赤外線センサ
【課題】可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能な赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線センサは、熱型赤外線検出素子10がパッケージ30に収納された赤外線センサ本体40と、赤外線センサ本体40を覆うポリエチレン製のカバー50とを備えている。そして、赤外線センサは、カバー50が、赤外線センサ本体40のパッケージ30における赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部51と、パッケージ30側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。
【解決手段】赤外線センサは、熱型赤外線検出素子10がパッケージ30に収納された赤外線センサ本体40と、赤外線センサ本体40を覆うポリエチレン製のカバー50とを備えている。そして、赤外線センサは、カバー50が、赤外線センサ本体40のパッケージ30における赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部51と、パッケージ30側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線センサとして、熱型赤外線検出素子がパッケージに収納された赤外線センサ本体と、この赤外線センサ本体を覆うポリエチレン製のカバーとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1)
特許文献1には、この種の赤外線センサとして、図11に示すように、センサ素子(赤外線センサ本体)140と、樹脂キャップ(カバー)150とにより構成される熱線センサが記載されている。センサ素子140は、金属製のケース(パッケージ)130と、ケース130の前面に装着されるフィルタ(赤外線透過窓材)133と、ケース130の内部に収納される赤外線検知エレメント(熱型赤外線検出素子)などの回路素子(図示せず)とにより構成されている。また、樹脂キャップ150は、ポリエチレンにより有底の円筒状に形成されている。ここで、樹脂キャップ150は、ドーム状の底部151の肉厚よりも他の部位152の肉厚を厚くしてある。また、樹脂キャップ150の内側面には、圧入用リブ(図示せず)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−304956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、従来の蛍光灯を小型化した蛍光管や、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)や白色LEDなど、小型で輝度の高い照明用の光源の普及が進んできた。それに伴い、照明器具などにおいては、照明器具全体の小型化が求められるようになり、光源と人体検知用の赤外線センサを非常に近づけて配置することが求められる場合が多くなっている。しかしながら、このような場合においては、本来赤外線を放出しない蛍光管、有機EL素子、白色LEDなどの光源からの光が誤動作の原因になることが問題となっている。本願発明者らは、これらの照明器具の光源である蛍光管、有機EL素子、白色LEDなどからの可視光に起因して赤外線センサが誤検知してしまうことがあるという知見を得た。
【0005】
そして、本願発明者らは、このような誤検知が起こる原因として、樹脂キャップ150およびフィルタ133での可視光に対する透過率が0でないため、樹脂キャップ150を透過した可視光がフィルタ133を透過して赤外線検知エレメントに入射して誤検知が発生してしまうことがあるという知見を得た。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能な赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の赤外線センサは、少なくとも熱型赤外線検出素子がパッケージに収納された赤外線センサ本体と、前記赤外線センサ本体を覆うポリエチレン製のカバーとを備え、前記カバーは、前記赤外線センサ本体の前記パッケージにおける赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部と、前記パッケージ側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなることを特徴とする。
【0008】
この赤外線センサにおいて、前記熱型赤外線検出素子は、焦電素子であることが好ましい。
【0009】
この赤外線センサにおいて、前記添加物は、顔料、ヒンダードアミン光安定剤および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
この赤外線センサにおいて、前記赤外線透過部は、前記赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を前記熱型赤外線検出素子へ集光可能なレンズ状の形状に形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の赤外線センサにおいては、可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は実施形態の赤外線センサの平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【図2】実施形態の赤外線センサの概略分解斜視図である。
【図3】(a)は実施形態の赤外線センサにおけるカバーの平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【図4】実施形態の赤外線センサにおける熱型赤外線検出素子の概略説明図である。
【図5】実施形態の赤外線センサの概略回路図である。
【図6】実施形態の赤外線センサにおける赤外線透過窓材の光学特性図である。
【図7】実施形態の赤外線センサの比較例の説明図である。
【図8】実施形態の赤外線センサにおけるカバーの他の構成例を示す概略断面図である。
【図9】実施形態の赤外線センサにおけるカバーの更に他の構成例を示す概略断面図である。
【図10】(a)は実施形態の赤外線センサの別の構成例の概略分解斜視図、(b)は実施形態の赤外線センサの別の構成例の概略斜視図である。
【図11】従来例の熱線センサの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本実施形態の赤外線センサについて、図1〜図6に基づいて説明する。なお、本実施形態では、赤外線センサが人体検知センサである場合について例示する。
【0014】
赤外線センサは、熱型赤外線検出素子10がパッケージ30に収納された赤外線センサ本体40と、赤外線センサ本体40を覆うポリエチレン製のカバー50とを備えている。
【0015】
カバー50は、赤外線センサ本体40のパッケージ30における赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部51と、パッケージ30側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。
【0016】
熱型赤外線検出素子10は、焦電素子、サーモパイル型の赤外線検出素子、抵抗ボロメータ型の赤外線検出素子などを用いることができる。しかし、赤外線センサは、光源からの強力な可視光がカバー50に入射した場合、カバー50の温度が緩やかに上昇する。赤外線センサは、カバー50での入射光に対する温度上昇の応答性は緩やかで、概ね数10秒ぐらいかかるため、熱型赤外線検出素子10として焦電素子を用いることが好ましい。これにより、赤外線センサは、カバー50の温度上昇に伴ってカバー50から放射される赤外線に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。また、赤外線センサは、熱型赤外線検出素子10として焦電素子を用いることにより、赤外線を放射する物体(ここでは、人体)のわずかな動きを検知して検知信号を出力するものとすることが可能となり、また、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0017】
添加物は、顔料、ヒンダードアミン光安定剤(Hinderd AmineLight Stabilizer:HALS)および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
赤外線センサは、赤外線透過部51が、赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を熱型赤外線検出素子10へ集光可能なレンズ状の形状に形成されていることが好ましい。
