説明

赤色化防止フィルム

【課題】無機EL素子の発光面に白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を置いて使用する場合に、発光時及び非発光時共に画像の白地及び画像の絵柄の赤色化を防止できる赤色化防止フィルム、及びこの赤色化防止フィルムを用いた無機EL素子並びに表示方法を提供すること。
【解決手段】樹脂中に少なくとも金属酸化物粒子を含有する赤色化防止層を有し、かつ無機EL素子の発光面上に用いられることを特徴とする赤色化防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色散乱層を有する画像形成材料のバックライト光源、及び照明用途に無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を使用する際の該画像形成材料の画像赤色化を防止するフィルムそれを用いた無機EL素子並びに表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機EL素子(特に白色無機EL素子)は、液晶パネル、画像担持体(例えば、フィルムにサインやディスプレイ画像を描いたもの)のバックライト光源、あるいは照明用に使用されている。
特開平11−214158号公報(特許文献1)には、主として液晶パネルのバックライト用途としての無機EL素子を開示している。この無機EL素子は、フィルムと青緑系の色を白く見せる為にピンク系(赤色と類似)顔料を添加した発光層を重ねた構造で、無機EL素子の非発光時は発光面がピンク系の色に見えてしまう欠点を改善したものである。この欠点を改善するためにフィルム発光面に特定組成の光半透過散乱層を設けることにより、無機EL素子の非発光時にも発光面が白く見えるように工夫されている。
ところで、外光(例えば、太陽光)が無い場合は無機EL素子により後方から照らして表示し、外光が有る場合は該後方から照らさず外光で表示する為に、白色散乱層を有する画像形成材料(例えば、サインもしくはディスプレイ画像用のフィルム)の画像担持体が使用されている。
上記特許文献1に記載の無機EL素子を用いて上記画像形成材料のバックライト光源として用いると無機EL素子の発光時に画像が赤く見えるという問題が生じた。また、発光時の画像形成材料の透過率が55〜80%と低いという問題があった。
一方、特開2006−156339号公報(特許文献2)には、発光時の白色度(グレー色度)を向上させた、演色性(特に赤色の)に優れた無機EL素子が開示され、写真のディスプレイにその発光面に使用しても画像品質が損なわれなくなった。
ところが、白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を無機EL素子の発光面に置いて使用すると、非発光時は無機EL素子が赤色なので、白色散乱層を有する画像形成材料を重ねると、画像の白地が赤くなり、画像の絵柄にも赤味が加わる問題が生じた。
また、無機EL素子の発光時も、白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を重ねると、赤色の色素層の効果が大きくなり画像の白地が赤くなり、画像の絵柄にも赤味が加わってしまう問題も生じた。
この特許文献2に開示の無機EL素子は、生地が透明な画像形成材料の画像担持体を使用時には、上記の赤味が加わるという問題は生じないが、常時発光させなければならないので、エネルギーが無駄に消費されるという問題も生じた。
【0003】
【特許文献1】特開平11−214158号公報
【特許文献2】特開2006−156339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、無機EL素子の発光面に白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を置いて使用する場合に、発光時及び非発光時共に画像の白地及び画像の絵柄の赤色化を防止できる赤色化防止フィルム、及びこの赤色化防止フィルムを用いた無機EL素子並びに表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
1)樹脂中に少なくとも金属酸化物粒子を含有する赤色化防止層を有し、かつ無機EL素子の発光面上に用いられることを特徴とする赤色化防止フィルム。
2)前記金属酸化物粒子中に、酸化インジウム、酸化錫、及び酸化亜鉛のなかから選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする上記1)に記載の赤色化防止フィルム。
