説明

赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体

【課題】安価で大面積化が可能で、温湿度変化後にも柔軟性が維持され、かつ可視光透過率と赤外反射率の高い赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽フィルムを少なくとも一方の面に設けた赤外遮蔽体を得ることができる手段を提供する。
【解決手段】基材上に、バインダー樹脂および金属酸化物粒子を含む高屈折率層および低屈折率層からなるユニットを少なくとも1つ有し、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差は0.1以上であり、前記高屈折率層または前記低屈折率層の少なくとも1層が、前記バインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを含む、赤外遮蔽フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外遮蔽フィルム、赤外遮蔽フィルムの製造方法、および赤外遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心が高まり、冷房設備にかかる負荷を減らすなどの観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する赤外遮蔽フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
太陽から放射される光は、紫外領域から赤外光領域まで幅広いスペクトルを有している。可視光は、紫色から黄色を経て赤色光に至る波長380〜780nmまでの範囲であり、太陽光の約45%を占めている。赤外光については、可視光に近いものは近赤外線(波長780〜2500nm)と呼ばれ、それ以上を中赤外線と称し、太陽光の約50%を占めている。この領域の光エネルギーは、紫外線と比較するとその強さは約10分の1以下と小さいが、熱的作用は大きく、物質に吸収されると熱として放出され温度上昇をもたらす。このことから熱線とも呼ばれ、これらの光線を遮蔽することにより、室内の温度上昇を抑制することができる。また、寒冷地の冬季の暖房熱を室外に逸散することを抑制することもできる。
【0004】
赤外遮蔽フィルムの形成方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ製膜法は、形成に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の課題を抱えている。
【0005】
そこで、上記のような課題を有しているドライ製膜法に代えて、湿式塗布法を用いて赤外遮蔽フィルムを形成する方法が知られている。
【0006】
例えば、金属酸化物や金属化合物微粒子を含む熱硬化型シリコーン樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を有機溶媒中に分散させた屈折率層塗布液を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1参照)や、酸化チタン粒子のメタノール分散スラリーと、メタノールシリカゾルを用いて交互積層する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2003−266577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、熱硬化型シリコーン樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を用いた成膜方法やゾルを用いて膜を形成する方法では、形成した膜が硬すぎるために、柔軟性に乏しく、特に製造後に建物や車両の窓ガラスに貼るまでの経時による温湿度変化の繰り返しにより塗膜に乱れが生じて、赤外反射率の低下や可視光透過率の低下の問題や柔軟性の低下による窓への貼りつけや搬送時などのハンドリングで塗膜表面にひび割れが生じ、所望の性能を十分に得ることができないなどの問題があることがわかった。
【0009】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、安価で大面積化が可能で、温湿度変化後にも柔軟性が維持され、かつ可視光透過率と赤外反射率の高い赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽フィルムを少なくとも一方の面に設けた赤外遮蔽体を得ることができる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
【0011】
1.基材上に、バインダー樹脂および金属酸化物粒子を含む高屈折率層および低屈折率層からなるユニットを少なくとも1つ有し、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差は0.1以上であり、前記高屈折率層または前記低屈折率層の少なくとも1層が、前記バインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを含む、赤外遮蔽フィルム;
2.前記変性ポリビニルアルコールが、(1)平均重合度200以上2400以下のポリビニルアルコールと、(2)不飽和カルボン酸並びにその塩およびエステルからなる群から選択される1種または2種以上の重合性ビニル単量体と、を0.5:9.5〜9.5:0.5の質量比で共重合させて得られる共重合体である、上記1.に記載の赤外遮蔽フィルム;
3.前記重合性ビニル重合体が、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの塩、並びに、下記一般式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す、
で表される不飽和カルボン酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上である、上記2.に記載の赤外遮蔽フィルム;
4.前記重合性ビニル単量体が、アクリル酸もしくはその塩および/またはメチルメタクリレートである、上記3.に記載の赤外遮蔽フィルム;
5.前記重合性ビニル単量体が、アクリル酸またはその塩とメチルメタクリレートとの混合物であり、アクリル酸またはその塩とメチルメタクリレートとの重量比が3:7〜0.5:9.5(アクリル酸またはその塩:メチルメタクリレート)である、上記4.に記載の赤外遮蔽フィルム;
6.前記変性ポリビニルアルコールの含有割合が、前記バインダー樹脂に対して5〜45質量%である、上記1.から5.のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルム;
7.前記高屈折率層または前記低屈折率層の少なくとも1層がホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を含む、上記1.から6.のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルム;
8.前記高屈折率層がルチル型のチタニアを含む、上記1.から7.のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルム;
9.上記1.から8.のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造コストが安く、大面積化が可能であり、赤外反射率および可視光透過率が高く、温湿度変化後にも柔軟性が維持されうる赤外遮蔽フィルムおよびこれを用いた赤外遮蔽体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明の一形態によれば、基材上に、バインダー樹脂および金属酸化物粒子を含む高屈折率層および低屈折率層からなるユニットを少なくとも1つ有する赤外遮蔽フィルムが提供される。この際、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差は0.1以上である。そして、前記高屈折率層または前記低屈折率層の少なくとも1層が、前記バインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを含む点に特徴を有する。
