説明

赤外線検出素子およびその製造方法

【課題】 梁部の幅を狭くすることによって素子特性を向上させ得る赤外線検出素子を提供する。
【解決手段】 赤外線検出素子は、半導体基板上に空隙を介して形成された熱電変換部を有する赤外線検出部と、半導体基板上に空隙を介して形成されかつ赤外線検出部を支持しかつ赤外線検出部および半導体基板間の電気的接続をなす梁部と、を有する赤外線検出素子であって、梁部は絶縁材料膜を有しかつ絶縁材料膜から梁部の側面に露出した導電性材料層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線検出素子およびその製造方法に関し、特に、熱型の赤外線検出素子構造のうち梁部の配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の赤外線検出素子は、赤外線吸収に伴う電子のバンド間遷移を用いており、量子型と呼ばれている。その検出感度向上のためには、液体窒素温度以下に冷却し、熱雑音を除去した状態で動作させる必要があった。このため、量子型の赤外線検出素子では、本質的にスターリングクーラー等の冷却機を備える必要があり、大型かつ非常に高価である。加えてメンテナンスも煩雑であることから、研究用を除くと軍事技術分野への応用が中心であった。
【0003】
近年になって、軍事技術の民間への開放という形で、非冷却型(熱型)と呼ばれる全く新しいタイプの赤外線検出素子が市場公開されて以来、冷却機を不要とするこの熱型の赤外線検出素子の研究、開発が盛んに行われるようになった。この熱型の赤外線検出素子の動作原理は、赤外線を赤外線検出素子の赤外線検出部に吸収させ、熱に変換し、熱電変換部により、その温度変化を検知する。
【0004】
この温度変化を電気信号に変換する方式には数種類が報告されており、検出部の温度変化を電気抵抗の変化として検出する抵抗ボロメータ方式、温度変化に伴う結晶格子の歪によって発生する自発分極の変化を検出する焦電方式、シリコンpnダイオードの電流・電圧特性の温度依存性を検出するダイオード方式、2箇所の接点間の温度差に応じて発生する起電力を検出するサーモパイル方式等がよく知られている。
【0005】
すべての熱型の赤外線検出素子に共通する特徴として、赤外線検出素子の赤外線検出部の温度変化を電気信号に変換するため、吸収した赤外線による熱エネルギーが、赤外線検出部周りの基板に逃げないようにする工夫が感度維持と向上のため必須である。
【0006】
今、赤外線検出部に入射する赤外線パワーをPin、赤外線検出部から出る放射パワーをPout、赤外線検出部温度をTd、棊板温度をTsubとし、赤外線検出部と基板との間の熱コンダクタンスをGとすると、赤外線検出部から基板へ入射パワーの流出はそれらの温度差に比例し、G(Td−Tsub)・・・(係数1)で与えられる。従って、保存則の関係から、Pin=Pout+G(Td−Tsub)・・・(式2)が成り立つ。赤外線検出部温度と基板温度が等しくなる(Td=Tsub)まで熱流の流れが生じる。今、入射パワーが△Pin変化したとき、赤外線検出部の温度が△Tdだけ変化したとすると、Pin+△Pin=Pout+△Pout+G(Td+△Td−Tsub)・・・(式3)であり、△Pout<<G△Tdとすると、式2および式3から、△Td=△Pin/G・・・(式4)の関係が得られる。すなわち、赤外線検出部の温度変化量は、赤外線検出部と基板間の熱コンダクタンスGに反比例する。
【0007】
つまり、熱型の赤外線検出素子の感度を向上させるためには、赤外線検出部と基板との熱分離が本質的に必要であり、両者の間の熱コンダクタンスを小さくすることが非常に重要である。
【0008】
この熱分離実現のため、図1および図2に示すように、赤外線検出部140と基板1との界面に空隙200を設け、空隙200上にて赤外線検出部を基板から支持すると同時に赤外線検出部の電気信号を基板側に取り出す金属配線31、32を含む支持脚(梁部ともいう)21、22を設けたダイアフラム構造が熱型共通の基本構造となっている(特許文献1および2並びに非特許文献12参照)。
【特許文献1】再公表WO99/31471(特願2000−539325)
【特許文献2】特開2001−267542
【非特許文献1】SPIE Conference on Infrared Technology and Applications XXV, vol 3698,P556−564,1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、熱コンダクタンスを小さくするための梁部構造の選択枝としては、梁部を長くすること、梁部を細くすること等が考えられる。梁部を長くする場合、単純に図1の梁部21、22を複数回折り返す構造になり、赤外線検出部140の面積を小さくしなければならなくなる。このため、赤外線検出部140の面積を維持しつつ熱コンダクタンスを小さくするためには、梁部21、22を細くする方法がより効果的である。しかしながら、特許文献1や、非特許文献1によると、以下に述べるように、梁部をあまり細くできないという技術的課題が生じる。
【0010】
