説明

赤色蛍光体、赤色蛍光体の製造方法、白色光源、照明装置、および液晶表示装置

【課題】高効率な赤色蛍光体およびその製造方法を提供すること、この赤色蛍光体を用いることで純白な照明が可能な白色光源および照明装置を提供すること、さらには色再現性の良好な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色蛍光体とその製造方法、さらには赤色蛍光体を用いた白色光源、照明装置、および液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明装置や液晶表示装置のバックライトには、発光ダイオードで構成された白色光源が用いられている。このような白色光源としては、青色発光ダイオード(以下青色LEDと記す)の発光面側に、セリウムを含むイットリウムアルミニウムガーネット(以下YAG:Ceと記す)蛍光体を配置したものが知られている。
【0003】
また、この他にも青色LEDの発光面側に緑色と赤色の硫化物蛍光体を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、青紫色または青色で発光するLEDの発光面側に、CaAlSiN結晶中にMn、Eu等を固溶してなる蛍光物質を、他の蛍光物質と所定割合で組み合わせて配置する構成も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−60747号公報
【特許文献2】特許第3931239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、青色LEDの発光面側にYAG:Ce蛍光体を配置した白色光源では、YAG:Ce蛍光体の発光スペクトルに赤色成分が無いため、青みがかった白色光となり色域が狭い。このため、この白色光源を用いて構成された照明装置では純白色の照明を行うことが困難である。またこの白色光源をバックライトに用いた液晶表示装置では、色再現性の良好な表示を行うことが困難である。
【0006】
また、青色LEDの発光面側に緑色と赤色の硫化物蛍光体を配置した白色光源では、硫化物赤色蛍光体の加水分解があるため、輝度が経時的に劣化する。このため、この白色光源を用いて構成された照明装置および液晶表示装置では、輝度の劣化が防止された品質の高い照明や表示を行うことが困難である。
【0007】
さらに、CaAlSiN結晶中にMn、Eu等を固溶してなる蛍光物質を用いた白色光源では、2種類の蛍光物質を混合して用いる手間があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、高効率な赤色蛍光体およびその製造方法を提供すること、この赤色蛍光体を用いることで純白な照明が可能な白色光源および照明装置を提供すること、さらには色再現性の良好な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者らは、鋭意検討を行った結果、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を含有する赤色蛍光体において、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比が大きい結晶構造を有する場合に、高い量子効率が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す。
【0011】
また、本発明は、アルカリ土類金属元素Aの炭酸化合物、窒化ユーロピウム、窒化シリコン、窒化アルミニウムおよび炭素含有還元剤を混合して混合物とし、上記混合物の焼成と、当該焼成によって得られた焼成物の粉砕とを行い、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含む赤色蛍光体を製造する赤色蛍光体の製造方法であって、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す赤色蛍光体を得る。
【0012】
また、本発明に係る白色光源は、素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、上記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体もしくは黄色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、上記赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す。
【0013】
また、本発明に係る照明装置は、照明基板上に複数の白色光源が配置され、上記白色光源は、素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、上記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体もしくは黄色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物を有し、上記赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す。
【0014】
また、本発明に係る液晶表示装置は、液晶表示パネルと、上記液晶表示パネルを照明する複数の白色光源を用いたバックライトとを有し、上記白色光源は、素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、上記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体もしくは黄色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物を有し、上記赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る赤色蛍光体は、上述した特徴により、赤色波長帯に発光ピーク波長を有し、高効率に赤色を発光することができる。
【0016】
また、本発明に係る白色光源は、高効率な赤色蛍光体を用いているため、この赤色蛍光体による赤色光、緑色蛍光体による緑色光もしくは黄色蛍光体による黄色光、および青色発光ダイオードによる青色光により、色域が広く明るい白色光を得ることができる。
【0017】
また、本発明に係る照明装置は、色域が広くて明るい白色光源を用いているため、輝度の高い純白色の照明を行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る液晶表示装置は、液晶表示パネルを照明するバックライトに色域が広くて明るい白色光源を用いて液晶表示パネルを照明するため、液晶表示パネルの表示画面において輝度の高い純白色を得ることができ、色再現性に優れた画質の高い表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る赤色蛍光体の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施の形態に係る白色光源を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る照明装置を示す概略平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置を示す概略構成図である。
