説明

貯湯式給湯機

【課題】一般給湯先への給湯が停止されているときでも浴槽への給湯温度を安定させ易い貯湯式給湯機を得ること。
【解決手段】貯湯タンク内の湯を出湯側が二股分岐した給湯管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給すると共に、水源からの水を出水側が二股分岐した給水管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給し、一般給湯混合弁および風呂給湯混合弁の開度を制御装置により別個に調整して一般給湯先への給湯温度と浴槽への給湯温度とを制御する貯湯式給湯機を構成するにあたり、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときには、風呂給湯混合弁の開度に応じて一般給湯混合弁の開度を調整して、一般給湯混合弁を通って前記風呂給湯混合弁に達する湯や水の回り込みを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯湯タンクに貯留した湯を該貯湯タンクから所定の給湯先に供給する貯湯式給湯機では、貯湯タンクからの湯と水道等の水源からの水とを混合弁に導き、該混合弁の開度を制御装置により制御して、給湯先での給湯温度をユーザの設定温度に調整する。上記の混合弁は給湯先への給湯が終わるたびに水側全開または湯側全閉にされるというものではなく、例えば特許文献1に記載された貯湯式給湯機(給湯システム)におけるように、次回の給湯時に給湯温度が安定するよう、給湯停止後も所定の開度(以下、「安定給湯開度」という)に保たれる。
【0003】
近年では、例えば特許文献2に記載された貯湯式給湯機(自動給湯装置)のように、ユーザが給湯栓を操作する一般給湯先(台所等)と給湯栓が不要な浴槽とに給湯可能な貯湯式給湯機が一般的になってきている。このような貯湯式給湯機では、出湯側が二股分岐した給湯管路により貯湯タンク内の湯が一般給湯先用の混合弁(以下、「一般給湯混合弁」という)と風呂給湯用の混合弁(以下、「風呂給湯混合弁」という)とに導かれる。また、出水側が二股分岐した給水管路により水源からの水が上記の一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに導かれる。そして、一般給湯先への給湯温度に応じて一般給湯混合弁の開度が制御され、浴槽への給湯温度に応じて風呂給湯混合弁の開度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−164286号公報
【特許文献2】特開2008−267692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二股分岐した給湯管路と給水管路とが一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに接続された従来の貯湯式給湯機では、一般給湯先への給湯停止後に一般給湯混合弁の開度を安定給湯開度に保っておくと、浴槽への給湯時に貯湯タンク内の湯や水源からの水が一般給湯混合弁を通って風呂給湯混合弁に回り込み、浴槽への給湯温度が不安定になることがある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、一般給湯先への給湯が停止されているときでも浴槽への給湯温度を安定させ易い貯湯式給湯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の貯湯式給湯機は、貯湯タンク内の湯を出湯側が二股分岐した給湯管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給すると共に、水源からの水を出水側が二股分岐した給水管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給し、一般給湯混合弁の開度と風呂給湯混合弁の開度とを制御装置により別個に調整して、一般給湯混合弁から一般給湯先への給湯温度と風呂給湯混合弁から浴槽への給湯温度とを制御する貯湯式給湯機であって、制御装置は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときには、風呂給湯混合弁の開度に応じて一般給湯混合弁の開度を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貯湯式給湯機では、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときには風呂給湯混合弁の開度に応じて一般給湯混合弁の開度を調整し、一般給湯混合弁を通って風呂給湯混合弁に達する湯や水の回り込みを抑えるので、浴槽への給湯温度を安定させ易い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示した貯湯式給湯機での制御装置と該制御装置に接続された構成要素とを概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の貯湯式給湯機で一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける風呂給湯混合弁の開度と一般給湯混合弁の開度との対応関係の一例を示すグラフである。
【図4】図4は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける風呂給湯混合弁への湯と水の回り込みの一例を示す概略図である。