図3は、特許文献1や非特許文献1の記載から類推される梁部21の断面構造(図1のX−Y線で切断した箇所の展開断面)を示す。特許文献1開示技術ではSOI(Silicon On Insulator)半導体基板1が用いられており、基板1内に埋め込まれた埋込シリコン酸化膜300上のシリコン膜310からパターンニングされた金属配線となるべき部分のシリコン膜310上に金属シリサイド325を介して金属配線335が形成されている。シリコン膜310、金属シリサイド325および金属配線335の積層体である配線は層間絶縁膜340やシリコン酸化膜320や埋込シリコン酸化膜300などのSiOなどの保護膜によって全体が覆われて梁部21が構成されている。
【0011】
特許文献1の製造方法に従えば、梁部21は、以下の図4〜図9の説明のように形成される。
【0012】
図4に示すように、SOI基板1の最表面のシリコン単結晶層を、所望の金属配線パターンに対応してシリコン膜310が残るように酸化して、分離膜としてシリコン酸化膜SiOを形成する。
【0013】
次に、シリコン膜310およびシリコン酸化膜SiO上にシリコン酸化膜320を形成後、図5に示すように、フォトリソグラフィ/エッチング技術を用いて行い、シリコン酸化膜320に所望の金属配線パターンに対応する開口を形成して、シリコン膜310表面を露出させる(シリサイド形成すべき部分のパターン加工)。
【0014】
次に、シリサイド化させる金属膜を、露出シリコン膜310表面およびシリコン酸化膜320上に形成後、急速加熱法等により金属シリサイドを形成させる。シリサイド化していない未反応の金属膜は、王水で除去することで、シリコン酸化膜320の開口で画定された図6に示す金属シリサイド325を形成する。
【0015】
さらにこの後、シリコン酸化膜320および露出金属シリサイド325上に所定の配線金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ/エッチング技術を用いて金属膜を加工し、図7に示す所望の金属配線パターンの金属配線335を形成する。
【0016】
この後、図8に示すように、シリコン酸化膜320および金属配線335上に保護層として酸化シリコンなどの層間絶縁膜340を形成する。
【0017】
この後、図9に示すように、シリコンエッチングを行う際にエッチャントを供給するエッチング窓Wdを、層間絶縁膜340、シリコン酸化膜320および埋込シリコン酸化膜300を貫いて形成する。エッチング窓Wdにより赤外線検出部と基板との間隙が画定される。このエッチング窓Wdを形成するためのレジスト露光工程は、一般的には、厳しいマスク合わせ精度を要求する。
【0018】
最終的に、エッチング窓Wdを介したシリコンエッチングを含むフォトリソグラフィ/エッチング工程を行い梁部21、22の形状を作り込み、図3の空隙200で隔てた赤外線検出部および基板の構造が完成する。ここまでの工程で合計3回のフォトリソグラフィ/エッチング工程が必要になる。
【0019】
今、図10に示すように、梁部21の幅をL1、金属シリサイド325の幅をL2、シリサイド反応を起させる形成領域幅(開口)をL3とすると、L1>L2=L3の関係が成り立つ。すなわち、梁部幅L1は、シリサイド領域幅L3(=L2)よりも、フォトリソ工程における合わせ誤差分の2倍(両側分)以上に幅広く設計する必要がある。なぜなら、梁部幅がそれ以下の場合、梁部形状エッチングの際、端部がシリサイド領域にかかる危険があり、シリサイド領域がエッチング除去された場合には、配線抵抗のばらつきを引き起こし、赤外線検出素子の性能を著しく低下させてしまう。さらに、参考特許の場合には、金属シリサイド上に金属配線を形成しているため、梁部幅はこの金属配線幅に加えて例えば合わせ誤差の2倍以上に広くしなければならない。
【0020】
1例として、デザインルール0.35μm程度を用いた設計の場合、シリサイド幅を0.8μmとし、片側の合わせ誤差を0.3μmと仮定すると、金属配線幅は1.4μm、梁部幅2.0μmまでしか細線化できないことになる。言い換えると梁部幅をある値Lに固定した場合、シリサイド幅は、L2x0.3以下にしなければならず、電気抵抗の観点から、従来技術では、金属配線を追加して低抵抗化する必要があったと考えられる。
【0021】
このように、梁部内に金属シリサイドを形成し配線層を金属シリサイド上に形成するため、それらの合わせずれを考慮するための梁部幅マージンを確保しなければならず、従来から、梁部の幅を狭くすることが困難であった。また、梁部上の配線については配線層と金属シリサイドとを形成するため、従来技術では工程数が多かった。
【0022】
そこで本発明は、以上の従来の技術問題に鑑みて考案されたものであり、工程数を抑え、梁部の幅をより狭くすることによって素子特性を向上させ得る赤外線検出素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による赤外線検出素子は、半導体基板上に空隙を介して形成された熱電変換部を有する赤外線検出部と、
前記半導体基板上に空隙を介して形成されかつ前記赤外線検出部を支持しかつ前記赤外線検出部および前記半導体基板間の電気的接続をなす梁部と、
を有する赤外線検出素子であって、
前記梁部は絶縁材料膜を有しかつ前記絶縁材料膜から前記梁部の側面に露出した導電性材料層を有することを特徴とする。
【0024】
本発明による赤外線検出素子においては、前記導電性材料層は、シリコン層と金属シリサイド層の積層構造からなることとすることができる。
【0025】
本発明による赤外線検出素子においては、前記導電性材料層は、金属シリサイド層の単一層からなることとすることができる。
【0026】
本発明による赤外線検出素子においては、前記導電性材料層は、金属層からなることとすることができる。
