説明

赤外線撮像装置

【課題】反射ミラー面が適切に保護される絞りを有する赤外線撮像装置の提供を目的とする。
【解決手段】赤外線撮像装置は、極低温領域内に配置された赤外線検知素子と、前記極低温領域外に配置された羽根絞りとを備え、前記羽根絞りの各絞り羽根において前記赤外線素子に対向する面の少なくとも一部は反射ミラー化され、前記各絞り羽根は、それぞれの回転方向において光軸に対して直行する平面に対して同一方向に第一の傾斜を有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線検知器は、赤外線を検知する。赤外線は、あらゆる物体がその温度に応じて発しているものである。赤外線を赤外線検知器に導くためには、赤外線用の光学系が必要になる。一般に、光学系には、視野を制限するための絞りが存在する。可視光用の光学系であれば、制限する絞りが発光及び反射などをしないよう黒体化処理されていれば、撮像結果には何ら影響しない。しかし、赤外線の場合は、制限した物体(光学系の筐体等)の赤外線を検知してしまい、撮像結果に影響を及ぼす。
【0003】
このため、赤外線光学系の開口絞り(アパーチャ・ストップ)は極低温物体で形成するか、極低温領域を反射している鏡面で形成する必要がある。赤外線検知器の中の赤外線検知素子自体は、極低温に保たれた領域に配置されているので、その領域に開口絞りを配置するコールド・アパーチャ(極低温開口絞り)が用いられる。このコールド・アパーチャは唯一つの開口径を規定するので、当該赤外線検知器のF値(開口絞り径に反比例)は唯一つに決まる。
【0004】
図1は、従来のコールド・アパーチャ方式の赤外線撮像装置の一例の断面図を示す。同図中、円筒部10は密閉されて内部は極低温領域とされて、内部赤外放射を抑えるため全メッキ面とされている。円筒部10の先端には赤外線を透過するウィンドウ11が設けられている。円筒部10内の後方端部には赤外線検知素子(単波長赤外線検知素子)12が設置されている。
【0005】
円筒部10内には赤外線検知素子12を覆うようにコールド・アパーチャ13が設けられ、コールド・アパーチャ13のウィンドウ11側の先端には開口部14が設けられている。円筒部10の前方(図中、左方)には、光学レンズ系15が配置されている。コールド・アパーチャの開口部14の開口径により赤外線検知器のF値が決定される。
【0006】
図2は、従来の反射面式アパーチャ方式の赤外線撮像装置の一例の断面図を示す。同図中、円筒部10は密閉されて内部は極低温領域とされている。また、円筒部10の先端には赤外線を透過するウィンドウ11が設けられている。円筒部10内の後方端部には赤外線検知素子(単波長赤外線検知素子)12が設置されている。
【0007】
円筒部10の前方(図中、左方)には、光学レンズ系15が配置されている。円筒部10と光学レンズ系15の間には、円環状の反射ミラー16が配置されている。反射ミラー16の開口径により赤外線検知器のF値が決定される。
【0008】
なお、図中、破線は赤外線検知素子12上の光軸位置と反射ミラー16の開口の両端を結ぶ直線であり、2つの破線が赤外線検知素子12上の光軸位置でなす角が反射ミラー16の開口の視野角を表している。一点鎖線は光軸を表すと共に、赤外線検知素子12の端部と反射ミラー16の開口の両端を結ぶ直線であり、赤外線検知素子に赤外線が照射される限界を表している。
【0009】
斯かる赤外線検知器において、絞りの開口径を任意に変化させたいという要求がある。ここでいう絞りの開口径とは、図1においてはコールド・アパーチャ13の開口部14の開口径に相当する。また、図2においては反射ミラー16の開口径に相当する。
【特許文献1】特開平9−189935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、コールド・アパーチャ方式(図1)の場合、コールド・アパーチャ13の開口径を変化させるための機構が円筒部10内に必要とされる。そうすると、当該機構の温度による赤外線の検知結果への影響を考慮しなければならない。斯かる影響を回避するために当該機構を冷却するためには、より冷却力の強いクーラーが必要とされる。
【0011】
そこで、反射面式アパーチャ方式(図2)の採用が考えられる。但し、絞り機構の小型化を考慮すると、一般的な(可視光用の)カメラに採用されている羽根絞りが好ましい。図3は、羽根絞りの例を示す図である。羽根絞りでは、複数の板(絞り羽根)が重ね合わされて構成されている。各絞り羽根はそれぞれに設けられた回転軸において回転することにより、開口部の形状(大きさ)が変化する。
