説明

赤外線遮蔽フィルタ

【課題】高耐熱性及び透明性を有すると共に、赤外線遮蔽効果を向上させる。
【解決手段】誘電率実部が負である微粒子、特に金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子が分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を用いた赤外線遮蔽フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、約380nm以下の波長の光線は紫外線と呼ばれ、約700nm以上の波長の光線は赤外線と呼ばれている。
太陽光から発せられる光線は、その波長範囲が約200nm〜5μmの広範囲にわたっており、紫外線や赤外線などの可視光線以外の光線も含んでいる。また、ハロゲンランプやメタルハライドランプのような高輝度光源からも多量の紫外線や赤外線が照射される。
【0003】
紫外線は、人体や種々の物体に対して、日焼けや褪色・劣化などを引き起こしやすく、一方、赤外線は熱エネルギーとなる。
一般に窓ガラスなどに用いられているガラスは、約320nm以上の紫外線や5μm以下の赤外線を完全に吸収することができないため、太陽光からの紫外線や赤外線を容易に透過する。また、ランプの前面レンズなどに使われるガラスやプラスチックも完全に紫外線や赤外線をカットすることはできない。
【0004】
上記に関連して、CuCl及び/又はCuBr微粒子を析出させた紫外線カットガラス表面に、赤外線反射膜又は赤外線吸収膜を有する紫外線及び赤外線カットガラスに関する開示がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、赤外線吸収成分として、酸化インジウム、酸化スズ及びITO、ATO、ランタン化合物、鉄、マンガン等の金属系の群より選ばれる微粒子状の金属酸化物が、ポリビニルアセタール系樹脂に対して0.01〜5質量%の割合で含有する赤外線カット用透明組成物に関する開示がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−61835号公報
【特許文献2】特開2005−126650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の紫外線及び赤外線カットガラスでは、赤外線カットには多層膜を形成する必要があり、コスト、耐熱性(熱膨張に伴なう膜厚変化が引き起こす反射波長変化)に課題がある。
また、上記のような金属酸化物は、誘電率実部が正の化合物であるために、赤外線吸収能としては不充分である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、低コストであって、赤外線遮蔽性に優れた赤外線遮蔽フィルタを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。また、上記に加え、高耐熱性及び透明性を有する赤外線遮蔽フィルタを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 誘電率実部が負である微粒子を分散して含有する赤外線遮蔽フィルタである。
<2> 前記微粒子が、金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子である前記<1>に記載の赤外線遮蔽フィルタである。
【0009】
<3> 前記金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子が合金微粒子である前記<2>に記載の赤外線遮蔽フィルタである。
<4> 前記微粒子が、銀微粒子又は銀を有する合金微粒子である前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の赤外線遮蔽フィルタである。
【0010】
<5> 前記微粒子は、球相当直径が50nm以下である前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の赤外線遮蔽フィルタである。
<6> 前記微粒子は、アスペクト比が3以上の平板粒子又は針状粒子である前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の赤外線遮蔽フィルタである。
<7> バインダーを更に含み、前記微粒子がバインダー中に分散されている前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の赤外線遮蔽フィルタである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストであって、赤外線遮蔽性に優れた赤外線遮蔽フィルタを提供することができる。また、上記に加え、高耐熱性及び透明性を有する赤外線遮蔽フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の赤外線遮蔽フィルタについて詳細に説明する。