【0019】
赤外線センサは、パッケージ30内に、少なくとも熱型赤外線検出素子10が収納されていればよいが、これに限らず、熱型赤外線検出素子10の出力信号を信号処理する信号処理回路20を有する回路ブロック28が収納されていることが好ましい。
【0020】
赤外線センサのパッケージ30は、回路ブロック28が実装される金属製のステム31と、回路ブロック28を覆うようにステム31に固着(溶接)された金属製のキャップ32とを備えている。
【0021】
また、パッケージ30は、回路ブロック28の適宜部位と電気的に接続される3本(図1では、2本しか見えていない)の端子ピン35がステム31を貫通する形で設けられている。ステム31は、円盤状に形成され、キャップ32は、後面が開放された有底円筒状の形状に形成されており、後面がステム31により閉塞されている。
【0022】
上述のパッケージ30は、ステム31の周部に形成されたフランジ部31bと、キャップ32の後端縁から外方に延設された外鍔部32bとを、溶接により気密的に接合してある。ステム31は、フランジ部31bの外周縁の1箇所から突片31cが外方に延設されている。また、キャップ32は、外鍔部32bの外周縁の1箇所から突片32cが外方に延設されている。そして、パッケージ30は、ステム31とキャップ32との互いの突片31c,32c同士が重なるように位置決めして溶接されている。
【0023】
上述の説明から明らかなように、パッケージ30は、キャンパッケージである。なお、キャップ32の形状は、有底円筒状に限らず、例えば、有底角筒状の形状でもよく、この場合、ステム31の形状を矩形板状とすればよい。
【0024】
また、キャップ32において熱型赤外線検出素子10の前方に位置する前壁には、窓孔32aが貫設されている。パッケージ30は、キャップ32の窓孔32aが、上述の赤外線透過窓材33により閉塞されている。キャップ32の窓孔32aは、矩形状(本実施形態では、正方形状)に開口されている。これに対して、赤外線透過窓材33は、平面視における外形を、窓孔32aの開口サイズよりもやや大きな外形サイズの矩形状(本実施形態では、正方形状)としてある。要するに、赤外線透過窓材33は、矩形板状に形成されている。これにより、赤外線透過窓材33の製造にあたっては、例えば、シリコン基板の元となるシリコンウェハに対して薄膜形成技術を利用してフィルタを形成することで多数の赤外線透過窓材33を形成してから、ダイシングによって個々の赤外線透過窓材33に分離する製造プロセスを採用することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0025】
赤外線透過窓材33は、シリコン基板からなる母材に、所望の波長域の赤外線を透過する多層光学膜(干渉フィルタ)からなるフィルタが設けられている。赤外線透過窓材33は、当該赤外線透過窓材33の周部が、キャップ32の前壁における後面側に、半田などの導電性の接合材からなる接合部(図示せず)を介して接合されている。これにより、パッケージ30は、赤外線透過窓材33とキャップ32とステム31とを同電位とすることが可能となる。フィルタは、例えば、互いに屈折率の異なる第1の薄膜(例えば、ゲルマニウム薄膜)と第2の薄膜(例えば、硫化亜鉛薄膜)とが交互に積層された多層光学膜により構成することができる。赤外線センサが人体検知センサの場合、検知対象の赤外線の波長が8〜12μm程度であり、中心波長が10μm程度なので、フィルタは、8μmよりも短波長の所定波長(例えば、5μm)以下の波長の電磁波をカットするように、第1の薄膜および第2の薄膜の光学膜厚と積層数とを設計してある。
【0026】
赤外線透過窓材33の母材は、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板などでもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、フィルタは、互いに屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜が交互に積層された多層光学膜であればよく、各薄膜の材料は特に限定するものではない。相対的に屈折率の高い高屈折率材料をゲルマニウムとした場合には、相対的に屈折率の低い低屈折率材料として、例えば、上述の硫化亜鉛を採用することができるが、これに限らず、例えば、アルミナや、二酸化シリコンなどを採用することができる。
【0027】
回路ブロック28は、上述の信号処理回路20が設けられるとともに、熱型赤外線検出素子10が実装されており、適宜のシールド板(図示せず)やシールド層(図示せず)が設けられている。
【0028】
上述の3本の端子ピン35のうち給電用の端子ピン35および信号出力用の端子ピン35は、絶縁性材料(ガラス)からなる封止部によりステム31と電気的に絶縁されている。また、グランド用の端子ピン35は、導電性材料からなる封止部によりステム31と電気的に接続され上述のシールド板と同電位(例えば、グランド電位)に設定される。
【0029】
熱型赤外線検出素子10は、赤外線を検出するものであり、焦電素子により構成することが好ましい。ここで、熱型赤外線検出素子10としては、例えば、図4に示すように、1枚の焦電体基板11に4個の素子エレメント(受光部)12が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。図4に示した熱型赤外線検出素子10は、1枚の焦電体基板11に4個の素子エレメント12が2×2のアレイ状に配列されている。図4に示した例では、各素子エレメント12の平面視形状が正方形状であり、焦電体基板11の中央部において焦電体基板11の外周線よりも内側の仮想正方形の4つの角それぞれに素子エレメント12の中心が位置するように配置されている。
【0030】
各素子エレメント12は、一対の電極(図示せず)の間に焦電体基板11の一部が介在するコンデンサであり、図4には、各素子エレメント12の一対の電極のうち赤外線透過窓材33側に位置する電極の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。ここにおいて、熱型赤外線検出素子10は、4個の素子エレメント12のうち、仮想正方形の一方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント12同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント12同士が並列接続されている。要するに、熱型赤外線検出素子10は、図4において、左右方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント12同士が逆並列に接続され、且つ、上下方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント12同士が逆並列に接続されている。しかして、熱型赤外線検出素子10では、自発分極の方向が逆方向になるように並列接続されている素子エレメント12同士で、環境温度の変化などによる2つ素子エレメント12でのノイズ(暗雑音など)が相殺されるので、赤外線センサでの誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0031】
赤外線センサの検知エリアは、熱型赤外線検出素子10と、赤外線透過部51とで略決まる。したがって、赤外線センサの検知エリアには、〔素子エレメント12の数〕×〔赤外線透過部51のレンズの数〕の検知ビームが設定される。検知ビームは、熱型赤外線検出素子10への赤外線の入射量がピーク付近になる小範囲であって、検知対象の物体(人体)からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。なお、検知ビームには、素子エレメント12に1対1で対応した極性がある。検知面における検知ビームの形状は、その検知ビームに対応する素子エレメント12と略相似形である。
【0032】
熱型赤外線検出素子10の配置は、上述の例に限らず、例えば、2×2のマトリクス状に配列された4個の素子エレメント12のうち対角位置にある2個の素子エレメント12それぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置してもよい。つまり、熱型赤外線検出素子10は、上述の仮想正方形の1つの対角線に沿った方向を左右方向として配置してもよい。また、熱型赤外線検出素子10は、長方形状に形成された複数個の素子エレメント12が、平面視において素子エレメント12の短手方向に並んでいるもの、例えば、長方形状の素子エレメント12が1×4のアレイ状に配列されたクワッドタイプの焦電素子でもよい。また、熱型赤外線検出素子10は、2個の素子エレメント12が1×2のアレイ状に配列されたデュアルタイプの焦電素子でもよい。熱型赤外線検出素子10として、クワッドタイプもしくはデュアルタイプの焦電素子を用いることにより、赤外線を放射する物体の動きを検知しやすくなる。なお、熱型赤外線検出素子10は、シングルタイプの焦電素子により構成してもよい。
