説明

調節放出性ナイアシン処方物

ナイアシンは、大量摂取した場合、総コレステロール(TC)、LDL、およびTGのレベルを下げることが示されている。ナイアシンはまた、報告された心血管疾患患者の循環血中のHDLレベルを上げて、心血管リスクを軽減することが示されている。しかし、文献およびレポートは、ナイアシン治療に起因する紅潮を最小にすることの差し迫った必要性を示している。紅潮の発生を軽減する一方で、市販の処方物に等価な利点が得られ、且つ肝毒性がほとんどまたは全く無いナイアシン含有処方物が必要である。本発明は非膨潤性コア中にナイアシンを含む調節放出性薬学的処方物およびこの処方物の調製プロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(緒言)
本発明の態様は、経口投与のための調節(延長、遅延、および遅延−延長が含まれる)された放出形態でナイアシンを含む薬学的処方物に関する。ナイアシン誘導性の紅潮および肝毒性を調整するための本発明の処方物の使用方法も含まれる。
【背景技術】
【0002】
脂質異常症は、アテローム性動脈硬化症の発症に寄与する血漿コレステロールおよび/またはトリグリセリド(TG)の上昇であり、且つ高密度リポタンパク質(HDL)レベルが低い。原因は、原発性(遺伝性)または続発性であり得る。総コレステロール、TG、および各リポタンパク質の血漿レベルの測定によって診断する。治療は、食事の変更、運動、および脂質低下薬である。糖尿病患者には、高いTG、高いsmall,denseLDL分画、および低HDLのアテローム生成性の組み合わせを持つ傾向があるので、糖尿病は特に重大な二次的原因である(糖尿病性脂質異常症、高トリグリセリド血症性高アポB血症)。II型糖尿病患者では特にリスクが高い。この組み合わせは、肥満および/または糖尿病コントロール不良の結果であり得、これが循環する遊離脂肪酸(FFA)を増加させ、それにより、肝臓での超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロール産生を増加させ得る。次いで、TGに富んだVLDLはTGおよびコレステロールを低密度リポタンパク質(LDL)およびHDLに輸送し、TGに富んだsmall,denseLDLの形成およびTGに富んだHDLのクリアランスを促進する。糖尿病性脂質異常症は、一部の2型糖尿病患者の生活様式を特徴付けるカロリー摂取の増加および身体活動の減少によってしばしば増悪する。糖尿病を有する女性では、この形態由来の心疾患のリスクが特に高い場合がある。
【0003】
ナイアシン(ニコチン酸または3−ピリジンカルボン酸とも呼ばれる)は、白色の結晶性粉末であり、水溶性が非常に高く、式Iの構造を有する
【0004】
【化1】

ナイアシンは、大量摂取した場合、総コレステロール(TC)、LDL、およびTGのレベルを下げることが示されている。ナイアシンはまた、報告された心血管疾患患者の循環血中のHDLレベルを上げて、心血管リスクを軽減することが示されている。ナイアシンの脂質調整効果について複数の機構が提案されている。ナイアシンは、脂肪組織中の脂肪分解を遮断または阻害し、それにより、血漿中の遊離脂肪酸を減少させる。ナイアシンは、HDLに関連するコレステロールのクリアランスに影響を及ぼすことなく、肝臓によるアポリポタンパク質A1(アポA1)の取り込みを阻害する。
【0005】
商業的には、ナイアシンは、即時放出性(IR)処方物ならびに徐放性(SR)処方物および中間放出性処方物で利用可能である。ナイアシンIRは、一般に、HDL−C(高密度リポタンパク質−コレステロール)を増加させるための他のナイアシン製剤よりも有効である。脂質減少範囲は、ベースラインレベルの相違によって異なる。ナイアシンIR治療は、ゆっくり開始されるべきであり、最大1日量は3gである。以下の説明は、脂質異常症処置におけるその用量および有効性と共に、市販の種々のIR製剤およびSR製剤を強調している。この情報は、1999年8月31日付の米国退役軍人局、退役軍人健康管理における「Veterans Administration Niacin Product Selection」というタイトルのナイアシン製剤選択作業グループの報告(ウェブサイトwww.pbm.va.govで入手)に基づく。
【0006】
用量2〜3g/日のナイアシン(非処方箋IR製剤(Rugby Laboratories)を使用)により、LDL−Cが16〜22%減少し、TGが39〜42%減少し、HDL−Cが31〜35%増加した。
【0007】
最大3g/日の用量のナイアシン(処方箋IR製剤NICOLAR(商標)(Rhone−Poulenc Rorer)を使用)により、LDL−Cが28%減少し、TGが38%減少し、HDL−Cが22%増加した。さらなる研究では、最大3g/日の用量のNICOLARにより、LDL−Cが25%減少し、TGが26%減少し、HDL−Cが36%増加した。第3の研究では、平均用量2.25g/日のNICOLARにより、LDL−Cが16%減少し、TGが29%減少し、HDL−Cが27%増加した。
【0008】
用量3g/日のナイアシン(非処方箋IR製剤(Goldline Laboratories)を使用)により、LDL−Cが2%減少し、TGが29%減少し、HDL−Cが25%増加した。
【0009】
用量1.5〜3g/日のナイアシン(研究用に製造されたKos PharmaceuticalsのIR製剤を使用)により、LDL−Cが13〜21%減少し、TGが19〜24%減少し、HDL−Cが10〜24%増加した。
【0010】
市販のナイアシンSR製剤は、非処方箋製剤および処方箋製剤として利用可能である。
【0011】
ナイアシンSRは、一般に、ナイアシンIRよりもHDL−C増加に対する有効性は低いが、LDL−Cの減少に有効である。ナイアシンSRは、ナイアシンIRの用量のおよそ半分で効き始めるはずである。最大1日量は2gである。
【0012】
用量1.5〜2g/日のナイアシン(非処方箋SR製剤(Goldline Laboratories)を使用)により、LDL−Cが22%〜33%減少し、TGが25〜30%減少し、HDL−Cが13%〜17%増加した。
【0013】
用量3g/日のナイアシン(非処方箋SR製剤NICOBID(商標)(Armour Pharmaceuticals)を使用)により、LDLCが17%減少し、TGが2%減少し、HDL−Cが8%増加した。別の研究では、用量1〜2gナイアシン/日のNICOBIDにより、LDL−Cが16%減少し、TGが11%減少し、HDL−Cが12%増加した。
【0014】
用量g/日のナイアシン(非処方箋SR製剤SLO−NIACIN(商標)(Upsher−Smith)を使用)により、LDL−Cが18%減少し、TGが29%減少し、HDL−Cが16%増加した。後ろ向き研究では、平均1日量1.5gナイアシンのSLO−NIACINにより、LDL−Cが24%減少し、TGが33%減少し、HDL−Cが6%増加した。
【0015】
用量1.5g/日のナイアシン(非処方箋SR製剤ENDUR−ACIN(商標)(Endurance Products Corporation)を使用)により、LDLが16%減少し、TGが4%増加し、HDL−Cが1%未満増加した。別の研究では、用量1.5〜2g/日のENDUR−ACINにより、LDL−Cが15〜22%減少し、TGが10〜25%減少し、HDL−Cが9〜16%増加した。同一の研究により、若年患者(20〜49歳)と高齢患者(50〜70歳)との間の相違を試験した。用量1.5〜2g/日では、高齢患者では、LDL−Cが29%減少し、TGが21%減少し、HDL−Cが8%増加した。若年患者では、LDL−Cが16%減少し、TGが1%未満増加し、HDLCが7%増加した。第3の研究では、用量1.5〜2g/日のENDUR−ACINにより、LDL−Cが20〜26%減少し、TGが9〜11%減少し、HDL−Cが4〜9%増加した。
【0016】
用量1.2g/日のナイアシン(非処方箋SR製剤(Rugby Inc.)を使用)により、LDL−Cが6%減少し、TGが11%増加し、HDL−Cが2%増加した。
【0017】
処方箋中間放出性製剤NIASPAN(商標)(Kos Pharmaceuticals)の形態のナイアシンは、ナイアシンIRと等価な1日量および類似の有効性を有する。投与開始パック(NIASPAN375mg錠、500mg錠、および750mg錠を、それぞれ就寝時に1週間投与し、4週間で500mg以下増加させる)を使用して患者の治療を開始すべきである。
【0018】
就寝時の用量1.5gナイアシンのNIASPANにより、LDL−Cが13%減少し、TGが10%減少し、HDL−Cが19%増加した。第2の研究では、就寝時の最大3gのナイアシンでのNIASPANにより、LDL−Cが18%減少し、TGが26%減少し、HDL−Cが32%増加した。第3の研究は、就寝時の用量1〜2gのナイアシン/日でのNIASPANを試験し、LDL−Cが6〜15%減少し、TGが21〜28%減少し、HDL−Cが17〜23%増加した。