【0017】
かような構成とすることにより、上述した作用効果が得られるメカニズムはいまだ明確ではないが、本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。
【0018】
すなわち、本発明が対象とする赤外遮蔽フィルムは、通常、高屈折率層と低屈折率層とのそれぞれのための塗布液を用い、各塗布液からなるユニットを逐次の多層構成となるように塗布することにより、高い生産性で製造される。そして、水系塗布液ユニットを用いる場合には、高屈折率層と低屈折率層との各層の塗布液成分が可能な限り混じり合わないようにすることで、各層について設計された屈折率を確保する必要がある。そのためには、各塗布液ユニット間で金属酸化物粒子が拡散することによる層間混合を抑えることが重要となる。一方、屈折率制御のためには、高屈折率層および低屈折率層のそれぞれにおける金属酸化物粒子の含有率を高める必要がある。ただし、金属酸化物の含有率が高い塗膜は柔軟性に劣り、温度や湿度が変化した場合に塗膜がひび割れを生じ、本来の機能である赤外遮蔽性能が大きく低下してしまう。
【0019】
これに対し、本発明に係る赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層がバインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを含有する点に特徴がある。そして、かような構成に起因して、屈折率層に含まれる金属酸化物粒子と変性ポリビニルアルコールとが相互作用し、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい赤外遮蔽特性が達成される。そして、当該相互作用により、屈折率層に柔軟性が付与される結果、温湿度条件が変化した場合であってもひび割れ等の発生の少ない耐久性に優れた赤外遮蔽フィルムが提供されうるものと考えられる。
【0020】
以下、本発明の赤外遮蔽フィルムの構成要素、および本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0021】
[赤外遮蔽フィルム]
本形態の赤外遮蔽フィルムは、基材と、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットの少なくとも1つとを含む。
【0022】
一般に、赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、高屈折率層および低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.4以上である。赤外遮蔽フィルムが高屈折率層および低屈折率層のユニットを複数有する場合には、全てのユニットにおける高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。また、本形態の赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率は1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率は1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0023】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度が限界である。
【0024】
さらには、本形態の赤外遮蔽フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であることが好ましく、また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0025】
次いで、本発明の赤外遮蔽フィルムにおける高屈折率層および低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
【0026】
本形態の赤外遮蔽フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ含む構成を有するものであればよい。好ましい高屈折率層および低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0027】
本形態の赤外遮蔽フィルムの全体の厚みは、好ましくは12μm〜315μm、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。また、低屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。一方、高屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
【0028】
〔基材〕
本形態に係る赤外遮蔽フィルムに用いられる基材としては、透明な有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0029】
かような基材としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂からなるフィルム、さらには前記樹脂を二層以上積層してなる樹脂フィルム等が挙げられる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0030】
基材の厚さは、5〜200μm程度が好ましく、さらに好ましくは15〜150μmである。
【0031】
また、基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、赤外遮蔽フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
【0032】
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0033】
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0034】
また、基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
【0035】
基材は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0036】
〔金属酸化物粒子〕
本形態に係る赤外遮蔽フィルムに用いられうる金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。
【0037】
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、チタン、ジルコニア等の高屈折率金属酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニア微粒子を含有させることが好ましい。特に、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することが好ましい。
【0038】
本発明で用いられる酸化チタン粒子または酸化ジルコニア粒子の体積平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、4〜50nmであることがより好ましく、4〜40nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が100nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0039】
ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
【0040】
具体的には、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
【0041】
さらに、本発明で用いられる酸化チタン粒子または酸化ジルコニア粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
【0042】
【数1】

【0043】
本発明で用いられる酸化チタン粒子としては、pHが1.0〜3.0で、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの表面を、疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
【0044】
本発明で用いることのできる水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、たとえば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
【0045】
また、本発明で用いられる酸化チタン粒子のその他の製造方法については、たとえば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、またはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
【0046】
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物またはアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理する工程(2)からなる。本発明では、工程(2)により得られた無機酸によりpHを1.0〜3.0に調整された酸化チタンの水系ゾルを用いることができる。
【0047】
高屈折率層における金属酸化物粒子(好ましくは酸化チタン粒子)の含有量としては、高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜70質量%であることが好ましく、20〜65質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
一方、低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素が好ましく、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、金属酸化物微粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることが特に好ましく、二酸化ケイ素(シリカ)の中空微粒子が最も好ましい。
【0049】
低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであるのがより好ましく、3〜40nmであるのがさらに好ましく、3〜20nmであるのが特に好ましく、4〜10nmであるのがもっとも好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0050】
低屈折率層に用いられる金属酸化物微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0051】
本発明で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレットなどに記載されているものである。
【0052】
かようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0053】
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
【0054】
本発明で用いられる中空微粒子は、平均粒子空孔径が、3〜70nmであるのが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空微粒子の平均粒子空孔径とは、中空微粒子の内径の平均値である。本発明において、中空微粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、本明細書中、平均粒子空孔径としては、円形、楕円形または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
【0055】
本発明で用いられる中空微粒子は、外郭の平均厚さは10nm以下であるのが好ましく、1〜7nmがより好ましく、1〜5nmがさらに好ましい。なお、本明細書中、中空微粒子における空孔の外側部分を外郭と称する。外郭の厚さが10nm以下であれば、ヘイズが少なく、赤外遮蔽フィルムの光透過率性が優れるため好ましい。外郭の厚さが1nm以上であれば、粒子の機械的強度が増して低屈折率層中でその形状を維持できるため、空孔の形成が容易となる。外郭の平均厚さは、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔の外郭の平均厚さを、ランダムに50個以上観察し、各粒子の外郭の平均厚さを求め、その数平均値を求めることにより得られる。
【0056】
かような中空微粒子は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。ここで、二酸化ケイ素(シリカ)の中空微粒子としては、例えば、アルカリ条件下(例えば、アンモニアを添加)、炭酸カルシウム水分散液に、有機ケイ素化合物(例えば、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン)を加え、撹拌する。その後、50〜80℃に加熱して撹拌し、シリカ被覆炭酸カルシウム分散液を得る。該シリカ被覆炭酸カルシウム分散液を、酸性条件下(たとえば、酢酸を添加)で、炭酸カルシウムを分解し、炭酸ガスを発生させて、炭酸カルシウムを溶出する。得られた分散液に蒸留水を添加した後、添加したのと同量の蒸留水が排出されるまで、分散液に限外ろ過を行う。該限外ろ過を1〜5回行うことで、シリカ中空微粒子を含有する分散液を得ることができる。
【0057】
低屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜45質量%であることがより好ましく、1〜40質量%であることがさらに好ましく、5〜30質量%であることが特に好ましい。
【0058】
〔バインダー樹脂〕
本形態に係る赤外遮蔽フィルムにおいて、高屈折率層および低屈折率層はそれぞれ、バインダー樹脂を含む。そして、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層は、バインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを含む。以下ではまず、本形態に係る赤外遮蔽フィルムにおいて高屈折率層または低屈折率層の少なくとも1層においてバインダー樹脂として必須に用いられる変性ポリビニルアルコールについて説明する。
【0059】
(変性ポリビニルアルコール)
本発明において、バインダー樹脂として用いられる変性ポリビニルアルコールの具体的な形態について特に制限はなく、各種の変性処理を施された従来公知の材料が適宜用いられうる。
【0060】
