説明

資源循環型施設

【課題】プラズマを利用した化学反応装置で大気中の有害物質を無害無臭化し、反応生成物を用途に応じて有効利用することのできる資源循環型施設を提供する。
【解決手段】吸引された大気中の有害物質の各種成分を吸着させる前段処理機構、吸引された有害物質中の除去対象である特定物質を吸着する吸着機構、この特定物質の吸着量が所定量に達した際に当該特定物質を離脱させる離脱機構及び離脱された特定物質をプラズマ分解処理するプラズマ分解機構とよりなる有害物質の分解浄化装置を、該有害物質の発生源或いは施設への大気の取り込み口に配置し、該分解浄化装置の機構の可動によって得られた各種反応生成物を当該施設又は施設外での有効的なものとして利用することのできる自己完結型に連続可動させることを特徴とする有害物質を分解浄化して有効材料とする資源循環型施設。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用する化学反応により大気中に存在する有害物質、特に炭化水素系物質を分解し、無害無臭の物質に変換する装置を備え、それら装置によって生じた反応生成物質を有効利用できる資源循環型施設に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人口が一極集中し、建造物は高層化し、数多くのマンションやビル、病院等の各種施設が建設されている。それに伴い、施設の環境の悪化には著しいものがある。また、同様に、池、湖、河川及び海等の外的環境においても汚染に著しいものがあり、施設の内外を問わず環境が悪化している。上記池や河川等の浄化のためには各種浄化施設が建設されている。上記各種施設は、各種の有害物質に曝されることが多く、また、日常生活が行なわれるマンション等では悪臭を伴う生ゴミが大量に発生している。それら有害物質は、増加の一途をたどっている。上記有害物質を簡便に浄化処理して無害無臭の物質に変換し、且つ変換された反応生成物を単に廃棄することなく有効な用途に利用することで、資源の有効利用を促進させることが地球環境上の急務となっている。
【0003】
上記有害物質を処理する手段として、微生物や化学触媒或いはプラズマにより分解処理する装置などが知られている。
【0004】
従来の微生物のみを利用した処理手段として、悪臭の原因となる物質、例えば生ゴミ、をオガクズ等の水分調整材と共に発酵槽内に入れ、これらをゆっくり撹拌して十分な酸素を供給し水分調整材に生息する微生物により生ゴミを発酵分解し、有効な用途となる堆肥に変化させているものがある。しかし、微生物の酸化還元処理能力は小さいため、大量の悪臭を短時間に処理するには不向きであった。また、微生物は供給される生ゴミを栄養源とできるものだけが増殖するが、条件が悪くなると微生物が死滅して全く消臭機能がなくなってしまうという欠点があった。
【0005】
また、化学触媒を利用する脱臭装置は、その性質上あらゆる悪臭因子に対して触媒機能を発揮するということができず、悪臭の原因物質が多岐にわたる場合には一部の悪臭が残存してしまうという欠点があった。また、臭気を吸着して除去する脱臭装置では、吸着材が飽和するとその都度交換する必要がありメンテナンスに欠点があった。一方、臭気ガスを分解する装置として、光触媒及び白金燃焼触媒を利用するものがあるが、少なくとも紫外線ランプやヒーターが必要であり装置が高価であった。しかも、いずれの場合も初期段階では高性能であるが、時間が経過するにつれ触媒の劣化が進んでしまうという欠点があった。また、これらの装置では脱臭及び分解無害化を同時に行うことができなかった。
【0006】
一方、特許文献1に開示されているような生ゴミ処理機内でプラズマを発生させて臭気を分解除去するプラズマ法による脱臭装置、特許文献2に開示されているようなプラズマ分解によるPACT装置、特許文献3に開示されているような有機化合物をプラズマ分解して水素及び一酸化炭素を生成する技術等が開発されている。このシステムは単一の原因化合物に対しては非常に有効であるが、バイオマスにおける複雑混合ガス系では有害物質を生成する危険性がある。これは、生ゴミ処理機やバイオトイレ内の湿度が高いことによるプラズマ効率の劣化や、悪臭成分内に存在するアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタンの同時処理による有害物質の副生成が原因であると考えられている。実際、プラズマ法を用いたバイオトイレでは、脱臭はできても硫酸アンモニウム(硫安)を生成してしまうという事例報告がある。また、硫化水素の単独処理過程で硫酸が生成されたり、アンモニアの分解処理過程で発生する硝酸とアンモニアから硝酸アンモニウム(硝安)が生成されたりする危険性があり、従来その分解無害化が必要であると考えられてきた。しかし、上記硫安及び硝安は肥料として利用することができることから、プラズマ分解時に生成する硫安及び硝安を安全かつ効率的に剥離貯蔵できれば、分解無害化するための余分な装置及び方法が不要になるだけでなく資源の有効利用が可能となるものである。
【0007】
また、従来、大気中の汚れた空気を浄化するための空気清浄装置としては、特許文献4に開示されているように、例えばガス状塩基性不純物や有機不純物等の多種のガス状不純物を一括して除去し得る有機酸添着の空気浄化フィルタを使用した技術がある。すなわちこの空気浄化フィルタは、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、合成ゼオライト等の無機物の粉末に有機酸を添着した吸着剤を、タルク、カオリン鉱物、ベントナイト等のバインダで支持体に固着して成るものである。
【0008】
更に、特許文献5に開示されているように、異なる種類の抗菌剤を別々の繊維に添加し、それら繊維を織り合わせて成る安定した抗菌効果と樹脂物性を有するエアフィルタが提供されている。また、その他の空気清浄装置として、酸化チタン等の光触媒を使用した光酸化分解法、拡散クラスタ法、紫外線ランプによるイオン発生分解法等を採用したものや、サイクロン集塵機等がある。
【0009】
