説明

貯湯式給湯機および成形断熱材の製造方法

【課題】貯湯タンクを断熱するための成形断熱材内に内蔵された真空断熱材の破損の有無を容易に確認することのできる貯湯式給湯機およびその成形断熱材の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の貯湯式給湯機は、貯湯タンク1と、貯湯タンク1の外側を覆う成形断熱材16,17と、成形断熱材16,17に内蔵された真空断熱材13と、を備えた貯湯式給湯機であって、成形断熱材16,17は、内蔵された真空断熱材13の一部を露出させる確認部(穴部18b,18c)を有し、確認部から真空断熱材13の一部を目視可能である。真空断熱材13が破損した場合に生ずる真空断熱材13の膨張の有無を確認部から確認可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機および成形断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプユニット等の熱源によって水を加熱して得られた高温の湯を貯湯タンクに貯留し、この貯湯タンクから必要時に湯を取り出して給湯端末に供給するように構成された貯湯式給湯機が広く用いられている。貯湯タンクからの放熱ロスを抑えるため、貯湯タンクの周囲には断熱材が配置される。断熱材としては、例えば発泡ポリスチレン等の発泡性成形断熱材が従来より用いられているが、貯湯タンクの保温性能を更に向上するため、より断熱性能の高い真空断熱材を用いる技術が提案されている。真空断熱材は、発泡体、粉体、繊維体等をシート状に加工してなる芯材(コア材)を、ガスバリア性フィルム(プラスチックフィルム、プラスチック金属ラミネートフィルム等)で包んで内部を真空状態とし、ガスバリア性フィルムの周縁部を熱溶着して密封した構成となっている。真空断熱材は、極めて高い断熱性能を有しているが、ガスバリア性フィルムに穴が開いて内部の真空状態が損なわれると、断熱性能が大きく低下する。このように、真空断熱材は、破損し易いため、製造時や運搬時、貯湯タンクユニットへの組立時等の取り扱いが難しいという問題がある。
【0003】
この問題を解決するため、真空断熱材を発泡性成形断熱材と一体成形し、発泡性成形断熱材内に真空断熱材を内蔵させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、発泡性成形断熱材内へ真空断熱材をインサート成形する場合の成形時や、運搬時、または貯湯タンクユニットへの組立時に真空断熱材の真空破損があったとしても、その破損を発見することができない。このため、真空断熱材の破損が見逃され、真空断熱材の断熱性能低下により貯湯タンクの保温性能が大きく低下した貯湯式給湯機が製品として出荷されてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、貯湯タンクを断熱するための成形断熱材内に内蔵された真空断熱材の破損の有無を容易に確認することのできる貯湯式給湯機およびその成形断熱材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貯湯式給湯機は、貯湯タンクと、貯湯タンクの外側を覆う成形断熱材と、成形断熱材に内蔵された真空断熱材と、を備えた貯湯式給湯機であって、成形断熱材は、内蔵された真空断熱材の一部を露出させる確認部を有し、確認部から真空断熱材の一部を目視可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯湯タンクを断熱するための成形断熱材内に内蔵された真空断熱材の破損の有無を容易に確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の貯湯タンクユニットの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の貯湯タンクとこれを覆う成形断熱材を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の成形断熱材を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の成形断熱材を内周面側から見た図である。
