説明

貴金属めっきを施したチタン又はチタン合金材料

【課題】高耐食性及び低接触抵抗が要求される用途に好適な貴金属めっきを施したチタン材を提供する。
【解決手段】Au、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群より選択される少なくとも1種以上の貴金属でチタン材の表面の一部又は全部を直接めっきしたチタン材であって、該貴金属めっきはチタン材表面上で粒状に存在し、該貴金属めっきを施したチタン材の表面上での該貴金属めっきの面積率が15〜95%であり、及び該貴金属めっきのチタン材表面上への付着量が0.01〜0.40mg/cm2以上であるチタン材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貴金属めっきを施したチタン又はチタン合金材料(以下「チタン材」という。)に関し、とりわけ耐食性及び低接触抵抗が要求される用途に好適な貴金属めっきを施したチタン材に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン材は高耐食性を有するという点で特に優れており、この特性を活かして今日では医療・健康、装飾、スポーツ・レジャー等の民生分野のほか、航空・宇宙、化学、電気、建築・土木、輸送及び軍事等の多くの産業分野で利用されている。一方、チタンは導電性が銅などと比べて低く、更には表面に絶縁性の不動態膜(酸化皮膜)を形成しやすいといった性質を有していることから接触抵抗が比較的高い。このため、チタン材は耐食用途がメインであり、導電性を要する用途にはこれまで用いられてこなかった。
ところが、近年、耐食性の厳しい環境下での導電用途が現れてチタンが注目を浴びている。このような要請に応えるために、接触抵抗が高いという弱点を補うと共に、更なる耐食性の向上を目的として金めっき等の貴金属めっきをチタン材の表面に施すことが有効な手段の一つと考えられる。
【0003】
しかしながら、今述べたようにチタン材は表面に酸化皮膜を形成しやすいといった性質を有しており、これがめっき層との密着性を低下させるため、チタン材表面に密着性の高いめっき皮膜を安定して形成することは難しかった。そこで、これまでチタン材へのめっきの密着性を向上させるための前処理が提案されている。
例えば、特開平3−47991号公報には、硝酸、塩酸、フッ酸等の酸性溶液中でエッチングを施した表面上にニッケル層の陰極めっきを施すことを特徴とする、耐火性金属元素を含有するチタンベース合金上に、ニッケル層の電気めっきを施す方法が記載されている。
また、特開平06−093494号公報には、チタン材を、ギ酸、酢酸、又はこれらの塩の内の、少なくとも1種を含有した電解浴中で、10〜300Vの電圧で陽極酸化処理することを特徴とするめっきの前処理が記載されている。該文献では具体例として銅めっき層を電気めっきにより形成している。
【0004】
金めっきを始めとする貴金属めっきは古くから装飾用に利用されてきた。今日では電気伝導性、低接触抵抗、耐食性、半田付け性、耐摩耗性、平滑性及び/又は光反射性等を付与する目的で各種の工業用途に利用されており、特に電子工業の分野では重宝されている。ところが、金めっきをチタン材に施す技術については本発明者による調査からはあまり発見されず、以下のような文献が見出される程度である。
例えば、めっき法によるチタン材への金めっき技術を具体的に開示したものではないが、特開2001−29777号公報では燃料電池のセパレータの耐久性の改良及び低コスト化を目的として、アノード側又はカソード側導電性セパレータの少なくとも一方の表面にAu等の貴金属元素被膜を配置した金属板を開示しており、その金属板の材料の一つとしてチタンが開示されている。該文献ではAuをチタン上にrfスパッタ法により島状に形成し、該島状の個々の貴金属元素被膜の面積を0.04mm2とし、それら全体の占める割合を面積比で50%とした実施例が記載されている。
また、これもチタン材への金めっき技術に関するものではないが、特開2004−296381号公報ではニッケルめっきによる下地処理を行わずにステンレス鋼板の表面に金が面積率2.3〜94%で被覆されていることを特徴とする燃料電池用金属製セパレータが開示されている。金の被覆はめっき法により施すことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−47991号公報
【特許文献2】特開平06−093494号公報
【特許文献3】特開2001−29777号公報