【0033】
熱型赤外線検出素子10としてクワッドタイプの焦電素子を採用した場合、熱型赤外線検出素子10は、図5中に示す等価回路で示すことができる。熱型赤外線検出素子10は、4個の素子エレメント12が2×2のアレイ状に形成され、配線パターンにより適宜接続されており、2つの出力端子13(図4および図5参照)から出力信号を取り出すことができる。
【0034】
信号処理回路20は、図5に示すように、熱型赤外線検出素子10から出力される出力信号である出力電流(焦電電流)を電圧信号に変換する電流電圧変換回路22を備えている。また、信号処理回路20は、電流電圧変換回路22により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧を増幅する電圧増幅回路(バンドパスアンプ)23を備えている。また、信号処理回路20は、電圧増幅回路23で増幅された電圧信号を適宜設定した閾値と比較し電圧信号が閾値を越えた場合に検知信号を出力する検知回路24と、検知回路24の検知信号を所定の人体検出信号として出力する出力回路25とを備えている。
【0035】
カバー50は、上述のように、赤外線を透過する赤外線透過部51と、赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。
【0036】
このような2色成形品は、1基の型締装置に2基の射出装置を備えた形式の射出成形機である2色射出成形機を利用して一体成形することができる。
【0037】
遮蔽部52は、赤外線透過部51から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ筒状の形状に形成されている。したがって、カバー50は、遮蔽部52が赤外線透過部51からの距離によらず開口面積を一様とした筒状である場合に比べて、製造時に、金型からの容易に離型することが可能となり、生産性の向上および歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0038】
赤外線透過部51は、上述のように、赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を熱型赤外線検出素子10へ集光可能なレンズ状の形状に形成されていることが好ましい。図1に示した例では、赤外線透過部51を、複数枚のレンズ51aが組み合わされ各レンズ51aの焦点位置が同じである多分割レンズとし、当該焦点位置に熱型赤外線検出素子10を配置してある。赤外線透過部51は、多分割レンズに限らず、1枚のレンズとしてもよい。赤外線センサを人体検知センサの用途に適用する場合には、赤外線透過部51をレンズ状の形状とすることが好ましいが、人体検知センサ以外の用途、例えば、ガスセンサ、炎検知センサなどの用途に適用する場合には、赤外線透過部51を必ずしもレンズ状の形状とする必要はなく、例えば、平板状や、ドーム状の形状としてもよい。
【0039】
カバー50は、当該カバー50の後端縁(図1(b)における下端縁)に凹部52bが形成されている。凹部52は、カバー50の後端縁側および内側面側が開放されている。また、カバー50は、凹部52bの底面との間にキャップ32の外鍔部32bおよびステム31のフランジ部31bを保持する複数の保持突起52cが、凹部52bの底面よりも後端縁側において突設されている。したがって、赤外線センサは、赤外線センサ本体40とカバー50との相対的な位置関係を精度良く決めることができる。これにより、赤外線センサは、赤外線透過部51をレンズ状の形状に形成している場合に、赤外線透過部51の焦点位置と熱型赤外線検出素子10との相対的な位置精度を高めることが可能となり、製品ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
【0040】
カバー50は、ステム31の後面よりもカバー50の後端縁のほうが後方に位置するように、赤外線センサ本体40に対して位置決めされる。これにより、赤外線センサは、プリント配線板などの基板に実装して用いる場合に、ステム31と基板との間に隙間が形成される。つまり、赤外線センサは、カバー50と赤外線センサ本体40と基板とで囲まれた空間が空気層からなる気体層を構成するから、基板からステム31への熱伝導を抑制することが可能となり、赤外線センサの周囲の熱のゆらぎに起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0041】
ところで、本願発明者らは、照明器具の光源である有機EL素子や白色LEDなどからの可視光に起因して赤外線センサが誤検知してしまうことがあるという知見を得た。この問題を解決するにあたり、本願発明者らは、有機EL素子や白色LEDからは赤外線が放射されないことに鑑み、赤外線透過窓材33の可視光域での光学特性に着目し、赤外線透過窓材33の可視光域での光学特性について、より詳細に調べた。図6に示した赤外線透過窓材33の光学特性図は、赤外線透過窓材33の光学特性として透過率の波長依存性を分光器により測定した結果の一例の模式図である。図6から、赤外線透過窓材33では、可視光域での透過率が0ではなく、0.01%程度であることが分かる。ここで、図7に示すように、ポリエチレンに一種類の顔料(例えば白色顔料あるいは黒色顔料)を一様に添加した成形品であるカバー50を備えた比較例の赤外線センサでは、熱型赤外線検出素子10の感度を確保する観点から、カバー50での赤外線の減衰量を低減するために、顔料の濃度が制限される。このため、図7に示した比較例の赤外線センサでは、有機EL素子や白色LEDからの可視光がカバー50の外側面側から入射すると、同図中に一点鎖線や二点鎖線で示すように可視光の一部が、散乱や反射などされて赤外線透過窓材33へ入射し、赤外線透過窓材33へ入射した可視光の一部が赤外線透過窓材33を透過して熱型赤外線検出素子10へ入射してしまうものと推考される。なお、有機EL素子や白色LEDに限らず、太陽光などの光強度の高い可視光がカバー50の外側面側から入射すると、同様の光路で熱型赤外線検出素子10へ入射してしまうものと推考される。
【0042】
これに対して、本実施形態の赤外線センサでは、可視光および不要な赤外線による誤検知の発生を抑制するために、カバー50を、赤外線を透過する赤外線透過部51と、赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品により構成している。ここにおいて、2色成形品とは、異なる色または種類の成形材料を供給し、それぞれ溶融可塑化後に、1個の金型キャビティに同時あるいは順次に連続して射出することで一体成形されたものを意味する。ここで、異なる種類の成形材料とは、ポリエチレンに対する添加物の種類が同じで、添加物の濃度が異なる成形材料を意味している。
【0043】
添加物は、上述のように、顔料、ヒンダードアミン光安定剤および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。これにより、赤外線センサは、遮蔽部52で、入射した可視光や赤外線の波長変換が行なわれるのを防止することができ、また、遮蔽部52を透過する可視光および赤外線それぞれの量を低減することが可能となる。
【0044】
顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれでもよいが、耐光性、耐候性などの観点から、無機材料のほうが、より好ましい。有機顔料、無機顔料いずれの場合も、例えば、白色顔料、黒色顔料などを用いることができる。無機顔料のうち白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)などを用いることができる。また、無機顔料のうち黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックなどを用いることができる。
【0045】
