説明

負帯電の樹脂粒子、その製造方法およびそのシリコーンオイル分散体

【課題】非極性溶剤中での分散安定性に優れ、かつ非極性溶剤中において分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも負の帯電性を示す負帯電の樹脂粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 非極性溶剤の存在下、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体を含むビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させ形成した分散剤として機能する重合性共重合体と、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体とを含む混合物を、分散重合させて負帯電の樹脂粒子を得ることを特徴とする負帯電の樹脂粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負帯電の樹脂粒子、その製造方法およびそのシリコーン分散体に関する。更に詳しくは、本発明は、特定の分散剤の存在下で得られる負帯電の樹脂粒子の製造方法に関する。
【0002】
本発明の製造方法により得られた負帯電の樹脂粒子は、シリコーンオイル中での分散安定性に優れ、かつシリコーンオイル中に分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも負帯電性を示すことから、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料または潤滑剤などの原料として幅広く有用である。
【背景技術】
【0003】
近年、サブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する樹脂粒子は、電子、光学、化粧品、塗料、機械分野などの種々の分野で利用されている。
一般に、サブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する樹脂粒子の製造方法としては、水中での乳化重合法、ソープフリー重合法、有機溶媒中での分散重合法などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの重合法で製造した樹脂粒子は、媒体(例えば、シリコーンオイル)に分散させて画像表示素子用の電気泳動粒子や粘性流体用粒子などとして用いる場合、媒体との相溶性が乏しい。そのため、媒体中で粒子同士の凝集が起こり、粒子が均一に分散されず、粒子の良好な流動性が得られないという問題がある。
【0005】
そのため、シリコーンマクロモノマーを分散剤として樹脂粒子を製造することで、樹脂粒子の媒体への分散安定性を向上させる試みが種々報告されている。
【0006】
例えば、電気粘性流体の媒体として用いられるシリコーンオイルにシリコーンマクロモノマーを共重合させた分散剤を添加し、分散剤を含むシリコーンオイルに粒子を分散させることで粒子の凝集を防ぐ方法がある(例えば、特許文献1)。
【0007】
また、非極性溶剤において、溶剤に可溶な分散剤と固体粒子とを分散させた後、溶剤に可溶なモノマーを加えて重合を行い、溶剤に不溶となったポリマーを固体粒子表面にヘテロ凝集させることで媒体への分散安定性と帯電性に優れた複合粒子の製造方法も知られている(例えば、特許文献2および非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−172772号公報
【特許文献2】特開2005−265938号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ナノテクノロジープログラム(ナノ加工・計測技術)機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト、平成15年度〜17年度 成果報告書、第356〜378頁、2006年、財団法人 化学技術戦略推進機構
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法は、粒径が比較的大きい場合、言い換えると、粒子が沈降しても媒体の流動により比較的簡単に分散する場合には、有用である。
しかし、分散剤が粒子表面に固定化されていないので、粒径がサブミクロンあるいはそれ以下の樹脂粒子を用いる場合には、分散剤を多量に使用する必要がある。
そのため、樹脂粒子と媒体との分散体の粘度が上昇するという不具合を生じる。
【0011】
また、上記の特許文献2および非特許文献1に記載の方法では、固体粒子表面にポリマーをヘテロ凝集させているために、経時的にポリマーの凝集状態が変化し、分散安定性などの変化が懸念される。
【0012】
更に、分散液中における粒子の帯電性については、酸性基もしくは塩基性基を有する分散剤を溶解させた液中においてのみ開示されているが、非極性溶剤と樹脂粒子のみの組み合わせにおける樹脂粒子の帯電性については記載されていない。
【0013】
分散液中に分散剤が存在すると、分散剤の劣化により分散安定性や帯電性の経時変化が懸念されるため、非極性溶剤と樹脂粒子のみの組み合わせにおいて帯電性を制御できることが望まれている。また、顔料により着色された粒子においても極性制御できることも望まれている。
【0014】
本発明は、非極性溶剤中での分散安定性に優れ、かつ非極性溶剤中において分散剤等の電荷制御剤を含有せずとも負極性を示し、かつ反対極性となる正極性粒子の割合を低減した無色または着色樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、発明者等は、特定の分散剤を使用し、かつ特定のビニル系単量体を用いて樹脂粒子を製造すれば、分散安定性に優れ、かつ非極性溶剤中において分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも負帯電性を示すサブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する非凝集性の樹脂粒子が得られることを意外にも見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
かくして、本発明によれば、非極性溶剤の存在下、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体を含むビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させ形成した分散剤として機能する重合性共重合体と、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体とを含む混合物を、分散重合させて負帯電の樹脂粒子を得ることを特徴とする負帯電の樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の方法により製造される負帯電の樹脂粒子およびそのシリコーンオイル分散体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリコーンオイル中での分散安定性に優れたサブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する非凝集性の負帯電の樹脂粒子を得ることができ、更には着色化剤として顔料を用いた場合にも、またカップリング剤を用いた場合にも同様に負帯電の樹脂粒子を得ることができる。