【図5】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図6】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図7】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図8】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図9】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図10】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図11】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図12】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図13】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図14】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図15】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図16】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図17】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。
【図18】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図19】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図20】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図21】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図22】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図23】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図24】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図25】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。
【図26】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図27】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図28】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図29】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図30】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図31】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図32】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図33】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。
【図34】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図35】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図36】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図37】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図38】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図39】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図40】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図41】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図42】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。
【図43】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図44】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図45】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図46】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図47】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図48】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図49】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図50】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。
【図51】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図52】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図53】メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図54】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図55】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図56】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図57】メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。
【図58】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。
【図59】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図60】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。
【図61】赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図62】赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。
【図63】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【図64】赤色蛍光体の励起波長400nmの発光強度を1としたときにおけるPLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルを示す図である。
【図65】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【図66】回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.赤色蛍光体の構成
2.赤色蛍光体の製造方法
3.白色光源の構成例
4.照明装置の構成例
5.液晶表示装置の構成例
6.実施例
【0021】
<1.赤色蛍光体の構成>
本発明の一実施の形態に係る赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す。このような範囲のピーク強度比を示す結晶構造を有することにより、60%を越える外部量子効率を得ることができる。なお、ピーク強度比が異なることは、赤色蛍光体の結晶構造が異なることを意味する。