ここで、カバー50は、赤外線透過部51と遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物をいずれも白色顔料とする場合、遮蔽部52の方を、ポリエチレンに対する添加物の濃度を高く設定すればよい。これにより、赤外線透過部51と遮蔽部52とを同色系(白色系)にすることができるので、赤外線センサの意匠性を高めることが可能となる。同様に、カバー50は、赤外線透過部51と遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物をいずれも黒色顔料とする場合、遮蔽部52の方を、ポリエチレンに対する添加物の濃度を高く設定すればよい。これにより、赤外線透過部51と遮蔽部52とを同色系(黒色系)にすることができるので、赤外線センサの意匠性を高めることが可能となる。また、カバー50は、赤外線透過部51と遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物を異ならせる場合、例えば、赤外線透過部51でのポリエチレンに対する添加物を白色顔料、遮蔽部52でのポリエチレンに対する添加物を黒色顔料とすることができる。これにより、赤外線センサは、赤外線透過部51と遮蔽部52との異なる色の組合せなどによって、赤外線センサのデザイン性を高めることが可能となる。
【0046】
赤外線吸収剤としては、ポリエチレンの耐光性向上や酸化防止、着色、成形性向上などの機能向上が図れる添加剤が好ましい。このような吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、リン酸エステル系添加剤、亜リン酸エステル剤などが挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤は、上述の吸収剤と同様、ポリエチレンの耐光性向上や酸化防止、着色、成形性向上などの機能向上が図れる。
【0047】
以上説明した本実施形態の赤外線センサは、上述のように、熱型赤外線検出素子10がパッケージ30に収納された赤外線センサ本体40と、赤外線センサ本体40を覆うポリエチレン製のカバー50とを備えている。そして、赤外線センサは、カバー50が、赤外線センサ本体40のパッケージ30における赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部51と、パッケージ30側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、遮蔽部52での赤外線および可視光の透過率を赤外線透過部51とは関係なく設定することが可能となり、感度を低下させることなく可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。要するに、赤外線センサは、赤外線透過部51の形状などにより決まる検知エリア以外からの不要な赤外線が熱型赤外線検出素子10へ入射するのを抑制できるだけでなく、カバー50の側方からカバー50に入射する可視光が、熱型赤外線検出素子10へ入射するのを抑制することが可能となり、可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0048】
これにより、赤外線センサは、設置場所の自由度が高くなり、例えば、有機EL素子や白色LEDを光源として備えた照明器具に搭載するような場合に、設置場所の自由度が高いことにより、照明器具の意匠性の向上を図れ、また、赤外線センサの検知エリアの中心線と照明器具の照明エリアの中心線とを合わせるような器具設計が容易になる。なお、赤外線センサは、遮蔽部52の肉厚を赤外線透過部51の肉厚よりも厚くすれば、遮蔽部52での赤外線および可視光の減衰効果を、より高めることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の赤外線センサは、赤外線透過部51と遮蔽部52とを上述の2色成形品により構成しているので、部品点数を削減でき、低コスト化が可能となる。また、遮蔽部52をポリエチレン以外の材料により形成した場合には、ポリエチレンにより形成された赤外線透過部51と接着することが難しく、両者を結合するための構造を別途に設ける必要があるが、本実施形態の赤外線センサでは、両者を結合するための構造を別途に設ける必要がないから、カバー50の形状設計が容易になるとともに、デザイン性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の赤外線センサでは、熱型赤外線検出素子10を焦電素子により構成すれば、焦電素子が微分型素子であることにより、カバー50の遮蔽部52において添加物で赤外線や可視光を吸収することで温度が徐々に上昇して赤外線が放射されたとしても、誤検知が発生するのを抑制することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線透過部51をレンズ状の形状としてあるので、熱型赤外線検出素子10と赤外線透過部51とにより検知エリアを設定することが可能となり、また、赤外線透過部51に入射する赤外線を効率よく熱型赤外線検出素子10へ集光することが可能となり、感度の向上を図ることが可能となる。
【0052】
ところで、カバー50における赤外線透過部51および遮蔽部52それぞれの形状は上述の例に限らず、例えば、図8に示す例の形状としてもよいし、図9に示す例の形状としてもよい。図8の例では、赤外線透過部51の形状が有底のテーパ円筒状であり、遮蔽部52が赤外線透過部51の内側面側に配置されているので、カバー50の外観面を赤外線透過部51のみの表面で形成することができ、意匠性をより高めることが可能となる。図9の例では、カバー50において、テーパ円筒状の部分のうち、前半分は赤外線透過部51の表面が外観面を構成し、後半分は遮蔽部52の表面が外観面を構成しているので、デザイン性を高めることが可能となる。なお、赤外線センサは、図8や図9の例のカバー50を備えている場合、赤外線透過部51の少なくとも一部をレンズ状の形状としてもよい。
【0053】
また、赤外線センサは、図10に示すように、カバー50として、赤外線透過部51が赤外線透過窓材33に対向する前壁を構成し、遮蔽部52が赤外線センサ本体40を囲む矩形枠状の側壁を構成する矩形箱状の形状のものを用いてもよい。図10に示した例の赤外線センサは、カバー50を、赤外線センサ本体40ではなく、赤外線センサ本体40を実装するプリント配線板からなる基板60に対して取り付ける構成としてある。ここにおいて、基板60には、赤外線センサ本体40の3本の端子ピン35のそれぞれが挿通される3つのスルーホール65が形成されている。また、基板60には、カバー50の後端縁から後方へ延設された複数の取付脚53の各々が挿通される複数の取付孔63が形成されている。したがって、カバー50は、取付脚53を基板60の取付孔63に挿通させて当該取付脚53の先端部の係止爪を基板60における取付孔63の周部に係止させることによって、基板60に取り付けることができる。なお、カバー50は、赤外線透過部51が必ずしも前壁の全部を構成する必要はなく、前壁の一部を構成するようにしてもよい。また、赤外線透過部51は、少なくとも一部をレンズ状の形状としてもよいし、それに限らず、平板状の形状としてもよい。
【0054】
ところで、上述の実施形態では、熱型赤外線検出素子10が焦電体基板11を用いて形成した焦電素子である場合について説明したが、焦電型の熱型赤外線検出素子はこれに限らず、例えば、マイクロマシニング技術および焦電体薄膜の形成技術などを利用して形成したチップでもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、パッケージ30として、キャンパッケージを例示したが、これに限らず、外周形状が矩形状の表面実装型のパッケージを採用してもよい。なお、表面実装型のパッケージの外周形状は、矩形状以外の形状でもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 熱型赤外線検出素子(焦電素子)
30 パッケージ
33 赤外線透過窓材
40 赤外線センサ本体
50 カバー
51 赤外線透過部
52 遮蔽部
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線センサとして、熱型赤外線検出素子がパッケージに収納された赤外線センサ本体と、この赤外線センサ本体を覆うポリエチレン製のカバーとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1)
