説明

調節手段を有する斜板構造の軸流ピストン装置

本発明は、作動手段を備える斜板構造の軸流ピストン装置に関連する。
作動手段は、作動ピストン(3)と係合ピストン(4)とを具備する。作動ピストン(3)と係合ピストン(4)とは、各々が第1端部により斜板(2)に接続され、第1端部の方向に作用する力が各々の第2端部に印加される。休止位置の方向に斜板(2)をリセットするため、作動ピストン(3)又は係合ピストン(4)の斜板(2)に面する第1側に配設されたばねベアリング(12,17)に支持された弾性要素(10,11)が、作動ピストン(3)及び係合ピストン(4)に設けられている。他の方向において弾性要素(10,11)は、作動ピストン(3)又は係合ピストン(4)の、斜板(2)から離間した端部に配設された第2ばねベアリング(13,18)に支持されている。斜板(2)が休止位置から偏向すると、作動ピストン(3)又は係合ピストン(4)の第2ばねベアリング(13,18)が、ハウジング側の対向ベアリングに支持される。他の作動ベアリング(3)又は係合ベアリング(4)の各々の第2ばねベアリング(13,18)は、ピストン側の対向ベアリングに支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節手段を有する斜板構造の軸流ピストン装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
軸流ピストン装置は、回転可能な状態で取り付けられたシリンダドラム内で長手方向に変位可能となるように配置された複数のピストンを具備する。ピストンは、斜板又は旋回受台に支持され、その傾斜角度がシリンダドラムの回転軸に対して調節される。傾斜角度に応じて排出量が変化する。調節手段は、斜板の傾斜角度を調節するために設けられている。この調節手段は例えば、傾斜角度を第1方向に変化させるための調節ピストンと、斜板の傾斜角度を反対方向に変化させるための対向ピストンとで構成される。常圧システムにおいて、また作動手段を作動させずに、規定の斜板端部位置を実現するため、調節ピストン及び/又は対向ピストンは概して(各々が)ばね力の影響を受ける。こうして発生された力の均衡状態の場合、斜板は軸流ピストン装置の端部位置にある。例えば二方向に調節される軸流ピストン装置の場合には、この休止位置は中立位置であり、こうして、シリンダドラムが回転するとこの中立位置においてピストンのゼロ行程が生じる。
【0003】
従来、圧縮状態にあって調節ピストン/対向ピストンにより片側が画定される内部空間に、戻りばねが配置されて、調節ピストン/対向ピストンのこの側に作用する。しかし、調節ピストンと対向ピストンとが軸流ピストン装置に組み込まれる結果、装置全体の構造の長さが増える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用意される構造空間が好都合な方法で利用され、さらに簡単な方法で組み立てられる調節手段を有する斜板構造の軸流ピストン装置を設けることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を持つ本発明による軸流ピストン装置によって達成される。
【0006】
本発明による軸流ピストン装置は、調節手段を有する斜板構造で形成されている。調節手段は、調節ピストンと対向ピストンとを含み、調節ピストンの有効方向と対向ピストンのそれとは、斜板の移動に対して相互に反対である。調節ピストン、そして対向ピストンも、各々が第1端部において斜板と協働して、これに推力を伝達する。各自の第2端部において、調節ピストン、そして対向ピストンは、制御力の影響を個別に受ける。中立位置と一致していてもよいがそうである必要はない休止位置の方向に斜板を復帰させるため、調節ピストン、そして対向ピストンにも、弾性要素がそれぞれ設けられている。コイルばねとして構成されることが好ましいこの弾性要素は、調節ピストン/対向ピストンの、斜板と対向する側に配置される第1ばねベアリングに支持される。斜板から離間した端部において、弾性要素はそれぞれ第2ばねベアリングに支持される。斜板が休止位置から偏向すると、斜板の偏向方向に応じて、調節ピストンの第2ばねベアリングと対向ピストンの第2ばねベアリングのいずれかが、ハウジング側に固定された対向ベアリングに支持される。反対に、他方の対向ピストン又は調節ピストンの各自の第2ばねベアリングは、ピストン側に固定された対向ベアリングに支持される。
【0007】
