説明

赤外線センサ及び赤外線センサモジュール

【課題】ノイズの低減及び検出精度の向上を図るとともに製造コストの低減を図ることができる赤外線センサ及び赤外線センサモジュールを提供する。
【解決手段】減圧封止された空洞部22を有し、赤外線を透過する第1基板20と、該第1基板20において外部から赤外線が入射する側とは反対側に設けられ、前記空洞部22を通過した赤外線を受光することにより出力変化を生じる検知部21と、第1基板20との間に検知部21を囲む減圧空間33を形成する凹部31と、検知部21に受光されずに第1基板20を通過した赤外線を検知部21に向けて反射集光可能に構成された反射面32と、を有し、第1基板20に積層される第2基板30と、該第2基板30において検知部21に対して反射面32を挟んだ位置に設けられ、検知部21の出力を増幅または積分する演算回路41と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ及び赤外線センサモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱が加わることにより電圧が発生する素子(サーモパイル)を検知部に利用した赤外線センサが知られている(特許文献1〜7参照)。サーモパイルは、物体から放射される赤外線を受光して温度差が生じることで、いわゆるゼーベック効果により温度差に応じた電圧差が発生する。この電圧差を温度変化として検出することで、検知対象の温度を検知することができる。
【0003】
このような赤外線センサは、熱が空気に逃げることによる感度の低下を抑制するため、真空封止されたケース内に検知部を縦横に複数配列(アレイ化)したセンサモジュールとして使用される。各検知部は、ケースに設けられた赤外線透過窓(赤外線フィルタ)から入射する赤外線を受光し、それぞれ電圧を出力する。検知部からの出力信号は微小なため、演算回路などにより増幅や積分される。
【0004】
しかしながら、従来の赤外線センサは、演算回路が検知部から離れた位置に設置されるため検知部からの出力信号にノイズが発生しやすい構成となっていた。また、従来の赤外線センサは、センサの小型化のために、1つ又は数個の演算回路でセンサアレイの全ての検知部の出力信号を処理するように構成されており、1つの演算回路に複数の検知部をつなげることでサンプリング周波数が高くなり、ノイズが大きくなる要因となっていた。
【0005】
特許文献8には、センサ部と演算回路とを積層することにより、チップの小型化、配線の短縮を図った積層デバイスが開示されている。しかしながら、この構成を赤外線センサに適用する場合、演算回路によって発生する熱(赤外線)が赤外線センサのノイズ要因となることが考えられる。
【0006】
また、検知部を真空のケース内へ実装する作業は、脱ガス等の繁雑な作業を含み、また、高い気密性が要求されるケースには高価な部品や特殊な接着剤等が必要となる。したがって、真空封止したケースに検知部を収容する従来の構成は、製造コストにおいても課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−229821号公報
【特許文献2】特開平11−258038号公報
【特許文献3】特開平11−258040号公報
【特許文献4】特開平11−258041号公報
【特許文献5】特開2000−65639号公報
【特許文献6】特開2000−221080号公報
【特許文献7】特開2000−292254号公報
【特許文献8】特開2007−313594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ノイズの低減及び検出精度の向上を図るとともに製造コストの低減を図ることができる赤外線センサ及び赤外線センサモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明における赤外線センサは、
減圧封止された空洞部を有し、赤外線を透過する第1基板と、
該第1基板において外部から赤外線が入射する側とは反対側に設けられ、前記空洞部を通過した赤外線を受光することにより出力変化を生じる検知部と、
前記第1基板との間に前記検知部を囲む減圧空間を形成する凹部と、前記検知部に受光されずに前記第1基板を通過した赤外線を前記検知部に向けて反射集光可能に構成された反射面と、を有し、前記第1基板に積層される第2基板と、
該第2基板において前記検知部に対して前記反射面を挟んだ位置に設けられ、前記検知部の出力を増幅または積分する演算回路と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、検知部と演算回路が一体化されるので、検知部と演算回路との間の距離を短く構成することが可能となる。したがって、ノイズの低減と検出精度の向上を図ることができる。また、演算回路で発生する熱(赤外線)は、検知部と演算回路との間の反射面によって遮られる。したがって、演算回路の熱が検知部に対して影響を及ぼすことが抑制され、ノイズの低減と検出精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、検知部に入射する赤外線は、減圧封止された空洞部や減圧空間を通過するので、温度の検出を感度良く行うことができる。入射位置や入射角度により検知部に受光されずに第1基板を通過した赤外線は、反射面によって検知部に反射集光されるので、検出感度を高めることができる。
【0013】
前記空洞部は、前記第2基板が積層される側の面に開口した空洞部として形成され、
前記空洞部と前記減圧空間は、前記第1基板と前記第2基板が減圧雰囲気下で積層接着されることにより、減圧封止されるとよい。
【0014】
これにより、空洞部の減圧封止と及び減圧空間の形成を容易に行うことができる。したがって、製作性が向上され、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
前記赤外線検知部と前記演算回路は、前記第2基板を積層方向に貫通する配線により接続されるとよい。
