説明

貫通孔形成用型枠装置

【課題】廃棄物を生じず、主要部分は再利用可能で、壁厚の種類に応じて現場で加工が可能な低コストの貫通孔形成用型枠装置およびそれを用いた貫通孔の施工方法を提供する。
【解決手段】壁体に貫通孔を形成するための貫通孔形成用型枠装置であって、所定の厚さを有し変形可能な材質からなる筒状の外装体と、前記外装体の内側に軸方向に取り外し可能に配置されて前記外装体を所定の外径に保つ内芯体と、からなる貫通孔形成用型枠装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、型枠内にコンクリートを打設して形成される基礎や梁、壁等の構造体に配管用の貫通孔を形成するための貫通孔形成用型枠装置および同装置を用いた貫通孔の施工方法に関し、特に、低コストで主要部の再利用可能な貫通孔形成用型枠装置および同装置を用いた貫通孔の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅基礎に配管用の貫通孔を設けるため、コンクリートを流し込む前の段階で、円筒状の空間を確保しておく必要がある。従来、基礎や梁、壁等を形成するコンクリート構造体に配管用の貫通孔を施工する場合には、硬質の厚紙からなるスリーブが広く利用されてきた(特開平3−17352号公報参照)。紙製のスリーブは、コンクリート打設前に型枠内の所定位置に取り付けられ、コンクリート打設後に、鋭利な工具等で突き崩す等によってコンクリートから剥がし取っていた。これらの部材は使い捨て部材であり、使用後は産業廃棄物として処分する必要があった。
他方、産業廃棄物の発生を回避するために、硬質塩化ビニル等からなるスリーブをコンクリート内に埋め殺す施工方法が採用される場合もあるが、これについては資源の有効利用という観点から改善が求められていた。
【0003】
複数回の再利用が可能な型枠装置として、硬化後のコンクリートから容易に離型することができるスリーブ装置が提案されている(特開2001−47803号公報参照)。このスリーブ装置は、硬質の中空パイプ芯材と、パイプ芯材の外側に挿装される変形自在なフレキシブル筒とからなる二重構造であって、フレキシブル筒の内外表面には離型処理が施されている。コンクリート打設後に、先ず中空パイプ芯材をフレキシブル筒から抜き取り、フレキシブル筒を、その柔軟性を利用して内側に変形させることにより、コンクリートから剥がし取っていた。
しかし、コンクリート打設後に中空パイプ芯材を抜き取るのは比較的容易であるが、フレキシブル筒を内側に変形させながら剥がし取ることは、簡単ではなく、フレキシブル筒を損傷して再利用に支障をきたす場合が多かった。
【0004】
特開2008−285955号公報に、廃棄物を生じず、主要部分は再利用可能で、施工性と経済性をバランスよく備えた貫通孔形成用型枠装置と、その装置を用いた貫通孔の施工方法が開示されている。図9に貫通孔形成用型枠装置を示す。
【0005】
上述した貫通孔形成用型枠装置101は、両端が開口した略筒状のホルダ102と、ホルダ102の一端開口に嵌装されるパッキン103と、ホルダ102の内側に嵌挿されるスリーブ104と、スリーブ104の端面を閉塞するキャップ105とを備えている。ホルダ102は、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂からなる薄肉部材である。パッキン103は、合成ゴム、エラストマーその他の耐水性を有する柔軟な弾性材料からなる有底短筒状の部材である。
【0006】
スリーブ104は、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂からなる部材で、略筒状であり、ホルダ102よりも周部の肉厚や強度がやや大きくなるように成形されている。キャップ105は、略D字状の板状部材で、スリーブ104の後端側の内側に嵌挿されて、開口端面を閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−285955号公報
【特許文献2】特開平3−17352号公報
