説明

警報制御装置

【課題】表示部上で操船者の求める条件を適切な設定により、輻輳海域において、数多く航行する他船に対する不要または信頼性の低い警報を制御し、信頼性の高い侵入警報または衝突警報を得ることができる警報制御装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】前記衝突危険度判定部32は、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域に応じた侵入警報および衝突警報を制御する警報制御装置であり、輻輳領域において、煩雑する他船に対する信頼性の低い衝突警報を制御し、区別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶から送信される船舶識別情報またはレーダーから得られる探知情報を基に、所定海域における衝突危険度を判定し、判定に応じた警報を制御する警報制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の探知装置、例えばレーダーにおいて、他船が航行の危険領域に進入した場合に、衝突の恐れのある船舶、あるいは衝突の危険性の高い船舶であることを知らせる警報装置が多用化されている。
【0003】
この種の警報装置は、容易に実施でき、且つ実用性がある方式として、表示画面上に特定の領域を設定し、この設定した領域内に他船が侵入した場合に侵入警報を発する装置が提案されている。
【0004】
図3は従来の監視レーダー装置の構成を示すブロック図であり、図4は従来のレーダー指示部あるいは警報用制御部上で表示される監視図である。
【0005】
レーダーの検知範囲内における警戒領域を設定する警戒領域設定手段と、レーダー画像上に警戒領域を表示する表示手段と、レーダー画像上において、警戒領域内にレーダーエコーが存在するか否かを監視し、レーダーエコーが存在する場合には警報を発する監視手段と、他船の少なくとも位置の情報を含む他船情報を検知する検知手段と、この検知手段により検知された他船情報が、予め設定した条件に合致するかどうかを判定する判定手段と、この判定手段で合致したとき、監視手段が警報を発しないように制御する制御手段とを備えている。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−55257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のレーダー装置には、レーダー画面上に警戒領域を設定し、その中にレーダーエコーが存在すれば侵入警報を発する機能がある。
警報を発する目的として、安全な航行のため、自船に接近する場合または自船が接近する船舶に対して警報を発する。
しかしながら、上記従来の構成では、設定した警報除外領域を除く警戒領域に侵入すると警報を鳴らす必要のないターゲットであっても、侵入を検知すれば侵入警報を発しており、その度に監視員に余分な負担を掛けていた。
【0008】
例えば、大型船、小型船、停船中、係留中などの区別なく警報が発せられるため、煩雑になり、警報の信頼性が低下する。
【0009】
現行のAISは、トランスポンダーから送られてくる他船情報と自船の緯度経度、船首方向等から、画面上に他船情報をベクトル表示する装置であり、IMO(国際海事機関)の基本的な考え方は、AISはARPAと同様に操作、表示、警報出力できる必要があるので、全てのターゲットに関して警報を発生している。
【0010】
しかし、現実には警報を鳴らす必要のないターゲットまでも警報を出力するので、操船者はその度に警報音を消して、警報内容を確認する必要がある。この状況が続くと操船者にとって大きなストレスになると共に、本当の危険かの判断を操船者に求めることとなり、ヒューマンエラーを起こす可能性がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するもので、表示部上で操船者の求める条件を適切な設定により、輻輳海域において、数多く航行する他船に対する不要または信頼性の低い警報を制御し、信頼性の高い侵入警報または衝突警報を得ることができる警報制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明の請求項1に記載の発明は、他船の少なくとも位置の情報を含む他船情報を検知する検知部と、少なくとも前記検知部より得られた他船情報または所定条件を基に演算処理して、衝突危険度を判定する衝突危険度判定部と、この衝突危険度判定部により得られた情報を基にグラフィック表示する表示部と、湾内、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域を認識する輻輳海域認識部とを備え、前記衝突危険度判定部は、前記輻輳海域に応じた侵入警報および衝突警報を制御する警報制御装置であり、輻輳海域において、数多く航行する船舶に対する信頼性の低い衝突警報を制御し、区別することができ、衝突危険度の判断の信頼性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記輻輳海域認識部は、操船者による操作または前記検知部からの少なくとも位置の情報または船舶数を基に輻輳海域を認識し、前記衝突危険度判定部および前記表示部とを制御する請求項1に記載の警報制御装置であり、輻輳海域に適した信頼性の高い衝突警報を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記表示部は、前記衝突危険度のレベルと