説明

警備システム

【課題】侵入者を検出して異常通報する警備システムにおいて、警備装置が故障又は破壊されたことを確実に通報可能にする。
【解決手段】監視通報装置Aは、監視機器10と通報機器20とからなる。監視機器10は、センサSから検出信号を受信すると遅延時間をカウントし、遅延時間内に利用者の取消操作がないと異常と判定し、通報機器20を介して異常情報を監視センタ30へ送出する。同時に、監視機器10は、遅延時間の開始を示す遅延処理開始信号を通報機器20へ送出する。通報機器20は、監視機器10とは無線通信によって接続され、遅延処理開始信号を受信すると、監視機器10が正常に動作しているか否かを確認する臨時動作試験を実行する。監視機器10の動作不良を検出すると、監視機器10の破壊があったことを監視センタ30に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警備システムに関し、特に、利用者の取消操作のための遅延時間が設定されている警備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家屋など建物への不審者の侵入を検出する警備システムが提供されている。警備システムは、玄関扉や窓の開放あるいは人体(熱源)等を検出して発報する各種センサと、センサからの検出信号を入力して異常判定する警備装置とから構成される。
【0003】
この種の警備装置は少なくとも、センサによる監視を行う警戒モードと、監視を行わない警戒解除モード(通常、火災警報装置などは動作している。)をもつ。一般の家屋では、利用者が外出時には、警戒モードに設定して外出し、帰宅時に警戒解除モードに設定する。警戒モード中にセンサが発報すると、警備装置は、侵入異常発生と判定し、通信回線を介して警備会社等が運営する監視センタへ異常信号を送出する。また、利用者が警備装置を操作することにより警戒モードを警戒解除モードに切替えると、警備装置は、その旨を示す信号を監視センタへ送出する。
【0004】
しかしながら、利用者が帰宅した際には、警戒モードが設定されているので、利用者が玄関扉を開けて家屋内に立ち入ると、侵入異常となってしまう。したがって、警備システムでは、従来から、利用者の立ち入りに対して侵入異常を検出することを防ぐために、玄関等の出入口を監視するセンサが発報したときには直ちに侵入異常と判定しないように構成されている。すなわち、利用者が、家屋等の警戒領域に立ち入った後、警戒解除モードに切替えるための所定の遅延時間が設定されていて、この解除待ちの遅延時間内で利用者が警戒解除モードに切替えることができるようになっている。そして、解除待ちの遅延時間が経過するまでに警戒解除モードに切替えられなかったときに、警備装置は侵入異常と判定し、監視センタに異常通報する。
【0005】
ところが、この種の警備システムでは、帰宅した利用者が警戒解除モードに容易に切替えられるように、玄関から遠くない操作しやすい場所に警備装置を配置している場合が多い。したがって、玄関から侵入した不審者によって、解除待ち遅延時間が経過するまでの間に警備装置が破壊されてしまうということが起きる可能性がある。解除待ち遅延時間が経過するまでの間に警備装置が破壊されてしまうと、異常が発生したことを監視センタに通報することができなくなってしまう。
【0006】
この問題に対して、従来、玄関扉を監視するセンサが動作して遅延処理が開始した時点で監視センタにその旨を通知し、監視センタにて所定時間以内に警備システムから異常信号もしくは警戒解除モードに設定された旨の信号を受信するか監視をすることが提案されている(特許文献1参照)。これによると、監視センタは、所定時間が経過しても警備システムから信号を受信しない場合に、警備装置が侵入者によって破壊されたと判定することができる。
【0007】
しかしながら、この種の警備システムは、監視センタへ信号を送出する際、予め登録された監視センタの電話番号をダイヤルして回線接続しており、監視センタへ信号を送信するにはある程度の時間を要する。このため、遅延処理が開始した信号を送出する前に警備装置が破壊されてしまった場合には、玄関扉を監視するセンサが発報して遅延処理が開始したことを監視センタが認識することはなく、したがって、異常発生を監視センタで認識することはできない可能性がある。
【0008】
また、監視センタは、複数の警備システムを一括して集中管理しているため、個々の警備システムの遅延時間の監視を行うと、システム負荷が増大してしまう。
