赤光及び緑光のフルオロスルフィド蛍光材料及びその製造方法、並びに白光発光ダイオード装置
【課題】紫外光又は青光の励起域において、優れる光変換効率を有し、発光域が広く、赤光及び緑光の色飽和度がよい蛍光体を提供する。
【解決手段】希土類金属であるAと希土類金属又は13族金属であるBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの一般式を有するフルオロスルフィド系蛍光材料。蛍光材料が正方晶系の構造である場合、赤光蛍光材料であり、六方晶系の構造である場合、緑光蛍光材料である。
【解決手段】希土類金属であるAと希土類金属又は13族金属であるBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの一般式を有するフルオロスルフィド系蛍光材料。蛍光材料が正方晶系の構造である場合、赤光蛍光材料であり、六方晶系の構造である場合、緑光蛍光材料である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光材料に関し、特にフルオロスルフィド蛍光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(light emitting diode;LED)は、半導体素子であり、その体積が小さい、発光効率が良い、寿命が長い、反応が速い、毒がない、等の長所で、照明光源分野にも応用されており、業界は白光LEDに関する研究に非常に関心を持っている。市販の白光LEDは二種類に分けられており、一方のは、黄色の蛍光粉体有する封止体で近紫外光、紫光又は青光のLEDを封じ止めて、白光を呈する効果を実現するものである。しかし、このようLEDは、三原色中の赤光及び緑光の二光色が欠けているため、得られた白光の演色性が悪く、光色が寒色系になる。もう一方のは、赤色と緑色の蛍光粉有する封止体で近紫外光、紫光又は青光のLEDを封じ止めて、色温度が暖かい白光を呈する効果を実現するものであり、その応用がさらに広がる。
【0003】
現在、紫外光、近紫外光又は青光に応用されている市販の赤光蛍光粉の多くは、Eu3+がドーピングされた酸化物、Mn4+がドーピングされたフッ化物又はEu2+がドーピングされた窒化物である。Eu3+がドーピングされた酸化物及びMn4+がドーピングされたフッ化物による発光は線形タンジェリン光であるが、赤光の色飽和度がよくない。Eu2+がドーピングされた窒化物による発光は広帯域発光であり、紫外光又は青光域において非常に高い光変換効率を有するが、その合成が簡単ではなく、高温高圧の製作プロセスが必要であるため、生産コストが高い。
【0004】
また、現在、紫外光、近紫外光又は青光に応用されている市販の緑光蛍光粉の多くは、Tb3+又はEu2+がドーピングされた酸化物である。Tb3+がドーピングされた酸化物による発光は線形黄緑光であるが、青光域における光変換効率がよくなく、また、その発光が線形黄緑光であるため、緑光の色飽和度が悪い。Eu2+がドーピングされた酸化物による発光は広帯域緑光であるが、この酸化物は吸湿潮解特性を有するため、保存が難しくて、コストも高い。
【発明の概要】
【0005】
そこで、本発明は、白光発光ダイオードを形成するように、紫外光から青光までのLEDを封じ止める、AとBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの化学一般式を有するフルオロスルフィド系蛍光材料及びその製作方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明によれば、前記Aは、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuである希土類金属であってよく、前記Bは、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc又はYである希土類金属、又はAl、Ga又はInである13族金属であってよい。
【0007】
また、本発明の実施形態によれば、前記フルオロスルフィド蛍光材料が正方晶系の構造である場合、該蛍光材料は赤光蛍光材料である。
【0008】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記フルオロスルフィド蛍光材料が六方晶系の構造である場合、該蛍光材料は緑光蛍光材料である。
【0009】
また、本発明の実施形態によれば、青光蛍光材料と、緑光蛍光材料と、前記赤光蛍光材料とを含む白光発光ダイオードが提供される。
【0010】
また、本発明の他の実施形態によれば、青光蛍光材料と、前記緑光蛍光材料及び赤光蛍光材料とを含む白光発光ダイオードが提供される。
【0011】
また、本発明は、希土類金属、13族金属又は両方の結合ものによる金属スルフィド及び金属フッ化物を前記蛍光材料の原料として、化学量論比に必要な量を秤量するステップと、秤量された前記原料を均質に混合するステップと、焼成条件を10−2torrの圧力真空で、温度が900〜1200℃とし、純晶相を有する生成物を得るまでに、混合された前記原料を焼成するステップと、室温まで冷却させて、前記蛍光材料を得るステップとを含む前記蛍光材料の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、焼成温度が900〜950℃である場合に、正方晶系(tetragonal crystal system)の赤光蛍光粉体が得られる。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、焼成温度が1150〜1200℃である場合に、六方晶系(hexagonal crystal system)の緑光蛍光材料が得られる。
【0014】
本発明に係る赤光蛍光材料は、紫外光又は青光域において優れる光変換効率を有し、発光域が広く、赤光の色飽和度がよい。また、本発明に係る緑光蛍光粉は、紫外光又は青光域において優れる光変換効率を有し、発光域が広く、緑光の色飽和度がよい。また、前記両者は、高温高圧の製作プロセスが必要なく、合成が容易で、生産コストを効果的に低減させることが可能である。これにより、従来の飽和度不良及び製造コストの問題が改善され、品質のよい白光発光効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
下記図面の簡単な説明は、本考案の前記または他の目的、特徴、メリット、実施形態をより分かりやすくするためのものである。
【0016】
【図1】フルオロスルフィド構造を有する蛍光材料の製造プロセスを示すフローチャート。