【0022】
回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピーク強度比をとる、すなわち、回折角が36.0°〜36.6°の位置および回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在する大きなピーク同士を比較することにより、炭素の含有量(メラミンの添加量)の増減にしたがって回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークに対して回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度の増減が大きくなるので、検出感度を向上させることができる。
【0023】
赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
【0024】
【化1】

【0025】
ただし、組成式(1)中、アルカリ土類金属元素Aは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、またはバリウム(Ba)の少なくとも1つである。また、組成式(1)中、m、x、y、z、nは、3<m<5、0<x<1、0<y<2、0<z<1、0<n<10なる関係を満たす。
【0026】
組成式(1)は、シリコンと炭素の合計の原子数比を9に固定して示したものである。また、組成式(1)中の窒素(N)の原子数比[12+y−2(n−m)/3]は、組成式(1)内における各元素の原子数比の和が中性になるように計算されている。すなわち、組成式(1)における窒素(N)の原子数比をδとし、組成式(1)を構成する各元素の電荷が補償されるとした場合、2(m−x)+2x+4×9+3y−2n−3δ=0となる。これにより、窒素(N)の原子数比δ=12+y−2(n−m)/3と算出される。
【0027】
また、組成式(1)で表わされる赤色蛍光体は、斜方晶系空間点群Pmn21に属する結晶構造で構成され、構成元素の一つに炭素(C)を含む。炭素が含まれることによって、生成過程での余剰な酸素(O)を取り除き、酸素量を調整する機能を果たす。
【0028】
また、組成式(1)中、アルカリ土類金属元素Aは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、またはバリウム(Ba)の少なくとも1つを含み、Caの原子数比をα、Srの原子数比をβ、その他の2族元素の原子数比をγとしたとき(m=α+β+γ)、0≦α/(α+β)≦0.3なる関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことにより、量子効率を向上させることができる。カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.3を超えると、高い量子効率を得るのが困難となる。
【0029】
また、組成式(1)中、0<y≦1.0を満たすことが好ましい。アルミニウムの含有量(y)をこのような範囲とすることにより、量子効率を高くすることができる。
【0030】
また、組成式(1)中、0.05≦x≦0.15を満たすことが好ましい。組成式(1)に示す赤色蛍光体は、Eu(ユーロピウム)の濃度(x)によって発光強度のピークが変化するが、このようなEuの濃度(x)の範囲とすることにより、高い量子効率を得ることができる。
【0031】
<2.赤色蛍光体の製造方法>
次に、本発明の一実施の形態に係る赤色蛍光体の製造方法を、図1に示すフローチャートによって以下に説明する。
【0032】
図1に示すように、最初に「原料混合工程」S1を行う。この原料混合工程では、まず、組成式(1)を構成する元素を含む原料化合物ととともに、メラミン(C)を炭素原料として用いて混合する。
【0033】
組成式(1)を構成する元素を含む原料化合物としては、アルカリ土類金属元素Aの炭酸化合物[例えば、炭酸ストロンチウム(SrCO)、炭酸カルシウム(CaCO)]、窒化ユーロピウム(EuN)、窒化シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)を用意する。そして、用意した各原料化合物に含まれる組成式(1)の元素が、組成式(1)の原子数比となるように、各化合物を所定のモル比に秤量する。秤量した各化合物を混合して混合物を生成する。また、メラミンは、フラックスとして、元素Aの炭酸化合物、窒化ユーロピウム、窒化アルミニウム(AlN)および窒化シリコンの全モル数の合計に対して所定割合で添加する。ここでは代表的な例を記述したが、原料は、酸化物塩、ハロゲン化塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩等も用いることができる。また、炭素原料としては、メラミンに限定されず、尿素等の他の炭素含有還元剤を用いてもよい。
【0034】
混合物の生成は、例えば、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢内で混合する。
【0035】
次に、「第1熱処理工程」S2を行う。この第1熱処理工程では、上記混合物を焼成して、赤色蛍光体の前駆体となる第1焼成物を生成する。例えば、窒化ホウ素製坩堝内に上記混合物を入れて、水素(H)雰囲気中で熱処理を行う。この第1熱処理工程では、例えば、熱処理温度を1400℃に設定し、2時間の熱処理を行う。この熱処理温度、熱処理時間は、上記混合物を焼成できる範囲で、適宜変更することができる。
【0036】
第1熱処理工程では、融点が250℃以下であるメラミンが熱分解される。この熱分解された炭素(C)、水素(H)が炭酸ストロンチウムに含まれる一部の酸素(O)と結合して、炭酸ガス(COもしくはCO)やHO(水)となる。そして、炭酸ガスやHOは、気化されるので、上記第1焼成物の炭酸ストロンチウム中より一部の酸素が取り除かれる。また、分解されたメラミンに含まれる窒素(N)によって、還元と窒化とが促される。
【0037】
次に、「第1粉砕工程」S3を行う。この第1粉砕工程では、上記第1焼成物を粉砕して第1粉末を生成する。例えば、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢を用いて、上記第1焼成物を粉砕し、その後、例えば#100メッシュ(目開きが約200μm)に通して、平均粒径が3μm又はそれ以下の粒径の上記第1焼成物を得る。これにより、次の工程の第2熱処理で生成される第2焼成物に成分むらを生じにくくさせる。
【0038】
次に、「第2熱処理工程」S4を行う。この第2熱処理工程では、上記第1粉末を熱処理して第2焼成物を生成する。例えば、窒化ホウ素製坩堝内に上記第1粉末を入れて、窒素(N)雰囲気中で熱処理を行う。この第2熱処理工程では、例えば、上記窒素雰囲気を、例えば0.85MPaに加圧し、熱処理温度を1800℃に設定し、2時間の熱処理を行う。この熱処理温度、熱処理時間は、上記第1粉末を焼成できる範囲で、適宜変更することができる。
【0039】
このような第2熱処理工程を行うことによって、上記組成式(1)で表される赤色蛍光体が得られる。この第2熱処理工程によって得られた第2焼成物(赤色蛍光体)は、組成式(1)で表される均質なものが得られる。
【0040】
次に、「第2粉砕工程」S5を行う。この第2粉砕工程では、上記第2焼成物を粉砕して第2粉末を生成する。例えば、窒素囲気中のグローボックス内でメノウ乳鉢を用いて粉砕し、例えば#420メッシュ(目開きが約26μm)を用いて、上記第2焼成物を、例えば平均粒径が3.5μm程度になるまで粉砕する。
【0041】
赤色蛍光体の製造方法により、微粉末(例えば平均粒径が3.5μm程度)の赤色蛍光体が得られる。このように赤色蛍光体を粉末化することにより、例えば緑色蛍光体の粉末とともに透明樹脂に混練したときに、均一に混練されるようになる。
【0042】
以上により、「原料混合工程」S1において混合した原子数比で各元素を含有する組成式(1)で表される赤色蛍光体を得ることができる。この赤色蛍光体は、以降の実施例で示すように、赤色波長帯(例えば、620nm〜770nmの波長帯)にピーク発光波長を有する。