【図6】図5中のA−A線断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2の貯湯式給湯機における成形断熱材を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3の貯湯式給湯機における外郭ケース側面および外郭ケース天板を取り外した状態の貯湯タンクユニット30を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の貯湯式給湯機は、貯湯タンクユニット30と、加熱手段4とを有している。貯湯タンクユニット30の外郭ケース内には、略円筒形の貯湯タンク1と、ポンプ類、弁類、追焚き用熱交換器等の各種機器とが収容されている。貯湯タンク1は、雰囲気への放熱を防ぐために、後述する断熱材で覆われた状態となっている。外郭ケースの下方には複数本のタンクユニット脚12が設置されており、これらのタンクユニット脚12により貯湯タンクユニット30が地面または台座に対し支持固定されている。
【0012】
貯湯タンク1には、給水配管2を介して水が供給されている。貯湯タンク1内の水は、貯湯タンク1の下部に接続されている入水配管3を介して加熱手段4へ搬送される。加熱手段4は、例えば、冷凍サイクルを用いて水を加熱するヒートポンプユニットで構成される。加熱手段4に搬送された水は、加熱手段4により加熱され、高温の湯となる。この高温の湯は、加熱手段4と貯湯タンク1の上部とを接続する出湯配管5により、貯湯タンク1に搬送され、貯湯タンク1内に貯留される。貯湯タンク1内に貯留された湯は、風呂給湯配管6を介して、お風呂の浴槽40へ供給され、あるいは、給湯配管7を介して、シャワー、台所、洗面所の蛇口などの給湯端末へ供給される。
【0013】
なお、本発明の貯湯式給湯機は、上述した構成に限定されるものではなく、例えば電気ヒータ等の加熱手段を貯湯タンク1内に配置したものであってもよい。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の貯湯タンクユニット30を示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の貯湯タンク1とこれを覆う成形断熱材を示す分解斜視図である。図4は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の成形断熱材を示す斜視図である。図5は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機の成形断熱材を内周面側から見た図である。図6は、図5中のA−A線断面図である。
【0015】
図2に示すように、貯湯タンク1は、所定形状に成形された成形断熱材14,15,16,17により覆われている。これらの成形断熱材14,15,16,17は、例えば発泡ポリスチレン等で構成された発泡性成形断熱材であることが望ましい。これらの成形断熱材14,15,16,17により覆われた貯湯タンク1を取り囲むように配置された底板9、外郭ケース側面10、外郭ケース天板11等により、外郭ケースが構成されている。貯湯タンク1は、複数本のタンク脚8により、底板9上に支持されている。底板9の下方には、複数本のタンクユニット脚12が設置されている。
【0016】
成形断熱材14は、貯湯タンク1の上部を覆う略お椀状の形状をなしている。成形断熱材15は、貯湯タンク1の下部を覆う略お椀状の形状をなしている。図3に示すように、成形断熱材16,17は、それぞれ、略半円筒状の形状をなしており、この両者を組み合わせることによって貯湯タンク1の胴部(側面部)がほぼ全周に渡り覆われている。なお、本実施形態における成形断熱材16,17は、互いにほぼ同様の構成であるので、図4乃至図6では、成形断熱材16,17のうちの一方のみを示す。
【0017】
成形断熱材16,17内には、それぞれ、真空断熱材13が内蔵されている。すなわち、真空断熱材13は成形断熱材16,17と一体化され、真空断熱材13の表面の大部分は成形断熱材16,17により覆われている。真空断熱材13は、例えば発泡体、粉体、繊維体等をシート状に加工してなる芯材(コア材)を、ガスバリア性フィルム(プラスチックフィルム、プラスチック金属ラミネートフィルム等)で包んで内部を真空状態(減圧状態)とし、ガスバリア性フィルムの周縁部を熱溶着して密封した構成となっている。このため、真空断熱材13は、芯材を内蔵した本体部分の外周部に、ガスバリア性フィルムが熱溶着されてなる溶着フィルム部が張り出した構成となっている。
【0018】