【図2】α−YSF:xCe3+のX線回折パターンを示すグラフ。
【図3】α−CeSFのX線回折パターンを示すグラフ。
【図4】α−(Y0.99)S:xCe3+の光励起スペクトルを示すグラフ。
【図5】α−(Y0.99)S:xCe3+のフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図6】Y0.99Ce0.01SFの光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図7】試験例10におけるα−La0.99Ce0.01SFのX線回折パターンを示すグラフ。
【図8】試験例15におけるα−Y0.89Ce0.01Gd0.1SFのX線回折パターンを示すグラフ。
【図9】試験例12における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図10】試験例15における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図11】試験例18における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図12】試験例19における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図13】試験例20における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図14】β−YSF:x Ce3+のX線回折パターンを示すグラフ。
【図15】β−(Y0.99)S:xCe3+の光励起スペクトルを示すグラフ。
【図16】β−(Y0.99)S:xCe3+のフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図17】試験例23におけるβ−Y0.99Ce0.01SFの光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図18】試験例32における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図19】試験例35における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図20】試験例40における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
セリウムは、ランタニド元素であり、一般的に3価の化合物を形成し、その発光域はホストセル(host lattice)の構造、結合(bonding)及び結晶場の強度(crystal field strength)によって、紫外から赤光まで発射する波長が変化するので、発光ダイオードに広く応用されている。
【0018】
着色剤の応用において、フルオロスルフィドは、ホスト(host)材料であり、黄色から赤色までの粉体外観の色を発色するために希土類金属イオン又はアルカリ土類金属イオンがドーピングされて、顔料としてよく用いられる。そして、このような金属フルオロスルフィドの粉体外観の色は、結晶構造によって異なる色に変化する。
[フルオロスルフィド蛍光材料]
【0019】
本発明において、Ceが3価の酸化状態で、AとBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの化学一般式を有するフルオロスルフィド系蛍光材料が提供され、前記Aは、ランタニド元素であってよく、前記Bは、希土類金属又は13族金属であってよい。希土類金属として、Sc、Y又はランタニド元素であってよく、13族金属として、Al、Ga又はInであってよい。前記ランタニド元素として、例えばLa、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuが挙げられる。
【0020】
前記フルオロスルフィドの蛍光材料は正方晶系(tetragonal)及び六方(hexagonal)晶系の二種類の結晶系の構造であってよく、フルオロスルフィドの結晶構造が正方晶系の構造である場合、化学式をα−(A1−x−yCexBy)SFと記し、該蛍光材料は赤光蛍光材料である。フルオロスルフィドの結晶構造が六方晶系の構造である場合、化学式をβ−(A1−x−yCexBy)SFと記し、該蛍光材料は緑光蛍光材料である。なお、前記化学式におけるy=0の場合、その化学式を(A1−xCex)SFに略記することができる。
[フルオロスルフィド蛍光材料の製造方法]
【0021】
図1に示すように、ステップ110において、合成しようとする前記蛍光材料の化学式によって、化学量論比に従ってそれぞれの原料を秤量する。Ce、AとBの金属イオンとして、対応する金属スルフィド又は金属フッ化物から選択してもよいし、硫黄及びフッ素から選択してもよい。例えば、イットリウムイオンとして、フッ化イットリウム又はイットリウムスルフィドから選択してよく、ランタニドイオンとして、フッ化ランタニド又はランタニドスルフィドから選択してよく、その他の金属イオンはこれによって類推することができる。
【0022】
そして、ステップ120において、必要な原料を均質に混合する。混合の方法は例えば研磨であってよい。ステップ130において、純晶相を有する生成物を得るまでに、10−2torrの低圧真空雰囲気で、温度が900〜1200℃とし、混合された原料を焼成(calcine)する。次に、ステップ140において、得られた生成物を冷却させて、蛍光材料を得る。
【0023】
前記製造方法の焼成過程において、温度が900〜950℃である場合に、構造が正方晶系の前記赤光蛍光材料を得ることができ、その化学式をα−(A1−x−yCexBy)SFと記する。
【0024】
また、前記製造方法の焼成過程において、温度が1150〜1200℃である場合に、構造が六方晶系の前記緑光蛍光材料を得ることができ、その化学式をβ−(A1−x−yCexBy)SFと記する。
[実施例1:α−YSFに割合が異なるCe3+をドーピングする]
【0025】
まず、α−YSFに対して割合が異なるCe3+をドーピングして、ドーピングの割合によって光励起及びフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この実施例において、α−(A1−x−yCexBy)SF中のA3+がY3+で、y=0であり、xがそれぞれ0、0.001、0.005、010、0.020、0.030、0.050、0.075、0.100及び1である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を900〜950℃とし、赤光蛍光材料を製作した。