【特許文献4】特開2004−296381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの文献において、チタン材と金めっきの関係については充分に記載されておらず、特にチタン材に金めっきを施したときの耐食性と接触抵抗の関係については未だに詳細に解明されていない。チタン材は高耐食性のほか、低密度及び高強度といったような特性も有していることから今後も多くの産業分野への利用が期待される分野であり、耐食性及び接触抵抗の観点からチタン材と金めっき等の貴金属めっきとの関係を
明らかにし、これに基づいて高耐食性及び低接触抵抗を有するチタン材を提案しておくことはチタン材の応用分野の可能性を広げる上で有用であろう。
また金をはじめとする貴金属は、コストが非常に高価であり、高耐食性及び低接触抵抗を有するチタン材を提案する上で、必要最小限の貴金属めっき量を明確にすることは、チタン材の応用分野の可能性を更に広げる上で有用であろう。
そこで、本発明は高耐食性及び低接触抵抗が要求される用途に好適な貴金属めっきを施したチタン材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、(1)チタン材表面にNiめっき等の下地めっきを施さずに直接に貴金属めっきをすること、(2)該貴金属をチタン材表面上で粒状に存在させること、(3)該貴金属のチタン材表面上での面積率を15〜95%とすること、(4)該貴金属のチタン材表面上への付着量を0.01〜0.40mg/cm2とすることの総ての要件を具備することで高めっき密着性、高耐食性及び低接触抵抗を併せ持つ貴金属めっきを施したチタン材が得られることを見出した。
【0008】
上記の知見に基づいて完成された本発明は一側面において、Au、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群より選択される少なくとも1種以上の貴金属でチタン材の表面の一部又は全部を直接めっきしたチタン材であって、該貴金属はチタン材表面上で粒状に存在し、該貴金属めっきを施したチタン材の表面部分上での該貴金属めっきの面積率が15〜95%であり、及び該貴金属のチタン材表面上への付着量が0.01〜0.40mg/cm2であるチタン材である。
【0009】
本発明の一実施形態においては、前記貴金属はAu−Pd合金である。
【0010】
本発明に係るチタン材は一実施形態において、pH=2の硫酸溶液に温度90℃で168時間浸すことにより行った耐食試験前後の接触抵抗の比(試験後の平均接触抵抗/試験前の平均接触抵抗)が2.0以下である。
【0011】
本発明は別の一側面において、めっき処理が電気めっきにより行われることを特徴とする上記チタン材の製造方法である。
【0012】
本発明は別の一側面において、めっき処理後に不活性雰囲気で加熱処理することを特徴とする上記チタン材の製造方法である。
【0013】
また、本発明は一実施形態において、上記チタン材を用いた燃料電池用セパレータである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高耐食性及び低接触抵抗が要求される用途に好適な貴金属めっきを施したチタン材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
チタン材
本発明に用いることのできるチタン材の組成は特に制限を受けるものではなく、用途に応じて適宜選択すれば良く、例えば、純チタン(例えばJIS 1種〜3種)、耐食性や強度を向上させるために元素を添加したチタン合金も使用可能である。この中でも、めっき性、耐食性及び接触抵抗の観点からは純チタンが好ましい。
【0016】
本発明に係るチタン材の形状は特に制限されるものではないが、例えば板状、繊維状、スポンジ状とすることができ、これらに更に加工を加えて所望の形状に成形することもできる。
また、本発明の一実施形態においては、二枚の板状チタン材で他の金属材料を挟んで形成したクラッド材とすることもできる。斯かるクラッド材も本発明においてはチタン材に含まれるものとする。特に、チタン材よりも廉価な金属材料、例えばステンレス、鉄、Al及びCu等と組み合わせることで低コスト化を図ることができる。
【0017】
良好な貴金属めっき被膜を形成するためには、チタン材に対して脱脂、酸洗及び活性化処理等の各種の前処理を行っておくのが好ましい。この際、チタン材では表面に安定な酸化皮膜(TiO2)を形成しやすいことからこれを充分に除去しておくことが必要であり、前処理には賢明な選択が要請される。特に、本発明が目的とするチタン材への貴金属めっきのためには、脱脂処理においては水素ぜい性の点に留意すべきであり、この観点から脱脂処理は水素発生を伴う電解脱脂よりは浸漬脱脂により行うのが好ましい。酸洗においては脱脂処理後の試験片の中和の点に留意すべきであり、活性化処理においては不動態皮膜の除去の点に留意すべきであり、フッ酸系により処理をするのが好ましい。