更に、特許文献6に示されているように、排ガス中に含まれる特定物質を吸脱着ユニットに吸着させ、当該吸脱着ユニットに離脱用キャリアガスを導入して前記吸着された特定物質の離脱を行うと共に、前記離脱した特定物質を取り込んでなる離脱用キャリアガスを放電分解処理ユニットに導入して放電分解処理を行う動作を順次繰り返す排ガス処理方法なる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2001−079343号公報
【特許文献2】特開2001−300297号公報
【特許文献3】特開2004−111137号公報
【特許文献4】特許第3323787号公報
【特許文献5】特許第2765927号公報
【特許文献6】特開2004−81999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献4、5に示されるような従来のフィルタ類は全て多種のガス状不純物を吸着するのみであるため、所定量に吸着した後にはこれらフィルタ類を新規なものと交換するというメンテナンスが必要となり、しかも使用後のフィルタ類はその殆どが使い捨てであり、リサイクルさせることは不可能であった。また、フィルタ自体の寿命も短いため、使用に際し短期間で容易に劣化し、有害物質の空気清浄装置自体を自己完結型に連続可動させることが非常に困難なものとなっていた。
【0011】
また、特許文献6においては、例えば産業廃棄物による排ガス中に含まれる特定の化学物質である、例えばノックス、ソックス、一酸化炭素、二酸化炭素等の種々の有害ガスを吸脱着工程と放電分解処理工程との繰り返しにより処理するものであるが、これら有毒ガスに加えて、例えばタバコ等に含まれている一酸化炭素、シアン化水素、二酸化窒素等の毒性分、及びアンモニア、アセトアルデヒド、酢酸等の臭い成分、更にはC−H系、C−H−O系等の温暖化成分それぞれを同時に処理することが不可能であった。
【0012】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、上記大気中の有害物質増加の問題を解決すべくプラズマを利用した化学反応装置でそれらを無害無臭化し、それらによって生じた反応生成物を用途に応じて有効利用することができる資源循環型施設を提供するものである。また、フィルタ類をリサイクル可能とすることで新規交換等のメンテナンスを不要とし、しかも当該施設に設ける空気清浄装置自体を自己完結型に連続可動させることができ、特にタバコを含め臭い成分、毒性分、温暖化成分等の全ての成分を自己完結型に除去・分解処理できるものとした有害物質の分解浄化装置を備えた資源循環型施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る資源循環型施設にあっては、吸引された大気中の有害物質の各種成分を吸着させる前段処理機構、吸引された有害物質中の除去対象である特定物質を吸着する吸着機構、この特定物質の吸着量が所定量に達した際に当該特定物質を離脱させる離脱機構及び離脱された特定物質をプラズマ分解処理するプラズマ分解機構とよりなる有害物質の分解浄化装置を、該有害物質の発生源或いは施設への大気の取り込み口に配置し、該分解浄化装置の機構の可動によって得られた各種反応生成物を当該施設又は施設外での有効的なものとして利用することのできる自己完結型に連続可動させることを特徴とする。
【0014】
また、シロッコファンによって吸引された有害物質の各種成分を吸着させる前段処理機構としての前段フィルタ、吸引された有害物質中の除去対象である特定物質を吸着及び離脱可能とした吸着機構としての吸脱着材、該吸脱着材に吸着された特定物質を熱流によって離脱させる離脱機構としてのヒーター及び該吸脱着材から離脱された特定物質を放電によってプラズマ分解処理するプラズマ分解機構としてのプラズマ化学反応装置とを備えて成る有害物質の分解浄化装置を備えた資源循環型施設を特徴とする。
【0015】
更に、上記吸脱着材として、一酸化炭素を選択的に吸脱着可能な繊維に活性炭を担持して成るACFを使用して成る資源循環型施設を特徴とする。
【0016】
また、上記吸脱着材として、二酸化炭素を吸脱着可能なリチウム系セラミックスを使用して成る資源循環型施設を特徴とする。
【0017】
更に、上記吸脱着材として、吸引側よりACF及びリチウム系セラミックスを併用して成る資源循環型施設を特徴とする。
【0018】
また、上記プラズマ化学反応装置は、中心部のファンの周囲に環状のスリット電極を配置して成るファン構造とした資源循環型施設を特徴とする。
【0019】
更に、上記スリット電極の近傍には、ガスの種類に応じた触媒金属を配置して成る資源循環型施設を特徴とする。
【0020】
また、一酸化炭素の付着によりインピーダンスが変化する半導体素子であるCOセンサ、若しくは光ファイバによる発光検出装置をプラズマ化学反応装置の前段及び後段に配置させた資源循環型施設を特徴とする。
【0021】
更に、プラズマ分解機構により、特定物質を水素、一酸化炭素、亜酸化窒素等に分解し、水素は燃料として回収し、一酸化炭素は二酸化炭素に変化させて施設内外の菜園における光合成の材料、施設の断熱材及び非常事態時の消火材として利用し、亜酸化窒素は医療用の麻酔等に利用してなる資源循環型施設を特徴とする。
【0022】
本発明に係る資源循環型施設の具体的な手段として、従来はプラズマ処理の弱点として考えられていた硫安及び硝安生成過程を積極的に利用する。プラズマ分解にはPACT装置(特許文献1)を用いた。PACT装置はプラズマ発生電極に触媒金属を用いる簡易かつコンパクトな方法で、従来のプラズマ法に比べて分解効率が格段に高く、小型化も容易である。
【0023】
まず、大気中に含まれる有害物質の硫安及び硝安の原料となるアンモニア、硫化水素及び水分等を吸着除去せずにPACT装置に導入し、中心電極及び表面電極間の放電によりプラズマ分解する。
【0024】
PACT装置では、有害物質の臭気ガスに含まれる有機ガスが二酸化炭素及び水に分解されると同時に硫安及び硝安が生成される。生成した硫安及び硝安は中心電極の表面に付着する。未反応のガスはPACT装置に再導入して反応させることもできるし、そのまま放出することもできる。ここで、反応効率を高めるため、PACT装置への導入前に化学触媒を用いてアンモニア、硫化水素、水分等を選択吸着しておき、他の物質の分解無害化処理終了後に加熱脱着してPACT装置に導入するように装置を構成することも可能である。
