説明

赤外線及び紫外線吸収性青色ガラス組成物

【課題】標準的なソーダ−石灰−シリカガラスを基礎とする組成物と、太陽放射線吸収性物質及び着色剤としての、追加的な鉄及びコバルト(任意的にクロム)とを使用した、青色に着色されたガラスを提供する。
【解決手段】ガラスは、全鉄約0.40〜1.0重量%(好ましくは約0.50〜0.75重量%)、CoO約4〜40ppm(好ましくは約4〜20ppm)、及びCr230〜100ppmを含有する。ガラスのレドックス比は0.35〜約0.60であり、好ましくは約0.36〜0.50である。1つの態様において、ガラスは、少なくとも55%の視感透過率と485〜489nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度によって特徴付けられる色を有する。他の態様において、ガラスは、約3.9mm(0.154インチ)の厚さで少なくとも65%の視感透過率と485〜492nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度によって特徴付けられる色を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、1997年10月20日に出願された、米国特許出願番号第08/954722号の一部継続出願である。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、建築及び自動車のグレイジング用途に適する、赤外線及び紫外線を吸収する青色に着色されたソーダ−石灰−シリカガラス組成物に関する。ガラスは、約485〜492ナノメータ(nm)の主波長と、約3〜18%の刺激純度とを有するべきである。このガラスはまた、板ガラス製法にも適合し得る。
【0003】
(2A.技術的考察)
着色された赤外線及び紫外線吸収性ガラスの基板は、様々な異なる用途を有する。特に、かかるガラスは、建築家によって建物にガラスをはめるために、また自動車設計者によって自動車の窓として使用され得る。美的に心地のよい色を与えるのに加えて、これらのガラスは、従来の透明ガラスと比較して、高い太陽性能をも与え得る。
【0004】
異なる物質を、所望の色及びスペクトル性能を与えるために、ガラスに添加することができる。例えば、幾つかを示すために、鉄、コバルト、ニッケル、セレン及びチタンを、所望の色組成を与えるために、添加されるのが典型的である。物質は、色を変えて、太陽性能を高めるために添加されるので、可視光透過率、及び、その特定の用途に必要とされる色を維持するように注意しなくてはならない。ガラスの厚みを変えると、それらのスペクトル特性に影響を与え、その結果特定の厚みでの許容可能な色及び特性を有する、特定の組成物が、異なる厚みでは許容可能でなくなり得ることも忘れるべきではない。
【0005】
優れたスペクトル性能を与える1つの特定の青色組成物が、ペコラロ(Pecoraro)等への米国特許第4,792,536号明細書に開示されている。この特許を具体化する市販品が、商品名SOLEXTRA(登録商標)及びAZURLITE(登録商標)で、PPG社から販売されている。このガラスは、組成物中に適度な量の鉄を混合しており、FeOとして表現される、第一鉄状態でガラスのかなり大部分を占める。特に、ガラス組成物は、基本のソーダ−石灰−シリカ組成物を含有しており、全鉄(Fe23 として表現される)を0.45〜1重量%更に含有している。全鉄の少なくとも35%は、第一鉄状態である。これらのガラスの主波長は、約486〜489nmの範囲に渡り、刺激純度は約8〜14%の範囲に渡る。製造の観点からすると、全鉄に対して高い比率で第一鉄を有する、この特許に開示されているガラスを製造するには、当技術分野において周知の、従来のガラス溶融操作には典型的には関連しない、更なる製造の検討が必要とされ得る。しかし、この製品が好ましく受け入れられるために、従来のガラス溶融製造技術を使用して、同様の色及び高いスペクトル性能を有するガラスを製造することができるという利点を有するであろう。
【0006】
(2B.関連のある特許)
ヤナキラマ ラロ(Janakirama Rao)への米国特許第3,652,303号明細書は、鉄を少量混合し、第一鉄状態の鉄の大部分を転換し、保持するためにスズを使用し、特には鉄の80%以上が、第一鉄状態で保持されている、青色の熱吸収ガラスが開示する。
【0007】
ボウロス(Boulos)等への米国特許第4,866,010号明細書及び同第5,070,048号明細書は、本質的には鉄及びコバルトからなり、更にニッケル及び/又はセレンを含有する着色剤部分を有する、青色ガラス組成物を開示する。ガラスの主波長は、482nm±1nmであり、色純度は13%±1%である。