【0027】
本発明による赤外線検出素子においては、前記導電性材料層は、金属層の単一層からなることとすることができる。
【0028】
本発明による赤外線検出素子においては、前記導電性材料層は、複数の金属層の積層構造からなることとすることができる。
【0029】
本発明による赤外線検出素子においては、前記金属層は、金属シリサイド層上に積層されていることとすることができる。
【0030】
本発明による赤外線検出素子においては、前記金属層は、シリコン層に積層された金属シリサイド層上に積層されていることとすることができる。
【0031】
本発明による赤外線検出素子においては、前記シリコン層が、単結晶シリコン膜、あるいはポリシリコン膜であることとすることができる。
【0032】
本発明による赤外線検出素子においては、前記金属シリサイド膜の金属成分として、Pt,Ti,W,Co,Ni,Fe,Mo,Mn,およびCrの少なくとも1つを含むこととすることができる。
【0033】
本発明による赤外線検出素子においては、前記赤外線検出部に赤外線吸収膜が接合されていることとすることができる。
【0034】
本発明による赤外線検出素子の製造方法は、半導体基板上に空隙を介して形成された熱電変換部を有する赤外線検出部と、前記半導体基板上に空隙を介して形成されかつ前記赤外線検出部を支持しかつ前記赤外線検出部および前記半導体基板間の電気的接続をなす梁部と、を有する赤外線検出素子の製造方法であって、
半導体基板上に、熱電変換部を有する赤外線検出部を形成する工程と、
前記赤外線検出部および前記半導体基板間の電気的接続をなす導電性材料層を形成する工程と、
前記赤外線検出部および前記導電性材料層を覆う絶縁材料膜を形成する工程と、
前記絶縁材料膜および前記導電性材料層の一部を一括除去して、前記導電性材料層がその側面に露出した梁部を形成する工程と、
前記梁部の側面に露出した導電性材料層を覆う犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層の一部を除去して、前記半導体基板を露出させる工程と、
前記半導体基板を露出させた領域から前記半導体基板をエッチング除去して、前記熱電変換部および前記導電性材料層とその周囲の前記絶縁材料膜との下方に空隙を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明による赤外線検出素子の製造方法においては、前記梁部を形成する工程において、前記導電性材料層および前記梁部の幅が同一となるように前記絶縁材料膜および前記導電性材料層の一部がエッチング除去されることとすることができる。
【0036】
本発明による赤外線検出素子の製造方法においては、前記導電性材料層および前記絶縁材料膜が熱酸化、熱CVD、あるいはプラズマCVD法により形成されたこととすることができる。
【0037】
本発明による赤外線検出素子の製造方法においては、前記犠牲層を形成する工程において、前記犠牲層を加工して前記赤外線検出部を露出させ、前記赤外線検出部および前記犠牲層の表面に赤外線吸収膜を成膜して、前記赤外線吸収膜を前記赤外線検出部に接合する工程を含むこととすることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、梁部形状加工の際に金属シリサイド層などの導電性材料層も一括加工するため、従来の課題にあったフォトリソグラフィ/エッチング工程における合わせ誤差を完全に取り除くことができる。このため、梁部幅を従来構造の半分以下にすることが可能になる。
【0039】
また、本発明によれば、梁部幅まで金属シリサイド層などの導電性材料層を広げることができるため、低抵抗化することが可能となり、従来技術で必要とされた金属配線層が不要となり、工程の簡略化、費用の低減が可能になる。なお、低抵抗化のために金属配線層を積層してもよいことは言うまでもない。
【0040】
さらに、本発明によれば、導電性材料層、特に金属シリサイドの線幅を細線化していくと、熱処理による金属の凝集不良が発生し易くなるが、本発明では、シリサイド領域を梁部幅よりも広域に形成可能なため、製造上の凝集不良に対しても対策効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明による実施形態の赤外線検出素子について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0042】
図11は本実施形態の赤外線検出素子の拡大部分断面図、特に、梁部21の断面構造(図1のX−Y線で切断した箇所の展開断面に相当する)を示す。梁部21は、SOI基板1をSOI基板1内に埋め込まれた埋込シリコン酸化膜400上にて、シリコン膜410とその上の金属シリサイド415との積層体である配線、並びにその上のシリコン窒化膜420(保護膜)によって梁部21が構成されている。この場合の本実施形態における従来構造との最大の相違点は、従来方法ではシリサイド領域が後の梁部形状の内側に存在するのに対して、本発明では、その外側両側まで延在し露出する点である。
【0043】
梁部21は、以下の図12〜図17の説明する概略順序で形成され、図12〜図17は本実施形態に係る赤外線検出素子の製造工程の手順を示す部分断面図である。
【0044】