3)前記金属酸化物粒子は、錫をドープした酸化インジウム(ITO)粒子であることを特徴とする上記2)に記載の赤色化防止フィルム。
4)前記ITO粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする上記3)に記載の赤色化防止フィルム。
5)前記ITO粒子の平均粒径が50nm以下であることを特徴とする上記3)に記載の赤色化防止フィルム。
6)前記ITO粒子の平均粒径が25nm以上35nm以下であることを特徴とする上記3)に記載の赤色化防止フィルム。
7)上記1)に記載の赤色化防止フィルムを無機EL素子の発光面上に担持させたことを特徴とする無機EL素子。
8)上記1)に記載の赤色化防止フィルム及び白色散乱層を有する画像形成材料を無機EL素子の発光面上に担持させたことを特徴とする無機EL素子。
9)無機EL素子の発光面上に上記1)に記載の赤色化防止フィルム及び白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示することを特徴とする表示方法。
10)無機EL素子の発光面上に上記1)に記載の赤色化防止フィルム並びに白色散乱層を有する画像形成材料及び透明ベースの画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示することを特徴とする表示方法。
11)上記7)に記載の無機EL素子の発光面上に担持させた赤色化防止フィルム上に白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示することを特徴とする表示方法。
12)上記8)に記載の無機EL素子の発光面上に担持させた赤色化防止フィルム及び白色散乱層を有する画像形成材料上に透明ベースの画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示することを特徴とする表示方法。
【発明の効果】
【0006】
白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体のバックライトとして白色光を出す無機EL素子(特に白色無機EL素子)を使用し、無機ELの発光時と非発光時の両方の場合に、表示画像に赤色が加わり、画像の白地が赤くなり、画像の絵柄にも赤味が加わってしまう問題を、赤色化防止フィルムを無機EL素子の発光面に用いることにより問題ない実用レベルまでに赤味を軽減させることが可能である。また、外光がある場合は、無機EL素子の発光は不要なので、長寿命化、省力性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の赤色化防止フィルムは、樹脂中に少なくとも金属酸化物粒子を含有する赤色化防止層を有する。この赤色化防止フィルムは、赤色化防止層のみであってもよいが、通常、透明ベース上に設けられる。
本発明の赤色化防止フィルムを用いた無機EL素子は、赤色化防止フィルムを無機EL素子の発光面上に担持させたもの(無機EL素子Aともいう)の他、赤色化防止フィルム及び白色散乱層を有する画像形成材料を無機EL素子の発光面上に担持させたもの(無機EL素子Bともいう)がある。後者の場合、積層順は発光面、赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料の順が好ましいが、発光面、白色散乱層を有する画像形成材料、赤色化防止フィルムの順でもよい。
本発明の無機EL素子Aにおいて、赤色化防止フィルムは組成の同じまたは異なる複数個を積層して用いることもできる。同様に無機EL素子Bにおいても、赤色化防止フィルム及び/又は白色散乱層を有する画像形成材料は一方または両方の組成の同じまたは異なる複数個を積層あるいは非積層状態で用いることもできる。
【0008】
本発明のの赤色化防止フィルムを用いた表示方法には、(1)無機EL素子の発光面上に赤色化防止フィルム及び白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を担持し、無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示する表示方法、(2)無機EL素子の発光面上に赤色化防止フィルム及び白色散乱層を有する画像形成材料並びに透明ベースの画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示する表示方法、(3)無機EL素子Aの赤色化防止フィルム上に白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示する表示方法、並びに(4)前記無機EL素子Bの白色散乱層を有する画像形成材料上に透明ベースの画像担持体を担持し、前記無機EL素子の発光または外光により前記画像担持体の画像を表示する表示方法がある。