【0016】
これにより、コンパクトな積層構造を実現でき、センサの小型化を図ることができる。したがって、ノイズの低減と検出精度の向上を図ることができる。
【0017】
前記配線を少なくとも2つ有するとよい。
【0018】
少なくとも2つの貫通配線を、検知部の出力信号を積分するためのコンデンサの電極として利用することができる。したがって、積分回路のためのコンデンサを別途設ける必要がなくなり、センサの小型化を図ることができる。
【0019】
前記検知部を、複数有するとともに、
前記演算回路を、複数の前記検知部に対応して複数有するとよい。
【0020】
一つの検知部に対して一つの演算回路で増幅又は積分の演算処理を行なうようにすることで、精度の高い検出が可能となる。
【0021】
前記演算回路は、前記第2基板において前記第1基板が積層される面とは反対側の面上に形成されてもよい。
あるいは、前記第2基板に対して前記第1基板とは反対側に積層される第3基板を有し、
前記演算回路は、前記第3基板に形成されてもよい。
【0022】
すなわち、演算回路は、第2基板に直接実装してもよいし、第2基板とは別の第3基板上に形成し、第2基板と第3基板とを積層することで一体化してもよい。
【0023】
また、本発明における赤外線センサモジュールは、
上記の赤外線センサと、
該赤外線センサが収容されるケースと、
を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の赤外線センサモジュールによれば、検知部の検出精度を上げるための減圧空間がセンサ自体に形成されているので、センサを収容するケースに減圧処理を施す必要がなくなる。したがって、モジュールの製作工程の削減を図ることができる。
【0025】
また、ケース自体に気密性が要求されないので、ケース材料や接着剤の選択の幅を広げることができる。したがって、材料費の削減が可能となり、製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明により、ノイズの低減及び検出精度の向上を図るとともに製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る赤外線センサモジュールの模式的断面図である。
【図3A】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3B】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3C】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3D】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3E】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3F】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3G】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3H】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3I】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3J】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3K】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図3L】赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図4A】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4B】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4C】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4D】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4D1】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4D2】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4D3】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4D4】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4E】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図4F】反射層の製造方法を説明する模式図である。
【図5A】本発明の実施例に係る赤外線センサの回路構成図である。
【図5B】本発明の実施例に係る赤外線センサの回路構成図である。
【図5C】本発明の実施例に係る赤外線センサの回路構成図である。
【図6A】本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【図6B】本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【図7A】本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【図7B】本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【図7C】本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
(実施例)