【特許文献3】特開2001−47803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によると、離型に際して、両側の堰板を取り外したあと、ホルダ102からスリーブ104を抜き取る。スリーブ104を抜き取るには、パッキン103の底部に形成された配管挿通孔を通じて、細径側からプラスチックハンマー等で底部を軽く叩く。即ち、略筒状の樹脂成形品をコンクリート打設前に取り付け、固まった後に成形品をハンマーで叩き、脱枠することによって孔を形成する。しかし、壁厚の種類分の貫通孔形成用型枠装置が必要になるという問題があった。
【0009】
従って、この発明の目的は、廃棄物を生じず、主要部分は再利用可能で、壁厚の種類に応じて現場で加工が可能な低コストの貫通孔形成用型枠装置およびそれを用いた貫通孔の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は従来の問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた。その結果、硬い部材の内芯体の外周面に簡単に変形可能な外装体を装着して貫通孔形成用型枠装置を形成し、内芯体を押出成形によって形成し、外側の外装体を例えば一枚ものの部材を螺旋状に巻いて形成すると、コンクリート壁体が形成された後、硬い部材の内芯体は外側の外装体が変形して容易に取り外すことができ、外側の外装体は、螺旋状に巻いた一枚ものの部材を一方の端部から容易に外すことができ、取り外した後、所定の強度の内芯体と外側の外装体とを、再度組み立てることによって再利用が可能であることが判明した。
【0011】
更に、硬い部材の内芯体の周りに配置された変形可能な外装体の外表面に、コンクリート壁体を形成する材料から容易に剥離可能なフィルム状のカバーを更に接着配置すると、変形可能な外装体を壁面から容易に取り外し、再利用が容易になる。また、硬い部材の内芯体は、押出成形によって形成されているので、壁厚の種類に応じて、現場で所定の長さに加工が可能であることが判明した。この発明は上述した研究結果に基づいてなされたものである。
【0012】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の第1の態様は、壁体に貫通孔を形成するための貫通孔形成用型枠装置であって、
所定の厚さを有し変形可能な材質からなる筒状の外装体と、
前記外装体の内側に軸方向に取り外し可能に配置されて前記外装体を所定の外径に保つ内芯体と、からなる貫通孔形成用型枠装置である。
【0013】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の第2の態様は、前記外装体の内周断面が、波状に形成されている、貫通孔形成用型枠装置である。
【0014】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の第3の態様は、前記外装体の内周断面が十字状に形成されている、貫通孔形成用型枠装置である。
【0015】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の第4の態様は、前記外装体の一方の端部側面に、取り外し用の対称配置された1対の凹部を備えている、貫通孔形成用型枠装置である。
【0016】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の第5の態様は、外装体は、一枚ものの部材を螺旋状に巻いて形成されることを特徴とする、貫通孔形成用型枠装置である。
【0017】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の第6の態様は、外装体の外側摩擦力(A)と内芯体の外側摩擦力(B)との関係が、A>Bの関係である、貫通孔形成用型枠装置である。
【0018】
この発明の貫通孔の施工方法の第1の態様は、型枠内の貫通孔形成部位に、請求項1から6の何れかの貫通孔形成用型枠装置を配置し、
型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に堰板を取り外し、
コンクリート内に埋設された前記貫通孔形成用型枠装置の前記内芯体を、前記外装体から抜き取り、
前記外装体を変形させながら前記貫通孔から抜き取って貫通孔を形成する、貫通孔の施工方法である。
【発明の効果】
【0019】