【0018】
このようにして得られる負帯電の樹脂粒子は、シリコーンオイル中における分散安定性に優れ、非凝集性粒子であることから経時による粒子形状変化の懸念もなく、更には分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも負帯電性を示すことから、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による樹脂粒子の模式図である
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、非極性溶剤の存在下、特定の分散剤とハロゲン化ビニル系単量体と、所望により顔料および/またはカップリング剤を含む混合物を分散重合させることを特徴の1つとしている。
なお、上記の特定の分散剤とは、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させ形成した分散剤として機能する重合性共重合体を意味する。
【0021】
本発明の発明者等は、図1に示すように、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体を含むビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーからなる重合性共重合体である分散剤2が、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体と分散重合して非極性溶剤中に析出してくる樹脂粒子1の表面に存在し、分散安定性を図る分散剤として機能すると共に、重合性共重合体である分散剤2が、化学結合部位5を介して、樹脂粒子1と化学的に固定していると推測している。なお、図1において、3は分散剤を構成するシリコーンマクロモノマー由来のシリコーン鎖の部位を意味し、4は分散剤を構成するシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体由来の共重合鎖の部位を意味する。
【0022】
なお、この推測は、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体を含むビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーからなる重合性共重合体が可溶なイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いて、エチレングリコールジメタクリレートのような架橋成分を含み上記有機溶媒に不溶な樹脂粒子を洗浄した後でも、上記樹脂粒子がシリコーンオイルへの分散安定性に優れていたことを発明者などが確認したことに基づいている。
【0023】
本発明の分散重合に用いられる分散剤の共重合成分であるシリコーンマクロモノマーとしては、片末端に重合性不飽和基を有し、且つシリコーン単位(ジメチルポリシロキサン単位などのオルガノシロキサン単位)を有する種々の化合物を適時使用できる。
そのようなシリコーンマクロモノマーとしては、例えば次式:
【0024】
【化1】

【0025】
(R1は水素原子またはメチル基であり、R2はC2〜C4のアルキレン基であり、R3はC1〜C4のアルキル基またはフェニル基であり、nは正の整数である)
で示される構造を有するものが挙げられる。
【0026】
上記の式において、R2が意味するC2〜C4のアルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基およびそれらの位置異性体などが挙げられる。
また、R3が意味するC1〜C4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル基およびそれらの位置異性体などが挙げられる。
また、nは3〜500の間、好ましくは10〜250の間の整数を意味する。
【0027】
上記のシリコーンマクロモノマーの分子量としては、数平均分子量500〜40000の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜20000である。本発明による負帯電の樹脂粒子の製造には、上記のシリコーンマクロマーを二種以上混合して使用してもよい。
【0028】
より具体的なシリコーンマクロモノマーの例としては、α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0029】
本発明で用いることのできるビニル系含窒素単量体としては特に限定されず、例えば、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジ−tert−ブチルアミノエチルアクリレート、N−フェニルアミノエチルメタクリレート、
【0030】
N,N−ジフェニルアミノエチルメタクリレートおよび2−N−ピペリジルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、アミノスチレン、ジメチルアミノスチレン、N−メチルアミノエチルスチレン、ジメチルアミノエトキシスチレン、ジフェニルアミノエチルスチレン、N−フェニルアミノエチルスチレンなどのスチレン類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−6−メチルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどの複素環類などが挙げられる。
【0031】
分散剤製造用のビニル系含窒素単量体は、分散剤製造用のシリコーンマクロモノマー100重量部に対して、2〜50重量部使用することが好ましい。
ビニル系含窒素単量体の使用量が2重量部未満の場合、樹脂粒子との親和性が悪くなるため化学的に結合することが難しく、その結果、樹脂粒子の分散安定性が悪くなるので好ましくない。また、50重量部より多い場合、非極性溶剤との親和性が悪くなり樹脂粒子の分散安定性が悪くなるので好ましくない。より好ましい使用量は4〜25重量部である。
本発明に用いるα−メチルスチレンダイマーは付加開裂型の連鎖移動剤であり、次式:
【0032】
【化2】

【0033】
で示される構造を有するものである。
α−メチルスチレンダイマーは、所望する分散剤の数平均分子量に合わせて適量が添加されるが、一般には分散剤製造用のシリコーンマクロモノマー100重量部に対して0.1重量部〜10重量部が添加される。
この添加量が、0.1重量部未満の場合、得られる分散剤の数平均分子量が大きくなりすぎるので好ましくない。また、10重量部より多い場合、α−メチルスチレンダイマーによる分子量制御が難しくなり、数平均分子量を低下できず、添加に見合った効果が得られないので好ましくない。
【0034】
分散剤は、例えば、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体とα−メチルスチレンダイマーを非極性溶剤に添加し、常法に従って、撹拌下に加熱することで、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体とα−メチルスチレンダイマーとを非極性溶剤中で共重合させることにより得ることができる。共重合には、重合開始剤を使用してもよい。
