説明

赤外センサの長距離検知方法

【課題】
焦電型赤外線センサは、多数開発され安価に市販されているが、センサ単体での検知距離は10メートル程度であり、レンズで集光したものでも30メートル程度の検知距離である。海上、空港、大規模工場などの防犯のためのシステムでは、30メートル程度の検知距離では、配置するセンサの数が膨大になりすぎるためより長距離を検知できるセンサが求められている。
【解決手段】
現状数百円程度で市販されている、焦電型赤外線センサを使用して、遠方より人間や自動車、船舶のエンジンなどから放射せられる遠赤外線を、効率よく集光し焦点に集める放物面鏡または放物面板(BSアンテナなどに用いられている仕様)で反射集光し、焦電型赤外線センサに遠赤外線を密度濃く入光させ検知する長距離検知方法を提案することにより問題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常数百円程度で市販されている検知距離10メートル程度の焦電型赤外線センサの検地距離を数百メートルまで伸ばすことのできる、長距離検知方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、焦電型赤外線センサは、赤外線を受光することにより検出信号を出力する焦電素子と、該焦電素子に赤外線を受光させる光学系とを備え、所定検知領域内を移動する物体(例えば、人、自動車、船舶)が発生する赤外線を検知することで、この物体の移動を検出するものである。
【0003】
このような焦電型赤外線センサに用いられる焦電素子は、強誘電体等からなる焦電体基板と、該焦電体基板の両面に対向して設けられた電極とからなる。
【0004】
焦電体基板は定常時(基板温度が一定な状態)では両表面間で電荷を発生しないが、基板温度が変化するとこの変化に応じて両表面間に電荷が発生する。これは、強誘電体等からなる焦電体基板が定常時には自発分極しているが外気内の浮遊電荷を引き寄せて中性状態にあるのに対し、基板温度が変化すると自発分極の状態が変化して前記中性状態が崩れるために生じる現象である。焦電素子はこの現象を利用し、焦電体基板の電極が形成された部分に照射された赤外線による温度変化の大きさに応じて変化する電荷変動をこれら表面に形成された電極で取り出すことで、検出信号を出力する。
【0005】
このような焦電素子には、前述のように焦電体基板の両面に対向に形成されたそれぞれ単体の電極と焦電体基板とからなる一つのシングル素子を備えるものに対し、このシングル素子を2つ配列形成したデュアル素子を備えるものが考案されている(特許文献1参照)。このようなデュアル素子を備える焦電素子は、シングル素子を2つ平行に配置し、各シングル素子の受光面電極または対向面電極を焦電体基板の温度変化により発生する電荷が逆極性となるように直列接続したものであり、シングル素子のみを用いた際に生じる外部温度依存性を補正するものである。この構成は、単にシングル素子が所定の間隔で2つ配置されたものとしても利用することができる。すなわち、デュアル素子を備える焦電素子を構成する各シングル素子で受光する領域を異ならせることで、異なる位置からの赤外線の放射を検出する焦電素子が構成される。そして、各シングル素子の配列方向を水平方向にすることで、人等の物体の移動方向を検出する焦電型赤外線センサが構成される。
【0006】
また、デュアル素子を備えた焦電素子であっても検知領域には限りがあるため、デュアル素子を複数配列形成した焦電素子を用いて、検知領域を拡大させた焦電型赤外線センサが考案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−187918合公報
【特許文献2】実登第3042061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
焦電型赤外線センサは、上記のごとく多数開発され市販されているが、センサ単体での検知距離は10メートル程度(但し、視野角は130度程度ある)であり、レンズで集光したものでも30メートル程度の検知距離である。
【0008】
海上、空港、大規模工場などの防犯のためのシステムでは、30メートル程度の検知距離では、配置するセンサの数が膨大になりすぎるためより長距離を検知できるセンサが求められている。
【0009】
また、赤外線を投光及び受光する対向型の赤外線センサなども検知距離は現在市販されているものは50メートル程度の検知距離である。
【0010】
現状数百メートルの距離を監視するシステムは、赤外線サーモカメラを使用するシステムか、近赤外赤外線カメラと近赤外線サーチライトを使用したシステムがあるが、設備に係る費用が高額であり、安易に設置できないなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、現状数百円程度で市販されている、焦電型赤外線センサを使用して、遠方より人間や自動車、船舶のエンジンなどから放射せられる遠赤外線を、効率よく集光し焦点に集める放物面鏡または放物面板(BSアンテナなどに用いられている仕様)で反射集光し、焦電型赤外線センサに遠赤外線を密度濃く入光させ検知する長距離検知方法を提案することにより問題を解決する。
【0012】
遠赤外線を集光する方法としては、特許文献3、や特許文献4などレンズによる透過集光方法もあり、市販されているものもあるが、現状30メートル程度の検知距離である。レンズによる透過集光方法の欠点としては、遠赤外線を透過するレンズ材料価格が高額であったり、透過率がせいぜい50ないし60%程度と低いという点を指摘できるし、なによりもレンズの場合入射角度が最大でも60度程度と、焦電型赤外センサの視野角130度とを比べると効率が悪い。
【特許文献3】特開平8−313342号公報
【特許文献4】特開2001−272274号公報
【0013】
本発明で提案している反射による集光では、効率は反射面の反射率に依存するが、本発明の反射面に使用する、アルミニューム、金などは遠赤外線の反射率は98%にも及ぶ高効率である。
【0014】
しかも放物面による反射の場合、焦電型センサの一般的仕様の視野角が130度でも、充分に反射集光をすべて取り込むことが可能であり、非常に効率がよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検知方法によれば、安価に長距離検知ユニットを作成することが可能で、海上、空港、大規模工場など大掛かりな防犯システムを要する場合、有効であるし自動車などに搭載して前方の人、車両の検知などにも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る赤外センサの長距離検知方法の最良の実施形態について説明する。図1は、赤外センサの長距離検知方法の概略説明図である。また図2は赤外センサの長距離検知ユニットの構成配置図である。焦点位置の決め方により、サーチライト型とBSアンテナ型の2種類を提示している。図3は一般に市販されている焦電型センサユニットの回路図であり、図4は一般に市販されている焦電型センサユニットの接続図である。
【0017】
焦電型赤外線センサのみでは、検知のみでその他の機器を動作できないのでこの実施形態の説明には市販品(2000円程度)焦電センサユニット15を使用する。図1の放物面鏡11の焦点に図3の焦電センサユニット15の受光面14を放物面鏡11の反射面18に向かうように配置する。焦電センサユニット15の電源コードをAC100V入力に接続し、リレーによる出力負荷16に100W白熱電球17を接続する。
【0018】
上記の赤外センサ長距離検知ユニット放物面鏡11の反射面18を、検知したい物体のある方向へ正対させる。これで赤外センサ長距離検知ユニットの設置は完了である。検知物体が赤外センサ長距離検知ユニットの検知範囲を通過すると、検知物体から放射されている遠赤外線12は赤外センサ長距離検知ユニットの放物面鏡の反射面18に入光し反射面で反射した反射光13は焦点にある焦電センサユニット15の受光面14に集光される。
【0019】
受光面14の焦電素子に赤外線が入射されると、赤外線の熱エネルギーにより温度変化が生じ電圧が検出される。この電圧を図4の焦電センサユニット回路によりリレーを作動させ、出力負荷の100W白熱電球17を点灯させ、検知物体が検知範囲に入ったことをしらせる。
【0020】
当然のことながら、リレーで動作させる負荷は電球に限らず、ブザー、カメラ起動、などなどなんにでも応用可能であるし、この説明には市販品の焦電センサユニット回路を使用したが、状況に合わせた応用回路を作成してもよい。
【0021】
図2は長距離検知ユニットの構成配置図である。反射鏡とセンサの受光面の構成位置関係は、反射鏡の軸にたいして正対するサーチライト型20とセンサ部分が入射光のじゃまになるのを防ぐBSアンテナ型21の構成配置が考えられる。
【0022】
本発明では、一般市販品で価格の安価な焦電型赤外センサを主に説明してきたが、もちろん焦電型赤外センサと同様に、物体が放出する赤外線をパッシブに検出することができる、ボロメータ型やサーモバイル型、もしくは量子型などの赤外センサをセンサとして使用しても、本発明の説明と同様に長距離検出は可能であることは当然である。
【0023】
本発明の実施の形態では、反射率が98%である、アルミニュームや金などの反射面にて説明しているが、より製造価格を下げるためにはステンレスの素材のままの反射面にしてもよい。反射率が90%程度と効率ではやや劣るが、製造価格では安価になる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】赤外センサの長距離検知方法の概略説明図である。
【図2】赤外センサの長距離検知ユニットの構成配置図である。
【図3】一般に市販されている焦電型センサユニットの回路図である。
【図4】一般に市販されている焦電型センサユニットの接続図である。
【符号の説明】
【0025】
11放物面鏡、12遠赤外光、13反射光、14検知受光面、15焦電センサユニット、
16リレー出力、17白熱電球、18反射面、サーチライト型20、BSアンテナ型21