まず、基板1内に埋め込まれた埋込シリコン酸化膜400上にシリコン膜410が一様に形成されているSOI基板1を用意する。図12に示すように、かかるシリコン膜410から赤外線検出部140を作成するとともに、SOI基板の埋め込み酸化シリコン膜を保護絶縁部400とする。また同時に、所望の金属配線パターンに対応してシリコン膜410が残るようにパターニングする。すなわち、SOI基板1の最表面のシリコン単結晶層を、赤外線検出部および金属配線パターン以外のパターンで、酸化して保護絶縁部400aとして形成し、赤外線検出部と保護絶縁部400を互いに隣接して形成する。赤外線検出部140は熱電変換部を備え、例えば単結晶シリコンを材料とするpnダイオード列(図示せず)として作成する。赤外線検出部に隣接して形成される保護絶縁部400aは素子分離領域として作用される。この酸化シリコンの保護絶縁部400aの領域には後の空隙形成用のエッチング窓を含めるように形成される。
【0045】
次に、配線のために残したシリコン膜410の上に金属シリサイド415を形成して支持配線部を形成する。ここでは、シリサイドを形成するための金属膜を形成した後、急速加熱法等により、金属シリサイド415を形成する。
【0046】
その後に未反応の金属膜を除去するためのウエットエッチングを行った後、保護層として、図13に示すように、シリコン酸化膜あるいは、シリコン窒化膜420を形成する。本実施例では、シリコン膜410の上層部のみを部分的にシリサイド化しているが、シリコン膜を残さずシリコン膜全体を完全にシリサイド化させてもよい。金属シリサイド膜の金属成分として、Pt,Ti,W,Co,Ni,Fe,Mo,Mn,およびCrの少なくとも1つが挙げられる。
【0047】
次に、図14に示すように、梁部を画定するために、シリコン窒化膜420、金属シリサイド415、シリコン膜410および保護絶縁部400まで、例えばRIE等の異方性エッチングによって基板1に達する梁部形成用の貫通孔24を形成し、半導体基板1の表面を露出させる。この工程により、赤外線検出部140が形成される領域と、梁部21が形成される領域とが互いに分離して形成される。
【0048】
このように、梁部形状を形成するフォトリソグラフィ/エッチングを行うことで、図14の梁部構造を一括して形成することができる。
【0049】
本実施形態の最大の特徴は、シリコン窒化膜420、金属シリサイド415、シリコン膜410、埋込シリコン酸化膜400を1つのフォトマスクで一括加工する点である。このため、レイアウト上の特徴は、シリサイド形成領域幅は従来よりも広く、梁部形状加工後にはシリサイド幅が梁部幅と一致している。
【0050】
次に、図15に示すように、貫通孔24の内側壁を含めて、基板上面全体に絶縁材料からなる犠牲層430を形成する。なお、犠牲層430の上面を加工して、後の赤外線検出部に接合される反射膜や赤外線吸収膜(図示せず)を順に形成することができる。
【0051】
次に、図16に示すように、犠牲層430など(シリコン窒化膜420、保護絶縁部400aおよび埋込シリコン酸化膜400)の一部をエッチング除去して基板1に達するトレンチを形成し、エッチング窓Wdを形成する。
【0052】
そして、図17に示すように、エッチング窓の底面に接する半導体基板1を徐々にエッチングし、空隙200を形成する。湿式エッチングの場合は赤外線検出部140周りの梁部領域を囲むように予め深いエッチングストッパ(図示せず)を基板1内部に埋設しておく。ガスエッチングの場合、エッチング形状はエッチング窓Wd近傍の接合柱直下で最も深く端部になるに従って浅くなるので浅いエッチングストッパ(図示せず)を形成する。
【0053】
次に、犠牲層430を例えばドライエッチングにより除去し、図11に示す構造の赤外線検出素子が得られる。
【0054】
図18に、本実施形態の赤外線固体撮像素子(赤外線吸収部を除く)の画素を示す概略部分切欠斜視図を示す。赤外線検出素子は、半導体基板1上に空隙200を介して形成された熱電変換部(例えば埋込シリコン酸化膜400上のpnダイオード列140a)を有する赤外線検出部140と、半導体基板1上に空隙200を介して形成されかつ赤外線検出部140を支持しかつ赤外線検出部140および半導体基板1間の電気的接続をなす梁部21、22と、を有する。梁部21、22は絶縁材料膜(例えばシリコン窒化膜420)を有しかつ絶縁材料膜から梁部21、22の側面に露出した導電性材料層(例えばシリコン膜410とその上の金属シリサイド415の積層構造)を有している。
【0055】
本実施形態では、空隙形成用のエッチング窓の形成位置が多少ずれても、梁形成する際のマスク合わせよりも精度がそれほど要求されず、製造工程の簡略化と歩留まり向上が図れる。
【0056】
なお、本発明では赤外線検出方法として、熱電変換部にpnダイオードを用いているが、本発明はその梁部の構造および製造方法に関するものであり、その検出部の熱電変換方式が他の抵抗ボロメータ方式や焦電方式等であってもよく、基板も必ずしもSOI基板を用いる必要はない。本発明では、埋込シリコン酸化膜上のシリコン膜に金属シリサイド層を形成したが、例えば、シリコン酸化膜上のポリシリコンに金属シリサイドを形成する構造および製造方法でも、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、本発明は、梁部に形成されるシリサイドに替えて従来の金属配線を形成した場合であっても実施が可能である。上記実施形態では梁部に形成される導電性材料が金属シリサイド単層で構成したが、金属シリサイド層上に金属膜を積層して、複数層の多層支持配線部としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】赤外線吸収部を除いた従来の赤外線固体撮像素子の画素を示す平面図である。
