説明

走査型レーザ顕微鏡及び受光素子

【課題】 正確なIZカーブを描くことができ、安価でより高画質な観察画像が得られる走査型レーザ顕微鏡及び光学素子を提供すること。
【解決手段】 レーザ光源11と、レーザ光源11から出射されたレーザ光を2次元走査する2次元走査機構13と、2次元走査されたレーザ光を観察試料Sに集光する対物レンズ18と、観察試料Sからの反射光あるいは蛍光を受光して電気信号として出力する第1受光素子31とを有して、第1受光素子31の受光面近傍に、反射光あるいは蛍光を拡散させる第1光拡散用光学素子32が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型レーザ顕微鏡及び受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察試料上にスポット状で集光するように照射したレーザ光を観察試料上で走査し、観察試料からの反射光あるいは蛍光を検出することで観察画像を得る走査型レーザ顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この走査型レーザ顕微鏡100は、図7に示すように、レーザ光源101と偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと省略する)102と、2次元走査機構103と、瞳投影レンズ104と、第1結像レンズ105と、1/4波長板106と、対物レンズの瞳107と、対物レンズ108と、第2結像レンズ109と、共焦点光学系受光部110とによって構成されている。なお、図7において、レーザ光の光路は、この2次元走査機構103にて偏向された場合の光路を示している。
【0003】
レーザ光源101から出射した直線偏光であるレーザ光は、PBS102を通過して2次元走査機構103で偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、瞳投影レンズ104、第1結像レンズ105を通過して1/4波長板106で円偏光に変換され、対物レンズ108によって観察試料S上で集光されてスポット光となる。観察試料Sからの反射光は、1/4波長板106で円偏光から直線偏光に変換されてPBS12に至る。なお、変換された直線偏光とレーザ光源101から出射した直線偏光とは、互いに直交する関係にある。その後、反射光は、PBS102で偏向されて第2結像レンズ109によって集光して共焦点光学系受光部110のピンホール111を通過する。そして、受光素子112は、この反射光を受光面112Aで受光して電気信号に変換する。モニタなどの表示装置は、この電気信号強度を輝度情報とした観察画像を表示する。
【特許文献1】特開2001−100103号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の走査型レーザ顕微鏡においては、以下の問題がある。すなわち、上記従来の走査型レーザ顕微鏡では、受光素子として光電子増倍管を用いた場合、光電子増倍管の受光面位置の検出感度の不均一性により出力信号が減衰することがある。これにより、観察試料にピントが合ったときの出力信号が減衰することで観察画像が暗くなり、画質が劣化することがある。さらに、焦点位置において受光素子からの出力信号が減衰することによって、図8に示すように、対物レンズと観察試料との光軸方向における相対距離と、受光素子からの出力信号強度とを2次元分布でプロットしたデータである、IZカーブが焦点位置において最大とならなくなる。したがって、IZカーブの最大位置からピント位置を求めて対物レンズと観察試料との相対位置を自動的に焦点位置に調整するオートフォーカス機能などが機能せず、また、観察試料の正確な高さデータを求めることができなくなる。
また、受光素子としてPINフォトダイオードを用いた場合であっても、スポット光を受光することにより、検出効率の線形性が劣化し、正確なIZカーブを描くことができなくなる。これにより、観察画像の画質が劣化し、上で説明したオートフォーカス機能などが機能せず、観察試料の正確な高さデータを求めることができなくなる。
【0005】
