繁に交換しなければならず、メンテナンスが高コスト化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は腐食性の流体に対しても高度の耐久性を有する調節弁装置を提供することを目的とする。係る目的を達成するために以下の手段を講じた。即ち本発明に係る調節弁装置は、基本的にケーシング(ボディ)と、シートリング(弁座)と、プラグ(弁体)と、カバープレートと、ステムとを有する。ケーシングは、流体の入口側にある一次室と、流体の出口側にある二次室と、これら一次室及び二次室を互いに隔てる隔壁とを有する。シートリングは隔壁に配されており、一次室と二次室とに連通する開口を有する。カバープレートは、シートリングと対面する位置でケーシングに取り付けられている。プラグは、カバープレートを挿通してケーシングに取り付けられている。プラグは、ケーシング内でシートリングの開口に整合している。ステムは、ケーシングから突出したプラグの端部に係合しプラグをシートリングの開口に対して前進後退可能に駆動して、一次室側と二次室側とで流体の流量もしくは圧力を調整する。
特徴事項として、シートリングは少なくとも開口を形成する部分が、流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。またプラグも、少なくとも開口と当接する部分が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。更にカバープレートは、ケーシングの内側に露出して流体に接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。
【0006】
本発明に係る調節弁装置は、好ましくはプラグの先端部分をその駆動方向に沿って案内するボトムガイドを備えている。このボトムガイドは、シートリングを間にしてカバープレートと反対側でケーシングに取り付けられている。このボトムガイドは、ケーシングの内側に露出して流体と接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。更に好ましくは、このボトムガイドはプラグを案内する部分(ブッシング)から突出するプラグの先端を逃がすために凹部を有する。この凹部は、流体に含まれる微粒子が凹部に滞留することを防止する切欠部を有する。
【0007】
好ましくは、プラグはその先端に形成された段付部にナットで取り付けられるプラグインサートを有している。このプラグインサートはシートリング側の開口に当接して流量もしくは圧力の調整を行うもので、前述したセラミック材料からなる。また好ましくは、シートリングはその内側に嵌合するシートリングインサートを有している。このシートリングインサートが開口を形成しており、前述したセラミック材料からなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラグ及びシートリングが互いに当接する部分(減圧部)にセラミック材料を用いている。このセラミック材料は耐腐食性に優れており、酸性もしくはアルカリ性の流体に対してもエロージョン・コロージョンが生じにくく、長時間使用しても減肉の恐れが少ない。また、ボンネットの下部でケーシングとの間にカバープレートを配している。そしてケーシングの内側に露出して流体に接するカバープレートの部分に、耐腐食性の超硬合金材料を用いている。これにより、ボンネット下部のエロージョン・コロージョンを防いでいる。このように、プラグ、シートリング及びカバープレートなど調節弁装置の主要部に高硬度材料を使用することにより、エロージョン・コロージョンによる減肉を防ぎ、以って制御性の改善を達成している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る調節弁装置の全体構成を示す模式的な断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る調節弁装置の部品構成及びその配置関係を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る調節弁装置に組み込まれるプラグの構成を示す模式的な断面図である。
【図4】図4は、プラグの斜視図である。
【図5】図5は、シートリングを示す斜視図である。
【図6】図6は、カバープレートを示す斜視図である。
【図7】図7は、ボトムガイドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る調節弁装置(コントロールバルブ)の全体構成を示す模式的な縦断面図である。この縦断面図は、X軸とZ軸を含む平面を断面とするものである。図示するようにX軸は入口と出口との間で水平方向に伸びている。図示の例は、X軸の左側が入口側になり、右側が出口側となっている。Z軸は垂直方向に伸びており、本調節弁装置の中心軸及び駆動軸となっている。なお理解を容易にするため、Z軸を中心にして左側半分はバルブの全閉状態を表し、右側半分はバルブの全開状態を表している。
【0011】