【図5】図5は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける風呂給湯混合弁の開度と一般給湯混合弁での開度と浴槽への給湯温度との関係の一例を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の貯湯式給湯機で一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける一般給湯混合弁および風呂給湯混合弁それぞれの開度調整の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の貯湯式給湯機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。同図に示す貯湯式給湯機130は、熱源機で沸き上げた湯を貯湯タンクに貯留し、ここから一般給湯先150と浴槽160とに湯を供給する機能を有するものであり、ヒートポンプユニット10と給湯機本体110とリモートコントローラ120とを備えている。以下、貯湯式給湯機130の各構成要素について説明する。
【0012】
上記のヒートポンプユニット10は、冷媒を圧縮する圧縮機と、放熱器に相当する沸上げ用熱交換器と、膨張弁と、蒸発器と、これらを環状に接続する循環配管とを有する冷凍サイクル部(図示せず)を備え、後述する制御装置100による制御の下に動作して熱源機として機能する。上記の冷凍サイクル部では、二酸化炭素等の冷媒が圧縮機で圧縮されて高温、高圧となった後に沸上げ用熱交換器で放熱し、膨張弁で減圧され、蒸発器で吸熱してガス状態となって圧縮機に吸入される。
【0013】
一方、給湯機本体110は、貯湯タンク20、給水管路30、貯湯用循環管路40、給湯管路50、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、一般用給湯管路80、風呂用給湯管路90、および制御装置100等を有している。
【0014】
上記の貯湯タンク20は、給水管路30から供給される水を貯留すると共にヒートポンプユニット10で沸き上げられた湯を貯留する積層式の貯湯タンクであり、その下部には給水管路30と貯湯用循環管路40の往き管40aが、また上部には貯湯用循環管路40の戻り管40bと給湯管路50がそれぞれ接続されている。この貯湯タンク20は、給水管路30からの給水により常に満水状態に保たれる。
【0015】
貯湯タンク20の上部には、貯湯タンク20から給湯管路50に流入する湯の温度を検知するためのタンク温度センサ20aが取り付けられている。また、貯湯タンク20の周面部には、貯湯タンク20内の湯の温度を検知するための複数の沸上げ温度センサ(図示せず)が互いに異なる取付け高さをもって取り付けられている。
【0016】
給水管路30は、市水等の水を貯湯タンク20、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、および一般給湯先150に供給する管路であり、減圧弁23、給水温度センサ25、第1逆止弁27、第1給水管部30a、第2給水管部30b、および第3給水管部30cを有している。減圧弁23は、第1給水管部30aの途中に設けられて、水道等の水源(図示せず)からの水圧を所定値に減じる。給水温度センサ25は、第1給水管部30aでの減圧弁23の上流側に設けられて、該第1給水管部30a内の水の温度を検知する。第1逆止弁27は、第2給水管部30bでの出水口側に配置されて、当該第2給水管部20bでの水の逆流を防止する。
【0017】
また、上記の第1給水管部30aは水源と貯湯タンク20とを繋ぐ。第2給水管部30bは、本発明でいう出水側が二股分岐した給水管路に相当し、減圧弁23の下流側で第1給水管部30aから分かれて該第1給水管部30aと一般給湯混合弁65および風呂給湯混合弁70の各々とを繋ぐ。第3給水管部30cは、減圧弁23の上流側で第1給水管部30aから分かれて該第1給水管部30aと一般給湯先150とを繋ぐ。第2給水管部30bでの二股分岐箇所の上流側に第1逆止弁27が設けられている。なお、図1には、一般給湯先150として1つの給湯栓が示されている。一般給湯先150には、サーモスタット付き混合水栓やシャワー等が接続されていてもよい。
【0018】
貯湯用循環管路40は、貯湯タンク20の下部からヒートポンプユニット10中の沸上げ用熱交換器を経由して貯湯タンク20の上部に達する管路であり、貯湯用送水ポンプ35、往き管40a、および戻り管40bを有している。貯湯用送水ポンプ35は往き管40aに設けられており、該往き管40aは貯湯タンク20の下部と上記沸上げ用熱交換器とを繋ぐ。戻り管40bは、上記沸上げ用熱交換器と貯湯タンク20の上部とを繋ぐ。
【0019】
給湯管路50は、本発明でいう出湯側が二股分岐した給湯管路に相当し、二股分岐箇所の上流側に第2逆止弁45を有している。この給湯管路50は、入湯側が貯湯タンク20の上部に接続され、二股分岐した出湯側での一方の流路が一般給湯混合弁65に、また他方の流路が風呂給湯混合弁70にそれぞれ接続されて、貯湯タンク20内の湯を一般給湯混合弁65と風呂給湯混合弁70とに導く。第2逆止弁45は、給湯管路50での上記分岐箇所の上流側に設けられている。
【0020】
膨張水排出管路60は、給湯管路50での入湯側の端部で該給湯管路50から分かれて排出口(図示せず)に接続されており、この膨張水排出管路60の途中に圧力逃し弁55が取り付けられている。圧力逃し弁55は、湯の沸上げにより貯湯タンク20内の湯水が体積膨張を起こして当該貯湯タンク20の内圧が所定圧力を超えたときに開弁し、体積膨張により生じた膨張水(余剰水)を膨張水排出管路60から排出口へと排出して貯湯タンク20の内圧過上昇を防止する。
【0021】
一般給湯混合弁65は電動式の弁であり、制御装置100により開度を調整されて、第2給水管部30bから供給される水と給湯管路50から供給される湯とを所定の混合比の下に混合する。同様に、風呂給湯混合弁70も電動式の弁であり、制御装置100により開度を調整されて、第2給水管部30bから供給される水と給湯管路50から供給される湯とを所定の混合比の下に混合する。これら一般給湯混合弁65と風呂給湯混合弁70とは、制御装置100により互いに別個に開度を制御することができるものであればよく、その構造は一体型、独立型等、適宜選定可能である。
【0022】