【0008】
チェング(Cheng)への米国特許第5,013,487号及び第5,069,826号明細書は、着色剤として、鉄、チタン、スズ及び亜鉛を含有する、青色に着色されるガラス組成物を開示する。ガラスは、485〜494nmの主波長と、5〜9%の色純度とを有する。
【0009】
モリモト(Morimoto)等への米国特許第5,344,798号明細書は、鉄、セリウム、チタン、亜鉛、コバルト及びマグネシウムを含有する青色ガラス組成物を開示する。これらのガラスの主波長は495〜505nmであり、色純度は5%〜9%である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要約)
本発明は、標準的なソーダ−石灰−シリカガラスを基礎とする組成物と、太陽放射線吸収性物質及び着色剤としての追加的な鉄及びコバルト(及び任意的にクロム)とを使用した、青色に着色されたガラスを提供する。詳しくは、青色着色ガラスは、全鉄 約0.40〜1.0重量%、好ましくは約0.50〜0.75重量%、CoO 約4〜40ppm、好ましくは約4〜20ppm、及び、Cr23 0〜100ppmを含有している。本発明のガラスのレドックス比は、0.35〜約0.60であり、好ましくは約0.36〜0.50である。本発明の1つの特定の態様において、ガラスは、少なくとも55%の視感透過率と;485〜489nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度により特徴付けられる色と;を有する。本発明の他の態様において、ガラスは、約3.9mm(0.154インチ)の厚さで少なくとも65%の視感透過率と;485〜492nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度によって特徴付けられる色と;を有する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明の基礎ガラス組成は、以下の通り特徴付けられる、市販のソーダ−石灰−シリカガラスである。
SiO2 66〜75重量%
Na2O 10〜20重量%
CaO 5〜15重量%
MgO 0〜5重量%
Al23 0〜5重量%
2 0〜5重量%
本明細書中で使用される通り、全ての「重量%(wt%)」値は、最終のガラス組成物の総重量に基づく。
【0012】
本発明は、この基礎ガラスに、鉄及びコバルト(及び任意的にクロム)の形態の赤外線及び紫外線吸収物質及び着色剤を添加する。本明細書に開示する通り、鉄はFe23 及びFeOにより表され、コバルトはCoOにより表され、クロムはCr23 により表される。本明細書に開示するガラス組成は、少量の他の物質、例えば、溶融助剤及び清澄助剤、トランプ(tramp)物質又は不純物を含有していてもよいことを認識すべきである。本発明の1つの態様では、一層詳細には後で議論する通り、少量の更なる物質が、ガラスを着色するため及び/又はその太陽性能を向上させるために含有され得ることを更に認識すべきである。
【0013】
ガラス組成物中の酸化鉄は、幾つかの機能を果たす。酸化第二鉄、即ちFe23 は、優れた紫外線吸収剤であり、ガラス中で黄色着色剤として作用する。酸化第一鉄、即ちFeOは、優れた赤外線吸収剤であり、青色着色剤として作用する。本明細書に開示するガラスに存在する鉄の総量は、標準的な分析手法によるとFe23 で表されるが、それは、全鉄が実際にFe23 の形態であることを意味するものではない。同様に、実際にはFeOとしてガラス中に存在し得ないが、第一鉄状態の鉄の量はFeOとして報告される。本明細書中に開示するガラス組成物中の第一鉄と第二鉄の相対量を反映させるために、用語「レドックス」は、全鉄量(Fe23 として表される)で割った第一鉄(FeOとして表される)状態の鉄の量を意味する。更に、他の断りが無い限り、本明細書中の用語「全鉄」は、Fe23 で表される全鉄を意味し、用語「Fe23 」は、Fe23 で表される第二鉄状態の鉄を意味し、また用語「FeO」は、FeOで表される第一鉄状態の鉄を意味する。
【0014】
CoOは、ガラス中で、青色着色剤及び弱い赤外線吸収剤として作用する。Cr23 は、ガラス組成物に緑色成分を与えるために添加され得る。加えて、クロムはまた、幾らか紫外線吸収も与え得ると考えられる。鉄、即ち酸化第一鉄及び酸化第二鉄と、コバルトとの、また任意的にはクロムとの適当なバランス含有量が、所望の青色及びスペクトル特性を有するガラスを得るのに必要とされる。
【0015】