本調節弁装置は、基本的な構成要素として、ケーシング1とシートリング2とカバープレート3とプラグ4とステム5とを有する。ケーシング(ボディ)1は例えばWCBなどの鋳鋼からなり鋳造品である。この鋳造品でできたケーシング1はバルブ本体(ボディ)を構成している。一方シートリング2、カバープレート3、プラグ4及びステム5は、このケーシング1に組み込まれる主要構成部品群であって、例えばS31600などのステンレスチールからなる金属加工部品である。
【0012】
ケーシング1は、流体の入口側にある一次室11と、流体の出口側にある二次室12と、隔壁13とを有している。隔壁13は、一次室11と二次室12を互いに隔てる境目となっている。図示の例では、ケーシング1の中央部分で一次室11と二次室12が上下に配置している。図示の例では、一次室11が下側(ボトム)に位置し、二次室12が上側(トップ)に位置している。但し本発明は上述した一次室と二次室の配置に限定されるものではなく、コントロールバルブの使用条件に応じて、適宜レイアウトされる。
【0013】
シートリング2は隔壁13に配されており、一次室11と二次室12とに連通する開口Oを有する。シートリング1はケーシング2の内部でほぼ中央に位置し、その開口Oは一次室11から二次室12に向かう流体の流路となっている。
【0014】
カバープレート3は、シートリング2と対面する位置でケーシング1に取り付けられている。このカバープレート3は、ケーシング1のトップに位置し、その下面は二次室12に露出している。カバープレート3はケーシング1とボンネット8との間に介在しており、両者に挟み込まれる状態で取り付けられている。即ち、ケーシング1のトップにカバープレート3を載置し、その上にボンネット8を搭載し、ナット81でボンネット8をケーシング1に取り付けるようになっている。
【0015】
プラグ4はカバープレート3を挿通してケーシング1に取り付けられている。プラグ4は、ケーシング1内でシートリング2の開口に整合している。シートリング2の開口Oに対してプラグ4を前進後退させることにより、一次室11から二次室12に向かう流体の流量もしくは圧力を制御している。図1のZ軸を中心にして左側半分は、プラグ4が前進してシートリング2に当接し、開口Oを閉じた状態を表している。図1のZ軸を中心にして右側半分は、プラグ4が後退してシートリング2から離間し、開口Oを開いた状態を表している。なお、カバープレート3からケーシング1の外部に突出したプラグ4の後端部分はボンネット8の内部に配されたブッシング82によって案内されている。
【0016】
ステム5は、ケーシング1から突出したプラグ4の後端部に係合している。ステム5はボンネット8の中心部を通って外部に延在しており、図示しないアクチュエータと接続している。ステム5はプラグ4をシートリング2の開口Oに対して前進後退可能に駆動して、一次室11側と二次室12側とで流体の流量もしくは圧力を調整する。以上に説明したシートリング2、カバープレート3、プラグ4、ステム5及びボンネット8は中心軸でもあり駆動軸ともなっているZ軸に沿って整合している。
【0017】
本発明の特徴事項として、シートリング2は少なくとも開口Oを形成する部分(21)が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなる。このセラミック材料は好ましくは窒化珪素を用いることができる。またプラグ4も、少なくとも開口Oと当接する部分(41)が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料(例えば窒化珪素)からなる。加えて、カバープレート3はケーシング1の内側に露出して流体に接する部分31が、耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料(例えばステライト、登録商標)からなる。このように本発明では、コントロールバルブの主要構成部品であるシートリング2、カバープレート3及びプラグ4に耐腐食性の材料を用いており、腐食性の強い流体を制御する場合でもエロージョン・コロージョンの発生を防ぐことができる。ここで用いたセラミック材料や超硬合金材料はいずれも高硬度材料であり、エロージョン・コロージョンによって減肉が生じるおそれが低くなっている。このようにコントロールバルブの主要構成部品に高硬度材料を用いることで、制御性を格段に改善することができる。
【0018】
