説明

質量流量制御装置及びガス供給ユニット

【課題】 流量制御のオーバーシュート現象を解消し、且つ集積ユニット化を可能とするコンパクトな質量流量制御装置と、この質量流量制御装置を備えたコンパクトなガス供給ユニットを提供する。
【解決手段】 質量流量を制御する流量制御弁機構10と、前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動信号を出力する流量制御弁制御手段18と、を設けてなる質量流量制御装置50において、前記流量制御弁機構10の上流側及び/又は下流側に、遮断弁機構52、54を介設し、遮断弁機構52、54の給排気口をソレノイド弁機構102と直接連通させるように、弁ブロック体80と一体として設け、且つ前記流量制御弁制御手段18は、前記ソレノイド弁機構102を動作させるソレノイド弁駆動信号S3、S4を出力するとともに、前記バルブ駆動信号S2と、前記ソレノイド弁駆動信号S3、S4とを同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給、特に半導体製造用ガスの供給に用いられる質量流量制御装置及びガス供給ユニットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造に用いられるガス供給には、プロセスガスの高純度化や流量の高精度化が求められ、ガス供給を制御する各種の流体制御機器を集積ユニット化されたものが供されている。
例えば、図6に示すガス供給ユニット151は、上流側より手動遮断弁S、圧力制御弁R、圧力センサT、空圧駆動遮断弁A1、マスフローコントローラM、及び空圧駆動遮断弁A2を直列に並べ、各々の機器を(図示しない)V字の流路を有した流路ブロックV2からV6で連結し、上流及び下流端に継手ブロックV1及びV7を連結させたものである。そして、(図示しない)制御装置より、マスフローコントローラMへ流量設定信号が出力されるとともに、(図示しない)電磁弁へ動作信号を出力し、供給されたエアー圧で空圧駆動遮断弁(A1、A2)を動作させるように構成されている。
【0003】
このとき、マスフローコントローラMは、流量設定信号を受け、設定流量に一致するように制御バルブの開度を調整する。ところが、電磁弁へ出力された動作信号は、電磁弁を動作させ、必要な空気圧が空圧駆動遮断弁(A1、A2)に到達してはじめて空圧駆動遮断弁(A1、A2)が動作するので、マスフローコントローラMと空圧駆動遮断弁(A1、A2)との動作開始タイミングにずれが生じていた。
例えば、プロセスガスを導入するとき、動作開始タイミングにずれが生じると、空圧駆動遮断弁(A1、A2)が、開状態でないにもかかわらずマスフローコントローラMが流量制御を開始することとなる。マスフローコントローラMは、流量設定信号に相当するように制御バルブの開度を調整するが、実際にはプロセスガスが流動してこないために、必要以上に制御バルブを開方向へ制御してしまうこととなる。
しかして、空圧駆動遮断弁(A1、A2)が開状態になったときには、下流側へ流量設定信号で指示された流量以上のプロセスガスが流れること(所謂、オーバーシュート現象)となり、制御流量の精度が悪くなるという課題があった。
また、マスフローコントローラMの流量制御の精度を確保するために、マスフローコントローラMへ供給するガスの圧力を制御する圧力制御弁Rを必ずマスフローコントローラMの上流に配置せざるを得ず、ガス供給ユニット151が大型化してしまうという課題があった。
【0004】
制御流量精度を改善する質量流量制御装置は、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されている。特許文献1には、マスフローコントローラの流量制御弁の下流側に垂直流路を設け、ここに流路を開閉する遮断弁をマスフローコントローラと同じ本体内に一体的に対向配置したマスフローコントローラが記載されている。更に、遮断弁を開あるいは閉の二位置動作を指示する開閉器を設け、この開閉器の指示信号をマスフローコントローラの制御回路部に取り込んで、流量制御弁と遮断弁の制御を連動させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ガスの流路の上流側に、流路を開閉する検定用バルブ部と、所定の容量を有する検定用タンク部と、流体の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段とをそれぞれ設け、検定用バルブと検定用タンク部と圧力検出手段とを用いて質量流量検定動作を行うように制御する検定制御手段を備えるように構成した質量流量制御装置が開示されている。