本発明のガラスは、連続する大規模な商業的ガラス溶融操作で、溶融され清澄され、フロート法により様々な厚さの板ガラスシートに形成され得る。フロート法では、溶融ガラスは、あたかもリボン形状のように、溶融金属、通常はスズのプールで支持され、当技術分野において周知の方法で冷却される。
【0016】
本明細書に開示するガラスは、当技術分野において周知の、従来のオーバーヘッド加熱連続溶融操作(overhead fired continuous melting operation)を使用して製造するのが好ましいが、ガラスは、クンクル(Kunkle)等への米国特許第4,381,934号明細書;ペコラロ(Pecoraro)等への同第4,792,536号明細書;及び、セルッティ(Cerutti)等への同第4,886,539号明細書に開示される通りの、多段階溶融操作を使用して製造してもよい。必要である場合は、最高の光学品質のガラスを製造するために、攪拌配置を、ガラス製造操作の溶融及び/又は形成段階で、ガラスを均質化するのに使用してもよい。
【0017】
溶融操作のタイプに依存して、硫黄を、溶融及び清澄助剤としてソーダ−石灰−シリカガラスのバッチ物質に添加してもよい。商業的に製造される板ガラスは、約0.3重量%以下のSO3 を含有していていもよい。鉄及び硫黄を含有するガラス組成物において、還元条件を与えることにより、ペコラロ等への米国特許第4,792,536号明細書に開示される通り、視感透過率を下げる琥珀色の着色が生じ得る。しかし、本明細書に開示するタイプの板ガラス組成物において、この着色を生じさせるのに必要とされる還元条件は、板ガラス形成操作の間、溶融スズと接触する下側のガラス表面の、初めの約20μmに、次いで、一層少ない程度まで、晒された上側ガラス表面に限定されると考えられる。硫黄の含有量が少なく、着色が起こり得るガラスの範囲が限定されているために、特定のソーダ−石灰−シリカガラス組成に依存するが、これらの表面中の硫黄は、ガラスの色又はスペクトル特性に実質的に影響しない。
【0018】
上記に議論される通り、溶融スズ上にガラスが形成される結果として、測定可能な量の酸化スズが、溶融スズと接触している側のガラスの表面部分に移行し得ることを認識すべきである。典型的には、板ガラスの小片は、スズと接触していたガラスの表面下の最初の25μmに、少なくとも0.05〜2重量%のSnO2 濃度を有する。典型的なSnO2 のバックグラウンド量は、30ppm程であり得る。溶融スズによって支持されていたガラス表面の最初の約10Å内の高いスズ濃度は、そのガラス表面の反射率を僅かに高め得るが、ガラス特性に対する全体の影響は最小限であると考えられる。
【0019】
表1に、本発明の本質を具体化する実験的なガラス溶融物を示す。同様に、表2に、本発明の本質を具体化する、一連のコンピュータによりモデル化したガラス組成物を示す。このモデル化組成物は、PPG社によって開発されたガラスの色及びスペクトル性能をコンピュータによってモデル化することによって得た。表3に、本発明の本質を具体化する幾つかのガラス試料の組成物を示すが、それは前に開示されるタイプの、商業的な従来のオーバーヘッド加熱連続ガラス溶融装置で製造した。組成物の鉄及びコバルト部分のみを、表1及び表3に列挙し、そにれ対して表2は、組成物の鉄、コバルト及びクロム部分を含む。表4〜6には、それぞれ0.084インチ(2.13mm)、0.154インチ(3.9mm)及び0.223インチ(5.66mm)の基準厚さでの、表1、2及び3に示される組成物のスペクトル特性を列挙する。
【0020】
表1の例1〜16及び表3の例30〜34についての表4〜6に与えられるデータに関し、視感透過率(LTA)は、380〜770nmの波長範囲に渡って、C.I.E.2°観測者での、C.I.E.標準光源「A」を使用して測定される。太陽透過率(LTS)は、C.I.E.2°観測者及びASTM891〜87に明細に記される重量因子を使用して、380〜770nmの波長範囲に渡って測定される。ガラスの色は、主波長(DW)及び刺激純度(Pe)によって、ASTM E308〜90に確立されている手順に従って、2°観測者での、C.I.E.標準光源「C」を使用して測定される。合計の太陽紫外線透過率(TSUV)は、300〜400nmの波長範囲に渡って測定され、全太陽赤外線透過率(TSIR)は、720〜2000nmの波長範囲に渡って測定され、全太陽エネルギー透過率(TSET)は、300〜2000nmの波長範囲に渡って測定される。TSUV、TSIR及びTSET透過率のデータは、当技術分野において既知の通り、パリームーン気団(Parry Moon air mass)2.0直接太陽照射データを使用して計算され、台形法則を使用して積分された。 [試料の全太陽熱増加]対[公称3mm厚(1/8インチ)の透明ガラス対照の全太陽熱増加]の割合である遮蔽係数(SC)は、ローレンス バークレー研究所(Lawrence Berkeley Laboratory)から入手可能なウィンド(Window)4.1のコンピュータプログラムを使用して計算した。表2の例17〜29に関する表4〜6に示すスペクトル特性は、同じ波長範囲及び計算手順に基づく。