【0025】
中心電極表面に生成した硫安及び硝安を、機械的或いは電気的に剥離する。PACT装置の下部に反応生成物貯蔵部を設置して硫安及び硝安を回収する。剥離時に粉末状になった硫安及び硝安は、当該施設或いは施設外に運ばれて農作物等の肥料に混ぜて有効利用される。
【0026】
上記硫安及び硝安が不要な場合には、PACT装置の前段にフィルタを配置することによってアンモニア、硫化水素、水分等を吸着除去すればよい。前段吸着部で吸着されなかった有害ガスを、PACT装置内のプラズマ分解処理部に導入する。PACT装置による分解後に発生するオゾンや硫黄などの副生成物の処理は、活性炭を含む後段処理部を設置することにより行うことができるが、オゾンには殺菌作用があるので植物等の育成に有効利用することも可能である。
【0027】
有害ガスは主に炭素、水素、酸素からなる有機化合物で、加えるプラズマエネルギにより元素の分解の程度を制御することができる。有機化合物をプラズマ分解すると、水素及び一酸化炭素が生成されることが知られている(特許文献3)。発生した水素は、燃料電池へと利用可能である。また、一酸化炭素は酸化して容易に二酸化炭素になるが、二酸化炭素は断熱効果に優れており当該施設の壁面の断熱や温室等に利用することが可能である。
【0028】
更に、従来の各施設における窓ガラスには断熱効果をもたらすためにアルゴンガスが用いられているが、熱伝導率は二酸化炭素のほうが小さいので、この二酸化炭素を利用した窓ガラスは、アルゴンガスより保温性は高くなる。また、火災の時には、消火器だけでなく窓ガラスを割ることで該窓ガラスに封印されている二酸化炭素を排出させて消火することができる。
【0029】
以上のように構成された本発明に係る資源循環型施設にあって、前段処理機構における前段フィルタは、シロッコファンによって吸引されたガス中の有害物質を吸着させる。また、吸着機構、離脱機構それぞれに使用されるACFよりなる吸脱着材は、特定物質として一酸化炭素を吸着し、リチウム系セラミックスによる吸脱着材は、シロッコファンによって吸引された排ガス中の除去対象である特定物質として二酸化炭素を吸着させる。そして、ヒーターは、この熱流による加熱によって吸着されている一酸化炭素を離脱させ、プラズマ分解機構におけるプラズマ化学反応装置側に導入させる。
プラズマ化学反応装置としては、例えばプラズマと触媒の両効果を時空間的に相乗させる化学反応器である、例えばファンモーター型もしくは標準チューブ型等の汎用PACTが使用され、これによれば、処理対象ガスは触媒効力のある金属表面電極間に生成する非平衡プラズマと接触し、このプラズマ励起と触媒活性の相乗効果で処理対象ガスは分解される。
中心部のファンの周囲に環状のスリット電極を配置して成るファン構造のプラズマ化学反応装置は、スリット電極の外周に排ガス中の除去対象である特定物質の反応生成物をリング状に付着させて剥離可能にさせると共に中心部のファンは有害物質の流量調節を可能にさせる。
また、このスリット電極は、電極間距離、誘電体層の厚み、印加電流、周波数等の制御によって任意のプラズマを当該スリット電極の外周に発生させる。
更に、スリット電極の近傍に配置させた触媒金属は、スリット電極の外周におけるガスの種類に応じた反応生成物の反応効率を大幅に向上させる。しかも、電極表面に触媒が存在しないため、電極表面は消耗しても処理能力が低下せず、完全消失した時のみ交換されるものとなるため、反応効率を向上させるパワーの強いアーク放電を利用可能にさせる。
COセンサは、一酸化炭素のみの検出及び存在量の同定を可能にさせると共に、光ファイバによる発光検出装置は、プラズマにより発光する物質であればどんな物質でも検出及び存在量の同定を可能にさせる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、大気中の有害物質の分解無害化にプラズマ放電を利用したPACT装置を用いることで、安全、安価、かつ高効率に有害物質の分解処理を実現できる。また反応生成物は肥料や光合成の原料等に利用され、資源を循環させて有効利用することができる。
【0031】
本発明におけるPACT装置は有機化合物の分解も行うことができるため、動植物から発生するエチレン等の有機ガスを水素燃料電池用の水素及び断熱材用の二酸化炭素に分解し、それぞれの用途で有効利用することができる。
【0032】
また、フィルタ類をリサイクル可能とすることで新規交換等のメンテナンスを不要とし、しかも空気清浄装置自体を自己完結型に連続可動させることができる。
【0033】
すなわちこれは、本発明に係る資源循環型施設が、吸引された有害物質中の各種成分を吸着させる前段処理機構と、吸引された有害物質中の除去対象である特定物質を吸着する吸着機構と、この特定物質の吸着量が所定量に達した際に当該特定物質を熱流によって離脱させる離脱機構と、離脱された特定物質をプラズマ分解処理するプラズマ分解機構との各機構の可動によって得られた各種反応生成物を有効的なものとして利用することのできる自己完結型に連続可動させるからであり、これにより、フィルタ類の新規交換等のメンテナンスを不要としたオンラインによる分解浄化システムを容易に構築することができる。例えばタバコ等の臭い成分、毒性分、温暖化成分等の全ての成分を除去・分解処理する自己完結型の分解浄化システムの施設を容易に構築することができる。
【0034】
また、シロッコファンによって吸引された有害物質中の各種成分を吸着させる前段フィルタと、有害物質中の除去対象である特定物質を吸着及び離脱可能とした吸脱着材と、吸脱着材に吸着された特定物質を熱流によって離脱させるヒーターと、吸脱着材から離脱された特定物質を放電によってプラズマ分解処理するプラズマ化学反応装置とを備えて成るので、空気清浄装置自体を自己完結型に連続可動させることが可能となるため、悪臭等の有毒ガス、自動車等の排気ガスの浄化の他、特に長時間営業されるパチンコ店でのタバコの煙等の汚れた空気を確実に浄化することができる。特に、タバコ等の臭い成分、毒性分、温暖化成分等の全ての成分を自己完結型に分解処理することが可能となった。