調節ピストン/対向ピストンの、第1端部と第2端部との間に形成された範囲に戻りばねを配置することにより、軸方向における軸流ピストン装置の構造の長さを増やす必要がない。斜板が休止位置から偏向した時に戻りばねの一方のみがハウジング側の当接部によりそれぞれ圧縮されるように2本の戻りばねを使用することは、調節ピストン及び対向ピストンのためのそれぞれ一つの移動方向について、ハウジング側の対向ベアリングのみが設けられるだけでよいという点で好都合である。この調節ピストン又は対向ピストンの移動方向が反対方向である場合は、反対に、各自の戻りばねが拘束状態で第1ばねベアリングと第2ばねベアリングとの間で同時に移動し、それから各自のピストンに設けられた対向ベアリングに支持される。さらにこの構成は、軸流ピストン装置の駆動機構がハウジングに挿入される前の、戻りばねを含む調節手段全体の事前組立を可能にする。
【0008】
本発明による軸流ピストン装置の好都合な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0009】
戻りばねのためハウジング側に固定される対向ベアリングを形成するため、調節ピストン/対向ピストンに貫通される支持リングが設けられることが好ましい。支持リングの内径は、各自の第2ばねベアリングの径方向延在範囲より短い。支持リングを貫通する調節ピストン/対向ピストンの直径がこのような取付構成を可能にするのに充分なほど短い限り、この支持リングはいずれもハウジングに固定状態で取り付けられる。反対に、調節ピストン/対向ピストンの第2端部のピストン直径が長い場合に特に使用される代替実施形態によれば、調節ピストン/対向ピストンにより貫通される支持リングと第2ばねベアリングとの間に、押さえばねが配置される。この押さえばねは、軸流ピストン装置の動作中に発生する斜板、ゆえに調節ピストン及び対向ピストンのいかなる位置においても、軸流ピストン装置のハウジングに形成されるベアリング面との当接状態に支持リングを保持する。軸流ピストン装置のハウジングに支持リングを事前に組み立てる必要がなく、特に、調節ピストン/対向ピストンの組立後に引き続き行われる固定も必要ないという点で、このような手順は好都合である。
【0010】
支持リングは、調節ピストン/対向ピストンの調節圧力室の直径よりも長い径方向長さを有し、調節ピストン/対向ピストンに貫通されるその貫通孔は、関連の調節ピストン又は対向ピストンの第2端部より小さい。
【0011】
組立を簡単にするため、第2調節ピストンの第1端部に面する側で、調節ピストンの第2端部にセンタリング手段が形成される。支持リングはこれに対応する形状を備え、事前組立中には押さえばねにより支持リングがこれとの当接状態に保持される。この規定位置では、この目的のために設けられたハウジングのボアへ調節ピストン/対向ピストンを挿入することで、支持リングが簡単に組み立てられる。装置の動作中のいかなる時点でも支持リングの対応形状と接触することがない調節ピストンの箇所にセンタリング手段が設けられる、つまりベアリング面への支持リングの確実な固定が押さえばねによって保証されるのである。
【0012】
調節ピストン又は対向ピストンの第2端部が収容されるボアに調節圧力室又は作用圧力室を形成するため、支持リングはこのボアを部分的に閉鎖することが好ましい。このボアの部分的閉鎖により、ボアの直径より直径の短いばね板を第2ばねベアリングとして使用することが可能である。このように小さいばね板を使用することで、必要な移動間隙が生成される、つまり、斜板の位置と関係なくばね板とシリンダドラムとの間の衝突が確実に防止される。調節ピストン/対向ピストンの第2端部に対して後方にある内部空間であるボアの内部空間をハウジングの残りの内部空間に接続する孔を支持リングに設けることが好ましい。このように縮径された支持リングは、対向ピストン直径より概ね長い直径を持つ調節ピストンの側で特に使用される。
【0013】
以下の説明は、長いピストン直径を持つ調節ピストンと、第2端部では明らかにこれより短い直径をそれぞれ持つ対向ピストンとを有する本発明による軸流ピストン装置の例示的実施形態に関連する。以下、比較的短い直径を持つ第2ばねベアリングとしてばね板を使用できるようにピストンの縮径に支持リングが使用されることが、調節ピストンのみについて示される。しかし、対向ピストンの直径のため、この箇所で支持リングも使用されるほどこのピストンを収容するボアの直径を大きくすることは、対向ピストンの一部でも可能であり、この支持リングは類似の方法で配置され、押さえばねにより保持される。
斜板構造の本発明による軸流ピストン装置の例示的実施形態が、以下の説明でより詳細に記載され、図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による軸流ピストン装置の段階的部分断面図を示す。