【0043】
<3.白色光源の構成例>
次に、本発明の一実施の形態に係る白色光源を、図2に示す概略断面図を用いて説明する。
【0044】
図2に示すように、白色光源1は、素子基板11上に形成されたパッド部12上に青色発光ダイオード21を有している。素子基板11には、青色発光ダイオード21を駆動するための電力を供給する電極13、14が絶縁性を保って形成され、それぞれの電極13、14は、例えばリード線15、16によって青色発光ダイオード21に接続されている。
【0045】
また、青色発光ダイオード21の周囲には、例えば樹脂層31が設けられ、その樹脂層31には、青色発光ダイオード21上を開口する開口部32が形成されている。この開口部32には、青色発光ダイオード21の発光方向に開口面積が広くなる傾斜面に形成され、その傾斜面には反射膜33が形成されている。すなわち、すり鉢状の開口部32を有する樹脂層31において、開口部32の壁面反射膜33で覆われ、開口部32の底面に青色発光ダイオード21が配置された状態となっている。そして、開口部32内に、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを透明樹脂に混線した混練物43が、青色発光ダイオード21を覆う状態で埋め込まれて白色光源1が構成されている。
【0046】
赤色蛍光体には、上述した組成式(1)で表される赤色蛍光体が用いられる。この赤色蛍光体は、赤色波長帯(例えば、620nm〜770nmの波長帯)でピーク発光波長が得られ、発光強度が強く、輝度が高い。そのため、青色LEDの青色光、緑色蛍光体による緑色光、および赤色蛍光体による赤色光からなる光の3原色による色域が広い明るい白色光を得ることができる。
【0047】
<4.照明装置の構成例>
次に、本発明の一実施の形態に係る照明装置を、図3の概略平面図を用いて説明する。
【0048】
図3に示すように、照明装置5は、照明基板51上に図2を用いて説明した白色光源1が複数配置されている。その配置例は、例えば、図3(A)に示すように、正方格子配列としてもよく、または図3(B)に示すように、1行おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。また、ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらには、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。
【0049】
また、図示はしていないが、1列おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらに、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。すなわち、白色光源1のずらし方は、限定されるものではない。
【0050】
白色光源1は、図2を参照して説明したのと同様な構成を有するものである。すなわち、白色光源1は、青色発光ダイオード21上に、赤色蛍光体と緑色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物43を有するものである。赤色蛍光体には、上述した組成式(1)で表される赤色蛍光体が用いられる。
【0051】
また、照明装置5は、点発光とほぼ同等の白色光源1が照明基板51上に、縦横に複数配置されていることから、面発光と同等になるので、例えば液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。また、照明装置5は、通常の照明装置、撮影用の照明装置、工事現場用の照明装置等、種々の用途の照明装置に用いることができる。
【0052】
照明装置5は、白色光源1を用いているため、色域が広い明るい、白色光を得ることができる。例えば、液晶表示装置のバックライトに用いた場合に、表示画面において輝度の高い純白色を得ることができ、表示画面の品質の向上を図ることができる。
【0053】
<5.液晶表示装置の構成例>
次に、本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置を、図4の概略構成図を用いて説明する。
【0054】
図4に示すように、液晶表示装置100は、透過表示部を有する液晶表示パネル110と、その液晶表示パネル110を裏面(表示面とは反対側の面)側に備えたバックライト120とを有する。このバックライト120には、図3を参照して説明した照明装置5を用いる。
【0055】
液晶表示装置100では、バックライト120に照明装置5を用いるため、光の3原色による色域が広い明るい白色光で、液晶表示パネル110を照明することができる。よって、液晶表示パネル110の表示画面において輝度の高い純白色を得ることができ、色再現性が良好で表示画面の品質の向上を図ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、組成の異なる赤色蛍光体を作製し、これら赤色蛍光体のX線回折パターン及び量子効率について評価した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
[赤色蛍光体の作製]
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、および窒素(N)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する赤色蛍光体を、図1に示すフローチャートを用いて説明した手順に従って以下のように作製した。
【0058】
【化2】

【0059】
ただし、組成式(1)中、アルカリ土類金属元素Aは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、またはバリウム(Ba)の少なくとも1つである。また、組成式(1)中、m、x、y、z、nは、3<m<5、0<x<1、0<y<2、0<z<1、0<n<10なる関係を満たす。また、Caの原子数比をα、Srの原子数比をβ、その他の2族元素の原子数比をγとしたとき、m=α+β+γを満たす。
【0060】
先ず、「原料混合工程」S1を行った。ここでは、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、窒化ユーロピウム(EuN)、窒化シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)およびメラミン(C)を用意した。用意した各原料化合物を秤量し、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢内で混合した。
【0061】
次に、「第1熱処理工程」S2を行った。ここでは、窒化ホウ素製坩堝内に上記混合物を入れて、水素(H)雰囲気中で1400℃、2時間の熱処理を行った。
【0062】
次に、「第1粉砕工程」S3を行った。ここでは、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢を用いて、上記第1焼成物を粉砕し、その後、#100メッシュ(目開きが約200μm)に通して、平均粒径が3μm以下の粒径の第1焼成物を得た。
【0063】
次に、「第2熱処理工程」S4を行った。ここでは、第1焼成物の粉末を窒化ホウ素製坩堝内に入れて、0.85MPaの窒素(N)雰囲気中で1800℃、2時間の熱処理を行った。これにより、第2焼成物を得た。
【0064】
次に、「第2粉砕工程」S5を行った。ここでは、窒素雰囲気中のグローボックス内において、メノウ乳鉢を用いて上記第2焼成物を粉砕した。#420メッシュ(目開きが約26μm)を用いて、平均粒径が3.5μm程度になるまで粉砕した。
【0065】