本発明において用いられる変性ポリビニルアルコールの原料となるポリビニルアルコールとしては、平均重合度約200〜2400、好ましくは平均重合度約900〜2400、より好ましくは平均重合度約1300〜1700である。また、ポリビニルアルコールのケン化度は、好ましくは約60〜100モル%、より好ましくは78〜96モル%である。このようなケン化ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルをラジカル重合し、得られた酢酸ビニルを適宜、ケン化することによって製造することができ、所望のポリビニルアルコールを製造するためには、適宜、重合度、ケン化度をそれ自体公知の方法で制御することによって達成される。
【0061】
なお、こうした部分ケン化ポリビニルアルコールとしては、市販品を使用することも可能であり、好ましいポリビニルアルコールの市販品としては、例えばゴーセノールEG05、EG25(日本合成化学製)、PVA203(クラレ社製)、PVA204(クラレ社製)、PVA205(クラレ社製)、JP−04(日本酢ビ・ポバール製)、JP−05(日本酢ビ・ポバール製)等が挙げられる。なお、変性ポリビニルアルコールの原料として1種のみのポリビニルアルコールを単独で使用するのみならず、重合度、ケン化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを目的に応じて適宜併用することができる。例えば、平均重合度300のポリビニルアルコールと平均重合度1500のポリビニルアルコールとを混合して使用することが可能である。
【0062】
本発明において用いられる変性ポリビニルアルコールは、上述した原料としてのポリビニルアルコールに任意の変性処理の1または2以上を施したものが用いられうる。例えば、アミン変性ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボン酸変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、チオール変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコールは、市販品を使用してもよく、あるいは当該分野で公知の方法で製造したものを使用することができる。
【0063】
また、本発明の変性ポリビニルアルコールとしては、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、およびノニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0064】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0065】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0066】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0067】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0068】
なかでも、本発明において用いられる変性ポリビニルアルコールは、(1)平均重合度200以上2400以下のポリビニルアルコールと、(2)不飽和カルボン酸並びにその塩およびエステルからなる群から選択される1種または2種以上の重合性ビニル単量体とを共重合させて得られる共重合体(グラフト共重合体)であることが好ましい。
【0069】
なお、変性ポリビニルアルコールが上記グラフト共重合体である場合において、当該グラフト共重合体を構成する(1)平均重合度200以上2400以下のポリビニルアルコールとして、上述した各種の変性ポリビニルアルコールを用いてもよい。
【0070】
原料の(変性)ポリビニルアルコールと重合させる重合性ビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類またはそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩)、それらのエステル類(例えば置換または非置換のアルキルエステル、環状アルキルエステル、ポリアルキレングリコールエステル)、不飽和ニトリル類、不飽和アミド類、芳香族ビニル類、脂肪族ビニル類、不飽和結合含有複素環類等が挙げられる。具体的には、(a)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート(ポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステル)、ポリプロピレングリコールアクリレート(ポリプロピレングリコールとアクリル酸とのエステル)などが、(b)メタクリル酸エステル類としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート(ポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル)などが、(c)不飽和ニトリル類としては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが、(d)不飽和アミド類としては例えばアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドなどが、(e)芳香族ビニル類としてはスチレン、α−メチルスチレンなどが、(f)脂肪族ビニル類としては、酢酸ビニルなどが、(g)不飽和結合含有複素環類としては、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリンなどが例示される。
【0071】
なかでも、重合性ビニル重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの塩、並びに、下記一般式(I):
【0072】
【化2】

【0073】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す、
で表される不飽和カルボン酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。そして、これらの重合性ビニル単量体は、1種または2種以上を組み合わせてポリビニルアルコールと共重合させることができるが、好ましい組み合わせは、アクリル酸とメタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチル)との混合物をポリビニルアルコールと共重合させるのがよい。ここで、ポリビニルアルコールと重合性ビニル単量体とを共重合する際の上記(1)と上記(2)との含有割合について特に制限はないが、本発明の効果を十分に発揮させるという観点からは、(1):(2)(質量比)で0.5:9.5〜9.5:0.5が好ましく、0.5:9.5〜3:7がより好ましく、1.25:8.75がさらに好ましい。また、重合性ビニル単量体としてアクリル酸とメタクリル酸メチルとの混合物を使用する場合、当該混合物におけるアクリル酸とメタクリル酸メチルとの含有割合について特に制限はないが、本発明の効果を十分に発揮させるという観点からは、アクリル酸:メタクリル酸メチル(質量比)で、好ましくは3:7〜0.5:9.5であり、より好ましくは約1.25:8.75である。また、好ましいグラフト共重合体は、ポリビニルアルコール(平均重合度約200〜2400)、メチルメタクリレートおよびアクリル酸からなり、当該グラフト共重合体における各構成成分の含有割合は、ポリビニルアルコール:アクリル酸:メタクリル酸メチル(質量比)で、好ましくは約60〜90:7〜38:0.5〜12であり、より好ましくは約80:17.5:2.5である。この質量比は、NMRで測定が可能である。
【0074】
本発明の変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールまたはその誘導体をそれ自体公知の方法で変性処理することにより製造することができる。