【特許文献1】特開2005−190433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、遅延処理中に警備装置が破壊された場合であっても、確実に異常発生を通報可能とする警備システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の警備システムは、監視領域への侵入者を検出する少なくとも1つのセンサと、前記センサから検出信号を受信すると所定の遅延時間は異常判定を保留する遅延処理を実行し、該遅延時間内に利用者の取消操作がないと外部へ異常通報する監視通報装置とを備えた警備システムであって、前記監視通報装置は、それぞれ別体に構成された監視機器及び通報機器を有し、前記監視機器は、前記センサから検出信号を受信する受信手段と、前記通報機器との間で無線通信する無線通信手段と、
前記検出信号を受信すると前記遅延処理の開始を示す遅延処理開始信号を前記通報機器へ送出させる監視制御手段とを備え、前記通報機器は、前記監視機器との間で無線通信する無線通信手段と、外部へ異常通報する通報手段と、前記遅延処理開始信号を受信すると、前記監視機器が正常に動作しているかを確認する動作試験を第1の所定時間後に実行する試験手段と、前記動作試験により前記監視機器の動作不良を検出すると、異常情報を前記通報手段にて外部へ送出させる通報制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記試験手段は、前記第1の所定時間より長い第2の所定時間ごとに前記監視機器に対して定期的な動作試験を実行し、前記遅延処理開始信号を受信すると前記第1の所定時間後に臨時的な動作試験を実行することができる。
【0012】
前記通報制御手段は、前記定期的な動作試験と前記臨時的な動作試験報とで異なる内容の異常情報を送出するようにしてもよい。
【0013】
前記第1の所定時間は、前記遅延時間より短く設定され、前記試験手段は、前記遅延処理開始信号を受信して第1の所定時間が経過すると、前記遅延処理が実行されている間は前記動作試験を繰り返し実行するようにしてもよい。
また、通報機器による動作試験として、監視機器へ動作試験信号を送出して、前記監視機器からの応答信号の有無を監視するようにすれば、簡単な試験で確実に監視機器の破壊を知ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の警備システムでは、監視通報装置は、監視機器と通報機器とを別体で備えて、監視機器が遅延処理の開始信号を通報機器に送信し、通報機器で監視機器の動作試験を行うようにしたので、遅延処理の開始信号を監視センター等外部に通報することなく、監視機器が侵入者によって破壊されても確実に監視機器の破壊を検出し、外部へ通報することができる。
【0015】
また、通常は監視機器に対する動作試験を定期的に行い、遅延処理の際に臨時の動作試験を行えば、故障などによる機器異常の定期的なチェックと、侵入者による破壊行為のチェックを両立させて実現可能となる。定期動作試験の際の異常情報と遅延処理中の動作試験の異常情報とを異ならせると、侵入者による監視機器の破壊を通常の機器異常と区別して知らせることができる。また、動作試験を遅延処理の終了まで反復するようにすれば、さらに確実な監視機器の動作を監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の警備システムを含む全体システムを示す。本実施形態の警備システム1は、家屋など監視対象の建物に設置され、監視領域である家屋への不審者の侵入を検出する各種センサSと、監視通報機器Aとを含んで構成され、監視通報機器Aは、警備システム1を統括する監視機器10と、監視センタへの通報を行う通報機器20とを有する。本実施形態では、監視機器10と通報機器20とは別体に構成され、小電力無線により接続されている。後に詳しく説明するが、本実施形態では、通報機器20が基地局40、無線パケット通信網50を介して監視センタ30と通信可能であり、監視機器10が侵入異常の判定を行い、通報機器20を介して侵入異常があったことを、監視センタ30へ通報する。さらに、通報機器20は、監視機器10に機器異常が発生したか否かを監視する。また、本実施形態では、通報機器20による通報が不可能な状況であっても監視センタへ30への通報が行えるように、監視機器10がインターネット網60を介して監視センタ30と通信可能に構成される。
【0017】
各種センサSは、監視領域への不審者の侵入を検出すると発報し、自己の識別情報またはアドレスを付した検出信号を監視機器10へ送出する。各種センサSと監視機器10とは、有線又は無線で通信可能に接続されている。なお、有線接続されたセンサSにおいては、不審者の検出を、信号線の短絡や断線によって監視機器10へ通知するようにしてもよい。
【0018】