上記(1)において、積層順は発光面、赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体の順が好ましいが、発光面、白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体、赤色化防止フィルムの順でもよい。上記(2)において、積層順は発光面、赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料、透明ベースの画像担持体の順が好ましいが、これら赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料、及び透明ベースの画像担持体の3者はこれ以外の任意の積層順が許容される。
上記(1)において、赤色化防止フィルムは組成の同じまたは異なる複数個を積層して用いることもできる。同様に上記(2)においても、赤色化防止フィルム及び/又は白色散乱層を有する画像形成材料は一方または両方の組成の同じまたは異なる複数個を積層あるいは非積層状態で用いることもできる。
【0009】
本発明において、「担持」とは接着、接着でない物理的な単なる固定(以下、固定ともいう)を含む。例えば、赤色化防止フィルム及び/又は白色散乱層を有する画像形成材料を発光面上に接着させ、その上に白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体及び/又は透明ベースの画像担持体を固定する態様であっても、赤色化防止フィルム及び/又は白色散乱層を有する画像形成材料を発光面上に固定させ、その上に画像形成材料の画像担持体及び/又は透明ベースの画像担持体を固定する態様であってもよい。本発明の赤色化防止フィルムを用いた無機EL素子AまたはBは、赤色化防止フィルム及び/又は白色散乱層を有する画像形成材料の接着、固定)を含む(図1参照)。
上記接着のための接着剤としては、透明樹脂等の公知の接着剤が適用できる。また、赤色化防止フィルムとして赤色化防止層のみを直接発光面に塗布、接着させることもできる。
画像担持体の表示面が特に垂直方向の場合等、赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料、各画像担持体等の固定が必要な場合は、そのための固定用部材(枠体、挟持可能な弾性体等)は適宜公知手段から選定される。
本発明において、無機EL素子の発光面とは、無機EL素子の発光時にその光が視認される無機EL素子の最外表面を意味し、通常、透明ベース表面である。
本発明において、白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体とは、白色散乱層を有する画像形成材料及びそれに描かれた画像からなるものを意味する。また、本発明において、透明ベースの画像担持体とは、透明ベース及びそれに描かれた画像からなるものを意味する。
【0010】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
赤色化防止フイルムは、赤色を他の可視光より多く吸収することが好ましい。すなわち、赤色以外(青〜黄緑:波長400〜550nm、好ましくは360〜580nm)の平均透過率が赤色(波長550〜780nm、好ましくは580〜780nm)の透過率より1%以上大きいことが好ましく、前記赤色以外(青〜黄緑)の平均透過率が赤色の透過率より2%以上であることが更に好ましく、5%以上大きいのが更に好ましい。
問題を起こす上記5%以上の上限は特に無いものと考えられるが、あまりシャープに赤色(550〜780nm)が吸収されると画像の550nm付近の色の演色性が低下する傾向があると考えられ、赤色化防止フィルムの可視光領域での吸収スペクトルは、望ましいのはピークが無く、360〜580nmまでは吸収せず(透過率100%)、580〜780nmは1〜5%吸収されるのが良い。
又、赤色化防止フイルムは、可視光(波長360〜780nm)の平均透過率が50%以上であることが好ましく、75%以上であることが更に好ましい。上限は理想値の100%である。赤色化防止フィルムの上記吸収スペクトル特性は、赤色化防止層による寄与が主体となることが好ましく、中でも金属酸化物粒子の寄与が主体となることが好ましい。また、樹脂としては上記吸収スペクトル特性に寄与しないか、悪影響を与えないものが好ましい。
本発明の赤色化防止フイルムは、例えば、以下のように作成される。