【図2】他の従来の赤外線吸収構造を備えたSOIダイオードの赤外線検出素子構造を示す断面図である。
【図3】図1のX−Y線で切断した箇所の部分断面図である。
【図4】従来の赤外線固体撮像素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図5】従来の赤外線固体撮像素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図6】従来の赤外線固体撮像素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図7】従来の赤外線固体撮像素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図8】従来の赤外線固体撮像素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図9】従来の赤外線固体撮像素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図10】従来の赤外線固体撮像素子における梁部の部分断面図である。
【図11】本実施形態の赤外線検出素子の部分断面図である。
【図12】本実施形態の赤外線検出素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図13】本実施形態の赤外線検出素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図14】本実施形態の赤外線検出素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図15】本実施形態の赤外線検出素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図16】本実施形態の赤外線検出素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図17】本実施形態の赤外線検出素子の製造工程におけるSOI基板の部分断面図である。
【図18】本実施形態の赤外線固体撮像素子(赤外線吸収部を除く)の画素を示す概略部分切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 SOI基板
21、22 梁部
24 梁部形成用の貫通孔
140 赤外線検出部
200 空隙
300 埋込シリコン酸化膜
310 シリコン膜
320 シリコン酸化膜
325 金属シリサイド
335 金属配線
340 層間絶縁膜
400a 保護絶縁部
400 埋込シリコン酸化膜
410 シリコン膜
415 金属シリサイド
420 シリコン窒化膜
430 犠牲層
Wd エッチング窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に空隙を介して形成された熱電変換部を有する赤外線検出部と、
前記半導体基板上に空隙を介して形成されかつ前記赤外線検出部を支持しかつ前記赤外線検出部および前記半導体基板間の電気的接続をなす梁部と、
を有する赤外線検出素子であって、
前記梁部は絶縁材料膜を有しかつ前記絶縁材料膜から前記梁部の側面に露出した導電性材料層を有することを特徴とする赤外線検出素子。
【請求項2】
前記導電性材料層は、シリコン層と金属シリサイド層の積層構造からなることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出素子。
【請求項3】
前記導電性材料層は、金属シリサイド層の単一層からなることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出素子。
【請求項4】
前記導電性材料層は、金属層からなることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出素子。
【請求項5】
前記導電性材料層は、金属層の単一層からなることを特徴とする請求項4に記載の赤外線検出素子。
【請求項6】
前記導電性材料層は、複数の金属層の積層構造からなることを特徴とする請求項4に記載の赤外線検出素子。
【請求項7】
前記金属層は、金属シリサイド層上に積層されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項8】
前記金属層は、シリコン層に積層された金属シリサイド層上に積層されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項9】
前記シリコン層が、単結晶シリコン膜、あるいはポリシリコン膜であることを特徴とする請求項2または8に記載の赤外線検出素子。
【請求項10】
前記金属シリサイド膜の金属成分として、Pt,Ti,W,Co,Ni,Fe,Mo,Mn,およびCrの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2、3、7または8に記載の赤外線検出素子。
【請求項11】
前記赤外線検出部に赤外線吸収膜が接合されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項12】