更に、ガス流路の下流側には零点測定バルブを備え、また、検定用バルブと零点測定バルブを動作させる電磁式の三方弁を用いてこれを内蔵させている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−154022号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2006−38832号公報(図7、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まず、質量流量制御装置をガス供給ユニットへ組み込むためには、寸法上の制約を受けることとなる。即ち、全長99.5mm×幅38.15mm(主に、日本国内で採用されている寸法=1.5“サイズ)又は全長105mm×幅28.6mm(主に、米国で採用されている寸法=1.125”サイズ)とするSEMI規格を満足する必要がある。
【0008】
特許文献1に開示の技術によると、空気出入部材がマスフローコントローラの下部に突出し、集積ユニット化する際の妨げとなるという課題がある。また、遮断弁を駆動させる空気を導入出させる開閉器と遮断弁とは、空気圧の二次配管を通じて行われるために、依然として、遮断弁の動作遅れを解消できないという課題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示の技術によると、電磁式三方弁を検定用バルブ、又は零点測定バルブに対して、どのように設けるかの構成を示されておらず、集積ユニット化及び遮断弁の動作遅れの課題を解決できていないという問題があった。
即ち、特許文献2に記載の遮断弁は、作動空気圧を直接金属製ダイアフラムに付勢して金属性ダイアフラムを弁座に押し当て流路を遮断するものである。しかしながら、金属製ダイアフラムには分布荷重を加えることとなるために、一般的に供給される空気圧(例えば、0.4から0.7MPa)では、十分な遮断性能を発揮できなかった。よって、遮断弁及び電磁弁を質量流量制御装置の下部に収納することができず、ガス供給ユニットをコンパクトに集積化する上での妨げとなっていた。
【0010】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、遮断弁の動作遅れによる流量制御のオーバーシュート現象を解消し、且つ集積ユニット化を可能とするコンパクトな質量流量制御装置と、この質量流量制御装置を備えたコンパクトなガス供給ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の質量流量制御装置は、少なくとも、バルブ駆動信号により弁開度を変えることによって質量流量を制御する流量制御弁機構と、外部から入力される流量設定信号に基づいて前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動信号を出力する流量制御弁制御手段と、を設けてなる質量流量制御装置において、前記流量制御弁機構の上流側及び/又は下流側に、作動気体を給排気させることによって開閉される遮断弁機構を介設し、前記遮断弁機構の作動気体給排気口と、前記作動気体を給排気させるソレノイド弁機構の作動気体出力ポートとを直接連通させるように、前記質量流量制御装置の弁ブロック体に前記遮断弁機構および前記ソレノイド弁機構を一体として設け、且つ前記流量制御弁制御手段は、前記ソレノイド弁機構を動作させるソレノイド弁駆動信号を出力するとともに、前記バルブ駆動信号と、前記ソレノイド弁駆動信号とを同期させることを特徴としている。
【0012】
したがって、質量流量制御装置の弁ブロック体に遮断弁機構とソレノイド弁機構とを一体として設け、流量制御弁機構と、ソレノイド弁機構との動作を同期させるように制御するので、ソレノイド弁機構から遮断弁機構へ作動気体の給排が最短となり、流量制御弁機構と遮断弁機構との動作タイミングが同期化され、特に弁開時に発生する流量制御のオーバーシュート現象を防止することができる。
【0013】
本発明において、前記遮断弁機構は、前記質量流量制御装置の弁ブロック体に設けた弁室と、前記弁室に対して流体を流入させる流入路と、前記弁室から流体を流出させる流出路と、前記流入路の流入口と前記流出路の流出口のいずれか一方よりなる弁口に設けられた弁座と、前記弁座に対向させて前記弁室を区画するように配置されると共に、前記弁座に当接して前記弁口を遮断する金属製のダイアフラム弁体と、前記ダイアフラム弁体を押圧するための押圧手段とを備え、前記押圧手段は、前記弁室の反対側に前記ダイアフラム弁体に対向するように配置された弾性体よりなるアクチュエータ板と、前記アクチュエータ板と前記ダイアフラム弁体との間に介設させた押圧突起部と、前記アクチュエータ板により区画されて作動気体が給排される作動室と、により構成することができる。
【0014】