一般用給湯管路80は、一般用流量センサ73と一般用温度センサ75とを有しており、一般給湯混合弁65と一般給湯先150とを繋ぐ。一般用流量センサ73は一般用給湯管路80での流量を検知し、一般用温度センサ75は一般用給湯管路80内の湯水の温度を検知する。図示の例では、一般用流量センサ73の下流側に一般用温度センサ75が設けられている。
【0023】
風呂用給湯管路90は、電磁弁83と、風呂用流量センサ85と、風呂用温度センサ87とを有しており、風呂給湯混合弁70と浴槽160とを繋ぐ。電磁弁83は、制御装置100により開度を調整されて風呂用給湯管路90での流量を調節し、風呂用流量センサ85は風呂用給湯管路90での流量を検知し、風呂用温度センサ87は風呂用給湯管路90内の湯水の温度を検知する。図示の例では、電磁弁83と、風呂用流量センサ85と、風呂用温度センサ87とが風呂給湯混合弁70側からこの順番で設けられている。なお、浴槽160内には浴槽アダプタ155が取り付けられ、風呂用給湯管路90は当該浴槽アダプタ155に接続される。
【0024】
制御装置100は、リモートコントローラ120から受信した指令または情報と、タンク温度センサ20a、各沸上げ温度センサ(図示せず)、給水温度センサ25、一般用流量センサ73、一般用温度センサ75、風呂用流量センサ85、または風呂用温度センサ87の検知温度とに応じて、ヒートポンプユニット10、貯湯用送水ポンプ35、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、または電磁弁83の動作を制御する。
【0025】
給湯機本体110を構成する上述の構成要素のうち、給水管路30、貯湯用循環管路40、膨張水排出管路60、一般用給湯管路80、および風呂用給湯管路90をそれぞれ除いた残りの構成要素は、外装ケース105に納められている。給水管路30、貯湯用循環管路40、膨張水排出管路60、一般用給湯管路80、および風呂用給湯管路90の各々は、その一部が外装ケース105の外部にまで延在している。
【0026】
リモートコントローラ120は、複数の入力スイッチにより構成される操作部113と、液晶表示パネル等のフラットディスプレイパネルを用いて構成されて操作部113から入力された指令や情報、および制御装置100から受信した運転状況等の情報等を文字、図形、キャラクタ等で視覚表示する表示部115と、メッセージのアナウンスや警告音の再生等を行う報知部(図示せず)と備えている。当該リモートコントローラ120は、制御装置100に有線接続または無線接続されて、該制御装置100と通信する。
【0027】
図示の例では制御装置100に1つのリモートコントローラ120のみが接続されているが、制御装置100には1以上の所望数のリモートコントローラを接続することができる。また、リモートコントローラ120は台所や浴室等、所望の場所に設置可能である。
【0028】
上述の各構成要素を備えた貯湯式給湯機130は、給水管路30から貯湯タンク20に給水して該貯湯タンク20、貯湯用循環管路40、給湯管路50、一般用給湯管路80、および風呂用給湯管路90の各々が満水状態にされた後に使用に供され、貯湯タンク20内の水を湯に沸き上げる沸上げ運転、一般給湯先150への給湯運転、または浴槽160への給湯運転を適宜行う。
【0029】
沸上げ運転は、例えばユーザがリモートコントローラ120から沸上げ開始指令を入力すると、あるいはユーザがリモートコントローラ120から入力した沸上げ開始時刻になると、制御装置100による制御の下にヒートポンプユニット10および貯湯用送水ポンプ35が起動され、開始される。ユーザは、希望する沸上げ温度および沸上げ湯量を予めリモートコントローラ120から入力しておく。
【0030】
沸上げ運転が開始されると、制御装置100は、沸上げ湯量に対応した所定の沸上げ温度センサの検知温度を監視し、該検知温度が所定温度以上になると、上記沸上げ湯量以上の湯が貯湯タンク20に貯留されたと判断して沸上げ運転を停止させる。この間、貯湯タンク20の下部から貯湯用循環管路40の往き管40aに水が流入し、ヒートポンプユニット10内の沸上げ用熱交換器に通水されて該沸上げ用熱交換器で湯に沸き上げられる。沸上げ用熱交換器で沸き上げられた湯は、貯湯用循環管路40の戻り管40bを通って貯湯タンク20の上部から貯湯タンク20内に戻される。
【0031】
一方、一般給湯先150への給湯運転は、一般給湯先150をユーザが開栓して一般用流量センサ73が所定流量以上の水流を検知すると、制御装置100による制御の下に開始される。当該給湯運転では、タンク温度センサ20aの検知温度と、給水温度センサ25の検知温度と、ユーザがリモートコントローラ120から入力した給湯温度に係る情報とに基づき、制御装置100が一般給湯混合弁65の開度(給湯管路50側の弁開度および第2給水管部30b側の弁開度)を調整して、給湯管路50からの湯と第2給水管部30bからの水との混合比を調整する。そして、一般用温度センサ75の検知温度に基づいて制御装置100が一般給湯混合弁65の開度を繰り返しフィードバック制御して、一般給湯先150での給湯温度をユーザの設定温度に調整する。
【0032】
一般給湯先150への給湯運転は、ユーザが一般給湯先150を閉栓して一般用流量センサ73が所定流量以上の水流を検知しなくなると停止する。このとき、制御装置100は、一般給湯先150に同じ給湯温度で断続的に給湯するときでも給湯温度が安定するように、予め定められた時間(以下、「一般給湯待機時間」という)に亘って、一般給湯混合弁65での開度を上記の給湯温度に対応した開度(以下、「安定給湯開度」という)に保つ。当該一般給湯待機時間が経過すると、一般給湯混合弁65の開度を予め定められた初期開度に調整する。なお、図1においては、一般給湯先150への湯水の流れ方向を実線の矢印Aで示している。
【0033】