半導体基板上に空隙を介して形成された熱電変換部を有する赤外線検出部と、前記半導体基板上に空隙を介して形成されかつ前記赤外線検出部を支持しかつ前記赤外線検出部および前記半導体基板間の電気的接続をなす梁部と、を有する赤外線検出素子の製造方法であって、
半導体基板上に、熱電変換部を有する赤外線検出部を形成する工程と、
前記赤外線検出部および前記半導体基板間の電気的接続をなす導電性材料層を形成する工程と、
前記赤外線検出部および前記導電性材料層を覆う絶縁材料膜を形成する工程と、
前記絶縁材料膜および前記導電性材料層の一部を一括除去して、前記導電性材料層がその側面に露出した梁部を形成する工程と、
前記梁部の側面に露出した導電性材料層を覆う犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層の一部を除去して、前記半導体基板を露出させる工程と、
前記半導体基板を露出させた領域から前記半導体基板をエッチング除去して、前記熱電変換部および前記導電性材料層とその周囲の前記絶縁材料膜との下方に空隙を形成する工程と、を含むことを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
【請求項13】
前記梁部を形成する工程において、前記導電性材料層および前記梁部の幅が同一となるように前記絶縁材料膜および前記導電性材料層の一部がエッチング除去されることを特徴とする請求項12に記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項14】
前記導電性材料層および前記絶縁材料膜が熱酸化、熱CVD、あるいはプラズマCVD法により形成されたことを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項15】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記導電性材料層は、シリコン層と金属シリサイド層の積層構造からなることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項16】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記導電性材料層は、金属シリサイド層の単一層からなることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項17】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記導電性材料層は、金属層からなることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項18】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記導電性材料層は、金属層の単一層からなることを特徴とする請求項17に記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項19】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記導電性材料層は、複数の金属層の積層構造からなることを特徴とする請求項17に記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項20】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記金属層は、金属シリサイド層上に積層されていることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項21】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記金属層は、シリコン層に積層された金属シリサイド層上に積層されていることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項22】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記シリコン層が、単結晶シリコン膜、あるいはポリシリコン膜であることを特徴とする請求項15または21に記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項23】
前記導電性材料層を形成する工程において、前記金属シリサイド膜の金属成分として、Pt,Ti,W,Co,Ni,Fe,Mo,Mn,およびCrの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項15、16、20または21に記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項24】
前記犠牲層を形成する工程において、前記犠牲層を加工して前記赤外線検出部を露出させ、前記赤外線検出部および前記犠牲層の表面に赤外線吸収膜を成膜して、前記赤外線吸収膜を前記赤外線検出部に接合する工程を含むことを特徴とする請求項12〜23のいずれかに記載の赤外線検出素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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