説明

質量分析計用のRF電源

本発明は、質量分析計内に高周波(RF)電源を備える。この電源は、RF信号を蓄積装置の電極に供給し、捕捉場を形成する。このようなイオン蓄積装置は、後続の質量分析器への放出に先立ってイオンを蓄えるために使用されることが多い。RF場は、通常、イオン放出に先立って崩壊される。本発明は、RF信号供給源、RF信号供給源により供給される信号を受信し、イオン蓄積装置の電極に供給する出力RF信号を供給するように配列されたコイル、および分路が分路によりコイル出力が短絡される第1の開いている位置と第2の閉じられている位置とを切り替えるように動作可能なスイッチを含む分路を備えるRF電源を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF場をイオン蓄積装置に印加するための質量分析計高周波(RF)電源およびRF場を使用してイオン蓄積装置を動作させる方法に関する。特に、限定はしないが、本発明は、パルス質量分析器への放出に先立ってRF場を使用してイオンを封じ込める、またはトラップするイオン蓄積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなトラップは、イオンの入ってくる流れにバッファを用意し、比質量分析器に適している空間特性、角度特性、および時間特性を持つパケットを準備するために使用することも可能であろう。パルス質量分析器の例は、飛行時間型(TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共振(FT ICR)、Orbitrap型(つまり、静電気のみ捕捉を使用するもの)、またはファーザーイオントラップを含む。イオントラップを備える典型的な質量分析計のブロック図は、図1に示されている。質量分析計は、分析すべきイオンを発生して、イオントラップに供給するイオン源を備え、そのイオントラップでイオンは、所望の量が後の分析に利用可能になるまで集められる。第1の検出器は、イオントラップに隣接して配置され、これにより、制御装置の指図に従って質量スペクトルを取ることができる。パルス質量分析器は、さらに、制御装置の指図に従って動作する。質量分析計は、一般に、内部を真空にするための一つまたは複数のポンプを備える真空槽内に据え付けられる。
【0003】
イオンを輸送または蓄えるためにRF場を使用するイオン蓄積装置は、図1に示されているものなど、質量分析計では標準的なものとなっている。典型的には、これらは、RF信号をトランスの一次巻線に供給するRF信号発生器を備える。トランスの二次巻線は、蓄積装置の電極(典型的には4個)に接続される。図2aは、リニアイオントラップ装置内の4本の電極の典型的配列を示している。これらの細長い電極は、z軸にそって伸び、これらの電極はx軸とy軸において対になっている。これらの電極は、捕捉装置内に入る、または生成されるイオンを封じ込める双曲線型等電位の四重極RF場を生成するような形状となっている。蓄積装置内での捕捉は、DC場を使用することにより補助される。図2aから分かるように、4本の細長い電極はそれぞれ、z軸にそって3本に分割される。高められたDC電位が、さらに大きな中心セクションに関してそれぞれの電極の正面および背面セクションに印加され、それにより、ポテンシャル井戸をRFおよびDC場成分の重ね合わせから生じるイオン蓄積装置の捕捉場上に重ね合わせる。AC電位は、さらに、電極に印加され、イオン選択を助けるAC場成分を発生することができる。
【0004】
図2bおよび2cは、電極に印加される典型的な電位を示している。最も注目すべきは、本発明に関するRF電位を示す図2cである。図から分かるように、類似の電位が反対の電極に印加され、それにより、x軸電極は、y軸電極とは反対の極性の電位を持つ。
【0005】
図3は、所望のRF電位を供給することができる電源を示している。RF発生器は、上述のように、RF信号をトランスの一次巻線に供給する。この信号は、トランスの二次巻線に結合されている。二次巻線の一端は、反対の電極のx軸対に接続され、他端は、反対の電極の他方のy軸対に接続される。DCオフセットは、二次巻線の中心タップに接続されているDC電源を使用して加えることができる。AC電位も、電極に印加できるが、蓄積装置のこの態様は、ここでは考慮する必要はない。
【0006】
このタイプのイオン蓄積装置のさらなる詳細は、米国特許出願公開第2003/0173524号に見られる。
【0007】
トランスの巻線を備えるコイル中のインダクタンスおよび電極と電極との間のキャパシタンスは、LC回路を形成する。トランスは、高品質共振コイルに対応し、線質係数は数十、さらには数百にも達する。これにより、通常0.5〜6MHzの範囲内の作動周波数で最大数千ボルトまでのRF振幅が発生する。
【0008】
このような蓄積装置は、後続の質量分析器への放出に先立ってイオンを蓄えるために使用されることが多い。このような蓄積装置が他の分析器、特にパルス分析器(例えば、TOF型質量分析器またはOrbitrap質量分析器などの静電気のみ捕捉質量分析器)とインターフェースされる場合に、蓄積装置から分析器へのイオンの効率的移動の問題が障害となる。3D四重極RFトラップが質量分析の第1ステージで蓄積装置として使用される場合、この問題は、従来、RF信号発生器のスイッチを切ることと同期してイオントラップのエンドカップ上でDC電位を脈動させることにより解決されている(S.M.マイケル、M.チエン、D.M.ルブマン、Rev.Sci.Instrum.63(10)(1992)4277−4284を参照)。これにより、通常、イオントラップからイオンが抽出され、抽出は3Dトラップの典型的に有利なアスペクト比(つまり、長さ/幅)により容易になる。しかし、同じファクタが、3Dトラップの限られた蓄積容積、したがって、限られた空間電荷容量にも関与している。RF信号発生器の比較的遅い、電圧依存のスイッチオフ遷移のせいで、蓄積装置の分解能(および、おそらく質量精度)は、ひどく損なわれる。
【0009】
リニアイオントラップは数桁大きい空間電荷容量をもたらすが、そのアスペクト比により、パルス分析器への直結が非常に困難になる。通常、これは、RF蓄積装置からのイオン抽出の時間スケール(ms)とパルス分析器に必要なピーク幅(ns)との非常に大きな非互換性により引き起こされる。この非互換性は、軸にそってイオンを圧縮し、次いで、高電圧パルスによりイオンを軸方向に放出することにより、緩和できる(WO02/078046を参照)。しかし、空間電荷効果は、この場合、非常に重要なものとなる。
【0010】
上記の装置は、軸方向放出を使用するが、代替手段では、蓄積装置の軸に直交する方向にイオンを放出する(例えば、米国特許第5,420,425号、米国特許第5,763,878号、米国特許第2002/0092980号、およびWO02/078046を参照)。これについて、対向する棒電極のDC電圧は、イオンが一方の電極を通して加速され後続の質量分析器内に入るようにバイアスされる。また、蓄積装置の電極上のRF電位は、エネルギー拡散およびイオンエネルギーの質量依存性を制限するためにスイッチオフすべきであることも開示されている。しかし、これらの開示では、ゼロ位相でRF場をスイッチオフすることの目的を述べているだけであり、スイッチオフの仕方を説明しているわけではない。上記の開示はすべて(WO02/078046を除く)、まっすぐな電極を使用する、TOFMSにのみ適用する、イオン蓄積装置のみに関係している。
【0011】
WO00/38312およびWO00/175935では、3Dトラップ/TOFMSハイブリッド型質量分析計における蓄積装置の電極上のRF電位をスイッチオフすることについて説明している。これらの文書では、共振器コイルのスイッチングについて開示しているが、これには、反対極性の電源のみならず、それぞれのRF電圧用の二つの高電圧パルス発生器を必要とするという欠点がある。大放電電流は、これらの電源に過剰な負荷をかけ、これはキャパシタンスを並列に加えることで部分的にしか軽減できない。また、パルス発生器の内部キャパシタンスは、コイルのキャパシタンスに加わり、共振周波数を低減させる。これらの開示では、複数の電極上で、またはマルチフィラーコイル上で、RFをスイッチオフする方法、またはRFスイッチングとRF装置の電極のパルスDCオフセットとの組合せ方法を示していない。この方式の最適な用途は、高速スイッチオフではなく、RF電圧の高速な立ち上がりである。残念なことに、イオンを後続の質量分析器に放出するために高速なスイッチオフが必要であるが、スイッチオンは、典型的に使用される準連続イオン源に対してはかなり低速になりうる。
【0012】
WO00/249067およびUS2002/0162957では、DCパルスを使用せずにイオン放出を行えるように、3Dトラップ質量分析計(漏洩検知器)のRFのスイッチオフを開示している。しかし、これらの文書では、コイルの一次巻線の従来のやり方の電源オフまたは低速な機械式リレーの使用を除きRFスイッチングの実現可能な方式を開示していない。