図1〜図7を参照して、本実施例に係る赤外線センサ及び赤外線センサモジュールについて説明する。図1は、本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。図2は、本発明の実施例に係る赤外線センサモジュールの模式的断面図である。図3A〜図3Lは、それぞれ、赤外線検出器の製造方法を説明する模式図である。図4A〜図4Fは、それぞれ、反射層の製造方法を説明する模式図である。図5A〜図5Cは、それぞれ、本実施例に係る赤外線センサの回路構成図である。図6A及び図6Bは、それぞれ、本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。図7A〜図7Cは、それぞれ、本発明の実施例に係る赤外線センサの模式的断面図である。
【0030】
<赤外線センサの構成>
図1に示すように、本発明の実施例に係る赤外線センサ1は、概略、それぞれシリコン基板で構成された赤外線検出器2と、反射層3と、回路基板4と、が積層された構成を有している。
【0031】
赤外線検出器2は、第1基板としての赤外線を透過可能なシリコン基板20に、サーモパイルを利用した赤外線検知部21と、減圧封止された空洞部22と、が形成された構成を有している。
【0032】
赤外線検知部21は、熱が加わることにより電圧が発生する性質を有するサーモパイルを利用した検知素子である。サーモパイルは、物体から放射される赤外線を受光して温度差が生じることで、いわゆるゼーベック効果により温度差に応じた電圧差が発生する。赤外線検知部21は、基板20の下面、すなわち、基板20において外部から赤外線が入射する面(上面)とは反対側の面に実装されている。なお、基板20の上面には、必要に応じて、赤外線の反射を防止する構造や、特定周波数の赤外線のみを通すための赤外線フィルタ、回折格子やレンズ等の集光素子を形成することができる。
【0033】
空洞部22は、赤外線検知部21が実装される位置に対応して、基板20の内部に形成される。空洞部22は、真空または真空に近い低圧で封止される。空洞部22により、赤外線検知部21と外部との間に真空または低圧の空間が形成される。
【0034】
反射層3は、赤外線検出器2の外部(赤外線が入射する)側とは反対側(基板20の下面側)に配置される。反射層3は、第2基板としてのシリコン基板30における基板20
との対向面に凹部31が設けられた構成を有している。
【0035】
凹部31は、表面がアルミニウム(Al)や金(Au)などの金属製の赤外線反射膜32で覆われている。この赤外線反射膜32が、検知部21に受光されずに検出器2を通過した赤外線を検知部21に向けて反射集光することが可能な赤外線反射面を形成する。凹部31は、検知部21に対応する位置に設けられており、反射層3が赤外線検出器2に積層されることで、検知部21を囲む封止空間(減圧空間)33を生成する。封止空間33は、真空または真空に近い低圧で封止される。
【0036】
また、反射層3は、検知部21と回路基板4(演算回路)とを電気的に接続するための配線34を有している。配線34は、反射層3の積層方向に貫通して設けられている。
【0037】
回路基板4は、第3基板としてのシリコン基板40に、検出部21からの出力信号を増幅又は積分するための増幅回路や積分回路を含む演算回路41が実装された回路基板である。演算回路41は、反射層3に設けられた配線34を介して赤外線検出器2の検出部21と接続されている。演算回路41が増幅又は積分した検出部21からの出力信号は、出力パッド42を介して外部に取り出される。
【0038】
ここで、図5A〜図5Cに、検知部21と演算回路41の回路構成の例を示す。図5Aは、演算回路41が増幅回路を有する場合の回路構成である。図5Bは、演算回路41が増幅回路と積分回路を有する場合の回路構成である。図5Cは、2つ貫通配線34を、積分回路を構成するコンデンサの一対の電極として利用した場合の回路構成である。
【0039】
本実施例に係る赤外線センサ1は、検知部21を縦横に複数配列(n行×m列)したアレイセンサとして構成されている。各検知部21に対応して空洞部22や凹部32、演算回路41がそれぞれ複数配列して設けられている。
【0040】
<赤外線センサの動作>
以上のように構成された赤外線センサ1は、赤外線検出器2の検出部21が、外部から空洞部22を通過して入射する赤外線を直接(矢印I1)、あるいは反射層3の反射膜33で反射することにより間接的に受光する(矢印I2)。なお、熱の発生により演算回路41から放射される赤外線は、反射膜33によって拡散されるので検出部21へ入射することはない(矢印I3)。
【0041】
本実施例に係る赤外線センサ1の検出部21は、サーモパイル方式の赤外線検出素子であり、いわゆるゼーベック効果、すなわち、赤外線吸収膜が吸収した赤外線を熱に変換することにより温接点部が温められ、温接点部と冷接点部との間に温度差が発生することにより、温接点部と冷接点部との間に温度差に応じた電圧差が生じる現象を利用したものである。サーモパイル方式の検出原理は、従来技術であり詳しい説明は省略する。
【0042】
検出部21は、赤外線を受光することにより電圧差を出力する。演算回路41は、検出部21からの出力信号を増幅または積分し、出力パッド42を介して外部に出力する。この電圧差を温度変化として検出することで、検知対象の温度を検知することが可能となる。
【0043】
<赤外線センサモジュール>
図2に示すように、本実施例に係る赤外線モジュール100は、上述した赤外線センサ1と、赤外線センサ1が収容されるケース101と、を備えている。ケース101は、赤外線センサ1が設置されるステム101aと、赤外線センサ1の周囲を囲む筒状部101bと、ケース101内に赤外線を取り込むための窓部101cと、で構成される。ステム
101aには、赤外線センサ1からの出力を外部に取り出すための出力端子102が設けられている。窓部101は、例えば、フレネルレンズなどの赤外線の集光に適したレンズや、特定の周波数の赤外線のみを通す赤外線フィルタなどで構成されている。
【0044】