特に、変性ポリビニルアルコールとしての上記グラフト共重合体を製造する方法としては、ラジカル重合、例えば溶液重合法、懸濁重合、乳化重合および塊状重合などのそれ自体公知の方法を挙げることができ、各々の通常の重合条件下で実施することができる。この重合反応は、通常、重合開始剤の存在下、必要に応じて還元剤(例えば、エリソルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸)、連鎖移動剤(例えば2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレンダイマー、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ラウリルメルカプタン)あるいは分散剤(例えばソルビタンエステル、ラウリルアルコールなどの界面活性剤)等の存在下、水、有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、セロソルブ、カルビトール)あるいはそれらの混合物中で実施される。また、未反応の単量体の除去方法、乾燥、粉砕方法等も公知の方法でよく、特に制限はない。
【0075】
重合開始剤としては、当該分野で用いられているものを使用することができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物、過酢酸やターシャリ−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート等の有機過酸化物、あるいは2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0076】
重合開始剤の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部程度であり、0.5〜3.0質量部であることがより好ましい。
【0077】
また、本発明において、バインダー樹脂として上述した変性ポリビニルアルコールを含む屈折率層(高屈折率層または低屈折率層)は、硬化剤を含んでもよい。かような硬化剤としては、ホウ酸およびその塩やホウ砂、エポキシ系硬化剤などが好ましい。
【0078】
(その他のバインダー樹脂)
本発明で用いることのできる、変性ポリビニルアルコール以外のバインダー樹脂としては、金属酸化物粒子を含有した高屈折率層および低屈折率層が塗膜を形成することができればどのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
【0079】
本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層および低屈折率層が、セルロース類、増粘多糖類及び反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子を含有することが好ましい。本発明でいう水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものをいう。
【0080】
〈セルロース類〉
本発明で用いることのできるセルロース類としては、水溶性のセルロース誘導体が好ましく用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体や、カルボン酸基含有セルロース類であるカルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、カルボキシエチルセルロース等を挙げることができる。その他には、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、セルロース硫酸エステル等のセルロース誘導体を挙げることができる。
【0081】
〈増粘多糖類〉
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0082】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類であり、さらに金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0083】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0084】
本発明においては、さらには、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0085】
〈反応性官能基を有するポリマー類〉
本発明に適用可能な水溶性高分子としては、反応性官能基を有するポリマー類が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類(変性されていないもの)、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール(変性されていないもの)、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0086】
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。さらには、3,000以上40,000以下がより好ましい。
【0087】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。なお、ポリビニルアルコールとしては、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。また、本発明においては、バインダー樹脂として反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸およびその塩やホウ砂、エポキシ系硬化剤などが好ましい。
【0088】
(溶剤系バインダー樹脂)
本発明に用いられる溶剤系バインダー樹脂としては、光硬化型や電子線硬化型、熱硬化型のアクリル、エポキシ、シリコーン、ウレタン、フッ素樹脂等が好ましい。
【0089】
本発明において、バインダー樹脂は、高屈折率層および低屈折率層のそれぞれの層に含まれるが、各屈折率層におけるバインダー樹脂の含有量は、屈折率層の全質量100質量%に対し、5.0質量%以上、50質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。バインダー樹脂が少ないと、屈折率層を塗工した後の乾燥時に、膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0090】
また、バインダー樹脂として上述した変性ポリビニルアルコールを含む高屈折率層および/または低屈折率層における、当該変性ポリビニルアルコールの含有割合は、バインダー樹脂の全質量100質量%に対して、好ましくは5〜45質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは25〜35質量%である。この含有割合が5質量%以上であれば、高い塗膜強度が得られるという利点がある。一方、この含有割合が45質量%以下であれば、高い可視光透過率を得られるという利点がある。
【0091】
〔その他の添加剤〕
高屈折率層および低屈折率層には、必要に応じて各種添加剤を用いることができる。その一例を以下に記載する。
【0092】
(等電点が6.5以下のアミノ酸)
高屈折率層または低屈折率層は、等電点が6.5以下のアミノ酸を含有していてもよい。アミノ酸を含むことにより、高屈折率層または低屈折率層中の金属酸化物粒子の分散性が向上しうる。
【0093】
ここでアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基とを有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体でも使用することができる。
【0094】
アミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0095】