、この衝突危険度のレベルに対応する表示の形態または警報音の状態とを表示し、画面上で選択および設定できる請求項1または2のいずれかに記載の警報制御装置であり、海域に応じた衝突警報を選択、設定することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記表示部は、少なくとも前記衝突危険度のレベルを高い衝突危険度と低い衝突危険度の2レベルまたは高い衝突危険度、中程度の衝突危険度および低い衝突危険度の3レベルとを表示して、画面上で選択および設定できる請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置であり、衝突危険度のレベルを区分することにより、衝突警報の信頼性を高くすることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記表示部は、前記警報音を2または3種類の音質または音量と、警報シンボルの表示の有無または警報発生の文字表示の有無と、通常表示、点滅表示または濃淡表示の表示形態とを、画面上で選択および設定できる請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置であり、衝突危険度のレベルを表示形態、音量、音質により区別することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記衝突危険度判定部は、少なくとも船速による制限、船舶自動識別装置から送信された航行状態のステータスによる制限、船体長による制限、船首横切り距離の制限および船首通過時間の制限とを含む条件を基に衝突危険度を判定する請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置であり、不要な衝突警報を制御することができ、衝突警報において信頼性を高め操船者のストレスを抑制すると共にヒューマンエラーを軽減することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記検知部は、船舶自動識別装置または自動衝突予防援助装置からの他船情報を基に検知する請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置であり、船舶識別情報またはレーダーから得られる探知情報を基に衝突警報を制御することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記輻輳海域認識部は、操船者による操作または前記検知部からの少なくとも位置情報または船舶数を基に輻輳海域の認識を解除し、前記衝突危険度判定部への制御を停止する請求項2に記載の警報制御装置であり、輻輳海域状態を解除することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明は、他船の少なくとも位置の情報を含む他船情報を検知する検知部と、少なくとも前記検知部より得られた他船情報または所定条件を基に演算処理して、衝突危険度を判定する衝突危険度判定部と、この衝突危険度判定部により得られた情報を基にグラフィック表示する表示部と、湾内、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域を認識する輻輳海域認識部とを備え、前記衝突危険度判定部は、前記輻輳海域に応じた侵入警報および衝突警報を制御する警報制御装置であり、輻輳領域において、数多く航行する船舶に対する信頼性の低い衝突警報を制御し、区別することができ、衝突危険度の判断の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態における警報制御装置の構成を示すブロック図である。先ず、図1を用いて、構成について説明する。
【0022】
図1に示す警報制御装置は、水平面に周回するレーダー用空中線(図示せず)を用いてパルス電波の送受波を行う送受信部(図示せず)を備えているレーダー空中線部22と、レーダー用空中線部22からの探知データや自船および他船の船舶識別情報を基に演算処置して、ターゲットの位置を捕捉し、この捕捉したターゲットを追尾する制御部23と、自船の位置、速度、針路などの動的情報と、積み荷、目的地などの静的情報とを含む船舶識別情報を周囲に定期的に送信すると共に、他船からの動的情報および静的情報からなる船舶識別情報を受信して必要な情報を抽出するAIS24と、自船の船首の方位情報を出力するGYROなどの方位センサ25と、自船の位置情報を出力するGPSなどの位置センサ26と、レーダー映像や自船および他船の情報をグラフィック表示すると共に所定条件を表示して入力、設定する表示部27とから構成される。
【0023】
また、制御部23は、他船の少なくとも位置の情報を含む他船情報を検知する検知部31と、検知部31より得られた他船情報または所定条件を基に演算処理して、衝突危険度を判定する衝突危険度判定部32と、湾内、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域を認識し、衝突危険度判定部32を制御する輻輳海域認識部33とを備えている。
【0024】
レーダー空中線部22は、水平面内に周回するレーダー用空中線(図示せず)およびそのレーダー用空中線を用いてパルス電波の送受波を行う送受信部(図示せず)とを備え、レーダー空中線部22と制御部23の間には、ターゲットからのレーダーエコー(反射)のビデオ信号を伝送するための同軸ケーブル、制御部23からレーダー空中線部22を制御するための制御信号を伝送する線路およびレーダー空中線部22に対して電源供給を行う線路などが設けられている。