本発明の赤外線遮蔽フィルタは、誘電率実部が負である微粒子を分散状態で含有してなり、例えば、誘電率実部が負である微粒子が分散された膜の形態で(例えばガラス基板等の基板上に設けて)構成することができる。この赤外線遮蔽フィルタを、赤外線(及び紫外線)発光部の発光方向における光路の任意位置に配置することにより、赤外線(及び紫外線)を吸収、カットして遮蔽することができる。
【0013】
赤外線(及び紫外線)発光部からの発光スペクトルは、分光放射輝度計SR−3(トプコン社製(株)製)を用いて検出、測定することができる。
【0014】
〜誘電率実部が負である微粒子〜
本発明の赤外線遮蔽フィルタは、誘電率実部が負である微粒子の少なくとも一種(以下、「本発明に係る微粒子」ということがある。)を含有する。誘電率実部が負である微粒子としては、金属微粒子、金属化合物微粒子、複合粒子などの金属系微粒子、並びに顔料などの微粒子が挙げられる。本発明においては、誘電率実部が負である微粒子を選択することで、赤外線、あるいは赤外線及び紫外線の吸収能が高く、優れた遮蔽効果が得られる。
【0015】
ここで、誘電率とは、物質に電場を印加したときに、物質中の原子がどの程度応答するかを示す物理量である。誘電率は、一般に複素数のテンソル量で与えられる。複素誘電率の実部は分極の起こり易さを表す量であり、虚部は誘電損失の度合いを表す量である。すなわち、誘電率実部が負であると、光の吸収能が高く、少ない微粒子の量で優れた光吸収能が得られ、遮蔽機能を得ることができる。
前記誘電率は、屈折計により測定される屈折率を二乗したものや、「Handbook of optical constans」や「Landolt-Boernstein Group3 Volume15 SubvolumeB」に記載の文献値を用いることができる。
【0016】
以下、本発明に係る微粒子について詳述する。
〈金属微粒子〉
金属微粒子における金属としては、特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。金属微粒子には、2種以上の金属を組み合わせた複合粒子も含まれ、合金微粒子として用いることが可能である。
【0017】
金属としては、特に、長周期律表(IUPAC 1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことが好ましい。また、第2〜14族からなる郡から選ばれる金属を含有することが好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことがより好ましい。これらの金属のうち、金属微粒子としては、第4周期、第5周期、又は第6周期の金属であって、第2族、第10族、第11族、第12族、又は第14族の金属の粒子が更に好ましい。
【0018】
前記金属微粒子として好ましい例は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。更に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム及びこれらの合金、より好ましい金属は、銅、銀、金、白金、錫及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種である。とりわけ銀(銀微粒子)が好ましく、銀としてはコロイド銀が最も好ましい。
【0019】
〈金属化合物微粒子〉
「金属化合物」とは、前記金属と金属以外の他の元素との化合物である。金属と他の元素との化合物としては、金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩など及びこれらを含む複合粒子が挙げられ、金属化合物微粒子としてはこれらの粒子が好適である。
【0020】
金属化合物の例としては、酸化銅(II)、硫化鉄、硫化銀、硫化銅(II)、チタンブラックなどがあるが、色調や微粒子形成のしやすさから硫化物の粒子が好ましく、色調、微粒子形成のしやすさや安定性の観点から、硫化銀が特に好ましい。
【0021】
〈複合粒子〉
複合粒子は、金属同士、金属化合物同士、金属と金属化合物がそれぞれ結合して1つの粒子になったものであり、例えば、粒子の内部と表面で組成の異なるもの、2種の粒子が合一したもの(合金を含む。)等を挙げることができる。また、金属化合物と金属とは、それぞれ1種でも2種以上であってもよい。
【0022】
前記金属微粒子には、金属と金属との複合粒子が含まれ、前記金属化合物微粒子には、金属と金属化合物との複合粒子、金属化合物と金属化合物との複合粒子が含まれる。
【0023】
複合粒子のうち、銀を有する合金微粒子は好ましく、銀を有する合金微粒子には、銀と他の金属との合金、銀と銀化合物又は銀化合物以外の金属化合物との合金、銀化合物と銀化合物以外の他の金属化合物との合金が含まれ、合金微粒子としても使用することができる。
【0024】
金属と金属化合物との複合粒子の具体例としては、銀と硫化銀の複合粒子、銀と酸化銅(II)の複合粒子などが好適に挙げられる。
【0025】
〈コアシェル粒子〉
本発明に係る微粒子は、コア・シェル型の複合粒子(コアシェル粒子)であってもよい。コア・シェル型の複合粒子(コアシェル粒子)とは、コア材料の表面をシェル材料でコートしたものである。