【0012】
しかし、反射面式アパーチャ方式の場合、反射ミラー16によって羽根絞を構成すると、羽根同士が擦れ合うことによりミラー部分が破損してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、反射ミラー面が適切に保護される絞りを有する赤外線撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで上記課題を解決するため、赤外線撮像装置は、極低温領域内に配置された赤外線検知素子と、前記極低温領域外に配置された羽根絞りとを備え、前記羽根絞りの各絞り羽根において前記赤外線素子に対向する面の少なくとも一部は反射ミラー化され、前記各絞り羽根は、それぞれの回転方向において光軸に対して直行する平面に対して同一方向に第一の傾斜を有する。
【0015】
このような赤外線撮像装置では、反射ミラー面が適切に保護される絞りを有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反射ミラー面が適切に保護される絞りを有する赤外線撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図4は、本発明の実施の形態の赤外線撮像装置の断面図を示す。同図中、円筒部20は密閉されて内部は極低温領域とされている。また、円筒部20の先端には赤外線を透過するウィンドウ22が設けられている。円筒部20内の後方端部には赤外線検知素子(単波長赤外線検知素子)22が設置されている。
【0018】
円筒部20の前方(図中、左方)には、光学レンズ系26が配置されている。円筒部20と光学レンズ系26の間には、絞り25が配置されている。絞り25の開口径により赤外線検知器のF値が決定される。
【0019】
なお、図中、破線は赤外線検知素子22上の光軸位置と絞り25の開口の両端を結ぶ直線であり、2つの破線が赤外線検知素子22上の光軸位置でなす角が絞り25の開口の視野角を表している。一点鎖線は光軸30を表すと共に、赤外線検知素子22の端部と絞り25の開口の両端を結ぶ直線であり、赤外線検知素子に赤外線が照射される限界を表している。
【0020】
図5及び図6は、第一の実施の形態における絞りの構造を説明するための図である。また、図7は、第一の実施の形態における絞りの鳥瞰図である。また、図8は、第一の実施の形態における絞りの側面図である。図5及び図6においては、赤外線検知素子22は、図中の下側に位置する。図8は、赤外線検知素子22と反対側から鳥瞰した図である。
【0021】
第一の実施の形態では、絞り25を「絞り25a」として説明する。各図において直線Dは、一枚の絞り羽根251が形成する面に対して垂直に交わる仮想的な直線(すなわち、絞り羽根251の面が向いている方向)を示す。また、仮想平面Pは、赤外線検知素子22が配置される面と平行な仮想的な平面を示す。また、回転軸Aは、一枚の絞り羽根251の回転軸を示し、本実施の形態では仮想平面Pに対して略垂直である。
【0022】
各図に示されるように、絞り25aは、複数(図中の例では6枚)の平板(絞り羽根)を重なり合わせることにより構成され、いわゆる羽根絞りと同様の構造を有する。各絞り羽根の裏面(赤外線検知素子22に対向する面)は反射ミラー化されている。すなわち、本実施の形態における赤外線撮像装置1は、反射面式アパーチャ方式を採用している。但し、各絞り羽根の裏面において必ずしも全面が反射ミラーである必要はなく、裏面の少なくとも一部が反射ミラー化されていればよい。他の絞り羽根との重なりにより常に赤外線検知素子22側に露出されない部分は、反射ミラー化されなくてもよい。
【0023】
ところで、本実施の形態における絞り25aにおいて、各絞り羽根は、根元部(光軸30から相対的に遠い部分、又は絞り25aの周辺方向の部分)より先端部(光軸30に相対的に近い部分、又は絞り25aの中心方向の部分)の方が仮想平面Pに対して遠くなるように仮想平面Pに対して他の絞り羽根と略同一の角度による傾斜を有して配置されている。その結果、絞り25aは、赤外線素子22に対して凹型となるような立体的な構造を有している。当該立体構造において、絞り25aの裏面によって形成される形状は、球殻状ではなく円錐状(円錐そのものを意味するものではなく、球殻状と対比において円錐的な形状という意味であり、要するに、お椀型に湾曲していないという意味である。)となるように各絞り羽根が配置されている。