【0021】
(試料の調製)
表1に与えられている情報は、下記の基礎バッチ成分を凡そ有する実験的な研究室溶融物に基づく。
砂 500g
ソーダ灰 162.8g
石灰石 42g
ドロマイト 121g
ソルトケーキ 2.5g
べんがら 必要に応じて
Co34 必要に応じて
【0022】
石炭を、レドックスを制御するためにそれぞれの溶融物に添加した。溶融物を調製する際、各成分は、重量を測り、混合機で混合した。次いで、物質の半分を、耐熱性シリカるつぼに置き、30分間の間1454℃(2650°F)まで加熱した。次いで、残りの物質をるつぼに添加し、1.5時間の間1454℃(2650°F)に加熱した。次に、溶融ガラスを、水中でフリット化させ、乾燥させ、1時間の間1454℃(2650°F)で再加熱した。次いで、溶融ガラスを、水中で2回フリット化させ、乾燥させ、2時間の間1454℃(2650°F)に再加熱した。次いで、溶融ガラスを、るつぼからあけて、アニーリングした。試料をスラブから切り出し、研いで、分析のために研磨した。
【0023】
ガラス組成物の化学分析は、RIGAKU3370X線蛍光分光光度計を使用して測定した。例1〜16のためのFeO含有量は、当技術分野において周知の湿潤化学的技術を使用して測定した。例30〜34のためのFeO含有量は、前に議論したガラスの色及びスペクトル性能のコンピュータによるモデル化を使用して計算した。ガラスのスペクトル特徴は、後で議論されるであろう通り、スペクトル特性に影響を与えるであろう、ガラスを焼き入れする前、又は紫外線に長く露光される前に、パーキンエルマー(Perkin-Elmer)ラムダ9UV/VIS/NIR分光光度計を使用してアニーリングした試料で測定した。
【0024】
下記のものは、表1及び3に開示する代表的ガラスの基礎酸化物である。
表1の例1〜16 表3の例30〜34
SiO2 73.3〜73.9重量% 〜72.5重量%
Na2O 13.2〜13.6重量% 〜13.8重量%
2 0.031〜0.034重量% 〜0.046重量%
CaO 8.5〜8.8重量% 〜9重量%
MgO 3.6〜3.8重量% 〜3.2重量%
Al23 0.12〜0.16重量% 〜0.24重量%
【0025】
表1に開示する実験的な溶融物及び表2に開示するモデル化された組成物に基づく、市販のソーダ−石灰−シリカガラス組成物の基礎酸化物成分は、前に議論されたものと同様であると予想される。
【0026】
表1に含まれないが、例1〜16の分析は、Cr23 約6ppm以下、MnO2 約30ppm以下、またTiO2 約0.013重量%以下を示した。これらの物質は、バッチの原料物質又はガラス製造装置から、ガラス組成物に持ち込まれるのが最も可能性があった。同様に、表3に含まれないが例30〜34の分析は、Cr23 約9ppm以下、MnO2 約26ppm以下、またTiO2 約0.021重量%以下を示した。これらの物質も、バッチの原料物質又はガラス製造装置から、及び、ガラス溶融装置の残渣物質から、ガラス組成物に持ち込まれるのが最も可能性があった。表2のコンピュータでモデル化した全組成物は、MnO2 を38ppm(表2には示さず)含有するようにモデル化されており、例17〜23は、Cr23 を約7ppm含有するようにモデル化されており、それはクロム及びマンガンの典型的な検出可能な量である。これらの量のクロム及びマンガンは、モデルを使用してガラスのより正確な表示を与えるために、モデル化組成物中に含有されていた。表1及び2の例1〜29のクロム、マンガン及びチタンのこれらの量、及び、表3の例30〜34のクロム及びマンガンのこれらの量は、ガラスの色及びスペクトル特性に著しくは影響を与えないであろう、トランプ及び/又は残渣の量であると考えられる。ガラス溶融機中に残っていた残渣のチタンによるものと考えられる、例30〜34のTiO2 の量は、例えあるにしても、最小限のみ有し、本発明のガラス組成物のガラスの色及びスペクトル特性に影響を与えるべきである。更に、本発明の特徴を具体化するガラス組成物は、TiO2 を全く有さないか又は痕跡量で、製造され得ると考えられる。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