ベースフイルムの表面に、金属酸化物粒子(例えば、ITO粉末)及び樹脂よりなる赤色化防止層が積層されるものであるが、実用的な層構成の好ましい態様は、次の如くである。すなわち、ベースフィルムの表面に赤色化防止層を積層し、さらにその表面にハードコート層を積層する。さらにベースフィルムの裏面に粘着層を積層し、さらに粘着層の裏面にセパレート材を積層していてもよい。赤色化防止層は、組成の異なる複層で構成されてもよい。
【0011】
赤色化防止フィルムのベースフイルムとしては、公知の透明なフィルムを使用することができる。その具体例としては、PET、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリアリレート、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セロファン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等の各種樹脂フィルム等を好適に使用することができる
【0012】
赤色化防止フィルムに用いる金属酸化物粒子としては、上記吸収スペクトル特性に寄与するものであれば、制限はないが、酸化インジウム、酸化錫、及び酸化亜鉛のなかから選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。中でもITOを用いることが好ましい。
【0013】
本発明の赤色化防止層に混合・分散されるITO粉末は、透明性および分散性の観点から、その平均粒径が、100nm以下のものが好適である。一般的に特定の金属酸化物の微粉末の最大粒子径が100nmを超える場合には、形成される分散型膜それ自体の可視光線域の光線透過率が光散乱により低下するため、得られる赤色化防止フイルムは、可視光線域の全光線透過率が低いものとなり、さらには散乱が多いため、赤味を抑制する効果を阻害する傾向がある。一方、特定の金属酸化物が粒子径1nm未満のものを含有する場合には、微粉末が凝集しやすくなり、当該金属酸化物の粒子を合成樹脂中に均一に分散させることが困難になり、また微粉末自体の製造も非常に困難である。このような観点から、ITO粉末の好ましい粒子径としては50nm以下、最も好ましくは25〜35nmが最適である。
ITOの平均粒径が小さいと、散乱が抑制されるため、可視光の光透過率が高くなる。またITOは赤外光領域の波長を吸収することが一般的に知られているが、その吸収の短波長側は可視光の中でも赤色光領域(650nm付近)にかかることから、赤色の可視光領域よりも赤色以外の可視光領域の光透過率が高くなる。このような現象は、赤色以外の可視光領域の透過率が高いほど顕著であるため、ITO平均粒径を小さくすることが重要である。特に本発明のように赤色以外の平均透過率が赤色の透過率よりも1%以上高いことを実現するにはITOの平均粒径ができるだけ小さいほど好ましい。しかし上記のように透明性と分散性を両立させるという観点から、25〜35nmが最適である。
ITO粉末は、一般周知の製法、すなわち、Inと少量のSnの水溶塩を含む水溶液をアルカリと反応させてInとSnの水酸化物を共沈させ、この共沈物を原料として得た後、この原料を、CO、NH、H等の還元性雰囲気中で加熱焼成して酸化物に変換させたものが用いられる。この場合のITO粉末は、原料を還元性雰囲気中で加熱焼成しており、その成分モル比としてはIn/Sn/Oが100/5〜10/0.5〜10、好ましくは100/5〜10/0.5〜2である。このように還元処理されたITO粉末は、青色を呈している。
【0014】
本発明における赤色化防止層に用いられる樹脂は、高透明性を有するものであって、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の紫外線硬化型樹脂、もしくはメラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、シリコン変成樹脂等の熱硬化型樹脂、さらには、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系の熱可塑性樹脂等の、一般的な塗膜形成用の樹脂が適宜に選択され用いられる。特に紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂の中でもアクリル系化合物またはエポキシ系化合物のうちの1種類以上を含有するモノマーに、光カチオン重合開始剤を含有したものが好ましく用いられる。具体的なエポキシ系化合物としては、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリル酸付加物等のエポキシエステル等が挙げられる。アクリル系化合物を含有させることは、紫外線硬化型樹脂の粘度、架橋密度、耐熱性、耐薬品性等の塗料および塗工膜の特性をコントロールする上で好ましい。