【0013】
円柱状トラップ/TOFMSハイブリッド用のRFスイッチングの他の実施例は、M.ダベンポートら、Proc.ASMS Conf.,Portland,1996,p.790およびQ.ジ、M.ダベンポート、C.エンケ、J.ホランド、J.American Soc.Mass Spectrom,7,1996,1009−1017により開示されている。この方式では、二つの高速ブレークビフォーメークスイッチを使用しており、それぞれ、2対のMOSFET(RFのそれぞれの相毎に)からなる。回路の定格は、MOSFETの定格(900V)により制限され、RF回路の品質は、MOSFETの高いキャパシタンス(それぞれ約100pF ca.)により著しく制限され、これもまた、これら多数の要素により深刻なものとなる。
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/162957号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記これらの問題点を少なくとも1つ満足する質量分析用のFR電源を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記背景に対し、また第1の態様から、本発明は、RF信号供給源、少なくとも一つの巻線を含み、RF信号供給源により供給される信号を受信し、質量分析計のイオン蓄積装置の電極に供給用の出力RF信号を与えるように配列されている、コイル、および第1の開位置と第2の閉位置とを切り替えるように動作可能な、スイッチを備える、コイル出力を短絡する、分路を含む質量分析計RF電源を対象とする。
【0017】
コイル出力を短絡する分路を用意することは、質量分析計内の蓄積装置の電極に供給されるRF信号を高速スイッチングする便利な手段となる。電流が分路を通って高速に分流することで、二次巻線中の信号が急速に崩壊し、したがって、RF場が電極により発生する。イオン蓄積装置内のRF場をスイッチオフすることで、イオンを、例えば、質量分析器などの中に注入できる。イオンが放出された後、再びスイッチを作動させて、分路の接続を断ち、それにより、二次巻線から短絡回路を取り除くことができる。容易に理解されるように、これにより、例えば、二次巻線中の信号が高速に確立され、RF場が電極により発生する。
【0018】
コイルは、分割された片割れを持つ単一巻線を含むことができる。ポンプ増幅器は、この二つの片割れの間に接続することができ、この配列では巻線の末端からRF出力が得られ、これは、電極に供給することができる。しかし、電源がトランスを備えることは今のところ好ましいが、高周波信号供給源はトランスの一次巻線に接続されており、二次巻線は、コイルに対応している。この文脈において、高周波信号供給源により供給される信号を受け取るように配列されているコイルは、トランスの複数の巻線にわたる信号のカップリングに対応する。
【0019】
好ましくは、電源は、さらに、コイル出力間に入れられ、コイル出力を全波整流器の出力点に連結する電気的経路上にスイッチが配置されている、全波整流器を含む。言い換えれば、スイッチを含む電気的経路は、全波整流器の対角線上にわたって配置することができるということである。この対角線は、スイッチが開のときに完全な電流経路がなくそれにより分路を通る電流を停止し、スイッチが閉じられたときに分路を形成する電流経路を完成するように、整流器回路の唯一の戻り電流経路を与えることができる。それとは別に、全波整流器は、上述のように、コイルが単一巻線を含むコイル出力間にわたって配置することができる。
【0020】
全波整流器回路の使用は、スイッチが単極信号を受信するように設計された半導体スイッチとして実装されることが考えられるため、特に有益であり、整流器回路は、それが全波であろうと半波であろうと、このような単極信号を供給する。
【0021】
適宜、二次巻線は、実質的に中心にあるタップを備え、スイッチは、中心タップと全波整流器の出力点との間に渡される電気的経路上に配置される。好ましくは、二次巻線は、二つのコイルを分ける中心部分になすタップを持つ二つの対称コイルを含むが、タップの正確な位置はちょうど中心にある必要はない。対称コイルは、有益であり、その場合、電極は、2相電圧を受け、大きさは等しいが、極性は反対の信号を供給するのを助ける。いくつかの用途、3Dイオントラップなどでは、単相電源のみあればよい。この場合、中心タップのない単一二次巻線のみを使用できる。
【0022】
好ましくは、全波整流器は、一対のダイオードを備える。これらのダイオードの一方は、順方向構成で二次巻線の一端に電気的に接続することができ、それにより、二次巻線のその端から電流を伝導するが、二次巻線のその端へ電流を逆流させることはできない。他方のダイオードは、これも順方向構成で、二次巻線の他端に接続することができ、それにより、二次巻線の他端から電流を伝導するが、二次巻線の他端へ電流を逆流させることはできない。ダイオードの反対側は、スイッチを含む電気的経路の接続先である出力点を含む電気的経路にそって接続される。そのため、この後者の電気的経路は、全波整流器の戻り電流経路をなす。
【0023】
上の説明は、ダイオードを備える全波整流器の説明であるが、トランジスタまたはサイリスタなどの他のコンポーネントも等しく使用することが可能である。
【0024】
電流および電圧は電源とともに使用されるので、スイッチは、単極高電圧スイッチであるのが好ましい。
【0025】
適宜、電源は、さらに、スイッチに接続されたバッファキャパシタンスを含み、これにより、分路を切断した後二次巻線中のRF信号を高速に復帰させることができる。
【0026】
好ましくは、トランスは、高周波同調共振トランスである。このような配置では、コイルのインダクタンスと回路内のキャパシタンスによって形成されるLC回路を利用する。例えば、キャパシタンスは、質量分析計のイオン蓄積装置内の電極間のギャップによるものである。
【0027】
適宜、電源は、さらに、DCオフセットを二次巻線中に発生する信号に与えることができる、二次巻線に接続されている、好ましくは二次巻線の中心タップで接続されている、DC電源を含むことができる。例えば、このDCオフセットは、イオンがトラップに入るか、またはそこから出るときのイオンエネルギーを定義するために使用することが可能である。さらに、可変DCオフセットを使用することができる。
【0028】
本発明のいくつかの考察されている実施形態では、二次巻線は、マルチフィラー巻線を含む。このようなマルチフィラー巻線は、好ましくは互いに隣接して配置されている二つ以上の分離しているコイルを含むことができ、それにより、トランス間に誘起された信号がマルチフィラー巻線のすべての巻線中に存在するように密結合を形成する。この構成では、分路は、フィラー巻線のすべてに接続する必要はなく、好ましくは、実際には、フィラー巻線の一つにのみ接続される。これは、分路がフィラー巻線の一つの間に接続され、それにより、そのフィラー巻線を短絡する場合に、他のすべての結合されているフィラー巻線中で信号が崩壊するからである。密結合を形成するために、フィラー巻線は、並置することで互いに隣接するように配置することができるか(例えば、別々の芯に一つ一つ並べる)、または間に配置するか(例えば、コイルを共通心に巻き付けて、巻線が交互になるようにすることも可能である)、または他の構成を取ることができる。
【0029】
本発明の他の考察されている実施形態では、反対の方向に巻き付けられている一対のコイルを含む一次巻線を使用することにより二重RF出力を行うことができる。
【0030】
さらに、可変の、および異なるDCオフセットは、電極間にポテンシャル井戸または電位勾配を生じさせるために、異なるフィラーに使用することができる。このポテンシャル井戸は、蓄積装置内のイオンを捕捉する際に、またその放出のために有利な場合がある。
【0031】
第2の態様から、本発明は、イオン源、イオン蓄積装置、質量分析器、および上述の電源のいずれかを備える質量分析計を対象とし、イオン蓄積装置は、イオン源からイオンを受け取るように構成され、イオンを中に蓄積し、イオンを質量分析器に放出するように動作可能な電極を備え、質量分析器は、イオン蓄積装置により放出されたイオンから質量スペクトルを集めるように動作が可能である。
【0032】
質量分析器は、静電気のみ型(Orbitrap分析器など)、飛行時間型、TFICR、またはファーザーイオントラップを含む、様々なタイプのものがある。イオンは、軸方向に(つまり、蓄積装置の長手方向軸にそって)イオン蓄積装置から放出することができるか、またはこの軸方向に直交する方向に放出することができる。イオン蓄積装置は、湾曲した長手方向軸を持つように湾曲させることができる。
【0033】