【0019】
NIASPANは、原発性高コレステロール血症および混合型脂質異常症患者において、上昇したTC、LDL−C、アポリポタンパク質BおよびTGを減少させるために食事制限するための、およびHDLを増加させるための添加物として必要とされる。NIASPAN(登録商標)はまた、再発性非致死性心筋梗塞のリスクを軽減し、進行を遅延させるか、またはアテローム硬化性疾患の寛解を促進するために必要とされる。NIASPANは、就寝時、低脂肪の軽食後に投与されるべきであり、用量は、患者の応答に応じて個別化される。
【0020】
VLDLレベルの低下により、ナイアシンはまた血中HDLレベルを増加させ、その結果、心臓発作リスクも高い低HDL患者にしばしば処方される。
【0021】
高用量のナイアシンは、空腹時血糖値を上昇させ、それにより2型糖尿病が悪化することが示されている。したがって、ナイアシンは2型糖尿病患者には禁忌である。ナイアシン誘導性インスリン抵抗性および糖尿病の背景となる機構は現在わかっていない。
【0022】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10は、ニコチン酸の徐放性処方物を開示している。特許文献11、特許文献12および特許文献13ならびに特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、および特許文献18は、ナイアシン誘導性紅潮の軽減方法を記載している。
【0023】
文献中で利用可能なほとんどの文献およびレポートは、ナイアシン治療に起因する紅潮を最小にすることの差し迫った必要性を示している。NIASPANの市場への導入によって、NIASPANについてのプラセボ対照臨床試験における事前のナイアシン治療に関するいくつかの懸念に取り組んでいたにもかかわらず、紅潮エピソード(すなわち、温感、発赤、掻痒、および/または刺痛)は、88%もの患者で報告された最も一般的な治療中に発生した有害事象であり、47%の患者が紅潮のため、研究に参加しなかった(出典−NIASPANの医薬品承認審査概要)。
【0024】
紅潮の発生を軽減する一方で、市販の処方物に等価な利点が得られ、且つ肝毒性がほとんどまたは全く無いナイアシン含有処方物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第5,126,145号明細書
【特許文献2】米国特許第5,268,181号明細書
【特許文献3】米国特許第6,080,428号明細書
【特許文献4】米国特許第6,129,930号明細書
【特許文献5】米国特許第6,406,715号明細書
【特許文献6】米国特許第6,469,035号明細書
【特許文献7】米国特許第6,676,967号明細書
【特許文献8】米国特許第6,746,691号明細書
【特許文献9】米国特許第6,818,229号明細書
【特許文献10】米国特許第7,011,848号明細書
【特許文献11】米国特許第5,981,555号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0053975号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2005/0148556号明細書
【特許文献14】国際出願公開第2004/103370号
【特許文献15】国際出願公開第2006/017354号
【特許文献16】国際出願公開第2007/041499号
【特許文献17】国際出願公開第2004/111047号
【特許文献18】国際出願公開第2009/005803号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
概要
本発明の態様は、経口投与のための調節(例えば、遅延、延長、および遅延−延長)放出ナイアシンを含む薬学的処方物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
1つの実施形態では、本発明は、
(a)治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、薬学的に許容可能な放出制御剤、および別の薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コア、
(b)任意選択的に、ナイアシン含有コア上に層状に重ねたバリアコーティング、および
(c)任意選択的に、(b)が存在しない場合にいずれかのコア上に直接施されたか、またはバリアコーティング上に施された腸溶コーティング
を含む、ナイアシンの調節放出のための薬学的処方物を提供する。
【0028】
1つの実施形態では、本発明は、治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、薬学的に許容可能な放出制御剤、および別の薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コアを含むナイアシンの調節放出のための薬学的処方物を提供する。
【0029】
1つの実施形態では、本発明は、
(a)治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、および薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コア、
(b)任意選択的に、コア上に層状に重ねたバリアコーティング、および
(c)任意選択的に、(b)が存在しない場合にコア上に直接施されたか、またはバリアコーティング上に施された腸溶コーティング
を含む、ナイアシンの調節放出のための薬学的処方物を含む。
【0030】
1つの実施形態では、調節放出性ナイアシンを含む処方物であって、市販のNIASPAN中間放出性ナイアシン製剤由来の類似の量のナイアシンの経口投与後に得られた血漿ナイアシンレベル(すなわち、Cmaxおよび/またはAUC)と比較して、血漿ナイアシンレベルが統計的に有意に増加する、処方物を提供する。
【0031】
1つの実施形態では、調節放出性ナイアシンを含む処方物であって、市販のNIASPAN中間放出性ナイアシン製剤由来の類似の量のナイアシンの経口投与後に得られたCmaxおよびAUCと比較して、CmaxおよびAUCが少なくとも2倍に増加する処方物を提供する。
【0032】
1つの実施形態では、調節放出性ナイアシンを含む処方物であって、市販のNIASPAN中間放出性ナイアシン製剤由来の類似の量のナイアシンの経口投与後に生じた紅潮と比較して、紅潮が統計的に軽減する処方物を提供する。
【0033】
ナイアシン含有コアと腸溶コーティングとの間に施したバリアコーティングの存在は、ナイアシン投与を必要とする哺乳動物への投与の際にナイアシンの全身曝露を有意により高くすることができる本発明の1つの実施形態である。
【0034】
ある実施形態では、調節放出性処方物は、類似の溶解条件下で試験した場合、その含有ナイアシンを、即時放出性処方物を使用して得た速度よりも遅い速度であるが、当該分野で公知の中間放出性処方物および徐放性処方物を使用して得た速度より速く水性流動物に放出する。
【0035】
他の実施形態では、調節放出性処方物は、類似の溶解条件下で試験した場合、その含有ナイアシンを、先行技術の処方物と実質的に等価な速度でin vitroで放出する。
【0036】
ある実施形態では、調節放出性処方物は、ナイアシンをより遅い速度で放出し、そして/または一定期間(経口投与から最初の約60分後または120分後など)遅延して放出し、この処方物は、ナイアシンに起因する紅潮の調節を補助するための抗紅潮薬と同時投与することが可能である。例えば、本発明の組成物により、紅潮阻害薬(非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、PGD2−アンタゴニスト、類似の活性を有する他の化合物など)を調節放出性ナイアシン処方物と同時投与することが可能である。即時放出性紅潮阻害薬の共投与または同時投与を使用したナイアシンの持続放出および/または遅延放出により、ナイアシンのピーク濃度が得られる前に紅潮阻害薬レベルを体内で増加させることができる。ナイアシン含有コア中の調節放出性物質によるその後の延長放出により、体内の高ナイアシンレベルを持続可能である。
【0037】
実施形態では、約50%未満、約25%未満、または約10%未満の含有ナイアシンが、媒質中の投薬形態の浸漬2時間後以内にpH約4未満の水性媒体に放出されるであろう。
【0038】
本発明の処方物の製造プロセスおよび種々の病状の処置のための処方物の使用方法も本発明に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、実施例1および2由来の生成物のin vitro溶解プロフィールを例示するグラフである。