また、受光素子が、光学系に配置された光学素子からのフレア光を検出することによっても、IZカーブがなだらかな曲線となるため、観察画像の画質が劣化することがある。このフレア光の発生を、偏光ビームスプリッタを複数配置することで抑制することも考えられるが、偏光ビームスプリッタは高価であると共に配置する場所に制限があり、さらに配置した偏光ビームスプリッタで発生したフレア光を除去することができない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、正確なIZカーブを描くことができ、安価でより高画質な観察画像が得られる走査型レーザ顕微鏡及び光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかる走査型レーザ顕微鏡は、レーザ光源と、該レーザ光源から出射されたレーザ光を2次元走査する2次元走査機構と、2次元走査されたレーザ光を観察試料に集光する対物レンズと、前記観察試料からの反射光あるいは蛍光を受光する第1受光素子とを有する走査型レーザ顕微鏡において、前記第1受光素子の受光面近傍に、前記反射光あるいは蛍光を拡散させる光拡散用光学素子が配置されていることを特徴とする。
【0008】
この発明にかかる走査型レーザ顕微鏡では、レーザ光源から出射したレーザ光を、対物レンズで集光して観察試料上に照射し、観察試料からの反射光あるいは蛍光である観察光を第1受光素子で受光して受光量に応じた信号に変換する。そして、2次元走査機構で観察試料上におけるレーザ光の照射位置を適宜変更することで観察試料上を2次元走査し、観察画像を得る。ここで、受光する光が光拡散用光学素子によって拡散され、受光面上でスポット光とならないので、受光面における受光面積が増大する。これにより、受光面の各部位における検出感度の不均一性や検出効率の線形性の劣化の影響を受けずに、正確なIZカーブを求めることができる。
したがって、相対距離が焦点位置にあったときの第1受光素子からの出力信号が減衰することを回避し、ピントがあったときの観察画像の明度が向上するので、高画質な観察画像を提供することができる。
また、観察試料のピント位置をIZカーブのピーク位置から自動的に調整する機能であるオートフォーカス機能を用いることができ、相対距離の焦点位置からのずれ量を正確に求めることができる。
【0009】
また、本発明にかかる走査型レーザ顕微鏡は、第2受光素子を有する非共焦点光学系を備え、該非共焦点光学系の光路上に、フレア光を除去する絞り装置が設けられていることが好ましい。
この発明にかかる走査型レーザ顕微鏡では、光路上の任意の位置で発生したフレア光を、絞り装置で除去し、第2受光素子で検出することを抑制する。これにより、第2受光素子から出力された電気信号に含まれるフレア光成分が減少し、より急峻なIZカーブを描くことで非共焦点光学系による観察画像のS/N比が向上する。したがって、より高画質な観察画像を提供することができる。
【0010】
また、本発明にかかる走査型レーザ顕微鏡は、レーザ光源と、該レーザ光源から出射されたレーザ光を2次元走査する2次元走査機構と、2次元走査されたレーザ光を観察試料に集光する対物レンズと、前記観察試料からの反射光あるいは蛍光を受光する第1受光素子を有する走査型レーザ顕微鏡において、第2受光素子を有する非共焦点光学系を備え、該非共焦点光学系の光路上に、フレア光を除去する絞り装置が設けられていることを特徴とする。
この発明にかかる走査型レーザ顕微鏡では、上述と同様に、フレア光を絞り装置で除去し、第2受光素子で検出することを抑制するので、より急峻なIZカーブを描くことで、非共焦点光学系による観察画像のS/N比が向上する。したがって、高画質な観察画像を提供することができる。
【0011】
また、本発明にかかる受光素子は、受光面で光を受光する受光素子であって、前記受光面近傍に、受光する光を拡散させる光拡散用光学素子が配置されていることを特徴とする。
この発明にかかる受光素子では、上述と同様に、受光する光が受光面上でスポット光とならず、受光面積が増大する。これにより、受光面の各部位における検出感度の不均一性や検出効率の線形性の劣化の影響を低減することができる。したがって、正確なIZカーブを描くことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の走査型レーザ顕微鏡及び受光素子によれば、受光面近傍に観察試料からの反射光あるいは蛍光である観察光を拡散させる光拡散用光学素子が配置されていることで、受光面上で観察光がスポット光とならずに受光面積が増大する。これにより、受光面の各部位における検出感度の不均一性や検出効率の線形性の劣化の影響を受けずに、正確なIZカーブを求めることができる。したがって、相対距離が焦点位置にあったときに第1受光素子からの出力信号が減衰することを回避することで、ピントがあったときの観察画像の明度が向上し、高画質な観察画像を得ることができる。