【0035】
上記吸脱着材として、一酸化炭素を選択的に吸脱着可能な、繊維に活性炭を担持して成るACF(Active Carbon Fiber)を使用して成るので、ガス中の除去対象である特定物質としての一酸化炭素を容易に分解浄化処理することができる。
【0036】
吸脱着材としては、二酸化炭素を吸脱着可能なリチウム系セラミックスを使用しているので、排ガス中の除去対象である特定物質としての二酸化炭素を容易に分解浄化処理することができる。
【0037】
また、プラズマ化学反応装置としては、例えばプラズマと触媒の両効果を時空間的に相乗させる化学反応器である、例えばファンモーター型もしくは標準チューブ型等の汎用PACTが使用されるため、処理対象ガスは触媒効力のある金属表面電極間に生成する非平衡プラズマと接触し、このプラズマ励起と触媒活性の相乗効果によって処理対象ガスを迅速且つ効率良く分解することができる。
【0038】
また、プラズマ化学反応装置は、中心部のファンの周囲に環状のスリット電極を配置して成るファン構造としたので、従来では個別対応されていた有害物質の種類、濃度、流速等の変化に十分に対応できるものとなり、プラズマ分解が容易に行えるようになった。更に、スリット電極を使用することでプラズマ分解後の反応生成物の剥離を容易に行うことが可能となった。
【0039】
また、スリット電極の近傍に、排ガスの種類に応じた触媒金属を配置することができるので、スリット電極の外周における排ガスの種類に応じた反応生成物の反応効率を大幅に向上させることができる。しかも触媒金属の挿入や変更等の作業も容易となるため、有害物質の種類や濃度等に応じてプラズマと触媒の時空間的共存或いは非共存のどちらにも対応できる。また、電極表面に触媒が存在しないため、触媒の消耗を気にせず反応効率の高いハイパワーの放電を利用することが可能となった。
【0040】
一酸化炭素の付着によりインピーダンスが変化する半導体素子であるCOセンサ、若しくは光ファイバによる発光検出装置をプラズマ化学反応装置の前段及び後段に配置させたので、有害物質の分解に加えて一酸化炭素量から有害物質量(TVOC)の同定が可能となり、環境汚染が低減されるだけでなく健康に優しい安全な製品作りを推進でき、しかも環境汚染に対する意識を高めることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明に係る資源循環型施設を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。本発明における施設の全体図を図1(a)に示す。施設1の屋上等の風当りの良好な場所に風車及びプラズマ化学反応装置Aを設置する。当該場所より大気中のNO、SO、CO、COを装置Aより取り込み、下記するように各種成分を分解し、有効利用へと導くものである。その際、風車は、PACT改質のため等のエネルギ源として利用される。上記大気中の有害物質を捕捉して有効的なものへと利用することができるが、以下、生ゴミから生じる有害物質に沿って説明する。資源循環型施設1の居住者や使用者等から出される生ゴミは、バイオマスを利用した各施設の発酵槽2へ生ゴミの移動する配管3に従って導入される。発酵槽2にはバイオ菌の導入管4に従ってバイオ菌を随時導入し、分解効率を低下させないようにしておく。ここで、発酵槽2は個別設置でもよいしシステムキッチンに組み込まれていてもよい。また、ダストシュート等を利用することによって発酵槽2を各施設の個別対応でなく屋外に一括設置することも可能である。
【0042】
発酵後に排出されるガスを、反応ガスの流路5に沿ってPACT改質装置6に導入する。もし硝安及び硫安を肥料として利用する場合にはガスを直接PACT改質装置6に導入すればよいし、利用しない場合にはPACT改質装置6の前段にアンモニア、硫化水素等のフィルタを設置すればよい。
【0043】
上記硝安及び硫安等を含め本発明で得られた固形成分は、肥料等の目的で使用するため貯留槽に貯めておくことができる。また、PACT改質装置6に導入されたガスは、水素及び一酸化炭素になるまで分解される。水素は燃料或いは燃料電池の原料として利用できるので同様にストックして回収する。一酸化炭素は大気中の酸素により容易に酸化されて二酸化炭素になり、二酸化炭素の流路7に沿って施設内の菜園8に導入される。菜園8は太陽光が当たりやすい場所、例えば屋上等に配置しておく。そのため、発生した二酸化炭素は資源循環型施設1の窓9を通ってから菜園8に導入されるようにした。これは、従来の各施設の窓には断熱材としてアルゴンガスが封印されて利用されているが断熱効果は二酸化炭素のほうが高く、また万が一当該施設に火災が発生した時には該窓9のガラスを割れば二酸化炭素が充満して消火効果も得られるためである。
【0044】
菜園8では、太陽光及び二酸化炭素により光合成が活発に行われる。ここで、太陽光を直接当てずにフィルム等を利用してカラーリングし、例えば朝は青色で夕方は赤色、というように、植物毎、時間毎に照射する色を変えることによって、色艶や糖度等が向上することが知られているが、同時に最適な二酸化炭素量が存在するといわれている。本発明では太陽光のカラーリングと同時に、導入する二酸化炭素量の制御を行い、最適な菜園環境を実現している。また、太陽光発電パネル10を屋上に設置して電源供給や給湯等を補助するとともに、パネルを回転型にし、常時太陽に面するようにしておく。また、パネルの裏側等、発電に使用しない部位には広告等の宣伝板にすることもできる。
【0045】
光合成により酸素が放出される。また、植物からはエチレン等の有機ガスも発生する。それらのガスは発生ガスの流路11に沿ってオゾン発生用PACT装置12に導入され、プラズマ分解によってエチレンは水素及び二酸化炭素に、酸素はオゾンになる。オゾンは殺菌作用があるので、オゾンの流路13に沿って該菜園8に戻され、室内の殺菌を行う。もし菜園8に戻さない場合にはオゾン発生用PACT装置12の後段に活性炭等のフィルタを設置すればよい。また、最終的な生成物は無害無臭の物質になっており、反応生成物の流路14に従って下水道等に放出することもできる。