【図2】図2は、実施例3、4、5、6、7、および8由来の生成物のin vitro溶解プロフィールを例示するグラフである。
【図3】図3は、実施例9由来の生成物のin vitro溶解プロフィールを例示するグラフである。
【図4】図4は、実施例10および11由来の生成物、NIACOR500mg錠、およびNIASPAN500mg錠のin vitro溶解プロフィールを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(詳細な説明)
本発明は、経口投与のための調節(遅延、延長、または遅延−延長)放出ナイアシンを含む薬学的処方物に関する。
【0041】
固有のin vitroおよびin vivo放出プロフィールを有する本発明の薬学的処方物は、以前のナイアシン処方物と比較した場合、紅潮を軽減する利点を有する有効なナイアシン治療を提供することができる。
【0042】
用語「ナイアシン」は、ナイアシン遊離酸、ならびに任意のその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、多形、ナイアシンプロドラッグ、および混合物が含まれることを意図する。本明細書中で使用する場合、用語「プロドラッグ」は、ナイアシン以外の化合物を含み、この化合物が体内で代謝されてナイアシンを生成し、それにより、本明細書中に記載の効果と同一の効果が得られる。プロドラッグ化合物には、特に、ニコチンアミド、酒石酸ニコチニルアルコール、d−グルシトールヘキサニコチナート、ニコチン酸アルミニウム、ニセリトロール、およびd,1−α−トコフェリルニコチナートが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の文脈中の「処方物」は、固体投薬形態であるナイアシンを含む単位投与薬学的処方物をいう。固体投薬形態の例には、一体型錠剤、二層または多層の錠剤、カプセル、タブレット・イン・カプセル、およびペレット、顆粒、またはカプセル内に充填するか、または打錠した粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
「調節放出」は、ナイアシンを持続、遅延、延長、または遅延−延長放出する処方物を意味することを意図するが、これに制限されない。遅延、延長、または遅延−延長放出する任意の機構は、本発明の基本原理を満たす限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
本明細書中に記載のナイアシンを含む処方物は、先行技術の処方物を超える1つまたは複数の以下の利点を提供することができる:
a)即時放出性ナイアシン処方物と比較して。ナイアシン誘導性紅潮が有意に軽減されること。
【0046】
b)公知の徐放性処方物と比較した場合にナイアシン誘導性肝毒性が等価または減少するか、類似の強度のNIASPAN錠と同程度であること。
【0047】
c)他の処方物と比較した場合に脂質異常症または抗アテローム硬化性プロフィールが改善されること。
【0048】
本明細書中に記載のナイアシンを含む処方物は、即時放出性ナイアシン処方物を超える1つまたは複数の以下の利点を提供することができる:
a)同一用量の即時放出性組成物と比較した場合にナイアシン誘導性紅潮が有意に軽減されること。
【0049】
b)長期間にわたる薬物レベルの持続および1日1回または2回の投与が可能なこと。
【0050】
c)同一用量の現在市販されている組成物と比較した場合に脂質異常症患者に対する有効性が改善されるか同程度である。
【0051】
本明細書中に記載のナイアシンを含む処方物は、徐放性ナイアシン処方物を超える1つまたは複数の以下の利点を提供することができる:
a)同一用量の現在市販されている徐放性組成物と比較した場合にナイアシン誘導性肝毒性が有意に軽減されること。
【0052】
b)同一用量の現在市販されている徐放性および即時放出性組成物と比較した場合に脂質異常症患者に対する有効性が改善されること。
【0053】
本明細書中に記載のナイアシンを含む処方物は、NIASPAN製剤などの中間放出性処方物を超える1つまたは複数の以下の利点を提供することができる:
a)同程度の用量の投与後に血漿ナイアシン濃度(AUCおよび/またはCmax)が改善されること。
【0054】
b)同程度の血漿ナイアシン濃度(Cmaxおよび/またはAUC)での紅潮が同程度であるか、または軽減されること。
【0055】
c)類似用量での有効性が同程度であるか、または増強されること。
【0056】
用語「調節放出」は、持続放出、延長放出、遅延放出、制御放出、プログラム化放出、パルス放出、遅延放出と延長放出との組み合わせ、およびAbbottによって販売されているNIASPAN(登録商標)の中間放出プロフィールを除く2つ以上の上記放出型の任意の他の組み合わせが含まれることが意図される。
【0057】
本発明の1つの実施形態では、ナイアシンの調節放出のための薬学的処方物は、以下を含む:
(a)治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、薬学的に許容可能な放出制御剤、および1つまたは複数の他の薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コア、
(b)任意選択的に、コア上に施されたバリアコーティング、および
(c)任意選択的に、(b)が存在しない場合にコア上に直接施されたか、バリアコーティング上に施された腸溶コーティング。
【0058】
1つの実施形態では、本発明は、治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、薬学的に許容可能な放出制御剤、および1つまたは複数の他の薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コアを含むナイアシンの調節放出のための薬学的処方物を提供する。
【0059】
1つの実施形態では、本発明は、
(a)治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、および1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コア、
(b)任意選択的に、コア上に施されたバリアコーティング、および
(c)任意選択的に、(b)が存在しない場合にコア上に直接施されたか、バリアコーティング上に施された腸溶コーティング
を含むナイアシンの調節放出のための薬学的処方物を提供する。
【0060】
本発明の態様では、ナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、および薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有コアを提供する。即時放出性コアが望ましい場合、固体経口投薬形態の調製のための従来の薬学的賦形剤(希釈剤、結合剤、および潤滑剤など)を使用するであろう。加工に必要な他のかかる成分も本発明の範囲内である。
【0061】
制御放出または延長放出ナイアシン含有コアが望ましい場合、薬学的に許容可能な放出制御材料を添加するであろう。かかる材料には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウムジビニルベンゼンコポリマー、ポリメチルメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、キサンタンガム、カルボマー、ポリオックス、ハイドロコロイド(天然ゴムまたは合成ゴムなど)、上記以外のセルロース誘導体、炭水化物ベースの物質(アカシア、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアールガム、寒天、ペクチン、カラギーン、可溶性アルギン酸塩、およびカルボキシポリメチレンなど)などの親水性材料が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0062】
使用することができる疎水性材料には、エチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリル、グリセリルベヘナート、タルクなどが含まれるが、これらに限定されない。親水性材料と疎水性材料との混合物も使用することができる。
【0063】
ナイアシン含有コアは、薬学的に許容可能な賦形剤および放出制御材料などを含む、種々のサイズおよび形状のナイアシン含有錠剤、ミニ錠剤、ナイアシンがコーティングされたノンパレイルシード材料、造粒または押し出し成形によって調製したナイアシンペレットの形態であり得る。かかる薬物含有コアの調製は、当業者の理解の範囲内である。放出制御材料の型および量により、ナイアシン含有コアによって得られるナイアシンの放出持続時間(例えば、数分にわたるナイアシンの即時放出性、NIASPAN製剤に類似する放出、または任意の所望の中間溶解プロフィールなど)が決定されるであろう。