図4に示すように、真空断熱材13は、成形断熱材16,17の円筒面に沿った曲面状(略半円筒状)をなした状態で成形断熱材16,17内に内蔵されている。図示の構成では、成形断熱材16,17内に各1個の真空断熱材13が内蔵されているが、1個の成形断熱材内に複数の真空断熱材を内蔵させてもよい。その場合、複数の真空断熱材を重ねてもよいし、領域を分けて複数の真空断熱材を配置してもよい。真空断熱材13を内蔵した成形断熱材16,17を製造する方法としては、成形断熱材16,17を成形する金型内に真空断熱材13を配置し、真空断熱材13を取り囲むようにして成形断熱材16,17を一体成形する、すなわちインサート成形を行うことにより、容易に製造することができる。
【0019】
一般に真空断熱材は、ガスバリア性フィルムに穴が開いて内部の真空状態が損なわれると、断熱性能が大きく低下する。このため、製造時や運搬時、組立時には、ガスバリア性フィルムを傷つけて穴を開けることのないよう、細心の注意を払う必要があり、取り扱いが困難である。これに対し、本実施形態では、成形断熱材16,17に真空断熱材13を内蔵させたことにより、成形断熱材16,17によって真空断熱材13が保護されているので、成形断熱材16,17を製造した後の運搬時や貯湯タンクユニット30への組立時に、真空断熱材13のガスバリア性フィルムを誤って傷つけて穴を開けることを確実に抑制することができる。また、貯湯タンクユニット30の組立作業も容易となる。
【0020】
図2乃至図6に示すように、成形断熱材16,17には、内蔵された真空断熱材13の一部を露出させる確認部としての穴部18b,18cが設けられている。穴部18bは、成形断熱材16,17を貯湯タンク1に装着した際に内側となる成形断熱材16,17の内周面側に設けられている。穴部18cは、成形断熱材16,17を貯湯タンク1に装着した際に外側となる成形断熱材16,17の外周面側に設けられている。穴部18b,18cは、真空断熱材13を覆う成形断熱材16,17の壁面を窓状にくり抜いた形状となっている。図示の構成では、穴部18b,18cは、長方形をなしているが、形状はこれに限定されるものではなく、例えば円形、楕円形、三角形などであってもよい。
【0021】
本実施形態では、成形断熱材16,17の外部から、このような穴部18b,18cを介して、真空断熱材13の一部の領域を目視することができる。真空断熱材13のガスバリア性フィルムが破損して内部の真空状態が損なわれると、芯材に作用していた大気圧による圧縮力が無くなるので、芯材の弾性復元力により、真空断熱材13は膨張する。このため、真空断熱材13が膨張しているかどうかを穴部18b,18cから目視で確認することにより、真空断熱材13の破損の有無を容易且つ確実に確認することができる。前述したように、真空断熱材13は成形断熱材16,17によって覆われて保護されているが、成形断熱材16,17の成形時に真空断熱材13が破損する可能性がある。また、運搬時や組立時にも、何らかの理由により、真空断熱材13が破損する可能性がある。本実施形態によれば、真空断熱材13が万一破損した場合、成形断熱材16,17の成形後や、運搬時、組立時において、穴部18b,18cから真空断熱材13の膨張の有無を目視で確認することにより、真空断熱材13の真空破損を容易に発見することが可能である。これにより、真空断熱材13の破損が見逃されて貯湯タンク1の断熱性(保温性能)が低下した製品が出荷されてしまうことを確実に抑制することができる。
【0022】
穴部18b,18cのような確認部の大きさ(面積)は、特に限定されないが、真空断熱材13が破損した場合の真空断熱材13の膨張を目視により確実に確認可能な大きさを有することが望ましい。また、運搬時や組立時に穴部18b,18cから露出した部分の真空断熱材13に不用意に何かが接触することによる真空断熱材13の破損を避けることができるように、穴部18b,18cのような確認部の大きさ(面積)は、必要以上に大きくないことが望ましい。また、真空断熱材13は、穴部18b,18cのような確認部以外の箇所では、成形断熱材16,17に覆われ、外部に対し露出していないことが望ましい。
【0023】
図示の構成では、成形断熱材16,17の内周面側と外周面側との両方に確認部(内周面側の穴部18bと外周面側の穴部18c)を設けたことにより、成形断熱材16,17が部品として保管されている時の向きに関係なく、容易に真空断熱材13の破損の有無を確認することが可能である。また、組立後(貯湯タンク1に装着した後)においても、真空断熱材13の破損の有無を確認することが可能である。
【0024】