【0024】
また、各絞り羽根は、回転軸Aにおける回転方向において、仮想平面Pに対して他の絞り羽根と略同一の方向に略同一の角度による傾斜を有している。ここで略同一の方向とは、各絞り羽根と光軸30との相対的な関係において略同一の方向であることを意味する。その結果、各絞り羽根の裏面(反射ミラー)は、絞り軸羽根と光軸30とが重なる方向から見た場合に光軸30に対して線対称ではく、光軸30に対して傾きを有する。ここで、回転軸Aに対する直線Dの傾斜角度αが各絞り羽根の有する回転方向における傾きである。
【0025】
続いて、絞り25aについて、本願発明者が上記に示されるような構造を着想した理由又は経緯について説明する。
【0026】
絞りの大型化を避けるためは、図3に示されるような羽根絞りが望ましい。そこで、本願発明者は、羽根絞りの様式で、ミラー面を傷つけないように各絞り羽根が可動な隙間を持たせることの可能性として、次の二つの点について検討を行った。
【0027】
第一として、羽根絞り全体(反射ミラー)を球殻形状ではなく円錐形状にできれば各絞り羽根の可動の隙間を持たせる可能性を高められるため、反射性能を維持したまま反射ミラーを円錐形状とすることが可能であるか否か。
【0028】
第二として、各絞り羽根(反射ミラー)を光軸30対象ではなく数度程度に大きく傾けることができれば(上記における角度αの傾き)、各絞り羽根の可動の隙間を持たせる可能性を高められるため、反射性能を維持したまま、絞り羽根、すなわち、反射ミラーを傾けることが可能でるか否か。
【0029】
ここで、反射性能の維持とは、特に、羽根絞りによる反射面を従来の反射ミラー16の形状に対して上記のように変化させることにより、余計な熱(赤外線)が検知されないようにすることをいう。
【0030】
そこで、本願発明者は、コンピュータを用いて次のような光線逆追跡シミュレーションを行った。図9は、適切な円錐形状を見出すための光線逆追跡シミュレーションの例を示す図である。図9中、図4に対応する部分は同一符号を付しその説明は省略する。なお、(A)はシミュレーション結果の側面図であり、(B)は同一シミュレーション結果の斜視図である。
【0031】
図9において、25mは、絞り25aの裏面によって擬似的に形成される円錐(厳密には円錐台の側面)である(以下当該円錐を「反射面25m」という。)。当該光線逆追跡シミュレーションでは、反射面25mの円錐形状を変化させ、各形状ごとに赤外線検知素子22の中心及びその端部より数万本の光線を反射面25mに対して照射し、当該光線の軌跡を確認した。その結果、同図に示されるように、全ての光線又は誤差範囲として許容される程度においてほぼ全ての光線が赤外線検知素子22又は赤外線検知素子22設置面に反射されるような円錐形状を見つけ出すことができた。光線逆追跡において、全ての光線又は誤差範囲として許容される程度においてほぼ全ての光線が赤外線検知素子22又は赤外線検知素子22設置面に反射されるということは、円筒部20外からの光(すなわち、検知されるべきでない赤外線)が、赤外線検知素子22に検知されないことを意味する。したがって、当該シミュレーションによって反射性能を維持したまま反射ミラーを円錐形状とすることが可能であること、及びそのような円錐形状を確認することができた。
【0032】
また、図10は、適切な傾斜角度を見出すための光線逆追跡シミュレーションの例を示す図である。図10中、図9と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
同図では、反射面25mは、破線によって示される光軸30に対して線対称ではなく、傾きを有している。当該シミュレーションでは、当該傾きを変化させ、各傾きごとに赤外線検知素子22の中心及びその端部より数万本の光線を反射面25mに対して照射し、当該光線の軌跡を確認した。その結果、同図に示されるように、全ての光線又は誤差範囲として許容される程度においてほぼ全ての光線が赤外線検知素子22又は赤外線検知素子22設置面に反射されるような傾きを見つけ出すことができた。したがって、当該シミュレーションによって反射性能を維持したまま反射ミラー(絞り羽根)を傾けることが可能であること、及びそのような傾斜角度αを確認することができた。