また、浴槽160への給湯運転は、ユーザがリモートコントローラ120から湯張り開始指令、差し湯指令、足し湯指令等、浴槽160への給湯(水である場合を含む)に係る指令を入力すると、制御装置100が電磁弁83に開指令を出して開始される。当該給湯運転では、タンク温度センサ20aの検知温度と、給水温度センサ25の検知温度と、ユーザがリモートコントローラ120から入力した湯張り温度、差し湯温度、足し湯温度等の温度情報に基づき、制御装置100が風呂給湯混合弁70の開度(給湯管路50側の弁開度および第2給水管部30b側の弁開度)を調整して、給湯管路50からの湯と第2給水管部30bからの水との混合比を調整する。そして、風呂用温度センサ87の検知温度に基づいて制御装置100が風呂給湯混合弁70の開度を繰り返しフィードバック制御して、浴槽160への給湯温度をユーザの設定温度に調整する。
【0034】
一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯するときには、風呂給湯混合弁70の開度に応じて、制御装置100が一般給湯混合弁65の開度を調整する。このときの一般給湯混合弁65の開度(以下、「指定待機開度」という)は、貯湯式給湯機130のメーカにより予め定められる。指定待機開度については、後に詳述する。
【0035】
浴槽160への給湯運転は、風呂用流量センサ85の検知結果が湯張り湯量、差し湯湯量、または足し湯湯量等に達すると、あるいはリモートコントローラ120から浴槽160への給湯の停止を指示する指令が入力されると、制御装置100が電磁弁83に閉指令を出して停止する。上記の湯張り湯量、差し湯湯量、足し湯湯量等の給湯量情報は、リモートコントローラ120からユーザにより予め入力される。図1においては、浴槽160への湯水の流れ方向を実線の矢印Bで示している。また、浴槽160内の浴水を参照符号160aで示している。
【0036】
上述のようにして一般給湯先150および浴槽160へ給湯運転を行う貯湯式給湯機130は、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯するときにおける一般給湯混合弁65の開度調整に特徴を有しているので、以下、制御装置100の構成および上記一般給湯混合弁65の開度調整について図2〜図6を参照して詳述する。
【0037】
図2は、図1に示した貯湯式給湯機での制御装置と該制御装置に接続された構成要素とを概略的に示すブロック図である。同図に示すように、貯湯式給湯機130(図1参照)の制御装置100は、送受信処理部91、制御部93、および記憶部95を有しており、ヒートポンプユニット10、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、貯湯用送水ポンプ35、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、一般用流量センサ73、一般用温度センサ75、電磁弁83、風呂用流量センサ85、風呂用温度センサ87、およびリモートコントローラ120に接続されている。図2では図示を省略しているが、制御装置100は、前述した沸上げ温度センサの各々にも接続されている。
【0038】
制御装置100を構成する上記の送受信処理部91は、ヒートポンプユニット10への指令の送信に係る処理、リモートコントローラ120からの指令や情報の受信および振り分けに係る処理、およびリモートコントローラ120への情報(例えば運転状況等)の送信に係る処理を行う。
【0039】
制御部93は、送受信処理部91が振り分けてきたリモートコントローラ120からの指令や情報と、貯湯式給湯機130を構成する各センサの検知結果とに基づいて、沸上げ運転および給湯運転を総括的に制御する。また、上記各センサの検知結果に基づいて貯湯式給湯機130の運転状況等に係る情報を纏め、送受信処理部91の動作を制御して当該情報をリモートコントローラ120宛に送信させる。これらの処理を行うために、制御部93は、沸上げ制御部93a、給湯制御部93b、および計時部93cを有している。
【0040】
上記の沸上げ制御部93aは、ユーザがリモートコントローラ120から入力して送受信処理部91により振り分けられてきた沸上げ開始時刻、沸上げ運転時の沸上げ温度、および沸上げ運転時の沸上げ湯量に係る各情報を記憶部95に格納する。そして、上記沸上げ開始時刻、沸上げ運転時の沸上げ温度、および沸上げ運転時の沸上げ湯量それぞれの情報と、各沸上げ温度センサ(図示せず)のうちの所定の温度センサの検知温度とを用いて、前述した沸上げ運転を制御する。
【0041】
一方、給湯制御部93bは、ユーザがリモートコントローラ120から入力して送受信処理部91により振り分けられてきた一般給湯先150(図1参照)への給湯温度と、浴槽160(図1参照)への給湯温度(湯張り温度、差し湯温度、足し湯温度)に係る情報とを記憶部95に格納する。また、ユーザがリモートコントローラ120から入力して送受信処理部91により振り分けられてきた浴槽160(図1参照)への給湯量(湯張り湯量や足し湯湯量等)に係る情報も記憶部95に格納する。
【0042】
当該給湯制御部93bは、上記の情報と、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、一般用流量センサ73、一般用温度センサ75、風呂用流量センサ85、または風呂用温度センサ87の検知結果とを用いて、前述した給湯運転を制御する。また、一般給湯先150への給湯が停止すると、計時部93cに計時を開始させる。そして、一般給湯先150への給湯停止後、前述した一般給湯待機時間が経過するまでの間に浴槽160に給湯するときには、風呂給湯混合弁70の開度に応じて一般給湯混合弁65の開度を調整して、一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に達する湯や水の回り込みを抑える。具体的には、風呂給湯混合弁70の開度と一般給湯混合弁65の安定給湯開度とに応じて一般給湯混合弁65の開度を前述の指定待機開度に調整して、一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に達する湯や水の回り込みを抑える。一般給湯待機時間が経過するまでの間に浴槽160に給湯が行われなかったときには、一般給湯混合弁65の開度を前述の初期開度に調整する。