【0026】
図2、図4、図5は、それぞれ試験例1〜8の粉末X線回折パターン、光励起スペクトル、フォトルミネセンススペクトルを示すグラフであり、図2における記号のα−YSF:x Ce3+は化学式のα−(A1−xCex)SFに相当する。図3は、本発明の試験例9のXRD粉末の回折パターンを示すグラフである。図6は、試験例3の光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフである。試験例1〜9のフォトルミネセンスに関する特徴データを表1に示す。
【表1】
【0027】
図2からわかるように、Ce3+のドーピング量が10mol%になるまで、α−YSFの結晶セル構造が変化しない。そして、図3からわかるように、試験例9は、Y3+が全てCe3+に置換されたので、前記試験例1〜8と異なる結晶セル構造を有する結果になった。
【0028】
表1及び図4〜5の結果をまとめた結果により、赤光蛍光材料の励起と発光スペクトルに対し、Ce3+のドーピング量による影響が大きくないことがわかった。また、図4及び図5から見られるように、このような化合物の主な光励起又は吸収波長の範囲が250〜560nmであり、発光波長の範囲が501〜900nmであり、xの値が0.01(すなわちCe3+のドーピング割合が1mol%である試験例3)である場合に、最大の吸収値(369nmの紫外光)及び最高発光強度(667nmの赤光)を有し、その励起とフォトルミネセンススペクトルを図6に示す。
【0029】
表1からわかるように、y=1(試験例9、すなわちα−CeSF)の場合に、α−CeSFが発光性質を有しないため、発光が見られない。従って、前記により、本発明の試験例に広い励起帯域とフォトルミネセンススペクトルが示され、赤光の色飽和度がよく、従来の色飽和度が赤光域での演色性不足の問題が解決される。
[実施例2:A3+がα−(A0.9Ce0.1)SFに与える影響を変化させる]
【0030】
まず、α−(A0.9Ce0.1)SFにおけるA3+に対し、試験例3におけるY3+をLa3+に変更して、両方が光励起とフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この実施例において、y=0、x=0.1である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を900〜950℃とし、赤光蛍光材料を製作した。
【0031】
図2及び図7はそれぞれ試験例3及び試験例10のX線回折パターンを示すグラフである。図2及び図7からわかるように、両方の強度が弱い副次的な回折ピークの回折角度が変位したが、両方の主な回折ピークの相対位置が近似しているので、両方の結晶セル構造ともに正方晶系であることを確認した。しかしながら、YとLaの原子の半径が異なることにより、異なる結晶セルパラメーターになり、両方の原子間の結合モーメントに影響が与えられ、さらにその発光波長の範囲にも影響が与えられる。試験例3及び10の発光に関する特徴データを表2に示す。表2からわかるように、両方の発光波長はやや赤光域にあるが、両方は、材料の結晶セルパラメーターが異なるため、光励起とフォトルミネセンスの波長域が異なる。
【表2】
[実施例3:B3+がα−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに与える影響を変化させる]
【0032】
実施例3において、α−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに対し、異なる3価の金属(B)を変化させる。この実施例において、x=0.01、y=0.1、A3+がY3+、B3+がそれぞれ希土類金属又は13族金属であり、そのうち、希土類金属がSc3+、La3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+(試験例11〜17)であり、13族金属がAl3+、Ga3+、In3+(試験例18〜20)である。前記と同じ製造方法に沿って、焼成温度を900〜950℃とし、得られた赤光蛍光材料の励起と発光に関する特徴データを表3に示す。
【0033】
図8は試験例15のX線回折パターンを示すグラフであり、これにより、その結晶セル構造がα−YSFと同様であることが示される。図9〜13はそれぞれ試験例12、15及び18〜20の光励起とフォトルミネセンスのスペクトルを示すグラフである。試験例11〜20の発光に関するデータを表3に示す。
【表3】
【0034】
表3及び図9〜13からわかるように、α−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFにおいて、ドーピングされるB3+が異なっても、その発光性質が大きく影響されない。α−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFの光励起域が約250〜571nmであり、発光域が518〜869nmである。前記により、これらの赤光蛍光材料に広い光励起帯域とフォトルミネセンススペクトルが示され、赤光の色飽和度がよく、従来の色飽和度が赤光域での演色性不足の問題が解決される。
[実施例4:β−YSFに割合が異なるCe3+をドーピングする]
【0035】
まず、β−YSFに対して割合が異なるCe3+をドーピングして、ドーピングの割合が光励起とフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この実施例において、β−(A1−x−yCexBy)SF中のA3+がY3+で、y=0で、xがそれぞれ0、0.001、0.005、010、0.020、0.030、0.050、0.075、0.100及び1である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を1150〜1200℃とし、緑光蛍光材料を製作した。
【0036】
図14〜16はそれぞれ試験例21〜28のX線回折パターン、光励起スペクトル、フォトルミネセンススペクトルを示すグラフである。図14における記号のβ−YSF:xCe3+は、化学式のβ−(Y1−xCex)SFに相当する。試験例21〜29の励起と発光に関する特徴データを表4に示す。
【表4】
【0037】
図14からわかるように、Ce3+のドーピング量が10mol%になるまで、β−YSFの結晶構造が変化しない。
【0038】