このような方法により、微粉末(例えば平均粒径が3.5μm程度)の赤色蛍光体を得た。赤色蛍光体における、元素A、Eu、Si、Alに関してはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置にて分析し、Cについては、ICP発光分析装置および酸素気流中燃焼−NDIR検出方式(装置:EMIA−U511(堀場製作所製))にて分析した。この赤色蛍光体をICP発光分析装置にて分析した結果、原材化合物中に含まれる組成式(1)を構成する元素A、Eu、Si、Alに関しては、ほぼそのままのモル比(原子数比)で赤色蛍光体中に含有されることが確認された。
【0066】
赤色蛍光体における炭素の含有量(z)は、ICP発光分析装置および酸素気流中燃焼−NDIR検出方式にて分析した結果、0<z<1なる関係を満たしており、添加されたメラミン量に応じて増加することが確認された。なお、炭素の含有量(z)の最小値は、0.012であった。
【0067】
[炭素の含有量、カルシウム含有量に対するX線回折パターン及び量子効率の評価]
各赤色蛍光体について、メラミン添加量及びカルシウム含有量を変化させたときのX線回折パターン及び量子効率を測定した。X線回折パターンは、粉末X線解析計(株式会社リガク製)を用いて、Cu−Kα線のX線回折パターンを調べた。量子効率は、日本分光社製分光蛍光光度計FP−6500を用いて測定した。専用セルに蛍光体粉末を充填し、波長450nmの青色励起光を照射させて、蛍光スペクトルを測定した。その結果を、分光蛍光光度計付属の量子効率測定ソフトを用いて、赤色の量子効率を算出した。蛍光体の効率は、例えば、励起光を吸収する効率(吸収率)、吸収した励起光を蛍光に変換する効率(内部量子効率)、及びそれらの積である励起光を蛍光に変換する効率(外部量子効率)の三種で表されるが、外部量子効率が重要である。ここでは、重要な外部量子効率について算出した。
【0068】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の場合>
図5は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図5は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の各赤色蛍光体(m=3.789、Eu濃度(x)=0.142、γ=0)に関する結果を示す。図5に示すように、メラミンの添加量を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0069】
図6及び図7は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図8は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。メラミン添加量と回折強度の相対比とを表1に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
図6〜図8に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量に比例して強くなっていることが分かった。
【0073】
図9は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が強くなることが分かった。
【0074】
また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0075】
図10は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.30以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0076】
図11は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比に比例して、相対輝度が向上することが分かった。
【0077】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.1、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の場合>
図12は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図12は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.1、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の各赤色蛍光体(m=3.789、Eu濃度(x)=0.142、γ=0)に関する結果を示す。図12に示すように、メラミンの添加量を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0078】
図13及び図14は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図15は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0079】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表3に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表4に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
図13〜図15に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量に比例して強くなっていることが分かった。
【0083】
図16は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が強くなることが分かった。
【0084】
図17は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。図17に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0085】
図18は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が0.65付近までは、ピーク強度比に比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.60以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0086】
図19は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、相対輝度が向上することが分かった。
【0087】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.2、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の場合>
図20は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図20は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.2、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の各赤色蛍光体(m=3.789、Eu濃度(x)=0.142、γ=0)に関する結果を示す。図20に示すように、メラミンの添加量を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0088】
図21及び図22は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図23は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0089】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表5に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表6に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