【0043】
一般給湯混合弁65の指定待機開度および初期開度、ならびに上記の一般給湯待機時間については、貯湯式給湯機130のメーカにより予め定められて、これらの情報が記憶部95に格納される。また、一般給湯混合弁65の指定待機開度を変更させる契機となる風呂給湯混合弁70の開度に係る情報も、貯湯式給湯機130のメーカにより予め定められて記憶部95に格納される。以下、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯するときにおける一般給湯混合弁65の開度調整について、図3を参照して詳述する。
【0044】
図3は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける風呂給湯混合弁の開度と一般給湯混合弁の開度との対応関係の一例を示すグラフである。図示の例では、一般給湯混合弁65(図1参照)の開度(指定待機開度)として、中間開度よりも水側全開に近い第1指定待機開度γと、中間開度よりも湯側全開に近い第2指定待機開度δとが設定されている。第1指定待機開度γは、一般給湯混合弁65での水の混合比率が第1の設定値となる開度であり、第2指定待機開度δは、一般給湯混合弁65での水の混合比率が上記第1の設定値よりも低い第2の設定値となる開度である。
【0045】
一般給湯混合弁65の開度は、浴槽160(図1参照)への給湯開始時における風呂給湯混合弁70(図1参照)の開度が「β」未満のときには、制御装置100の給湯制御部93bにより第1指定待機開度γに調整され、浴槽160への給湯開始時における風呂給湯混合弁70の開度が「β」以上のときには、給湯制御部93bにより第2指定待機開度δに調整される。風呂給湯混合弁70の開度が「β」であるときの風呂給湯混合弁70での水の混合比率は、一般給湯混合弁65の指定待機開度を変更させる契機となる第1の混合比率に相当する。当該開度「β」および「第1の混合比率」の値は、貯湯式給湯機130(図1参照)のメーカにより予め定められて記憶部95(図2参照)に格納される。
【0046】
また、浴槽160への給湯温度を給湯制御部93bがフィードバック制御する過程で、風呂給湯混合弁70での水の混合比率が上記第1の混合比率を超える値から上記第1の混合比率以下の値に変化したときには、給湯制御部93bによって一般給湯混合弁65の開度が第1指定待機開度γから第2指定待機開度δに調整される。
【0047】
逆に、浴槽160への給湯温度を給湯制御部93bがフィードバック制御する過程で、風呂給湯混合弁70での水の混合比率が上記第1の混合比率以下の値から上記第1の混合比率を超える値に変化したときには、当該水の混合比率が第1の混合比率より高い第2の混合比率になるまでは、一般給湯混合弁65の開度が給湯制御部93bにより第2指定待機開度δに保たれる。そして、風呂給湯混合弁での水の混合比率が上記第2の混合比率を超えると、一般給湯混合弁65の開度が給湯制御部93bにより第1指定待機開度γに調整される。このように一般給湯混合弁65の指定待機開度を調整することにより、該一般給湯混合弁65の開度にハンチングが生じるのを防止する。
【0048】
なお、図3中に示す風呂給湯混合弁70での開度「α」での水の混合比率が上記第2の混合比率に相当する。これら開度「α」および第2の混合比率は、貯湯式給湯機130のメーカにより予め定められて記憶部95に格納される。
【0049】
貯湯式給湯機130は、風呂給湯混合弁70の開度に応じて一般給湯混合弁65の開度を給湯制御部93bにより上述のように調整することで、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯したときに湯や水が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に回り込んでしまうのを防止する。
【0050】
図4は、浴槽への給湯時における風呂給湯混合弁への湯や水の回り込みの一例を示す概略図である。同図は、一般給湯先150(図1参照)への給湯停止中に浴槽160(図1参照)に給湯したときに生じる湯や水の回り込みを示している。
【0051】
例えば、浴槽160内の浴水160a(図1参照)の温度を下げる(温くする)ために浴槽160へ水を供給するときには、風呂給湯混合弁70の開度が水側全開にされて該風呂給湯混合弁70の出口が大気開放状態になることから、給湯管路50内の湯との間で圧力差が生じる。このとき、風呂給湯混合弁70での湯側は閉弁されてはいるものの、一般給湯混合弁65での湯側の弁は該一般給湯混合弁65を安定給湯開度に保っていることから開状態になっている。
【0052】
そのため、図4中に一点鎖線の矢印BH2で示すように、給湯管路50からの湯が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に回り込み、風呂用給湯管路90に流入する。結果として、リモートコントローラ120(図1参照)から水の供給を指示したにも拘わらず浴槽160に温湯が供給されて、浴水160aがなかなか温くならないといった事態になることがある。
【0053】
同様のことが、浴水160aの温度を上げるために浴槽160に高温の差し湯を供給するときにも起こる。この場合には、図4中に破線の矢印BC2で示すように、第2給水管部30bからの水が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に回り込み、風呂用給湯管路90に流入する。なお、図4中の実線の矢印BH1は、給湯管路50から風呂給湯混合弁70に直接流入して風呂用給湯管路90に流出する湯の流れを示しており、実線の矢印BC1は、第2給水管部30bから風呂給湯混合弁70に直接流入して風呂用給湯管路90に流出する水の流れを示しており、参照符号「80」は一般用給湯管路を示している。
【0054】