【0018】
貴金属めっき
本発明ではAu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群より選択される少なくとも1種以上の貴金属でチタン材の表面をめっきする。本発明の有利な一実施形態ではめっき被膜中に少なくともAuが含まれ、好ましくはAuが50〜100質量%、より好ましくはAuが80〜100質量%含まれる。例えばAu:90〜100質量%、Pd:0〜10質量%であるようなAuめっき又はAu−Pd合金めっきである。このような二種以上の元素を所望の重量比で含むめっき被膜は、例えばめっき浴中での各貴金属イオン濃度の比、電流密度、攪拌条件等を適宜調節することで得られる。
【0019】
本発明では上記貴金属をチタン材表面上に直接めっきする。すなわち、本発明ではチタン材上にNi等の下地めっきを施すことなく貴金属めっきを施す。これは高耐食性の理由による。また、チタン材表面に貴金属めっきを施す箇所は用途に応じて適宜選択することができ、チタン材表面の一部又は全部とすることができる。但し、ここでいう「一部又は全部」とは肉眼で判断される概念であり、SEM等によって微視的に観察して判断されるものではない。
【0020】
チタン材に貴金属めっきを行う方法としては、例えば真空蒸着、物理蒸着(PVD)及び化学蒸着(CVD)、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき、並びに電気めっき及び無電解めっき等の湿式めっきが挙げられるが、電気めっきが好ましい。付着量や面積率の制御容易性の観点及びコスト面(特に設備費用)から有利なためである。電気めっきによる表面処理は、乾式めっきのように雰囲気を真空にする必要がなく、成膜速度が速いといった利点もある。
【0021】
本発明者はチタン材表面の貴金属めっき被膜を微視的に観察したときに、これら貴金属がチタン材表面で粒径が数十〜数百nmの微細な粒状となって存在し得ることを見出した。そして、めっき密着性、耐食性及び接触抵抗はこの粒状のめっき粒子の付着状態に大きく左右されることを見出した。めっきの付着量を増加していけばやがてチタン材表面全体が隙間無くめっきで被覆されることになるが、金の付着量が多くなると密着性にも悪影響を与える。上記特性をバランス良く向上させるためには、耐食性及び接触抵抗に影響を与えない一定の未被覆部分の存在が必要である。
具体的には、貴金属めっきを施したチタン材の表面上で貴金属が占める面積の割合(面積率)はSEMによる微視的な観察で15%よりも低いと高耐食性及び低接触抵抗が充分に得られないため15〜95%とすべきであるが、面積率をあまり高くしても耐食性の効果が飽和する傾向にあること及びコスト高になることから好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜80%、より好ましくは50〜60%である。また、該貴金属めっきのチタン材表面上への付着量は0.01〜0.40mg/cm、好ましくは0.01〜0.20mg/cm、更に好ましくは0.01〜0.15mg/cm、より好ましくは0.01〜0.10mg/cm、更により好ましくは0.01〜0.05mg/cm、もっとも好ましくは0.01〜0.03mg/cmある。また、付着量が上記範囲を超えるとコストの観点からも好ましくない。上記範囲の面積率及び付着量とすることで良好な耐食性と接触抵抗と共にめっき被膜の良好な密着性を図ることができる。
【0022】
本発明に係る貴金属めっきを施したチタン材の具体的な製造条件を電気めっき法を用いた場合を例にして説明する。本発明に使用可能なめっき浴はシアン浴(シアン化第一金系、シアン化第二金系)や非シアン浴(無機亜硫酸金系、有機亜硫酸金系)が挙げられるが、密着性の観点からは非シアン浴が好ましい。
面積率及び付着量は、陽極と陰極の極間距離、電流密度、めっき時間、温度及び攪拌方法等を調節することにより制御することができる。極間距離は100mm以下とするのが好ましく、可能なかぎり極間距離は短くした方が、めっきのつきまわりの観点で好ましい。電流密度は亜硫酸浴では0.1〜0.5A/dm2とするのが好ましい。0.5A/dm2以上にしてしまうとめっきがヤケてしまう場合がある。めっき時間は電流密度に依存するが、めっき付着量の観点で、可能なかぎり短いほうが好ましく、通常は数秒から数分であり、例えば40秒以下である。温度は亜硫酸浴では50〜60℃とするのが好ましい。攪拌は、攪拌ムラをなくすために、カソードロッカーを使用することが好ましい。本発明の範囲内の面積率及び付着量を達成するためには特に極間距離及び攪拌の点に留意する必要がある。