【0064】
実施形態では、ナイアシン含有コアは、コア上に直接施された腸溶コーティングを有する即時放出性コアである。他の実施形態では、ナイアシン含有コアは延長放出コアである。1つの実施形態では、延長放出ナイアシンコアからのナイアシンの放出を、疎水性材料のみを使用して調節する。1つの実施形態では、疎水性材料は、pH非依存性高分子材料(例えば、メタクリル酸ポリマーまたは材料(エチルセルロースなど)、ワックス(カルナウバ蝋など)、およびモノステアリン酸グリセリルなど)である。ナイアシン含有コアを、腸溶コーティングでさらにコーティングする。腸溶コーティングによって即時放出性または調節放出コアからのナイアシン放出が遅延されて、即時放出性処方物および延長放出処方物の中間の時点でナイアシンを送達させることが可能になる。腸溶コーティングおよび賦形剤により、それらを必要とする哺乳動物への投与の際に、公知のナイアシン処方物の任意の薬物動態プロフィールと異なるナイアシンの薬物動態プロフィールを体内に生じる処方物が得られる。哺乳動物(例えば、イヌまたはヒト)への本発明の処方物の投与後に得られた血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)によって測定した場合の体内に達成されたナイアシン曝露は、当該分野で公知であり、且つ市販の徐放性処方物または延長放出処方物のいずれかの投与の際に達成されるナイアシン曝露より有意に高い。これは、本発明の処方物の固有の特徴に起因する。
【0065】
本発明の1つの態様によれば、ナイアシン含有コアと腸溶コーティングとの間に挿入されたバリアコーティングを含む本発明の処方物によって有意な薬物動態学的利点が得られる。理論に拘束されないが、バリアコーティングによってコア由来のナイアシンと腸溶コーティング材料との間の化学的相互作用を防止し、それにより、処方物からのナイアシンの放出を有意に軽減することができることが可能である。
【0066】
したがって、さらに別の実施形態によれば、類似の強度の現在市販されている中間放出性製剤NIASPANと比較した場合、哺乳動物への処方物の投与の際にCmaxおよび/またはAUCが統計的に有意に増加する、本明細書中に記載の調節放出性ナイアシンを含む低用量ナイアシン処方物を提供する。
【0067】
本発明の実施形態では、処方物により、治療効果を得るために必要なナイアシンの用量が有意に軽減される。
【0068】
本発明の調節放出性薬学的処方物は、即時放出性処方物と比較して低速の薬物放出を示す(pH5を超える媒質(pH6.8リン酸緩衝液、pH7.5リン酸緩衝液など)を使用した習慣的な溶解試験法を使用して試験した場合、処方物は約2時間以内または約1時間で含有ナイアシンの約75%超をin vitro放出する)。
【0069】
本明細書中で使用する場合、「治療有効量」は、処置を必要とする被験体における特定の疾患を処置するための許容可能なリスク対効果比を有する量である。本発明の文脈における「治療有効量のナイアシン」には、1日あたり約250mg、約500mg、約750mg、約1000mg、約1500mg、約2000mg、約2500mg、または約3000mgのナイアシンが含まれる。
【0070】
ナイアシンは、広範に代謝されて異なる代謝産物を産生し、代謝は以下の2つの経路を含む:経路1および経路2。
【0071】
経路1は、ニコチン尿酸(NUA)代謝産物を産生する。紅潮は、この代謝産物に起因する有意な有害作用である。NUAレベルが高いほど皮膚紅潮の程度が高くなる。
【0072】
経路2は、ニコチンアミド(NMA)、6−ヒドロキシニコチンアミド(6NH)、ニコチンアミド−N−オキシド(MNO)、N−メチルニコチンアミド(MNA)、およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)代謝産物を産生する。肝毒性は、これらの代謝産物の結果として生じる主な有害作用である。
【0073】
in vivo条件下で、経路2は、高親和性の容量の低い経路であり、第1相反応によって代謝産物を生成する。経路1代謝産物は、低親和性の高容量抱合経路によって生成される。本発明の処方物により、異なる血漿および尿の代謝産物プロフィールを得ることができる。
【0074】
実施形態では、調節放出性処方物由来のナイアシンは、投薬形態が水性媒体に侵入してから約10分間、約20分間、約30分間、約1時間、またはそれ以上の遅延後に放出される。特定の処方物に依存して、ナイアシン放出はpH非依存様式で起こり得るか、少なくとも約pH5または少なくとも約pH6の環境下のみで起こり得る。処方物を水性媒体に浸漬し、経口投与後にin vivoで得られる放出をシミュレートしたin vitro手順を使用して放出特性を決定する。ある場合に、最初の水性媒体は胃環境をシミュレートした酸性であり、一定の期間後、胃内容物排出後の胃腸管環境をシミュレートするためにより高いpHの媒質に処方物を浸漬する。胃内容物の排出は食物および他の要因の存在または非存在に起因して種々の時点で起こるので、最初に酸性媒質を使用したin vitro試験ではin vivoの結果を正確に予想することができない。
【0075】
本発明の文脈における放出制御ポリマーには、親水性ポリマー、疎水性ポリマー、遅延放出(例えば、腸溶性)ポリマー、生体接着性(または粘膜接着性)ポリマー、ワックスおよび脂肪のような疎水性物質、ならびにその組み合わせが含まれる。本発明の処方物中の放出制御ポリマーの含有量は、処方物の総重量の約1%〜約90%または約5%〜約80%で変化し得る。
【0076】
種々の等級の有用な親水性ポリマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、および架橋ヒドロキシプロピルセルロースなど)、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウム/ジビニルベンゼンコポリマー、ポリヒドロキシアルキルメタクリラート、ポリビニルピロリドン(ポビドンまたはPVP)、および架橋ポリビニルピロリドン、高分子量ポリビニルアルコール、ゴム(天然ゴム、グアールガム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、フルセララン(furcellaran)、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、およびローカストビーンガム)、親水コロイド(アルギナートなど)、カルボマーおよびポリアクリルアミド、他の物質(アルビノガラクタン、ペクチン、アミロペクチン、ゼラチン、N−ビニルラクタム、ポリサッカリドなど)など。任意の2つ以上のこれらのポリマーおよび必要な性質を有する他のポリマーの組み合わせは本発明の範囲内である。
【0077】
種々の比で使用される有用な疎水性ポリマーまたはその組み合わせには、以下が含まれるが、これらに限定されない:セルロース(メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセタート、およびその誘導体、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、セルロースアクリラート、セルロースジアシラート、セルローストリアシラート、セルロースアセタート、セルロースジアセタタート、セルローストリアセタート、モノ、ジ、およびトリセルロースアルカニラート、モノ、ジ、およびトリセルロースアリーラート、およびモノ、ジ、およびトリセルロースアルケニラートなど)、架橋ビニルピロリドンポリマー(クロスポビドン)、ポリメタクリル酸ベースのポリマーおよびコポリマー(Evonik Industries AG,Essen,GermanyからEUDRAGIT(商標)(Eudragit RLおよびRS、NE30D、およびNM30Dを含む)として販売されているものなど)、ゼイン、および脂肪族ポリエステル。ポリマーの他のクラス、これらのポリマーのコポリマー、または種々の比および比率のその混合物は、本発明の範囲内であるが、これらに制限されない。
【0078】
EUDRAGITのNE30D製剤およびNM30D製剤は、繰り返し単位(A)を有するポリマーの30%水分散液であり、欧州薬局方では、「30%ポリアクリラート分散液」と呼ばれている。NE30Dポリマーの平均分子量は約800,000であり、NM30Dポリマーの平均分子量は約600,000である。
【0079】
【化2】