【0046】
上記図1(a)は、主として施設1内で利用するシステムについて説明したが、図1(b)は、該施設1で得られた各種成分を様々な用途に使用する具体例を示したものである。
図1(b)に示すように、上記施設1内でストックされた肥料は、屋外での植物の育成にも利用され、大気から生成したNOは、例えば病院におけるラーフィングガスとして利用される。また、CHは、NOと結び付いてCHOH、Nとなり、該CHOHは2H+COとなり、車輌等の水素燃料として、COはCOとOとしてケミカルプラントの材料として利用される。
更に、川、池、湖及び海等に含まれるダイオキシンは、本発明の施設1、例えば各種浄化施設において、図1(c)に示す透析膜中のDNA水溶液による公知の手段によりダイオキシンを濃縮し、濃縮された水溶液を気化器付PACTにより気化した後、上記同様、ガス成分に分解できるようにしている。
【実施例】
【0047】
以下、実施例について図面を参照して説明すると、図2において示される符号101は、例えば生ゴミから発生する悪臭等の有毒ガス、自動車等の排気ガス、パチンコ店でのタバコの煙等の大気中の汚れた空気を浄化するための有害物質の分解浄化装置を備えた資源循環型施設を構成する装置本体である。上記装置本体101は、図2、図3に示すように、通常のフェパフィルタ、タバコ等の煙中の粒子や粉塵、更にはアンモニア分子等を吸着させるための吸着フィルタ等の前段フィルタ102を備えた吸気開口部103に配している。該吸気開口部103を通して排ガスを装置本体101内部に吸引する。該装置本体101の前面に設けた自動開閉蓋104の裏面側に前段フィルタ102を設けても良い。上部の自動換気開口部106から浄化後の空気を排出するために、オゾンによって脱臭を行う後段処理としての脱臭用オゾン発生用高圧電源107を備えて成る例えばシロッコファン等の換気ファン108を装置本体101に備えている。
【0048】
この換気ファン108の上流側には、該換気ファン108のファン吸引力によって装置本体101内部へ吸引された排ガス中の除去対象である有害物質を吸着及び離脱可能とする吸脱着材109を収容するための吸脱着材収容部110を設けている。そして、吸脱着材109に吸着された有害物質を所定温度の熱流の炙り出しによって離脱させるよう該吸脱着材収容部110の側面部の内壁には、図3(a)に示すように脱着温度が約85℃〜90℃程度に構成されたバンドヒーターを付設して成るヒーター装置111を配し、吸脱着材109から離脱された特定物質を放電によってプラズマ分解処理するよう吸脱着材収容部110の他端側面部にはプラズマ化学反応装置112を設けている。
【0049】
また、装置本体101には、吸気開口部103及び換気開口部106の各々に設けた自動開閉蓋104、105の不図示の開閉駆動部と、換気ファン108の回転駆動モータ108Aと、脱臭用オゾン発生用高圧電源107と、ヒーター装置111の不図示の電源と、プラズマ化学反応装置112の不図示の電源とのそれぞれの通電状態のシーケンス制御を行うための、例えばマイクロコンピュータ等の制御部を備え、全てをオンラインで自己完結型に連続可動できるようにしている。なお、装置本体101自体をオンラインとオフラインとの併用システムとすることも可能である。
【0050】
図4は、本発明に係る資源循環型施設における装置本体101の概略構成を示している。この場合、シロッコファンの前方開口側に、通常のフェパフィルタF1、タバコ等の煙中の粒子や粉塵、更にはアンモニア分子等を吸着させるための吸着フィルタF2のそれぞれ2枚から成る前段フィルタ102が付設され、後方開口側には吸脱着剤109として繊維に活性炭等を担持して成るACF(Active Carbon Fiber)によるフィルタが配置される。このACFの内壁にはヒーター装置111となるバンドヒーターが付設され、またACFの左右両側にはそれぞれPACT1とPACT2が付設されている。なお、COセンサがACF、又はいずれか一方のPACT装置に付設されている。
上記吸脱着剤109は、図2(b)に示すように、山形状に折り曲げた金網113上にACFを設けている。
【0051】
表1には、ACF及びPACTによる吸脱着動作のステップが示されている。すなわち、有毒ガスに関しては、一酸化炭素42kppm、シアン化水素1.6、二酸化窒素250ppmがACFによって吸着され、ACFから離脱された二酸化炭素はPACTによって分解される。また、グローバルウオーミングに関しては、二酸化炭素92kppm、CnHm87がACFによって吸着される。更に、臭いに関しては、酢酸(CHCOOH)1000ppm、アセトアルデヒド(CHCHO)3200ppmがACFによって吸着され、アンモニア(NH)300ppmが吸着フィルタF2によって吸着される。
【0052】
表1は、ACF及びPACTによる吸脱着動作のステップをまとめた表である。
【表1】

【0053】
また、吸脱着材109として、二酸化炭素を吸脱着可能とするリチウム系セラミックスを使用し、例えば銅線によって矩形網箱状に編組形成された収納容器内にそれら材料を封入する。このリチウム系セラミックスとしては、450〜700℃の高温で二酸化炭素を体積比400〜500倍と大量に高速で吸収するリチウムシリケート(LiSiO)セラミックスと、500℃付近の高温で二酸化炭素を体積比で約400倍吸収し、680℃以上で二酸化炭素を放出するリチウムジルコネート(LiZrO)とが存在する。
【0054】
特に、このリチウムシリケートセラミックスは室温から720℃までの温度域では二酸化炭素を吸収し、900℃付近では二酸化炭素を放出する可逆反応を示すもので、二酸化炭素との接触面積を大きく取れるように、気孔率が体積40%程度の多孔質体にした直径3mm、長さ5mmのペレット状に成形される。また、このリチウムシリケートセラミックスは、二酸化炭素が気体の20%程度でも、また500ppmと希薄でも500℃に加熱すると二酸化炭素を吸収する。また、具体的なリチウムシリケートセラミックスの二酸化炭素吸収性能は、二酸化炭素100%の雰囲気では、600℃付近から吸収し始め、720℃で35%質量が増加し、770℃以上に加熱すると二酸化炭素を放出する反応が起こって質量が減り始める。前記ヒーター装置111の設定温度は、このようなリチウム系セラミックスの温度特性に応じて決定される。