<赤外線センサの製造方法>
本実施例に係る赤外線センサ1の製造方法について説明する。赤外線センサ1は、最初に赤外線検出器2、反射層3、回路基板4がそれぞれ別々に作成し、それらを積層結合することにより製造される。以下、赤外線検出器2と反射層3のそれぞれの製造方法について説明する。なお、以下で説明する製造方法は、従来技術であり、簡略して説明する。また、回路基板4の製造方法については、従来周知のCMOSプロセス等により増幅回路や積分回路を備えた回路基板を製造する手法を用いればよいので説明を省略する。なお、増幅回路や積分回路は、回路基板4を設けずに、反射層3の基板30上に直接実装してもよい。
【0045】
<<赤外線検出器>>
図3A〜図3Lを参照して、赤外線検出器2の製造方法について説明する。
【0046】
まず、シリコン基板20の表面を酸化膜20aで被覆し(図3A)、次いで、酸化膜20aの外側に窒化膜20bを形成する(図3B)。窒化膜20bに重ねて酸化膜20cを形成した面に(図3C)、サーモパイル(温接点20d、冷接点20e)を形成する(図3D)。サーモパイルの表面も酸化膜20cで被覆するとともに、酸化膜20cの一部にコンタクトホール20fを形成する(図3E)。コンタクトホール20fを埋めるように金属配線20gを形成し(図3F)、その上に酸化膜20cを被覆して絶縁膜を形成する(図3G)。その絶縁膜の上に、赤外線吸収膜20hを形成し(図3H)、赤外線吸収膜20hを酸化膜20cで被覆して保護膜を形成する(図3I)。さらに、酸化膜20cの一部を除去して金属配線20gのコンタクトホール20iを形成する(図3I)。コンタクトホール20iを覆うように接合部20jを形成し(図3J)、シリコン基板20をエッチングするためのエッチングホール20kを形成する(図3K)。エッチングホール20kを介して、シリコン基板20をエッチングし、空洞部22を形成する(図3L)。
【0047】
<<反射層>>
図4A〜図4Fを参照して、反射層3の製造方法について説明する。
【0048】
シリコン基板30に、エッチングにより貫通配線34のための貫通孔30aを形成し(図4A)、貫通孔30aの周面も含めて酸化膜等により絶縁膜30bを形成する(図4B)。貫通孔30aの内部に金属メッキ、金属ナノ粒子、ポリシリコンなどの埋め込む等により貫通配線34を形成する(図4C)。なお、従来のダマシン法により形成してもよい。次いで、エッチングにより凹部31を形成する(図4D)。
【0049】
凹部31の形成は、シリコン基板30の表面にレジストを塗布し(図4D1)、パターニングを形成する(図4D2)。まず、異方性エッチングにより、パターニングの大きさに応じて掘れる深さが変化する性質を利用してシリコン基板30の表面を粗く掘り、大まかな凹部31の形を形成する(図4D3)。その後、等方性エッチングにより、全体的に掘り上げて凹部31の形状を仕上げる(図4D4)。その他の工法として、等方エッチングのみを利用した方法や、サンドブラストによる加工、グラファイト等の金型を使用した熱転写で形成してもよい。
【0050】
ここで、本実施例では、図に示すように、凹部31の開口部の位置が基板30の表面よりも一段下がった位置となるように形成している。これにより、反射面32を奥まった位置となることで入射光の範囲が限定され、クロストークの低減を図ることができる。なお
、凹部31の具体的な形状は、図に示すような形状に限定されるものではない。例えば、アレイ上における配置に応じて、特定の入射角度の光に対して感度が高くなるように曲率等の形状を変えてもよい。
【0051】
凹部31を形成したら、凹部31の表面にアルミニウムや金などによる赤外線反射膜32を形成するとともに、貫通配線34の端部にアルミニウムや金などによりパッド30dを形成する(図4E)。最後に、パッド30dの外側に、反射層3と赤外線検出器2とを封止接合するための接合部を、正珪酸四エチル(TEOS)、金粒子、金すず(AuSn)、ポリマーなどにより形成する(図4F)。
【0052】
以上のようにして作成された赤外線検出器2と反射層3は、真空または真空に近い低圧の減圧雰囲気下で、積層されて接合(接着)される。これにより、赤外線検出器2の空洞部22と、凹部31によって形成される封止空間33が、それぞれ減圧封止される。
【0053】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係る赤外線センサ1によれば、検知部21と演算回路41が一体化された構成なので、検知部21と演算回路41との間の距離を短くすることができる。したがって、ノイズの低減と検出精度の向上を図ることができる。
【0054】
また、演算回路41で発生する熱(赤外線)は、検知部21と演算回路41との間の反射面32によって遮られるので、演算回路41の熱が検知部21の検出精度に悪影響を及ぼすことが抑制される。
【0055】
また、検知部21に入射する赤外線は、減圧封止された空洞部22や減圧空間33を通過するので、熱が空気に逃げることによる感度の低下が抑制され、温度の検出を感度良く行うことができる。
【0056】
また、入射位置や入射角度により検知部21に受光されずに赤外線検出器2を通過した赤外線は、反射面32によって検知部21に反射集光されるので、検出感度を高めることができる。
【0057】
また、空洞部や封止空間の減圧封止を半導体プロセスで行なうので、安定度の高い封止を行なうことができ、作業性の向上、製造コストの削減を図ることができる。
【0058】
また、貫通配線により検知部21と演算回路41とを接続する構成とすることで、コンパクトな積層構造を実現でき、センサの小型化を図ることができる。したがって、ノイズの低減と検出精度の向上を図ることができる。
【0059】
また、図5Cに示すように、2つの貫通配線34を、検知部21の出力信号を積分するためのコンデンサの電極として利用すれば、積分回路のためのコンデンサを別途設ける必要がなくなり、センサの小型化を図ることができる。
【0060】