腸溶コーティングは、投薬形態が胃より高いpH環境に到達するまで活性薬剤の放出を防止するコーティングである。遅延放出投薬形態はナイアシンを含み、腸溶性ポリマーでコーティングされている。腸溶性ポリマーは非毒性であるべきであり、主に腸液中に溶解性を示すが、胃液に実質的に不溶である。かかる遅延放出(腸溶性)ポリマーの例には、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMCAS)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、メタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシナート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートヘキサヒドロフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、セルロースプロピオナートフタラート、セルロースアセタートマレアート、セルロースアセタートトリメリタート、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタートプロピオナート、メタクリル酸/メタクリラートポリマー(酸価300〜330、EUDRAGIT Lとしても公知)(メタクリラートに基づいたアニオン性コポリマーであり、粉末として市販されている)(メタクリル酸コポリマー、A NF型、メタクリル酸−メチルメタクリラートコポリマー、およびエチルメタクリラート−メチルメタクリラート−クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリラートコポリマーなどとしても公知)、および1つまたは複数の上記腸溶性ポリマーを含む組み合わせが含まれる。他の例には、天然樹脂(シェラック、コーパルコロホリウム、および1つまたは複数の上記ポリマーを含む組み合わせなど)が含まれる。腸溶性ポリマーのさらなる他の例には、カルボキシル基を保有する合成樹脂が含まれる。商品名EUDRAGIT L 100−55で販売されているメタクリル酸−アクリル酸エチルエステル1:1コポリマーが適切である。このポリマーは、EUDRAGIT L 30 D−55として販売されている水分散液中に存在する固体である。
【0080】
EUDRAGIT L 100−55は、欧州薬局方で「メタクリル酸−エチルアクリラートコポリマー(1:1)、A型」と命名されている。これは(B)の繰り返し単位を有し、平均分子量は約250,000である。
【0081】
【化3】

薬物と腸溶コーティングとの間の相互作用を防止するためにコア処方物にバリアコーティングを施することができる。これは、コア処方物が湿気を帯びるのを防止することもできる。バリアコーティング材料の非限定的な例には、親水性および疎水性の賦形剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、糖、アミノ酸、ゼイン、ポリビニルピロリドン、グアールガムなど)が含まれる。ナイアシンと腸溶性ポリマーまたは機能的ポリマーとの間の任意の相互作用を防止するためのバリアとして作用することができる他の不活性材料は本発明の範囲内であるが、これらに制限されない。使用する場合、バリアコーティングの厚さおよびポリマー材料の粘度等級の決定は、当業者の理解の範囲内である。したがって、HPMCなどのポリマー材料を使用する場合、適切な等級には、水性媒体との接触の際にナイアシンの溶解および放出に影響を及ぼさないナイアシンと腸溶コーティング材料との間のバリアとして作用することができる低粘度等級が含まれ得る。糖をバリアコーティングとして使用する場合、コーティングの厚さは、かかるコーティングから得られる防御の程度を決定づけ、糖の型も同様であろう。バリアコーティング選択のかかるおよび他の態様は、固体経口投薬形態の調製分野の当業者の理解の範囲内である。
【0082】
ナイアシン含有コアと腸溶コーティングとの間の望ましくない相互作用を防止するために使用することができる他の材料には、酸性材料(例えば、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、安息香酸、およびアミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸など)など)が含まれる。ナイアシンと腸溶コーティングとの間に酸性環境を提供し、且つ相互作用を防止することができる他の材料も、本発明の範囲内であるが、これらに制限されない。酸性安定化材料をナイアシン含有コアを圧縮する前に成分とブレンドすることができるか、ナイアシン含有コアと腸溶コーティングとの間の相互作用を防止するために材料をナイアシン含有コア上に層状に重ねることができる。酸性材料を、0.01:1〜0.5:1の酸性材料:ナイアシンの重量比でナイアシンと共に使用することができる。
【0083】
使用される任意のバリア材料(ナイアシン含有コアと腸溶性コートとの間の望ましくない相互作用を防止するようにバリアコートが作用する機構がどのようなものであり得るとしても)は、本発明の処方物によって得られる驚くほど高い曝露レベルを伴うであろう。したがって、任意のかかるバリアコーティングは、本発明の範囲内であるが、これらに制限されない。
【0084】
投薬形態と胃腸管の薬物吸収区分の粘膜との間の接触時間を増加させるために経口投薬形態に生体接着性ポリマーを含めることができる。生体接着剤の非限定的な例には、カルボマー(種々の等級)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリカルボフィル(例えば、NOVEON(商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、および上記の二つ以上を含む組み合わせが含まれる。
【0085】
疎水性物質(ワックスおよび脂肪など)の融点は、約30℃〜約200℃または約45℃〜約90℃であり得る。有用な疎水性物質には、中性または合成のワックス、脂肪アルコール(ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、またはセトステアリルアルコールなど)、脂肪酸(脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド(モノ、ジ、およびトリグリセリド)が含まれる)、水素化脂肪、炭化水素、通常のワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、炭化水素骨格を有する疎水性材料および親水性材料、および2つ以上の上記材料を含む組み合わせが含まれ得る。適切なワックスには、蜜蝋、パラフィンワックス、カルナウバ蝋などが含まれ、合成ワックス(例えば、微結晶性ワックスおよび他の市販のワックス、ヒマシ油ワックス、およびワックス様物質(例えば、通常は室温で固体であり、且つ融点が約30℃〜約100℃の材料)など)、および2つ以上の上記ワックスを含む組み合わせも含まれる。
【0086】
勿論、類似の特徴が証明された任意の他の放出制御ポリマーも本発明の実施において許容可能である。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、薬学的に不活性なコアとしての機能を果たす薬学的に許容可能な賦形剤は、以下を含む:不溶性不活性材料(ガラス粒子/ビーズまたは二酸化ケイ素、リン酸カルシウム二水和物、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、微結晶性セルロース(MCC)、またはセルロース誘導体など)、可溶性コア(酒石酸のような酸性コアおよびデキストロース、ラクトース、無水ラクトース、噴霧乾燥ラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロースのような糖の球体など)、および不溶性不活性高分子材料(ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、または任意の他の薬学的に許容可能な不溶性合成高分子材料の球体またはほぼ球体のコアビーズなどなど)、ならびにその混合物。
【0088】
ナイアシンおよび放出制御ポリマーを含む調節放出性処方物を、任意の適切な技術(下記の技術が含まれる)によって調製することができる。活性薬剤および放出制御ポリマーを、例えば、湿式造粒技術、溶融押し出し技術などによって調製することができる。調節放出性処方物中の活性薬剤には、有効成分を含む複数の基質が含まれ得る。この基質を、放出制御ポリマーを含む徐放性コーティングでコーティングする。したがって、調節放出性処方物を、活性薬剤の所望の調節(遅延−延長)放出を得るための多粒子系(ビーズ、イオン交換樹脂ビーズ、スフェロイド、ミクロスフィア、シード、ペレット、顆粒、および他の多粒子系など)と併せて作製することができる。多粒子系は、錠剤、カプセル、または他の適切な単位投薬形態で存在することができる。ある場合、1つを超える多粒子系を使用することができ、この多粒子系はそれぞれ、異なる特徴(放出のpH依存性、種々の媒質(例えば、酸性、塩基性、疑似腸液)中の放出時間、in vivoでの放出、サイズ、および処方など)を示す。