図4に示したような湯の回り込みや水の回り込みは、例えば給湯管路50から第2給水管部30bへの水の流入および第2給水管部30bから給湯管路50への水の流入を逆止弁のようなもので遮断するといった方法でも防止可能である。ただし、機械的手段により湯や水の回り込みを防止した場合には、当該機械的手段が経年劣化にしたときに部品の交換が必要になったり、給湯機本体110(図1参照)の小型化を図り難くなったりする。また、上述した湯や水の回り込みは、一般給湯先150(図1参照)への給湯停止後に一般給湯混合弁65を水側全開または湯側全開にしても防止することができる。ただし、一般給湯混合弁65を水側全開または湯側全開にしておくと、一般給湯先150への次回の給湯時の初期に、給湯温度にボトムやピークが過渡的に生じて給湯温度が不安定になる。
【0055】
部品交換のコスト、給湯機本体110の小型化、一般給湯先150での給湯温度の安定性等を考慮すると、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯した際に生じる上述の湯や水の回り込みは、風呂給湯混合弁70の開度に応じて一般給湯混合弁65の開度を調整して防止することが好ましい。
【0056】
図5は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける風呂給湯混合弁の開度と一般給湯混合弁での開度と浴槽への給湯温度(風呂給湯温度)との関係の一例を示すグラフである。同図中の実線は、一般給湯混合弁65(図1参照)の開度を図3に示した第1指定待機開度γまたは第2指定待機開度δに調整して浴槽160へ給湯したときの風呂給湯混合弁70(図1参照)の開度と風呂給湯温度との関係を示している。また、同図中の一点鎖線は、一般給湯混合弁65の開度を中間開度にして浴槽160へ給湯したときの風呂給湯混合弁70の開度と風呂給湯温度との関係を示しており、同図中の二点鎖線は、一般給湯混合弁65の開度を水側全開または湯側全開にして浴槽160へ給湯したときの風呂給湯混合弁70の開度と風呂給湯温度との関係を示している。
【0057】
図5から明らかなように、風呂給湯温度を所定の温度に制御するうえからは、一般給湯混合弁65の開度を水側全開または湯側全開にしておくことが好ましいが、一般給湯混合弁65の開度をこのように制御すると、前述したように、一般給湯先150(図1参照)に断続的に給湯する際の次回の給湯時に給湯温度が不安定になる。浴槽160への給湯温度(風呂給湯温度)および一般給湯先150への給湯温度の各々を安定化させるという観点からは、一般給湯先150への給湯停止中に一般給湯混合弁65の開度を中間開度、水側全開、または湯側全開にして浴槽160への給湯を行うよりも、図3に示した第1指定待機開度γまたは第2指定待機開度δにして浴槽160への給湯を行う方が好ましい。
【0058】
勿論、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯するにあたって、給湯開始時に一般給湯混合弁65の開度を水側全開または湯側全開にし、浴槽160への給湯停止後に一般給湯混合弁65の開度を前述の安定給湯開度や初期開度に調整するという制御を行っても、浴槽160への給湯温度(風呂給湯温度)を安定化させることができる。
【0059】
図1に示した貯湯式給湯機130は、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯するときに、風呂給湯混合弁70の開度に応じて一般給湯混合弁65の開度を調整するので、一般給湯混合弁65と風呂給湯混合弁70とが互いに連通するように構成しても、浴槽160への給湯時に湯や水が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に回り込んでしまうのを防止することができる。したがって、一般給湯先150への給湯が停止されているときでも浴槽160への給湯温度を安定させ易い。一般給湯混合弁65の指定待機開度は、浴槽160への給湯温度および一般給湯先150への給湯温度それぞれの安定性、ならびに一般給湯混合弁65の性能等を勘案して適宜選定される。
【0060】
一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯するときにおける一般給湯混合弁65の開度を調整するための手順は、特に限定されるものではなく、種々の手順を採用することができる。以下、図1または図2で用いた参照符号を適宜引用しつつ図6を参照して、上記の手順の一例を具体的に説明する。
【0061】
図6は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯するときにおける一般給湯混合弁および風呂給湯混合弁それぞれの開度調整の手順の一例を示すフローチャートである。図示の例では、貯湯式給湯機130の制御装置100(図1参照)がステップS1〜S11の処理を繰り返し行って、一般給湯混合弁65および風呂給湯混合弁70(図1参照)それぞれの開度を制御する。
【0062】
最初に行われるステップS1は、一般給湯先150への給湯および浴槽160(図1参照)への給湯の各々が一定時間以上停止されている初期状態下で始められる。このステップS1では、一般用流量センサ73(図1参照)の検知結果に基づいて、一般給湯先150への給湯(以下、「一般給湯」と略記する)が行われているか否かを制御装置100の給湯制御部93b(図2参照)が判断する。当該ステップS1で一般給湯が行われていないと判断されたときには該ステップS1を繰り返し、一般給湯が行われていると判断されたときにはステップS2に進む。
【0063】
ステップS2では、記憶部95(図2参照)に格納されている上記給湯温度に係る情報と、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、および一般用温度センサ75(図1参照)それぞれの検知温度とを用いて、一般給湯先150への給湯温度がユーザによる設定温度となるように給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を調整する。