表4及び図15〜16の結果をまとめた結果により、Ce3+のドーピング量はこの緑光蛍光材料の励起スペクトルに与える影響が大きくないことがわかった。しかしながら、その発光波長は徐々に緑光から黄緑光に変化した。結晶構造の解析結果により、ドーピングされたCe3+は、フルオロスルフィドの結晶セルにおいて、六配位と八配位の二つの異なる結晶セル(Acta.Cryst.1973,B29,1567)を占めることがわかった。Ce3+のドーピング量が増えるに伴い、Ce3+の主に占めるセルが徐々に八配位セルから六配位セルに転移して、最長の発光波長が徐々に492nmから550nmの黄緑光に転移した。図15〜16から見られるように、このような化合物の主な光励起波長の範囲が250〜470nmであり、フォトルミネセンス波長の範囲が441〜700nmであり、xの値が0.01(すなわちCe3+のドーピング割合が1mol%である試験例23)である場合に、最大吸収値(430nmの青光)及び最大の発光強度(492nmの緑光)を有し、その光励起とフォトルミネセンススペクトルを図17に示す。
【0039】
表4からわかるように、y=1(試験例29、すなわちβ−CeSF)の場合に、β−CeSFが発光性質を有しないため、発光が見られない。従って、前記により、本発明の試験例に広い励起帯域とフォトルミネセンススペクトルが示され、緑光の色飽和度がよく、従来の色飽和度が赤光域での演色性不足の問題が解決される。
[試験例5:A3+がβ−(A0.9Ce0.1)SFの発光特性に与える影響を変化させる]
【0040】
まず、β−(A0.9Ce0.1)SF中のA3+に対し、試験例23におけるY3+をLa3+に変更して、両方が光励起とフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この試験例において、y=0、x=0.01である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を1150〜1200℃とし、緑光蛍光材料を製作した。
【0041】
実施例23及び30の励起と発光に関する特徴データを表5に示す。表5からわかるように、両方の発光スペクトルはやや緑光波長にあるが、両方の主なフォトルミネセンスピーク値が異なる。
【表5】
[実施例6:B3+がβ−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFの発光特性に与える影響を変化させる]
【0042】
実施例6において、β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに対し、異なる3価の金属(B)を変化させる。この実施例において、x=0.01、y=0.1、A3+がY3+、B3+がそれぞれ希土類金属又は13族金属であり、そのうち、希土類金属がSc3+、La3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+(試験例31〜37)であり、13族金属がAl3+、Ga3+、In3+(試験例38〜40)である。前記と同じ製造方法に沿って、焼成温度を1150〜1200℃とし、得られた緑光蛍光材料に関する特徴データを表6に示す。
【0043】
図18〜20は、それぞれ試験例32、35及び40の光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフである。試験例31〜40の励起と発光の特徴データを表6に示す。
【表6】
【0044】
表6及び図18〜20からわかるように、β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに異なるB3+のドーピングすることによって、そのフォトルミネセンス性質に多少に影響を与える。β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFにドーピングされたB3+が希土類金属(試験例31〜37)である場合に、その主なフォトルミネセンス波長が493〜518nmであり、ドーピングされたB3+が13族金属(試験例38〜40)である場合に、その主な発光ピーク値が478〜484nmである。これにより、β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFにドーピングされた金属の種類によって、主なフォトルミネセンス波長が異なることがわかった。また、図18〜20からわかるように、本発明の緑光蛍光材料は広い光励起帯域とフォトルミネセンス波長域を有し、緑光の色飽和がよい。
【0045】
前記により、前記赤光及び緑光の蛍光材料は、紫外光又は青光の励起域において、優れる光変換効率を有し、発光域が広いであるので、赤光及び緑光の色飽和度がよい。また、前記赤光及び緑光の蛍光材料は、合成方法が容易で、高温高圧の製作プロセスが必要なく、生産コストを低減させることができる。従って、従来の赤光及び緑光の蛍光材料の色飽和度不良及び調製コストが高い問題が改善され、赤・緑・青の三種類の蛍光材料からなる品質のよい白光発光ダイオードが得られる。
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光材料に関し、特にフルオロスルフィド蛍光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(light emitting diode;LED)は、半導体素子であり、その体積が小さい、発光効率が良い、寿命が長い、反応が速い、毒がない、等の長所で、照明光源分野にも応用されており、業界は白光LEDに関する研究に非常に関心を持っている。市販の白光LEDは二種類に分けられており、一方のは、黄色の蛍光粉体有する封止体で近紫外光、紫光又は青光のLEDを封じ止めて、白光を呈する効果を実現するものである。しかし、このようLEDは、三原色中の赤光及び緑光の二光色が欠けているため、得られた白光の演色性が悪く、光色が寒色系になる。もう一方のは、赤色と緑色の蛍光粉有する封止体で近紫外光、紫光又は青光のLEDを封じ止めて、色温度が暖かい白光を呈する効果を実現するものであり、その応用がさらに広がる。
【0003】
現在、紫外光、近紫外光又は青光に応用されている市販の赤光蛍光粉の多くは、Eu3+がドーピングされた酸化物、Mn4+がドーピングされたフッ化物又はEu2+がドーピングされた窒化物である。Eu3+がドーピングされた酸化物及びMn4+がドーピングされたフッ化物による発光は線形タンジェリン光であるが、赤光の色飽和度がよくない。Eu2+がドーピングされた窒化物による発光は広帯域発光であり、紫外光又は青光域において非常に高い光変換効率を有するが、その合成が簡単ではなく、高温高圧の製作プロセスが必要であるため、生産コストが高い。