【0055】
プラズマ化学反応装置112としては、例えばプラズマと触媒の両効果を時空間的に相乗させる化学反応器である例えばファンモーター型若しくは標準チューブ型等の汎用PACTが使用される。具体的には、図5乃至図8に示すように、中心部のファン131の周囲に、環状のスリット電極132と外部電極130を配置して成るファン構造とする。すなわち、プラズマ化学反応装置112は、吸脱着材109から放出された一酸化炭素及び/或いは二酸化炭素を流入ガスとして中心部のファン131に導入し、流入ガスはスリット電極132を通ってプラズマに導入される。このとき流入ガスはファン131の回転数で制御するため、ガス流量対策が容易なものとなるようにしている。
【0056】
また、スリット電極132の近傍には、排ガスの種類に応じた金属製の触媒133を配置することで効果的に反応を促進できるようにしている。触媒133は図8に示すように、スリット電極132の各スリット132Aに挟まれる形状であっても良いし、図7(a)(b)(c)のようにスリット電極132の前段又は/及び後段に配置しても良い。図8においては、触媒133の高さとスリット132Aの高さを同じにしてプラズマ134と触媒133を時空間的に共存しても良いし、触媒133の高さをスリット132Aより低くしてプラズマ134と触媒133を異空間的に配置しても良い。また、図7においては、プラズマ134を制御して発生範囲を調節することによって同時空間的にも異空間的にも利用を可能としている。
【0057】
プラズマ空間の大きさは、誘電体層135の厚さ又はスリット電極132の外径を変更することによって調節する。これにより、流入ガスのガス量の変化にも対応できる。ここで、プラズマ分解後には流出ガスとして外部に放出される他、反応生成物がスリット電極132に付着する。付着した反応生成物はリング状に成るため、スリット電極132からあたかも取り外すように容易に剥離できる。尚、プラズマ放電には従来よりも強力な放電を用いることによって反応効率を大幅に向上させるものとしている。
【0058】
流入ガスには油煙類や湿気が、流出ガス内にはオゾンが含まれていることがあるため、ファン131への導入前後に不図示のフィルタを付加してそれらを除去することで、反応効率を向上させることができる。この他、有害物質の選択処理をしたい場合には、プラズマ化学反応装置112の前後にフィルタを付加する。
【0059】
プラズマエネルギは、電極間に印加するための不図示の電圧制御装置により11.1eV以下になるように調節する。流出ガスを、一酸化炭素の付着によりインピーダンスが変化する半導体素子であるCOセンサに導入し、一酸化炭素量を同定することによってTVOCの同定を行う。COセンサの種類は限定されず、市販の種々のセンサが利用可能である。また、光ファイバによる発光検出装置を用いれば、プラズマによる有害物質の分解と同時に一酸化炭素だけでなく様々な種類の有害物質の検出及びTVOCの同定が可能である。
【0060】
具体的には、予め一酸化炭素量と電流値との間の較正グラフを作成しておき、素子に流れる電流値を基準値と比較して一酸化炭素量を同定する。一酸化炭素量はTVOCに対応して増減するので、一酸化炭素量を同定できればTVOCも精度良く同定できる。ここで、一般的な物質の破壊電圧値VB及び形成電圧値VHと電流値Iとの関係を図9に示すが、この電圧値は物質毎に固有であるため、素子に流れる電流値から電圧値を求めることによって有害物質の種類も同定することができる。
【0061】
VOCは主に炭素、水素、酸素から成り、各元素の結合エネルギは表2のようになっている。これによれば、11.1eVより大きなプラズマエネルギを加えれば全ての元素をばらばらに分解出来ることになる。逆に、11.1eVよりも小さく5.45eVより大きなエネルギであれば2CO→2CO+O(酸素は発生と同時に分解される)という反応により一酸化炭素が生成した段階で反応を止めることができる。その他の炭化水素系有機化合物に関しても、全てプラズマ発生下では水素及び一酸化炭素に分解される。従って、一酸化炭素の存在量を調べればTVOCを同定できることになる。
【0062】
表2は、炭素、水素、酸素間の結合エネルギの一部をまとめた比較表である。
【表2】

【0063】
なお、上記プラズマ化学反応装置112だけではVOCだけでなく最初から大気中に存在する一酸化炭素及び二酸化炭素も同時に分解してしまい、TVOCを高精度に同定することができない。そこで、プラズマ化学反応装置112の前段に大気中の一酸化炭素量及び二酸化炭素量を同定する装置を配置し、プラズマ化学反応装置112によるプラズマ分解後に同定されたものとの差分をとることにより正確なTVOCを求められるようにする。
【0064】
一酸化炭素の同定にプラズマ発光を用いる場合には、図10に示すように、有害物質は加熱されて流入ガスとなりスリット電極132間に発生するプラズマ134により分解されるが、プラズマ134による励起後の発光を光ファイバ136により検出して不図示のCCD分光分析器でスペクトル分析を行う。プラズマ空間で発光された成分のスペクトルは物質に固有のものであり、そのピークの大きさは物質の存在量に比例して増減する。この性質を利用すれば上記半導体素子による一酸化炭素のみの検出及び存在量の同定だけでなくプラズマ134により発光する物質であればどんな物質でも検出及び存在量の同定が可能となる。ここで、物質の成分が或程度分かっている場合には、固有の周波数帯のみをカバーする不図示のバンドパスフィルタを追加することによって精度を更に向上させることも可能である。
【0065】
図11は、上記構成による装置本体101の吸脱着動作シーケンスに基づくタイムフローチャートを示している。すなわち、装置本体101内に投入されたガスは、前段フィルタ102を通して先ずアンモニアが吸着される。そしてACFを通して一酸化炭素とC−H構成分子が吸着される。そして、所定時間後にバンドヒーターが通電してACFが加熱されこの熱流によって炙り出された二酸化炭素やC−O−H、C−H系等の有害物質がリチウムシリケートセラミックスに吸着される。