【0035】
α−メチルスチレンダイマーを用いてシリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体のリビング共重合を行うことで、分子量が制御され、且つ末端に反応性の二重結合を有する重合性共重合体が、分散剤として得られる。
分散剤の分子量は特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量2000〜70000の範囲である。
【0036】
具体的な重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であれば特に限定されない。
ラジカル重合開始剤として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)および2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)のようなアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびt-ブチルパーベンゾエートのような過酸化物系開始剤などが挙げられる。
重合開始剤は、通常ビニル系含窒素単量体またはモノマー組成物(シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体との混合物)中に0.1〜5重量%程度の量で予め溶解することが好ましい。
【0037】
本発明による分散剤の製造に用いられる非極性溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどのパラフィン系炭化水素、イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカンなどのイソパラフィン系炭化水素、流動パラフィンなどのアルキルナフテン系炭化水素、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサンまたは環状ポリアルキルフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルが挙げられる。
【0038】
そのうち作業環境のような環境への影響を考慮して、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサンまたは環状ポリアルキルフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルが好ましい。
本発明による分散剤としての共重合体の調製に用いられる非極性溶剤の量は、モノマー組成物100重量部に対し、20〜400重量部が好ましく、より好ましくは50〜200重量部である。
【0039】
上記の共重合における反応温度および時間については特に限定されるものではなく、例えば用いる重合開始剤の種類や使用量および使用するシリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体とα−メチルスチレンダイマーとの反応性などにより適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。
より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜25時間である。
【0040】
また、重合雰囲気は、大気雰囲気でも、不活性ガス雰囲気でもよい。この内、雰囲気中の酸素による重合速度の遅延および重合阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気で行なうことが好ましい。このような不活性ガスとしては、窒素ガスおよびアルゴンガスが挙げられる。特に、経済性の面から窒素雰囲気が好ましい。
【0041】
ここで、分散剤は、分散剤の製造後に使用した非極性溶剤から分離しても、分離しなくてもよい。分離しない場合は、非極性溶剤に分散または溶解した分散剤を、樹脂粒子の製造にそのまま使用できる。
【0042】
また、分散剤の共重合成分として、本発明の効果を妨げない範囲で一般的に用いられている、以下の各種のビニル系単量体を使用することもできる。
例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸などを使用できる。
分散剤の共重合成分として用いられる量は、ビニル系含窒素単量体100重量部に対し、0〜40重量部が好ましく、より好ましくは0〜15重量部である。40重量部を超えると、良好な負帯電性を示しにくくなるので好ましくない。
【0043】
本発明による負帯電の樹脂粒子の製造は、非極性溶剤の存在下、少なくともシリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体とα−メチルスチレンダイマーからなる重合性共重合体である分散剤と、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体とを含む混合物を分散重合させることにより行われる。
【0044】
非極性溶剤を溶媒として、前記で得られた重合性共重合体である分散剤と、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体とを、分散重合することにより、シリコーンマクロモノマーを粒子表面へ化学的に固定化することが可能となり、その結果としてシリコーンへの分散安定性に優れたサブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する負帯電性の樹脂粒子が得られるものと考えられる。
【0045】
本発明による負帯電の樹脂粒子の製造に用いることのできるハロゲン化ビニル系単量体としては特に限定されず、例えば、クロロエチル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリヨードフェノール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフロロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート、クロロスチレンなどが挙げられるが、中でもトリフロロエチル(メタ)アクリレートは入手がしやすいため特に好ましい。
【0046】
また、本発明に用いる上記のハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体としては、前記の分散剤の共重合成分として使用できるビニル系単量体が挙げられる。
更に、ビニル系単量体として重合性の二重結合を2個以上有する化合物を加えてもよい。このような化合物は、架橋剤としての役割も果たす。また、上記の負帯電の樹脂粒子の製造には、架橋剤を用いてもよい。
【0047】
架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンおよびそれらの誘導体のような芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルファイトなどのジビニル化合物やアリル(メタ)アクリレートおよび3以上のビニル基を含有する化合物などを挙げることができ、これらを単独でもしくは2種以上組合せて使用できる。
