説明

貼付剤組成物

【課題】難水溶性薬剤の配合安定性に優れ、かゆみやかぶれといった皮膚への刺激性を緩和することができる貼付剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20質量%、(b)多価アルコールを0.1〜50質量%、及び、(c)非ステロイド性消炎鎮痛剤の有効成分を0.01〜5.0質量%、を含有することを特徴とする貼付剤組成物。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし、1<(a+c)×kである。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤組成物、特にその配合安定性や皮膚刺激性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
インドメタシンに代表される非ステロイド性消炎鎮痛剤は優れた効果を有し、整形外科領域で一般的に使用されている。しかしながら、非ステロイド性消炎鎮痛剤を経口投与した場合には消化器障害を起こすことから、その副作用の軽減を図るべく、軟膏剤、ローション剤、貼付剤等の経皮投与製剤、特に貼付剤の形態での開発がさかんに行われている。
非ステロイド性消炎鎮痛剤は、一般的に難水溶性薬剤であり、特に水系の膏体中に安定配合させるのが困難で、結晶状態で分散配合させている。このために、膏体中で、薬剤の局在化が生じてしまい、求める薬理効果が認められないことがしばしば生じていた。
膏体中に、薬剤を安定配合させるための方法としては、サリチル酸エチレングリコールといった極性溶剤に薬剤を溶解させた溶液を、非イオン性界面活性剤からなる乳化剤を用いて配合させる提案がなされている(例えば特許文献1)。しかし、この提案では極性溶剤および非イオン性界面活性剤を併用するため、製造工程が煩雑となってしまう。さらに、かゆみやかぶれといった皮膚に対する刺激性の緩和には十分ではなかった。かゆみやかぶれの主な原因としては、貼付剤により皮膚が閉塞されてしまうことが挙げられる。そのため、汗の蒸散性や通気性が低下し、かゆみやかぶれといった皮膚刺激性につながる。
そこで、薬剤の安定配合なおかつ皮膚に対する刺激性を緩和する方法としては、直鎖型ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテル誘導体を配合した提案もなされている(例えば特許文献2および3)。しかし、これらの提案では、皮膚に対する刺激性の緩和には優れているものの薬剤の配合安定性に関しては、必ずしも満足のいく効果が得られてはいなかった。
つまり、難水溶性薬剤である非ステロイド性消炎鎮痛剤の配合安定性に優れ、かゆみやかぶれといった皮膚に対する刺激性が緩和されるような貼付剤組成物の提案はなされていなかった。
【特許文献1】特開2001−122767号公報
【特許文献2】特開2006−1860号公報
【特許文献3】特開2004−292394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の問題点に鑑み行なわれたものであり、その目的は難水溶性薬剤の配合安定性に優れ、かゆみやかぶれといった皮膚への刺激性を緩和することができる貼付剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を行なった結果、非ステロイド性消炎鎮痛剤を薬効成分とする貼付剤組成物において、特定構造を有するブロック型アルキレンオキシド誘導体を、多価アルコールと共に配合することにより、非ステロイド性消炎鎮痛剤の配合安定性に優れ、皮膚への刺激性の低い貼付剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明にかかる貼付剤組成物は、(a)下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20質量%、(b)多価アルコールを0.1〜50質量%、及び、(c)非ステロイド性消炎鎮痛剤の有効成分を0.01〜5.0質量%、を含有することを特徴とする。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし、1<(a+c)×kである。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【0006】
また、前記貼付剤組成物は、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、AOがオキシブチレン基であることが好適である。
さらに、前記貼付剤組成物は、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、aが0であることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定構造を有するブロック型アルキレンオキシド誘導体を、多価アルコールおよび非ステロイド性消炎鎮痛剤と共に配合することにより、前記非ステロイド性消炎鎮痛剤の配合安定性が高く、使用時において皮膚に対してかゆみやかぶれを起こしにくい、非常に有用な貼付剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明にかかる台所用液体洗浄剤組成物は、(a)特定構造を有するブロック型アルキレンオキシド誘導体、(b)多価アルコール、及び、(c)非ステロイド系消炎鎮痛剤をそれぞれ特定量含むものである。以下、前記必須成分について順次詳述する。
【0009】
(a)ブロック型アルキレンオキシド誘導体
本発明においては、下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体が適用し得る。
(化2)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
【0010】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であり、kは前記多価アルコールの水酸基数であり3〜6である。
3〜6個の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えばk=3であるグリセリン、トリメチロールプロパン、k=4であるエリスリトール、ペンタエリスリトール、k=5であるキシリトール、k=6であるソルビトール、イノシトールが挙げられる。