コア・シェル型の複合粒子を構成するシェル材料としては、例えば、Si、Ge、AlSb、InP 、Ga、As、GaP 、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、PbS、PbSe、PbTe、Se、Te、CuCl、CuBr、CuI、TlCl、TlBr、TlIやこれらの固溶体及びこれらを90mol%以上含む固溶体から選ばれる少なくとも1種の半導体、又は銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられる。
前記シェル材料は、反射率を低下させる目的で屈折率の調整剤としても好適に用いられる。
【0026】
また、好ましいコア材料としては、銅、銀、金、パラジウム、ニッケル、錫、ビスマス、アンモチン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0027】
コアシェル構造を有する複合粒子の作製方法には、特に制限はなく、代表的な方法は以下のものが挙げられる。
(1)公知の方法で作製した金属微粒子の表面に、酸化、硫化などにより、金属化合物のシェルを形成する方法であり、例えば、金属微粒子を水などの分散媒に分散させて、硫化ナトリウムや硫化アンモニウムなどの硫化物を添加する方法である。この方法により粒子の表面が硫化されてコアシェル粒子が形成できる。
この場合、用いる金属微粒子は、気相法、液相法などの公知の方法で作製することができる。金属微粒子の作製方法については、例えば、「超微粒子の技術と応用における最新動向II」(住ベテクノリサーチ(株)、2002年発行)に記載されている。
(2)金属微粒子を作製する過程で連続的に表面に金属化合物のシェルを形成する方法であり、例えば、金属塩溶液に還元剤を添加して、金属イオンの一部を還元して金属微粒子を作製し、次いで硫化物を添加して、作製した金属微粒子の周囲に金属硫化物を形成する方法である。
【0028】
金属微粒子は、市販のものを用いることができるほか、金属イオンの化学的還元法、無電解メッキ法、金属の蒸発法等により調製することが可能である。
棒状の銀微粒子は、球形銀微粒子を種粒子としてその後、銀塩を更に添加し、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)等の界面活性剤の存在下でアスコルビン酸など比較的還元力の弱い還元剤を用いることにより、銀棒やワイヤーが得られる。これは、Advanced Materials 2002,14,80−82に記載がある。また、同様の記載が、Materials Chemistry and Physics 2004,84,197−204、Advanced Functional Materials 2004,14,183−189になされている。
【0029】
また、電気分解を用いた方法として、Materials Letters 2001,49,91−95やマイクロ波を照射することにより銀棒を生成する方法がJournal of Materials Research 2004,19,469−473に記載されている。逆ミセルと超音波の併用した例として、Journal of Physical Chemistry B 2003,107,3679−3683が挙げられる。
金に関しても同様に、Journal of Physical Chemistry B 1999,103、3073−3077及びLangmuir1999,15,701−709、Journal of American Chemical Society 2002,124,14316−14317に記載されている。
棒状の粒子の形成は、前記記載の方法を改良(添加量調整、pH制御)しても行なうことができる。
【0030】
本発明における金属微粒子は、無彩色に近づけるために、色々な種類の粒子を組み合わせることにより得ることができる。粒子を球形や立方体から平板状(六角形、三角形)、棒状へ変化させることにより、より高い透過濃度を得ると共に、遮蔽性に優れる。
【0031】
上記した金属系微粒子のうち、アスペクト比(粒子の長軸長/粒子の短軸長の比)が3以上の微粒子が、長波長側の光の吸収効果が高まり、赤外線遮蔽効果が向上する点で好ましい。中でも、吸収スペクトルの制御ができ、赤外線あるいは赤外線及び紫外線の吸収が高く遮蔽効果に優れる点で、アスペクト比は4〜80が好ましく、10〜60が特に好ましい。
【0032】
アスペクト比とは、金属系微粒子の長軸長を短軸長で割った値を意味し、100個の金属系微粒子を測定した値の平均値である。なお、粒子の投影面積は電子顕微鏡写真上での面積を測定し、撮影倍率を補正することにより得られる。
【0033】
上記のうち、前記金属系微粒子としては、六角形平板微粒子、三角形平板微粒子、棒状金属微粒子が好ましい形態として挙げられる。
[六角形平板微粒子]
六角形平板微粒子は、平板形状が六角形の微粒子であり、具体的な例として、平板粒子の形状が例えば正六角形や合同な二等辺三角形を4つ重ねた六角形等である粒子が挙げられ、中でも正六角形である金属系微粒子、特に正六角形の金属微粒子が好ましい。