具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、等を挙げることができ、特にグリシン、セリンが好ましい。
【0096】
アミノ酸の等電点とは、アミノ酸は特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるので、このpH値をいう。各アミノ酸の等電点については、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることが出来る。
【0097】
(エマルジョン樹脂)
高屈折率層または低屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
【0098】
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0099】
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0100】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0101】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0102】
(その他の添加剤)
その他にも、高屈折率層または低屈折率層は、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0103】
赤外遮蔽フィルムは、基材の下または基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
【0104】
[赤外遮蔽フィルムの製造方法]
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法について特に制限はなく、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられうる。
【0105】
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法では、基材上に高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを積層して形成されるが、具体的には高屈折率層と低屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。
【0106】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0107】
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。
【0108】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
【0109】
高屈折率層塗布液中の樹脂バインダーの濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
【0110】
低屈折率層塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
【0111】
本発明においては、高屈折率層または低屈折率層の少なくとも1層を形成するための塗布液に変性ポリビニルアルコールが含まれるが、その好ましい添加量は、最終的に形成される高屈折率層または低屈折率層における含有量を考慮して、上述した樹脂バインダーの濃度のなかで適宜調整すればよい。
【0112】
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、金属酸化物粒子、樹脂バインダー(変性ポリビニルアルコールを含むことがある)、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
【0113】
本発明においては、体積平均粒径が100nm以下のルチル型の酸化チタンを添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。このとき、ルチル型の酸化チタンとしては、pHが1.0以上、3.0以下で、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルとして、高屈折率層塗布液に添加して調製することが好ましい。
【0114】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0115】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0116】
塗布および乾燥方法としては、高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0117】
〔赤外遮蔽体〕
本発明により提供される赤外遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外遮蔽効果を付与する赤外遮蔽フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0118】
特に、本発明に係る赤外遮蔽フィルムが直接または接着剤を介してガラスまたはガラス代替の樹脂などの基体に貼合されている部材に好適である。
【0119】
すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体をも提供する。
【0120】
前記基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
【0121】
赤外遮蔽フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、赤外遮蔽フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。本発明に係る赤外遮蔽フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0122】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0123】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0124】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【0125】
赤外遮蔽フィルムまたは赤外遮蔽体の断熱性能、日射熱遮へい性能は、一般的にJIS R 3209(複層ガラス)、JIS R 3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
【0126】
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0128】
実施例1
《赤外遮蔽フィルムの作製》
[赤外遮蔽フィルム試料101の作製]
(低屈折率層用塗布液L1の調製)
ポリ塩化アルミニウム(多木化学製;タキバイン#1500)の23.5質量%水溶液9.18部と、コロイダルシリカ(日産化学社製;スノーテックスOUP)の15質量%水溶液340部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液103.4部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液4.75部を混合した後、高圧ホモジナイザー分散機を用いて分散した。分散後、純水で1000部に仕上げて、酸化ケイ素分散液L1を調製した。
【0129】