ただし、成形断熱材16,17の内周面側と外周面側との一方のみに確認部を設けるようにしてもよい。成形断熱材16,17の内周面側のみに確認部(穴部18b)を設けた場合には、組立後(貯湯タンク1に装着した後)は、穴部18bから露出する真空断熱材13に他の部品等が干渉して真空断熱材13を損傷する可能性を無くすことができるので、真空断熱材13をより確実に保護することができる。これに対し、成形断熱材16,17の外周面側のみに確認部(穴部18c)を設けた場合には、組立後(貯湯タンク1に装着した後)においても真空断熱材13の破損の有無を確認することが可能であるという利点がある。
【0025】
また、本実施形態では、確認部を窓状の穴部18b、18cで構成したことにより、真空断熱材13の大きさに対してごく小さい一部の領域のみが穴部18b,18cから露出するだけであるので、運搬時や組立時に穴部18b,18cから露出した真空断熱材13に何かが接触しないように容易に留意することができる。このため、不注意で真空断熱材13を破損することをより確実に抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態では、図3および図5に示すように、穴部18b,18cは、それぞれ、成形断熱材16,17の円周方向に沿って間隔を置いて複数箇所(図示の構成では3箇所)に設けられている。このため、真空断熱材13の破損の有無をより容易且つ確実に確認することが可能である。
【0027】
また、図3に示すように、成形断熱材16,17の欠損部分としての穴部18cを塞ぐための封止部材19を用意し、組立後(貯湯タンク1に装着した後)または組立前であって真空断熱材13に破損が無いことを確認した後に、穴部18cに封止部材19を装着するようにしてもよい。これにより、封止部材19を装着した後は、穴部18cから真空断熱材13が露出しなくなるので、他の部品等が干渉することによって真空断熱材13を損傷するおそれが無くなり、真空断熱材13をより確実に保護することができる。また、成形断熱材16,17の欠損部分が塞がれることにより、貯湯タンク1の保温性能を向上することができる。封止部材19は、断熱性を有する材料で構成されていることが好ましく、成形断熱材16,17と同材料で構成されていることがより好ましい。また、封止部材19は、穴部18cに対応した形状に形成され、穴部18cに対し圧入して固定可能とされていることが好ましい。なお、図3では、中央の1箇所の穴部18cに対する封止部材19のみを示し、残りの穴部18cに対する封止部材19を省略している。また、成形断熱材16,17の内周面側の穴部18bにも同様の封止部材を装着するようにしてもよい。
【0028】
また、穴部18b,18cの周辺の成形断熱材16,17の機械的強度を調整することにより、真空断熱材13が破損した場合に、真空断熱材13の膨張に伴って穴部18b,18cの周辺の成形断熱材16,17が変形する(膨らむ)ように構成してもよい。例えば、穴部18b,18cの周辺の成形断熱材16,17に、他の部分よりも肉厚の薄い部分を設けたり、中空部を設けたり、穴部18b,18cに近づくにつれてテーパー状に肉厚を薄くしたりするなど、機械的強度を弱める構成を設けることにより、真空断熱材13が破損・膨張した際に穴部18b,18cの周辺の成形断熱材16,17が変形する(膨らむ)ように構成することができる。このような構成によれば、真空断熱材13が破損した際、その破損をより容易且つ確実に発見することが可能となる。
【0029】
また、穴部18b,18cのような確認部の周辺の成形断熱材16,17上に、確認部の位置を表示する目印(刻印等)を設けるようにしてもよい。これにより、真空断熱材13の破損の有無の確認作業をより容易に行うことが可能となる。
【0030】
成形断熱材16,17は、前述したようなインサート成形により製造することができるが、そのインサート成形に際しては、金型内に真空断熱材13を配置して金型内で真空断熱材13を支持する必要がある。その場合、金型内で真空断熱材13を支持する支持手段を、穴部18b,18c(確認部)に相当する位置に配置して成形を行うことが好ましい。穴部18b,18c(確認部)に相当する位置には、成形断熱材16,17の材料である成形材料を流し込む必要がないので、上記支持手段を容易に配置することが可能である。このようにして成形を行うことにより、金型内での真空断熱材13の保持が容易となり、製造(成型)性が向上する。また、本実施形態では、成形断熱材16,17の円周方向に沿って間隔を置いて複数箇所(図示の構成では3箇所)に穴部18b,18cを設けているので、上記支持手段も円周方向に沿って複数箇所で真空断熱材13を保持することができる。このため、金型内での真空断熱材13の保持が更に容易となる。
【0031】
実施の形態2.