第3の態様から、本発明は、RF信号を、イオン蓄積装置の電極に接続された少なくとも一つの巻線を含むコイルに供給し、それによりイオン蓄積装置内にRF封じ込め場を形成し、特定の質量/電荷比を持つイオンを封じ込めること、およびスイッチを動作させ、それにより、コイル出力間にわって配置された分路を接続し、それにより、二次巻線を短絡し、RF封じ込め場をスイッチオフすること、またはスイッチを動作させ、それにより、分路を切断し、RF封じ込め場をスイッチオンすることを含む、質量分析計を動作させる方法を対象とする。
【0034】
適宜、コイルは、質量分析計のトランスの二次巻線であり、高周波信号をコイルに渡すことは、先立つ高周波信号をトランスの一次巻線に通し、それにより、高周波信号を二次巻線間に出現させることを含む。
【0035】
好ましくは、この方法は、さらに、分路がRF信号の位相と同期して接続または切断されるようにスイッチを動作させることを含む。これは、スイッチが、RF信号の位相内で同時に制御可能な形で接続され、切断されるという点で好ましいものと考えられる。今のところ、RF信号が実質的に平均値を通るときに分路をスイッチングすることが好ましい。この平均値は、ゼロに対応してもよいが、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、DCバイアスは、RF信号に直接加えることができる。
【0036】
適宜、この方法は、さらに、分路が二次巻線間に接続されているときに一次巻線を通るRF信号を停止することを含む。この接続および切断は、接続後できるだけ早く、また切断前にできるだけ早く、実行することができる。RF信号を停止することは、適宜、RF信号発生器をスイッチオフすることを含むことができるが、スイッチを入れる、またはさらには追加の分路を用意するなどの他のオプションも使用可能である。
【0037】
適宜、この方法は、さらに、一定または可変のDCオフセットを電極に加えることを含むことができる。適宜、加えられるDCオフセットは、高速な立ち上がり時間を有する、つまり、立ち上がり時間は、すべてのイオンがイオン蓄積装置から放出される時間に比べてずっと短い。都合のよいことに、これにより、放出されたイオンは、その質量に関係しないエネルギーを持つことになる。それとは別に、DCオフセットは時間依存であってもよく、それにより大きさは、質量に関係するエネルギーが放出イオンに与えられるように変化する。例えば、DCオフセットの連続的ランピングまたはステッピングにより、軽いイオンは、より重いイオンよりも少ないエネルギーで放出される。
【0038】
この方法は、適宜、高周波場をスイッチオフし、次いで、ある遅延の後にのみDCオフセットを印加することを含むことができる。このような方法では、イオンをTOF質量分析計に放出するときに有益な集束を行う。遅延の長さは、最適な集束が得られる値を見つけるために変化させることができる。
【0039】
DCオフセットは、好ましくは、二次巻線に印加することができ、適宜、二次巻線の中心タップに印加することができる。DCオフセットの印加を、適宜、イオン蓄積装置内にイオンを捕捉するために実行することができるか、またはそれとは別に、DCオフセットを、適宜、使用して、蓄積装置からイオンを放出することができる。放出は、軸方向または直交方向のいずれかで実行することができる。
【0040】
適宜、この方法は、スイッチを動作させて高周波封じ込め場をスイッチオフすることと、イオンをイオン蓄積装置内に導入することと、スイッチを動作させて高周波封じ込め場をスイッチオンして、それにより、イオン蓄積装置にイオンを捕捉することとを含むことができる。スイッチは、イオンがイオン蓄積装置の中心軸に接近するか、または到着したときに高周波封じ込め場をオンにするように動作させることができる。イオンは、半径方向でイオン蓄積装置内に注入することができる。
【0041】
本発明の現在考察されている用途において、高周波封じ込め場は、スイッチオンされると、イオン蓄積装置内にイオンを捕捉するが、この方法はスイッチを動作させて高周波封じ込め場をスイッチオフし、短い遅延の後に、スイッチを動作させて高周波封じ込め場をスイッチオンすることと、短い遅延の間に、電子をイオン蓄積装置内に導入することとをふくむ。短い遅延は、イオン蓄積装置からのイオン損失が、もしあるとしても、最低限のみですむように選択される。例えば、短い遅延は、イオンがイオン蓄積装置から漂い出すのに要する時間よりも短くなるように選択される。この方法は、低エネルギー電子をイオン蓄積装置内に注入することを含むことができ、その場合、RF場が存在しないことは、存在すれば電子を高エネルギーに励起することになるので、有益である。低エネルギー電子は、電子捕獲解離(ECD)のため与えることができる。
【0042】
イオン蓄積装置が、高周波封じ込め場により捕捉されたイオンを封じ込める場合、この方法は、適宜、スイッチを動作させて高周波封じ込め場をスイッチオフすることと、DCオフセットを選択的に電極に印加し、それにより、イオン蓄積装置内に捕捉されたイオンを所望の方向に放出させることとを含むことができる。この所望の方向は、電極間に設けられたギャップ、または電極内に設けられたアパーチャを通してイオンを放出するような方向とすることができる。
【0043】
第4の態様から、本発明は、イオン源を動作させてイオンを発生させることと、イオン源により発生されたイオンをイオン蓄積委装置に導入することと、上述の方法のいずれかによるイオン蓄積装置を動作させて、それにより蓄積装置内にイオンを封じ込め、イオンを質量分析器に放出することと、質量分析器を動作させて、イオン蓄積装置により放出されるイオンから質量スペクトルを集めることとを含む、質量スペクトルを集める方法を対象とする。
【0044】
第5の態様から、本発明は、イオン源を動作させてイオンを発生させることと、イオン源により発生されたイオンを中心の湾曲した長手方向軸を形成する形状の細長い電極を持つイオントラップに導入することと、上述のような方法によるイオントラップを動作させて、それによりイオンを捕捉し、イオン経路が静電気のみ型質量分析器の入口に収束するように長手方向軸に実質的に直交する経路上でイオンを放出することと、質量分析器を動作させて、イオントラップから放出されたイオンから質量スペクトルを集めることとを含む、質量分析計から質量スペクトルを集める方法を対象とする。
【0045】
一般に、イオンは、複雑な経路に従って長手方向軸の周りを回る。そのため、これらのイオンは、長手方向軸に実質的に直交する方向、つまり、イオンが現在通過している長手方向軸上の点に対して多かれ少なかれ直角をなす方向に放出される。この方向は、可能な多数のイオン経路が収束することを確実にするイオントラップの凹面側への方向である。イオントラップの曲率および質量分析器の位置は、イオン経路が質量分析器への入口に収束し、それによりイオンを集束させるような曲率および位置である。
【0046】
第6の態様から、本発明は、コンピュータに読み込まれたときに、上述の方法のいずれかによりイオン蓄積装置をコンピュータに制御させるプログラム命令を含むコンピュータプログラムを対象とする。さらに、第7の態様から、本発明は、上述の方法のいずれかによるイオン蓄積装置を制御するようにプログラムされた制御装置を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
付属の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について、以下説明する。
【0048】
RFおよびDC電位をリニアイオントラップの4本の電極412、414に供給する電源410は、図4に示されている。RF増幅器416は、RF信号をRF同調共振トランス420の一次巻線418に供給する。トランス420は、中心タップ428が間に設けられている二つの対称的巻線424、426からなる二次巻線422を備える。中心タップ428から離れた位置にある二次巻線424の末端は、イオントラップの上側電極および下側電極を含む対向する電極412に接続されている。中心タップ428から離れた位置にある二次巻線426の末端は、イオントラップの左側電極および右側電極を形成する対向する電極414に接続されている。
【0049】
それに加えて、全波整流器回路430も、二次巻線424および426の離れた位置にある末端に接続される。全波整流器430は、接合部436で会合する二次巻線424、426の離れた位置にある末端から伸びている二つの電気的経路432および434を含む。経路432および434はそれぞれ、ダイオード438および440を備え、これにより、電流は二次巻線424、426の離れた位置にある末端から流れるが、その離れた位置にある末端に逆流することができない。接合部436は、他の電気的経路442により、二次巻線422の中心タップ428に接続され、分路442を形成する。この電気的経路442は、トリガ信号445に対する応答として動作するRF−オフスイッチ444を備える。このスイッチ自体は、トランジスタを使用して作られている。
【0050】