すなわち、本発明にかかる貼付剤組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、前記の3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの1種または2種以上の混合物の水酸基を除いた残基を基本骨格とする。
【0011】
本発明において、特に、Yが3〜4個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であることが好ましく、すなわち、3≦k≦4を満たすことが好適である。このような多価アルコールとして、具体的にはグリセリン、ペンタエリスリトールが挙げられる。kが2以下もしくは7以上であると、配合安定性を損なうことがあり好ましくない。
【0012】
EOは、炭素数2のオキシエチレン基である。AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、さらに好ましくはオキシブチレン基である。また、AOは1種または2種以上を用いることができる。
【0013】
b×kはAOの平均付加モル数の総数であり、1≦b×k≦100、好ましくは5≦b×k≦70、より好ましくは5≦b×k≦50である。a×kおよびc×kはEOの平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、0≦c×k≦100である。a×kとして、好ましくは0≦a×k≦30、より好ましくは0≦a×k≦20である。また、c×kとして、好ましくは0≦c×k≦70、より好ましくは5≦c×k≦50である。また、前記式(I)中の全オキシエチレン基の平均付加モル数(a+c)×kは1より大きく、好ましくは1<(a+c)×k≦200であり、さらに好ましくは10≦(a+c)×k≦140である。AOは本発明にかかるブロック型アルキレンオキシド誘導体において疎水性部位となり、b×kが0であると、配合安定性に劣る傾向にあり、100を超えると、皮膚刺激性の緩和が不十分となることがあり好ましくない。また、(a+c)×kが0であると、薬効成分を安定配合できない傾向にあり好ましくない。
【0014】
前記式(I)中のAOとEOの合計に対する前記式(I)中の全EOの割合は10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。前記割合が10質量%より小さいと、薬効成分を安定配合できないばかりか、皮膚刺激性の改善が十分でない。80質量%より大きいと、薬効成分の安定配合に劣る傾向にあり好ましくない。
また、AOとEOの付加形態はブロック状であり、付加順序は式中のYに対して、(AO)−(EO)の順、(EO)−(AO)の順、(EO)−(AO)−(EO)の順のいずれであってもよい。ここで、(AO)−(EO)はa=0、(EO)−(AO)はc=0に相当する。本発明においては、式中のYに対して(AO)−(EO)の順、つまりa=0であることが特に好ましい。
【0015】
前記式(I)において、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、これは薬効成分を安定配合し、且つ皮膚への刺激性を緩和するために必須である。このような炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、本発明においては特にメチル基、エチル基であることが好ましい。炭素数が5より大きいと、皮膚刺激性の緩和が不十分である可能性があり好ましくない。また、Rが水素原子であると、薬効成分の配合安定性を損なうばかりか、皮膚への刺激性の緩和も不十分となるため好ましくない。
また、本発明にかかる貼付剤組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Rは1分子中、同一であっても異なっていてもよく、1分子中において同一のRを有するブロック型アルキレンオキシド誘導体1種、または異なるRを有する2種以上の混合物であってもよい。
【0016】
本発明にかかる貼付剤組成物に配合されるアルキレンオキシド誘導体としては、具体的にはPOB(30)POE(30)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリメチルエーテル、POB(17)POE(28)グリセリルトリメチルエーテル、POB(27)POE(45)グリセリルトリメチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリメチルエーテル、POB(22)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(19)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(40)POE(80)グリセリルトリメチルエーテル、POB(80)POE(40)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリエチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリプロピルエーテル、POE(30)POP(30)グリセリルトリメチルエーテル、POE(35)POP(40)グリセリルトリメチルエーテル、POE(41)POP(48)グリセリルトリメチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下、このように略して記載することがある。
【0017】
本発明にかかる貼付剤組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物に、エチレンオキシドおよび炭素数3〜6のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル反応させることによって得られる。
【0018】
以上のようにして得られるブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量としては、本発明にかかる貼付剤組成物全量に対して0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜30質量%である。前記配合量が0.01質量%に満たないと、皮膚刺激性が十分に緩和されず好ましくない。たま、配合量が50質量%を超えると、安定配合が困難となる傾向にあり好ましくない。