表1〜5を参照すると、本発明は、標準的なソーダ-石灰-シリカガラスの基礎組成物と、赤外線及び紫外線吸収性部分及び着色剤としての、追加的な鉄及びコバルト(任意的にクロム)とを使用した、青色に着色されたガラスを提供する。詳しくは、ガラスの赤外線及び紫外線吸収性物質及び着色剤部分は、全鉄 約0.40〜1.0重量%、好ましくは全鉄 約0.50〜0.75重量%、及び、CoO 約4〜40ppm、好ましくはCoO 約4〜20ppmを含有する。加えて、組成物は、Cr23 100ppm以下(好ましくは約25〜50ppm)を含有し得る。ガラスは、0.35〜0.60、好ましくは約0.36〜0.50のレドックスを有する。本発明の1つの態様において、ガラスは、少なくとも55%の視感透過率と、約485〜492nm(好ましくは487〜489nm)の主波長とを有する。本発明の他の態様において、ガラスは、0.154インチの厚さで少なくとも65%の視感透過率と、約485〜489nm(好ましくは約487〜489nm)の主波長とを有する。ガラスは、約3〜18%の刺激純度を有する。しかし、刺激純度はガラスの厚さに依存することを認識すべきである。そのため、約1.8〜3.2mm(0.071〜0.126インチ)の厚さを有する本発明のガラスは約3〜8%のPeを有し、厚さが約3.2〜4.9mm(0.126〜0.189インチ)のものは約5〜12%のPeを有し、厚みが約4.9〜8mm(0.189〜0.315インチ)のものは約10〜18%のPeを有する。
【0034】
本発明の他の態様において、赤外線及び紫外線吸収性物質及びガラスの着色剤は、全鉄 約0.50〜0.60重量%、CoO 約4〜12ppm、Cr23 0〜約100ppm、TiO2 0〜約0.50重量%、及び、約0.45〜0.50のレドックスを含有する。1つの特定の態様において、ガラスは、僅か痕跡量のCr23 、及び、TiO2 約0.021重量%以下を含有する。加えて、ガラスは、約0.154インチの厚さで、50%以下のTSETと、少なくとも70%の視感透過率(LTA)と、60%以下のTSUVと、約30%以下のTSIRとを有する。ガラスの色は、約487〜489nmの主波長と、約7〜10%の刺激純度とによって特徴付けられる。
本明細書に開示される、フロート法で製造されるガラス組成物は、約1〜10mmのシート厚の範囲であるのが典型的である。
【0035】
自動車のグレイジング用途では、本明細書に開示される通りの組成を有するガラスシートは、1.8〜5mm(0.071〜0.197インチ)の範囲の厚さを有するのが好ましい。単一のガラスプライ(ガラス層,glass ply)を使用する場合、ガラスは、例えば自動車のサイドウィンド(側窓)又はリアウィンド(後窓)用に、焼き入れされるであろう、また複数のプライが使用される場合、例えばポリビニルブチラール中間層を使用して、2枚のアニーリング済みガラスプライを共に積層する自動車用ウィンドシールド用に、ガラスはアニーリングされ、熱可塑性接着剤を使用して共に積層される(尚、ガラスプライの少なくとも1枚が、本明細書で開示される組成を有するガラスシートである。)ことが予想される。加えて、ガラスが自動車両の選択された領域、例えばウィンドシールド及びフロントドアウィンド、また或る例ではリアウィンドで使用される場合、ガラスのLTAが少なくとも70%であることが要求される。加えて、本発明で開示するガラス組成物は、約0.154インチの厚さで、約55%以下(好ましくは約50%以下)のTSET;60%以下(好ましくは57%以下)のTSUV;及び/又は、約35%以下(好ましくは約30%以下)のTSIR;を有する。
【0036】
建築物のグレイジング用途において、ガラスの太陽透過率(LTS)に関する法律的要求は一般的にはない。しかし、本発明において、ガラスは、約0.223インチの厚さで、約0.70以下(好ましくは約0.65以下)の遮蔽係数と、約60〜70%(好ましくは約63〜67%)のLTSとを有する。
【0037】
ガラスを焼き入れ(tempering)した後、及び、更には一般にはソラリゼーションと呼ばれる紫外線に長く露光した後、ガラスのスペクトル特性は変化するものと予想される。特に、本明細書に開示するガラス組成物の焼き入れ及びソラリゼーションは、LTA、LTS及びTSIRを約0.5〜1%だけ減少させ、TSUVを約1〜2%だけ、及びTSETを約1〜1.5%だけ減少させるものと考えられる。そのため、本発明の1つの態様において、ガラス組成物は、これまでに議論されている所望の範囲外に最初は入るが、焼き入れ及び/又はソラリゼーションの後には所望の範囲に入る、選択されたスペクトル特性を有する。