図5aは、開位置のスイッチ444を持つ全波整流器430を示している。スイッチ444が開くと、全波整流器430の周りに連続する電流ループがなく、電流が流れない。これは、電気経路432にそってダイオード438を流れる電流が、矢印446により示されているようにスイッチ444を流れることができず、また矢印448により示されているように他方の逆バイアスダイオード440を流れることができないからである。同様に、電気経路434にそってダイオード440を流れる電流は、矢印450により示されているようにスイッチ444を流れることができず、また矢印452により示されているように他方のダイオード438を流れることができない。したがって、電流が一次巻線418を流れると、二次巻線422中の誘導電流は、電極412、414にしか流れることができない。したがって、一次巻線418に供給されるRF信号により、電極412、414にRF電位が発生し、それにより、イオントラップ内にRF場が生じる。
【0051】
図5bは、スイッチ444が閉じているときの全波整流器430を示している。この場合、整流器430を通る完全な電流経路が生じている。一次巻線418に供給されるRF信号の一位相において、電流は二次巻線424を通り、電流経路432にそってダイオード438に流れる。この電流はダイオード440を通ることはできないが、矢印454により示されているように、スイッチ444を介して分路442にそって戻ることができる。一次巻線418に供給されるRF信号の他方の位相では、電流は二次巻線426を通り、電気経路434にそってダイオード440に流れる。電流はダイオード438を通ることはできないが、矢印456により示されているように分路442およびスイッチ444を介して戻る。したがって、一次巻線418に供給されるRF信号の位相がなんであれ、電流を短絡して二次巻線424および電極412または二次巻線426および電極414のいずれかに通す全波整流器430により、低抵抗電流経路が形成される。そのため、電極412、414にRF電位は現れず、イオントラップ内のRF場は崩壊する。
【0052】
明らかに、スイッチ444をもう一度動作させて、全波整流器430を図5aに示されている構成に戻すことができる。これを行うと、電流は、今度は、電極412、414を介して二次巻線424、426にしか流れることができない。もちろん、これにより、イオントラップ内にRF場が再確立される。
【0053】
この動作は、電極412、414に現れる電圧波形が示されている図6に反映されている。最初、電圧波形は、610に示されており、tで終了し、そこでスイッチ444が閉じ、それにより、二次巻線412、414が短絡する。スイッチ444は、電圧波形が0値を通過すると閉じられる。遅延の後、スイッチ444は、tで開かれ、それにより、電極412、414に現れる電圧波形612をもう一度確立する。容易に理解されるように、電圧波形610、612は、電極412または414のいずれかの対に現れるものに対応することができる。電極412、414の他方の対に、対応するが、反転している電圧波形が現れる。図6から分かるように、スイッチ444は、電圧波形612がゼロ交差点で始まるように一次巻線418に供給される信号の位相に関して開かれる。
【0054】
上述の電極412、414に印加されるRF電位に加えて、DC電位も、電極412、414に供給することができる。DC信号は、このDCオフセットがすべての電極412、414に現れるように、二次巻線422の中心タップ428に接続されているDCオフセット電源458により供給される。したがって、DCオフセットは、電極412、414に印加されるRF電位に加えることができるか、またはそれとは別に、RF電位を受け取っていないときに電極412、414に供給することができる。例えば、図6は、電圧信号610が現れるようにRFのみが電極412、414に供給される状況を示している。これにより、質量分析器でその後分析するためにイオンを捕捉するイオントラップ内にRF場が生成される。イオントラップからイオンを放出することが望ましい場合、スイッチ444がtで閉じられ、それにより、二次巻線422が短絡し、イオントラップ内のRF場が崩壊する。少ししてからtで、DCパルス614が電極412、414に供給され、イオントラップからイオンを放出するDC場が形成される。すべてのイオンが放出される十分な時間が経過した後、tで、DCオフセットがスイッチオフされ、次いで、少ししてからtで、スイッチ444は、さらにイオンを捕捉できる状態にあるイオントラップ内に新しいRF場が確立されるように開かれる。DC波形614を脈動させても、二次巻線422はスイッチ444により作動された分路を介して短絡されるので、共振周波数で高周波寄生発振は生じない。
【0055】
DCパルス614を使用して、イオントラップから直交する形でイオンを抽出することができる。従来の方法では、イオンは、イオントラップ内のxおよびy軸を定義するために使用される電極412、414のうちの一つを通じて抽出される。例えば、イオンは、x軸方向で電極414の一つを通じて放出することができる。図7bは、この抽出に対し生成できるリニアDC場を示しており、その勾配はx軸方向に従う。RFは、電極412、414に印加されるが、図7aに示されているようなイオントラップの電極間にDC場は存在しない。
【0056】
トランス420の動作で現れる電圧および電流を考慮すると、スイッチ444は、単極高電圧スイッチに対応する。ダイオード438および440は、低キャパシタンスを持つように選択される(典型的には、数pF)。したがって、これは、電極412、414の間のキャパシタンスにより支配される共振回路に現れる全キャパシタンスに対し最小の効果しかもたらさない。ダイオード438および440は、個別ダイオードであるか、または状況に応じて適切な電流および電圧定格を持つ一連のダイオードを代わりに使用することも可能である。さらに、スイッチ444は、単一スイッチングデバイスとすることができるが、MOSFETまたはバイポーラトランジスタまたはサイリスタなどの一連の半導体デバイスにより形成することも可能であろう。マルチトランジスタスイッチの実施例は、以下の実施形態において例示される。
【0057】
図4の電源410は、本発明の範囲から逸脱することなく簡素化することができる。二つのこのような実施例は、図8aおよび8bに示されている。この説明で示されている実施形態は、多くの共通要素を含んでいるので、図番を反映する数字が先頭に付いている特定の特徴に番号が割り当てられる番号付け規則に従う。したがって、図4の電源410は、図8の電源810となる。
【0058】
図8aは、整流器838を使用する本発明の単純な実施形態を示している。RF電位を四重極イオントラップの電極812に供給する電源810が示されている。RF増幅器816は、RF信号をRF同調共振トランス810の巻線に供給する。中心タップ828から離れた位置にあるトランス820の末端822は、四重極イオントラップの電極812に接続されている。トランジスタベースのRFオフスイッチ844は、ダイオード838を介して接合部822に接続されている。この回路により、コイルは半波についてのみ短絡されるが、電力損失は、特にRF増幅器816のパワーダウンに伴う場合、十分に大きく、RF振幅を急激に低減する可能性がある。
【0059】
図8bは、一対のスイッチ844を使用する本発明の単純な実施形態を示している。RF電位を四重極イオントラップのリング電極812に供給する電源810が示されている。RF増幅器816は、RF信号をRF同調共振トランス820の巻線に供給する。タップ828から離れた位置にあるトランス820の末端822は、四重極イオントラップの電極812に接続されている。逆に接続された一対のトランジスタベースのRFオフスイッチ844は、RFコイル824間にブリッジを形成する。この回路は、ダイオードを追加せずにコイルを分路する(スイッチ844に示されているダイオードは、寄生ダイオードであるためであり、これは、よく使われるタイプの半導体スイッチに固有のことである)。
【0060】
図9は、スイッチ944が開いて分路が取り除かれるとイオントラップ内のRF場をより高速に再確立することを確実にする本発明の第4の形態による電源910を示している。図9は、図4の特徴の多くを共有する。そのため、上述のように、類似の参照番号が使用され、単に先頭の4が9で置き換えられ、例えば、スイッチ444はスイッチ944になる。
【0061】
図6から分かるように、スイッチ944を開くと生じる電圧波形612は、前の電圧波形610の振幅に到達するように増大する減衰された振幅を持つ。この復帰時間は、実際には、複数のパラメータ、例えば、とりわけ、RF増幅器916の電力およびスイッチ944の内部キャパシタンスに依存する。この問題は、スイッチ944を中心タップ928に接続する分路942から引かれている他の電気的経路960を含めることにより解消することができ、電気的経路960は、さらに、ここで半導体スイッチ964と966の対を含むスイッチ944に伸びている。分路942は、半導体スイッチ966に伸びており、電気的経路960は、半導体スイッチ964に伸びている。ダイオード938と940の出力側の接合部936は、半導体スイッチ964および966の両方に接続され、スイッチ964と966は二つの戻り経路を制御する。電気的経路960は、バッファキャパシタンス962を持ち、これにより、スイッチ944を開いたときにイオントラップ内のRF場をより高速に復帰させることが確実になる。