【0019】
(b)多価アルコール
本発明に適用し得る多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエリレングリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの四価アルコール、キシリトールなどの五価アルコール、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの六価アルコール、グルコース、マンノース、ショ糖、ソルビタン、トレハロース、アルキルグリコシドなどの糖類、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンなどの重合物、およびこれら多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトールである。
本発明にかかる貼付剤組成物における多価アルコールの配合量は、組成物全量に対して0.1〜50質量%であり、好ましくは3〜30重量%である。前記配合量が0.1質量%に満たないと、かゆみやかぶれといった皮膚刺激性が十分に緩和されず好ましくない。また、50質量%を超えて配合すると、配合安定性に劣る場合があり好ましくない。
【0020】
(c)非ステロイド性消炎鎮痛剤
本発明に適用し得る非ステロイド性消炎鎮痛剤としては、例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ピロキシカム、フェルビナククイブプロフェン、スプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、フェノプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、サリチル酸、ジフル二サル、フルフェナム酸、メフェナム酸、アルクロフェナク、ジクロフェナク、フェンブフェン、フェルビナク、オキサプロジン、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、チアプロフェン、プラノプロフェン、ロキソプロフェン等が挙げられ、1種もしくは2種以上を組合せて配合することができる。本発明においては、特にインドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ピロキシカムを用いることが好ましい。
本発明の貼付剤組成物における非ステロイド系消炎鎮痛剤の配合量は、組成物全量に対し0.01〜5.0重量%程度であり、好ましくは0.1〜3.0重量%程度である。前記配合量が0.01重量%に満たないと消炎鎮痛効果が十分に発揮されないことがあり、5.0重量%を超えて配合しても一定以上の消炎鎮痛効果は得られない。
【0021】
本発明にかかる貼付剤組成物は、以上の必須成分(a)〜(c)を含むものであれば、その剤形に特に制限はなく、例えば、パップ剤、硬膏剤などの製剤として得ることができる。また、本発明の貼付剤組成物には、上記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲内において、通常貼付剤組成物に配合される成分を剤形に応じて配合することができる。
例えばパップ剤においては、粘着剤、可塑剤、架橋剤、賦形剤、水、必要に応じて界面活性剤などを用いて膏体を形成することができる。
粘着剤としてはポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム等の水溶性高分子化合物および天然ゴムやSBR(スチレンブタジエンゴム)、SIS(スチレンイソプレンブロック共重合体ゴム)、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴムなどの合成ゴムが使用される。
可塑剤としてはミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル、ラノリン、流動パラフィン、ポリブチレンなどが使用される。
架橋剤としては水酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが使用される。
賦形剤としては、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸などが使用される。
界面活性剤としはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが使用される。
【0022】
また、硬膏剤においては、粘着剤、粘着付与剤、賦形剤、可塑剤など用いて膏体を形成することができる。
粘着剤としては天然ゴムやSBR、SIS、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴムなどの合成ゴムが使用される。また、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤、シリコーンゴムなどのシリコン系粘着剤なども使用される。
粘着付与剤としてはロジンエステルなどが使用される。
賦形剤としてはカオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸などが使用される。
可塑剤としてはミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルなどの脂肪酸エステル、ラノリン、流動パラフィン、ポリブチレン等が使用される。
【0023】
さらに、上記成分に加えて、佐薬としてカンフル、メントール、ハッカ油、ビタミンEアセテート、黄柏、楊梅皮等が、pH調製剤として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が安定化剤としてはジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどが配合できる。
本発明の貼付剤組成物の調製方法としては、上記必須成分および必要に応じて他成分を加えて、よく練り混ぜペースト状とする。これを織布など支持体に塗布し、必要に応じてポリプロピレン等のプラスチックフィルムを被覆することにより得られる。