各種センサSには、玄関扉や窓が開放されたことを検出する開閉検知センサ、玄関内や部屋内の空間における人体を検出する人体検知センサ、などがある。開閉検知センサとしては、例えば、磁石の接近/離間によって接点を切り換えるマグネットセンサが使用可能で、人体検知センサとしては、例えば、人体が放射する赤外線を検出する赤外線センサが使用可能である。その他各種のセンサが使用できるが、他の人体検知センサとしては、超音波を投射して人体からの反射波を受ける超音波センサ、赤外線を受光器に投射して、受光器に入射する赤外線の遮断を検出するタイプの赤外線センサを使用するようにしてもよい。
【0019】
図2に、本実施形態の監視機器10の内部構成を示す。図2に示すように、監視機器10は、監視制御部11、センサ・インタフェース(センサI/F)12、記憶部13、モード設定操作部14、表示部15、無線通信インタフェース(無線通信I/F)16、電源供給部17などから成る。
【0020】
センサI/F12は、各種センサSと無線又は有線にて通信するインタフェースであり、センサSから検出信号を受信して、監視制御部11に送る。
【0021】
モード設定操作部14は、利用者が警戒モード又は警戒解除モードに設定する際に操作するものである。例えば、警戒モードに設定する際に押下されるボタン、警戒解除モードに設定する際に利用者が所持するICカードを読み取るリーダ、等である。
【0022】
記憶部13は、監視制御部11の動作プログラムの他、現在設定されている警備モード、センサSを識別するセンサ情報が記憶される。例えば、センサSのアドレス情報及び設置場所情報が記憶される。このセンサ情報によって、解除待ちの遅延処理の対象であるセンサが識別されるため、少なくとも遅延処理対象である特定のセンサSを識別するアドレス情報が記憶される。
【0023】
なお、信号線の短絡等によって発報するセンサSについては、センサI/F12に入力される信号線ごとに設置場所情報を記憶させればよい。なお、特定のセンサは、利用者が出入りのために使用する場所に設けられるもので、玄関のみならず、勝手口等であってもよく、さらには門から玄関までの屋外の空間を監視するものでもよい。
【0024】
表示部15は、液晶表示装置や発光ダイオード等で構成され、利用者に異常発生などの各種の表示を行うものである。また、音あるいは音声を出すことも可能で、異常発生時には音を発生させて異常を報知し、遅延処理中も遅延処理中であることを音によって報知するようにしている。
【0025】
無線通信I/F16は、通報機器20と小電力無線による無線通信を行うインタフェースである。
電源供給部17は、商用電源に接続され、各部に所定の電圧を供給する。
監視制御部11は、監視機器10の各部を制御し、監視領域への不審者の侵入を監視する。監視制御部11は、センサSからの検出信号をセンサI/F12を介して受信すると、警備モードか警備解除モードである場合は無視し、警備モードが警戒モードである場合、ただちに異常処理を実行する。また、モード設定操作部14が操作されて、警備モードが変更設定されると、警戒モードに移行した際は警戒移行信号を、警戒解除モードに移行した際は解除移行信号を、無線通信I/F16を介して通報機器20へ送出する。
【0026】
しかし、利用者が監視領域への出入に使用する玄関付近等の出入口に設けられた特定のセンサからの検出信号を受信したときには、すぐに異常処理することなく一旦保留し、予め設定された遅延時間の後異常処理を行なう(遅延処理)。これは、特定のセンサが、帰宅した利用者である家人を検出して、検出信号を発報した可能性があるためであり、解除のための遅延時間を過ぎても、発報に対する取消操作として警戒モードを解除(警戒解除モードに設定)されない場合にはじめて、異常処理を実行する。なお、特定のセンサによる発報であるかは、記憶部13に記憶されたセンサ情報から特定する。また、所定の遅延時間は、利用者が監視領域に進入してからモード設定操作部14を操作して警戒解除モードを設定するための解除待ちの遅延時間であり、利用者によって所定の時間幅内(例えば1分〜5分)で設定可能となっている。
【0027】
このようにして、予め設定された遅延時間(例えば3分)内に利用者によって警戒解除モードの設定操作がされなかったときに侵入異常と判定し、侵入異常信号を無線通信I/F16を介して通報機器20へ送出し、上記遅延処理を終了する。また、遅延時間内に警戒解除モードに設定されたときには、通報機器20へ解除移行信号を送信し、上記遅延処理を終了する。
【0028】
この遅延処理の開始に際して、遅延処理が開始されたことを、遅延開始信号として通報機器20に無線通信I/F16を介して通知する。また、特定のセンサではない場合は、直ちに不審者であると判断できるため、通報機器20に対して侵入異常信号を送出する。さらに、監視制御部11は、後述の動作試験信号を通報機器20から無線通信I/F16を介して受信すると、応答信号を通報機器20へ送出する。