ハロゲン化ビニル系単量体の共重合成分として用いられる量は、ハロゲン化ビニル系単量体100重量部に対し、0〜100重量部が好ましく、より好ましくは5〜35重量部である。100重量部を超えると、良好な負帯電性を示しにくくなるので好ましくない。
【0048】
本発明による負帯電の樹脂粒子の製造に用いられる非極性溶剤としては、前記の分散剤の調製において用いられる非極性溶剤として例示されたものから選択して用いることができる。
【0049】
本発明による負帯電の樹脂粒子の製造に用いられる非極性溶剤の量は、分散剤およびモノマー組成物(少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体)100重量部に対し、20〜400重量部が好ましく、より好ましくは50〜200重量部である。
また、上記分散剤とモノマー組成物(少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体)の割合は、分散剤がモノマー組成物100重量部に対して5重量部〜800重量部であることが好ましい。分散剤の割合が5重量部未満では樹脂粒子製造時に樹脂粒子同士の凝集が起こりやすくなるので好ましくない。また、800重量部より多い場合では得られる樹脂粒子が繊維状となりやすく、所望する樹脂粒子が得がたくなるので好ましくない。より好ましくは10〜400重量部である。
【0050】
分散重合は、前記の分散剤の製法と同じ理由から、不活性雰囲気下で行なうのが好ましい。より好ましい不活性雰囲気は、窒素ガス雰囲気である。
【0051】
分散重合に用いられ得る重合開始剤は、前記の分散剤の重合反応において用いられる重合開始剤として例示されたものから選択して用いることができる。
【0052】
上記の分散重合における反応温度および時間については特に限定されるものではなく、用いる重合開始剤の種類や使用量および反応に使用するビニル系単量体の量などにより適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜12時間である。
【0053】
また、分散重合反応を超音波照射下において行うと、得られる樹脂粒子の粒度分布が狭くなるのでより好ましい。
また、超音波照射下における分散重合を効率よく行うためには、使用するシリコーンオイルは、JIS K 2283で測定した動粘度が100センチストークス以下のオイルであることが更に好ましい。
【0054】
超音波の照射は、一般に用いられる超音波洗浄装置に温水などの媒体を適量満たし、これに反応に供する混合液を入れた容器を浸して超音波を照射する方法、または内部照射型超音波発生装置などを用い、反応に供する混合液を入れた容器に超音波振動子を挿入して超音波を照射する方法などにより行うことができる。
【0055】
超音波の発信周波数は16kHz以上であることが好ましく、20〜500kHzの範囲であることがより好ましい。また、出力は、超音波を照射する媒体1Lあたり、10〜1000Wが好適である。
【0056】
また、超音波照射下における分散重合には、マグネチックスターラーなどの機械的撹拌装置の併用も可能である。
【0057】
また、外部温調装置により温度をコントロールした媒体を超音波洗浄装置内に循環させることによって重合温度(反応温度)を調整してもよい。
【0058】
樹脂粒子は、用いる分散剤の量および用いるビニル系単量体の選択により粒子径を制御することが可能である。
【0059】
例えば、用いるビニル系単量体に対して、用いる分散剤の割合を増やすことにより、樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。また、非極性溶剤に対する親和性が高いビニル系単量体を選択して用いることによっても、樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。
【0060】
樹脂粒子の平均粒子径は0.02〜1.0μmが好ましく、更に0.05〜0.8μmが好ましい。これは、平均粒子径が0.02μmより小さくなると重合時に非極性溶剤の粘度が上昇し、その結果安定した平均粒子を有する樹脂粒子の製造が困難となり、また、1.0μmより大きくなるとシリコーンオイル中での分散安定性が低下するからである。
【0061】
樹脂粒子には、顔料が更に含まれていてもよい。顔料としては、当業者に周知の有機顔料または無機顔料を好適に用いることができる。
【0062】
例えば、黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタンなどの金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)などの有機顔料が挙げられる。
【0063】
更に、顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、なども使用できる。
【0064】
本発明において、顔料の配合量としては、特に限定されるものではなく、また使用する顔料の種類等によっても左右されるが、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体100重量部に対し、着色剤1〜150重量部が好ましく、より好ましくは10〜120重量部であり、20〜100重量部が特に好ましい。着色剤が1重量部未満では、得られる着色樹脂粒子における着色度が充分なものとならず、一方、150重量部を超えると、添加量を増加させた効果があまり見られず、またビニル系単量体の重合が充分に進行しない恐れがあるため好ましくない。
【0065】
顔料は、非極性溶剤に、常法により分散した後、重合処理することで、分散剤や樹脂粒子中に混合できる。
なお、顔料を分散させる装置としては、特に限定されないが、例えばボールミル、アトライター、サンドミルなどのメディア型分散装置、ホモミキサー、ホモジナイザー、バイオミキサーなどの剪断型分散装置、超音波分散装置などが挙げられる。
【0066】
また、本発明において顔料を分散させる際にカップリング剤を用いることができる。
カップリング剤としては特に限定されないが、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェートオキシアセテート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤等を挙げることができる。
【0067】
カップリング剤を用いることにより、得られた着色樹脂粒子の極性が負を示し、かつ反対極性となる正極性の粒子が低減され、その低減効果は顔料配合量が多い程大きい。カップリング剤の添加量としては、例えば顔料100重量部に対し、1〜10重量部が好ましく、より好ましくは2〜5重量部である。カップリング剤が1重量部未満では、反対極性となる正極性粒子低減の効果が期待できず、また10重量部を超えても、その効果がさほど向上しないため好ましくない。
【0068】
カップリング剤の添加順序は特に限定されず、ビニル系単量体にカップリング剤を溶解ないし分散させた後、顔料及び本発明で製造した分散剤及び非極性溶剤を加えて分散させても良く、また顔料及び本発明で製造した分散剤及び非極性溶剤からなる混合液を分散させている途中に加えても良い。少なくともカップリング剤を添加した後、系を均一化させるために分散処理を行うことが好ましい。
上記分散処理を行った後、重合処理することで、着色樹脂粒子を得ることができる。
【0069】