【0025】
送信状態にすると、制御部23はレーダー空中線部22に対して送信パルスを出力して動作を開始する。レーダー空中線部22は、制御部23から指示された所定の回転角速度でレーダー用空中線を回転させながら、所定の間隔で制御部23のタイミング生成部(図示せず)から入力される送信トリガに応じて、パルス波を探知エリアに向けて輻射し、そのレーダーエコーを受信する。レーダー空中線部22は制御部23へレーダーエコーの信号を入力すると共に、レーダー用空中線が船首線方向を向いたときに発生するヘディングパルス(船首線信号)、レーダー用空中線が一定角度回転するごとに出力されるベアリングパルス(空中線回転信号)を入力する。
【0026】
表示部27は、輻輳海域において、頻繁に発生する侵入警報または衝突警報、あるいは所定領域内における多数の船舶の侵入において、頻繁に発生する侵入警報または衝突警報を危険度の高い警報と低い警報とを区別するために、画面上で選択、設定することができる。なお、輻輳海域の認識においては、操船者からの操作により設定することも可能である。
【0027】
例えば、危険度のレベルを高い危険度と低い危険度の2レベルまたは高い危険度、中程度の危険度および低い危険度の3レベル、警報音を高い音質および低い音質の2音質または高い音質、中程度の音質および低い音質の3音質、中程度の音量および小音量の2音量および大音量、中程度の音量および小音量の3音量、警報シンボルの表示の有無、警報発生の文字表示の有無、通常表示、点滅表示、濃淡表示とする警報形態を選択、設定することができる。
【0028】
設定後、衝突危険度判定部32は、設定に応じて危険度を判定し、判定結果を表示部27に表示する。例えば、表示部27において、画面上で中程度または低い危険度に対して操船者にストレスを与えないように選択、設定することができ、危険度の高い警報を区別し、信頼性の高い警報を制御することができる。
衝突危険度判定部32は、従来のIMO規格における侵入警報を制御すると共に、新たに輻輳海域の判定条件を付加して侵入警報および衝突警報を制御し、警報全体の制御において、信頼性の高い制御を行う。
【0029】
船舶自動識別装置(AIS:Universal Shipborne Automatic Identification System )24は衝突予防、人命安全という観点からシステム化され、2002年から大型船への搭載が義務化されている。このAIS24は、自船の位置、速度、針路などの動的情報と、喫水、積み荷、目的地などの静的情報を含む船舶識別情報を周囲に定期的に送信する機能と、この他船からの船舶識別情報を受信して必要な情報を抽出する機能を備えている。
制御部23は、従来、レーダーを用いて他船等との衝突を予防することを目的として、大型船への搭載が義務化されている自動衝突予防援助装置(ARPA:Automatic Radar Plotting Aid)が搭載されている。このARPAは、レーダーの探知データを演算処理して、ターゲットの位置を捕捉し、捕捉したターゲットのうち、利用者が指定したターゲットの位置を自動追尾する装置である。また衝突危険度判定部32は、追尾中のターゲットについて、表示部27の画面上で選択、設定された条件に基づいて、衝突の危険の度合いを計算して、それらを分かりやすい形で表示部27に表示する共に、危険な状態と予測した時に、危険な状態を警報し、且つ、その危険な状態を避ける操船方法を試行することのできる機能を備えている。
【0030】
具体的には、レーダーの探知データからターゲットの位置を検出し、自船に対する相対運動量を相対位置変化から演算により求め、その相対運動量と自船の速度ベクトルとによってターゲットの真速度ベクトルを算出するように構成されている。通常、ARPAの表示は、レーダー画像に上記抽出したターゲットの推定位置および推定運動量を表すマークおよびベクトルを表示することによって行われている。
【0031】
以下、具体的なAISおよびARPAによる動作について説明する。
表示部27で選択、設定される条件については、異なる条件が設定された場合でも同様の動作であるため、ここでは、危険度のレベルの数を3、音質および音量を2、警報シンボルの表示の有無、警報発生の文字表示の有無、通常表示、点滅表示、濃淡表示について説明する。なお、上記の組み合わせに関する動作については、実施例の一例であり、その限りでない。また、ここでは、低い危険度の場合は、通常表示、中程度の危険度の場合は、濃い表示、高い危険度の場合は、点滅表示とした。
【0032】
AIS24からの船舶識別情報により、静的データ(海上移動業務識別[MMSI]番号、IMO番号、呼出符号と船名、船体長と横幅、船舶のタイプ、測位装置のアンテナ位置)および動的データ(自船位置と精度、UTC[世界協定時刻]、進路、対地速度、船首方位、航海状態[手動入力]、回頭角速度等)を得ることができる。そして、所定の設定領域内にある船舶が侵入してくると、低い危険度レベルとして認識し、低音で小音量の警報を発し、画面上にシンボルのみ通常表示する。
【0033】
そして、さらに船舶が自船に近づく場合、所定の最接近距離(以下CPAと称す)、最接近時間(以下TCPAと称す)の設定値と比較して、設定値より小さくなると、中程度の危険度レベルとして認識し、高音で中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を濃く表示する。
【0034】