【0029】
予備通報部18は、通信網を介して監視センタ30へ各種データ(異常発生情報、モード切替情報など)を送信するためのものである。本実施形態では、インターネットを利用したパケット通信を利用する構成とし、各種データをパケット化して監視センタ30に対して送出し、インターネット網60を介して監視センタ30へ伝送する。この予備通報部18は、後述する通信機器20による監視センタ30への通報が行えない場合の予備的な通信手段として機能する。上述したように、監視機器10は、無線通信I/F16を介して通信機器20へ各種信号を無線送信するが、信号を送出した際に通報機器20から応答信号がない場合には、通報機器20による監視センタ30への通報ができないと判断し、予備通報部18を用いてインターネット網60経由で監視センタ30へ通報を行う。
【0030】
次に、通報機器20について詳細に説明する。上述の監視機器10は、システムの運用上、利用者が操作したり表示を見たりする必要があるため、比較的、目立つ場所に設置される。これに対し、通報機器20は、基本的に利用者が操作したりすることがないものであり、監視センタ30への通報を行う重要な部分として、監視機器10とは離れた場所に目立たないように設置する。
【0031】
図3に、本実施形態の通報機器の内部構成を示す。図3に示すように、通報機器20は、通報制御部21、動作試験部22、無線通信インタフェース(I/F)23、通報部24、電源供給部25などから成る。通報機器20は、監視機器10と別体に構成し、監視機器10との間で無線通信可能である。
【0032】
通報機器20は、通報制御部21の制御により、監視機器10からの無線信号による指示に基づいて、監視センタ30への通報を行う。例えば、監視機器10から侵入異常信号を受信したときには、侵入異常が発生した旨を監視センタ30へ通報する(侵入異常情報の送信)。さらに、通報機器20は、後述するように、通報制御部21の制御により、動作試験部22を動作させて、監視機器10の動作試験を行い、その試験結果に基づいて監視機器10の機器異常を検出し、監視センタ30へその旨の通報を行う(機器異常情報の送信)。なお、異常の種類まで特定せずに、異常発生のみを通報するようにしてもよい。
【0033】
通報部24は、通信網を介して監視センタ30へ各種データ(異常発生情報、モード切替情報など)を送信するためのものである。本実施形態では、無線パケット通信を利用する構成とし、各種データをパケット化して監視センタ30に対して無線送出し、基地局40及び無線パケット通信網50を介して監視センタ30へ伝送する。
【0034】
無線通信I/F23は、監視機器10と無線通信を行うインタフェースである。
動作試験部22は、監視機器10と無線信号を送受することにより、監視機器10が正常に動作しているか、すなわち通報機器20に信号を送出可能な状態であるかを試験する。監視機器10に対する定期動作試験では、他の無線通信への影響を考慮して、比較的長い時間である所定時間tl(例えば30分)ごとに動作試験を実行する。動作試験部22は、監視機器10に対して無線通信I/F23を介して動作試験信号を送出し、監視機器10から応答信号を受信しない場合には、監視機器10が動作不良な状態であると判断し、機器異常が発生した旨を監視センタ30へ通報する(機器異常情報の送信)。
【0035】
しかし、監視機器10から警戒モード解除のための遅延処理が開始したことを示す遅延開始信号を受信したときは、定期動作試験の次回タイミングにかかわらず、臨時動作試験として、所定時間t2(例えば1分)後に動作試験を実行する。ここで、所定時間t2は、遅延処理中という監視機器10への破壊行為の危険性が高い状況で臨時的に動作試験を実施するための時間であり、定期動作試験の周期t1より短く、また、遅延時間Tを大きく超えない時間とする。動作試験については、図5〜7の動作フローに基づいて、以下に詳しく説明する。
【0036】
図4は、監視機器の監視動作のフローチャートを示す図である。監視機器10は、警戒モードに設定されたとき、以下の監視動作を行う。
【0037】
監視動作がスタートすると、まずステップS11で、センサSからの検出信号が受信されたか否かを判定する。受信されなければ、ステップS11を繰り返す。あるセンサSから検出信号を受信すると、ステップS12で検出信号に含まれたセンサSの識別情報と記憶部13のセンサ情報から、発報したセンサが、利用者が出入りする玄関等を監視する特定のセンサか否かを判定する。特定のセンサでない場合は、直ちに侵入異常を確定し(ステップ17)、通報機器20へ侵入異常信号を送出して、監視センタ30への通報を指示する(ステップ18)。このとき、監視機器10の表示部15では、警告灯、警報ブザー等による異常発生の表示を行う。