【0004】
また、現在、紫外光、近紫外光又は青光に応用されている市販の緑光蛍光粉の多くは、Tb3+又はEu2+がドーピングされた酸化物である。Tb3+がドーピングされた酸化物による発光は線形黄緑光であるが、青光域における光変換効率がよくなく、また、その発光が線形黄緑光であるため、緑光の色飽和度が悪い。Eu2+がドーピングされた酸化物による発光は広帯域緑光であるが、この酸化物は吸湿潮解特性を有するため、保存が難しくて、コストも高い。
【発明の概要】
【0005】
そこで、本発明は、白光発光ダイオードを形成するように、紫外光から青光までのLEDを封じ止める、AとBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの化学一般式を有するフルオロスルフィド系蛍光材料及びその製作方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明によれば、前記Aは、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuである希土類金属であってよく、前記Bは、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc又はYである希土類金属、又はAl、Ga又はInである13族金属であってよい。
【0007】
また、本発明の実施形態によれば、前記フルオロスルフィド蛍光材料が正方晶系の構造である場合、該蛍光材料は赤光蛍光材料である。
【0008】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記フルオロスルフィド蛍光材料が六方晶系の構造である場合、該蛍光材料は緑光蛍光材料である。
【0009】
また、本発明の実施形態によれば、青光蛍光材料と、緑光蛍光材料と、前記赤光蛍光材料とを含む白光発光ダイオードが提供される。
【0010】
また、本発明の他の実施形態によれば、青光蛍光材料と、前記緑光蛍光材料及び赤光蛍光材料とを含む白光発光ダイオードが提供される。
【0011】
また、本発明は、希土類金属、13族金属又は両方の結合ものによる金属スルフィド及び金属フッ化物を前記蛍光材料の原料として、化学量論比に必要な量を秤量するステップと、秤量された前記原料を均質に混合するステップと、焼成条件を10−2torrの圧力真空で、温度が900〜1200℃とし、純晶相を有する生成物を得るまでに、混合された前記原料を焼成するステップと、室温まで冷却させて、前記蛍光材料を得るステップとを含む前記蛍光材料の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、焼成温度が900〜950℃である場合に、正方晶系(tetragonal crystal system)の赤光蛍光粉体が得られる。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、焼成温度が1150〜1200℃である場合に、六方晶系(hexagonal crystal system)の緑光蛍光材料が得られる。
【0014】
本発明に係る赤光蛍光材料は、紫外光又は青光域において優れる光変換効率を有し、発光域が広く、赤光の色飽和度がよい。また、本発明に係る緑光蛍光粉は、紫外光又は青光域において優れる光変換効率を有し、発光域が広く、緑光の色飽和度がよい。また、前記両者は、高温高圧の製作プロセスが必要なく、合成が容易で、生産コストを効果的に低減させることが可能である。これにより、従来の飽和度不良及び製造コストの問題が改善され、品質のよい白光発光効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
下記図面の簡単な説明は、本考案の前記または他の目的、特徴、メリット、実施形態をより分かりやすくするためのものである。
【0016】
【図1】フルオロスルフィド構造を有する蛍光材料の製造プロセスを示すフローチャート。
【図2】α−YSF:xCe3+のX線回折パターンを示すグラフ。
【図3】α−CeSFのX線回折パターンを示すグラフ。
【図4】α−(Y0.99)S:xCe3+の光励起スペクトルを示すグラフ。
【図5】α−(Y0.99)S:xCe3+のフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図6】Y0.99Ce0.01SFの光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図7】試験例10におけるα−La0.99Ce0.01SFのX線回折パターンを示すグラフ。
【図8】試験例15におけるα−Y0.89Ce0.01Gd0.1SFのX線回折パターンを示すグラフ。
【図9】試験例12における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図10】試験例15における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図11】試験例18における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図12】試験例19における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図13】試験例20における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図14】β−YSF:x Ce3+のX線回折パターンを示すグラフ。
【図15】β−(Y0.99)S:xCe3+の光励起スペクトルを示すグラフ。
【図16】β−(Y0.99)S:xCe3+のフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図17】試験例23におけるβ−Y0.99Ce0.01SFの光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図18】試験例32における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図19】試験例35における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【図20】試験例40における光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