本実施形態では、プラグ4の先端部分42をその駆動方向(Z軸)に沿って案内するボトムガイド6を備えている。ボトムガイド6は内部にブッシング62を備えており、プラグ4のZ軸方向の移動を案内している。ボトムガイド6はケーシング1とボトムフランジ7との間に配されている。ケーシング1にボトムガイド6を配置した後ボトムフランジ7を重ね、ナット71でケーシング1に取り付けるようになっている。図示するように、ボトムガイド6はシートリング2を間にしてカバープレート3と反対側でケーシング1に取り付けられている。特徴事項として、ケーシング1の内側(図示の例では一次室11側)に露出して流体と接する部分61が、耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる。前述したシートリング2、プラグ4及びカバープレート3ばかりでなく、ボトムガイド6も耐腐食性の高硬度材料で被覆することにより、本コントロールバルブの制御性を一層改善することができる。なお、ボトムガイド6の内部に組み付けられたブッシング62の表面も超硬合金材料で被覆している。このボトムガイド6は、プラグ4を案内するブッシング62から突出するプラグ4の先端42を逃がすために凹部63を有する。ボトムガイド6を間にして一次室11側と凹部63側とで圧力差が生じないようにするため、一次室11と凹部63は連通している。このため流体に微粒子などが含まれている場合、凹部63には流体によって運ばれる微粒子が滞留するおそれがある。この微粒子の滞留を防止するため、ボトムガイド6の凹部63には切欠部が形成されている。
【0019】
プラグ4は、その先端42に形成された段付部にナット43で取り付けられるプラグインサート41を有している。このプラグインサート41はプラグ4の上下駆動に伴ってシートリング2の開口Oに当接する部分である。本実施形態では、このプラグインサート41が前述したセラミック材料の成形品からなる。またシートリング2はその内側に嵌合するシートリングインサート21を有している。このシートリングインサート21が開口Oを形成しており、やはり前述したセラミック材料の成形品からなる。
【0020】
プラグ4の先端部はボトムガイド6によって案内されており、後端側もボンネット8内のブッシング82によって案内されている。本装置はトップとボトムにガイドがある両端案内構造のボディとなっている。ボンネット8内のブッシング82とボトムガイド6内のブッシング62によってZ軸方向の移動が案内されており、流体による、振動、騒音、摩耗などの影響を少なくすることができる。
【0021】
上述した調節弁装置は化学プラントに用いて好適である。但し本発明の用途は化学プラントに限られるものではなく、発電設備や他の用途にも適用できることは言うまでもない。本装置は、例えば化学プラントの廃液処理に利用できる。この廃液は例えばpHが10ないし12のアルカリ性を有し、酸化マグネシウムを主成分とする固形物が含まれている。この固形物は例えば直径が0.5mm程度の微粒子である。使用温度は200℃程度に達する。使用圧力は、一次側が3MPaG程度で二次側が例えば2.5MPaG程度である。本コントロールバルブは蒸気や平常の空気はもとより、高粘度で弁内部に溜まりやすい流動物を含んだプロセス流体制御用にも適している。
【0022】
図2は本装置の部品構成ならびに部品配置を示す模式図である。図示するように、カバープレート3、シートリング2及びボトムガイド6がZ軸を中心にして上から順に配置している。カバープレート3は概略環形状を有し、例えばステンレススチールの金属加工品からなる。カバープレート3の中央にはプラグ(図示せず)の後端部を挿通するために穴が開けられている。
【0023】
特徴事項としてカバープレート3の下面側でケーシングの内側に露出して流体に接する部分31が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料(ステライト、登録商標)からなる。この超硬合金材料はコバルト40ないし55%、クロム15ないし35%、タングステン10ないし20%、炭素2ないし4%、鉄5%以下を主成分とする。この超硬合金は硬く耐摩耗性に優れているとともに、耐食性にも優れている。この超硬合金材料は、ハードフェーシング(肉盛)により、母材上に成膜することができる。例えばステンレススチールの母材上に超硬合金材料を粉末、箔、線材などの形で供給し、これにレーザーを照射して溶融接合させる。レーザー照射に代えてアーク溶接で超硬合金のクラッディングを行っても良い。
【0024】
シートリング2も概略環形状を有し、例えばステレススチールの金属加工部品である。シートリングインサート21も概略環形状で、セラミック材料の成形品からなる。シートリング2の内側にシートリングインサート21を嵌め込んだ状態で、シートリングリティナ22により両者をお互いに固定し、一体化する。セラミック材料としては、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、ジルコニアなどが候補として上げられる。本発明では特に窒化珪素が好適である。窒化珪素は化学式Si3N4で表される無機化合物であり、非酸化物セラミックスの代表である。シリコンナイトライドとも云う。シリコンナイトライドの結晶構造は六方晶系で例えば焼結窒化珪素を用いることができる。この窒化珪素は非常に硬質である点に特徴があり、エロージョン・コロージョンによる減肉を防ぐ上で適している。窒化珪素は、例えば珪素粉末と触媒機能を持つ焼結助剤の混合粉末を、ミルで混合し成形、窒化・焼結で作成する。
【0025】