【0038】
検出したセンサが特定のセンサの場合は、ステップS13で、遅延処理を実行して利用者による解除操作を待つための遅延時間T(例えば3分)を計時開始し、ステップS14で、遅延開始信号を通報機器20へ送出する。後に説明するが、通報機器20では、遅延開始信号の受信により、臨時動作試験の起動タイマ時間t2をセットする。
【0039】
そして、ステップS15で、モード設定操作部14に警戒解除モードに設定する操作が入力されたか否かを判定し、解除モードの設定操作がないまま、ステップS16で、遅延時間Tが過ぎると、ステップS7で、監視機器10が侵入者がいると判断して、侵入異常を確定し、ステップS18で、通報機器20へ侵入異常信号を送出して、監視センタ30への通報を指示する。なお、監視機器10では、通報機器20から侵入異常信号の受信にともなって返信される応答信号を受信することになる。
【0040】
なお、このフローでは、煩雑にならないように、遅延処理の実行中に他のセンサから侵入異常を示す検出信号が受信された場合を省略している。遅延時間Tを計時中に他のセンサから侵入異常を示す検出信号が入力された場合には、監視機器10は、遅延時間Tが経過するのを待たずに遅延処理を終了して侵入異常を確定し、通報機器20へ侵入異常信号を送出して、監視センタ30への通報を指示する。
【0041】
ステップS15で、遅延時間T内に警戒解除モードの設定操作が入力されると、ステップS19で、監視機器10は、記憶部13に記憶する警備モードを警戒解除モードに更新して、警戒解除モードへ移行し、ステップS20で、通報機器20へ解除移行信号を送出し、警戒解除モードが設定されたことを監視センタ30へ通報するよう指示する。これによって、監視機器10は、一旦侵入異常の監視を中止し、次に警戒モードに設定されるのを待機する。なお、監視機器10では、通報機器20から解除移行信号の受信にともなって返信される応答信号を受信することなる。監視機器10は、ステップ18、ステップ20において通報機器20に対して無線信号を送出した際、通報機器20からこれに対する応答信号を受信しない場合には、通報機器20による監視センタ30への通報ができない状態であると判断し、自己の予備通報部18を用いて各種データ(解除移行情報又は侵入異常情報)を監視センタ30へ送信する。これにより通報機器20が破壊された場合であっても、監視機器10から監視センターへ各種データを送信することが可能となる。
【0042】
次に、図5を参照して、通報機器の動作を説明する。
通報機器20が、電源投入などにより起動すると、監視機器10の指示により通報動作を行うことができるように待機するとともに、監視機器10に対する定期的な動作試験を行う。本実施形態では、監視機器10の遅延処理中は、定期的な動作試験に代えて臨時動作試験を行う。定期動作試験は、初期状態として、動作開始後、所定時間t1(例えば30分)後に初回の動作試験を行うように設定されているものとする。
【0043】
まずステップS31で、定期動作試験の周期である所定時間t1の計時を開始する。所定時間tlを計時中に、監視機器10から何らかの信号(侵入異常信号、モード切替信号(警戒移行信号又は解除移行信号)、遅延開始信号など)を受信しなかった場合、ステップS36で、所定時間t1が経過したことを確認して、ステップS37で、監視機器10に対して動作試験信号を送出する。なお、ステップS36で所定時間t1が経過していないと判定された場合は、ステップS32に戻り、監視機器10から信号の受信を待機する状態に戻る。
【0044】
前述したように、動作試験信号を受信した監視機器10は、正常に動作していると応答信号を送信するように構成されているので、通報機器20では、ステップS38で、送られてくる応答信号を受信したか否かを判定する。
【0045】
ステップS38で、監視機器10からの応答信号を受信した場合は、監視機器10は正常に動作していると判断し、処理を始めに戻して、ステップ31で所定時間t1を再び計時開始する。
【0046】
ステップS38で、応答信号を受信しなかった場合は、監視機器10は故障により動作不良状態であると判断し、機器異常を示すデータ(機器異常情報)を監視センタへ送信する。
【0047】
一方、ステップS32で、所定時間t1を計時中に、監視機器10から何らかの信号を受信すると、ステップS33で、その受信信号が解除待ちの遅延開始信号であるか否かを判定する。受信信号が解除待ちの遅延開始信号ではない場合、ステップS34で、モード切替信号である場合は警戒モード又は解除モードへの移行を示すデータ(警戒移行情報、解除移行情報)を、侵入異常信号である場合は侵入異常を示すデータ(侵入異常情報)を、基地局40および無線パケット通信網50を介して監視センタ30へ送信する。