【0089】
場合によっては、有効成分と共に球形化剤によって球形化して、スフェロイドを形成することができる。微結晶性セルロースおよび含水ラクトース微細粉末は、かかる薬剤の例である。さらに(またはあるいは)、スフェロイドは、不水溶性ポリマー(アクリルポリマー、アクリルコポリマー(メタクリル酸−エチルアクリラートコポリマーなど)、またはエチルセルロースなど)を含むことができる。この処方物では、調節放出性コーティングには、一般に、不水溶性材料(ワックス(単独または脂肪アルコールとの混合物のいずれか)、シェラック、またはゼインなど)が含まれるであろう。有効成分でコーティングされたスフェロイドまたはビーズを、例えば、溶媒への有効成分の溶解または分散およびその後のWursterインサートを使用した基質(例えば、糖の球体NF−21、18/20メッシュ)への溶液の噴霧によって調製することができる。任意選択的に、基質への有効成分の結合を増強し、そして/または得られたビーズなどを着色するために、ビーズのコーティング前にさらなる成分も添加する。得られた基質−活性材料を、任意選択的に、バリア材料で上塗りして治療活性薬剤を材料の次のコーティング(例えば、放出制御ポリマー)と分離することができる。
【0090】
本発明の薬学的処方物を、所望のin vitro薬物放出プロフィールを達成するために当業者に公知の種々の他の方法および技術によって調製することができる。プロセスの特定の実施形態は、以下のいずれかを含む。
【0091】
1.適切なパンチおよび金型を使用した直接圧縮。パンチおよび金型を適切な回転式打錠プレスに取りつける。
【0092】
2.圧縮ユニットに取りつけた適切な鋳型を使用した注入または圧縮成形。
【0093】
3.造粒およびその後の圧縮。
【0094】
4.ペーストの形状での所望の長さに切断される鋳型または押し出し物への押し出し。
【0095】
粒子を直接圧縮によって作製する場合、潤滑剤の添加は有益であり得、時折、これは粉体流を促進し、圧縮圧力を軽減した場合の圧縮粒子のキャッピング(粒子の一部の欠け)を防止するために重要である。典型的には、潤滑剤を0.25重量%〜3重量%の濃度で添加する。さらなる賦形剤を添加して、粉体の流動性を増強し、接着を軽減することができる。
【0096】
カプセル内に有効量の多粒子形態の溶融押し出しサブユニットが含められるように経口投薬形態を調製することができる。例えば、複数の溶融押し出しされた多粒子を、摂取されて胃液と接触した場合に、有効な放出用量を得るのに十分な量でゼラチンカプセル中に配置することができる。例えば、多粒子形態のサブユニットを、標準的技術を使用した従来の打錠装置を使用して経口用錠剤に打錠することができる。
【0097】
処方物は、カプセル(例えば、ゼラチンカプセル)内に封入されたマイクロタブレットの形態であり得る。これのために、薬学的処方物分野で使用される任意のゼラチンカプセル(Pfizerから販売されているCAPSUGEL(商標)として公知の硬ゼラチンカプセルなど)を使用することができる。
【0098】
1つの実施形態では、本発明の薬学的処方物を、
a)任意選択的に結合剤および/または可溶化剤と共に溶媒中に有効成分を溶解または分散させる工程、
b)有効成分を含む溶液との薬学的に許容可能な賦形剤ブレンドを造粒する工程、
c)顆粒を乾燥させ、なめらかにする工程、
d)顆粒を打錠するか、カプセルに充填する工程
を含む、造粒プロセスを使用して調製することができる。
【0099】
別の実施形態では、本発明の薬学的処方物を、
a)有効成分と放出制御ポリマーとを任意選択的に他の薬学的に許容可能な賦形剤と共に混合する工程、および
b)a)のブレンドを打錠するか、カプセルに充填する工程
を含む直接圧縮プロセスを使用して調製することができる。
【0100】
あるいは、本発明の処方物を、適切な溶媒への有効成分の溶解、および任意選択的に他の賦形剤と共に溶解した有効成分を不活性コア(上記の酒石酸など)の表面上に層状に重ねることによって調製することができる。かかる薬物を層状に重ねたコアまたはペレットを、さらに造粒するか、放出制御ポリマーでコーティングして、本発明の薬学的処方物を生成することができる。
【0101】
顆粒/ビーズまたは錠剤またはカプセルを、任意選択的に他の賦形剤と共に放出制御ポリマーでさらにコーティングすることができる。かかるコーティングを、種々の公知の技術(浸漬コーティング、パンコーティング、および流動床コーティングなど)を使用して行うことができる。
【0102】
薬学的処方物の残存溶媒含有量を、本明細書中に記載のように、低くすることができる(約5000重量ppm未満など)。残存溶媒の濃度を、乾燥工程などを使用して所望の限度(規制当局によって許容される限度など)にさらに軽減することができる。
【0103】
本発明の処方物で有用であり得る界面活性剤/可溶化剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:陰イオン性界面活性剤(ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルファート、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、およびその塩、グリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸および他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、およびグリコデオキシコール酸)およびその塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)など)、陽イオン性界面活性剤(第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチンヒドロクロリド、およびアルキルピリジニウムハライド)など)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(MACROGOL(商標)およびBRIJ(商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベートまたはTWEEN(商標))、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(MYRJ(商標))、ソルビタンエステル(SPAN(商標))、グリセロールモノステアラート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロクサマー)、およびポロキサミンなど)、およびその混合物。
【0104】
本発明の文脈では、薬学的処方物の完成した投薬形態への加工中に、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を任意選択的に使用することができ、この賦形剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:希釈剤(微結晶性セルロース(「MCC」)、ケイ化MCC(例えば、PROSOLV(商標))、超微粒セルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、マンニトール、ソルビトール、デキストラート、デキストリン、マルトデキストリン、デキストロース、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、炭酸マグネシウム、および酸化マグネシウムなど)、コア/ビーズ(不溶性不活性材料(ガラス粒子/ビーズまたは二酸化ケイ素、リン酸カルシウム二水和物、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、微結晶性セルロース、セルロース誘導体など)など)、溶解性コア(糖(デキストロース、ラクトース、マンニトール、デンプン、ソルビトール、またはスクロースなど)の球体など)、不溶性不活性高分子材料(ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、または任意の他の薬学的に許容可能な不溶性合成高分子材料などまたはその混合物の球体またはほぼ球体のコアビーズなど)、結合剤または接着剤(アカシア、グアールガム、アルギン酸、デキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL(登録商標))、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン(種々の等級のKOLLIDON(登録商標)、PLASDONE(登録商標))、およびデンプンなど)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、Ac−Di−Sol(登録商標)、PRIMELLOSE(登録商標))、クロスポビドン(例えば、KOLLIDON(登録商標)、POLYPLASDONE(登録商標))、ポビドンK−30、ポラクリンカリウム、デンプン、アルファ化デンプン、およびグリコール酸デンプンナトリウム(例えば、EXPLOTAB(登録商標))など)、可塑剤(クエン酸アセチルトリブチル、リン酸エステル、フタル酸エステル、アミド、鉱物油、脂肪酸、およびエステル、グリセリン、トリアセチン、または糖、脂肪アルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのエーテル、脂肪アルコール(セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、およびミリスチルアルコールなど)など)。処方物加工で使用することができる溶媒には、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、塩化メチレン、およびジクロロメタンなど、ならびにその混合物が含まれる。