図21〜図23に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量に比例して強くなっていることが分かった。
【0093】
図24は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が強くなることが分かった。
【0094】
図25は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。図25に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0095】
図26は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比に比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、ピーク強度比が約0.60以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0096】
図27は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、相対輝度が向上することが分かった。
【0097】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.3、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の場合>
図28は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図28は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.3、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の各赤色蛍光体(m=3.789、Eu濃度(x)=0.142、γ=0)に関する結果を示す。図28に示すように、メラミンの添加量を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0098】
図29及び図30は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図31は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0099】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表7に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表8に示す。
【0100】
【表7】

【0101】
【表8】

【0102】
図29〜図31に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量に比例して強くなっていることが分かった。
【0103】
図32は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が強くなることが分かった。
【0104】
図33は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。図33に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.82まで、ピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0105】
図34は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、ピーク強度比が約0.69以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0106】
図35は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、相対輝度が向上することが分かった。
【0107】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0、0.1、0.2、0.3、アルミニウムの含有量(y)=0.4736の場合のまとめ>
図36は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【0108】
アルミニウムの含有量(y)=0.4736、カルシウムの含有量(α/(α+β))が、0≦α/(α+β)≦0.3なる関係を満たす範囲において、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比に比例して、外部量子効率が向上することが分かった。
【0109】
また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.30以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0110】
さらに、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.60以上の範囲において、外部量子効率が65%を超える結果がほぼ得られることが分かった。
【0111】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.1、アルミニウムの含有量(y)=1.0の場合>
図37は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図38は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.1、アルミニウムの含有量(y)=1.0の各赤色蛍光体(m=4、Eu濃度(x)=0.15、γ=0)に関する結果を示す。図37に示すように、メラミンの添加量を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0112】
図38及び図39は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図40は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0113】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表9に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表10に示す。
【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
図38〜図40に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量に比例して強くなっていることが分かった。
【0117】
図41は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が強くなることが分かった。
【0118】
図42は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。図42に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0119】
図43は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が0.90付近までは、ピーク強度比に比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.70以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0120】
図44は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が0.90付近までは、相対輝度が向上することが分かった。