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面にアルミニュームまたは金の蒸着を施した放物面鏡の焦点に、焦電型赤外センサを放物面鏡により、反射された赤外光が最大に入光するように 、放物面鏡に向けて配置したことを特徴とする赤外センサの長距離検知方法。
【請求項2】
反射面にアルミニュームまたは金の蒸着を施した放物面鏡の焦点に、ボロメータ型赤外センサを放物面鏡により、反射された赤外光が最大に入光するように、放物面鏡に向けて配置したことを特徴とする赤外センサの長距離検知方法。
【請求項3】
反射面にアルミニュームまたは金の蒸着を施した放物面鏡の焦点に、サーモバイル型赤外センサを放物面鏡により、反射された赤外光が最大に入光するように、放物面鏡に向けて配置したことを特徴とする赤外センサの長距離検知方法。
【請求項4】
反射面にアルミニュームまたは金の蒸着を施した放物面鏡の焦点に、量子型赤外センサを放物面鏡により、反射された赤外光が最大に入光するように、放物面鏡に向けて配置したことを特徴とする赤外センサの長距離検知方法。
【請求項5】
請求項1,2,3,4の放物面鏡の材質をステンレスで製作し、反射面をステンレスの素材のままか、または研磨面としたことを特徴とする赤外センサの長距離検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−257855(P2009−257855A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105256(P2008−105256)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(593017751)川島工機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】