特許文献1には、この種の赤外線センサとして、図11に示すように、センサ素子(赤外線センサ本体)140と、樹脂キャップ(カバー)150とにより構成される熱線センサが記載されている。センサ素子140は、金属製のケース(パッケージ)130と、ケース130の前面に装着されるフィルタ(赤外線透過窓材)133と、ケース130の内部に収納される赤外線検知エレメント(熱型赤外線検出素子)などの回路素子(図示せず)とにより構成されている。また、樹脂キャップ150は、ポリエチレンにより有底の円筒状に形成されている。ここで、樹脂キャップ150は、ドーム状の底部151の肉厚よりも他の部位152の肉厚を厚くしてある。また、樹脂キャップ150の内側面には、圧入用リブ(図示せず)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−304956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、従来の蛍光灯を小型化した蛍光管や、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)や白色LEDなど、小型で輝度の高い照明用の光源の普及が進んできた。それに伴い、照明器具などにおいては、照明器具全体の小型化が求められるようになり、光源と人体検知用の赤外線センサを非常に近づけて配置することが求められる場合が多くなっている。しかしながら、このような場合においては、本来赤外線を放出しない蛍光管、有機EL素子、白色LEDなどの光源からの光が誤動作の原因になることが問題となっている。本願発明者らは、これらの照明器具の光源である蛍光管、有機EL素子、白色LEDなどからの可視光に起因して赤外線センサが誤検知してしまうことがあるという知見を得た。
【0005】
そして、本願発明者らは、このような誤検知が起こる原因として、樹脂キャップ150およびフィルタ133での可視光に対する透過率が0でないため、樹脂キャップ150を透過した可視光がフィルタ133を透過して赤外線検知エレメントに入射して誤検知が発生してしまうことがあるという知見を得た。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能な赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の赤外線センサは、少なくとも熱型赤外線検出素子がパッケージに収納された赤外線センサ本体と、前記赤外線センサ本体を覆うポリエチレン製のカバーとを備え、前記カバーは、前記赤外線センサ本体の前記パッケージにおける赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部と、前記パッケージ側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなることを特徴とする。
【0008】
この赤外線センサにおいて、前記熱型赤外線検出素子は、焦電素子であることが好ましい。
【0009】
この赤外線センサにおいて、前記添加物は、顔料、ヒンダードアミン光安定剤および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
この赤外線センサにおいて、前記赤外線透過部は、前記赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を前記熱型赤外線検出素子へ集光可能なレンズ状の形状に形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の赤外線センサにおいては、可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は実施形態の赤外線センサの平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【図2】実施形態の赤外線センサの概略分解斜視図である。
【図3】(a)は実施形態の赤外線センサにおけるカバーの平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【図4】実施形態の赤外線センサにおける熱型赤外線検出素子の概略説明図である。
【図5】実施形態の赤外線センサの概略回路図である。
【図6】実施形態の赤外線センサにおける赤外線透過窓材の光学特性図である。
【図7】実施形態の赤外線センサの比較例の説明図である。
【図8】実施形態の赤外線センサにおけるカバーの他の構成例を示す概略断面図である。
【図9】実施形態の赤外線センサにおけるカバーの更に他の構成例を示す概略断面図である。
【図10】(a)は実施形態の赤外線センサの別の構成例の概略分解斜視図、(b)は実施形態の赤外線センサの別の構成例の概略斜視図である。
【図11】従来例の熱線センサの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本実施形態の赤外線センサについて、図1〜図6に基づいて説明する。なお、本実施形態では、赤外線センサが人体検知センサである場合について例示する。
【0014】
赤外線センサは、熱型赤外線検出素子10がパッケージ30に収納された赤外線センサ本体40と、赤外線センサ本体40を覆うポリエチレン製のカバー50とを備えている。
【0015】
カバー50は、赤外線センサ本体40のパッケージ30における赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部51と、パッケージ30側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。
【0016】
熱型赤外線検出素子10は、焦電素子、サーモパイル型の赤外線検出素子、抵抗ボロメータ型の赤外線検出素子などを用いることができる。しかし、赤外線センサは、光源からの強力な可視光がカバー50に入射した場合、カバー50の温度が緩やかに上昇する。赤外線センサは、カバー50での入射光に対する温度上昇の応答性は緩やかで、概ね数10秒ぐらいかかるため、熱型赤外線検出素子10として焦電素子を用いることが好ましい。これにより、赤外線センサは、カバー50の温度上昇に伴ってカバー50から放射される赤外線に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。また、赤外線センサは、熱型赤外線検出素子10として焦電素子を用いることにより、赤外線を放射する物体(ここでは、人体)のわずかな動きを検知して検知信号を出力するものとすることが可能となり、また、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0017】
添加物は、顔料、ヒンダードアミン光安定剤(Hinderd AmineLight Stabilizer:HALS)および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
赤外線センサは、赤外線透過部51が、赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を熱型赤外線検出素子10へ集光可能なレンズ状の形状に形成されていることが好ましい。
【0019】
赤外線センサは、パッケージ30内に、少なくとも熱型赤外線検出素子10が収納されていればよいが、これに限らず、熱型赤外線検出素子10の出力信号を信号処理する信号処理回路20を有する回路ブロック28が収納されていることが好ましい。
【0020】
赤外線センサのパッケージ30は、回路ブロック28が実装される金属製のステム31と、回路ブロック28を覆うようにステム31に固着(溶接)された金属製のキャップ32とを備えている。
【0021】
また、パッケージ30は、回路ブロック28の適宜部位と電気的に接続される3本(図1では、2本しか見えていない)の端子ピン35がステム31を貫通する形で設けられている。ステム31は、円盤状に形成され、キャップ32は、後面が開放された有底円筒状の形状に形成されており、後面がステム31により閉塞されている。
【0022】
上述のパッケージ30は、ステム31の周部に形成されたフランジ部31bと、キャップ32の後端縁から外方に延設された外鍔部32bとを、溶接により気密的に接合してある。ステム31は、フランジ部31bの外周縁の1箇所から突片31cが外方に延設されている。また、キャップ32は、外鍔部32bの外周縁の1箇所から突片32cが外方に延設されている。そして、パッケージ30は、ステム31とキャップ32との互いの突片31c,32c同士が重なるように位置決めして溶接されている。
【0023】
上述の説明から明らかなように、パッケージ30は、キャンパッケージである。なお、キャップ32の形状は、有底円筒状に限らず、例えば、有底角筒状の形状でもよく、この場合、ステム31の形状を矩形板状とすればよい。
【0024】
また、キャップ32において熱型赤外線検出素子10の前方に位置する前壁には、窓孔32aが貫設されている。パッケージ30は、キャップ32の窓孔32aが、上述の赤外線透過窓材33により閉塞されている。キャップ32の窓孔32aは、矩形状(本実施形態では、正方形状)に開口されている。これに対して、赤外線透過窓材33は、平面視における外形を、窓孔32aの開口サイズよりもやや大きな外形サイズの矩形状(本実施形態では、正方形状)としてある。要するに、赤外線透過窓材33は、矩形板状に形成されている。これにより、赤外線透過窓材33の製造にあたっては、例えば、シリコン基板の元となるシリコンウェハに対して薄膜形成技術を利用してフィルタを形成することで多数の赤外線透過窓材33を形成してから、ダイシングによって個々の赤外線透過窓材33に分離する製造プロセスを採用することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0025】