また、観察試料のピント位置をIZカーブのピーク位置から自動的に調整する機能であるオートフォーカス機能を用いた場合、相対距離の焦点位置からのずれ量を正確に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる走査型レーザ顕微鏡の第1の実施形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。
本実施形態による走査型レーザ顕微鏡1は、レーザ光源11と、レーザ光源11から出射されたレーザ光の光軸L1、または観察試料Sからの反射光あるいは蛍光である観察光の光軸L2に沿って間隔をあけて順に配置された、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと省略する)12と、2次元走査機構13と、瞳投影レンズ14と、第1結像レンズ15と、1/4波長板16と、対物レンズの瞳17と、対物レンズ18と、第2結像レンズ19と、ハーフミラー20と、共焦点光学系受光部21と、非共焦点光学系受光部22とによって構成されている。
【0014】
これらは、レーザ光源11から出射されたレーザ光の光軸L1に沿って、レーザ光源11から順に、PBS12、2次元走査機構13、瞳投影レンズ14、第1結像レンズ15、対物レンズの瞳17、対物レンズ18の順に配置されており、対物レンズ18の焦点位置に観察試料Sが配置されている。
そして、観察光の光軸L2に沿って、レーザ光の光軸L1と同様に対物レンズ18からPBS12が配置されており、PBS12から順に、第2結像レンズ19、ハーフミラー20、共焦点光学系受光部21及び非共焦点光学系受光部22が配置されている。
なお、図1において、レーザ光の光路は、この2次元走査機構13にて偏向された場合の光路を示している。
【0015】
2次元走査機構13は、対物レンズの瞳17と共役な位置に配置されており、PBS12を通過したレーザ光を瞳投影レンズ14に向けて偏向して観察試料S上を2次元走査すると共に、観察試料Sからの観察光をPBS12に向けて偏向するように構成されている。
【0016】
共焦点光学系受光部21は、第1受光面31Aを有する第1受光素子31と、第1受光面31Aと隣接して配置された第1光拡散用光学素子32と、第1光拡散用光学素子32と近接して配置されたピンホール33とを備えている。このピンホール33は、対物レンズ18の焦点位置と共役な位置に配置されている。
非共焦点光学系受光部22は、第2受光面36Aを有する第2受光素子36と、第2受光面36Aと隣接して配置された第2光拡散用光学素子37とを備えている。
第1及び第2受光素子31、36には、例えば電子増倍管やPIN(p-intrinsic-n)フォトダイオードが用いられている。
また、第1及び第2光拡散用光学素子32、37には、例えばフロスト型拡散板(摺りガラス)、オパール光拡散ガラス、ポリエステルやポリカーボネイトなどを用いた光拡散フィルタが用いられている。
【0017】
次に、上記の構成からなる走査型レーザ顕微鏡1において、レーザ光源11から出射したレーザ光は、直線偏光であって、PBS12、2次元走査機構13、瞳投影レンズ14、第1結像レンズ15を通過して1/4波長板16に至る。ここで、この1/4波長板16によって直線偏光から円偏光に変換される。そして、対物レンズの瞳17及び対物レンズ18を通過して観察試料Sに入射する。
【0018】
観察試料Sからの観察光は、上述と同様に、対物レンズ18及び対物レンズの瞳17を通過して1/4波長板16に至る。ここで、上述と同様に、1/4波長板16によって円偏光から直線偏光に変換される。また、変換された直線偏光とレーザ光源11から出射した直線偏光とは、互いに直交する関係にある。そして、第1結像レンズ15、瞳投影レンズ14、2次元走査機構13及びPBS12を通過する。このとき、観察試料Sからの観察光とレーザ光源11からの出射光とが互いに直交する偏光であるので、観察試料Sからの観察光は、PBS12によって第2結像レンズ19に向かって偏向される。第2結像レンズ19を通過した反射光は、一部がハーフミラー20を透過して共焦点光学系受光部21に、残りがハーフミラー20で偏向されて非共焦点光学系受光部22にそれぞれ入射する。
【0019】
共焦点光学系受光部21に入射した観察光は、レーザ光源11からの出射光が観察試料S上で集光したときのみにピンホール33で遮光されずに第1光拡散用光学素子32に至る。そして、第1受光素子31は、第1光拡散用光学素子32で拡散された観察光を第1受光面31Aで受光する。
また、非共焦点光学系受光部22に入射した観察光は、上述した共焦点光学系受光部21と同様に、第2光拡散用光学素子37で拡散される。そして、第2受光素子36は、第2光拡散用光学素子37で拡散された観察光を第2受光面36Aで受光する。