【0038】
視感透過率及び太陽透過率(LTA及びLTS)は、所望の最小限レベル以上に透過率を維持するために、これらの条件によって減少させられるので、製造後のガラスの初期LTA又はLTSは、焼き入れ及びソラリゼーションに起因し得る損失が、透過率を受け入れられないレベルにまで減少させる程、充分高いべきであるということも認識すべきである。
【0039】
バナジウムは、本発明のガラス組成物中のクロムと部分的に又は完全に置き換えて使用してもよい。より詳しく言えば、本明細書中、V25 で表わされるバナジウムは、ガラスに黄緑色を与え、紫外線と赤外線の両方を異なる原子価状態で吸収する。上記で検討した通り、Cr23 100ppmは、V25 約400ppmによって完全に置き換えてよいものと考えられる。
【0040】
これまでに検討した通り、他の物質を、更に赤外線及び紫外線透過率を低下させるために、及び/又はガラスの色を制御するために、本明細書に開示するガラス組成物に添加してもよい。クロム及びマグネシウムの包有物は、これまでに議論されている。下記の物質も、本明細書に開示する鉄及びコバルトを含有するソーダ−石灰−シリカガラスに添加してもよいことが意図されている。
SnO2 0〜約2.0重量%
CeO2 0〜約1.0重量%
TiO2 0〜約0.5重量%
ZnO 0〜約0.5重量%
Nd23 0〜約0.5重量%
MoO3 0〜約100ppm
NiO 0〜約10ppm
Se 0〜約3ppm
【0041】
着色剤及び/又はレドックスがこれらの更なる物質の力に影響を与えるのを説明するために、ガラスの基礎成分を調節しなくてはならないであろうことは、理解されるべきである。
当業者に既知である他の変更は、特許請求の範囲に規定する本発明の概念から逸脱しない限り行い得る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色に着色された、赤外線及び紫外線吸収性ガラス組成物において、
SiO2 約66〜75重量%
Na2O 約10〜20重量%
CaO 約5〜15重量%
MgO 0〜約5重量%
Al23 0〜約5重量%
2O 0〜約5重量%
から成る基礎ガラス部分と、
全鉄 約0.40〜1.0重量%
CoO 約4〜40ppm
Cr23 0〜約100ppm
から本質的に成る太陽放射線吸収性部分及び着色剤部分とを含有し;しかも、該ガラスが、0.35〜約0.60のレドックスと;少なくとも55%の視感透過率と;485〜489nmの主波長と、約3〜18%の刺激純度とによって特徴付けられる色と;を有する上記組成物。
【請求項2】
全鉄濃度が約0.50〜0.75重量%であり、レドックスが約0.36〜0.50である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
CoO濃度が約4〜20ppmである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ガラスの色が、約487〜489nmの範囲の主波長と;約0.071〜0.126インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約3〜8%の刺激純度、約0.126〜0.189インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約5〜12%の刺激純度、及び、約0.189〜0.315インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約10〜18%の刺激純度と;によって特徴付けられる、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
ガラスが、約70%以上の視感透過率を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ガラスが、約55〜70%の太陽透過率と約0.70以下の遮光係数とを有する、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
CoO濃度が約4〜20ppmである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