【0062】
図10は、本発明の第5の実施形態による電源1010を示す。図4、8、および9に関して、多くの特徴が共有されており、したがって、再び説明しない。同じ番号付け規則も、採用され、今度は先頭の4が10で置き換えられている。
【0063】
図10のトランス1020は、第1の対の対称的接続巻線1024および1026、ならびに第2の対の対称的接続巻線1070および1072を持つマルチフィラー二次巻線1022を備え、第1および第2の対は、互いに接続されていない。二次巻線の第1の対と第2の対は両方とも、互いに並んで隣接する形で配列され、それにより、一次巻線1018を通るRF信号は、両方の対の二次巻線内にRF信号を誘導する。二次巻線1024および1026の第1の対は、図9に示されているのとまったく同じ方法で全波整流器1030に接続されている。つまり、全波整流器1030は、バッファキャパシタンス1062を含み、二つの半導体スイッチ1064および1066を含むスイッチ1044に接続されている。しかし、この配列は、このマルチフィラートランス設計では採用する必要はなく、その代わりに、図4の単一の半導体スイッチ444を採用することができる。
【0064】
二次巻線1070および1072の第2の対は、図4および図9に類似の方法で電極1012および1014に接続される、つまり、二次巻線1070および1072の中心タップ1074から離れた位置にある二次巻線1070および1072の末端は、それぞれ、電極1012および1014に接続されている。
【0065】
DCオフセット1058は、二次巻線1070および1072の第2の対の中心タップ1074に接続されている。さらに、DCオフセット1058は、この実施形態のより複雑な設計を組み込んでいるが、図4または図9に似たより単純なDCオフセット電源を使用することが可能である。DCオフセット電源1058は、プラスとマイナスのDCオフセットをそれぞれ供給する二つの別々のオフセット1076、1078を備える。これらのオフセット1076または1078のいずれかを、一対のトランジスタスイッチ1080および1082を使用して選択することができ、それにより、プラスまたはマイナスのDCオフセットのいずれかをイオントラップ内に形成される場に接続することを簡単に選択できる。
【0066】
図11aは、本発明の第6の実施形態による電源を示す。この実施形態は、図11aにも示されている、x軸方向でイオントラップ内に蓄積されたイオンの直交する抽出を行わせるための配列をさらに詳しく示している。抽出を容易にするために、1188に示されているように電極1114’にスロットが用意されている。電極1114’内のスロット1188の類似の抽出配列を、他の実施形態のどれでも使用することができる。図9と同様に、図11aの実施形態では、マルチフィラー二次巻線1122を使用しており、今度は、三対の対称的二次巻線を含む。第1の対の対称的巻線1124および1126は、全波整流器1130に接続されている。前のように、図4の基本スイッチ回路を使用するか、または図11aに示されているように、バッファキャパシタンス1162を含むより複雑なスイッチ1144を代わりに使用することができる。
【0067】
図11aの実施形態では、4本の電極はそれぞれ、別々に取り扱われる。したがって、これからは、1112と1112’、および1114と1114’とラベル付けされる。第2の対の二次巻線の第1の二次巻線1184は、電極1112に給電するが、電極1112’は、第3の対の二次巻線の第1の巻線1170により給電を受ける。電極1114は、二次巻線の第2の対の第2の巻線1186により給電を受けるが、電極1114’は、二次巻線の第3の対の第2の巻線1172により給電を受ける。図11aから分かるように、二次巻線の第1、第2、および第3の対の第1の巻線はすべて、第1の対の巻線の中心タップ1128で一緒に接続される。しかし、第1の対の第2の巻線1126だけが、さらに、中心タップ1128にも接続される。中心タップ1128に近い二次巻線の第2および第3の対の巻線1172および1186のうちの第1の巻線の末端は、代わりに、DCオフセット電源に接続される。
【0068】
図10の場合のように、二つのトランジスタ1180および1182を備えるDCオフセットスイッチ1158を通じて選択可能なプラスおよびマイナスのオフセットは、1176、1178から設定することができる。しかし、これらのDCオフセット電圧を直接二次巻線1122に供給するのではなく、他の高電圧電源スイッチ1190および1192に通す。好ましくは内部抵抗の低いこれらのスイッチ1190および1192は、DCオフセットが直接二次巻線1122に送られるように設定することができる。しかし、他の構成では、これらのスイッチは、独立のHVオフセットを二つの二次巻線1172および1186に印加することができるように設定できる。プッシュHV供給電圧1194は、二次巻線1186上で設定することができるプッシュスイッチ1190を通じて大きなプラス電圧を供給し、それにより、大きなプラス電位を電極1114に印加する。この大きなプラス電位は、イオントラップ内に蓄積されているイオンを、対向する電極1114’に用意されたアパーチャ1188に向けて反発する。対応するプルHV供給電圧1196は、プルスイッチ1192を通じて、二次巻線1172上に、大きなマイナス電位を供給し、それにより、大きなマイナス電位を電極1114’上に印加し、これにより、イオンをそのアパーチャ1188の方に引きつける。したがって、この配列では、小DCオフセットを電極1112、1112’、1114、1114’に印加することでき、これらは、例えば、イオントラップ内にイオンを捕捉するためのポテンシャル井戸を実現することができる。この電位は、例えば、RF電位を電極1112、1112’、1114、1114’に供給するのと同時に供給することすらできる。スイッチ1144を使用してRF電位がスイッチオフされた場合、プッシュHV供給電圧1194およびプルHV供給電圧1196を電極1114および1114’にそれぞれ印加することにより、イオンをイオントラップから直交する方向に放出することができる。
【0069】
もちろん、図11aの回路は、例えば、トランス1120の上半分において二つの二次巻線1122のみを使用し、両方の電極1112および1112’が単一巻線1170または1184から給電を受けるようにすることにより、適合させることができる。
【0070】
また、イオントラップから直交する方向に、ただし、任意の半径方向に、イオンを放出できるように、この考え方を拡張することができる。これは、それぞれの電極1112、1112’、1114、1114’を別々に制御できることで、可能である。さらに、プッシュ/プルDCオフセットを電極1112、1112’に供給し、それにより、放出の方向を制御するように、それぞれの電極1112、1112’、1114、1114’上でDC電位を独立に設定することができる。DCオフセットを適当に選択することで、電極1112、1112’、1114、1114’の間のギャップを通して、電極1114’に設けられているアパーチャ1188を通して、または他の電極1112、1112’、1114に設けられた対応するアパーチャを通してイオンを放出することができる。このような配列の応用例として、複数の分析器または他の処理へ複数回の放出を行うものが考えられる。例えば、第1の放出で、捕捉されたイオンの一部を第1の経路にそって質量分析器に送り、その一方で、第2の放出で、捕捉されたイオンの一部を第2の経路にそって第2の分析器または反応セルに送ることができる。
【0071】
図11bは、空間と時間の両方において、多数のイオンを圧縮するために応用された図11aの実施形態を示している。イオン源1200で発生したイオンは、米国特許第5,420,425の図2によるリニアトラップ1201から、透過光学系(例えば、RF多極もしくは静電レンズまたは衝突セル)を通り、米国特許第5,420,425号の図3の幾何学的形状に従う本質的に双曲面形状の電極1112、1114を持つ湾曲した捕捉装置1203内に導入される。イオンは、このトラップ1203内で槽ガスと衝突してエネルギーを失い、その軸1205にそって捕捉される。湾曲したトラップ1203の入口1202および末端1206アパーチャの電圧は、軸1205にそってポテンシャル井戸もたらすように高められる。これらの電圧は、後で高くすることで、この軸1205にそってイオンをより短いスレッド内に押し込むことができる。RFは、スイッチオフされ、抽出DC電圧は、電極1112、1114に印加される間、アパーチャ1202、1206上のこれらの電圧は、ずっと変化しない。すべての双曲型電極のDCオフセットは、脈動しつつ高電圧にされるため、直交抽出時に結果として得られる電位分布は、アパーチャ1202、1206に向かうイオンビームの発散に有利に作用する。しかしながら、抽出はかなり速く行われるため、この発散は、最小に保たれる。トラップ1203およびその後のイオンオプティクス(ion optics)1207の初期曲率のせいで、イオンビームは、WO02/078046の図6で説明されている方法に類似した方法で、好ましくはOrbitrap型の質量分析器1208への入口に収束する。