【0034】
但し、上記で確認できたのは、反射性能が維持できるということであり、各絞り羽根が擦れない又は接触しない(干渉しない)ことが確認されたわけではない。そこで、本願発明者は、上記シミュレーションによって見出された円錐形状及び傾斜角度αによる制限の範囲内で、反射ミラー面が他の絞り羽根に干渉しない(すなわち、反射ミラー面が傷つかない)ように各絞り羽根が隙間を維持しながら回転できる構造を検討した。
【0035】
具体的には、上記シミュレーションによって見出された円錐形状及び傾斜角度αに基づいて、3次元CADにおいて立体的な構造による羽根絞りを作成し、当該三次元CADを用いて絞り羽根の形状及び傾斜角を変化させ、絞り羽根が相互に干渉しないで回転可能であるか否かを解析した。その結果、満足できる構造(形状)が見出せた。
【0036】
なお、反射ミラーの適切な円錐形状は、円筒部20の高さ(光軸30方向における距離)に応じて異なる。当該高さに応じて反射ミラーの適切な曲率が変化するからである。また、反射ミラーの適切な傾斜角度αは、円錐形状に応じて異なる。本実施の形態の例では、傾斜角度αは5度程度までであれば反射性能が維持されることが確認された。
【0037】
以上のような試行錯誤によって見出された構造による羽根絞りが、図5〜図8に示される絞り25aである。すなわち、絞り25aにおいて、開口部の大きさ変化させる際、各絞り羽根は、相互に擦れない(干渉しない)程度の隙間を維持しつつ回転(移動)する。したがって、反射ミラーが損傷する可能性を著しく低下させることができると共に、絞りの大型化を回避することができる。
【0038】
続いて、絞り25aの駆動機構の例を説明する。図11は、本実施の形態における羽根絞りの駆動機構の一例を示す図である。
【0039】
同図においてベースリング部品51は、赤外線撮像装置1に対して固定されており、各絞り羽根を両面から挟むように並行に配設された二つのリング状の部材によって構成される。当該二つのリング状の部材は、各絞り羽根が移動可能な程度の間隔を有し、複数の軸部材52によって相互に固定されている。各軸部材52は、各絞り羽根の根元部分の一部を貫通し、絞り羽根の回転軸(回転軸A)を形成する。なお、各絞り羽根は、当該回転軸による回転方向において仮想平面Pに対して傾斜角度α分の傾きを有する。
【0040】
ベースリング部品51の周りには、回転リング部品53が中心軸(光軸30)に対して回転自在に配置される。回転リング部品53は、複数の腕部54を有し、当該腕部54によって各絞り羽根が回転可能なように接続される。
【0041】
以上のような構造において、回転リング部品53が矢印の方向に回転すると、各絞り羽根は軸部品52を中心に回転し、絞り25aの開口部の形状(大きさ)を変化させる。その際、各絞り羽根は、傾斜角αを維持したまま回転するため、少なくとも反射ミラーを有する部分においてお互いに擦れ合うことはない。
【0042】
なお、図12は、絞りの開口部が大きくなった状態を示す図である。また、図13は、絞りの開口部が大きくなった状態を示す鳥瞰図である。更に、図14は、絞りの開口部が大きくなった状態を示す側面図である。すなわち、これら各図は、各絞り羽根が回転することにより、図5〜図8に示される状態よりも絞り25aの開口部が大きくなった状態を示す。
【0043】
また、図15は、絞りの開口部が小さくなった状態を示す図である。すなわち、同図は、各絞り羽根が回転することにより、図5〜図8に示される状態よりも絞り25aの開口部が小さくなった状態を示す。
【0044】
上述したように、第一の実施の形態における絞り25aによれば、凹面もしくは円錐台状の反射ミラーの反射性能を維持しながら、ミラー面を傷つけることなく、開口径を連続的にスムースに変化させることができる。したがって、冷却型の赤外線撮像装置1(赤外線検知器)の絞りとして、冷却領域に置く絞りと同等の機能を発揮することができる。また、薄型かつ小型な可変アパーチャを提供することができる。
【0045】
なお、上記では、各絞り羽根が一枚の平板である例について説明したが、必ずしも平板でなくてもよい。図9及び図10において説明したようなシミュレーションの結果に基づいた形状であって、かつ、絞り羽根の回転時において各絞り羽根が相互に干渉しないような解(形状)が得られれば、複数の平面より構成される多面的な形状であってもよいし、湾曲を有するような形状であってもよい。同様に、回転軸Aは、必ずしも仮想平面Pに対して垂直(光軸30と平行)でなくてもよい。