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0032】
図7は、本発明の実施の形態2の貯湯式給湯機における成形断熱材16を示す斜視図である。図7に示すように、本実施形態の成形断熱材16には、内蔵された真空断熱材13の一部を露出させる確認部として、実施の形態1の穴部18b,18cに代えて、切欠き部18dが設けられている。切欠き部18dは、成形断熱材16の上端部の一部を切り欠いた形状に形成された部分である。切欠き部18dは、成形断熱材16の円周方向に沿って間隔を置いて複数箇所(図示の構成では3箇所)に設けられている。切欠き部18dからは、成形断熱材16に内蔵された真空断熱材13の端部の一部が露出している。切欠き部18dから露出した真空断熱材13の部分には、ガスバリア性フィルムが溶着されてなる溶着フィルム部だけでなく、芯材を内蔵した本体部分が含まれる。本実施形態によれば、真空断熱材13が万一破損した場合、成形断熱材16の成形後や、運搬時、組立時において切欠き部18dから真空断熱材13の膨張の有無を目視で確認することにより、真空断熱材13の真空破損を容易に発見することが可能となる。
【0033】
本実施形態では、確認部を窓状の切欠き部18dで構成したことにより、真空断熱材13の端部が全長に渡り露出するのではなく、真空断熱材13の端部の一部のみが切欠き部18dから露出するだけであるので、運搬時や組立時に切欠き部18dから露出した真空断熱材13に何かが接触しないように容易に留意することができる。このため、不注意で真空断熱材13を破損することをより確実に抑制することができる。
【0034】
また、切欠き部18dから露出する真空断熱材13は、成形断熱材16の内周面側と外周面側との両側から目視可能であるので、容易に真空断熱材13の破損の有無を確認することが可能である。また、組立後(貯湯タンク1に装着した後)においても、真空断熱材13の破損の有無を確認することが可能である。なお、切欠き部18dの形成箇所は、成形断熱材16の上端部に限定されるものではなく、成形断熱材16の下端部あるいは鉛直方向に沿った端部に同様の切欠き部を設けてもよい。また、実施の形態1で述べたのと同様に、成形断熱材16の欠損部分としての切欠き部18dを塞ぐための封止部材を用意し、真空断熱材13に破損が無いことを確認した後にその封止部材を切欠き部18dに装着するようにしてもよい。
【0035】
実施の形態3.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0036】
図8は、本発明の実施の形態3の貯湯式給湯機における外郭ケース側面10および外郭ケース天板11を取り外した状態の貯湯タンクユニット30を示す側面図である。図8に示すように、本実施形態の成形断熱材16には、確認部としての穴部18eが設けられている。成形断熱材16内には、真空断熱材13aと真空断熱材13bとが並べて内蔵されている。穴部18eからは、真空断熱材13aの一部と、真空断熱材13bの一部とが露出している。また、真空断熱材13aと真空断熱材13bとの間には、隙間が設けられている。このため、穴部18e内の真空断熱材13a,13bの隙間の部分は、成形断熱材16の内周面と外周面との間を貫通している。貯湯タンク1の表面には、タンク内の水温を検出する温度センサとしてのサーミスタ21が取り付けられている。穴部18eは、このサーミスタ21の取り付け位置に対応した位置に設けられている。このため、成形断熱材16を貯湯タンク1から取り外すことなく、穴部18eの上記貫通部分を介して、サーミスタ21を目視することができる。
【0037】
本実施形態によれば、真空断熱材13a,13bが万一破損した場合、成形断熱材16の成形後や、運搬時、組立時において穴部18eから真空断熱材13a,13bの膨張の有無を目視で確認することにより、真空断熱材13a,13bの真空破損を容易に発見することが可能となる。また、成形断熱材16を貯湯タンク1から取り外すことなく、穴部18eの上記貫通部分を介して、サーミスタ21を点検したり、サーミスタ21が故障した際のサーミスタ21の交換等を行うことができる。
【0038】
なお、真空断熱材13の破損有無を確認する別手段として、穴部18b,18c,18eや切欠き部18dを含めた周辺部を、貯湯状態など保温が必要な状態でサーモビュアー等で表面温度分布を測定することにより実施してもよい。これにより、穴部や切欠き部とその他の部位との温度差の状態から真空断熱材13の破損の有無が、例えば給湯機が実際に設置され使用されている状態においても容易に確認することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 貯湯タンク