【0064】
次いで行われるステップS3では、一般用流量センサ73の検知結果に基づいて、一般給湯が停止されたか否かを給湯制御部93bが判断する。このステップS3で一般給湯が停止されていないと判断されたときにはステップS2に戻って該ステップS2以降を繰り返すことで一般給湯先150への給湯温度をフィードバック制御し、一般給湯が停止されたと判断されたときには、給湯制御部93bが計時部93c(図2参照)に計時を開始させてステップS4に進む。
【0065】
ステップS4では、記憶部95に格納されている一般給湯先150(図1参照)への給湯温度に係る情報に基づいて、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を安定給湯開度に調整する。あるいは、ステップS2で調整した一般給湯混合弁65の開度に係る情報を給湯制御部93bが記憶部95(図2参照)に格納し、該情報に基づいて、ステップS4で給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を安定給湯開度に調整するように貯湯式給湯機130(図1参照)を構成してもよい。
【0066】
次いで行われるステップS5では、一般給湯待機時間が経過したか否かを計時部93cの計時結果に基づいて給湯制御部93bが判断する。このステップS5で一般給湯待機時間が経過したと判断されたときには給湯制御部93bが計時部93cの計時結果をクリアしてステップS6に進み、一般給湯待機時間が経過していないと判断されたときにはステップS7に進む。
【0067】
ステップS6では、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を初期開度に調整して、一般給湯混合弁65の開度調整を一旦終了し、前述した初期状態に戻る。一方、ステップS7では、浴槽160への給湯(以下、「風呂給湯」と略記する)が行われているか否かを給湯制御部93bが判断する。この判断は、例えば給湯制御部93bが電磁弁83に開指令を出したか否かに基づいて行われる。当該ステップS7で風呂給湯が行われていないと判断されたときには後述するステップS11に進み、風呂給湯が行われていると判断されたときにはステップS8に進む。
【0068】
ステップS8では、浴槽160への給湯温度がユーザによる設定温度となるよう、記憶部95(図2参照)に格納されている浴槽160への給湯温度に係る情報と、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、および風呂用温度センサ87(図1参照)それぞれの検知温度とを用いて、給湯制御部93bが風呂給湯混合弁70の開度を調整する。
【0069】
次いで行われるステップS9では、風呂給湯混合弁70の開度と、記憶部95に格納されている指定待機開度に係る情報と、指定待機開度に対応する風呂給湯混合弁70の開度および該開度での水の混合比率に係る情報とに基づいて、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を指定待機開度に調整する。その結果として、湯や水が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70側に回り込んでしまうことが抑えられて、浴槽160への給湯温度が安定する。
【0070】
次いで行われるステップS10では、風呂給湯が停止されたか否かを給湯制御部93bが判断する。この判断は、例えば給湯制御部93bが電磁弁83に閉指令を出したか否かに基づいて行われる。当該ステップS10で風呂給湯が停止されていないと判断されたときにはステップS8に戻って該ステップS8以降を繰り返すことで浴槽160への給湯温度をフィードバック制御し、風呂給湯が停止されたと判断されたときには風呂給湯混合弁70の開度を初期状態に調整して前述のステップS4に戻り、該ステップS4以降を繰り返す。
【0071】
一方、前述したステップS7で風呂給湯が行われていないと判断されてステップS11に進んだときには、ステップS1におけるのと同様にして、一般給湯が行われているか否かを給湯制御部93bが判断する。このステップS11で一般給湯が行われていないと判断されたときにはステップS4に戻って該ステップS4以降を繰り返し、一般給湯が行われていると判断されたときにはステップS2に戻って該ステップS2以降を繰り返す。
【0072】
以上、本発明の貯湯式給湯機について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上記の形態に限定されるものではない。本発明の貯湯式給湯機は、貯湯タンク内の湯を出湯側が二股分岐した給湯管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給すると共に、水源からの水を出水側が二股分岐した給水管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給し、一般給湯混合弁から一般給湯先への給湯停止中に風呂給湯混合弁から浴槽に給湯するときには一般給湯混合弁の開度を調整して、上述した湯や水の回り込みを抑えるものであれば基本的によい。一般給湯混合弁の開度を調整して湯や水の回り込みを防止する機能以外は適宜変更可能である。
【0073】
例えば、水を湯に沸き上げる熱源機としては、ヒートポンプユニット以外に、電熱式のヒータやガス燃焼装置等を用いることもできる。熱源機は、その種類に応じて、貯湯タンクの外側または貯湯タンクの内側に配置される。また、貯湯タンクに貯留した湯を熱源として用いる熱交換器を設け、該熱交換器により浴槽や温水式床暖房装置で用いられて温度低下した湯を再加熱する機能を付加することもできる。
【0074】