【0046】
次に第二の実施の形態について説明する。第二の実施の形態では、各絞り羽根を傾ける(捻る)ことなく、各絞り羽根の相互干渉を回避する例を説明する。なお、第二の実施の形態では、第一の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及しない点については第一の実施の形態と同様でよい。
【0047】
図16及び図17は、第二の実施の形態における絞りの構造を説明するための図である。また、図18は、第二の実施の形態における絞りの鳥瞰図である。また、図19は、第二の実施の形態における絞りの側面図である。各図中、図5等と同一部分には同一符号を付している。第二の実施の形態では、絞り25を「絞り25b」として説明する。
【0048】
各図に示されるように、第二の実施の形態では、各絞り羽根は干渉を回避するための傾きは有さない。その代わり、各絞り羽根の光軸30の方向における位置が、相互干渉を回避することが可能な程度に異なる。その結果、各絞り羽根は光軸方向において段を成すように配置され、各絞り羽根の間には隙間が形成される。
【0049】
例えば、図19において、各絞り羽根の根元部分と仮想辺面Pとの距離H1、H2、H3、H4、H5、及びH6は、それぞれ異なる。他の構造については同様である。
【0050】
斯かる構造により、各絞り羽根は、その回転時において相互に干渉(擦れる)ことなく回転することができる。その結果、反射ミラーの損傷を防止することができる。
【0051】
絞り25bの形状を決定する際は、絞り羽根が傾きを有さないため、図10におけるシミュレーションは不要である。図9におけるシミュレーションにおいて求められた円錐形状に基づいて、各絞り羽根が干渉しないように、各絞り羽根の位置を決定すればよい。
【0052】
なお、図20は、絞りの開口部が大きくなった状態を示す図である。また、図21は、絞りの開口部が更に大きくなった状態を示す図である。
【0053】
上述したように、第二の実施の形態における絞り25bによれば、第一の実施の形態における絞り25aと同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、第一及び第二の実施の形態におけるいずれの絞り25においても、絞り羽根同士の間に多少の隙間が形成される。しかしながら、絞り羽根の回転に最低限必要とされる程度の隙間であれば赤外線の影響は無視できる程度のものであり、絞り25の実用性を妨げる程のものではない。
【0055】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0056】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
極低温領域内に配置された赤外線検知素子と、
前記極低温領域外に配置された羽根絞りとを備え、
前記羽根絞りの各絞り羽根において前記赤外線素子に対向する面の少なくとも一部は反射ミラー化され、
前記各絞り羽根は、それぞれの回転方向において光軸に対して直行する平面に対して同一方向に第一の傾斜を有する赤外線撮像装置。
(付記2)
全ての前記絞り羽根による前記第一の傾斜の角度は略同一である付記1記載の赤外線撮像装置。
(付記3)
前記各絞り羽根は、根元部から先端部にかけて光軸と直交する平面に対して第二の傾斜を有する付記1又は2記載の赤外線撮像装置。
(付記4)
全ての前記絞り羽根による前記第二の傾斜の角度は略同一である付記3記載の赤外線撮像装置。
(付記5)
前記第二の傾斜は、前記羽根絞りが前記赤外線素子に対して凹型となるように形成される付記3又は4記載の赤外線撮像装置。
(付記6)
前記各絞り羽根は、平板である請求項1乃至5いずれか一項記載の赤外線撮像装置。
(付記7)
前記各絞り羽根は、前記羽根絞りの開口部の大きさを変化させる際に、反射ミラー化された部分が他の絞り羽根と接触しない付記1乃至6いずれか一項記載の赤外線撮像装置。
(付記8)
極低温領域内に配置された赤外線検知素子と、
前記極低温領域外に配置された羽根絞りとを備え、
前記羽根絞りの各絞り羽根において前記赤外線素子に対向する面の少なくとも一部は反射ミラー化され、
前記各絞り羽根は、それぞれ光軸方向における配置位置が異なる赤外線撮像装置。
(付記9)