Cr23 濃度が約25〜50ppmである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ガラスが、約70%以上の視感透過率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ガラスが、約0.154インチの厚さで、約55%以下の全太陽エネルギー透過率と、約60%以下の全太陽紫外線透過率と、約35%以下の全太陽赤外線透過率とを有する、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ガラスが、約0.154インチの厚さで、約50%以下の全太陽エネルギー透過率と、約57%以下の全太陽紫外線透過率と、約30%以下の全太陽赤外線透過率とを有する、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
ガラスが、約0.223インチの厚さで、約0.70以下の遮光係数と、約55〜70%の太陽透過率とを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
ガラスが、約0.223インチの厚さで、約63〜67%の太陽透過率と約0.65以下の遮光係数とを有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ガラスの色が約487〜489nmの範囲の主波長によって特徴付けられる、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
ガラスの色が、約0.071〜0.126インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約3〜8%の刺激純度、約0.126〜0.189インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約5〜12%の刺激純度、及び、約0.189〜0.315インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約10〜18%の刺激純度によって特徴付けられる、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のガラス組成物からフロート法によって形成されたガラスシート。
【請求項17】
請求項16に記載の少なくとも1種のガラスシートから造られた自動車用ウィンドシールド。
【請求項18】
1.8〜10mmの厚さを有する、請求項16記載のガラスシート。
【請求項19】
青色に着色された、赤外線及び紫外線吸収性ガラス組成物であって、
SiO2 約66〜75重量%
Na2O 約10〜20重量%
CaO 約5〜15重量%
MgO 0〜約5重量%
Al23 0〜約5重量%
2O 0〜約5重量%
から成る基礎ガラス部分と、
全鉄 約0.40〜1.0重量%
CoO 約4〜40ppm
SnO2 0〜約2.0重量%
CeO2 0〜約1.0重量%
TiO2 0〜約0.5重量%
ZnO 0〜約0.5重量%
Nd23 0〜約0.5重量%
MnO2 0〜約0.1重量%
MoO3 0〜約100ppm
Cr23 0〜約100ppm
25 0〜約400ppm
NiO 0〜約10ppm
Se 0〜約3ppm
から本質的に成る太陽放射線吸収性部分及び着色剤部分とを含有し;しかも、該ガラスが、0.35〜約0.60のレドックスと、少なくとも55%の視感透過率と、485〜489nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度によって特徴付けられる色とを有する、上記組成物。
【請求項20】
ガラスの色が、約487〜489nmの範囲の主波長と;約0.071〜0.126インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約3〜8%の刺激純度、約0.126〜0.189インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約5〜12%の刺激純度、及び約0.189〜0.315インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約10〜18%の刺激純度と;によって特徴付けられる、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
青色に着色された、赤外線及び紫外線吸収性ガラス組成物であって、
SiO2 約66〜75重量%
Na2O 約10〜20重量%
CaO 約5〜15重量%
MgO 0〜約5重量%
Al23 0〜約5重量%
2 0〜約5重量%
から成る基礎ガラス部分と、
全鉄 約0.40〜1.0重量%
CoO 約4〜40 ppm
Cr23 0〜約100 ppm