得られた樹脂粒子は、非極性溶媒から取り出してもよく、用途によっては取り出さずに使用できる。取り出された樹脂粒子は、必要に応じて非極性溶媒で洗浄でき、乾燥を行っても良い。更に、洗浄後の樹脂粒子を非極性溶媒中に分散させて、流通に供してもよい。
洗浄後の樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させると、驚いたことに負帯電性を示すことが判明し、かつ、カップリング剤を使用した場合には、カップリング剤を使用しない場合と比べて反対極性となる正極性粒子の割合が低減されることが判明した。
【0070】
したがって、本発明の無色または着色樹脂粒子は、非極性溶媒(例えば、シリコーンオイル)への分散安定性に優れ、非凝集性樹脂粒子であることから経時による粒子形状変化の懸念もなく、更には分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも負帯電性を示す。
本発明の樹脂粒子は、この性質を利用して、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などの原料として好適に使用できる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の各種値の測定方法を下記する。
【0072】
(数平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、数平均分子量を測定する。なお、数平均分子量はポリスチレン(PS)換算数平均分子量を意味する。その測定方法は次の通りである。
測定装置:東ソー社製 GPC HLC−8020
ガードカラム:TOSOH TSKguardcolumn HHR(S)×1(7.5mmID×7.5cm)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHHR−H(S)×3(7.8mmID×30cm)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(一級THF/45℃)、
S.PUMP/R.PUMP流量(0.8/0.5mL/分)、
RI温度(35℃)、INLET温度(35℃)、
測定時間(55分)、検出器(UV254nm、RI)
測定方法:試料50mgを10mL一級THF(移動相)で一晩放置して溶解し、0.45μm又は0.20μmのフィルターで濾過する。
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、495。
【0073】
(樹脂粒子の平均粒子径)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定したZ平均粒子径を意味する。つまり、樹脂粒子のシリコーンオイル分散液にレーザー光を照射し、樹脂粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。検出された樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、樹脂粒子の平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めたZ平均粒子径である。
この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用した。
【0074】
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することでZ平均粒子径が算出でき、同時に、粒度分布の指標となるPDI値も算出した。なお、PDI値が小さいほど粒度分布は狭くなる。
【0075】
(非極性溶剤の動粘度)
動粘度はJIS K 2283(原油および石油製品の動粘度試験方法)により測定した。
【0076】
(粒子の帯電性の測定)
20mlのガラス瓶に、実施例に記載のシリコーン分散体を量り取り、そこへ樹脂粒子固形分が1wt%となる様にシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)を加えて10gとし、これを測定用試料とした。
次に、片面にインジウムスズオキサイド(ITO)をコートしたガラス板2枚を、コート面を内側にし、銅テープを貼り付けたスペーサーをガラス板間に挟んでガラス板の間隔を1mmとした平行平板(冶具)を用意した。
【0077】
冶具を測定用試料に浸漬し、冶具の左側に+100Vの電圧を印加して10秒静置した。10秒経過後、測定用試料から冶具を引き上げ、左側のガラス板に粒子が付着していればその粒子の帯電性は負、右側のガラス板に粒子が付着していればその粒子の帯電性は正として評価した。
【0078】
(分散樹脂粒子のゼータ電位の測定)
超音波方式ゼータ電位測定装置(DT-300、日本ルフト製)を用い、コロイド振動電流を測定することにより、シリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)中での樹脂粒子のゼータ電位を求めた。
【0079】
(透過率の測定および付着粒子の評価)
上記の樹脂粒子の帯電性評価を行った際のガラス板を分光光度計で測定し、予め測定したITOコートガラス板の値をブランク補正した後に算出される各吸収光波長における透過率値から付着粒子(透過率値が高いほど付着粒子が少ない)を評価した。本実施例では日立製作所社から市販されている「U−3000」を測定に使用し、無色粒子の吸収光波長は350nm、マゼンタ粒子の吸収光波長は550nm、シアン粒子の吸収光波長は610nmとした。
【0080】
(分散剤の作成)
製造例1
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)96.0gと、予め開始剤として2,2'-アゾ-ビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)2gを溶解したジエチルアミノエチルメタクリレート(DE)12.6g、シリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM-0721、チッソ製、数平均分子量5900)85.3gおよびα−メチルスチレンダイマー(ノフマーMSD、日本油脂製)1gを添加し、窒素雰囲気下50℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。得られた反応物は無色透明な液体であり、分子量測定の結果、数平均分子量は24,800であった。
【0081】
製造例2
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)96.0gと、予め開始剤として2,2'-アゾ-ビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)2gを溶解したジエチルアミノエチルメタクリレート5.4g、メチルメタクリレート(MMA)0.7g、シリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM-0725、チッソ製、数平均分子量13900)90.2gおよびα−メチルスチレンダイマー(ノフマーMSD、日本油脂製)0.53gを添加し、窒素雰囲気下50℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。得られた反応物は無色透明な液体であり、分子量測定の結果、数平均分子量は25,300であった。