【0048】
この場合、監視機器10からモード切替信号あるいは侵入異常信号を受信したことで、監視機器10の動作確認がとれたことになるので、ステップS35で、所定時間t1をリセットし、再びt1を再計時開始する。次ぎのステップS36で、所定時間t1が終了していないと判定されると、ステップS32に戻り、監視機器10からの信号を待ち受ける。
【0049】
ステップS33で、受信した信号が解除待ち遅延開始信号であると判定した場合は、臨時動作試験のフローに進む。
【0050】
図6に、臨時動作試験のフローの一例を示す。図5のステップS33で受信した信号が解除待ち遅延開始信号であると判定した場合は、図6のステップS51に進み、臨時動作試験を実施するまでの時間である所定時間t2(例えば1分〜3分の適宜の時間)を計時開始する。臨時動作試験の所定時間t2は、定期動作試験の時間t1より短く、遅延時間Tを大幅に超えないように設定される。
【0051】
通報機器20は、所定時間t2を計時中、ステップS52で、監視機器10からの信号受信を監視する。所定時間t2を計時中に、監視機器10から何らかの信号(侵入異常信号、解除移行信号)を受信したときは、ステップS53で、解除移行信号である場合は解除モードへの移行を示すデータ(解除移行情報)を、侵入異常信号である場合は侵入異常を示すデータ(侵入異常情報)を、基地局40および無線パケット通信網50を介して、監視センタ30へ通報する。
【0052】
次に、ステップS54で、所定時間t2が経過したか否かが判断され、所定時間t2が経過した場合には、ステップS55で、動作試験信号を監視機器10へ送出し、ステップS56で、応答信号の有無を判定する。
【0053】
ステップS56で、応答信号を受信した場合は、監視機器10は正常に動作していると判断し、処理を始めに戻して、定期動作試験に戻り、ステップS31で、所定時間t1を再び計時開始する。
【0054】
ステップS56で、監視機器10からの応答信号を受信しなかった場合は、監視機器10は不審者に破壊されて動作不良状態であると判断し、機器異常を示すデータ(機器異常情報)を監視センタ30へ送信した後、処理を始めに戻して、ステップS31で、定期動作試験の所定時間t1を再び計時開始する。
【0055】
臨時動作試験によって、遅延処理の実行中の不審者による監視機器の破壊を監視することができる。ここで、通報機器は、定期動作試験における機器異常と臨時動作試験における機器異常とを区別して監視センタ30へ通報することができる。この場合、臨時動作試験による機器異常は、侵入者による監視機器の破壊による可能性が高いため、破壊異常として通報するようにするとよい。
【0056】
臨時動作試験の所定時間t2は、遅延処理中の監視機器10の機器異常を判定する目的からは、遅延時間Tにほぼ等しい時間時間とすることが考えられる。所定時間t2を遅延時間Tの付近(T−α1<t2<T+α2,α1,α2はいずれもわずかな時間)に設定すると、ほぼ遅延時間Tを通して動作試験を行うことができる。このように、本実施形態では、監視機器10が侵入異常を判定するので、遅延時間Tを経過するまで監視機器10の機器異常を監視するのが一般的には好ましい。ただし、遅延時間Tは利用者により設定の変更が可能であるため、これに限られるものではない。遅延時間Tを長く設定している場合、遅延時間Tが経過しないと監視機器10の機器異常が判定できないということになるからである。なお、遅延時間Tに対応して臨時動作試験の所定時間t2を定めておいて、遅延時間Tの変更に応じて、所定時間t2を自動的に変更するようにしてもよい。
【0057】
本実施形態では、解除待ちの遅延処理が開始すると必ず所定時間t2後に臨時動作確認を実施することとしたが、所定時間t2が経過するまでに遅延処理が終了している場合には既に動作確認がとれているため、臨時動作試験を行わなくてもよい。遅延処理は、警戒解除モードへの移行、侵入異常の確定により、終了する。
以上に説明したように、本実施形態の警備システムによれば、監視機器10が故障又は侵入者による破壊行為によって正常に動作できなくなったことを、確実に監視センタ30へ通報することができる。
【0058】
図7に、通報機器20における臨時動作試験の動作フローの他の例を示す。図7の動作フローは、臨時動作試験の所定時間t2に短い時間を設定して、臨時動作試験を遅延時間内で繰り返すようにする。すなわち臨時動作試験に短い繰返し周期を設定して、遅延処理が終了するまで臨時動作試験を繰り返して、不審者による監視機器の破壊を監視する。
【0059】