赤外線透過窓材33は、シリコン基板からなる母材に、所望の波長域の赤外線を透過する多層光学膜(干渉フィルタ)からなるフィルタが設けられている。赤外線透過窓材33は、当該赤外線透過窓材33の周部が、キャップ32の前壁における後面側に、半田などの導電性の接合材からなる接合部(図示せず)を介して接合されている。これにより、パッケージ30は、赤外線透過窓材33とキャップ32とステム31とを同電位とすることが可能となる。フィルタは、例えば、互いに屈折率の異なる第1の薄膜(例えば、ゲルマニウム薄膜)と第2の薄膜(例えば、硫化亜鉛薄膜)とが交互に積層された多層光学膜により構成することができる。赤外線センサが人体検知センサの場合、検知対象の赤外線の波長が8〜12μm程度であり、中心波長が10μm程度なので、フィルタは、8μmよりも短波長の所定波長(例えば、5μm)以下の波長の電磁波をカットするように、第1の薄膜および第2の薄膜の光学膜厚と積層数とを設計してある。
【0026】
赤外線透過窓材33の母材は、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板などでもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、フィルタは、互いに屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜が交互に積層された多層光学膜であればよく、各薄膜の材料は特に限定するものではない。相対的に屈折率の高い高屈折率材料をゲルマニウムとした場合には、相対的に屈折率の低い低屈折率材料として、例えば、上述の硫化亜鉛を採用することができるが、これに限らず、例えば、アルミナや、二酸化シリコンなどを採用することができる。
【0027】
回路ブロック28は、上述の信号処理回路20が設けられるとともに、熱型赤外線検出素子10が実装されており、適宜のシールド板(図示せず)やシールド層(図示せず)が設けられている。
【0028】
上述の3本の端子ピン35のうち給電用の端子ピン35および信号出力用の端子ピン35は、絶縁性材料(ガラス)からなる封止部によりステム31と電気的に絶縁されている。また、グランド用の端子ピン35は、導電性材料からなる封止部によりステム31と電気的に接続され上述のシールド板と同電位(例えば、グランド電位)に設定される。
【0029】
熱型赤外線検出素子10は、赤外線を検出するものであり、焦電素子により構成することが好ましい。ここで、熱型赤外線検出素子10としては、例えば、図4に示すように、1枚の焦電体基板11に4個の素子エレメント(受光部)12が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。図4に示した熱型赤外線検出素子10は、1枚の焦電体基板11に4個の素子エレメント12が2×2のアレイ状に配列されている。図4に示した例では、各素子エレメント12の平面視形状が正方形状であり、焦電体基板11の中央部において焦電体基板11の外周線よりも内側の仮想正方形の4つの角それぞれに素子エレメント12の中心が位置するように配置されている。
【0030】
各素子エレメント12は、一対の電極(図示せず)の間に焦電体基板11の一部が介在するコンデンサであり、図4には、各素子エレメント12の一対の電極のうち赤外線透過窓材33側に位置する電極の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。ここにおいて、熱型赤外線検出素子10は、4個の素子エレメント12のうち、仮想正方形の一方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント12同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント12同士が並列接続されている。要するに、熱型赤外線検出素子10は、図4において、左右方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント12同士が逆並列に接続され、且つ、上下方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント12同士が逆並列に接続されている。しかして、熱型赤外線検出素子10では、自発分極の方向が逆方向になるように並列接続されている素子エレメント12同士で、環境温度の変化などによる2つ素子エレメント12でのノイズ(暗雑音など)が相殺されるので、赤外線センサでの誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0031】
赤外線センサの検知エリアは、熱型赤外線検出素子10と、赤外線透過部51とで略決まる。したがって、赤外線センサの検知エリアには、〔素子エレメント12の数〕×〔赤外線透過部51のレンズの数〕の検知ビームが設定される。検知ビームは、熱型赤外線検出素子10への赤外線の入射量がピーク付近になる小範囲であって、検知対象の物体(人体)からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。なお、検知ビームには、素子エレメント12に1対1で対応した極性がある。検知面における検知ビームの形状は、その検知ビームに対応する素子エレメント12と略相似形である。
【0032】
熱型赤外線検出素子10の配置は、上述の例に限らず、例えば、2×2のマトリクス状に配列された4個の素子エレメント12のうち対角位置にある2個の素子エレメント12それぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置してもよい。つまり、熱型赤外線検出素子10は、上述の仮想正方形の1つの対角線に沿った方向を左右方向として配置してもよい。また、熱型赤外線検出素子10は、長方形状に形成された複数個の素子エレメント12が、平面視において素子エレメント12の短手方向に並んでいるもの、例えば、長方形状の素子エレメント12が1×4のアレイ状に配列されたクワッドタイプの焦電素子でもよい。また、熱型赤外線検出素子10は、2個の素子エレメント12が1×2のアレイ状に配列されたデュアルタイプの焦電素子でもよい。熱型赤外線検出素子10として、クワッドタイプもしくはデュアルタイプの焦電素子を用いることにより、赤外線を放射する物体の動きを検知しやすくなる。なお、熱型赤外線検出素子10は、シングルタイプの焦電素子により構成してもよい。
【0033】
熱型赤外線検出素子10としてクワッドタイプの焦電素子を採用した場合、熱型赤外線検出素子10は、図5中に示す等価回路で示すことができる。熱型赤外線検出素子10は、4個の素子エレメント12が2×2のアレイ状に形成され、配線パターンにより適宜接続されており、2つの出力端子13(図4および図5参照)から出力信号を取り出すことができる。
【0034】
信号処理回路20は、図5に示すように、熱型赤外線検出素子10から出力される出力信号である出力電流(焦電電流)を電圧信号に変換する電流電圧変換回路22を備えている。また、信号処理回路20は、電流電圧変換回路22により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧を増幅する電圧増幅回路(バンドパスアンプ)23を備えている。また、信号処理回路20は、電圧増幅回路23で増幅された電圧信号を適宜設定した閾値と比較し電圧信号が閾値を越えた場合に検知信号を出力する検知回路24と、検知回路24の検知信号を所定の人体検出信号として出力する出力回路25とを備えている。
【0035】
カバー50は、上述のように、赤外線を透過する赤外線透過部51と、赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。
【0036】
このような2色成形品は、1基の型締装置に2基の射出装置を備えた形式の射出成形機である2色射出成形機を利用して一体成形することができる。
【0037】
遮蔽部52は、赤外線透過部51から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ筒状の形状に形成されている。したがって、カバー50は、遮蔽部52が赤外線透過部51からの距離によらず開口面積を一様とした筒状である場合に比べて、製造時に、金型からの容易に離型することが可能となり、生産性の向上および歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0038】