一方、方位センサ25、位置センサ26または検知部31からの情報により、輻輳海域認識部33が所定領域を輻輳海域と認識した状態において、ある船舶が所定領域に進入し、CPAおよびTCPAが所定の設定値と比較され、大きい場合には、警報の対象から除外される。しかし、小さい場合には、さらに以下に説明する判断基準により、危険度が判断される。なお、操船者からの操作により、輻輳海域を設定してもよい。
【0035】
以下、図2を用いて説明する。
図2(A)〜(D)は表示部上に表示される自船および他船の監視図である。
図2に示す海域において、輻輳海域認識部33は、方位センサ25、位置センサ26または検知部31からの位置情報または船舶数により湾内、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域と認識した状態であり、ここでは、数多く航行する船舶に対する衝突警報を中心に説明する。なお、輻輳海域と自動認識または操船者からの操作により設定した状態を操船者が認識または確認できるように画面全体を例えば、緑系から赤系に表示してもよい。
【0036】
例えば、図2(A)に示す真ベクトル表示において、真船速が所定の設定値以下である停船中の船舶46については、CPA、TCPAが所定の設定値よりも小さい場合、輻輳海域以外では警報対象となるが、衝突危険度判定部32において、警報対象としないで警報対象から除外する。そして自船40は、移動中のターゲット42とで停船中のターゲット46のある場所がCPAのポイントとなる。また停船中のターゲット46も同じ場所がCPAポイントとなり、現状では同等の対象となっているが、輻輳海域認識部33より衝突危険度判定部32を制御することにより、移動中のターゲット42だけを衝突警報の対象にすることができ、高い危険度レベルとし、高音で中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を点滅表示する。
【0037】
次に、AISステータスは、AIS24のメッセージで他船から送信される航行状態のステータスで、係留中、停船中のステータスの船舶についても同様の動作を行い、警報対象から除外する。しかし、このステータスは6分間隔で送られてくるため、ステータスが未定の状態の場合は、警報対象から除外しなで、高い危険度レベルとし、高音で中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を点滅表示する。
【0038】
さらに、船体長において、他船が設定値以下の船体長の場合に警報対象から除外する。例えば、小型船舶は、急変針、急変速ができるため、自ら衝突を回避するつもりで航行している場合があり、自船の衝突回避行動の前に他船の航行により、危険状態が回避されることが多い。そのため小型船による警報を対象から除外し、警報を発しないようにする。なお、この情報が送られてくるのが6分間隔のため、船体長が未定の場合は、警報対象から除外しなで高い危険度レベルとし、高音で中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を点滅表示する。また海上移動業務番号は独自の番号で各船舶に割り当てられ、且つターゲットの動的データに毎回付加されていることを利用し、海上移動業務番号と共に各相手船の固有データを記憶しておくことにより、電源ON時と同時に設定することができる。
【0039】
次に、船首横断距離(以下BCRと称す)または船首通過時間(以下BCTと称す)において、CPAおよびTCPAで判断すると、すでに通過した船舶も対象となる場合があるため、BCRまたはBCTを判断条件とする。
【0040】
BCRが負の値の場合は、船尾線方向での横切りになるので、警報対象からを除外する。
図2(B)、(C)に示す相対ベクトル表示において、2つのターゲット42,44は、CPAまたはTCPAは同じ値になるが、一方のターゲット42は船尾方向である自船40の後方を通過するため、危険度度合いが低いので警報対象から除外する。ターゲット44は警報対象から除外しなで高い危険度レベルとし、高音で中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を点滅表示する。
【0041】
図2(D)に示す相対ベクトル表示において、BCTが負の値の場合、最も危険な船首線を横切った後なので、CPA未到達でも警報対象から除外する。
なお、輻輳海域認識部33は、操船者からの操作、検知部31からの少なくとも位置情報または船舶数を基に輻輳海域の認識を解除し、衝突危険度判定部32の制御を停止し、輻輳海域状態を解除することができる。
【0042】
次に、ARPAによる場合、ARPAからは、対象となる船舶の位置、船速、針路のデータを得ることができるので、AIS24の場合と同様に、これらの情報と、レーダーのビームの拡がり、パルス幅、方位誤差等の情報を加えて、警報解除領域を演算し求める。そして、所定領域内にレーダーエコーが存在するかで衝突危険度を判定し、且つCPA、TCPAを確認し、その結果に基づいて、警報動作を実施する。なお、いずれの場合にも、警報解除領域を決めるのは、監視対象とはならない船舶であっても、AIS24で得たその船舶の形状情報よりもレーダーエコーは大きくなり、警報が鳴ってしまうからである。
【0043】