から本質的に成る太陽放射線吸収性部分及び着色剤部分とを含有し;しかも、該ガラスが、0.35〜約0.60のレドックスと、約0.154インチの厚さで少なくとも65%の視感透過率と、約485〜492nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度によって特徴付けられる色とを有する、上記組成物。
【請求項22】
全鉄濃度が約0.50〜0.75重量%であり;CoO濃度が約4〜20ppmであり;レドックスが約0.36〜0.50であり;ガラスの色が、約487〜489nmの範囲の主波長と、約0.071〜0.126インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約3〜8%の刺激純度、約0.126〜0.189インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約5〜12%の刺激純度、及び約0.189〜0.315インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約10〜18%の刺激純度とによって特徴付けられる;請求項21記載の組成物。
【請求項23】
ガラスが、約0.154インチの厚さで、約55%以下の全太陽エネルギー透過率と、約60%以下の全太陽紫外線透過率と、約35%以下の全太陽赤外線透過率とを有する、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
青色に着色された、赤外線及び紫外線吸収性ガラス組成物であって、
SiO2 約66〜75重量%
Na2O 約10〜20重量%
CaO 約5〜15重量%
MgO 0〜約5重量%
Al23 0〜約5重量%
2 0〜約5重量%
から成る基礎ガラス部分と、
全鉄 約0.40〜1.0重量%
CoO 約4〜40ppm
SnO2 0〜約2.0重量%
CeO2 0〜約1.0重量%
TiO2 0〜約0.5重量%
ZnO 0〜約0.5重量%
Nd23 0〜約0.5重量%
MnO2 0〜約0.1重量%
MoO3 0〜約100ppm
Cr23 0〜約100ppm
25 0〜約400ppm
NiO 0〜約10ppm
Se 0〜約3ppm
から本質的に成る太陽放射線吸収性部分及び着色剤部分とを含有し;しかも、該ガラスが、0.35〜約0.60のレドックスと;約0.154インチの厚さで少なくとも65%の視感透過率と;約485〜492nmの主波長及び約3〜18%の刺激純度によって特徴付けられる色と;を有する、上記組成物。
【請求項25】
ガラスの色が、約487〜489nmの範囲の主波長と;約0.071〜0.126インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約3〜8%の刺激純度、約0.126〜0.189インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約5〜12%の刺激純度、及び約0.189〜0.315インチの範囲の少なくとも1つの厚さで約10〜18%の刺激純度と;によって特徴付けられる、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
青色に着色された、赤外線及び紫外線吸収性ガラス組成物であって、
SiO2 約66〜75重量%
Na2O 約10〜20重量%
CaO 約5〜15重量%
MgO 0〜約5重量%
Al23 0〜約5重量%
2 0〜約5重量%
から成る基礎ガラス部分と、
全鉄 約0.50〜0.60重量%
CoO 約4〜12ppm
Cr23 0〜約100ppm
TiO2 0〜約0.50重量%
から本質的に成る太陽放射線吸収性部分及び着色剤部分とを含有し;しかも、該ガラスが、約0.45〜0.50のレドックスと;約0.154インチの厚さで少なくとも70%の視感透過率と;約487〜489nmの主波長及び約7〜10%の刺激純度によって特徴付けられる色と;を有する、上記組成物。
【請求項27】
ガラスは、約0.154インチの厚さで、約50%以下の全太陽エネルギー透過率と、約60%以下の全太陽紫外線透過率と、約30%以下の全太陽赤外線透過率とを有する、請求項26記載の組成物。


【公開番号】特開2009−234910(P2009−234910A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136902(P2009−136902)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2000−516923(P2000−516923)の分割
【原出願日】平成10年10月16日(1998.10.16)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】