【0105】
本発明の薬学的処方物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な流動促進剤、潤滑剤(ナトリウムステアリルフマラート、乳白剤、着色剤など)、および他の一般的に使用されている賦形剤のいずれかをさらに含むことができる。
【0106】
本発明の薬学的処方物は、送達される薬物に望ましいin vivo吸収プロフィールを示す。経口投与後に薬学的処方物を評価するために頻繁に使用されるin vivo薬物動態パラメーターには、最大血漿濃度(「Cmax」)、最大血漿濃度までの投与後の時間「(「Tmax」)、および血漿濃度−時間プロット曲線下面積(「AUC」)などが含まれる。
【0107】
本発明の薬学的処方物は、ナイアシンに加えて1つまたは複数の有効成分を含むことができる。かかるさらなる有効成分の非限定的な例には、脂質低下薬、抗糖尿病化合物、NSAID、cox−2インヒビター、紅潮を制御するためのPGD2アンタゴニスト、抗不整脈薬、抗凝血薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、α−グルコシダーゼインヒビター、免疫抑制薬、鎮静剤、睡眠薬、β遮断薬、強心薬(cardiac ionotropic agent)、コルチコステロイド、利尿薬、抗狭心症薬、筋弛緩薬、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、筋弛緩薬、認知増強剤、コレステロール吸収インヒビター、胆汁酸封鎖剤などが含まれる。典型的には、脂質低下化合物には、スタチン、フィブラートおよびPPARアゴニストが含まれる。例示的スタチンには、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン(cervastatin)、フルバスタチンが含まれる一方で、フィブラートはフェノフィブラート、ゲムフィブロジル、およびベザフィブラートを含む。DPP IVインヒビターの非限定的な例には、シタグリプチン(sitagliptan)、ビルダグリプチン(vildagliptan)、サキサグリプチン(saxagliptan)が含まれる。典型的な抗糖尿病化合物には、スルホニル尿素、メグリチニド、DPP−IVインヒビター、ビグアニド、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(「PPAR」)アゴニスト、グルコース取り込み調製物質が含まれる。コレステロール吸収インヒビターには、エゼチミブなどが含まれる。胆汁酸封鎖剤には、オルリスタットなどが含まれる。
【0108】
本明細書中に開示の薬学的処方物を、高脂血症、高コレステロール血症および混合型脂質異常症、心筋梗塞、アテローム硬化性疾患、およびナイアシンでの処置に応答する他のかかる容態の処置のために有利に使用することができる。
【0109】
以下の実施例は、本発明の一定の特定の態様および実施形態を例示し、その実施および利点を証明するために提供する。実施例は例示のみを目的として示し、本発明の範囲を制限することを決して意図しないと理解すべきである。
【実施例】
【0110】
【表1】

製造プロセス:
1.ナイアシン、微結晶性セルロース、および無水ラクトースを共に混合し、BSS#60メッシュ篩に通す。
2.1由来の混合物を均一になるようにブレンダー中で再度ブレンドする。
3.2のブレンドを、EudragitNM30D分散液を使用して回転混合造粒機(RMG)中で造粒する。
4.3由来の湿った顆粒を乾燥させ、BSS#24メッシュ篩に通す。
5.クロスカルメロースナトリウムをBSS#60メッシュ篩に通し、4由来の顆粒と混合する。
6.ステアリン酸をBSS#60メッシュ篩に通し、5由来の顆粒と混合する。
7.6のブレンドした顆粒を、19×8mmパンチを使用して打錠する。
実施例2のバリアコーティング
8.HPMC6 cpsを、撹拌しながらイソプロピルアルコールと水との混合物中に分散させる。
9.8の分散液を7で生成された錠剤上にコーティングする。
腸溶性の最終コーティング:
10.EudragitL 100−55溶液を、撹拌しながらイソプロピルアルコール中に調製する。
11.実施例1のコア錠剤および実施例2のバリアコーティングした錠剤を、工程10のEudragitL100−55溶液でコーティングして、重量を8%増加させる。
12.HPMC6 cpsをイソプロピルアルコールと水との混合物に溶解し、11由来の腸溶コーティングした実施例1の錠剤上にコーティングして重量を2%増加させる。
13.メロキシカムおよびHPMC6 cpsをイソプロピルアルコールと水との混合物に溶解し、工程12の錠剤上にコーティングする。
14.HPMC6 cps(最終量)をイソプロピルアルコールと水との混合物に溶解し、13由来の錠剤にコーティングする。
【0111】
実施例1および2の処方物由来のナイアシンのin vitro放出プロフィールを、United States Pharmacopeia 29,United States Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville,Maryland,2005("USP")中の試験711「溶解」手順にて、装置2(パドル)および75rpm撹拌において最初の2時間は0.1N塩酸を使用し、その後はリン酸緩衝液(pH6.8)を使用して決定する。溶解プロフィールの結果を図1に示す。図中、縦軸は溶解した含有ナイアシンの累積率であり、横軸は時間である。実施例1のデータポイントを菱形を使用して示し、実施例2のデータポイントを四角を使用して示す。
【0112】
実施例1および2にしたがって調製した処方物を、ナイアシンの薬物動態パラメーターを評価するための絶食条件下にて4匹の健康な雄のビーグル犬に経口投与する。血液サンプルを投与後72時間にわたって定期的に採取し、血漿中のナイアシン濃度を分析する。結果は以下である。
【0113】
【表2】

結果は、バリアコーティングの存在が哺乳動物に投与した場合に、処方物によって得られるナイアシンの全身曝露に影響を及ぼすことを示す。
【0114】
【表3−1】

【0115】
【表3−2】

実施例3の製造プロセス:
1.ナイアシン、微結晶性セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムのブレンドをBSS#60メッシュ篩に通し、ブレンダー中で混合し、次いで、19×8mmパンチを使用して打錠する。
コーティング
2.EudragitL 100−55溶液を、撹拌しながらイソプロピルアルコールおよび水中で調製する。クエン酸トリエチルおよびタルクを撹拌しながら添加する。
3.1のコア錠剤を2の溶液でコーティングして、重量を8%増加させる。
実施例4〜8の製造プロセス:
1.ナイアシン、微結晶性セルロース、および無水ラクトースを共に混合し、BSS#60メッシュ篩に通す。
2.粉末混合物をブレンダー中で再度ブレンドして均一にする。
3.2のブレンドを、EudragitNM30D分散液を使用した急速混合造粒機(RMG)中で造粒する。
4.3由来の湿った顆粒を乾燥させ、BSS#24メッシュ篩に通す。
5.ステアリン酸をBSS#60メッシュ篩に通し、4由来の顆粒と混合する。
6.5のブレンドした顆粒を、19×8mmパンチを使用して打錠する。
コーティング
7.EudragitL100−55溶液を、撹拌しながらイソプロピルアルコール中に調製する。必要に応じてクエン酸トリエチルを添加する。
8.6のコア錠剤を7の溶液でコーティングして、重量を8%増加させる。