【0066】
次に、本構成による使用、動作の一例についてパチンコ店を例にとって説明すると、例えばパチンコ店でのタバコの煙等の汚れた空気を浄化するために、装置本体101はパチンコ台の近傍に設置される。この装置本体101は、予めシーケンスプログラムされた制御部によって、営業時間である昼間の8時間だけ吸気開口部103、換気開口部106の各々の自動開閉蓋104、105が開放され、脱臭用オゾン発生用高圧電源107、シロッコファン等の換気ファン108のそれぞれが入力し、該吸気開口部103を通して排ガスを装置本体101内部に吸引し、当該装置本体101の換気開口部106から浄化後の空気を排出する動作が連続可動する。このとき、換気ファンによって吸引された排ガス中の臭気成分や粉塵・粒子等を前段フィルタ102によって吸着させた後、吸脱着材収容部110内の吸脱着材109に排ガス中のC−O−H、C−H系等の有害物質が吸着される。
【0067】
また、営業終了時の2時間だけ、吸気開口部103、換気開口部106の各々の自動開閉蓋104、105が閉塞され、密閉状態の中でヒーター装置111を作動させ、吸脱着材109に吸着された有害物質を所定温度の熱流の炙り出しによって離脱させることで吸脱着材109自体は使用前の清浄なリサイクル可能な状態に復帰する。そして、ヒーター装置111と対向する吸脱着材収容部110の他端側面部に配したプラズマ化学反応装置112に、吸脱着材109から離脱した有害物質を導入させてそこで有害物質を放電によってプラズマ分解処理する。以上の動作が自己完結型に連続可動され、例えばタバコ等の臭い成分、毒性分、温暖化成分等の全ての成分を完全に除去・分解処理することが可能となる。
【0068】
次に、装置本体101における前段フィルタ102のタバコの本数に対する吸脱着特性について説明すると、図12に示すように、サンプルメッシュ7335、T−BFN(1シート)による前段フィルタ102の場合、タバコの本数100本においてはリムーバブルレイト(%)は、例えば臨界値60%に対し、酢酸(CHCOOH)が90%、アンモニア(NH)が80%、アセトアルデヒド(CHCHO)が70%程度となる。また、前段フィルタ2のリムーバブルレイト100%までの復帰時間は、酢酸(CHCOOH)、アンモニア(NH)、アセトアルデヒド(CHCHO)の順に長くなる。
【0069】
このタバコの成分は、1000ppm中、COが92、CnHmが87、COが42、CHCHOが3、HCNが2、CHClが1、CHCOOHが0.7、NHが0.3、その他となっており、アンモニア(NH)を先ず前段フィルタ102で吸着させてから、酢酸(CHCOOH)、アセトアルデヒド(CHCHO)の各々を装置本体101のプラズマ化学反応装置112によりプラズマ分解処理するのである。なお、FE200タイプ、FP341タイプの前段フィルタ102の枚数に対する一酸化炭素濃度(COppm)の関係を各フィルタの種類毎に表すと、図13、図14に示すようになる。
【0070】
また、図15に示すように、脱臭の基準として除去率が50%を超えると脱臭能力があるものとして判断される。すなわち、ACF脱着後、0分でのタバコ4本で745ppm(100%)であったものが、5分後には720ppm(97%)、20分後には592ppm(79%)、40分後には402ppm(54%)のように減少する。ACF脱着後の特性でも、一酸化炭素処理能力30%(30分)で処理能力が低くなる。
【0071】
上記実施例では資源循環型施設を大気中にタバコによる有害物質の多くを排出するパチンコ店を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、上記具体的実施例の装置により分解された材料は、前段で示したように有効材料として使用されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る資源循環型施設は、一般住宅、マンション、病院等の居住施設、或いは産業廃棄物リサイクル施設等に応用したり、更には無公害都市計画用の資源循環型施設の構築のために応用することができる。
【0073】
なお、本発明は上記の実施形態、実施例、及び産業上の利用可能性における有害物質の分解除去及び物質量の同定に限定されるものではなく、特許請求の範囲の請求項に記載する内容の範囲内でさまざまな変形が可能であり、本発明はこれら全てを含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1(a)】本発明の資源循環型施設の全体概略図である。
【図1(b)】本発明の資源循環型施設から生じた各種成分の利用形態の具体例を示した概略図である。
【図1(c)】本発明の資源循環型施設においてダイオキシンを処理するための濃縮工程を示す概略図である。
【図2(a)】分解浄化装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2(b)】分解浄化装置の吸脱着材の収納を示す分解斜視図である。
【図3(a)】吸脱着材収納部の平面図である。
【図3(b)】分解浄化装置の平面図である。
【図3(c)】分解浄化装置の正面図である。
【図3(d)】分解浄化装置の側面図である。
【図4(a)】分解浄化装置の概略平面図である。
【図4(b)】分解浄化装置の概略側面図である。
【図5】ファン構造のプラズマ化学反応装置の装置構成図である。
【図6】ファン構造のプラズマ化学反応装置の反応ガスの流れを示す模式図である。
【図7(a)】ファン構造のプラズマ化学反応装置の前段処理で触媒を作用させる形態における装置構成図である。
【図7(b)】同じく後段処理で触媒を作用させる形態における装置構成図である。
【図7(c)】同じく前段及び後段処理で触媒を作用させる形態における装置構成図である。
【図8】スリットに触媒を挟む形態におけるスリット電極の側面図である。
【図9】物質の破壊電圧値VB及び形成電圧値VHと、電流値Iとの関係図である。