また、前記ソレノイド弁機構は、三方弁体と、該三方弁体が内装された三方弁室と、該三方弁室へ作動気体を導入する作動気体入力ポートと、前記作動室へ連通する作動気体出力ポートと、該三方弁室と該作動気体入力ポートとが連通する周囲に設けられた三方弁第一弁座と、該三方弁室において該三方弁第一弁座に対向して設けられた排気ポートと、該三方弁室と該排気ポートとが連通する周囲に設けられた三方弁第二弁座と、作動電圧が印加されたときに該三方弁体を動作させる電磁コイルとすることができる。
これらの構成によれば、質量流量制御装置の弁ブロック体に遮断弁機構とソレノイド弁機構とを内蔵させることが容易となる。
【0015】
また、本発明において、流体を流す流路に、流量を検出して流量信号を出力する流量検出手段と、流体の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段を介設し、前記流量制御弁制御手段は、前記圧力検出信号を用いることなく前記流量信号と前記流量設定信号とに基づいて流量の制御を行う第1制御モードと、前記圧力検出信号から得られる圧力変化量と前記流量設定信号とに基づいて流量の制御を行う第2制御モードとを選択的に切替えるように構成することができる。
【0016】
本発明は、ベースプレートの上面に、複数の流路ブロックを介して連結された複数の流体制御機器が搭載されたガス供給ユニットにおいて、前記流体制御機器の少なくともひとつは、請求項1乃至4のいずれかに規定した質量流量制御装置であるガス供給ユニットとすることができる。
【0017】
したがって、質量流量制御装置内部に必要な遮断弁機構を備えることとなるので、ガス供給ユニットを大幅に小型化することができ、デッドスペースが最小となることによって、ガス置換性やガスの高純度化が容易となる。更に、遮断弁機構の制御を質量流量制御装置で行うことが可能となるので、ガス供給ユニットの配線、作動気体配管、及び制御装置が簡便となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、質量流量制御装置の弁ブロック体に遮断弁機構とソレノイド弁機構とを一体として設け、流量制御弁機構と、ソレノイド弁機構との動作を同期させるように制御するので、ソレノイド弁機構から遮断弁機構へ作動気体の給排が最短となり、流量制御弁機構と遮断弁機構との動作タイミングが同期化され、特に弁開時に発生する流量制御のオーバーシュート現象を防止することができるコンパクトな質量流量制御装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる質量流量制御装置の一実施例である。図2は、本発明の実施の形態に係わる質量流量制御装置の遮断弁装置を示す拡大図である。図3は、本発明と従来技術との実施比較例である。図4は、本発明の実施の形態に係わる質量流量制御装置の他の実施例である。図5は、本発明の実施の形態に係わるガス供給ユニットの一実施例である。
【0020】
図1に示すように、質量流量制御装置50は、例えば質量流量検出手段8、流量制御弁機構10及び例えばマイクロコンピュータ等よりなる制御手段18を備えている。上記質量流量検出手段8は、バイパス管12、センサ管14、センサ回路16等を有しており、ここで検出した流量信号S1を上記制御手段18に向けて出力するようになっている。上記流量制御弁機構10は、流量制御弁20、これを駆動するアクチュエータ26、制御手段18から出力されるバルブ駆動信号S2を受けて、アクチュエータ26に向けてバルブ駆動電圧を出力するバルブ駆動回路28等を有している。そして、上記制御手段18は、これへ例えばホストコンピュータ等の外部より入力される流量設定信号S0で示される流量と上記流量信号S1で示される流量とが一致するように上記流量制御弁20の弁開度を制御し得るようになっている。
【0021】
一方、上記質量流量制御装置50の上流側には、遮断弁装置52と、所定の容量を有する検定用タンク部56と、流体であるガスの圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段58とを備えている。また、上記検定用タンク部56は、例えばステンレススチール等よりなるタンク本体68よりなり、このタンク本体68は所定の流量、例えば40cm程度の容量に設定され、流れるガスが必ずこのタンク本体68内を通過するようになっている。また上記タンク本体68の近傍、すなわちここではタンク本体68の天井部の上面には、温度検出手段70として例えば白金温度センサが取り付けられており、ここで検出した温度を示す信号を制御手段18へ入力できるようになっている。
【0022】