この発明の貫通孔形成用型枠装置によると、コンクリート壁体に形成される貫通孔の内壁体に接する外装体を指先等の力で変形が可能な部材で形成し、外装体の内側に配置される内芯体を硬い部材で形成するので、貫通孔形成用型枠装置の内芯体を外装体を変形しながら容易に取り外し、次いで、表面がコンクリートから外れ易い材質の外装体を、それ自体に傷を付けることなく、貫通孔の壁体部から剥離することができ、それぞれそのまま再度組み立てて利用することができる。
【0020】
この発明の貫通孔形成用型枠装置によると、硬い部材で形成された内芯体の周りに配置された変形可能な外装体の外表面に、コンクリート壁体を形成する材料から容易に剥離可能なフィルム状のカバーを更に接着配置するので、変形可能な外装体を壁体から容易に取り外し、再利用が容易になる。また、所定の強度の内芯体は、押出成形によって形成されているので、壁厚の種類に応じて、現場で加工が可能である。
【0021】
硬い部材で形成された内芯体の外周面に簡単に変形可能な外装体を配置して貫通孔形成用型枠装置を形成し、内芯体を押出成形によって形成し、外側の外装体を一枚ものの部材を螺旋状に巻いて形成すると、コンクリート壁体が形成された後、内芯体は外側の外装体が変形して容易に取り外すことができ、外側の外装体は、螺旋状に巻いた一枚ものの部材を一方の端部から容易に外すことができ、取り外した後、硬い部材の内芯体と外側の外装体とを、再度組み立てることによって再利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明の貫通孔形成用型枠装置の1つの態様およびその取り付け・取り外し状態を説明する図である。図1(a)は、この発明の貫通孔形成用型枠装置の1つの態様を示す斜視図である。図1(b)は、型枠として配置され、形成されたコンクリート壁体に配置された貫通孔形成用型枠装置を説明する断面図である。図1(c)は、図1(b)に示す状態から、硬い材質の内芯体を取り出した状態を説明する図である。図1(d)は、図1(c)に示す状態から、貫通孔の内壁面から外装体を取り出した状態を説明する図である。図1(e)は、コンクリートの貫通孔から取り外された外装体および内芯体を組み合わせて、貫通孔形成用型枠装置を再利用する状態を説明する図である。
【図2】図2は、外装体および内芯体の別の態様を示す横断面図である。
【図3】図3は、他の態様の貫通孔形成用型枠装置を説明する斜視図である。
【図4】図4は、貫通孔形成用型枠装置において、断面の内周面が波形形状である外装体を説明する断面図である。
【図5】図5は、貫通孔形成用型枠装置において、断面の内周面が十字状に形成されている外装体を説明する断面図である。
【図6】図6は、貫通孔形成用型枠装置において、一方の端部側面に、取り外し用の対称配置された1対の凹部を備えている外装体を説明する図である。
【図7】図7は、他の態様の外装体を説明する図である。図7(a)は斜視図であり、図7(b)は、貫通孔部の内壁面から取り外した状態を説明する図である。
【図8】図8は、他の態様の外装体を説明する図である。
【図9】図9は、従来の貫通孔形成用型枠装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の貫通孔形成用型枠装置の1つの態様は、壁体に貫通孔を形成するための貫通孔形成用型枠装置であって、
所定の厚さを有し変形可能な材質からなる筒状の外装体と、
前記外装体の内側に軸方向に取り外し可能に配置されて前記外装体を所定の外径に保つ内芯体と、からなる貫通孔形成用型枠装置である。
【0024】
図1は、この発明の貫通孔形成用型枠装置の1つの態様およびその取り付け・取り外し状態を説明する図である。図1(a)は、この発明の貫通孔形成用型枠装置の1つの態様を示す斜視図である。図1(a)に示すように、貫通孔形成用型枠装置1は、外装体2と外装体2の内側に密着して挿通配置された内芯体3とからなっている。内芯体は、所定の強度を有する材料からなっており、外装体を支持し、所定の厚さを有している。外装体は、壁体に形成される貫通孔を形成する型枠用の最上層部であって、容易に変形可能な材質からなり、内芯体の外表面に設けられている。
【0025】