【図2】軸流ピストン装置の休止位置における調節ピストンの範囲についての拡大図を示す。
【図3】斜板の第1端部位置における調節ピストンの範囲についての拡大図を示す。
【図4】本発明により構成された支持リングの第1の図を示す。
【図5】本発明による軸流ピストン装置の支持リングの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明による軸流ピストン装置1の段階的な断面図を示す。図1の上半分は、軸流ピストン装置の下半分の断面と平行である第1断面に沿ったものである。二つの断面は、図の例示的実施形態では旋回受台2としての形を取る斜板の回転軸に対して垂直である。しかし、調節ピストン3と対向ピストン4とを一つの平面に有する調節手段を設けることもやはり可能である。しかし省スペースの観点から見ると、オフセット構成が好ましい。調節ピストン3と対向ピストン4の各々は、それぞれボールソケットジョイントを介してそれぞれの保持セグメントに接続された第1端部を具備する。保持セグメントは、その一部が旋回受台2に固定状態で接続され、例えばねじ止めされている。推力が調節ピストン3を通して受台へ伝達され、図の例示的実施形態では時計方向に旋回受台2を回転させるのに使用される。
【0016】
対向ピストン4により伝達される推力により、反対方向に作用する力が旋回受台2へ伝達される。その結果、上述した移動に反して、旋回受台2が反時計方向に旋回する。
【0017】
旋回受台2を移動させるのに必要な調節力を発生させるため、軸流ピストン装置1には二つのブラインドボア50,60が設けられている。調節ピストン3及び対向ピストン4の第2端部はそれぞれ、ブラインドボア50,60に配置されている。調節ピストン3の場合、軸流ピストン装置1のハウジングに調節圧力室5がこうして形成される。反対に、対向ピストン4は作用圧力室6を画定する。対向ピストン4の第2端部の直径は、調節ピストン3の直径より短い。作用圧力室6は、例えばポンプとしての形を取る軸流ピストン装置1の吐出圧力に永久接続されるが、調節圧力室5で発生する圧力は調整バルブ7により調節される。例えば、作用ライン圧力から減圧された圧力と容器圧力との間で調節が行われてもよい。
【0018】
作用圧力室6の作用ライン圧力は常に対向ピストン4に作用するが、調節ピストン3に作用する油圧力は調節ピストン3の第2端部で調節される。この箇所に作用する油圧力が、作用圧力室6の対向ピストン4への油圧力を超えた場合には、時計方向における旋回受台2の調節移動が生じる。
【0019】
フィードバックレバー8及びフィードバックばね9を介して旋回受台2の位置が調整バルブ7へフィードバックされる電気比例調節が、図1に示されている。このような調節機構はそれ自体が周知であり、そのためこれに関してこれ以上の詳細は不必要である。制御信号が消滅した場合には、容器圧力及び低下作用圧力の平均から求められる圧力
=A/A・P
が調節圧力室5に発生する中立位置に、調節バルブ7がある。センタリングばねは常圧状態では一つの機能のみを持つ。常圧状態では、第1戻りばね10又は第2戻りばね11の復元力のため、旋回受台2は休止位置へ移動する。第1戻りばね10はコイルばねとして構成され、対向ピストン4の一部を囲繞する。この目的のため、対向ピストン4に第1ばねベアリング12が形成されている。この第1ばねベアリング12は、ボールソケットジョイントつまり対向ピストン4の第1端部に近接して配置される。図の例示的実施形態では、例えば対向ピストンの半加工品を機械加工することにより、第1ばねベアリング12が形成される。第1戻りばね10は、対向ピストン4の第2端部の方向に第2ばねベアリング13に支持されている。対向ピストン4には径方向テーパ状範囲14が形成され、スロット状に構成された第2ばね板13がこの範囲へスライドされる。第2ばねベアリング13のピストン側対向ベアリング15が対向ピストン4に形成されるように、対向ピストン4の第2端部に向かう方向に対向ピストン4が径方向に拡張されている。この対向ベアリング15から始まって、対向ピストン4の径方向テーパ状範囲14にわたって第2ばねベアリング13が軸方向に変位する。第1ばねベアリング12とピストン側対向ベアリング15との間の離間配置は、対向ピストン4のいかなる位置でも第1戻りばね10が圧縮応力を受けるように定められる。
【0020】