赤色化防止層用塗料を構成する金属酸化物粒子と樹脂(好ましくは、光カチオン重合開始剤を含有する紫外線硬化型樹脂)との配合比は、金属酸化物粒子/樹脂が、質量比で90/10〜60/40、好ましくは85/15〜65/35、さらに好ましくは80/20〜70/30の場合に1μm程度の薄層でも良好な吸収スペクトル特性が得られ、高い透明性を有し、かつ曇りの少ないフィルムを得ることができる。金属酸化物粒子の混合比が90質量%超の場合には、金属酸化物粒子によって着色されたり曇りの度合いが高くなったりするとともに金属光沢が増し、赤色化防止層の剥離や凝集破壊を招き、さらにベースフィルムとの密着性に劣る。また、金属酸化物粒子の混合比が60質量%未満の場合には、目的とする吸収スペクトル特性の達成が困難な場合があり、金属酸化物粒子の粒子と樹脂との屈折率の差によりHAZE値が高くなる傾向がある。
【0015】
次に白色散乱層を有する画像形成材料について説明する。
白色散乱層を有する画像形成材料の構成は、少なくとも1層の白色散乱層からなる。白色散乱層を有する画像形成材料は、好ましくは支持体(好ましくは透明度の高いもの)上に白色散乱層を有する構成である。支持体上に白色散乱層を設けた画像形成材料に画像を形成する場合は、白色散乱層上に形成しても、白色散乱層とは反対側の支持体上に形成しても、あるいは両面に形成してもよい。
白色散乱層を有する画像形成材料を無機EL素子に接着により固定する場合は、前記赤色化防止フィルムの粘着層、セパレート材を画像形成面とは反対側に設けることができる。なお、白色散乱層のみを無機EL素子に接着により固定する場合は、白色散乱層塗布液を調製し、これを直接塗布により設けることもできる。
白色散乱層を有する画像形成材料に画像を形成する方法としては、印刷(凸版、凹版、平板)、塗料の塗布、インクジェット、レーザー光等を用いた熱転写等を用いた直接的な形成法、銀塩乳剤層を設けた画像形成材料を用いてレーザー光等の光を用いてプリント画像とする方法等が挙げられる。インクジェットを用いて画像とした白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体としては、富士フイルムビジネスサプライ社製Photo Art バックライト Fを用いたものが挙げられる。レーザー光を用いてプリント画像とした白色散乱層を有する画像形成材料の画像担持体としては、富士フイルム株式会社製FUJI G COLOR FILM PROLASER FTを用いたものが挙げられる。
白色散乱層とは、白色散乱層を有する画像形成材料に形成された画像が外光またはバックライト光源によって容易に視認し得るように光の反射乃至散乱機能を有するものを意味する。
白色散乱層は、少なくとも白色顔料とバインダーから形成されることが好ましい。バインダーとしては、透明樹脂が好ましく、赤色化防止フィルムの樹脂やその他の公知の樹脂が用いられる。白色散乱層を支持体上に設ける場合は、適宜、溶剤を用いて白色顔料をバインダーと共に分散し、塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥する。
上記白色顔料としては、例えばタルク、カオリン、二酸化チタン、シリカ等の無機系白色顔料;ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機系白色顔料が挙げられ、1種及び/又は2種以上混合して使用することができる。
白色散乱層には、白色顔料以外に蛍光増白剤、分散剤等を含有させることもできる。
上記支持体としては、前記した赤色化防止フィルムのベースフイルムと同様の樹脂フィルムを好ましく用いることができる。所望により、紙等も用いることができる。
【0016】
透明ベースの画像担持体の各画像としては、上記白色散乱層を有する画像形成材料への画像形成法が適用される。透明ベースとしては、上記白色散乱層を有する画像形成材料の支持体と同様のものが好ましい。レーザー光を用いて写真プリント画像とした透明ベースの画像担持体としては、富士フイルム株式会社製FUJI G COLOR FILM PROLASER FCを用いたものが挙げられる。
【0017】
本発明の赤色化防止フィルムを発光面上に担持させるために用いられる無機EL素子としては、本願の課題を生じる構造の無機EL素子であれば特に制限されず、従って、特許文献1及び2等に記載のものに制限されない。具体的には、ピンク系顔料、波長変換材料を含む無機EL素子であれば任意のものが用いられるが、特許文献2に記載の無機EL素子が好適である。ピンク系顔料としては、ローダミンB等のキサンテン系色素が挙げられ、また、波長変換材料としては特許文献2の段落[0031]に記載の波長変換材料が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(測定基準1)「発光面上に何も重ねない白色光を発する無機EL素子」