前記各絞り羽根は、前記羽根絞りの開口部の大きさを変化させる際に、反射ミラー化された部分が他の絞り羽根と接触しないように配置される付記8記載の赤外線撮像装置。
(付記10)
前記各絞り羽根は、根元部から先端部にかけて光軸と直交する平面に対して傾斜を有する付記8又は9記載の赤外線撮像装置。
(付記11)
全ての前記絞り羽根による前記傾斜の角度は略同一である付記10記載の赤外線撮像装置。
(付記12)
前記傾斜は、前記絞りが前記赤外線素子に対して凹型となるように形成される付記10又は11記載の赤外線撮像装置。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来のコールド・アパーチャ方式の赤外線撮像装置の一例の断面図を示す。
【図2】従来の反射面式アパーチャ方式の赤外線撮像装置の一例の断面図を示す。
【図3】羽根絞りの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の赤外線撮像装置の断面図を示す。
【図5】第一の実施の形態における絞りの構造を説明するための図である。
【図6】第一の実施の形態における絞りの構造を説明するための図である。
【図7】第一の実施の形態における絞りの鳥瞰図である。
【図8】第一の実施の形態における絞りの側面図である。
【図9】適切な円錐形状を見出すための光線逆追跡シミュレーションの例を示す図である。
【図10】適切な傾斜角度を見出すための光線逆追跡シミュレーションの例を示す図である。
【図11】本実施の形態における羽根絞りの駆動機構の一例を示す図である。
【図12】絞りの開口部が大きくなった状態を示す図である。
【図13】絞りの開口部が大きくなった状態を示す鳥瞰図である。
【図14】絞りの開口部が大きくなった状態を示す側面図である。
【図15】絞りの開口部が小さくなった状態を示す図である。
【図16】第二の実施の形態における絞りの構造を説明するための図である。
【図17】第二の実施の形態における絞りの構造を説明するための図である。
【図18】第二の実施の形態における絞りの鳥瞰図である。
【図19】第二の実施の形態における絞りの側面図である。
【図20】絞りの開口部が大きくなった状態を示す図である。
【図21】絞りの開口部が更に大きくなった状態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 赤外線撮像装置
20 円筒部
21 ウィンドウ
22 赤外線検知素子
25、25a、25b 絞り
26 光学レンズ系
30 光軸
51 ベースリング部品
52 軸部材
53 回転リング部品
54 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温領域内に配置された赤外線検知素子と、
前記極低温領域外に配置された羽根絞りとを備え、
前記羽根絞りの各絞り羽根において前記赤外線素子に対向する面の少なくとも一部は反射ミラー化され、
前記各絞り羽根は、それぞれの回転方向において光軸に対して直行する平面に対して同一方向に第一の傾斜を有する赤外線撮像装置。
【請求項2】
全ての前記絞り羽根による前記第一の傾斜の角度は略同一である請求項1記載の赤外線撮像装置。
【請求項3】
前記各絞り羽根は、根元部から先端部にかけて光軸と直交する平面に対して第二の傾斜を有する請求項1又は2記載の赤外線撮像装置。
【請求項4】
全ての前記絞り羽根による前記第二の傾斜の角度は略同一である請求項3記載の赤外線撮像装置。
【請求項5】
前記第二の傾斜は、前記羽根絞りが前記赤外線素子に対して凹型となるように形成される請求項3又は4記載の赤外線撮像装置。
【請求項6】
極低温領域内に配置された赤外線検知素子と、
前記極低温領域外に配置された羽根絞りとを備え、
前記羽根絞りの各絞り羽根において前記赤外線素子に対向する面の少なくとも一部は反射ミラー化され、
前記各絞り羽根は、それぞれ光軸方向における配置位置が異なる赤外線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−204423(P2009−204423A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46471(P2008−46471)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】