時計方向における旋回受台2の調節移動の際に第1戻りばね10を圧縮するため、ハウジング側の対向ベアリングも設けられる。このハウジング側対向ベアリングは、軸流ピストン装置1のハウジングに固定される(ねじ止めされるなど)支持リング16の形である。支持リング16の内径は、対向ピストン4の第2端部が支持リング16を通ってブラインドボア60へ挿入されて作用圧力室6を形成するように定められる。対向ピストン4の第2端部が支持リング16へ挿入されるほど作用圧力室6の直径が短い場合には常に、このような形態が可能である。そのような場合、駆動機構及び対向ピストン4を組み立てる前に、軸流ピストン装置1のハウジングに支持リング16が固定される。
【0021】
反対に、調節圧力室5が減圧されることにより、軸流ピストン装置1の動作中に斜板が図1に示された休止位置から反時計方向に移動する場合には、第2ばね板13がピストン側対向ベアリング15に当接する。このような移動の場合、調節圧力室5が減圧されることによる対向ピストン4の第2端部への油圧力が、調節ピストン3の第2端部への油圧力と第2戻りばね11の力との和よりも高くなる。結果的に、対向ピストン4が図1の左側へ移動し、第1ばねベアリング12と第2ばねベアリング13との間に拘束された第1戻りばね10が、非圧縮状態で対向ピストン4とともに移動する。
【0022】
同様にコイルばねとして構成されて調節ピストン3を囲繞する第2戻りばね11のために、第1ばねベアリング17及び第2ばねベアリング18も設けられる。しかし、調節ピストン3の第2端部により調節圧力室5が中に形成されるボア50の直径のため、そして(これに関連する)調節ピストン3の第2端部の直径のため、この場合の支持リング19は、調節ピストン3の第2端部が支持リング19から軸流ピストン装置1のハウジングのボア50へ挿入されるように構成されていない。このように支持リング19の内径が大きいと、極めて大きな第2ばねベアリング18が使用されなければならないという事実が生じる。しかしこの時、ばねベアリング18のサイズにより、軸流ピストン装置1の駆動機構とこれが衝突するという結果が生じる。調節ピストン3の第2ばねベアリング18の外径が短くなる場合に、第2ばねベアリング18がボア50へ進入して調節圧力室5を形成するのを防止するため、ボア50は支持リング19に部分的に被覆されている。しかし、調節ピストン3の第2端部が支持リング19からボア50へ挿入されなくなるので、調節ピストン3の挿入前に軸流ピストン装置1のハウジングに支持リング19を事前に組み立てることが可能でない。ゆえに、最初に支持リング19が調節ピストン3の第1端部から調節ピストン3へスライドされる。押さえばね20は、支持リング19と第2ばねベアリング18との間に配置され、軸流ピストン装置1の動作中には、ハウジング側において軸流ピストン装置1に形成されたベアリング面との当接状態に支持リング19を永久保持する。これについては、図2を参照して後でさらに詳細に説明する。
【0023】
調節ピストン3の第2端部は、ボア50の直径に、又はここに配置されたブシュの内径に対応する直径を有する。こうして調節ピストン3の第2端部は、ボア50に調節圧力室5を画定する。直接ピストン3の直径は、調節ピストン3の第2端部から始まってテーパ状である。
【0024】
軸流ピストン装置1の組立時には、支持リング19が最初に調節ピストン3の第1端部から調節ピストン3へスライドされる。次に、押さえばね20が調節ピストン3にスライドされた後で、第2ばねベアリング18がスライドされる。支持リング19及び第2ばねベアリング18の各々は、調節ピストン3の第1端部より長い内径を有する。第2ばねベアリング18の内径は、支持リング19の内径より短い。第2端部に近接して調節ピストン3に形成された肩部28は、こうして第2ばねベアリング18のためのピストン側対向ベアリングを形成する。第2ばねベアリング18を配置した後、第2戻りばね11が配置される。最後に、第1ばねベアリング17が組み立てられる。第1ばねベアリング17を直接ピストン3に装着するため、調節ピストン3の第1端部にも、第1ばねベアリング17のための対向ベアリングとして肩部が形成されている。第1ばねベアリング17は、調節ピストン3の中央径方向テーパ状範囲29へスライドされるように、それ自体周知の方法で径方向にスロットが形成された構成を持つ。第2戻りばね11のばね力により、図2に図示されているように軸流ピストン装置1が組立状態にある時に、第2戻りばねは調節ピストン3の肩部と当接する。この位置では、動作中に径方向オフセットが防止されるように、調節ピストン3の直径はスロットの幅より長い。旋回受台2の位置、ゆえに調節ピストン3の位置に応じて、対向ピストン4に関して前に説明したように、ピストン側対向ベアリング28と支持リング19の形のハウジング側対向ベアリングのいずれかに第2ばねベアリング18が支持される。支持リング19に対する調節ピストン3の位置と関係なく、押さえばね20は、ハウジング側に形成されたベアリング面21との当接状態に支持リング19を常に置くことを保証する。押さえばね20は、戻りばね10,11と比較して明らかに小さなばね定数を持つ。