白色光を発する無機EL素子(特開2006−156339号公報の[実施例1](実施例3)によって作成)について、発光面に何も貼付しない状態とし、白色光の基準とした。また、輝度は280cd/mに設定した。
【0020】
(比較例1)「発光面に白色散乱層を有する画像形成材料を重ねた無機EL素子」
測定基準1の無機EL素子の発光面に、白色散乱層を有する画像形成材料(富士フイルムビジネスサプライ社製Photo Art バックライト F 薄手)1枚を重ねた無機EL素子を作成した。発光時の色調は、目視観察で比較例1に対して赤味を帯び、実用上許容されなかった。また、非発光時についても目視でピンク色が目立ち、実用上許容されなかった。
【0021】
(本発明例1)「比較例1に赤味対策を施した無機EL素子(1)」
測定基準1の発光面に、以下により作製された本発明の赤色化防止フィルムを1枚重ね、その上から白色散乱層を有する画像形成材料(比較例1で使用したものと同一)1枚を重ねた無機EL素子を作成した(図1参照)。発光時の色調は、目視観察で比較例1に比べて赤味が軽減しており対策効果は確認された。輝度については167cd/mであり目視確認にて実用上許容された。また、非発光時の色調については、比較例1に比べてピンク色が目立たなくなった。用いた赤色化防止フィルムの吸収スペクトルを図2に示す。
赤色化防止フィルムの作製
(a)赤色化防止層用塗料の調製
■ITO粉末 65部
平均粒径:約30nm
成分モル比:In/Sn/O2=100/5/0.9
■紫外線硬化型樹脂(モノマー)
(1)アクリル系化合物(ジペンタエリスリトールポリアクリレート) 8部
(2)エポキシ系化合物(商品名:セキサイト2021、ダイセル化学社製) 8部
■光カチオン重合開始剤(下記の化学式からなる化合物) 1部
【0022】
【化1】

【0023】
■溶剤:メチルエチルケトン 18部
以上の材料を、ペイントシェーカーによりアクリルビーズを用いて10時間混合・分散させて赤色化防止層用塗料を調製した。
(b)ベースフィルムとして厚さ50μmの高透明性PETフィルム(ICI社製:メリメックス#707)を用い、このPETフィルムの表面に、アクリルビーズを除去した上記塗料をアプリケータで塗布し、100℃で乾燥後、120Wで紫外線照射して硬化させ、厚さ1μmの赤色化防止層を形成した。次に、赤色化防止層の表面に、ハードコート剤としてエポキシ系−アクリル系混合タイプの紫外線硬化型樹脂(旭電化工業社製:KR−566)をアプリケータで塗布後、120Wで紫外線照射して硬化させ、厚さ2μmのハードコート層を形成した。また、ベースフィルムの裏面に、アクリル系粘着剤(一方社油脂工業社製、商品名:AS−6000)100部、硬化剤(ポリイソシアネート)1部、溶剤(トルエン/酢酸エチル/ブタノール=5/4/1の割合)20部を混合させた粘着剤をアプリケータで塗布し、厚さ20μmの粘着層を形成した。以上により、赤色化防止フィルムを得た。このフィルムの層構成は、図5である。
【0024】
(本発明例2)「比較例1に赤味対策を施した無機EL素子(2)」
測定基準1の発光面に赤色化防止フィルム(本発明1で使用したものと同一)を2枚を重ね、その上から白色散乱層を有する画像形成材料(比較例1で使用したものと同一)1枚を重ねた無機EL素子を作成した。発光時の色調は、目視観察でほぼ白色であり、赤味が対策され実用上許容された。輝度については145cd/mであり、本発明例1に比べて低下したものの目視確認にて実用上許容された。なお、無機EL素子の発光を調節し100cd/mまで低下させても実用上許容された。
また、非発光時の色調については、本発明例1に比べてさらにピンク色が目立たなくなり、実用上許容された。
上記得られた無機EL素子の光学特性を以下により評価した。
【0025】
「無機EL素子の発光時の赤味定量化」
無機EL素子の発光時の色調については、無機EL素子における発光粒子層に由来する、波長475nmにピークを持つ青緑色系の光と、波長変換材料に用いられている蛍光顔料に由来する、波長595nmにピークを持つ赤色系の光の比率によって変化する。そこで、発光時の赤味を定量化する為、数値Aを下記式1を持って定義する(図3参照)。
A=b/a ・・・・・・式1