次いで、上記分散液1を45℃に加熱し、純水100部、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液400部を撹拌しながら添加した後、カチオン性界面活性剤であるとして、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤(日油製ニッサンカチオン−2−DB−500E)の5質量%水溶液を0.50部添加し、低屈折率層用塗布液L1を調製した。
【0130】
(高屈折率層用塗布液H1の調製)
体積平均粒径35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル水系分散液28.9部と、ピコリン酸の14.8質量%水溶液5.41部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液3.92部とを混合した後、高圧ホモジナイザー分散機を用いて分散し、酸化チタン分散液H1を調製した。
【0131】
次いで、純水10.3部に、増粘多糖類タマリンドシードガムの1.0質量%水溶液130部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%水溶液10.3部と、ピコリン酸の14.8質量%水溶液17.3部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液2.58部とを順次、混合しながら添加した後、酸化チタン分散液H1を38.2部混合しながら添加した。更に4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤(日油製ニッサンカチオン−2−DB−500E)の5質量%水溶液を0.050部添加し、最後に純水で223部に仕上げて、高屈折率層用塗布液H1を調製した。
【0132】
(試料101の作製)
9層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、前記の低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、それぞれ交互に8層ずつ、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層150nmになるように計9層の同時重層塗布を行った。
【0133】
塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットさせた。このとき、表面を指でふれても指に何もつかなくなるまでの時間(セット時間)は5分であった。
【0134】
セット完了後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、9層からなる重層塗布品を作製した。
【0135】
上記9層重層塗布品の上に、さらに9層重層塗布を2回行い、計27層からなる試料101を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料102の作製]
(低屈折率層用塗布液L2の調製)
上記試料101の作製に用いた低屈折率層塗布液L1の調製において、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液400部をポリビニルアルコール水溶液(PVA235、クラレ社製)の4.0質量%水溶液400部に代えた以外は同様にして、低屈折率層用塗布液L2を調製した。
【0136】
(試料102の作製)
上記試料101の作製において、低屈折率層用塗布液L1の代わりに低屈折率層用塗布液L2を用いた以外は同様にして、試料102を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料103の作製]
(変性ポリビニルアルコールHPVA1の調製)
冷却還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管および攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにPVA(重合度1700、ケン化度88%)175.8g、イオン交換水582.3gを仕込み常温で分散させた後95℃で完全溶解させた。次いでアクリル酸5.4g、メチルメタクリレート37.3gを添加し、窒素置換後50℃まで昇温した後、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド8.5g、エリソルビン酸ナトリウム8.5gを添加し、4時間で反応を終了し、変性ポリビニルアルコールHPVA1を得た。得られた変性ポリビニルアルコールHPVA1を乾燥・粉砕した後、4.0質量%水溶液とした。
【0137】
(低屈折率層用塗布液L3の調製)
上記試料101の作製に用いた低屈折率層塗布液L2の調製において、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液400部の代わりに、ポリビニルアルコール水溶液(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液280部、および、変性ポリビニルアルコールHPVA1の4.0質量%水溶液120部に代えた以外は同様にして、低屈折率層用塗布液L3を調製した。
【0138】
(試料103の作製方法)
上記試料101の作製において、低屈折率層用塗布液L1の代わりに低屈折率層用塗布液L3を用いた以外は同様にして、試料103を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料104の作製]
試料103の低屈折率層用塗布液L3の調製において、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液280部の代わりにポリビニルアルコール(PVA235、クラレ社製)の4.0質量%水溶液280部を用いた以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム試料104を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料105〜106の作製]
表1に示すように、試料103の作製において、変性ポリビニルアルコール水溶液を用いた低屈折率層用塗布液を適用する層を変更した以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム試料105〜106を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料107〜108の作製]
表1に示すように、上記試料103の作製に用いた低屈折率層塗布液L3の調製において、ポリビニルアルコール水溶液(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液280部、および、変性ポリビニルアルコールHPVA1の4.0質量%水溶液120部の代わりに、ポリビニルアルコール水溶液(PVA217、クラレ社製)の4.0質量%水溶液200部、および、変性ポリビニルアルコールHPVA1の4.0質量%水溶液200部に代えた(試料107)、あるいは、変性ポリビニルアルコールHPVA1の4.0質量%水溶液400部に代えた(試料108)以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム試料107〜108を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料109〜112の作製]
表1に示すように、変性ポリビニルアルコールHPVA1の合成において、合成原料となるポリビニルアルコールの重合度を変化させて変性ポリビニルアルコールHPVA2〜HPVA6を合成した。
【0139】
次いで、試料103の作製において、変性ポリビニルアルコールHPVA1の代わりにHPVA2〜HPVA6用いた以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム試料109〜112を作製した。