内側に配置される所定の強度を有する内芯体は、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂からなる部材で、略筒状であり、押出し成形によって成形されている。内芯体は金属製であってもよい。外装体は、指先の力で容易に変形可能な例えば発泡材からなり、相対的に硬い材質からなる内芯体の外表面に被せるように配置されている。外装体および内芯体の長さは、コンクリート壁の厚さに対応して設定される。従って、現場においてコンクリートの壁の厚さに応じて所望の長さに容易に加工することができる。
【0026】
図1(b)は、型枠として配置され、形成されたコンクリート壁体に配置された貫通孔形成用型枠装置を説明する断面図である。図1(b)に示すように、コンクリート壁体を形成するための(図示しない)型枠を配置し、配管用の貫通孔を形成する所望の位置に貫通孔形成用型枠装置1を配置し、コンクリートを打設した後、コンクリート壁体用の型枠を取り外すと、コンクリート壁体4の貫通孔の内壁面5に密接して、貫通孔形成用型枠装置1の外装体2が配置され、外装体の内側に内接して内芯体が配置されている。
【0027】
この状態では、上述したように、コンクリート壁体4の貫通孔の内壁面5には、指先等の力によって容易に変形する外装体2が密接して配置され、外装体に内接して硬い材質の内芯体が配置されている。外装体は、コンクリートから容易に剥離される部材で形成されていることが好ましい。なお、外装体は、硬い材質の内芯体とコンクリートによって挟まれて、一般的に厚さが薄くなっている。
【0028】
図1(c)は、図1(b)に示す状態から、硬い材質の内芯体を取り出した状態を説明する図である。図1(c)に示すように、容易に変形する外装体2を変形させて、外装体2の内側に内接して配置されている硬い材質の内芯体3を取り出す。この状態では、図1(c)の上部には、取り出された内芯体3が示され、コンクリート壁体4の貫通孔の内壁面5には、貫通孔形成用型枠装置1の外装体2だけが密接して残されている。
【0029】
図1(d)は、図1(c)に示す状態から、貫通孔の内壁面から外装体を取り出した状態を説明する図である。図1(d)に示すように、コンクリート壁体4に形成された貫通孔の内壁面5から、指先の力によって容易に変形する外装体2が取り外され、コンクリート壁体4に形成された貫通孔の内壁面5が露出している。このように、コンクリート壁体から貫通孔形成用型枠装置1の内芯体および外装体がこの順で取り外されて、貫通孔が形成される。
【0030】
図1(e)は、コンクリート壁体の貫通孔から取り外された外装体および内芯体を組み合わせて、貫通孔形成用型枠装置を再利用する状態を説明する図である。図1(e)に示すように、図1(c)および図1(d)を参照して説明したように、コンクリート壁体の貫通孔から取り出した外装体2および内芯体3を、使用前の状態と同じ状態になるように、外装体2の内側に密着して内芯体3を配置する。外装体2は指先等の力で容易に変形し、硬い材質の内芯体3の外表面に被せるようにして外装体2を配置することができる。
【0031】
上述したように、貫通孔形成用型枠装置1の内側に配置される硬い材質で形成された内芯体3によって、コンクリート壁体に形成される貫通孔の所望の孔径を確保し、外側に配置される外面が軟らかい材質で形成された外装体2によって、コンクリート壁体4に形成された貫通孔の内壁面5からの剥離を容易にする。硬い材質の内芯体3は容易に変形する外装体2を変形しながら容易に抜き取ることができる。
【0032】
図2は、外装体および内芯体の別の態様を示す横断面図である。図2に示す態様では、内側に位置する内芯体3は、径の大きさが、手前(図では左側)が大きく、奥に向かって漸次小さくなっている。外側に位置する外装体2は、外径は同一であるが、内径の大きさが、内芯体3の外径に対応して手前(図では左側)が大きく、奥に向かって漸次小さくなっている。なお、内芯体3の厚さは概ね同一であるのに対して、外装体2の厚さは、手前(図では左側)が小さく、奥に向かって漸次大きくなっている。このような形状の外装体2および内芯体3を組み合わせることによって、取り外しが更に容易になる。
【0033】