【0034】
ここで、「六角形状」であるとは、下記の方法によって粒子を、X軸、Y軸、Z軸からなる三軸径の直方体と捉えた場合に、角が六個ある平板粒子形態となることをさす。すなわち、三軸径の直方体と捉えた場合に、ある1軸方向に厚みを持ち、残り2軸が作る平面内に角が六個ある粒子のことをさす。
【0035】
[三角形平板微粒子]
三角形平板微粒子は、平板形状が三角形の微粒子であり、具体的な例として、正三角形、直角三角形、二等辺三角形等である粒子が挙げられ、中でも正三角形である金属系微粒子、特に正三角形の金属微粒子が好ましい。
【0036】
ここで、「三角形状」であるとは、下記の方法によって粒子を、X軸、Y軸、Z軸からなる三軸径の直方体と捉えた場合に、角が三個ある平板粒子形態となることをさす。すなわち、三軸径の直方体と捉えた場合に、ある1軸方向に厚みを持ち、残り2軸が作る平面内に角が3個ある粒子のことをさす。
【0037】
[棒状金属微粒子]
棒状金属微粒子は、棒状の微粒子であり、赤外線遮蔽効果と紫外線遮蔽効果との双方を得ることができる。具体的な例として、粒子自体の形状が針状、円柱状、直方体等の角柱状、ラグビーボール状、繊維状、又はコイル状等である粒子が挙げられ、中でも針状、円柱状、直方体等の角柱状、ラグビーボール状である金属系微粒子がより好ましい。
【0038】
ここで、「棒状」であるとは、下記の方法によって粒子を、X軸、Y軸、Z軸からなる三軸径の直方体と捉えた場合に、細長い棒状形態となることをさす。すなわち、三軸径の直方体と捉えた場合に、平板状となる粒子や、正側面体となる粒子(例えば、粒子自体の形状が真球、立方体等の粒子)を除くことを意味する。
【0039】
前記棒状金属微粒子の粒度分布としては、粒子の分布を正規分布近似し、その数平均粒子径の粒度分布幅D90/D10が、1.2以上20未満であることが好ましい。ここで、粒子径は長軸長さLを粒子直径としたものであり、D90は平均粒径に近い粒子の90%が見出される粒子直径であり、D10は平均粒径に近い粒子の10%が見出される粒子直径である。粒度分布幅は色調の観点から、好ましくは2以上15以下であり、更に好ましくは4以上10以下である。分布幅が1.2未満であると色調が単色に近くなる場合があり、20以上であると粗大粒子による散乱によって濁りが生じる場合がある。
【0040】
なお、前記粒度分布幅D90/D10の測定は、具体的には、膜中の金属微粒子を後述の三軸径を測定する方法にてランダムに100個測定し、前記長軸長さLを粒子直径とし、粒径分布を正規分布近似し、平均粒子径に近い粒子の数で90%の範囲となる粒子直径をD90とし、平均粒子径から数で10%の範囲となる粒子直径をD10とすることで、D90/D10を算出することができる。
【0041】
《三軸径》
本発明に係る金属系微粒子は、下記の方法によって直方体として捉えられ、各寸法が測定される。すなわち、1個の金属系微粒子がちょうど(きっちりと)収まるような三軸径の直方体の箱を考え、この箱の長さの一番長いものを長軸長さLとし、厚みt、幅bをもってこの金属系微粒子の寸法と定義する。前記寸法には、L>b≧tの関係を持たせ、同一の場合以外はbとtの大きい方を幅bと定義する。具体的には、まず、平面上に金属微粒子を、最も重心が低くて安定に静止するように置く。次に、平面に対し直角に立てた2枚の平行な平板により金属微粒子を挟み、その平板間隔が最も短くなる位置の平板間隔を保つ。次に、前記平板間隔を決する2枚の平板に対し直角で前記平面に対しても直角の2枚の平行な平板により金属系微粒子を挟み、この2枚の平板間隔を保つ。最後に金属微粒子の最も高い位置に接触するように天板を前記平面に平行に載せる。この方法により平面、2対の平板及び天板によって画される直方体が形成される。
なお、コイル状やループ状のものはその形状を伸ばした状態で前記測定を行なった場合の値と定義する。
【0042】
《長軸長さL》
棒状金属微粒子の場合など、前記長軸長さLは、10nmないし1000nmであることが好ましく、10nmないし800nmであることがより好ましく、20nmないし400nmである(可視光の波長より短い。)ことが最も好ましい。Lが10nm以上であることにより、製造上調製が簡便で、かつ耐熱性や色味も良好になる利点があり、1000nm以下であることにより、面状欠陥が少ないという利点がある。
【0043】
《幅bと厚みtとの比》
棒状金属微粒子の場合など、幅bと厚みtとの比は、100個の棒状金属微粒子について測定した値の平均値と定義する。棒状金属微粒子の幅bと厚みtとの比(b/t)は2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。b/t比が2.0を超えると平板状に近くなり、耐熱性が低下することがある。
【0044】
《長軸長さLと幅b及び厚みtとの関係》
長軸長さLは、幅bの1.2倍以上100倍以下であることが好ましく、1.3倍以上50倍以下であることがより好ましく、1.4倍以上20倍以下であることが特に好ましい。長軸長さLが幅bの1.2倍未満となると平板の特徴が現れて耐熱性が悪化することがある。また、長軸長さLが幅bの100倍を超えると黒色濃度が低くなって薄層高濃度化ができないことがある。