ボトムガイド6も概略環形状を有し、ステンレススチールの金属加工部品である。ボトムガイド6の内径部分にはブッシング62が装着されている。ブッシング62はプラグ(図示せず)の先端部をZ軸方向に沿って案内する。ブッシング62の内面にも超硬合金材料の膜が肉盛溶接により形成されている。またボトムガイド6の肩の部分が、ケーシングの内側に露出して流体と接する部分61となっており、ここにもコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料が肉盛溶接により形成されている。ボトムガイド6の下の部分はブッシング62によって案内されたプラグの先端を逃がすために凹部63が形成されている。
【0026】
図3は、プラグの具体的な構成を示す模式図である。図示するようにプラグ4は例えばステンレススチールの金属加工品からなり、概略棒状である。プラグ4の本体部は直径が比較的大きい径大部となっており、先端42が比較的直径の小さい径小部となっている。径大部(本体部)と径小部(先端部42)との間に段差が形成されている。プラグ4の本体部にはステム5が接続している。このステム5はZ軸に沿って上方に延在しており、図示しないアクチュエータに接続している。
【0027】
プラグインサート41は概略筒形状からなり、窒化珪素の焼結体からなる。プラグインサート41は内部が中空となっており、ここにプラグ4の先端部42が挿入される。プラグインサート41はプラグ4の段差部に度当りし、先端部からはワッシャ44を介してナット43により固定される。ナット43を締め付けることにより、プラグインサート41はプラグ4の段差部とワッシャ44との間で圧縮応力を受けて強固に固定される。セラミック材料は圧縮応力に強いため、機械的に安定した状態でプラグ4に取り付けることができる。
【0028】
本発明では、プラグ4のプラグインサート41側とシートリング2のシートリングインサート21側とが互いに当接離間して流量及び圧力制御を行っている。互いに接触するバルブ部分が高硬度のセラミック材料からなるため、エロージョン・コロージョンの影響を受け難く安定したプロセス制御を実現できる。
【0029】
プラグ4の後端部はボンネットに組み込まれたブッシング82によって案内されている。プラグ4の先端部はボトムガイド6に組み込まれたブッシング62によって案内されている。プラグ4は両端をブッシングで案内された両端支持構造を行っており、耐振動性に優れている。また耐摩耗性にも優れている。
【0030】
図4は、プラグ(弁体)の斜視図である。プラグ4はその先端側にプラグインサート41がナットによって取り付けられている。プラグインサート41は、シートリングの開口に当接する外周部分が湾曲している。
【0031】
図5は、シートリング(弁座)の斜視図である。シートリング2は概略環形状を有し、その内側にシートリングインサートが嵌め込まれている。前述したようにこのシートリングインサートはセラミックの焼結体からなり、弁座の開口を規定している。
【0032】
図6は、カバープレート3の斜視図である。カバープレート3の中央には、プラグ4の後端部を挿通するための穴が形成されている。カバープレート3の下面側には、肉盛溶接で超硬合金材料の膜が形成されている。
【0033】
図7は、ボトムガイド6の斜視図である。ボトムガイド6は上側部分と下側部分に分かれている。上側部分にはプラグ4の先端部をZ軸方向に案内するブッシングが嵌め込まれている。ボトムガイドの下側はプラグの先端を逃がすために凹部が形成されている。特徴事項として、凹部は、流体に含まれる微粒子が滞留することを防止するために切欠部65を有している。またボトムガイド6の肩の部分は、やはり肉盛溶接で超硬合金材料がクラッディングされている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る調節弁装置は、例えば化学プラントのプロセス制御用のコントロールバルブとして産業上利用可能である。本発明に係るコントロールバルブは特に耐腐食性に優れており、廃液処理など過酷な条件下でも安定した制御性能を発揮できる。エロージョン・コロージョンによる弁座や弁体さらにはボンネット下部の減肉が起こり難いため、内弁交換サイクルを延長化でき、メンテナンスコストの削減に繋がる。
【符号の説明】
【0035】
1:ケーシング 2:シートリング 3:カバープレート 4:プラグ 5:ステム 6:ボトムガイド 7:ボトムフランジ 8:ボンネット O:開口 Z:中心軸(駆動軸)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、シートリングと、カバープレートと、プラグと、ステムとを有し、
前記ケーシングは、流体の入口側にある一次室と、流体の出口側にある二次室と、前記一次室と二次室とを隔てる隔壁とを有し、
前記シートリングは、該隔壁に配されており、該一次室と該二次室とに連通する開口を有し、
前記カバープレートは、該シートリングと対面する位置で該ケーシングに取り付けられており、
前記プラグは、該カバープレートを挿通して該ケーシングに取り付けられており、ケーシング内で該シートリングの開口に整合しており、