【0082】
製造例3
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)96.0gと、予め開始剤として2,2'-アゾ-ビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.9gを溶解したメタクリル酸メチル7.0g、シリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM-0721、チッソ製、数平均分子量5900)87.9gおよびα−メチルスチレンダイマー(ノフマーMSD、日本油脂製)1.1gを添加し、窒素雰囲気下50℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。得られた反応物は無色透明な液体であり、分子量測定の結果、数平均分子量は26,800であった。
【0083】
以下この反応物をそのまま分散剤(固形分濃度50%)として用いて以下の実施例および比較例を実施した。
【0084】
実施例1
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)178.8gと、ラウロイルパーオキサイド0.47gを溶解したトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)10.5gおよび製造例1で得られた分散剤21.0gを添加し、窒素雰囲気下、緩やかに撹拌しながら60℃にて8時間分散重合を行った。
【0085】
分散重合終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、シリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)に再度分散させた。この操作を3回繰り返し、樹脂粒子を洗浄することで重合開始剤などの反応残渣を除去した後に更にシリコーンに分散を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は165nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.15であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も樹脂粒子の沈殿が見られなかった。
【0086】
実施例2
実施例1において、製造例2で得られた分散剤を用いた以外は実施例1と同様にして固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は154nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.13であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0087】
実施例3
実施例1において、トリフルオロエチルメタクリレート10.5gの代わりに、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)6.3gとメチルメタクリレート(MMA)4.2gに代えた以外は実施例1と同様にして固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は134nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.16であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0088】
実施例4
実施例1において、分散重合を超音波照射下で行った以外は実施例1と同様にして固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は142nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.10であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0089】
尚、超音波照射は300mlセパラブルフラスコを出力150Wの超音波洗浄機(VS-150、VELVOCLEAR製)の洗浄槽(内寸;L230mm×W180mm×H110mm)に浸漬し、槽内水を60℃恒温に保った状態で行った。
【0090】
実施例5
ジルコニアビーズ(直径5mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)45.0gおよび実施例1で得られた分散剤30.0g、並びに顔料としてマゼンタ顔料(CROMOFUTAL Pink PT (Pink PT)、チバスペシャリティケミカルズ製)3.0gを添加し、室温にて24時間ビーズミルによる顔料分散を行った。
【0091】
次に、上記溶液54.6g(シリコーン31.5g、実施例1で得られた分散剤21.0g、マゼンタ顔料2.1g)を300mlセパラブルフラスコに移し、シリコーン(KF-96L-1CS、信越化学製)120.0g、予め開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.47gを溶解したトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)6.3g、アリルメタクリレート(AMA)2.1gを添加し、窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合を行った。以降実施例1同様の操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は240nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.13であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
なお、シリコーン溶媒中の樹脂粒子のゼータ電位を測定したところ、分散樹脂粒子ゼータ電位は−151.0mVであった。
【0092】
実施例6
実施例5において、マゼンタ顔料の代わりにシアン顔料(Cyanin Blue G-314 (G314)、山陽色素製)3.0gを用いた以外は実施例5と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は185nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.10であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0093】
実施例7
実施例5において、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)6.3gとアリルメタクリレート(AMA)2.1gを、TFEMA 8.4gとし、窒素雰囲気下、緩やかに撹拌しながら60℃にて8時間分散重合を行った以外は、実施例5と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は294nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.23であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0094】