【0045】
《長さLと幅b及び厚みtとの測定》
長さL、幅b及び厚みtの測定は、電子顕微鏡による表面観察図(×500000)と、原子間力顕微鏡(AFM)によってすることができ、100個の棒状金属微粒子について測定した値の平均値とする。原子間力顕微鏡(AFM)には、いくつかの動作モードがあり、用途によって使い分けている。
大別すると以下の3つになる。
(1)接触方式:プローブを試料表面に接触させ、カンチレバーの変位から表面形状を測定する方式
(2)タッピング方式:プローブを試料表面に周期的に接触させ、カンチレバーの振動振幅の変化から表面形状を測定する方式
(3)非接触方式:プローブを試料表面に接触させずに、カンチレバーの振動周波数の変化から表面形状を測定する方式
【0046】
一方、前記非接触方式は、極めて弱い引力を高感度に検出する必要がある。そのため、カンチレバーの変位を直接測定する静的な力の検出では難しく、カンチレバーの機械的共振を応用している。
前記の3つの方法を挙げることができるが、試料に合わせいずれかの方法を選択することが可能である。
【0047】
なお、本発明において、前記電子顕微鏡としては、日本電子社製の電子顕微鏡JEM2010を用いて、加速電圧200kVで測定を行なうことができる。また、原子間力顕微鏡(AFM)は、セイコーインスツルメンツ株式会社製のSPA−400が挙げられる。原子間力顕微鏡(AFM)での測定では、比較にポリスチレンビーズを入れておくことにより測定が容易になる。
【0048】
本発明に係る微粒子のサイズとしては、球相当直径で50nm以下であることが好ましく、30nm以下であるのがより好ましい。該球相当直径の下限値としては5nmである。球相当直径が前記範囲内であると、赤外域(及び紫外域)の波長光の吸収能が良好であり、遮蔽効果が効果的に高められる。
【0049】
本発明において、球相当直径は、電子顕微鏡で写真撮影して微粒子(断面、厚み)から体積を求め、得られた体積(=(4/3)πr3)から算出される直径(2r)である。ここで、電子顕微鏡には、電子顕微鏡〔日本電子社製のJEM2010(例えば加速電圧200kVで測定)〕、原子間力顕微鏡〔AFM;セイコーインスツルメンツ社製のSPA−400〕を用いることができる。
【0050】
本発明においては、誘電率実部が負である微粒子として、アスペクト比が3以上の平板粒子又は針状粒子が好ましい。平板粒子又は針状粒子であると、透明性、耐熱性を確保しながら、赤外域(及び紫外域)の光の吸収がよく、特に針状粒子は赤外域及び紫外域の双方の吸収性に優れ、赤外線遮蔽効果と紫外線遮蔽効果の双方を得るのに有効である。
特に銀粒子又は銀を有する合金微粒子が最も好ましく、更には銀粒子又は銀を有する合金微粒子であってアスペクト比が1.0〜1.5の三角平板粒子、又は銀又は銀を含有する合金微粒子であってアスペクト比が4.0〜7.0の六角平板粒子が好ましい。
【0051】
〈顔料その他〉
本発明では、上記の金属系微粒子とは別に、あるいは金属系微粒子と共に、顔料等その他の微粒子を用いることもできる。顔料を用いたときには、フィルタをより黒色に近い色相に構成することができる。
【0052】
前記顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、又は黒鉛が好適なものとして挙げられる。
カーボンブラックの例としては、Pigment Black(ピグメント・ブラック)7(カーボンブラック C.I.No.77266)が好ましい。市販品として、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、三菱カーボンブラック #5(三菱化学(株)製)が挙げられる。
チタンブラックの例としては、TiO2、TiO、TiNやこれらの混合物が好ましい。市販品として、三菱マテリアルズ(株)製の(商品名)12Sや13Mが挙げられる。チタンブラックの平均粒径は40〜100nmが好ましい。
黒鉛の例としては、粒子径がストークス径で3μm以下のものが好ましい。
【0053】
前記顔料以外の公知の顔料を用いることもできる。顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、本発明においては有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。
【0054】
さらに、微粒子の具体的な例としては、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0055】
また、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載のものを参照して適宜用いることもできる。
【0056】
顔料は、棒状金属微粒子の色相と補色関係にあるものを用いることが望ましい。また、顔料は1種でも2種以上を組み合せて用いてもよい。好ましい顔料の組合わせとしては、赤色系及び青色系の互いに補色関係にある顔料混合物と黄色系及び紫色系の互いに補色関係にある顔料混合物との組合せや、前記の混合物に更に黒色の顔料を加えた組み合わせや、青色系と紫色系と黒色系との顔料の組合せを挙げることができる。