[赤外遮蔽フィルム試料113〜114の作製]
表1に示すように、試料103の作製において、低屈折率層用塗布液L3の調製に用いる変性ポリビニルアルコールHPVA1の4.0質量%水溶液の代わりに、カチオン化変性PVA(日本合成化学製;K−210)、親水基変性PVA(日本合成化学製;エコマティWO−320R)の4.0質量%水溶液をそれぞれ用いた以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム試料113〜114を作製した。
【0140】
【表1】

【0141】
《赤外遮蔽フィルムの評価》
上記で作製した各赤外遮蔽フィルムについて、下記の性能評価を行った。
【0142】
(各層の単膜屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層および低屈折率層の屈折率を求めた。
【0143】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
【0144】
上記方法に従って各層の屈折率を測定した結果、高屈折率層、低屈折率層の屈折率差は、いずれも0.1以上であることを確認した。
(可視光透過率及び近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、赤外遮蔽フィルム試料101〜114の300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、赤外透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。
【0145】
(温湿度変化耐久性評価)
赤外遮蔽フィルム試料101〜114を40℃80%の高温高湿環境下に4時間おいて、その後2時間かけて20℃50%の環境に変化させ、その状態で4時間放置し、さらに2時間かけて40℃80%の状態に戻すことを1サイクルとして、これを合計6サイクルの温湿度変化耐久性試験を行った後に、再び上記と同様に可視光透過率と赤外透過率を求めた。
【0146】
さらに、前記温湿度変化耐久性試験を行った各赤外遮蔽フィルム試料をJIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(井元製作所社製、型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm)を用いて、30回の屈曲試験を行った後、赤外遮蔽フィルム表面を、目視観察し、下記の基準に従って塗膜強度を評価した。
【0147】
5:赤外遮蔽フィルム表面に、折り曲げ跡やひび割れは観察されない
4:赤外遮蔽フィルム表面に、わずかに折り曲げ跡が観察される
3:赤外遮蔽フィルム表面に、僅かに凹凸部分が観察される
2:赤外遮蔽フィルム表面に、微小なひび割れが僅かに観察される
1:赤外遮蔽フィルム表面に、明らかなひび割れが多数発生している
以上について結果を表2に示す。
【0148】
【表2】

【0149】
表2に示す結果から、本発明の赤外遮蔽フィルム試料は温湿度変化を繰り返した後でも、可視光透過率が高く、赤外透過率が低く、さらに塗膜強度も高いことがわかる。
【0150】
実施例2
《赤外遮蔽フィルムの作製》
[赤外遮蔽フィルム試料201〜202の作製]
実施例1の試料103の作製において、高屈折率層用塗布液H1を調液する際のポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%水溶液10.3部の代わりに、下記の表3に示すように、変性ポリビニルアルコールHPVA1、HPVA2の5.0質量%水溶液10.3部をそれぞれ用いた以外は同様にして、試料201、202を作製した。
【0151】
【表3】

【0152】
《赤外遮蔽フィルムの評価》
次いで、上記で作製した赤外遮蔽フィルム試料201〜202について、実施例1に記載の方法と同様にして、可視光透過性、近赤外透過性および耐久性の評価を行った。その結果、いずれも実施例1に記載の試料103と同様の効果が得られることが確認された。
【0153】
実施例3
《赤外遮蔽体の作製》
[赤外遮蔽体301〜306の作製]
実施例1で作製した試料103〜108の赤外遮蔽フィルムを、厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、それぞれアクリル接着剤で接着して、赤外遮蔽体301〜306を作製した。
《赤外遮蔽体の評価》
上記で作製した本発明の赤外遮蔽体301〜306は、赤外遮蔽体のサイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の赤外遮蔽フィルムを利用することで、優れた赤外遮蔽性を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、
バインダー樹脂および金属酸化物粒子を含む高屈折率層および低屈折率層からなるユニットを少なくとも1つ有し、
前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差は0.1以上であり、
前記高屈折率層または前記低屈折率層の少なくとも1層が、前記バインダー樹脂として変性ポリビニルアルコールを含む、赤外遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記変性ポリビニルアルコールが、(1)平均重合度200以上2400以下のポリビニルアルコールと、(2)不飽和カルボン酸並びにその塩およびエステルからなる群から選択される1種または2種以上の重合性ビニル単量体と、を0.5:9.5〜9.5:0.5の質量比で共重合させて得られる共重合体である、請求項1に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項3】
前記重合性ビニル重合体が、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの塩、並びに、下記一般式(I):
【化1】

式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す、
で表される不飽和カルボン酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記重合性ビニル単量体が、アクリル酸もしくはその塩および/またはメチルメタクリレートである、請求項3に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項5】
前記重合性ビニル単量体が、アクリル酸またはその塩とメチルメタクリレートとの混合物であり、アクリル酸またはその塩とメチルメタクリレートとの重量比が3:7〜0.5:9.5(アクリル酸またはその塩:メチルメタクリレート)である、請求項4に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項6】
前記変性ポリビニルアルコールの含有割合が、前記バインダー樹脂に対して5〜45質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項7】
前記高屈折率層または前記低屈折率層の少なくとも1層がホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項8】
前記高屈折率層がルチル型のチタニアを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体。

【公開番号】特開2012−252148(P2012−252148A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124487(P2011−124487)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】