【0023】
貴金属めっきをチタン材表面に施した後は、Ar、He、Ne等の不活性雰囲気で加熱処理するのが密着性の観点で好ましい。この加熱処理においては温度を250℃以上、好ましくは300〜350℃とし、時間を数分以上、好ましくは30〜40分程度とすることが密着性及び接触抵抗の観点でより有利である。
【0024】
本発明に係る貴金属めっきを施したチタン材は一実施形態において、pH=2の硫酸溶液に温度90℃で168時間浸すことにより行った耐食試験前後の接触抵抗の比(試験後の平均接触抵抗/試験前の平均接触抵抗)が2.0以下であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.3以下である。一例としては1.2〜2.0である。
接触抵抗の測定は以下の2通りの方法で行うことができる。一つには、本発明に係る貴金属めっきを施したチタン材と金を40nmの厚みで施したニッケル材とを面接触させてロードセルで10kg/cmの荷重を全面に加え、電流密度100mA/cmで電流を流す4端子法であり、もう一つは本発明に係る貴金属めっきを施したチタン材の1箇所に点荷重を加えて行う4端子法である。
両測定方法を比較すると、サンプル全面に荷重を加える前者の方法の方がサンプルの1カ所に点荷重を加える後者の方法よりも低い接触抵抗が得られるため(特に面積率の低い場合にその傾向が強い。)、後者の方法で耐食試験後に所望の接触抵抗が得られるのであれば前者の方法で行ったとしても当然に所望の接触抵抗が得られる。
【実施例】
【0025】
本発明及びその利点をより理解するために以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
試験片の材料
すべての実施例及び比較例において、チタン材として厚さ0.1mmの純チタン(JIS 1種)の板状試験片を用いた。
【0027】
前処理
表1に記載の試験条件に従って、比較例2を除く各試験片に対して前処理として浸漬脱脂→水洗→酸洗→水洗→活性化処理→水洗をこの順に行った。
【0028】
【表1】

【0029】
Au−Pd合金めっき
次に、前処理を施した各試験片(比較例2を除く)の表面に対してAu−Pd合金めっきを電気めっきにより行った。めっき浴条件は以下の通りである。浴組成はすべて同一とした。
浴 種:亜硫酸浴
浴組成:Au4.0g/L、Pd2.0g/L
p H:9.05〜9.10
ボーメ:11.5
陽 極:Pt−Ti
浴 温:50℃
【0030】
その他のめっき条件は表2の通りである。
【0031】
【表2】

【0032】
後処理
その後、Au−Pd合金めっきを施した各試験片(比較例2を除く)に対してアルゴン雰囲気で加熱処理を350℃で30分間行った。
【0033】
結果
図1に実施例1〜4の試験片表面のAu−Pd合金めっき粒子の状態を示すSEM像を例示的に示す。めっきを施した各試験片(比較例2を除く)に対して、平均径(nm)、面積率(%)、付着量(mg/cm2)及び密着性を調べた。結果を表3に示す。
平均径は、任意に3箇所選択した50,000倍のSEM像(JEOL社製型式JSM−5410)の視野(1.5×2.0μm)から平均的と思われる粒子を10個選択してその算術平均を求めた。
面積率は、上記SEM像の写真から画像解析ソフトを用いて上記3箇所の平均として求めた。
付着量は、得られた試験片を王水に溶解させ、その溶液中に含まれるAu及びPdの重量を誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)(Seiko Instruments社製型式SPS300)を用いて定量分析し、その値から算出した。
密着性は、得られた各試験片の金めっき表面に2mm間隔で碁盤の目を罫書き、テープ剥離試験実施した。また、各試験片を任意に180°曲げて元の状態に戻し、曲げ部のテープ剥離試験を行った。剥離が全くない場合を○とし、一部でもある場合には×とした。
なお、めっき被膜の電着組成をエネルギー分散形X線分光法(EDS)で調べた結果、実施例1は、Au96質量%、Pd4質量%程度であった。
【0034】
【表3】

【0035】
また、各試験片(密着性の悪かった比較例3を除く)に対して耐食試験を行い、試験前後の接触抵抗を調べた。比較例2は金めっきを施さない例であり、耐食性及び接触抵抗の基準となるものである。結果を表4に示す。耐食試験は、30×50mmのサイズの各試験片にpH=2の液量350ccの硫酸水溶液に温度90℃で168時間(1週間)浸すことにより行った。