【0057】
顔料を用いる場合、顔料の粒径(球相当直径)は、5nm以上5μm以下が好ましく、特に10nm以上1μm以下が好ましい。
【0058】
〜バインダー〜
本発明においては、更にバインダーを用いて構成することができ、既述の微粒子(好ましくは金属系微粒子)が該バインダー中に分散された形態が好ましい。分散時における微粒子の存在状態は特に限定されないが、微粒子が安定な分散状態で存在していることが好ましく、例えばコロイド状態にあることがより好ましい。
【0059】
バインダーとしては、チオール基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類及び多糖類由来の天然高分子、合成高分子及びこれらに由来するゲル等の高分子類等が挙げられ、分散剤として使用できる。
【0060】
前記チオール基含有化合物は、種類は特に限定されず、1個又は2個以上のチオール基を有する化合物であればいかなるものでもよい。バインダーとしては、前記チオール基含有化合物として、例えば、アルキルチオール類(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタンなど)、アリールチオール類(例えば、チオフェノール、チオナフトール、ベンジルメルカプタンなど)等が挙げられ、また、前記アミノ酸又はその誘導体として、例えば、システイン、グルタチオンなどが、前記ペプチド化合物として、例えば、システイン残基を含むジペプチド化合物、トリペプチド化合物、テトラペプチド化合物、5以上のアミノ酸残基を含むオリゴペプチド化合物などが挙げられる。さらに、蛋白質(例えば、メタロチオネインやシステイン残基が表面に配置された球状蛋白質など)などを挙げることができる。但し、本発明においてはこれらに限定されることはない。
【0061】
前記高分子類としては、保護コロイド性のあるポリマーでゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びポリビニルピロリドン共重合体などが挙げられる。
分散剤として使用可能なポリマーについては、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、(株)朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
【0062】
上記以外に、バインダーとして、側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載のメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体などを挙げることができる。また、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができる。このほか、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用できる。特に、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体やベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体も挙げることができる。
【0063】
前記バインダーの中でも、分散物の安定性の点で、誘電率が2〜2.5の範囲にあるものが好ましい。特に好ましくは、誘電率が2.1〜2.4の範囲にあるものである。ここでの誘電率もまた、物質に電場を印加したときに、物質中の原子がどの程度応答するかを示す物理量をいう。
【0064】
さらに、バインダーの具体的な化合物例(PO−1、PO−2)を以下に示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0065】
(PO−1)
【化1】

【0066】
分子量:38,000、誘電率:2.22
前記式中、x:y=80:20(x,yは繰り返し単位のモル換算比率)
【0067】
(PO−2):下記ポリビニルピロリドン
分子量:40,000、誘電率:2.34
【化2】

【0068】
前記バインダーは、30〜400mgKOH/gの範囲の酸価と1000〜300000の範囲の重量平均分子量を有するものを選択することが望ましい。
【0069】
また、上記以外のアルカリ可溶性のポリマーを、種々の性能、例えば硬化膜の強度を改良する目的で、現像性等に悪影響を与えない範囲で添加してもよい。例えば、アルコール可溶性ナイロン、エポキシ樹脂などである。
【0070】
また、微粒子を分散した分散液には、更に親水性高分子、界面活性剤、防腐剤、又は安定化剤などを適宜配合してもよい。