また、一つの検知部21に対して一つの演算回路41で増幅又は積分の演算処理を行なうので、精度の高い検出が可能である。
【0061】
本実施例に係る赤外線センサモジュール100によれば、検知部21の検出精度を上げるための減圧空間がセンサ1自体に形成されているので、センサ1を収容するケース101に減圧処理を施す必要がなくなる。したがって、モジュールの製作工程の削減を図ることができる。
【0062】
また、ケース101自体に気密性が要求されないので、ケース材料や接着剤の選択の幅を広げることができる。したがって、材料費の削減が可能となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
したがって、本実施例によれば、ノイズの低減及び検出精度の向上を図るとともに製造コストの低減を図ることができる。
【0064】
<その他>
本発明は、検出部と演算回路とを積層一体化するとともに貫通配線により接続する構造を採用したことにより、配線の自由度の高い構成となっている。上記実施例では、出力パッド42を回路基板4の下面に設けているが、出力パッド42を設ける位置はこれに限られるものではない。なお、本実施例の構成によればボール実装が可能となる。
【0065】
例えば、図6Aに示すように、出力パッド42を反射層3と回路基板4との接合面から横に引き出すように構成したり、図6Bに示すように、貫通配線によって半導体検出器2の基板20の上面から引き出すことにより、ワイヤボンド実施が可能となる。
【0066】
また、上記実施例では、検知部21と空洞部22と反射膜32の組合せが個々に独立した構成としているが、これも特に限定されるものではない。例えば、図7A及び図7Bに示すように、凹部31のエッチング形成の際のパターニングを工夫して異方性エッチングによって掘る深さを変化させることで、1つの凹部31の形成によって複数の凹部31を同時に形成するようにしてもよい。
【0067】
また、図7Cに示すように、2つの演算回路41によって、コンデンサの一対の電極を形成し、積分回路に利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 … 赤外線センサ
2 … 赤外線検出器
20 … シリコン基板
21 … 検知部
22 … 空洞部
3 … 反射層
30 … シリコン基板
31 … 凹部
32 … 赤外線反射膜
33 … 封止空間
34 … 貫通配線
4 … 回路基板
40 … シリコン基板
41 … 演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧封止された空洞部を有し、赤外線を透過する第1基板と、
該第1基板において外部から赤外線が入射する側とは反対側に設けられ、前記空洞部を通過した赤外線を受光することにより出力変化を生じる検知部と、
前記第1基板との間に前記検知部を囲む減圧空間を形成する凹部と、前記検知部に受光されずに前記第1基板を通過した赤外線を前記検知部に向けて反射集光可能に構成された反射面と、を有し、前記第1基板に積層される第2基板と、
該第2基板において前記検知部に対して前記反射面を挟んだ位置に設けられ、前記検知部の出力を増幅または積分する演算回路と、
を備えることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記空洞部は、前記第2基板が積層される側の面に開口した空洞部として形成され、
前記空洞部と前記減圧空間は、前記第1基板と前記第2基板が減圧雰囲気下で積層接着されることにより、減圧封止されることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記赤外線検知部と前記演算回路は、前記第2基板を積層方向に貫通する配線により接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記配線を少なくとも2つ有することを特徴とする請求項3に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記検知部を、複数有するとともに、
前記演算回路を、複数の前記検知部に対応して複数有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の赤外線センサ。
【請求項6】
前記演算回路は、前記第2基板において前記第1基板が積層される面とは反対側の面上に形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の赤外線センサ。
【請求項7】
前記第2基板に対して前記第1基板とは反対側に積層される第3基板を有し、
前記演算回路は、前記第3基板に形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の赤外線センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の赤外線センサと、
該赤外線センサが収容されるケースと、
を備えることを特徴とする赤外線センサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4D1】
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【図4D2】
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【図4D3】
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【図4D4】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2011−137744(P2011−137744A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298554(P2009−298554)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】