実施例8
実施例5において、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)6.3gとアリルメタクリレート(AMA)2.1gを、TFEMA 5.0gとメチルメタクリレート(MMA)3.4gとし、窒素雰囲気下、緩やかに撹拌しながら60℃にて8時間分散重合を行った以外は、実施例5と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は269nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.21であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0095】
実施例9
実施例5において、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)6.3gとアリルメタクリレート(AMA)2.1gを、TFEMA 8.4gとした以外は、実施例5と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子のシリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は273nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.22であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0096】
実施例10
ジルコニアビーズ(直径5mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)45.0gおよび製造例1で得られた分散剤30.0g、並びに顔料としてマゼンタ顔料(Pink PT)1.5gを添加し、室温にて24時間ビーズミルによる顔料分散を行った。
【0097】
次に、上記溶液53.6g(シリコーン31.5g、製造例1で得られた分散剤21.0g、マゼンタ顔料1.1g)を300mlセパラブルフラスコに移し、シリコーン(KF-96L-1CS、信越化学製)120.0g、予め開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.47gを溶解したトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)7.3g、アリルメタクリレート(AMA)2.1gを添加し、窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合を行った。以降、実施例1と同様の操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は237nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.11であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0098】
実施例11
ジルコニアビーズ(直径5mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)70.0gおよび製造例1で得られた分散剤6.0g、並びに顔料としてシアン顔料(G314、山陽色素製)3.0gを添加し、室温にて24時間ビーズミルによる顔料分散を行った。
【0099】
次に、上記溶液55.3g(シリコーン49.0g、製造例1で得られた分散剤4.2g、シアン顔料2.1g)を300mlセパラブルフラスコに移し、シリコーン(KF-96L-1CS、信越化学製)110.9g、予め開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.47gを溶解したトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)14.7g、アリルメタクリレート(AMA)2.1gを添加し、窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合を行った。以降実施例1と同様の操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は659nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.07であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0100】
実施例12
ジルコニアビーズ(直径5mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)45.0g及び製造例1で得られた分散剤30.0g、並びに顔料としてマゼンタ顔料6.0gを添加し、室温にて24時間ビーズミルによる顔料分散を行った。
次に上記溶液56.7g(シリコン31.5g、製造例1で得られた分散剤21.0g、マゼンタ顔料4.2g)を300mlセパラブルフラスコに移し、シリコン(KF-96L‐1CS、信越化学製)120.0g、予め開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.47g及びシラン系カップリング剤0.13g(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、東レダウコーニング製SZ‐6030)を溶解したトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)4.2g、アリルメタクリレート(AMA)2.1gを添加し、12時間室温下静置後、ホモミキサー(特殊機化製)を用い、8000rpmで5分間撹拌し、分散液を得た。この分散液を窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合を行った。
尚、超音波照射は300mlセパラブルフラスコを出力150Wの超音波洗浄機(VS‐150、VELVO‐CLEAR製)の洗浄槽(内寸;L230mm×W180mm×H110mm)に浸漬し、槽内水を60℃恒温に保った状態で行った。
分散重合終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、シリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)に再度分散させた。この操作を3回繰り返し、樹脂粒子を洗浄することで重合開始剤等の反応残渣を除去した後に更にシリコンに分散を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコン溶媒中での平均粒子径は243nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.26であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0101】
実施例13
実施例12において、マゼンタ顔料を、シアン顔料に代えた以外は、使用量も操作も実施例12と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は204nmであり、樹脂粒子の帯電性は負であり、PDI値は0.19であった。また、シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