セリウムは、ランタニド元素であり、一般的に3価の化合物を形成し、その発光域はホストセル(host lattice)の構造、結合(bonding)及び結晶場の強度(crystal field strength)によって、紫外から赤光まで発射する波長が変化するので、発光ダイオードに広く応用されている。
【0018】
着色剤の応用において、フルオロスルフィドは、ホスト(host)材料であり、黄色から赤色までの粉体外観の色を発色するために希土類金属イオン又はアルカリ土類金属イオンがドーピングされて、顔料としてよく用いられる。そして、このような金属フルオロスルフィドの粉体外観の色は、結晶構造によって異なる色に変化する。
[フルオロスルフィド蛍光材料]
【0019】
本発明において、Ceが3価の酸化状態で、AとBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの化学一般式を有するフルオロスルフィド系蛍光材料が提供され、前記Aは、ランタニド元素であってよく、前記Bは、希土類金属又は13族金属であってよい。希土類金属として、Sc、Y又はランタニド元素であってよく、13族金属として、Al、Ga又はInであってよい。前記ランタニド元素として、例えばLa、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuが挙げられる。
【0020】
前記フルオロスルフィドの蛍光材料は正方晶系(tetragonal)及び六方(hexagonal)晶系の二種類の結晶系の構造であってよく、フルオロスルフィドの結晶構造が正方晶系の構造である場合、化学式をα−(A1−x−yCexBy)SFと記し、該蛍光材料は赤光蛍光材料である。フルオロスルフィドの結晶構造が六方晶系の構造である場合、化学式をβ−(A1−x−yCexBy)SFと記し、該蛍光材料は緑光蛍光材料である。なお、前記化学式におけるy=0の場合、その化学式を(A1−xCex)SFに略記することができる。
[フルオロスルフィド蛍光材料の製造方法]
【0021】
図1に示すように、ステップ110において、合成しようとする前記蛍光材料の化学式によって、化学量論比に従ってそれぞれの原料を秤量する。Ce、AとBの金属イオンとして、対応する金属スルフィド又は金属フッ化物から選択してもよいし、硫黄及びフッ素から選択してもよい。例えば、イットリウムイオンとして、フッ化イットリウム又はイットリウムスルフィドから選択してよく、ランタニドイオンとして、フッ化ランタニド又はランタニドスルフィドから選択してよく、その他の金属イオンはこれによって類推することができる。
【0022】
そして、ステップ120において、必要な原料を均質に混合する。混合の方法は例えば研磨であってよい。ステップ130において、純晶相を有する生成物を得るまでに、10−2torrの低圧真空雰囲気で、温度が900〜1200℃とし、混合された原料を焼成(calcine)する。次に、ステップ140において、得られた生成物を冷却させて、蛍光材料を得る。
【0023】
前記製造方法の焼成過程において、温度が900〜950℃である場合に、構造が正方晶系の前記赤光蛍光材料を得ることができ、その化学式をα−(A1−x−yCexBy)SFと記する。
【0024】
また、前記製造方法の焼成過程において、温度が1150〜1200℃である場合に、構造が六方晶系の前記緑光蛍光材料を得ることができ、その化学式をβ−(A1−x−yCexBy)SFと記する。
[実施例1:α−YSFに割合が異なるCe3+をドーピングする]
【0025】
まず、α−YSFに対して割合が異なるCe3+をドーピングして、ドーピングの割合によって光励起及びフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この実施例において、α−(A1−x−yCexBy)SF中のA3+がY3+で、y=0であり、xがそれぞれ0、0.001、0.005、010、0.020、0.030、0.050、0.075、0.100及び1である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を900〜950℃とし、赤光蛍光材料を製作した。
【0026】
図2、図4、図5は、それぞれ試験例1〜8の粉末X線回折パターン、光励起スペクトル、フォトルミネセンススペクトルを示すグラフであり、図2における記号のα−YSF:x Ce3+は化学式のα−(A1−xCex)SFに相当する。図3は、本発明の試験例9のXRD粉末の回折パターンを示すグラフである。図6は、試験例3の光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフである。試験例1〜9のフォトルミネセンスに関する特徴データを表1に示す。
【表1】
【0027】
図2からわかるように、Ce3+のドーピング量が10mol%になるまで、α−YSFの結晶セル構造が変化しない。そして、図3からわかるように、試験例9は、Y3+が全てCe3+に置換されたので、前記試験例1〜8と異なる結晶セル構造を有する結果になった。
【0028】
表1及び図4〜5の結果をまとめた結果により、赤光蛍光材料の励起と発光スペクトルに対し、Ce3+のドーピング量による影響が大きくないことがわかった。また、図4及び図5から見られるように、このような化合物の主な光励起又は吸収波長の範囲が250〜560nmであり、発光波長の範囲が501〜900nmであり、xの値が0.01(すなわちCe3+のドーピング割合が1mol%である試験例3)である場合に、最大の吸収値(369nmの紫外光)及び最高発光強度(667nmの赤光)を有し、その励起とフォトルミネセンススペクトルを図6に示す。
【0029】
表1からわかるように、y=1(試験例9、すなわちα−CeSF)の場合に、α−CeSFが発光性質を有しないため、発光が見られない。従って、前記により、本発明の試験例に広い励起帯域とフォトルミネセンススペクトルが示され、赤光の色飽和度がよく、従来の色飽和度が赤光域での演色性不足の問題が解決される。
[実施例2:A3+がα−(A0.9Ce0.1)SFに与える影響を変化させる]
【0030】
まず、α−(A0.9Ce0.1)SFにおけるA3+に対し、試験例3におけるY3+をLa3+に変更して、両方が光励起とフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この実施例において、y=0、x=0.1である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を900〜950℃とし、赤光蛍光材料を製作した。