【0072】
同じ質量対電荷比のイオンの時間的集束を改善するために、RFのスイッチオフと抽出DC電圧の脈動との間に遅延を導入することも可能である。これにより、速度のより大きなイオンほど、軸1205から離れて行き、イオン座標と速度との間の相関が得られる。W.C.ワイリー、L.H.マクラーレン、Rev.Sci.Instrum.26(1955)1150で示されているように、適切な遅延を選択することにより、分析器1208の入口における焦点面でのイオンビームの時間幅が短縮する。Orbitrap質量分析器では、これにより、イオンのコヒーレンスが改善されるが、TOFMSでは、分解能が直接改善される。
【0073】
RF二次巻線1120上のDC電圧の高速脈動により、すべてのイオンは、所望のエネルギーに高められる(「エネルギーリフト」)。立ち上がり時間がトラップ1203からのイオン抽出の持続時間よりもかなり小さい場合、同じm/z比を持つすべてのイオンは、ほぼ同じ電圧により加速される。しかし、Orbitrap質量分析器1208への注入の場合、m/z値のより低いイオンは、より低いエネルギーでOrbitrap分析器1208内に入るが(捕捉電圧はそれでも低いので)、m/z値のより高いイオンは、より高いエネルギーで分析器1208内に入る。これは、DC電圧の上昇率を下げることにより、例えば、スイッチ1158と対応するRF二次巻線1120との間に抵抗器を入れることにより、実現することが可能である。次いで、この抵抗器と、DC電圧の立ち上がり時間定数を決定する二次巻線1120のキャパシタンス(必要ならば、追加のキャパシタンスが、使用可能である)によりRC鎖が形成される。これは、Orbitrap分析器1208の中心電極の傾斜との一致が最適になるように同調することが可能である。さらに、これらの時定数は、質量依存集束条件を与えてRF場の質量依存効果を補正するために、異なる可能性がある。
【0074】
図11cは、本発明の他の実施形態を示す。図11cの質量分析計は、Orbitrap質量分析器1208が飛行時間型(TOF)分析器1209で置き換えられていることを除き、図11bの分析計に大部分対応している。したがって、トラップ1203から出るイオンは、イオンオプティクス1207により集束され、イオンオプティクス1210によりビームに形成され、イオン鏡1211により反射され、検出素子1212により測定される。TOF検出器1209は、どのような設計のものでもよい。
【0075】
当業者であれば容易に理解するように、上述の実施形態は、単なる実施例にすぎず、本発明の範囲から逸脱することなく、容易に変更できる。
【0076】
例えば、図4、8、9、10、および11に示されている様々な実施形態の特徴のいくつかは、入れ換えて使用することができる。例えば、バッファキャパシタンス62は、オプションであり、これらの図に示されている実施形態のどれについても含めるか、除外することができる。さらに、様々なDCオフセット配列を使用することができる。それに加えて、二次巻線22に対する単一フィラー巻線の間の選択は、状況に応じて、図10のバイフィラー配列と図11のトリフィラー配列の選択、または加えていうと、他のマルチフィラー構成の選択により、変更することができる。
【0077】
スイッチ444、844、944、1044、1058、1144、1158は、上記の実施形態では単極として説明されているが、双極スイッチを使用することができる。これにより、電源410、810、910、1010、1110をプラスとマイナスの両方のイオンで動作させることができる。
【0078】
付属の図面は、単一ダイオード438、440、838、938、940、1038、1040、1138、1140を示している。しかし、これらの整流ダイオードは、複数のダイオードからなるグループとして実現することができる。
【0079】
単一の一次巻線が図に示されているが、これは、反対に巻かれている二つの一次巻線を使用することにより二重RF出力を発生するように変更できる。
【0080】
他の変形は、直線または湾曲したリニアトラップの軸にそったイオンの脈動発生、イオンのAC励起をもたらす追加の要素と上記の回路との組合せ、などを含むことができる。質量分析器は、FT ICR、Orbitrap、TOFMS、他のトラップを含む、パルス型でよいが、さらに、イオンを、RF場を持つか、または持たない、衝突セル、または他の透過もしくは反射イオンオプティクスに送ることが可能である。一般、RF場によるイオン操作を行える装置にとって、本発明は有益である。RFのオフ、オンの脈動も、例えば、衝突誘起解離が望ましい場合に、イオンの励起に使用することが可能である。
【0081】
上記の回路は、当業者であれば理解するように、図2に示されているようなマルチセクション電極を利用できるように変更できる。これは、電極の前、中心、および後のセクションのそれぞれに対し別々の電源を用意することを含むことができるか、または単に、中心セクションとは反対に、異なるDCオフセットを前および後セクションに加えることができる配列を含むことができる。
【0082】
本発明には、上述の単なる四重極イオントラップを超える応用例がある。当業者であれば、本発明は、当業で周知の八重極トラップなどの、任意の個数の電極を持つイオントラップ上で実施できることを容易に理解するであろう。
【0083】
理解されるように、AC信号を電極に供給することは、上の実施形態では説明されていないが、このような供給の組み込みは、当業者にとっては簡単であろう。
【0084】
上の説明では、トラップからイオンを放出するのに先立ってRF場を高速に崩壊させるために分路を主に使用することを取りあげているが、イオントラップ内に場を高速に生成することにもメリットがある。一実施例は、イオントラップにおけるイオンの捕捉である。分路は、イオンがトラップに到来しているときにトランスを短絡し、RFをスイッチオフするように動作させることができる。イオンは、トラップの中心軸に向けて、電極内のアパーチャ(アパーチャ1188など)に通して、または電極間に、注入することができる。DC電圧を電極にかけて、イオンの透過および軸への集束を有利に進めることができる。好ましくは、イオンは、軸に向かって移動するときに著しく減速される。注目しているイオンが軸に達すると、脈動するDC電圧がイオンの捕獲に有利に働き(例えば、すべてのDC電圧が均一にされる)、分路は、RF場をオンに素早く戻すのに使用される。そのため、注目するイオンは、RF場により捕獲される。
【0085】
場の高速スイッチングの他の用途は、イオントラップへの電子注入の間である。イオンは、イオントラップに蓄積することができ、低速の電子が導入され、電子捕獲解離(ECD)が生じる。RF場は、注入された電子を不安定にし、その結果、電子がトラップから失われるため、望ましくない。そのため、分路を使用して、RF場を殺すことができ、次いで、電子の短いバーストを導入して、トラップ内のイオンと反応させ、次いで、分路を使用して、RF場を再確立し、断片を捕捉することができる。RF場は、数サイクルの間のみ崩壊するのが理想的であり、これは、ECDにとっては時間は十分であるが、断片がトラップから漂い出すイオンについては十分に長くはない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】質量分析計を表すブロック図である。
【図2a】リニア四重極イオントラップを示す図である。
【図2b】イオントラップを動作させるために使用されるDC、AC、およびRF電圧を示す図である。
【図2c】イオントラップを動作させるために使用されるDC、AC、およびRF電圧を示す図である。
【図2d】イオントラップを動作させるために使用されるDC、AC、およびRF電圧を示す図である。
【図3】RFおよびAC電圧をイオントラップの電極に印加する回路を示す概略図である。
【図4】RFおよびDC電位をイオントラップの電極に供給する本発明の第1の実施形態による電源を示す図である。
【図5a】図4の電源の全波整流器の周りを流れる電流を示す図である。
【図5b】図4の電源の全波整流器の周りを流れる電流を示す図である。
【図6】図4の電源のトランスの二次巻線中の現在の電圧波形を示す図である。
【図7a】図4の電極に印加されるDC電位を示す図である。
【図7b】図4の電極に印加されるDC電位を示す図である。
【図8a】図4に対応しているが、本発明の第2の実施形態および第3の実施形態を示す図である。