そして、上記圧力検出手段58から出力される圧力検出信号S5を用いて、後述する第2制御モードで流量制御弁機構10を制御し得るように構成されている。また、遮断弁装置52と上記検定用タンク部56と、上記圧力検出手段58とを用いて、上記流量制御弁20の流量制御の精度を検定する質量流量検定動作を行うように、制御手段18が制御し得るように構成することもできる。
【0023】
また、上記質量流量制御装置50の下流側には、遮断弁装置54が備えられ、遮断弁装置54と、質量流量検出手段8とを用いて、上記流量制御弁20の流量制御における零点検定動作を行うように、制御手段18が制御し得るように構成されている。
また、遮断弁装置52および54は、半導体製造装置側へ流すガスを完全に遮断する必要がある時にも用いられる。
このように構成された質量流量制御装置50は、例えば、上述のSEMI規格(全長99.5mm×幅38.15mm)を満足する寸法に収められる。
【0024】
次に、上記遮断弁装置52、54の構成について詳しく説明する。ここでは、上記2つの遮断弁装置52、54は全く同じ構成となっているので、ここでは後流側の遮断弁装置54を例にとって説明する。
上記下流側の遮断弁装置54は、図2に示すように、内部に一時的に気体が溜る弁室36と、これに制御流体であるガスを流入させる流入路34と、この弁室36よりガスを流出させる流出路40とを有している。
上記流入路34の上端部は、上記流量制御弁20に直接的に連通されるか、または別の流路を形成するかいずれかで、結果的にこの流入路34の下端部である流入口は、この遮断弁装置54の弁口42となっている。この弁口42の端部(図中の下端)には、例えばフッ素樹脂(PTFE、PCTFEなど)よりなるリング状の弁座44が先端方向へ少し突出させて設けられている。尚、弁座44は弁口42部分を加工して金属製弁座としても良い。
【0025】
また上記流出路40は、この弁室36に臨ませて設けた流出口78より延びており、その先端部は、流体出口6B(図1参照)として構成される。上記流入路34、流出路40及び弁室36は、例えばステンレスよりなる塊を削って穴や凹部を加工することにより弁ブロック体80中に形成することができる。尚、この弁ブロック体80は、上記流量制御弁20と共通に使用されるようになっていて、質量流量制御本体50内に遮断弁装置54が一体に設けられている。上記弁室36は、上記取り付け凹部74の一番奥に位置するように設けられ、この弁室36の下方は、屈曲可能になされた金属製のダイアフラム弁体38によって気密に区画される。
【0026】
そして、このダイアフラム弁体38の上記弁室36とは反対側には、このダイアフラム弁体38を押圧して上記弁口42を開閉するための押圧手段82が設けられる。この押圧手段82は、上記弁室36の反対側に上記ダイアフラム弁体38に対向するように配置した弾性体よりなるアクチュエータ板84と、このアクチュエータ板84により区画されて作動気体が給排される作動室86と、この作動室86内へ作動気体を給排させる作動気体給排機構88とにより主に構成されている。
【0027】
具体的には、まず、上記ダイアフラム弁体38は、厚さが例えば0.1mm程度の屈曲可能になされた円板状の金属板よりなり、断面が湾曲して円弧状に成形されている。このダイアフラム弁体38の直径は、例えば22mm程度に設定される。このダイアフラム弁体38は、取り付け凹部74の一番奥に位置され、その周辺部を、リング状に形成された例えばステンレス製のダイアフラム押え90によって気密に押え込むようになっている。そして、このダイアフラム押え90の上記ダイアフラム弁体38に接する面とは反対側の面には、断面が三角形の凹凸状になされた複数条、例えば2条のシール溝がその周方向に沿ってリング状に成形されており、ここにアクチュエータ板84を押し付けることでこの部分のシール性を高めるようになっている。
【0028】
またアクチュエータ板84は、例えば厚さが0.4mm程度の円板状の弾性体よりなり、その周辺部にはリング状に係合突起が形成されている。この弾性体としては、天然ゴムや合成ゴムを使用することができ、例えばエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム等を用いることができる。
また上記アクチュエータ板84の中央部と、上記ダイアフラム弁体38の中央部との間には、押圧突起部92が介設されている。図示例では、この押圧突起部92は、黄銅やステンレスからなり直径が10mm程度の円板状の突起としてボタン状に形成され、上記アクチュエータ板84側に取り付け固定されている。
【0029】
具体的には、この押圧突起部92の中心には、突起ネジ94が設けられ、この突起ネジ94をアクチュエータ板84の中心を貫通させて、その反対側より中央部にネジ穴を有する円板状の案内用突起部材としてボタンホルダ96により上記突起ネジ94に締め付けることにより、上記押圧突起部92を取り付け固定している。そして、この押圧突起部92が上記アクチュエータ板84と接する面には、断面が三角形の凹凸状になされた複数条、例えば2条のシール溝がその周方向に沿ってリング状に形成されており、この部分のシール性を高めるようになっている。