【0025】
調節ピストン3の第2端部をボア50へ挿入することのみによって位置決めが実施されなければならない支持リング19の確実な組立を保証できるようにするため、第1端部に面する側の調節ピストン3の第2端部にはセンタリング手段26が形成されている。このセンタリング手段26は、支持リング19の一部の対応形状27と協働する円錐台形状の区分である。対応形状27は、支持リング19の貫通孔25の範囲の面取りによって形成される。第1ばねベアリング17の組立後に、押さえばね20が、対応形状27を持つ支持リング19を、調節ピストン3の円錐台形区分の周面との当接状態に保持する。こうして支持リング19は規定位置を有し、軸流ピストン装置1の組立中に調節ピストン3の第2端部がボア50へ挿入されると、自動的にベアリング面21と当接する。
【0026】
斜板2が休止位置から時計方向に旋回した時の図2の拡大範囲が再び図3に図示されている。したがって、調節ピストン3は図2よりも図3の方がさらに左側にある。押さえばね20の力により、支持リング19はベアリング面21との当接状態を維持する。旋回受台2が時計方向に最大限変位しても、調節ピストン3のセンタリング手段26と支持リング19の対応形状27との間には離間配置がまだ残っている。このようにして、調節移動によって支持リング19が調節ピストン3の第2端部を不意に通り抜けるという結果が確実に生じない。押さえばね20を収容するため、支持リング19、そして第2ばねベアリング18にも凹部が設けられることが好ましい。これらは、第2ばねベアリング18と支持リング19との相互対向端面に配置される溝部又は段部の形で設けられる。図の例示的実施形態では、第2ばねベアリング18は溝部30を具備するのに対して、支持リング19には段部23が形成される。
【0027】
図4は、調節ピストン3の第1端部に面する側の支持リング19の状態を図示する。いくつかの均等孔24が周囲に分配されて設けられていることが分かる。これらの均等孔24は、第2端部2の、調節ピストン3の第1端部に面する側のボア50に形成された内部空間をハウジングの残りの内部空間に接続するのに使用される。その結果、調節ピストン3の移動の際に、ボア50では圧力の均等化が行われる。
【0028】
例えばピストンリングを用いて調節ピストン3の第2端部がボア50に対して密封されていることに注意すべきである。図の例示的実施形態では、ボア50にブシュが挿入されて、調節ピストン3が減摩状態でブシュ内をスライドできる。
【0029】
第2ばねベアリング18のためのハウジング側対向ベアリングの位置を固定するため、図の例示的実施形態では追加肩部33が支持リング19に形成されている。しかし、第2ばねベアリング18は、支持リング19の段無し端部側でも支持されているので、肩部が絶対的に設けられる必要があるわけではないことは容易に理解できる。しかし、追加肩部33の場合には、ばねベアリング18の追加センタリングプロセスが行われる。
【0030】
図面から明白に分かるように、図の例示的実施形態においてすべてのばねベアリングは、コイルばねとして構成されたフィードバックばね10又は11と嵌合するための延出部を具備するように構成される。このようにして、フィードバックばね11,12はそれぞれ、調節ピストン3及び対向ピストン4に対して整合される。
【0031】
最後に図5は、追加肩部33と、貫通孔25と、押さえばね20を収容するための段部23との直径が異なることを再び示す、支持リング19の断面を示す。また、調節ピストン3の第2端部に面する側には、円錐形センタリング手段26に対する対応形状27として面取りが形成されていることが明白に分かる。
【0032】
対向ピストン4又は調節ピストン3のみに関連して説明された特徴のすべてが、他のピストンにもそれぞれ適用される。
【0033】
本発明は、図示された軸流ピストン装置に限定されない。反対に、特に第1調節ピストン及び第2調節ピストンとともに示された特徴、又は戻りばねの構成を、好都合な方法で相互に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 軸流ピストン装置
2 斜板
3 調節ピストン
4 対向ピストン