【図10】分光スペクトルから物質の成分及び存在量を調べるための装置構成図である。
【図11】分解浄化装置の吸脱着動作シーケンスに基づくタイムフローチャートである。
【図12】前段フィルタの吸脱着特性をグラフ形態に示した図である。
【図13(a)】FE200の場合における前段フィルタの枚数に対する一酸化炭素濃度(COppm)の関係をグラフ形態に示した図である。
【図13(b)】FE200の場合における前段フィルタの枚数に対する一酸化炭素濃度(COppm)の関係をグラフ形態に示した図である。
【図13(c)】FE200の場合における前段フィルタの枚数に対する一酸化炭素濃度(COppm)の関係をグラフ形態に示した図である。
【図14(a)】FP341の場合における前段フィルタの枚数に対する一酸化炭素濃度(COppm)の関係をグラフ形態に示した図である。
【図14(b)】FP341の場合における前段フィルタの枚数に対する一酸化炭素濃度(COppm)の関係をグラフ形態に示した図である。
【図15】タバコから発生する一酸化炭素の処理測定結果を示すもので、横軸に時間、縦軸に一酸化炭素量をppmで示してある。
【符号の説明】
【0075】
1 資源循環型施設
2 発酵槽
3 生ゴミが流れる配管
4 バイオ菌の導入管
5 反応ガスの流路
6 PACT改質装置
7 二酸化炭素の流路
8 菜園
9 窓
10 太陽光発電パネル
11 発生ガスの流路
12 オゾン発生用PACT装置
13 オゾンの流路
14 反応生成物の流路
101 装置本体
102 前段フィルタ
103 吸気開口部
104 自動開閉蓋
105 自動開閉蓋
106 換気開口部
107 脱臭用オゾン発生用高圧電源
108 換気ファン(シロッコファン)
108A 回転駆動モータ
109 吸脱着材
110 吸脱着材収容部
111 ヒーター装置
112 プラズマ化学反応装置
113 金網
130 外部電極
131 ファン
132 スリット電極
132A スリット
133 触媒
134 プラズマ
135 誘電体層
136 光ファイバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引された大気中の有害物質の各種成分を吸着させる前段処理機構、吸引された有害物質中の除去対象である特定物質を吸着する吸着機構、この特定物質の吸着量が所定量に達した際に当該特定物質を離脱させる離脱機構及び離脱された特定物質をプラズマ分解処理するプラズマ分解機構とよりなる有害物質の分解浄化装置を、該有害物質の発生源或いは施設への大気の取り込み口に配置し、該分解浄化装置の機構の可動によって得られた各種反応生成物を当該施設又は施設外での有効的なものとして利用することのできる自己完結型に連続可動させることを特徴とする有害物質を分解浄化して有効材料とする資源循環型施設。
【請求項2】
シロッコファンによって吸引された有害物質の各種成分を吸着させる前段処理機構としての前段フィルタ、吸引された有害物質中の除去対象である特定物質を吸着及び離脱可能とした吸着機構としての吸脱着材、該吸脱着材に吸着された特定物質を熱流によって離脱させる離脱機構としてのヒーター及び該吸脱着材から離脱された特定物質を放電によってプラズマ分解処理するプラズマ分解機構としてのプラズマ化学反応装置とを備えて成る有害物質の分解浄化装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の資源循環型施設。
【請求項3】
吸脱着材として、一酸化炭素を選択的に吸脱着可能な繊維に活性炭を担持して成るACFを使用して成ることを特徴とする請求項2に記載の資源循環型施設。
【請求項4】
吸脱着材として、二酸化炭素を吸脱着可能なリチウム系セラミックスを使用して成ることを特徴とする請求項2に記載の資源循環型施設。
【請求項5】
吸脱着材として、吸引側よりACF及びリチウム系セラミックスを併用して成ることを特徴とする請求項2に記載の資源循環型施設。
【請求項6】
プラズマ化学反応装置は、中心部のファンの周囲に環状のスリット電極を配置して成るファン構造としたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の資源循環型施設。
【請求項7】
スリット電極の近傍には、ガスの種類に応じた触媒金属を配置して成ることを特徴とする請求項6に記載の資源循環型施設。
【請求項8】
一酸化炭素の付着によりインピーダンスが変化する半導体素子であるCOセンサ、若しくは光ファイバによる発光検出装置をプラズマ化学反応装置の前段及び後段に配置させたことを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の資源循環型施設。
【請求項9】
プラズマ分解機構により、特定物質を水素、一酸化炭素、亜酸化窒素等に分解し、水素は燃料として回収し、一酸化炭素は二酸化炭素に変化させて施設内外の菜園における光合成の材料、施設の断熱材及び非常事態時の消火材等として利用し、亜酸化窒素は医療用の麻酔等に利用してなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の資源循環型施設。


【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図13(c)】
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【図14(a)】
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【図14(b)】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−130483(P2006−130483A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325719(P2004−325719)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(504414787)インパクトワールド株式会社 (5)
【Fターム(参考)】