9.HPMC6 cpsをイソプロピルアルコールと水との混合物に溶解し、8由来の錠剤にコーティングして、重量を2%増加させる。
10.実施例5のために、メロキシカムおよびHPMC6 cps(第2の量)をイソプロピルアルコールおよび水に溶解し、9由来の錠剤にコーティングする。
11.実施例5のために、HPMC6 cps(第3の量)をイソプロピルアルコールおよび水に溶解し、10由来の錠剤にコーティングして重量を2%増加させる。
【0116】
実施例3、5、および7の処方物由来のナイアシンのin vitro放出プロフィールを、実施例1および2に記載の条件および手順を使用して決定する。実施例4、6、および8の処方物由来のナイアシンのin vitro放出プロフィールを、使用媒質が0.001N HCl(pH3.0)のみであることを除いて実施例1および2に記載の条件および手順を使用して決定する。結果を図2に示す。図中、縦軸は溶解した含有ナイアシンの累積率であり、横軸は分である。実施例3のデータポイントを菱形を使用して示し、実施例4のデータポイントを四角を使用して示し、実施例5のデータポイントを三角を使用して示し、実施例6のデータポイントを「x」を使用して示し、実施例7のデータポイントをアスタリスクを使用して示し、実施例8のデータポイントをドットを使用して示す。
【0117】
【表4−1】

【0118】
【表4−2】

製造プロセス:
1.ナイアシン、微結晶性セルロース、およびラクトース一水和物を共に混合し、BSS#60メッシュ篩に通す。
2.粉末混合物をブレンダー中で再度ブレンドして均一にする。
3.2のブレンドを、EudragitNM30D分散液を使用してRMG中で造粒する。
4.3由来の湿った顆粒を乾燥させ、BSS#24メッシュ篩に通す。
5.クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸をBSS#60メッシュ篩に通し、4由来の顆粒と混合する。
6.5のブレンドした顆粒を、19×8mmパンチを使用して打錠する。
コーティング
7.透明な溶液が形成されるまで撹拌しながらイソプロピルアルコールおよび水にHPMC6 cps(第1の量)を分散させることによって、サブコーティング液を調製する。
8.7から得たコーティング液を6で調製した錠剤にコーティングする。
9.腸溶コーティング溶液を、撹拌しながらHPMCフタラート、クエン酸トリエチル、および重炭酸ナトリウムをイソプロピルアルコールと水との混合物に分散させることによって調製する。
10.8由来のサブコーティングした錠剤を、9のコーティング溶液でコーティングする。
11.HPMC6 cps(第2の量)をイソプロピルアルコールおよび水に溶解し、11の腸溶性コーティングした錠剤にコーティングして、重量を2%増加させる。
【0119】
実施例9の処方物由来のナイアシンのin vitro放出プロフィールを、実施例1および2に類似の条件を使用して決定する。結果を図3に示す。図中、縦軸は溶解した含有ナイアシンの累積率であり、横軸は時間である。
【0120】
【表5】

製造プロセスは、実施例9の製造プロセスに記載の工程7、8、および11中のHPMCの代わりにコーティングのためにオパドライイエローを使用することを除き実施例9に類似する。
【0121】
実施例10および11の生成物、市販のNIACOR製剤、および市販のNIASPAN製剤(それぞれ500mgのナイアシンを含む)由来のナイアシンのin vitro放出プロフィールを、実施例1および2に類似の条件を使用して決定する。結果を以下に示し、プロフィールを図4に示す。図中、縦軸は溶解した含有ナイアシンの累積率であり、横軸は分である。実施例10のデータポイントを菱形を使用して示し、実施例11のデータポイントを四角を使用して示し、NIACORのデータポイントを三角を使用して示し、NIASPANのデータポイントを「x」を使用して示す。
【0122】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的処方物であって、
(a)治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、薬学的に許容可能な放出制御剤、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含むナイアシン含有非膨潤性固体コア、
(b)任意選択的に、該ナイアシン含有コア上のバリアコーティング、および
(c)任意選択的に、(a)または(b)のいずれかの表面上に施された腸溶コーティング
を含む薬学的処方物。
【請求項2】
放出制御剤がメタクリル酸コポリマーを含む、請求項1に記載の薬学的処方物。
【請求項3】
放出制御剤が繰り返し単位(A):
【化4】

を有するメタクリル酸コポリマーを含む、請求項1に記載の薬学的処方物。
【請求項4】
メタクリル酸コポリマーの分子量が約600,000である、請求項3に記載の薬学的処方物。
【請求項5】
メタクリル酸コポリマーの分子量が約800,000である、請求項3に記載の薬学的処方物。
【請求項6】
コアがナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、および希釈剤を含み、薬学的に許容可能な放出制御剤を使用して造粒した、請求項1に記載の薬学的処方物。
【請求項7】
バリアコーティングが存在し、親水性ポリマーを含む、請求項1に記載の薬学的処方物。
【請求項8】
バリアコーティングが存在し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1に記載の薬学的処方物。
【請求項9】
含有ナイアシンの約50%未満がpH約4未満の水性媒体への浸漬から約2時間後以内に放出される、請求項1から8のいずれか1項に記載の薬学的処方物。
【請求項10】
含有ナイアシンの約25%未満がpH約4未満の水性媒体への浸漬から約2時間後以内に放出される、請求項1から8のいずれか1項に記載の薬学的処方物。
【請求項11】
含有ナイアシンの約10%未満がpH約4未満の水性媒体への浸漬から約2時間後以内に放出される、請求項1から8のいずれか1項に記載の薬学的処方物。
【請求項12】
薬学的処方物であって、
(a)治療有効量のナイアシン、その塩、またはナイアシンプロドラッグ、および薬学的に許容可能な賦形剤を含み、薬学的に許容可能な放出制御剤を使用して造粒したナイアシン含有コア、
(b)任意選択的に、該コア上に層状に重ねたバリアコーティング、および
(c)(b)が存在しない場合に該コア上に直接施されたか、該バリアコーティング上に適用された腸溶コーティング
を含む薬学的処方物。
【請求項13】
放出制御剤がメタクリル酸コポリマーを含む、請求項12に記載の薬学的処方物。
【請求項14】
放出制御剤が繰り返し単位(A):
【化5】

を有するメタクリル酸コポリマーを含む、請求項12に記載の薬学的処方物。
【請求項15】
メタクリル酸コポリマーの分子量が約600,000である、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項16】
メタクリル酸コポリマーの分子量が約800,000である、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項17】
バリアコーティングが存在し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項12から16のいずれか1項に記載の薬学的処方物。
【請求項18】
含有ナイアシンの約50%未満がpH約4未満の水性媒体への浸漬から約2時間後以内に放出される、コア中のナイアシンおよび前記コア上のポリマーコーティングを含む薬学的処方物。
【請求項19】
含有ナイアシンの約25%未満がpH約4未満の水性媒体への浸漬から約2時間後以内に放出される、請求項18に記載の薬学的処方物。
【請求項20】
含有ナイアシンの約10%未満がpH約4未満の水性媒体への浸漬から約2時間後以内に放出される、請求項18に記載の薬学的処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−521977(P2011−521977A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511900(P2011−511900)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/045927
【国際公開番号】WO2009/149058
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【出願人】(506017137)ドクター レディズ ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】