赤外線透過部51は、上述のように、赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を熱型赤外線検出素子10へ集光可能なレンズ状の形状に形成されていることが好ましい。図1に示した例では、赤外線透過部51を、複数枚のレンズ51aが組み合わされ各レンズ51aの焦点位置が同じである多分割レンズとし、当該焦点位置に熱型赤外線検出素子10を配置してある。赤外線透過部51は、多分割レンズに限らず、1枚のレンズとしてもよい。赤外線センサを人体検知センサの用途に適用する場合には、赤外線透過部51をレンズ状の形状とすることが好ましいが、人体検知センサ以外の用途、例えば、ガスセンサ、炎検知センサなどの用途に適用する場合には、赤外線透過部51を必ずしもレンズ状の形状とする必要はなく、例えば、平板状や、ドーム状の形状としてもよい。
【0039】
カバー50は、当該カバー50の後端縁(図1(b)における下端縁)に凹部52bが形成されている。凹部52は、カバー50の後端縁側および内側面側が開放されている。また、カバー50は、凹部52bの底面との間にキャップ32の外鍔部32bおよびステム31のフランジ部31bを保持する複数の保持突起52cが、凹部52bの底面よりも後端縁側において突設されている。したがって、赤外線センサは、赤外線センサ本体40とカバー50との相対的な位置関係を精度良く決めることができる。これにより、赤外線センサは、赤外線透過部51をレンズ状の形状に形成している場合に、赤外線透過部51の焦点位置と熱型赤外線検出素子10との相対的な位置精度を高めることが可能となり、製品ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
【0040】
カバー50は、ステム31の後面よりもカバー50の後端縁のほうが後方に位置するように、赤外線センサ本体40に対して位置決めされる。これにより、赤外線センサは、プリント配線板などの基板に実装して用いる場合に、ステム31と基板との間に隙間が形成される。つまり、赤外線センサは、カバー50と赤外線センサ本体40と基板とで囲まれた空間が空気層からなる気体層を構成するから、基板からステム31への熱伝導を抑制することが可能となり、赤外線センサの周囲の熱のゆらぎに起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0041】
ところで、本願発明者らは、照明器具の光源である有機EL素子や白色LEDなどからの可視光に起因して赤外線センサが誤検知してしまうことがあるという知見を得た。この問題を解決するにあたり、本願発明者らは、有機EL素子や白色LEDからは赤外線が放射されないことに鑑み、赤外線透過窓材33の可視光域での光学特性に着目し、赤外線透過窓材33の可視光域での光学特性について、より詳細に調べた。図6に示した赤外線透過窓材33の光学特性図は、赤外線透過窓材33の光学特性として透過率の波長依存性を分光器により測定した結果の一例の模式図である。図6から、赤外線透過窓材33では、可視光域での透過率が0ではなく、0.01%程度であることが分かる。ここで、図7に示すように、ポリエチレンに一種類の顔料(例えば白色顔料あるいは黒色顔料)を一様に添加した成形品であるカバー50を備えた比較例の赤外線センサでは、熱型赤外線検出素子10の感度を確保する観点から、カバー50での赤外線の減衰量を低減するために、顔料の濃度が制限される。このため、図7に示した比較例の赤外線センサでは、有機EL素子や白色LEDからの可視光がカバー50の外側面側から入射すると、同図中に一点鎖線や二点鎖線で示すように可視光の一部が、散乱や反射などされて赤外線透過窓材33へ入射し、赤外線透過窓材33へ入射した可視光の一部が赤外線透過窓材33を透過して熱型赤外線検出素子10へ入射してしまうものと推考される。なお、有機EL素子や白色LEDに限らず、太陽光などの光強度の高い可視光がカバー50の外側面側から入射すると、同様の光路で熱型赤外線検出素子10へ入射してしまうものと推考される。
【0042】
これに対して、本実施形態の赤外線センサでは、可視光および不要な赤外線による誤検知の発生を抑制するために、カバー50を、赤外線を透過する赤外線透過部51と、赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品により構成している。ここにおいて、2色成形品とは、異なる色または種類の成形材料を供給し、それぞれ溶融可塑化後に、1個の金型キャビティに同時あるいは順次に連続して射出することで一体成形されたものを意味する。ここで、異なる種類の成形材料とは、ポリエチレンに対する添加物の種類が同じで、添加物の濃度が異なる成形材料を意味している。
【0043】
添加物は、上述のように、顔料、ヒンダードアミン光安定剤および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。これにより、赤外線センサは、遮蔽部52で、入射した可視光や赤外線の波長変換が行なわれるのを防止することができ、また、遮蔽部52を透過する可視光および赤外線それぞれの量を低減することが可能となる。
【0044】
顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれでもよいが、耐光性、耐候性などの観点から、無機材料のほうが、より好ましい。有機顔料、無機顔料いずれの場合も、例えば、白色顔料、黒色顔料などを用いることができる。無機顔料のうち白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)などを用いることができる。また、無機顔料のうち黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックなどを用いることができる。
【0045】
ここで、カバー50は、赤外線透過部51と遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物をいずれも白色顔料とする場合、遮蔽部52の方を、ポリエチレンに対する添加物の濃度を高く設定すればよい。これにより、赤外線透過部51と遮蔽部52とを同色系(白色系)にすることができるので、赤外線センサの意匠性を高めることが可能となる。同様に、カバー50は、赤外線透過部51と遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物をいずれも黒色顔料とする場合、遮蔽部52の方を、ポリエチレンに対する添加物の濃度を高く設定すればよい。これにより、赤外線透過部51と遮蔽部52とを同色系(黒色系)にすることができるので、赤外線センサの意匠性を高めることが可能となる。また、カバー50は、赤外線透過部51と遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物を異ならせる場合、例えば、赤外線透過部51でのポリエチレンに対する添加物を白色顔料、遮蔽部52でのポリエチレンに対する添加物を黒色顔料とすることができる。これにより、赤外線センサは、赤外線透過部51と遮蔽部52との異なる色の組合せなどによって、赤外線センサのデザイン性を高めることが可能となる。
【0046】
赤外線吸収剤としては、ポリエチレンの耐光性向上や酸化防止、着色、成形性向上などの機能向上が図れる添加剤が好ましい。このような吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、リン酸エステル系添加剤、亜リン酸エステル剤などが挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤は、上述の吸収剤と同様、ポリエチレンの耐光性向上や酸化防止、着色、成形性向上などの機能向上が図れる。
【0047】