aは発光粒子層による光の極大波長(475nm)における分光放射輝度を示す。bは波長変換材料層による光の極大波長(595nm)における分光放射輝度を示す。
Aの値が測定基準1におけるAの値に近似するに従って、発光時の色調は白色に近似する。また、Aの値が測定基準1のAの値より大きい場合は発光時の色調は赤味を帯び、測定基準1のAの値より小さい場合は発光時の色調は青緑色を帯びる事を示す。
【0026】
「各無機EL素子発光時の赤味・透過率の比較」
測定基準1、比較例1、本発明例1および2におけるAの値、輝度、赤色化防止フィルムの透過率Rおよび目視時の色見を表1に示す。
尚、数値Aを求める際の分光放射輝度および輝度の測定には、トプコン社製分光放射計SR−1型を使用した。また、透過率Rについては、下の式2に基づいて求めた。
R=L(各例)/L(比較例1) …式2
L:EL素子発光時の輝度
【0027】
【表1】

【0028】
本発明例1および2ではAの値が比較例1に対して減少しており、目視観察における発光時の赤味減少が示され、本発明例2でAの値が測定基準1に近似した事でほぼ白色となったことが示された。透過率については、76%に減少しているものの、本発明例1および2で記述したとおりEL素子発光時の目視で実用上許容された。
【0029】
「無機EL非発光時の赤味定量化」
(測定基準2)「黒台紙に白色散乱層を有する画像形成材料を重ねたもの」
黒色の厚紙の表面に白色散乱層を有する画像形成材料(比較例1のもの)を重ね、画像形成材料の裏面から光が入らないようにしたものを、非発光時の赤味定量化のための基準として作成した。
無機EL素子の非発光時の色調については、無機EL素子における波長変換材料に用いられている蛍光顔料に、外光があたった際に発生する波長610nm付近にピークを持つ赤色系の光の分光放射輝度b´と発光粒子層に外光があたった際に発生する波長475nmにピークを持つ青緑色系の光の輝度a´の比率によって変化する(図4参照)。そこで、非発光時の赤味を定量化する為、数値Bを下記式3を持って定義する。
B=b´/a´ ・・・・・・式3
Bの値は赤色系の光の分光放射輝度b´を青緑色系の光の輝度a´で割り算するので、大きくなれば赤味方向、小さくなれば青味方向に変化する。
Bの値が測定基準2におけるBの値に近い時は、非発光時の色調は白色に近づく。また、Bの値が測定基準2のBの値より大きい場合、非発光時の色調は赤味を帯びる事を示す。
【0030】
「各無機EL素子の非発光時の赤味の比較」
測定基準2、比較例1、本発明例1および2におけるBの値、目視時の色見を表2に示す。比較例1、本発明例1および2におけるBの値、目視時の色見の測定は、非発光とした以外は発光時の時と同じ無機EL素子の構成である。
尚、数値Bを求める際の分光放射輝度の測定には、トプコン社製分光放射計SR−1型を使用した。また、外光として東芝製蛍光燈FLR405 N−EDL/M(色評価用ラビットスタート型演色性AAA)を用いた。
【0031】
【表2】

【0032】
本発明例1および2ではBの値が比較例1に対して減少しており、目視観察における非発光時の赤味減少が示され、本発明例2において本発明例1よりもさらに減少し測定基準1の値に近付くことが確認された。また、本発明例2において目視で実用上許容できる白色度となることが確認された。
【0033】
(本発明例3)
本発明例1において、赤色化防止フイルムのITO平均粒径を120nmとした以外は本発明例1と同様にして無機EL素子を作製した。
比較例1と比較とすると赤色化は防止でき、許容レベルではあったが、若干の赤味が残存した。また可視光透過率が低いために全体的に暗かった。
【0034】
(本発明例4)
本発明例1において、赤色化防止フイルムのITO平均粒径を80nmとした以外は本発明例1と同様にして無機EL素子を作製した。
本発明例3と比較すると、ITO平均粒径が小さいので散乱が抑制され、赤色化防止効果があったが、若干赤味を帯びたものの実用上許容されるレベルであった。
【0035】
(本発明例5)
本発明例1において、赤色化防止フイルムのITO平均粒径を40nmとした以外は本発明例1と同様にして無機EL素子を作製した。
本発明例4と比較すると、ITO平均粒径が小さいので散乱が顕著に抑制され、赤色化防止効果があり、透過率も高いので最も明るい画像が得られた。
【0036】
(画像担持体を用いた目視評価)
1)
比較例1と本発明例1において、白色散乱層を有する画像形成材料に変えて白色散乱層を有する画像形成材料に真っ白い服を着た女性の写った画像をインクジェットで印画した画像担持体を用いた。本発明例1は、真っ白い服の発光時の色調は、比較例1に比べて赤味が軽減しており対策効果は確認された。本発明例1は、真っ白い服の輝度については167cd/mであり目視確認にて実用上許容された。また、本発明例1は、非発光時の色調については、比較例1に比べてピンク色が目立たなくなった。