【0030】
そして、このように形成されたアクチュエータ板84の周辺部を、例えばステンレスよりなるリング状の板押え部材98によって押圧するようになっている。この際、上記板押え部材98には、上記アクチュエータ板84の係合突起84Aを嵌装するための嵌合凹部98Aが形成されており、組立て装着した時に上記係合突起84Aの半球状の先端部を押し潰して、この部分のシール性を高く維持できるようになっている。
【0031】
また上記作動気体給排機構88は、電磁弁102と、この周囲を覆う円筒体状のケーシング104とにより主に構成されている。上記ケーシング104内に収容される電磁弁102としては、ここでは例えば3方弁式の電磁弁が設けられ、電磁コイル106によって3方弁弁体108を駆動できるようになっている。ここで上記3方弁弁体108の1つ目のガス口はケーシング104に形成した流路108Aを介して、上記作動室86内へ連通され、2つ目の出口はケーシング104に形成した流路108Bを介して作動気体入口76(図2参照)へ連通され、3つ目のガス口は流路108Cを介して大気側へ連通されている。ここで電磁弁102の電源は、制御手段18より供給され、通電、非通電の制御は、制御手段18によって行われる。即ち、非通電時には、弁体108はバネ130の手段により流路108Bの開口部を閉じる方向に押し付けられて閉弁となっている。このとき、流路108Aと流路108Cが連通された状態となり、作動気体は作動室86へは流れ込まない。一方、通電時には、弁体108は、電磁弁102が発生する電磁力によりバネ130を押し返す方向に移動し、流路108Cの開口部を閉じる方向に押し付けられて閉弁となる。このとき、流路108Aと流路108Bが連通され、作動気体が作動室86へ流れ込む。
【0032】
上記ケーシング104の外周にはオネジ110が形成されており、これを上記取り付け凹部74の内壁面の先端に設けたメネジ112に螺合させてケーシング104を奥に向かって締め付けることによって、上記各部材を弁室36側へ向けて押圧して取り付け固定できるようになっている。
また、この取り付け凹部74の内壁と上記ケーシング104との間には、例えばOリング等よりなるシール部材114が設けられて気密性を保持している。また、ケーシング104と、この内側に設けられる電磁弁102との間にもOリング等よりなるシール部材116が設けられており、気密性を保持している。更に、上記電磁弁102の3方弁弁体108を覆う蓋部材120にも上記電磁弁102との間でOリング等よりなるシール部材118が設けられており、この部分の気密性を保持するようになっている。
【0033】
これにより、上記ケーシング104の上端面によって、上記作動室86の反対側の区画壁を形成するようになっており、必要に応じて上記流路108Aを介して作動室86内へ作動気体を供給し、上記3方弁弁体108を切り替えることによって、この作動室86内の作動気体を上記流路108Cを介して大気開放できるようになっている。
【0034】
次に以上のように構成された本発明の質量流量制御装置の第1制御モード及び遮断弁装置の動作について説明する。ここで言う第1制御モードとは、所謂通常状態での制御モードを意味している。
上記質量流量制御装置50の制御手段18は、これへ例えばホストコンピュータ等の外部より入力される流量設定信号S0で示される流量と上記流量信号S1で示される流量とが一致するように上記流量制御弁20の弁開度を例えばPID制御法で制御し続けることになる。これにより下流側の半導体製造装置等には、必要とする質量流量の処理ガスが供給されることになる。
【0035】
ここで処理ガスを流す時には、最上流側の遮断弁装置52及び最下流側の遮断弁装置54は、流量設定信号S0が外部から入力されると同時に、制御手段18から遮断弁動作信号S3、S4が出力され、開方向へ動作する。従って、流量制御弁20で流量を制御されたガスは、遮断弁装置54の流入路34内を流れて弁口42より弁室36内に流入し、更に流出口78を介して流出路40側へ流れ出て行き、流体出口6B(図1参照)から半導体製造装置に向けて流れて行く。
【0036】
また、処理ガスの使用系である半導体製造装置の稼働状態によっては、処理ガスの供給を完全に停止する必要が頻繁に生ずることになる。このような場合には、この質量流量制御装置50の最下流側に設けた遮断弁装置54を作動させてこれを全閉状態とし、処理ガスの流れを完全に停止させることになる。