【0121】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.15、アルミニウムの含有量(y)=1.0の場合>
図45は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図45は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.15、アルミニウムの含有量(y)=1.0の各赤色蛍光体(m=4、Eu濃度(x)=0.15、γ=0)に関する結果を示す。図45に示すように、メラミンの添加量、すなわち、を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0122】
図46及び図47は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図48は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0123】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表11に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表12に示す。
【0124】
【表11】

【0125】
【表12】

【0126】
図46〜図48に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量に比例して強くなっていることが分かった。
【0127】
図49は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が強くなることが分かった。
【0128】
図50は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。図50に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0129】
図51は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が約0.70から1.0の範囲において、ピーク強度比にほぼ比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.70以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0130】
図52は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比が約0.70から1.0の範囲において、ピーク強度比にほぼ比例して、相対輝度が向上することが分かった。
【0131】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.25、アルミニウムの含有量(y)=1.0の場合>
図53は、メラミン添加量を変化させたときの赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図53は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0.25、アルミニウムの含有量(y)=1.0の各赤色蛍光体(m=4、Eu濃度(x)=0.15、γ=0)に関する結果を示す。図53に示すように、メラミンの添加量を増加させるにつれて、発光強度が向上し、発光が短波長側にシフトすることが分かった。
【0132】
図54及び図55は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図56は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0133】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表13に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表14に示す。
【0134】
【表13】

【0135】
【表14】

【0136】
図54〜図56に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在し、2θ=36.3°付近のピークの強度がメラミンの添加量にほぼ比例して強くなっていることが分かった。
【0137】
図57は、メラミン添加量と、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比との関係を示す図である。メラミン添加量にほぼ比例して、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が強くなることが分かった。
【0138】
図58は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、ピーク波長との関係を示す図である。図58に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比にほぼ比例して、ピーク波長が短波長側にシフトすることが分かった。
【0139】
図59は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、外部量子効率が向上することが分かった。また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.60以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0140】
図60は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、相対輝度との関係を示す図である。回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比にほぼ比例して、相対輝度が向上することが分かった。
【0141】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0、アルミニウムの含有量(y)=1.0の場合>
図61は、赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。図61は、カルシウムの含有量(α/(α+β))が0、アルミニウムの含有量(y)=1.0の各赤色蛍光体(m=4、Eu濃度(x)=0.15、γ=0)に関する結果を示す。図61に示す結果から、ピーク波長(λ)が639nmであり、ピーク強度が1.74cpsであり、発光スペクトルの半値幅(FWHM)が102nmであることが分かった。また、色度xが0.655であり、色度yが0.344であり、相対輝度Yが43.0であった。また、発光量積分値が、191.37cpsであり、外部量子効率が67.19%であり、試料吸収率が88.97%であり、内部量子効率が75.52%であった。
【0142】
図62は、赤色蛍光体のXRDスペクトルを示す図である。図63は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する各回折角でのピークの強度のピーク強度比を示すグラフである。
【0143】
メラミン添加量と回折強度の相対比とを表15に、メラミン添加量と実際に回折強度の得られた角度とを表16に示す。
【0144】
【表15】

【0145】
【表16】

【0146】
図62および図63に示すように、回折角が35.0°〜36.0°の位置、すなわち、2θ=35.5°付近に(113)面に相当するピークが存在し、また、回折角が36.0°〜36.6°の位置、すなわち、2θ=36.3°付近に(122)面に相当するピークが存在することが分かった。
【0147】
図64は、赤色蛍光体の励起波長400nmの発光強度を1としたときにおけるPLEスペクトルを示す図である。PLEスペクトルとは、ある特定のエネルギーのPL(Photoluminescence)発光強度に着目して、その強度が励起波長を変化させたとき、どのように変わるかを示すスペクトルである。