前記親水性高分子としては、水に溶解でき、希薄状態において実質的に溶液状態を維持できるものであればいかなるものを用いてもよい。例えば、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチンなどのタンパク質及びタンパク質由来の物質;セルロース、デンプン、アガロース、カラギーナン、デキストラン、デキストリン、キチン、キトサン、ペクチン、マンナンなどの多糖類及び多糖類由来の物質などの天然高分子;ポバール(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルアミンなどの合成高分子;又はこれらに由来するゲルなどを用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることができる。
【0071】
前記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用でき、アニオン系及びノニオン系界面活性剤が特に好ましい。界面活性剤のHLB値は塗布液の溶媒が水系か有機溶剤系かにより一概にはいえないが、溶媒が水系の場合は8〜18程度のものが好ましく、有機溶剤系の場合は3〜6程度のものが好ましい。
【0072】
なお、前記HLB値については、例えば「界面活性剤ハンドブック」(吉田時行、進藤信一、山中樹好編、工学図書(株)発行、昭和62年)の記載を参照できる。
【0073】
前記界面活性剤の具体例としては、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリル酸エステルなどがある。
界面活性剤の例についても、前記「界面活性剤ハンドブック」に記載がある。
【0074】
本発明の赤外線遮蔽フィルタは、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置、液晶表示装置などの画像表示装置の画像表示部に赤外線あるいは赤外線及び紫外線をカットする遮蔽フィルタとして好適である。また、シャーカステン、画像表示用バックライトなどの蛍光灯(陰極線管を含む。)等の紫外線を発する光源を備えた装置の発光面に配置して紫外線をカットする遮蔽フィルタとしても好適である。
前記液晶表示素子は、例えば、カラーフィルタを含む少なくとも2枚の基板と該基板間に設けられた液晶と該液晶に電界を印加する2枚の電極とを設けて構成することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
<六角平板銀粒子分散溶液の調製>
まず、J.phys.chem.B 2003,107,2466−2470に記載されている微粒子の調製方法により、六角平板形状の銀粒子分散液を調製し、得られた銀粒子分散液に遠心分離処理(10,000r.p.m.、20分間)を行ない、上澄み液を捨て適宜濃縮を行なって、六角平板銀微粒子の微粒子分散液を得た。
【0077】
得られた六角平板銀微粒子のアスペクト比Rを本明細書中に既述の方法で測定したところ、R=12であった。このアスペクト比Rは、100個の平板微粒子を測定した値の平均値である。また、本明細書中に既述の方法で測定したところ、六角平板銀微粒子の粒子径は、球相当直径で20nmであった。
【0078】
続いて、得られた六角平板銀微粒子の微粒子分散液73.5gと、下記分散剤PO−2(ポリビニルピロリドン;重量平均分子量:4万、バインダー誘電率=2.34;既述の化合物例)1.05gと、メチルエチルケトン16.4gとを混合した。これを、超音波分散機(商品名:Ultrasonic generator model US−6000 ccvp、株式会社ニッセイ製)を用いて分散し、六角平板銀粒子分散溶液を得た。
【0079】
【化3】

【0080】
なお、微粒子分散液の調製において、銀塩還元時のpH、反応温度、銀塩に対する還元剤の比率を変化させることにより、各種アスペクト比の異なる銀微粒子を調製することができる。
【0081】
<フィルタ及び表示装置の作製>
次に、上記より得た六角平板銀粒子分散溶液をガラス基板上に、スピンコーターを用いて乾燥膜厚が1.0μmになるように塗布して100℃で5分間乾燥させ、赤外線遮蔽フィルタを作製した。そして、作製した赤外線遮蔽フィルタを液晶ディスプレイの液晶表示部の上に配置することで観察者と表示部との間の光路中に挿入し、以下のようにして赤外線遮蔽効果を評価した。
【0082】
<評価>
上記のように赤外線遮蔽フィルタを配置する前の液晶ディスプレイからの発光スペクトルを、分光放射輝度計SR−3(トプコン社製)により測定した。続いて、赤外線遮蔽フィルタを液晶ディスプレイ(メーカー:三星電子、機種:Sync Master 172X)の液晶表示部の上に配置したときの液晶ディスプレイからの発光スペクトルを、赤外線遮蔽フィルタを介して前記同様に測定した。
【0083】
その結果、750nm付近のスペクトル吸収が認められ、赤外線遮蔽効果が得られると共に、紫外線遮蔽効果も得られた。また、本実施例の赤外線遮蔽フィルタは、低コストで作製が可能であり、透明性で耐熱性にも優れていた。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、六角平板銀粒子分散溶液を、以下のようにして調製した三角平板銀粒子分散溶液に代えたこと以外、実施例1と同様にして、赤外線遮蔽フィルタを作製し、同様の評価を行なった。