5 調節圧力室
6 作用圧力室
7 調整バルブ
8 フィードバックレバー
9 フィードバックばね
10,11 弾性要素
12 第1ばねベアリング
13 第2ばねベアリング
14 径方向テーパ状範囲
15 対向ベアリング
16 支持リング
17 第1ばねベアリング
18 第2ばねベアリング
19 支持リング
20 押さえばね
21 ベアリング面
23 段部
24 均等孔
25 貫通孔
26 センタリング手段
27 対応形状
28 対向ベアリング
29 径方向テーパ状範囲
30 溝部
33 追加肩部
50,60 ブラインドボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各自の第1端部において斜板(2)と協働するとともに前記第1端部の方向に作用する力の影響を各自の第2端部において受ける調節ピストン(3)及び対向ピストン(4)を含む調節手段を有する斜板構造の軸流ピストン装置において、休止位置の方向に前記斜板(2)を復帰させるため、弾性要素(10,11)が前記調節ピストン(3)と前記対向ピストン(4)とにそれぞれ設けられて、前記斜板(2)に面する前記調節ピストン(3)又は対向ピストン(4)の端部に配置された第1ばねベアリング(12,17)に、また前記斜板(2)からさらに離間した点で前記調節ピストン(3)又は前記対向ピストン(4)に配置された第2ばねベアリング(13,18)にそれぞれ支持され、
前記斜板(2)が前記休止位置から偏向した際に、前記調節ピストン(3)又は前記対向ピストン(4)の前記第2ばねベアリング(13,18)がハウジング側に固定された対向ベアリングに支持される一方で、それぞれ他方の対向ピストン(4)又は調節ピストン(3)の前記第2ばねベアリングがピストン側に固定された対向ベアリング(15,28)に支持される、
軸流ピストン装置。
【請求項2】
支持リング(16,19)が、前記ハウジング側に固定された前記対向ベアリングを形成するようにそれぞれ設けられるとともに、前記調節ピストン(3)又は前記対向ピストン(4)に貫通されることを特徴とする請求項1に記載の軸流ピストン装置。
【請求項3】
押さえばね(20)が、同一の調節ピストン又は対向ピストン(3,4)に割り当てられた支持リング(16,19)と前記第2ばねベアリング(13,18)との間に少なくとも配置されて、前記調節ピストン又は対向ピストン(3,4)のいかなる位置においても、前記ハウジング側に形成されたベアリング面との当接状態に前記支持リング(16,19)を保持することを特徴とする請求項2に記載の軸流ピストン装置。
【請求項4】
前記支持リング(16,19)が、調節圧力室直径より大きい外側径方向延出部を有するとともに、関連の調節ピストン又は対向ピストン(3,4)の前記第2端部が配置される前記調節圧力室の直径より小さい貫通孔(25)を有することを特徴とする請求項3に記載の軸流ピストン装置。
【請求項5】
センタリング手段(26)が、前記第1端部に面する側で前記調節ピストン(3)の前記第2端部に形成され、簡易組立を目的として前記支持リング(19)の対応形状(27)とセンタリング状態で協働し、前記軸流ピストン装置(1)の動作中に、前記センタリング手段(26)と前記支持リング(19)との間の離間配置が常に維持されるように、前記センタリング手段(26)が前記調節ピストン(3)に軸方向に形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の軸流ピストン装置。
【請求項6】
前記調節ピストン(3)又は前記対向ピストン(4)の前記第2端部を収容するためのボア(50)を前記支持リング(16,19)が部分的に閉じて、少なくとも一つの均等孔(24)が前記支持リング(16,19)に設けられ、前記ボアを前記ハウジングの残りの内部空間に接続することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一つに記載の軸流ピストン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−537108(P2010−537108A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521358(P2010−521358)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006850
【国際公開番号】WO2009/024336
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】