具体的には、上述したようにこの遮断弁装置54の作動気体給排機構88の3方弁方式の電磁弁102を作動させることにより、これに0.4〜0.7MPaで供給されている工場側の作動気体(具体的には作動空気)を、流路108B、3方弁弁体108及び流路108Aを介して作動室86内へ導入する。この作動室86内へ上記作動気体が導入されると、この作動室86を区画するゴム製のアクチュエータ板86は図3中において上方向へ向かうように弾性的に屈曲変形し、これによりダイアフラム弁体38側に向かう力Fが発生する。
【0037】
ここで、上記ダイアフラム弁体38の中央部とアクチュエータ板84の中央部に設けた押圧突起部92の先端部とは常に接しているので、上記ダイアフラム弁体38の中央部は上記押圧突起部92によって集中的に押圧されることになる。この結果、上記ダイアフラム弁体38を容易に屈曲変形させて、これを弁座44に着座させ、弁口42を完全に閉じて処理ガスの流れを完全に遮断することができる。実験の結果、外部より供給される作動気体の圧力が0.35MPaでもこの遮断弁装置54の開閉作動を確実に行うことができた。
【0038】
この処理ガスの遮断後に、処理ガスを再度流す場合には、上述したように上記電磁弁102を駆動して3方弁弁体108を動かし、上記作動室86内に導入されていた加圧状態の作動気体を、流路108Cを介して大気開放させる。これにより、上記アクチュエータ板84は自らの弾発復帰力と上記ダイアフラム弁体38の弾性復元力によって弁座44から離れて元の位置(ノーマリーオープン状態)に戻り、この弁口42を開放することになる。
【0039】
しかして、作動流体は流路108Bに常に0.4〜0.7MPaで供給されている状態であり、遮断弁52、54の動作信号S3、S4が入力されると3方弁弁体108が開き、流路108Aと作動室86とを作動流体で満たせば、遮断弁52、54が動作することができるので、遮断弁動作信号S3、S4が入力されてから遮断弁52、54が動作するまでの時間差が極めて短い。
【0040】
図3は、遮断弁動作信号S3、S4が入力されてから遮断弁52、54が動作するまでの時間を従来技術と比較した実験例である。比較例1から3は、遮断弁装置とソレノイド弁機構との距離をそれぞれ2m、20m、30mとし、作動気体圧力を0.4MPaと0.7MPaとにおいて、動作信号が入力されてから遮断弁が閉塞するまでの時間を比較した。
【0041】
その結果、図3に示すように、本発明の質量流量制御装置に一体に組み込まれた遮断弁装置は、従来比較例と比較して、半分以下の時間で動作し、ほぼ遮断弁装置と流量制御弁機構との動作タイミングが同期化され、遮断弁の弁開時における質量流量制御装置のオーバーシュート現象を防止することができた。
【0042】
次に、第2制御モードについて、簡単に説明する。質量流量制御装置を用いた半導体製造プロセスにおいては、予期しない原因や処理ガスの切替えに伴い圧力変動が生じる場合がある。質量流量制御装置へ供給される処理ガスの圧力変動が急激に生じると流量制御の精度が短時間影響を受けるときがある。第2制御モードは、質量流量制御装置へ供給されるガスに圧力変動が生じた場合にあっても流量制御の精度を悪化させない制御モードとして設けられている。
【0043】
まず、上述の第1制御モードにおいて、圧力検出手段58から出力される圧力検出信号S5は、例えば10msecごとに制御手段18へ出力され、制御手段18に記憶されるとともに、10msecごとの圧力変化量を監視している。一方、制御手段18には、例えば0.05MPaごとの圧力に応じた流量設定信号S0ごとに流量制御弁20の弁開度を制御するバルブ駆動信号S2と、第1制御モードから第2制御モードへ切替える判断をするために圧力変動閾値量とが記憶されている。
そして、前記圧力変化量と前記圧力変動閾値量とが比較され、前記圧力変化量が前記圧力変動閾値量よりも大きいとき、圧力変動が生じたと判断して、第1制御モードから第2制御モードへ切替える。
【0044】
第2制御モードでは、圧力変化量が圧力変動閾値量を超える前の、圧力検出信号S5と、流量設定信号S0とから、流量制御弁20の弁開度を制御すべきバルブ駆動信号を算出し、流量制御弁20へ出力する。
そして、第2制御モードの間も圧力変化量と圧力変動閾値量とを比較しつづけ、圧力変化量が、圧力変動閾値量よりも小さくなったとき、第2制御モードから第1制御モードへ切替える。
このように第1制御モードと第2制御モードとを、質量流量制御装置へ供給される処理ガスの圧力変動に応じて切替えられるように設けているので、処理ガスの圧力変動が生じた場合においても、処理ガスの流量制御の精度が維持される。
【0045】
次に、検定動作モードについて簡単に説明する。
上記質量流量制御装置の流量測定値が正しいか否かを検定して校正する検定動作を行う場合には、下流側の遮断弁装置54は開状態とし、最上流値の遮断弁装置52を閉状態として行うことになる。この場合の開閉動作は先に下流側の遮断弁装置54の開閉動作で説明した場合と同じである。