図3は、他の態様の貫通孔形成用型枠装置を説明する斜視図である。図3に示すように、この態様の貫通孔形成用型枠装置1は、図1を参照して説明した貫通孔形成用型枠装置1の外側の外装体2の外表面の全体に更にフィルム状のカバー6を備えている。フィルム状のカバー6は、コンクリートと接着し難い材質で形成されている。また、カバー6は、不織布で形成することも可能である。その場合は、貫通孔形成用型枠装置1を配置し、コンクリートを流し込むと、水分を吸収して膨張し、コンクリートが乾燥すると縮小するので、取り外しが容易になる。外装体2とフィルム状のカバー6とは接着されて、同時に取り外すことができることが好ましい。
【0034】
上述した外装体2と内芯体3は、容易に取り外すことができるように、外装体2の外側摩擦力(A)と内芯体3の外側摩擦力(B)との関係が、A>Bの関係である。
【0035】
図4は、貫通孔形成用型枠装置において、断面の内周面が波形形状である外装体を説明する断面図である。図4に示すように、コンクリート壁体4の貫通孔部の内壁面5に接する外装体2の断面は、内周面7が波形形状を形成している。即ち、コンクリート壁体4の貫通孔部に挿着された貫通孔形成用型枠装置1から、変形可能な外装体2を変形させることによって、内側に配置されている内芯体3を取り出した後、外装体2は、図4に示す断面形状を有している。外装体2の断面における内周面7の形状を波形形状にすることによって、簡単に変形し、取り外しが容易になる。
【0036】
なお、このように断面の内周面7が波形形状を備えていることによって、内芯体を取り出して形成された空洞部8内に治具等を挿入し、回転させると、外装体2をコンクリート壁体4の貫通孔部の内壁面5からより容易に剥離することができる。上述したように、外装体の外表面は、コンクリート壁体の貫通孔の内壁面から取り外し易い材質によって形成されているので、外表面に傷を付けることなく、外装体2を回収することができる。
【0037】
図5は、貫通孔形成用型枠装置において、断面の内周面が十字状に形成されている外装体を説明する断面図である。図5に示すように、コンクリートの貫通孔部の内壁面5に接する外装体2の断面は、内周面7が十字状に形成されている。即ち、コンクリート壁体の貫通孔部に挿着された貫通孔形成用型枠装置1から、簡単に変形可能な外装体を変形させることによって、内側に配置されている内芯体を取り出した後、外装体は、図5に示す断面形状を有している。
【0038】
このように断面の内周面7が十字状を備えていることによって、内芯体を取り出して形成された空洞部8内に十字形に対応する形状の治具等を挿入し、回転させると、外装体2をコンクリート壁体の貫通孔部の内壁面からより容易に剥離することができる。断面の内周面7を十字状にすることによって、治具と内周面との間の摩擦を大きくすることができ、外装体2をコンクリート壁体4の貫通孔部の内壁面5から容易に剥離することができる。
【0039】
図6は、貫通孔形成用型枠装置において、一方の端部側面に、取り外し用の対称配置された1対の凹部を備えている外装体を説明する図である。図4および図5を参照して説明した外装体2は、横断面における内周面の形状を特定の形状にすることによって、外装体2をコンクリート壁体4の貫通孔部の内壁面5から剥離していた。
【0040】
図6に示す態様では、外装体2の外周面9の特定の部位の形状を変化させて、外装体2をコンクリート壁体4の貫通孔部の内壁面5から剥離する。即ち、図6に示すように、一方の端部側面に、取り外し用の対称配置された1対の凹部10を備えている。外周面9に対称形成された1対の凹部10には、対応する形状の治具が装着されて、治具の回転によって、外装体2をコンクリート壁体4の貫通孔部の内壁面5から剥離することができる。
【0041】
図7は、他の態様の外装体を説明する図である。図7(a)は斜視図であり、図7(b)は、貫通孔部の内壁面から取り外した状態を説明する図である。図7に示す態様の外装体2は、一枚ものの部材11を螺旋状に巻いて形成される円筒状物である。即ち、図7(a)に示すように、一枚ものの部材11を一方の端部から他方の端部にかけて螺旋状に巻いて円筒状物2を形成している。一枚ものの部材11は、図1から図6を参照して説明したと同様に、指先等の力によって容易に変形する部材であり、コンクリート壁体4に形成された貫通孔の内壁面5と接する外表面は、コンクリートから剥離容易な部材で形成されている。
【0042】