【0085】
実施例1と同様に、800nm付近のスペクトル吸収が認められ、赤外線遮蔽効果が得られると共に、紫外線遮蔽効果も得られた。また、本実施例の赤外線遮蔽フィルタは、低コストで作製が可能であり、透明性で耐熱性にも優れていた。
【0086】
<三角平板銀粒子分散溶液の調製>
まず、NANO LETTERS 2002 Vol.2,No.8 903−905に記載されている微粒子の調製方法により、三角平板形状の銀粒子分散液を調製し、得られた分散液に遠心分離処理(10,000r.p.m.、20分間)を行ない、上澄み液を捨て適宜濃縮を行なって、三角平板銀微粒子の微粒子分散液を得た。なお、得られた三角平板銀微粒子のアスペクト比R、球相当直径の測定を前記同様の方法で行なった結果、それぞれR=5、30nmであった。
【0087】
続いて、得られた三角平板銀微粒子の微粒子分散液73.5gと、前記分散剤PO−2(ポリビニルピロリドン;重量平均分子量:4万、バインダー誘電率=2.34;既述の化合物例)1.05gと、メチルエチルケトン16.4gとを混合した。これを、超音波分散機(商品名:Ultrasonic generator model US−6000 ccvp、株式会社ニッセイ製)を用いて分散し、三角平板銀粒子分散溶液を得た。
【0088】
なお、微粒子分散液の調製において、銀塩還元時のpH、反応温度、銀塩に対する還元剤の比率を変化させることにより、各種アスペクト比の異なる銀微粒子を調製することができる。
【0089】
(実施例3)
実施例1において、六角平板銀粒子分散溶液を、以下のようにして調製した棒状銀微粒子分散溶液に代えたこと以外、実施例1と同様にして、赤外線遮蔽フィルタを作製し、同様の評価を行なった。
【0090】
実施例1と同様に、850nm付近のスペクトル吸収が認められ、赤外線遮蔽効果が得られると共に、紫外線遮蔽効果も得られた。また、本実施例の赤外線遮蔽フィルタは、低コストで作製が可能であり、透明性で耐熱性にも優れていた。
【0091】
<棒状銀微粒子分散溶液の調製>
まず、Materials Chemistry and Physics 2004,84,P197−204に記載されている微粒子の調製方法により、棒状の銀粒子分散液を調整し、得られた分散液に遠心分離処理(10,000r.p.m.、20分間)を行ない、上澄み液を捨て適宜濃縮を行なって、棒状銀微粒子の微粒子分散液を得た。
【0092】
得られた棒状銀微粒子の長軸長さL、幅b及び厚みt、粒度分布D90/D10の測定を既述した方法により行なったところ、それぞれ長軸長さL:100nm、幅b:10nm、厚さt:10nmであった。また、棒状銀微粒子の長軸長さLの調節は、銀塩還元時のpH、反応温度、種粒子と金属塩の比を調節することにより行なった。
【0093】
続いて、得られた棒状銀微粒子(長軸長さL:100nm、幅b:10nm、厚さt:10nm)73.5gと、前記分散剤PO−2(ポリビニルピロリドン;重量平均分子量:4万、バインダー誘電率=2.34;既述の化合物例)1.05gと、メチルエチルケトン16.4gとを混合した。これを、超音波分散機(商品名:Ultrasonic generator model US−6000 ccvp、株式会社ニッセイ製)を用いて分散し、棒状銀微粒子分散溶液を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電率実部が負である微粒子を分散して含有する赤外線遮蔽フィルタ。
【請求項2】
前記微粒子が、金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子である請求項1に記載の赤外線遮蔽フィルタ。
【請求項3】
前記金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子が合金微粒子である請求項2に記載の赤外線遮蔽フィルタ。
【請求項4】
前記微粒子が、銀微粒子又は銀を有する合金微粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽フィルタ。
【請求項5】
前記微粒子は、球相当直径が50nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽フィルタ。
【請求項6】
前記微粒子は、アスペクト比が3以上の平板粒子又は針状粒子である請求項1〜5のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽フィルタ。
【請求項7】
バインダーを更に含み、前記微粒子がバインダー中に分散されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽フィルタ。

【公開番号】特開2007−108536(P2007−108536A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300942(P2005−300942)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】