【図8b】図4に対応しているが、本発明の第2の実施形態および第3の実施形態を示す図である。
【図9】図4に対応するが、本発明の第4の実施形態を示す図である。
【図10】図4に対応するが、本発明の第5の実施形態を示す図である。
【図11a】図4に対応するが、本発明の第6の実施形態を示す図である。
【図11b】Orbitrap質量分析器の背景状況において図11aの電源を示す図である。
【図11c】飛行時間型分析器の背景状況において図11aの電源を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
410 電源、412,414 電極、416 RF増幅器、420 RF同調共振トランス、418 一次巻線、420 トランス、422,424,426 二次巻線、428 中心タップ、430 全波整流器回路、432,434 電気的経路、436 接合部、438,440 ダイオード、442 電気的経路、444 RF−オフスイッチ、445 トリガ信号、458 DCオフセット電源、610,612 電圧波形、614 DCパルス、810 電源、812 四重極イオントラップの電極、816 RF増幅器、820 トランス、822 接合部、824 RFコイル、828 タップ、838 整流器、844 RFオフスイッチ、910 電源、916 RF増幅器、928 中心タップ、938,940 ダイオード、944 スイッチ、960 電気的経路、962 バッファキャパシタンス、964,966 半導体スイッチ、1010 電源、1012,1014 電極、1018 一次巻線、1020 トランス、 1024,1026,1070,1072,1022 二次巻線、1030 全波整流器、1044 スイッチ、1058 DCオフセット、1062 バッファキャパシタンス、1064,1066 半導体スイッチ、1074 中心タップ、1076,1078 オフセット、1080,1082 トランジスタスイッチ、1112,1112’,11141,1114’電極、1122 マルチフィラー二次巻線、1124,1126 対称的巻線、1128 中心タップ、1130 全波整流器、1144 スイッチ、1158 DCオフセットスイッチ、1162 バッファキャパシタンス、1170 第1の巻線、1172 第2の巻線、1180,1182トランジスタ、1184 二次巻線、1186 第2の巻線、1188 スロット、1190,1192 高電圧電源スイッチ、1194 プッシュHV供給電圧、1196 プルHV供給電圧、1200 イオン源、1201 リニアトラップ、1202 入口、1203 捕捉装置、1205 軸、1206 末端、1208 Orbitrap型の質量分析器、1209 TOF検出器、1211 イオン鏡、1212 検出素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計高周波電源であって、
高周波信号供給源と、
少なくとも一つの巻線を含み、前記高周波信号供給源により供給される信号を受信し、出力高周波信号を供給し、前記質量分析計のイオン蓄積装置の電極に供給するように配列されているコイルと、
スイッチを備え、第1の開いている位置と第2の閉じられている位置とを切り替えるように動作し、前記コイル出力を短絡する、分路とを備えることを特徴とする質量分析計高周波電源。
【請求項2】
請求項1に記載の電源であって、さらに、前記高周波信号供給源に接続された一次巻線と二次巻線とを持つ変換器を備え、前記二次巻線は、請求項1に記載の前記コイルに対応することを特徴とする電源。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源であって、さらに、前記コイル出力間に入れられた全波整流器を備え、前記スイッチは、前記コイル出力を前記全波整流器の出力点に連結する電気的経路上に配置されていることを特徴とする電源。
【請求項4】
請求項3に記載の電源であって、前記二次巻線は、実質的に中心にあるタップを備え、前記スイッチは、前記中心タップと前記全波整流器の前記出力点との間に渡される前記電気的経路上に配置されることを特徴とする電源。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電源であって、前記全波整流器は、ダイオードを備えることを特徴とする電源。
【請求項6】
請求項5に記載の電源であって、前記全波整流器は、一対のダイオードを備え、一方は順方向構成で前記二次巻線のそれぞれの端に電気的に接続され、両方とも前記出力点において前記スイッチを含む前記電気的経路に電気的に接続され、前記電気的経路は、それにより、前記全波整流器の戻り電流経路をもたらすことを特徴とする電源。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の電源であって、前記整流器は、トランジスタまたはサイリスタを備えることを特徴とする電源。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電源であって、前記スイッチは、単極高電圧スイッチであることを特徴とする電源。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電源であって、さらに前記スイッチに接続されたバッファキャパシタンスを含むことを特徴とする電源。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電源であって、前記トランスは、高周波同調共振トランスであることを特徴とする電源。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の電源であって、さらに前記二次巻線に接続されたDC電源を含むことを特徴とする電源。
【請求項12】
請求項11に記載の電源であって、前記二次巻線は、実質的に中心にあるタップを備え、DC電源は、前記中心タップに接続されることを特徴とする電源。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の電源であって、前記二次巻線は、マルチフィラー巻線を含むことを特徴とする電源。
【請求項14】
請求項13に記載の電源であって、前記マルチフィラー巻線は、互いに隣接して配置され、密結合を形成し、前記分路は、すべてのフィラー巻線に接続されないことを特徴とする電源。
【請求項15】
請求項14に記載の電源であって、前記分路は、前記フィラー巻線のうちの一つにのみ接続されることを特徴とする電源。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の電源であって、前記高周波信号供給源は、高周波増幅器を備えることを特徴とする電源。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の電源であって、前記トランスの前記一次巻線は、反対の方向の二つの巻線を含むことを特徴とする電源。
【請求項18】
イオン源、イオン蓄積装置、質量分析器、および前記請求項のいずれか一項に記載の前記電源を備える質量分析計であって、
前記イオン蓄積装置は、前記イオン源からイオンを受け取るように構成され、中にイオンを蓄積し、イオンを前記質量分析器に放出する動作が可能な電極を備え、
前記質量分析器は、前記イオン蓄積装置により放出されたイオンから質量スペクトルを集める動作が可能であることを特徴とする質量分析計。
【請求項19】
請求項18に記載の質量分析計であって、前記質量分析器は、静電気のみ捕捉型、飛行時間型、イオンサイクロトロン共振セル型、またはイオントラップ型であることを特徴とする質量分析計。
【請求項20】
請求項18または19に記載の質量分析計であって、前記イオン蓄積装置は、湾曲した長手方向軸を持つ湾曲したイオントラップであることを特徴とする質量分析計。
【請求項21】
請求項20に記載の質量分析計であって、前記電極は、双曲面形状の表面を持つことを特徴とする質量分析計。
【請求項22】
請求項18に記載の質量分析計であって、第1および第2の質量分析器を備え、前記第1の質量分析器は、前記イオン源からイオンを受け取り、その質量対電荷比に従って前記イオンを処理するように構成され、前記イオン蓄積装置は、前記第1の質量分析器からイオンを受け取り、イオンを前記第2の質量分析器に放出し、前記第2の質量分析器は、前記イオン蓄積装置から放出されたイオンから質量スペクトルを集める動作が可能であることを特徴とする質量分析計。
【請求項23】
請求項22に記載の質量分析計であって、前記第1の質量分析器は、透過モードで動作するように構成されることを特徴とする質量分析計。
【請求項24】
請求項22または23に記載の質量分析計であって、前記第1の質量分析器は、四重極イオントラップまたは扇形磁場型イオントラップであることを特徴とする質量分析計。
【請求項25】
請求項22から24のいずれか1項に記載の質量分析計であって、前記第2の質量分析器は、静電気のみトラップ、飛行時間型検出器、イオンサイクロトロン共振セルまたはイオントラップであることを特徴とする質量分析計。