2)
比較例1と本発明例2において、白色散乱層を有する画像形成材料に変えて白色散乱層を有する画像形成材料に真っ白い服を着た女性の写った画像をインクジェットで印画した画像担持体を用いた。本発明例2は、真っ白い服の発光時の色調は、目視観察でほぼ白色であり、赤味が対策され実用上許容された。本発明例2は、真っ白い服の輝度については145cd/mであり、本発明例1に比べて低下したものの目視確認にて実用上許容された。また、本発明例2は、非発光時の色調については、本発明例1に比べてさらにピンク色が目立たなくなり、実用上許容された。
3)
比較例1と本発明例1において、白色散乱層を有する画像形成材料の上に、透明ベースに真っ白い服を着た女性の写った画像をインクジェットで印画した画像担持体を重ねた(積層順は下から、無機EL、赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料、透明ベースの画像担持体となる。)。本発明例1は、真っ白い服の発光時の色調は、比較例1に比べて赤味が軽減しており対策効果は確認された。本発明例1は、真っ白い服の輝度については目視確認にて実用上許容された。また、本発明例1は、非発光時の色調については、比較例1に比べてピンク色が目立たなくなった。
4)
比較例1と本発明例2において、白色散乱層を有する画像形成材料の上に、透明ベースに真っ白い服を着た女性の写った画像をインクジェットで印画した画像担持体を重ねた(積層順は下から、無機EL、赤色化防止フィルム、白色散乱層を有する画像形成材料、透明ベースの画像担持体となる。)。本発明例2は、真っ白い服の発光時の色調は、目視観察でほぼ白色であり、赤味が対策され実用上許容された。本発明例2は、真っ白い服の輝度については、本発明例1に比べて低下したものの目視確認にて実用上許容された。また、本発明例2は、非発光時の色調については、本発明例1に比べてさらにピンク色が目立たなくなり、実用上許容された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の無機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明赤色化防止フィルムの一例の吸収スペクトルである。
【図3】各種の無機EL素子の発光時の分光放射輝度を示す図である。分光放射輝度の単位は10−4・W/(Sr・m・nm)である。
【図4】測定基準1および各種の無機EL素子の非発光時の分光放射輝度を示す図である。分光放射輝度の単位は10−4・W/(Sr・m・nm)である。
【図5】本発明赤色化防止フィルムの層構成例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中に少なくとも金属酸化物粒子を含有する赤色化防止層を有し、かつ無機EL素子の発光面上に用いられることを特徴とする赤色化防止フィルム。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子中に、酸化インジウム、酸化錫、及び酸化亜鉛のなかから選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の赤色化防止フィルム。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子は、錫をドープした酸化インジウム(ITO)粒子であることを特徴とする請求項2に記載の赤色化防止フィルム。
【請求項4】
前記ITO粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の赤色化防止フィルム。
【請求項5】
前記ITO粒子の平均粒径が50nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の赤色化防止フィルム。
【請求項6】
前記ITO粒子の平均粒径が25nm以上35nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の赤色化防止フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−192418(P2008−192418A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24325(P2007−24325)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】