図5の定期動作試験のステップS33で、監視機器から受信した信号が、遅延開始信号であった場合、図7のステップS61で、遅延時間T(例えば3分)より短い所定時間t3(例えば30秒)の計時を開始する。この所定時間t3は、適宜設定でき、前述の所定時間t2と等しくてもよい。次ぎのステップS62では、所定時間t3の間に監視機器10から信号を受信したか否かを判定し、監視機器10からの信号を受信すると、受信信号は、利用者による警戒解除モードへの移行を示す信号であるか、または他のセンサが検出した侵入異常を示す信号であるかのいずれかであるから、ステップS63で、警戒解除モードへの移行あるいは侵入異常を監視センタ30へ通報する。通報機器20は、監視機器10から上記信号を受信したことをもって、監視機器10での遅延処理が終了したことが判るため、再び臨時の動作試験を行う必要はなく図5の定期試験動作のスタートへ戻る。
【0060】
ステップS62では、所定時間t3の間に監視機器10から信号を受信せず、所定時間t3が経過しない場合は、ステップS64を介して、ステップS62に戻り、監視機器からの信号を待つ。ステップS64で、所定時間t3が経過した場合は、監視機器10へ動作試験信号を送出して、監視機器10の動作試験を行う。
【0061】
ステップS66で応答信号を受信した場合は、監視機器10は正常であると判定し、ステップS61へ戻り、再度所定時間t3の計時を開始し、次ぎの動作試験に備える。
【0062】
このようにして、所定時間t3が例えば30秒であれば、30秒経過ごとに監視機器10の動作試験が行われ、解除待ちの遅延時間T内で何度も監視機器10の機器異常を監視することができる。よって、遅延処理の実行中に監視機器10が破壊された場合に、直ちに監視センタ30へ異常発生を通報することができる。
【0063】
ステップS66で、監視機器10から応答信号を受信しなかった場合、監視機器10が破壊されたと判断して、ステップS67で監視機器10の機器異常を、基地局40および無線パケット通信網50を介して、監視センタ30へ通報し、ステップ61へ戻って再び所定時間t3を計時し、臨時動作試験を行う。
【0064】
ここで、ステップS61に戻り再度臨時動作試験を行うようにしたのは、一度機器異常が通報されても、監視機器が復旧することもありうるからである。ただし、ステップS67の機器異常の通報の後、すぐにこのフローを終了して、図5の定期試験動作のスタートへ戻るようにしてもよい。
【0065】
なお、所定時間t3として、30秒を例示したが、最初の臨時動作試験の開始までの時間と、それ以後の臨時動作試験の繰り返し周期とを異ならせてもよい。例えば、遅延処理が開始してから1分後に第1回の動作試験を行い、その後10秒ごとに動作試験を行うようにしもよい。
【0066】
上記実施形態では、警戒モード中における特定センサによる発報に対して、利用者による解除のための遅延処理が実行される例を示したが、本発明の実施の形態は、これに限らない。例えば、何れのセンサが発報しても、利用者による取り消しが可能なように遅延時間が設定されている場合などにも、本発明を適用することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、警戒領域である家屋に利用者がいない状態で警戒する無人警戒モードを対象にして、利用者が帰宅した場合の遅延処理について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、家屋に利用者がいる状態で扉や窓の開放のみを監視する有人警戒モードにも、本発明は適用できる。例えば、有人警戒モードにおいては、利用者が誤って窓を開けてしまった場合、利用者により取消操作ができるように遅延時間が設定されている。この場合、利用者は監視機器と無線接続された取消操作用の端末を所持し、センサが発報した後の遅延時間以内にこの解除操作用の端末により取消操作する。この場合も、窓の開閉を検出するセンサを特定センサとして、本発明を適用して、遅延時間以内に取消操作用の端末により取消操作しないと、監視機器により侵入異常の確定をするようにし、さらには通報機器による監視機器の機器異常の監視等を実行することができる。
【0068】
いずれにせよ、本発明は、センサの発報に対して取消操作のための遅延時間が設定されている警備システムに、適用可能である。
【0069】