一般給湯混合弁の開度を調整して湯や水の回り込みを防止する機能の具体的な設定についても、適宜変更可能である。例えば、実施の形態で説明した貯湯式給湯機は、一般給湯混合弁の指定待機開度が「γ」と「δ」の2種類のものであるが、当該指定待機開度の数は3以上の所望数とすることもできる。また、各指定待機開度は固定値に限定されるものではなく、タンク温度センサ20aの検知温度、給水温度センサ25の検知温度、および浴槽160(図1参照)への給湯温度等に応じて給湯制御部93b(図2参照)が演算により算出してもよい。
【0075】
また、実施の形態で説明した風呂給湯混合弁での水の混合比率「α」、「β」は、湯水の回り込みを抑えるという効果をより発揮するうえからは、例えば水側全開と湯側全開との中間となる開度位置を境にして「α」を水側全開寄りに設定し、「β」を湯側全開寄りに設定することが好ましい。実施の形態で説明した一般給湯混合弁の指定待機開度「γ」、「δ」の各々に関しても同様であり、水側全開と湯側全開との中間となる開度位置を境にして「γ」を水側全開寄りに設定し、「δ」を湯側全開寄りに設定することが好ましい。
【0076】
実施の形態では一般給湯待機時間が経過するまでの間に浴槽への給湯があったときにだけ一般給湯混合弁の開度を指定待機開度としたが、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯する場合は常に、一般給湯混合弁の開度を所定の指定待機開度に調整するように貯湯式給湯機を構成してもよい。本発明については、上述した以外にも種々の変形、修飾、組み合わせ等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の貯湯式給湯機は、家庭用および業務用の給湯機として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 ヒートポンプユニット(熱源機)
20 貯湯タンク
30 給水管路
30a 第1給水管部
30b 第2給水管部(出水側が二股分岐した給水管路)
30c 第3給水管部
40 貯湯用循環管路
50 給湯管路(出湯側が二股分岐した給湯管路)
65 一般給湯混合弁
70 風呂給湯混合弁
80 一般用給湯管路
90 風呂用給湯管路
93 制御部
93a 沸上げ制御部
93b 給湯制御部
93c 計時部
100 制御装置
110 給湯機本体
120 リモートコントローラ
130 貯湯式給湯機
150 一般給湯先
160 浴槽
γ 第1指定待機開度
δ 第2指定待機開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンク内の湯を出湯側が二股分岐した給湯管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給すると共に、水源からの水を出水側が二股分岐した給水管路により前記一般給湯混合弁と前記風呂給湯混合弁とに供給し、前記一般給湯混合弁および前記風呂給湯混合弁の開度を制御装置により別個に調整して、前記一般給湯混合弁から一般給湯先への給湯温度と前記風呂給湯混合弁から浴槽への給湯温度とを制御する貯湯式給湯機であって、
前記制御装置は、前記一般給湯先への給湯停止中に前記浴槽に給湯するときには、前記風呂給湯混合弁の開度に応じて前記一般給湯混合弁の開度を調整することを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記一般給湯先への給湯停止中に前記浴槽に給湯するにあたって前記風呂給湯混合弁での水の混合比率が湯の混合比率よりも高くなるように該風呂給湯混合弁の開度を調整するときには、前記一般給湯混合弁での水の混合比率が湯の混合比率よりも高くなるように該一般給湯混合弁の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記一般給湯先への給湯停止中に前記浴槽に給湯するにあたって前記風呂給湯混合弁での湯の混合比率が水の混合比率よりも高くなるように該風呂給湯混合弁の開度を調整するときには、前記一般給湯混合弁での湯の混合比率が水の混合比率よりも高くなるように該一般給湯混合弁の開度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記浴槽への給湯開始時に前記風呂給湯混合弁での水の混合比率が第1の混合比率より高くなるように該風呂給湯混合弁の開度を調整するときには、前記一般給湯混合弁での水の混合比率が第1の設定値となるように該一般給湯混合弁の開度を調整し、
前記浴槽への給湯開始時に前記風呂給湯混合弁での水の混合比率が前記第1の混合比率以下になるように該風呂給湯混合弁の開度を調整するときには、前記一般給湯混合弁での水の混合比率が前記第1の設定値よりも低い第2の設定値となるように該一般給湯混合弁の開度を調整し、
前記風呂給湯混合弁での水の混合比率が前記浴槽への給湯中に前記第1の混合比率より高い値から前記第1の混合比率以下の値に変化したときには、前記一般給湯混合弁の開度を前記第1の設定値に対応した開度から前記第2の設定値に対応した開度に調整し、
前記風呂給湯混合弁での水の混合比率が前記浴槽への給湯中に前記第1の混合比率以下の値から前記第1の混合比率より高い値に変化したときには、該水の混合比率が前記第1の混合比率より高い第2の混合比率になるまでは前記一般給湯混合弁の開度を前記第2の設定値に保ち、前記風呂給湯混合弁での水の混合比率が前記第2の混合比率以上になったときには前記一般給湯混合弁の開度を前記第1の設定値に対応した開度に調整する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記浴槽への給湯停止後に、前記一般給湯混合弁の開度を前記一般給湯先への給湯温度に対応した開度に調整すること特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175198(P2010−175198A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20470(P2009−20470)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】