【0031】
図2及び図7はそれぞれ試験例3及び試験例10のX線回折パターンを示すグラフである。図2及び図7からわかるように、両方の強度が弱い副次的な回折ピークの回折角度が変位したが、両方の主な回折ピークの相対位置が近似しているので、両方の結晶セル構造ともに正方晶系であることを確認した。しかしながら、YとLaの原子の半径が異なることにより、異なる結晶セルパラメーターになり、両方の原子間の結合モーメントに影響が与えられ、さらにその発光波長の範囲にも影響が与えられる。試験例3及び10の発光に関する特徴データを表2に示す。表2からわかるように、両方の発光波長はやや赤光域にあるが、両方は、材料の結晶セルパラメーターが異なるため、光励起とフォトルミネセンスの波長域が異なる。
【表2】
[実施例3:B3+がα−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに与える影響を変化させる]
【0032】
実施例3において、α−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに対し、異なる3価の金属(B)を変化させる。この実施例において、x=0.01、y=0.1、A3+がY3+、B3+がそれぞれ希土類金属又は13族金属であり、そのうち、希土類金属がSc3+、La3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+(試験例11〜17)であり、13族金属がAl3+、Ga3+、In3+(試験例18〜20)である。前記と同じ製造方法に沿って、焼成温度を900〜950℃とし、得られた赤光蛍光材料の励起と発光に関する特徴データを表3に示す。
【0033】
図8は試験例15のX線回折パターンを示すグラフであり、これにより、その結晶セル構造がα−YSFと同様であることが示される。図9〜13はそれぞれ試験例12、15及び18〜20の光励起とフォトルミネセンスのスペクトルを示すグラフである。試験例11〜20の発光に関するデータを表3に示す。
【表3】
【0034】
表3及び図9〜13からわかるように、α−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFにおいて、ドーピングされるB3+が異なっても、その発光性質が大きく影響されない。α−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFの光励起域が約250〜571nmであり、発光域が518〜869nmである。前記により、これらの赤光蛍光材料に広い光励起帯域とフォトルミネセンススペクトルが示され、赤光の色飽和度がよく、従来の色飽和度が赤光域での演色性不足の問題が解決される。
[実施例4:β−YSFに割合が異なるCe3+をドーピングする]
【0035】
まず、β−YSFに対して割合が異なるCe3+をドーピングして、ドーピングの割合が光励起とフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この実施例において、β−(A1−x−yCexBy)SF中のA3+がY3+で、y=0で、xがそれぞれ0、0.001、0.005、010、0.020、0.030、0.050、0.075、0.100及び1である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を1150〜1200℃とし、緑光蛍光材料を製作した。
【0036】
図14〜16はそれぞれ試験例21〜28のX線回折パターン、光励起スペクトル、フォトルミネセンススペクトルを示すグラフである。図14における記号のβ−YSF:xCe3+は、化学式のβ−(Y1−xCex)SFに相当する。試験例21〜29の励起と発光に関する特徴データを表4に示す。
【表4】
【0037】
図14からわかるように、Ce3+のドーピング量が10mol%になるまで、β−YSFの結晶構造が変化しない。
【0038】
表4及び図15〜16の結果をまとめた結果により、Ce3+のドーピング量はこの緑光蛍光材料の励起スペクトルに与える影響が大きくないことがわかった。しかしながら、その発光波長は徐々に緑光から黄緑光に変化した。結晶構造の解析結果により、ドーピングされたCe3+は、フルオロスルフィドの結晶セルにおいて、六配位と八配位の二つの異なる結晶セル(Acta.Cryst.1973,B29,1567)を占めることがわかった。Ce3+のドーピング量が増えるに伴い、Ce3+の主に占めるセルが徐々に八配位セルから六配位セルに転移して、最長の発光波長が徐々に492nmから550nmの黄緑光に転移した。図15〜16から見られるように、このような化合物の主な光励起波長の範囲が250〜470nmであり、フォトルミネセンス波長の範囲が441〜700nmであり、xの値が0.01(すなわちCe3+のドーピング割合が1mol%である試験例23)である場合に、最大吸収値(430nmの青光)及び最大の発光強度(492nmの緑光)を有し、その光励起とフォトルミネセンススペクトルを図17に示す。
【0039】
表4からわかるように、y=1(試験例29、すなわちβ−CeSF)の場合に、β−CeSFが発光性質を有しないため、発光が見られない。従って、前記により、本発明の試験例に広い励起帯域とフォトルミネセンススペクトルが示され、緑光の色飽和度がよく、従来の色飽和度が赤光域での演色性不足の問題が解決される。
[試験例5:A3+がβ−(A0.9Ce0.1)SFの発光特性に与える影響を変化させる]
【0040】
まず、β−(A0.9Ce0.1)SF中のA3+に対し、試験例23におけるY3+をLa3+に変更して、両方が光励起とフォトルミネセンス性質に与える影響を検討する。この試験例において、y=0、x=0.01である。そして、前記図1に示すフローチャートに沿って、焼成温度を1150〜1200℃とし、緑光蛍光材料を製作した。
【0041】
実施例23及び30の励起と発光に関する特徴データを表5に示す。表5からわかるように、両方の発光スペクトルはやや緑光波長にあるが、両方の主なフォトルミネセンスピーク値が異なる。
【表5】
[実施例6:B3+がβ−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFの発光特性に与える影響を変化させる]
【0042】