【0024】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、配合量については特に断りのない限り、質量%で示す。
【実施例1】
【0025】
下記表2に示す成分および配合量で、貼付剤組成物(実施例1〜5、比較例1〜7)を次のように調製し、その特性を評価した。
<貼付剤組成物(パップ剤)の調製方法>
ポリアクリル酸、アルキレンオキシド誘導体(下記a成分)、カルボキシビニルポリマー、ケイ酸アルミニウムに精製水30%を加えて溶解した。これにポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、多価アルコール(b成分)、インドメタシン(c成分)、ポリアクリル酸ナトリウムを均一に分散した液を加えて均一に混合し、酒石酸を加えて混合した後、精製水を加えて全量100とし、均一に混合してパップ基材とした。この膏体を均一の厚さに塗布した後、ポリプロピレンフィルムで被覆してパップ剤とした。
【0026】
<a成分>
下記表2におけるa成分として、下記表1に示す構造の化合物a−1〜a−12をそれぞれ用いた。a−1〜a−10のY、a×k、b×k、c×k、AO、EO、Rは、下記式(I)における基および数値を表す。なお、表1のYは各物質から水酸基を除いた残基を示し、EOwt%はAO及びEOの合計に対するEOの割合を示す。また、AOはオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、BOはオキシブチレン基を表す。
(化3)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
【0027】
(表1)

【0028】
表2中の各サンプルの評価は、以下の評価基準にしたがって行った。評価結果も表2に併せて示す。
<配合安定性>
得られたパップ剤について、ポリプロピレンフィルムを被覆した状態で、気密状態にて50℃、40℃、25℃、0℃に3ヶ月間保管した後の外観を以下の基準にて目視にて評価した。○以上を合格と判断した。
◎:調製時と変らない。
○:わずかに析出物が認められるが、均一性は保っている。
×:析出物が認められ、一部不均一となっている。
××:析出物が認められ、全体的に不均一となっている。
【0029】
<皮膚刺激性(かゆみ)>
3cm×3cmのパップ剤試料を前腕内側部に貼付し、試料が剥がれないように前腕をサポーターで覆った。この状態を維持し、10時間経過後のかゆみに関して評価した。評価は、男女合計20名のパネラーに対して、以下の基準にて評価し、○以上を合格とした。
◎:16名以上が、かゆみがないと判断。
○:12〜15名が、かゆみがないと判断。
×:7〜11名が、かゆみがないと判断。
××:6名以下が、かゆみがないと判断。
<皮膚刺激性(かぶれ)>
前記のかゆみ試験において、10時間経過後に、パップ剤を剥離した。剥離した直後の皮膚の様子を外観に観察した。評価基準は以下の通りとし、20名のパネラーの平均値が0.3以下を合格と判断した。
2:紅斑が認められる。
1:わずかに紅斑が認められる。
0:まったく異常が認められない。
【0030】
(表2)

【0031】
本発明のパップ剤を用いた実施例1〜5では、全ての温度において優れた配合安定性を示し、また、かゆみやかぶれに基づいた皮膚刺激性の評価も非常に高いものであった。
一方、EOを含有しない化合物a−6を配合した比較例1は、すべての温度で配合安定性が悪く、また、皮膚刺激性にも著しく劣るものであった。末端が水酸基である化合物a−7を配合した比較例2は、50℃、40℃および25℃での配合安定性が悪く、かぶれの緩和に劣っていた。ヘキシル基を有する化合物a−8を配合した比較例3では、かゆみおよびかぶれの緩和に劣り、AOを含有しない化合物a−9を配合した比較例4では、すべての温度での配合安定性に劣っていた。トレハロース骨格を有する化合物a−10を配合した比較例5は、50℃および40℃での配合安定性が低いものであった。
また、直鎖型のエチレンオキシド、プロピレンオキシドランダム共重合体のジメチルエーテルである化合物a−11を配合した比較例6では、50℃および40℃での配合安定性に劣り、直鎖型のエチレンオキシド、プロピレンオキシドブロック共重合体のジメチルエーテルである化合物a−12を配合した比較例7では、50℃および40℃での配合安定性が劣っていた。
以上より、実施例1〜5のパップ剤はいずれも、比較例1〜7に比べ、薬剤の配合安定性、かゆみおよびかぶれといった皮膚刺激性の緩和に優れた効果を発揮することが明らかになった。
したがって、(a)特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体、(b)多価アルコール、及び、(c)非ステロイド性消炎鎮痛剤の有効成分を適量配合することにより、配合安定性が著しく高く、且つかゆみおよびかぶれの緩和に優れた貼付剤組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20質量%、
(b)多価アルコールを0.1〜50質量%、及び、
(c)非ステロイド性消炎鎮痛剤の有効成分を0.01〜5.0質量%、
を含有することを特徴とする貼付剤組成物。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし、1<(a+c)×kである。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、AOがオキシブチレン基であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤組成物。
【請求項3】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、aが0であることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付剤組成物。

【公開番号】特開2009−107999(P2009−107999A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284089(P2007−284089)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】