さらに、上記実施形態では、遅延時間の計時は、監視機器10で行い、監視機器10で異常判定を行っているが、遅延処理の開始の信号を通報機器20に送信した後、遅延時間の計時を通報機器20で行うようにして、通報機器20で異常判定を行うようにもできる。すなわち、上記実施形態では、監視機器10は、遅延時間内に解除操作が入力されないと異常信号を通報機器20へ出力し、これを受けて通報機器20は監視センタ30へ異常情報を送信する。これに対して、侵入異常の判定を通報機器20で行う場合は、監視機器10は解除操作が入力されると、解除信号を通報機器20へ出力し、通報機器20は遅延時間内に解除信号を受信しないと、監視センタ30へ異常情報を出力するようにする。このように、監視機器あるいは通報機器のいずれでも侵入異常の判定を行うことができるので、本発明の実施に際して適切な装置を選択して異常の判定を実行させることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、監視センタ30への通報処理を通常は通報機器20が行い、予備の通報手段を監視機器10が備える構成としたが、通常の通報処理を監視機器10が行うように構成することもできる。この場合、通報機器20は、監視機器10の通報動作を監視し、通報が正常に行えていないことを検出すると、監視機器10に代わって通報処理を実行する。また、動作試験による監視機器10の機器異常については、上記実施形態と同様に通報機器20が行う。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の警備システムの一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の監視機器の概要を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の通報機器の概要を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の監視機器の動作フローを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の通報機器の動作フローを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の通報機器の臨時動作試験の動作フローの一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の通報機器の臨時動作試験の動作フローの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10 監視機器
20 通報機器
30 監視センタ
40 基地局
50 無線パケット通信網
60 インターネット網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域への侵入者を検出する少なくとも1つのセンサと、前記センサから検出信号を受信すると所定の遅延時間は異常判定を保留する遅延処理を実行し、該遅延時間内に利用者の取消操作がないと外部へ異常通報する監視通報装置とを備えた警備システムであって、
前記監視通報装置は、それぞれ別体に構成された監視機器及び通報機器を有し、
前記監視機器は、
前記センサから検出信号を受信する受信手段と、
前記通報機器との間で無線通信する無線通信手段と、
前記検出信号を受信すると前記遅延処理の開始を示す遅延処理開始信号を前記通報機器へ送出させる監視制御手段とを備え、
前記通報機器は、
前記監視機器との間で無線通信する無線通信手段と、
外部へ異常通報する通報手段と、
前記遅延処理開始信号を受信すると、前記監視機器が正常に動作しているかを確認する動作試験を第1の所定時間後に実行する試験手段と、
前記動作試験により前記監視機器の動作不良を検出すると、異常情報を前記通報手段にて外部へ送出させる通報制御手段とを備えたことを特徴とする警備システム。
【請求項2】
前記試験手段は、前記第1の所定時間より長い第2の所定時間ごとに前記監視機器に対して定期的な動作試験を実行し、前記遅延処理開始信号を受信すると前記第1の所定時間後に臨時的な動作試験を実行する請求項1に記載の警備システム。
【請求項3】
前記通報制御手段は、前記定期的な動作試験と前記臨時的な動作試験とで異なる内容の異常情報を送出する請求項2に記載の警備システム。
【請求項4】
前記第1の所定時間は、前記遅延時間より短く設定され、
前記試験手段は、前記遅延処理開始信号を受信して第1の所定時間が経過すると、前記遅延処理が実行されている間は前記動作試験を繰り返し実行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の警備システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−33420(P2008−33420A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203303(P2006−203303)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】