【請求項26】
質量分析計イオン蓄積装置を動作させる方法であって、
高周波信号を、イオン蓄積装置の電極に接続されている少なくとも一つの巻線を含むコイルに供給し、それにより、前記イオン蓄積装置内に高周波封じ込め場を形成し、ある一つの範囲または複数の範囲の質量電荷比を持つイオンを封じ込めること、および
スイッチを動作させ、それにより、前記コイル間に置かれた分路を接続し、それにより、前記コイルを短絡し、前記高周波封じ込め場をスイッチオフすること、または
スイッチを動作させ、それにより、前記分路の接続を断ち、前記高周波封じ込め場をスイッチオンすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記コイルは、前記質量分析計のトランスの二次巻線であり、前記高周波信号を前記コイルに渡すことは、先立つ高周波信号を前記トランスの一次巻線に通し、それにより、前記高周波信号を前記二次巻線間に出現させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26または27に記載の方法であって、さらに、前記分路が前記高周波信号の位相と同期して接続または切断されるように前記スイッチを動作させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記高周波信号は、実質的に、その平均値を通過するときに前記スイッチを動作させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項26から29のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、前記分路が前記二次巻線間に接続されているときに前記一次巻線を通る前記高周波信号を停止することを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項26から29のいずれか1項に記載の方法であって、さらにDCオフセットを前記二次巻線に印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記DCオフセットを立ち上がり時間の短いDC信号として印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、時間依存DCオフセットを印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31から33のいずれか1項に記載の方法であって、前記スイッチを動作させて前記分路を接続し、前記高周波封じ込め場をスイッチオフすることと、遅延の後に限り、前記DCオフセットを前記電極に印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項31から34のいずれか1項に記載の方法であって、前記二次巻線への接続を介して前記DCオフセットを印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記DCオフセットを前記二次巻線の中心タップに印加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項31から36のいずれか1項に記載の方法であって、DCオフセットを印加し、それにより前記イオン蓄積装置内にイオンを捕捉することを含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項31から37のいずれか1項に記載の方法であって、DCオフセットを印加し、それにより前記イオン蓄積装置からイオンを放出することを含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項26から38のいずれか1項に記載の方法であって、
前記スイッチを動作させて、前記高周波封じ込め場をスイッチオフすることと、
イオンを前記イオン蓄積装置内に導入することと、
前記スイッチを動作させて、前記高周波封じ込め場をスイッチオンし、それにより、前記イオン蓄積装置内にイオンを捕捉することを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項26から39のいずれか1項に記載の方法であって、前記高周波封じ込め場は、スイッチオンされて、前記イオン蓄積装置内にイオンを捕捉することと、
前記スイッチを動作させて前記高周波封じ込め場をスイッチオフし、短い遅延の後、前記スイッチを動作させて前記高周波封じ込め場をスイッチオンすることと、前記短い遅延の間に、電子を前記イオン蓄積装置内に導入することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項26から30のいずれか1項に記載の方法であって、前記イオン蓄積装置は、前記高周波封じ込め場により捕捉されたイオンを封じ込めることと、
前記スイッチを動作させて、前記高周波封じ込め場をスイッチオフすることと、
DCオフセットを選択的に前記電極に印加し、それにより、所望の方向に前記イオン蓄積装置に捕捉されたイオンを放出させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
質量分析計から質量スペクトルを集める方法であって、
イオン源を動作させてイオンを発生させることと、
前記イオン源により発生したイオンをイオン蓄積装置内に導入することと、
請求項26から41のいずれか1項に記載の方法により前記イオン蓄積装置を動作させて、それにより、前記蓄積装置内にイオンを封じ込め、イオンを質量分析器に放出することと、
前記質量分析器を動作させて、前記イオン蓄積装置により放出されたイオンから質量スペクトルを集めることを含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
質量分析計から質量スペクトルを集める方法であって、
イオン源を動作させてイオンを発生させることと、
前記イオン源により発生するイオンを、中心の湾曲した長手方向軸を形成する形状の細長い電極を持つイオントラップに導入することと、
請求項26から41のいずれか1項に記載の方法により前記イオントラップを動作させて、それにより、イオンを捕捉し、イオン経路が質量分析器の入口に収束するように前記長手方向軸に実質的に直交する前記経路上でイオンを放出することと、
前記質量分析器を動作させて、前記イオントラップから放出されたイオンから質量スペクトルを集めることを含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、前記質量分析器は、静電気のみ捕捉型質量分析器であることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項26から41のいずれか1項に記載の方法により、コンピュータに読み込まれたときに、イオン蓄積装置を前記コンピュータに制御させるプログラム命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項46】
請求項25から41のいずれが一項に記載の方法により、イオン蓄積装置を制御するようにプログラムされることを特徴とする制御装置。
【請求項47】
図4から11のいずれかを参照しつつ本明細書で実質的に説明されているような質量分析計高周波電源であることを特徴とする質量分析計高周波電源。
【請求項48】
図4から11のいずれかを参照しつつ本明細書で実質的に説明されているような質量分析計であることを特徴とする質量分析計。
【請求項49】
図4から11のいずれかを参照しつつ本明細書で実質的に説明されているような質量分析計イオン蓄積装置を動作させることを特徴とする方法。
【請求項50】
図4から11のいずれかを参照しつつ本明細書で実質的に説明されているような質量分析計から質量スペクトルを集めることを特徴とする方法。
【請求項51】
図4から11のいずれかを参照しつつ本明細書で実質的に説明されているようなコンピュータプログラムであることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項52】
図4から11のいずれかを参照しつつ本明細書で実質的に説明されているような制御装置であることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【公表番号】特表2008−503864(P2008−503864A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517447(P2007−517447)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002444
【国際公開番号】WO2005/124821
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】