2 給水配管
3 入水配管
4 加熱手段
5 出湯配管
6 風呂給湯配管
7 給湯配管
8 タンク脚
9 底板
10 外郭ケース側面
11 外郭ケース天板
12 タンクユニット脚
13,13a,13b 真空断熱材
14,15,16,17 成形断熱材
18b,18c,18e 穴部
18d 切欠き部
19 封止部材
21 サーミスタ
30 貯湯タンクユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの外側を覆う成形断熱材と、
前記成形断熱材に内蔵された真空断熱材と、
を備えた貯湯式給湯機であって、
前記成形断熱材は、前記内蔵された前記真空断熱材の一部を露出させる確認部を有し、前記確認部から前記真空断熱材の一部を目視可能である貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記確認部は、前記成形断熱材を前記貯湯タンクに装着した際に内側となる前記成形断熱材の内面側に設けられている請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記確認部は、前記成形断熱材を前記貯湯タンクに装着した際に外側となる前記成形断熱材の外面側に設けられている請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記確認部は、前記成形断熱材を前記貯湯タンクに装着した際に内側となる前記成形断熱材の内面側と、前記成形断熱材を前記貯湯タンクに装着した際に外側となる前記成形断熱材の外面側との両方に設けられている請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記確認部は、前記真空断熱材を覆う前記成形断熱材の壁面に設けられた窓状の穴部で構成される請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記確認部は、前記成形断熱材の端部の一部を切り欠いた切欠き部で構成される請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記確認部を構成する前記成形断熱材の欠損部分を塞ぐように前記確認部に装着可能な封止部材を備える請求項1乃至6の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記確認部の周辺の前記成形断熱材上に、前記確認部の位置を表示する目印が設けられている請求項1乃至7の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項9】
前記貯湯タンクに設置されたタンク内水温センサを備え、
前記確認部は、前記タンク内水温センサに対応する位置に形成され、前記成形断熱材を貫通する部分を有する請求項1乃至8の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項10】
前記真空断熱材が破損した場合に、前記真空断熱材の膨張により前記確認部の周辺の前記成形断熱材が変形するように、前記成形断熱材の前記確認部の周辺に、該成形断熱材のその他の部分よりも機械的強度を低下させた部位を設けた請求項1乃至9の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項11】
前記成形断熱材の円周方向に沿って前記確認部が複数箇所に設けられている請求項1乃至10の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項記載の貯湯式給湯機の前記成形断熱材を製造するに際し、金型内に前記真空断熱材を配置し、前記金型内で前記真空断熱材を支持する支持手段を前記確認部に相当する位置に配置して成形を行う成形断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88079(P2013−88079A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230701(P2011−230701)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】