以上説明した本実施形態の赤外線センサは、上述のように、熱型赤外線検出素子10がパッケージ30に収納された赤外線センサ本体40と、赤外線センサ本体40を覆うポリエチレン製のカバー50とを備えている。そして、赤外線センサは、カバー50が、赤外線センサ本体40のパッケージ30における赤外線透過窓材33側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部51と、パッケージ30側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部52とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなる。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、遮蔽部52での赤外線および可視光の透過率を赤外線透過部51とは関係なく設定することが可能となり、感度を低下させることなく可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。要するに、赤外線センサは、赤外線透過部51の形状などにより決まる検知エリア以外からの不要な赤外線が熱型赤外線検出素子10へ入射するのを抑制できるだけでなく、カバー50の側方からカバー50に入射する可視光が、熱型赤外線検出素子10へ入射するのを抑制することが可能となり、可視光に起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0048】
これにより、赤外線センサは、設置場所の自由度が高くなり、例えば、有機EL素子や白色LEDを光源として備えた照明器具に搭載するような場合に、設置場所の自由度が高いことにより、照明器具の意匠性の向上を図れ、また、赤外線センサの検知エリアの中心線と照明器具の照明エリアの中心線とを合わせるような器具設計が容易になる。なお、赤外線センサは、遮蔽部52の肉厚を赤外線透過部51の肉厚よりも厚くすれば、遮蔽部52での赤外線および可視光の減衰効果を、より高めることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の赤外線センサは、赤外線透過部51と遮蔽部52とを上述の2色成形品により構成しているので、部品点数を削減でき、低コスト化が可能となる。また、遮蔽部52をポリエチレン以外の材料により形成した場合には、ポリエチレンにより形成された赤外線透過部51と接着することが難しく、両者を結合するための構造を別途に設ける必要があるが、本実施形態の赤外線センサでは、両者を結合するための構造を別途に設ける必要がないから、カバー50の形状設計が容易になるとともに、デザイン性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の赤外線センサでは、熱型赤外線検出素子10を焦電素子により構成すれば、焦電素子が微分型素子であることにより、カバー50の遮蔽部52において添加物で赤外線や可視光を吸収することで温度が徐々に上昇して赤外線が放射されたとしても、誤検知が発生するのを抑制することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線透過部51をレンズ状の形状としてあるので、熱型赤外線検出素子10と赤外線透過部51とにより検知エリアを設定することが可能となり、また、赤外線透過部51に入射する赤外線を効率よく熱型赤外線検出素子10へ集光することが可能となり、感度の向上を図ることが可能となる。
【0052】
ところで、カバー50における赤外線透過部51および遮蔽部52それぞれの形状は上述の例に限らず、例えば、図8に示す例の形状としてもよいし、図9に示す例の形状としてもよい。図8の例では、赤外線透過部51の形状が有底のテーパ円筒状であり、遮蔽部52が赤外線透過部51の内側面側に配置されているので、カバー50の外観面を赤外線透過部51のみの表面で形成することができ、意匠性をより高めることが可能となる。図9の例では、カバー50において、テーパ円筒状の部分のうち、前半分は赤外線透過部51の表面が外観面を構成し、後半分は遮蔽部52の表面が外観面を構成しているので、デザイン性を高めることが可能となる。なお、赤外線センサは、図8や図9の例のカバー50を備えている場合、赤外線透過部51の少なくとも一部をレンズ状の形状としてもよい。
【0053】
また、赤外線センサは、図10に示すように、カバー50として、赤外線透過部51が赤外線透過窓材33に対向する前壁を構成し、遮蔽部52が赤外線センサ本体40を囲む矩形枠状の側壁を構成する矩形箱状の形状のものを用いてもよい。図10に示した例の赤外線センサは、カバー50を、赤外線センサ本体40ではなく、赤外線センサ本体40を実装するプリント配線板からなる基板60に対して取り付ける構成としてある。ここにおいて、基板60には、赤外線センサ本体40の3本の端子ピン35のそれぞれが挿通される3つのスルーホール65が形成されている。また、基板60には、カバー50の後端縁から後方へ延設された複数の取付脚53の各々が挿通される複数の取付孔63が形成されている。したがって、カバー50は、取付脚53を基板60の取付孔63に挿通させて当該取付脚53の先端部の係止爪を基板60における取付孔63の周部に係止させることによって、基板60に取り付けることができる。なお、カバー50は、赤外線透過部51が必ずしも前壁の全部を構成する必要はなく、前壁の一部を構成するようにしてもよい。また、赤外線透過部51は、少なくとも一部をレンズ状の形状としてもよいし、それに限らず、平板状の形状としてもよい。
【0054】
ところで、上述の実施形態では、熱型赤外線検出素子10が焦電体基板11を用いて形成した焦電素子である場合について説明したが、焦電型の熱型赤外線検出素子はこれに限らず、例えば、マイクロマシニング技術および焦電体薄膜の形成技術などを利用して形成したチップでもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、パッケージ30として、キャンパッケージを例示したが、これに限らず、外周形状が矩形状の表面実装型のパッケージを採用してもよい。なお、表面実装型のパッケージの外周形状は、矩形状以外の形状でもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 熱型赤外線検出素子(焦電素子)
30 パッケージ
33 赤外線透過窓材
40 赤外線センサ本体
50 カバー
51 赤外線透過部
52 遮蔽部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱型赤外線検出素子がパッケージに収納された赤外線センサ本体と、前記赤外線センサ本体を覆うポリエチレン製のカバーとを備え、前記カバーは、前記赤外線センサ本体の前記パッケージにおける赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部と、前記パッケージ側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記熱型赤外線検出素子は、焦電素子であることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記添加物は、顔料、ヒンダードアミン光安定剤および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記赤外線透過部は、前記赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を前記熱型赤外線検出素子へ集光可能なレンズ状の形状に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項1】
少なくとも熱型赤外線検出素子がパッケージに収納された赤外線センサ本体と、前記赤外線センサ本体を覆うポリエチレン製のカバーとを備え、前記カバーは、前記赤外線センサ本体の前記パッケージにおける赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を透過する赤外線透過部と、前記パッケージ側とは反対側から入射する赤外線および可視光を遮る遮蔽部とで、ポリエチレンに対する添加物および添加物の濃度の少なくとも一方が異なる2色成形品からなることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記熱型赤外線検出素子は、焦電素子であることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記添加物は、顔料、ヒンダードアミン光安定剤および赤外線吸収剤の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記赤外線透過部は、前記赤外線透過窓材側とは反対側から入射する赤外線を前記熱型赤外線検出素子へ集光可能なレンズ状の形状に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88248(P2013−88248A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227943(P2011−227943)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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