前記ステムは、該ケーシングから突出した該プラグの端部に係合し、該プラグを該シートリングの開口に対して前進後退可能に駆動して、一次室側と二次室側とで流体の流量若しくは圧力を調整する調整弁装置であって、
前記シートリングは、少なくとも該開口を形成する部分が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなり、
前記プラグは、少なくとも該開口と当接する部分が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなり、
前記カバープレートは、該ケーシングの内側に露出して流体に接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる
調節弁装置。
【請求項2】
前記プラグの先端部分をその駆動方向に沿って案内するボトムガイドを備えており、
前記ボトムガイドは、該シートリングを間にして該カバープレートと反対側で該ケーシングに取り付けられており、該ケーシングの内側に露出して流体と接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる
請求項1記載の調節弁装置。
【請求項3】
前記ボトムガイドは、該プラグを案内する部分から突出する該プラグの先端を逃がすために凹部を有し、
前記凹部は、流体に含まれる微粒子が該凹部に滞留することを防止する切欠部を有する
請求項2記載の調節弁装置。
【請求項4】
前記プラグは、その先端に形成された段付部にナットで取り付けられるプラグインサートを有しており、
前記プラグインサートが、該超硬合金材料からなる
請求項1記載の調節弁装置。
【請求項5】
前記シートリングは、その内側に嵌合するシートリングインサートを有しており、
前記シートリングインサートが該セラミック材料からなる
請求項1記載の調節弁装置。
【請求項1】
ケーシングと、シートリングと、カバープレートと、プラグと、ステムとを有し、
前記ケーシングは、流体の入口側にある一次室と、流体の出口側にある二次室と、前記一次室と二次室とを隔てる隔壁とを有し、
前記シートリングは、該隔壁に配されており、該一次室と該二次室とに連通する開口を有し、
前記カバープレートは、該シートリングと対面する位置で該ケーシングに取り付けられており、
前記プラグは、該カバープレートを挿通して該ケーシングに取り付けられており、ケーシング内で該シートリングの開口に整合しており、
前記ステムは、該ケーシングから突出した該プラグの端部に係合し、該プラグを該シートリングの開口に対して前進後退可能に駆動して、一次室側と二次室側とで流体の流量若しくは圧力を調整する調整弁装置であって、
前記シートリングは、少なくとも該開口を形成する部分が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなり、
前記プラグは、少なくとも該開口と当接する部分が流体に対して耐腐食性を有するセラミック材料からなり、
前記カバープレートは、該ケーシングの内側に露出して流体に接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる
調節弁装置。
【請求項2】
前記プラグの先端部分をその駆動方向に沿って案内するボトムガイドを備えており、
前記ボトムガイドは、該シートリングを間にして該カバープレートと反対側で該ケーシングに取り付けられており、該ケーシングの内側に露出して流体と接する部分が耐腐食性でコバルト及びクロムを主成分とする超硬合金材料からなる
請求項1記載の調節弁装置。
【請求項3】
前記ボトムガイドは、該プラグを案内する部分から突出する該プラグの先端を逃がすために凹部を有し、
前記凹部は、流体に含まれる微粒子が該凹部に滞留することを防止する切欠部を有する
請求項2記載の調節弁装置。
【請求項4】
前記プラグは、その先端に形成された段付部にナットで取り付けられるプラグインサートを有しており、
前記プラグインサートが、該超硬合金材料からなる
請求項1記載の調節弁装置。
【請求項5】
前記シートリングは、その内側に嵌合するシートリングインサートを有しており、
前記シートリングインサートが該セラミック材料からなる
請求項1記載の調節弁装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−80489(P2011−80489A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230656(P2009−230656)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(595093935)日本フイツシヤ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(595093935)日本フイツシヤ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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