この態様の外装体を使用する場合には、コンクリート壁体4の貫通孔部に挿着された貫通孔形成用型枠装置1から、変形可能な外装体2を変形させることによって、内側に配置されている内芯体3を取り出した後、外装体2を、図7(b)示すような状態で、一方の端部から他方の端部にかけて、貫通孔の内壁面5から剥離する。
【0043】
図8は、他の態様の外装体を説明する図である。この態様の外装体2は断面概ねC字形の円筒状物である。断面概ねC字形の円筒状物とすることにより、円筒形状への形成が容易となるとともに、貫通孔の内壁面5から剥離することができる。さらに、側面の一部が長手方向の全体にわたって切り取られて間隙部を形成する場合、間隙部を利用して円筒状物を変形させることによって、容易に取り出すことができる。
なお、図6から図8を参照して説明した外装体2の内側の孔の形状を、図5および図6を参照して説明した、波形形状、または、十字形状にしても良い。
【0044】
次に、貫通孔の施工方法を説明する。コンクリート壁体に貫通孔を施工する方法は、先ず、所望の形状になるように型枠を準備し、型枠内の貫通孔形成部位に、図1から図8を参照して説明した何れかの貫通孔形成用型枠装置1を配置する。このように貫通孔形成用型枠装置1が配置された型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に堰板を取り外す。次いで、コンクリート内に埋設された貫通孔形成用型枠装置1の内芯体3を、外装体2を変形させながら抜き取り、次いで、外装体2を変形させながら貫通孔の内壁面5から取り外して、貫通孔を形成する。
【0045】
上述した態様においては、概ね円筒状の外装体について説明したが、外装体の形状は、円筒状に限定されることなく、略楕円形状、断面四角形状等任意の形状であってもよい。
【0046】
この発明によると、廃棄物を生じず、主要部分は再利用可能で、壁厚の種類に応じて現場で加工が可能な低コストの貫通孔形成用型枠装置およびそれを用いた貫通孔の施工方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 貫通孔形成用型枠装置
2 外装体
3 内芯体
4 コンクリート壁体
5 貫通孔の内壁面
6 カバー
7 内周面
8 空洞部
9 外周面
10 1対の凹部
11 一枚ものの部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に貫通孔を形成するための貫通孔形成用型枠装置であって、
所定の厚さを有し変形可能な材質からなる筒状の外装体と、
前記外装体の内側に軸方向に取り外し可能に配置されて前記外装体を所定の外径に保つ内芯体と、からなる貫通孔形成用型枠装置。
【請求項2】
前記外装体の内周断面が、波状に形成されている、請求項1に記載の貫通孔形成用型枠装置。
【請求項3】
前記外装体の内周断面が十字状に形成されている、請求項1に記載の貫通孔形成用型枠装置。
【請求項4】
前記外装体の一方の端部側面に、取り外し用の対称配置された1対の凹部を備えている、請求項1から3の何れか1項に記載の貫通孔形成用型枠装置。
【請求項5】
外装体は、一枚ものの部材を螺旋状に巻いて形成されることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の貫通孔形成用型枠装置。
【請求項6】
外装体の外側摩擦力(A)と内芯体の外側摩擦力(B)との関係が、A>Bの関係である、請求項1から5の何れか1項に記載の貫通孔形成用型枠装置。
【請求項7】
型枠内の貫通孔形成部位に、請求項1から6の何れかの貫通孔形成用型枠装置を配置し、
型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に堰板を取り外し、
コンクリート内に埋設された前記貫通孔形成用型枠装置の前記内芯体を、前記外装体から抜き取り、
前記外装体を変形させながら前記貫通孔から抜き取って貫通孔を形成する、貫通孔の施工方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202367(P2011−202367A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68259(P2010−68259)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】