実施例6において、β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに対し、異なる3価の金属(B)を変化させる。この実施例において、x=0.01、y=0.1、A3+がY3+、B3+がそれぞれ希土類金属又は13族金属であり、そのうち、希土類金属がSc3+、La3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+(試験例31〜37)であり、13族金属がAl3+、Ga3+、In3+(試験例38〜40)である。前記と同じ製造方法に沿って、焼成温度を1150〜1200℃とし、得られた緑光蛍光材料に関する特徴データを表6に示す。
【0043】
図18〜20は、それぞれ試験例32、35及び40の光励起とフォトルミネセンススペクトルを示すグラフである。試験例31〜40の励起と発光の特徴データを表6に示す。
【表6】
【0044】
表6及び図18〜20からわかるように、β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFに異なるB3+のドーピングすることによって、そのフォトルミネセンス性質に多少に影響を与える。β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFにドーピングされたB3+が希土類金属(試験例31〜37)である場合に、その主なフォトルミネセンス波長が493〜518nmであり、ドーピングされたB3+が13族金属(試験例38〜40)である場合に、その主な発光ピーク値が478〜484nmである。これにより、β−(Y0.89Ce0.01B0.1)SFにドーピングされた金属の種類によって、主なフォトルミネセンス波長が異なることがわかった。また、図18〜20からわかるように、本発明の緑光蛍光材料は広い光励起帯域とフォトルミネセンス波長域を有し、緑光の色飽和がよい。
【0045】
前記により、前記赤光及び緑光の蛍光材料は、紫外光又は青光の励起域において、優れる光変換効率を有し、発光域が広いであるので、赤光及び緑光の色飽和度がよい。また、前記赤光及び緑光の蛍光材料は、合成方法が容易で、高温高圧の製作プロセスが必要なく、生産コストを低減させることができる。従って、従来の赤光及び緑光の蛍光材料の色飽和度不良及び調製コストが高い問題が改善され、赤・緑・青の三種類の蛍光材料からなる品質のよい白光発光ダイオードが得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AとBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの化学一般式を有する蛍光材料。
【請求項2】
Aが希土類金属である請求項1に記載の蛍光材料。
【請求項3】
Bが希土類金属又は13族金属である請求項1に記載の蛍光材料。
【請求項4】
前記蛍光材料が正方晶系の構造である場合、該蛍光材料は赤光蛍光材料である請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光材料。
【請求項5】
前記蛍光材料が六方晶系の構造である場合、該蛍光材料は緑光蛍光材料である請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光材料。
【請求項6】
青光蛍光材料と、
緑光蛍光材料と、
請求項4に記載の赤光蛍光材料と
を含む白光発光ダイオード。
【請求項7】
青光蛍光材料と、
赤光蛍光材料と、
請求項5に記載の緑光蛍光材料と
を含む白光発光ダイオード。
【請求項8】
希土類金属、13族金属又は両方の結合ものによる金属スルフィド及び金属フッ化物を前記蛍光材料の原料として、化学量論比に必要な量を秤量するステップと、
秤量された前記原料を均質に混合するステップと、
焼成条件を10−2torrの圧力真空で、焼成温度が900〜1200℃とし、純晶相を有する生成物を得るまでに、混合された前記原料を焼成するステップと、
室温まで冷却させて、請求項1に記載の前記蛍光材料を得るステップと
を含む請求項1に記載の蛍光材料の製造方法。
【請求項9】
前記焼成温度が900〜950℃である場合に、構造が正方晶系の赤光蛍光材料が得られる請求項8に記載の蛍光材料の製造方法。
【請求項10】
前記焼成温度が1150〜1200℃である場合に、構造が六方晶系の緑光蛍光材料が得られる請求項8に記載の蛍光材料の製造方法。
【請求項1】
AとBが3価の金属イオンで、0<x≦0.1、0≦y≦1の条件を満たす(A1−x−yCexBy)SFの化学一般式を有する蛍光材料。
【請求項2】
Aが希土類金属である請求項1に記載の蛍光材料。
【請求項3】
Bが希土類金属又は13族金属である請求項1に記載の蛍光材料。
【請求項4】
前記蛍光材料が正方晶系の構造である場合、該蛍光材料は赤光蛍光材料である請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光材料。
【請求項5】
前記蛍光材料が六方晶系の構造である場合、該蛍光材料は緑光蛍光材料である請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光材料。
【請求項6】
青光蛍光材料と、
緑光蛍光材料と、
請求項4に記載の赤光蛍光材料と
を含む白光発光ダイオード。
【請求項7】
青光蛍光材料と、
赤光蛍光材料と、
請求項5に記載の緑光蛍光材料と
を含む白光発光ダイオード。
【請求項8】
希土類金属、13族金属又は両方の結合ものによる金属スルフィド及び金属フッ化物を前記蛍光材料の原料として、化学量論比に必要な量を秤量するステップと、
秤量された前記原料を均質に混合するステップと、
焼成条件を10−2torrの圧力真空で、焼成温度が900〜1200℃とし、純晶相を有する生成物を得るまでに、混合された前記原料を焼成するステップと、
室温まで冷却させて、請求項1に記載の前記蛍光材料を得るステップと
を含む請求項1に記載の蛍光材料の製造方法。
【請求項9】
前記焼成温度が900〜950℃である場合に、構造が正方晶系の赤光蛍光材料が得られる請求項8に記載の蛍光材料の製造方法。
【請求項10】
前記焼成温度が1150〜1200℃である場合に、構造が六方晶系の緑光蛍光材料が得られる請求項8に記載の蛍光材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−153872(P2012−153872A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88539(P2011−88539)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】
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