比較例1、実施例1の接触抵抗の測定は図3に示すようにサンプル全面に荷重を加える方法にて行った。50×50mmのサンプル上に、ニッケルに金を40nmめっきした同サイズのサンプルを接触させて、ロードセルで10kg/cm2の荷重を加え、電流密度100mA/cm2で電流を流した時の接触抵抗を測定した。一方、実施例1の参考値、実施例2〜5、比較例2の接触抵抗の測定は図2に示すような4端子法で測定した。電気接点シミュレータ(山崎精機研究所製のCRS−113Au)を用いて各試験片3箇所(1箇所は1mm)測定した。
また、耐食試験で使用した硫酸溶液中のTi濃度からTi溶出量をそれぞれ測定した。具体的には耐食試験後に200ccの液を分取し、50ccに濃縮して、ICP分析(Seiko Instruments製型式SPS300)により求めた。
接触抵抗及び耐食試験の結果は、pH=2の硫酸水溶液に温度90℃で168時間浸すことにより行った耐食試験前後の接触抵抗の比(試験後の平均接触抵抗/試験前の平均接触抵抗)が2.0以下であり、耐食試験によりTiの溶出量がない場合を○とし、それ以外の場合を×とした。
【0036】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る貴金属めっきを施したチタン材はチタン材の本来的特性である低密度、高強度、高耐食性及び高融点等に加え、更に高耐食性及び低接触抵抗を兼備したものと言うことができる。従って、本発明に係る貴金属めっきが施されたチタン材は高耐食性及び低接触抵抗が要求される用途に特に好適であり、例えば燃料電池用セパレータ、チタン電極、耐食性接地体等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1〜4のチタン材表面のめっき粒子の状態を示すSEM像である。
【図2】4端子法による接触抵抗の測定方法を示す概略図である。
【図3】サンプル全面に荷重を加えることによる接触抵抗の測定方法を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Au、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群より選択される少なくとも1種以上の貴金属でチタン材の表面の一部又は全部を直接めっきしたチタン材であって、該貴金属はチタン材表面上で粒状に存在し、該貴金属めっきを施したチタン材の表面上での該貴金属の面積率が15〜95%であり、及び該貴金属のチタン材表面上への付着量が0.01〜0.40mg/cm2以上であるチタン材。
【請求項2】
前記貴金属がAu−Pd合金である請求項1に記載のチタン材。
【請求項3】
pH=2の硫酸水溶液に温度90℃で168時間浸すことにより行った耐食試験前後の接触抵抗の比(試験後の平均接触抵抗/試験前の平均接触抵抗)が2.0以下である、請求項1又は2に記載のチタン材(但し、接触抵抗は該チタン材と金を40nmの厚みで施したニッケル材とを面接触させてロードセルで10kg/cm2の荷重を全面に加え、電流密度100mA/cm2で電流を流す条件で測定する)。
【請求項4】
pH=2の硫酸水溶液に温度90℃で168時間浸すことにより行った耐食試験前後の接触抵抗の比(試験後の平均接触抵抗/試験前の平均接触抵抗)が2.0以下である、請求項1又は2に記載のチタン材(但し、接触抵抗は該チタン材の1箇所に点荷重を加えて行う4端子法で測定する。)。
【請求項5】
めっき処理が電気めっきにより行われることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のチタン材の製造方法。
【請求項6】
めっき処理後に不活性雰囲気で加熱処理することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のチタン材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか一項に記載のチタン材を用いた燃料電池用セパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−146250(P2007−146250A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343961(P2005−343961)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】