まず、半導体製造装置側を継続的に真空引きし、ある所定の流量で一定量のガスを安定的に流している状態で、上流側の遮断弁装置52を完全な閉状態とする。すると、今まで検定用タンク部56のタンク本体68内に満たされていたガスが、このタンク本体68内から少しずつ下流側へ流れて出して行き、最終時には真空引きによるベース圧まで圧力が低下することになる。この時の圧力の変化を圧力検出手段58により測定し、変動特性、すなわち圧力降下特性を得る。
【0046】
このような圧力降下特性は、ガスの設定流量を変化させてその都度取得して検定用データメモリ72Bに記憶しておく。そして、ここで各設定流量に対して取得した圧力降下特性を、予め取得して基準用データメモリ72Aに記憶していた各基準用圧力降下特性とそれぞれ比較し、差分を校正することになる。
尚、上記遮断弁装置52、34にあっては、電磁弁102として3方弁式の電磁弁を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、2方弁、或いは4方弁以上の電磁弁を用いてもよい。また、2方弁式の電磁弁を用いる場合には、外部の制御系により作動気体の給排の制御を行うようにする。
【0047】
尚、上記した遮断弁装置54の閉動作は、この質量流量制御装置の零点調整の際にも行われ、例えば遮断弁装置54を全閉状態に設定することにより、流量制御弁20に流れるガスの流量を完全に零状態とし、この時の流量の検出値でもって零点校正を行うことができる。
【0048】
また、本発明において図4に示す質量流量制御装置51とすることができる。尚、図1において示した構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図4に示した質量流量制御装置51は、上述のSEMI規格(全長105mm×幅28.6mm)を満足するように弁ブロック体81を設けたものである。全長が長い分だけ遮断弁52を弁ブロック体81の下方に設けることが可能となった。
これによって、質量流量制御装置51の流体入口6Aは、図1に示した質量流量制御装置のそれと比較して曲がる回数が少なく形成することが可能である。よって処理ガスの圧力損失を最小限とすることが可能となった。
【0049】
続いて、本発明の質量流量制御装置を用いたガス供給ユニットについて、図5を用いて説明する。図5に示したガス供給ユニット150は、ベースBの上に手動遮断弁Sと、質量流量制御装置50とを配置し、手動遮断弁Sと質量流量制御装置50とを、(図示しない)V状流路を有する流路ブロックV2で連結するとともに、上流側及び下流側に継手ブロックV1及びV7を配置したものである。
図6に示した従来のガス供給ユニット151と比較すると、質量流量制御装置50に遮断弁装置52、54を備えるので、空圧駆動遮断弁A1及びA2を不要とし、また、圧力検出手段を備えるとともに、処理ガスの圧力変動が発生した場合には、第1制御モードと第2制御モードとを切替えて制御するので、圧力制御弁R及び圧力センサTを必要としていない。また、これらを連結する流路ブロックV3からV6をも必要としない。
従って、同じ機能を有するガス供給ユニットを極めてコンパクト化でき、安価に供給できるだけでなく、連結個所を減少させることができるので、ガス漏れの可能性が極めて低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係わる質量流量制御装置の一実施例である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる質量流量制御装置の遮断弁装置を示す拡大図である。
【図3】本発明と従来技術との実施比較例である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる質量流量制御装置の他の実施例である。
【図5】本発明の実施の形態に係わるガス供給ユニットの一実施例である。
【図6】従来のガス供給ユニットである。
【符号の説明】
【0051】
6A:流体入口、6B:流体出口、8:質量流量検出手段、10:流量制御弁機構、12:バイパス管、14:センサ管、16:センサ回路、18:制御手段、20:流量制御弁、26:アクチュエータ、28:バルブ駆動回路、
34:流入路、36:弁室、38:ダイアフラム弁体、40:流出路、42:弁口、44:弁座、
50、51:質量流量制御装置、52、54:遮断弁装置、56:検定用タンク部、58:圧力検出手段、62、64:作動気体給排気口、68:タンク本体、70:温度検出手段、