ARPAによる追尾は、表示部27に船舶が出現したときから開始してもいいし、その船舶が、所定領域に進入したのを確認してから追尾番号を付けてもいい。後者の場合は、追尾番号を付け、追尾を開始したときにAIS24の最新データを得て、予めPC等に記憶しているデータと照らし合わせ、警報を鳴らすべき船舶であれば高音で中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を点滅表示する。また不明の場合は、CPA、TCPAを比較し、比較結果に基づいて、警報および表示を制御する。
【0044】
なお、ここではARPAを用いて動作を説明したが、港湾監視レーダー装置設置位置の周囲を探知するレーダーからの探知信号からターゲットを捕捉・追尾し、ターゲットの速度や進路等の情報を得る装置を用いても構わない。
また、AIS24を搭載していない、あるいはARPAで追尾していない船舶が警戒領域に進入してきた場合には、無条件で高音、中程度の音量の警報を発し、画面上にシンボルおよび文字情報を点滅表示する。
【0045】
一方、方位センサ25および位置センサ26または検知部31からの情報により、輻輳海域認識部33が所定領域を輻輳海域と認識した場合、ある船舶が所定領域に進入し、CPAおよびTCPAが所定の設定値と比較され、大きい場合には、警報の対象から除外される。しかし小さい場合には、AIS24と同様の動作を行う。なお、輻輳海域における動作は、AIS24の動作と同様であるため省略する。
【0046】
以上のように、所定領域内の侵入に応じた侵入警報または湾内、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域に応じた衝突警報を制御する警報制御装置であり、輻輳領域において、煩雑する他船に対する信頼性の低い衝突警報を制御し、区別することができ、衝突警報において信頼性を高め操船者のストレスを抑制すると共にヒューマンエラーを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態における警報制御装置の構成を示すブロック図
【図2】(A)〜(D)表示部上に表示される自船および他船の監視図
【図3】従来の監視レーダー装置の構成を示すブロック図
【図4】従来のレーダー指示部あるいは警報用制御部上で表示される監視図
【符号の説明】
【0048】
22 レーダー空中線部
23 制御部
24 船舶自動識別装置(AIS)
25 方位センサ
26 位置センサ
27 表示部
31 検知部
32 衝突危険度判定部
33 輻輳海域認識部
40 自船
41 自船の真ベクトル
42、44 他船
43、45 他船の相対ベクトル
46 停船また係留中の船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他船の少なくとも位置の情報を含む他船情報を検知する検知部と、
少なくとも前記検知部より得られた他船情報または所定条件を基に演算処理して、衝突危険度を判定する衝突危険度判定部と、
この衝突危険度判定部により得られた情報を基にグラフィック表示する表示部と、
湾内、狭水路、フィヨルドなどの輻輳海域を認識する輻輳海域認識部と
を備え、
前記衝突危険度判定部は、前記輻輳海域に応じた侵入警報および衝突警報を制御する警報制御装置。
【請求項2】
前記輻輳海域認識部は、操船者による操作または前記検知部からの少なくとも位置の情報または船舶数を基に輻輳海域を認識し、前記衝突危険度判定部および前記表示部とを制御する請求項1に記載の警報制御装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記衝突危険度のレベルと、この衝突危険度のレベルに対応する表示の形態または警報音の状態とを表示し、画面上で選択および設定できる請求項1または2のいずれかに記載の警報制御装置。
【請求項4】
前記表示部は、
少なくとも前記衝突危険度のレベルを高い衝突危険度と低い衝突危険度の2レベルまたは高い衝突危険度、中程度の衝突危険度および低い衝突危険度の3レベルとを表示して、画面上で選択および設定できる請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置。
【請求項5】
前記表示部は、
前記警報音を2または3種類の音質または音量と、
警報シンボルの表示の有無または警報発生の文字表示の有無と、
通常表示、点滅表示または濃淡表示の表示形態とを、画面上で選択および設定できる請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置。
【請求項6】
前記衝突危険度判定部は、
少なくとも船速による制限、船舶自動識別装置から送信された航行状態のステータスによる制限、船体長による制限、船首横切り距離の制限および船首通過時間の制限とを含む条件を基に衝突危険度を判定する請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置。
【請求項7】
前記検知部は、船舶自動識別装置または自動衝突予防援助装置からの他船情報を基に検知する請求項1から3のいずれかに記載の警報制御装置。
【請求項8】
前記輻輳海域認識部は、操船者による操作または前記検知部からの少なくとも位置情報または船舶数を基に輻輳海域の認識を解除し、前記衝突危険度判定部への制御を停止する請求項2に記載の警報制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−37445(P2009−37445A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201633(P2007−201633)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】