【0102】
比較例1
実施例1において、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)をメチルメタクリレート(MMA)に代えた以外は実施例1と同様にして固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は129nmであり、PDI値は0.14であり、粒子の帯電性は少量負帯電性を示す粒子が存在するものの、大多数の粒子の帯電性は正であった。
【0103】
比較例2
実施例1において、製造例3で得られた分散剤を用いた以外は実施例1と同様にして固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は111nmであり、PDI値は0.12であり、粒子の帯電性は正であった。
【0104】
比較例3
実施例7において、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)をメチルメタクリレート(MMA)に代えた以外は、実施例7と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は193nmであり、PDI値は0.20であり、粒子の帯電性は少量負帯電性を示す粒子が存在するものの、大多数の粒子は正帯電であった。
【0105】
比較例4
実施例7において、製造例1で得られた分散剤の代わりに、製造例3で得られた分散剤を用いた以外は、実施例7と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子シリコーン分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーン溶媒中での平均粒子径は179nmであり、PDI値は0.19であり、粒子の帯電性は正帯電であった。
【0106】
上記の実施例1〜13および比較例1〜4の結果を以下の表にまとめて示す。
【0107】
【表1】

【0108】
表中、TFEMAはトリフロロエチルメタクリレートを意味し、MMAはメチルメタクリレートを意味し、AMAはアリルメタクリレートを意味する。
また、付着粒子を評価した際には、顔料を加えずに製造した微粒子について測定する際には、波長350nmで測定し、マゼンタ顔料を加えて製造した微粒子について測定する際には、波長550nmで測定し、シアン顔料を加えて製造した微粒子について測定する際には、波長610nmで測定した。
【0109】
以上の、結果から、本願発明による負帯電の樹脂粒子を得るには、重合反応は、超音波照射下でも撹拌下でもかまわないが、重合に用いる分散剤を構成するビニル系単量体としては、少なくともビニル系含窒素単量体を含む必要であり、かつ、粒子の組成としては、少なくともトリフロロアルキルメタクリレートを含む必要であることが判った。
【0110】
実施例14
実施例5、6で得られたアリルメタクリレートによって架橋された樹脂粒子を、それぞれイソプロピルアルコールで洗浄した。次に樹脂粒子を風乾燥し、更に減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを除いた後シリコーンオイルに添加し超音波照射による分散を行い固形分8%のシリコーン分散体を得た。得られたシリコーン分散体は実施例5、6同様シリコーン分散後1週間経過した後も粒子の沈殿は見られず、シリコーンオイル中における樹脂粒子の帯電性は負であった。この結果により、本発明による樹脂粒子は図1に示す構造を有していると推測するに至った。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明による負帯電の無色または着色樹脂粒子は、シリコーンオイル中における分散安定性に優れ、非凝集性粒子であることから経時による粒子形状変化の懸念もなく、更には分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも負帯電性を示すことから、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などに有用に使用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 分散重合によって非極性溶剤中に析出する樹脂粒子
2 分散剤
3 シリコーンマクロモノマー由来のシリコーン鎖の部位
4 シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体由来の共重合鎖の部位
5 化学結合部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非極性溶剤の存在下、シリコーンマクロモノマーとビニル系含窒素単量体を含むビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させ形成した分散剤として機能する重合性共重合体と、少なくともハロゲン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体とを含む混合物を、分散重合させて負帯電の樹脂粒子を得ることを特徴とする負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ビニル系含窒素単量体が、ジアルキルアミノアルキルアクリル系単量体である請求項1に記載の負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化ビニル系単量体が、フロロアルキルビニル系単量体である請求項1または2に記載の負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記非極性溶剤が、動粘度100センチストークス以下のシリコーンオイルである請求項1〜3のいずれか一つに記載の負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記混合物が、さらに顔料を含有する請求項1〜4のいずれか一つに記載の負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記混合物が、さらにカップリング剤を含む請求項1〜5のいずれか一つに記載の負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記分散重合が、超音波照射下に行なわれる請求項1〜6のいずれか一つに記載の負帯電の樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法より得られることを特徴とする負帯電の樹脂粒子。
【請求項9】
前記樹脂粒子の平均粒子径が0.02μm〜1μmである請求項8に記載の負帯電の樹脂粒子。
【請求項10】
請求項8または9に記載の負帯電の樹脂粒子のシリコーンオイル分散体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256635(P2009−256635A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66103(P2009−66103)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】