74:凹部、78:流出口、80、81:弁ブロック体、82:押圧手段、84:アクチュエータ板、84A:係合突起、86:作動室、88:作動気体給排機構、90:ダイアフラム押え、92:押圧突起部、94:突起ネジ、96:ボタンホルダ、98:板押え部材、98A:嵌合凹部、
102:電磁弁(ソレノイド弁機構)、104:ケーシング、106:電磁コイル、108:3方弁弁体、
108A、108B、108C:流路、110:オネジ、112:メネジ、114、116、118:シール部材、120:蓋部材、130:バネ、
S0:流量設定信号、S1:流量信号、S2:バルブ駆動信号、S3、S4:遮断弁動作信号(ソレノイド弁駆動信号)、S5:圧力検出信号、
150、151:ガス供給ユニット、
M:マスフローコントローラ、S:手動遮断弁、R:圧力制御弁、T:圧力センサ、A1、A2:空圧駆動遮断弁、V1、V7:継手ブロック、V2、V3、V4、V5、V6:流路ブロック、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、バルブ駆動信号により弁開度を変えることによって質量流量を制御する流量制御弁機構と、外部から入力される流量設定信号に基づいて前記流量制御弁機構に前記バルブ駆動信号を出力する流量制御弁制御手段と、を設けてなる質量流量制御装置において、
前記流量制御弁機構の上流側及び/又は下流側に、作動気体を給排気させることによって開閉される遮断弁機構を介設し、前記遮断弁機構の作動気体給排気口と、前記作動気体を給排気させるソレノイド弁機構の作動気体出力ポートとを直接連通させるように、前記質量流量制御装置の弁ブロック体に前記遮断弁機構および前記ソレノイド弁機構を一体として設け、
且つ前記流量制御弁制御手段は、前記ソレノイド弁機構を動作させるソレノイド弁駆動信号を出力するとともに、前記バルブ駆動信号と、前記ソレノイド弁駆動信号とを同期させることを特徴とする質量流量制御装置。
【請求項2】
前記遮断弁機構は、前記質量流量制御装置の弁ブロック体に設けた弁室と、前記弁室に対して流体を流入させる流入路と、前記弁室から流体を流出させる流出路と、前記流入路の流入口と前記流出路の流出口のいずれか一方よりなる弁口に設けられた弁座と、前記弁座に対向させて前記弁室を区画するように配置されると共に、前記弁座に当接して前記弁口を遮断する金属製のダイアフラム弁体と、前記ダイアフラム弁体を押圧するための押圧手段とを備え、
前記押圧手段は、前記弁室の反対側に前記ダイアフラム弁体に対向するように配置された弾性体よりなるアクチュエータ板と、前記アクチュエータ板と前記ダイアフラム弁体との間に介設させた押圧突起部と、前記アクチュエータ板により区画されて作動気体が給排される作動室と、により構成されることを特徴とする請求項1に記載の質量流量制御装置。
【請求項3】
前記ソレノイド弁機構は、三方弁体と、該三方弁体が内装された三方弁室と、該三方弁室へ作動気体を導入する作動気体入力ポートと、前記作動室へ連通する作動気体出力ポートと、該三方弁室と該作動気体入力ポートとが連通する周囲に設けられた三方弁第一弁座と、該三方弁室において該三方弁第一弁座に対向して設けられた排気ポートと、該三方弁室と該排気ポートとが連通する周囲に設けられた三方弁第二弁座と、作動電圧が印加されたときに該三方弁体を動作させる電磁コイルとからなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の質量流量制御装置。
【請求項4】
流体を流す流路に、流量を検出して流量信号を出力する流量検出手段と、流体の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段を介設し、
前記流量制御弁制御手段は、前記圧力検出信号を用いることなく前記流量信号と前記流量設定信号とに基づいて流量の制御を行う第1制御モードと、前記圧力検出信号から得られる圧力変化量と前記流量設定信号とに基づいて流量の制御を行う第2制御モードとを選択的に切り替えるように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の質量流量制御装置。
【請求項5】
ベースプレートの上面に、複数の流路ブロックを介して連結された複数の流体制御機器が搭載されたガス供給ユニットにおいて、前記流体制御機器の少なくともひとつは、請求項1乃至4のいずれかに記載の質量流量制御装置であることを特徴とするガス供給ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−123085(P2008−123085A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303664(P2006−303664)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】