【0148】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))=0.1、0.15、0.25、アルミニウムの含有量(y)=1.0の場合のまとめ>
図65は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【0149】
アルミニウムの含有量(y)=1.0、カルシウムの含有量(α/(α+β))が、0≦α/(α+β)≦0.3なる関係を満たす範囲において、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比に比例して、外部量子効率が向上することが分かった。
【0150】
また、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.60以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0151】
さらに、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.80以上の範囲において、外部量子効率が65%を超える結果がほぼ得られることが分かった。
【0152】
<カルシウムの含有量(α/(α+β))が0≦α/(α+β)≦0.3、アルミニウムの含有量(y)が0<y≦1.0の場合のまとめ>
図66は、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度のピーク強度比と、外部量子効率との関係を示す図である。
【0153】
アルミニウムの含有量(y)が、0<y≦1.0、カルシウムの含有量(α/(α+β))が、0≦α/(α+β)≦0.3なる関係を満たす範囲では、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.60以上の範囲において、外部量子効率が60%を超える結果が得られることが分かった。
【0154】
さらに、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークの強度に対する、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークのピーク強度比が約0.75以上の範囲において、外部量子効率が65%を超える結果がほぼ得られることが分かった。
【0155】
以上のような結果は、X線回折パターンにおいて、回折角が36.0°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35.0°〜36.0°の位置に存在するピークに対してピーク強度比が所定の値より大きい結晶構造が、高い量子効率に寄与していると考えられる。
【符号の説明】
【0156】
1 白色光源、5 照明装置、21 青色発光ダイオード、43 混練物、100 液晶表示装置、110 液晶表示パネル、120 バックライト(照明装置5)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、
X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す赤色蛍光体。
【請求項2】
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を下記組成式(1)の原子数比で含有する請求項1記載の赤色蛍光体。
【化1】

ただし、組成式(1)中、アルカリ土類金属元素Aは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、またはバリウム(Ba)の少なくとも1つである。また、組成式(1)中、m、x、y、z、nは、3<m<5、0<x<1、0<y<2、0<z<1、0<n<10なる関係を満たす。
【請求項3】
上記アルカリ土類金属元素Aは、少なくともカルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)を含み、
Caの原子数比をα、Srの原子数比をβ、その他の2族元素の原子数比をγとしたとき(m=α+β+γ)、0≦α/(α+β)≦0.3なる関係を満たす請求項1又は2記載の赤色蛍光体。
【請求項4】
上記組成式(1)で示される化合物が、斜方晶系空間点群Pmn21に属する結晶構造で構成されている請求項2記載の赤色蛍光体。
【請求項5】
アルカリ土類金属元素Aの炭酸化合物、窒化ユーロピウム、窒化シリコン、窒化アルミニウムおよび炭素含有還元剤を混合して混合物とし、
上記混合物の焼成と、当該焼成によって得られた焼成物の粉砕とを行い、
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含む赤色蛍光体を製造する赤色蛍光体の製造方法であって、
X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す赤色蛍光体を得る赤色蛍光体の製造方法。
【請求項6】
素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、
上記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体もしくは黄色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、
上記赤色蛍光体は、
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、
X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す白色光源。
【請求項7】
照明基板上に複数の白色光源が配置された照明装置であって、
上記白色光源は、
素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、
上記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体もしくは黄色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物を有し、
上記赤色蛍光体は、
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、
X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す照明装置。
【請求項8】
液晶表示パネルと、
上記液晶表示パネルを照明する複数の白色光源を用いたバックライトとを有し、
上記白色光源は、
素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、
上記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体もしくは黄色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物を有し、
上記赤色蛍光体は、
アルカリ土類金属元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、炭素(C)、酸素(O)、および窒素(N)を主結晶として含み、
X線回折パターンにおいて、回折角が36°〜36.6°の位置に存在するピークの強度が、回折角が35°〜36°の位置に存在するピークに対してピーク強度比0.60以上を示す液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【公開番号】特開2012−241025(P2012−241025A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108871(P2011−108871)
【出願日】平成23年5月14日(2011.5.14)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】