第1及び第2受光素子31、36は、第1及び第2受光面31A、36Aで受光した観察光を電気信号に変換して出力する。そして、例えばモニタなどの表示装置に、この電気信号の強度から2次元走査機構13による走査範囲の観察画像を輝度情報に変換して表示する。したがって、対物レンズ18によって観察試料S上でレーザ光が最も集光されたとき、つまりピントがあったときに観察画像が最も明るく表示される。
【0020】
ここで、対物レンズ18と観察試料Sとの光軸方向の距離を相対的に変化させ、ピント位置付近における第1受光素子31からの出力信号強度を連続的にモニタすることにより得られた、共焦点光学系受光部21におけるIZカーブは図2(a)のようになる。また、第2受光素子36からの出力信号強度を連続的にモニタすることにより得られた、非共焦点光学系受光部22におけるIZカーブは図2(b)のようになる。
【0021】
共焦点光学系受光部21にはピンホール33が設けられているため、相対位置が集光位置からずれると、ピンホール33によって遮光されて第1受光面31Aで受光することができない。一方、非共焦点光学系受光部22にはピンホール33が設けられていないので、相対位置が集光位置から多少ずれた場合であっても第2受光面36Aで受光することができる。これにより、非共焦点光学系受光部22におけるIZカーブの幅は、共焦点光学系受光部21におけるIZカーブの幅よりも広くなる。
【0022】
このように、IZカーブの幅は狭いので、共焦点光学系受光部21におけるIZカーブのピーク位置から正確な対物レンズ18のピント位置や、観察試料Sの高さデータを求めることができる。
また、非共焦点光学系受光部22では相対位置が集光位置から多少ずれた場合であっても第2受光面36Aにおいて観察光の光束径が第2受光面36Aよりも小さければ第2受光面36Aで受光することができるので、深度の深い観察を行うことができる。
【0023】
以上のように構成された走査型レーザ顕微鏡1と第1及び第2光学素子31、36によれば、第1及び第2受光面31A、36Aの近傍に第1及び第2光拡散用光学素子32、37をそれぞれ配置することによって、観察光が拡散されて第1及び第2受光面31A、36Aにおいてスポット光とならずに受光面積が増大する。これにより、受光面の各部位における検出感度の不均一性や検出効率の線形性の劣化の影響を受けずに正確なIZカーブを描くことができる。したがって、相対距離が焦点位置にあったときの受光素子からの出力信号が減衰することを回避し、ピントがあったときの観察画像の明度が向上するので、高画質な観察画像が得られる。
また、観察試料のピント位置をIZカーブのピーク位置から自動的に調整する機能であるオートフォーカス機能を用いた場合、相対距離の焦点位置からのずれ量を正確に求めることができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態における走査型レーザ顕微鏡1の第1及び第2受光面31A、36Aの近傍にそれぞれ第1及び第2光拡散用光学素子32、37が配置されているのに対して、第2の実施形態における走査型レーザ顕微鏡40には第1及び第2光拡散用光学素子32、37が設けられておらず、第2受光面36Aの近傍にフレア光を除去する開口絞り41が配置されていることである。
【0025】
すなわち、走査型レーザ顕微鏡40は、第1受光面31Aを有する第1受光素子31とピンホール33とを有する共焦点光学系受光部42と、第2受光面36Aを有する第2受光素子36と開口絞り41とを有する非共焦点光学系受光部43とを備えている。
この開口絞り41には、例えば直径数ミリの円形の開口が形成されている。
【0026】
次に、上記の構成からなる走査型レーザ顕微鏡40において、レーザ光源11から出射したレーザ光は、上述した第1の実施形態と同様に観察試料Sに至る。そして、観察試料Sからの反射光は、ハーフミラー20に到達し、一部が共焦点光学系受光部42に、残りが非共焦点光学系受光部43にそれぞれ入射する。
【0027】
共焦点光学系受光部42に入射した観察光は、レーザ光源11からの出射光が観察試料S上で集光したときのみにピンホール33で遮光されずに第1受光面31Aに至る。
また、非共焦点光学系受光部43に入射した観察光は、開口絞り41に至り、上述した共焦点光学系受光部42と同様に、第2光拡散用光学素子37で拡散される。ここで、開口絞り41によって観察光のフレア光が除去される。そして、第2受光素子36は、第2光拡散用光学素子37で拡散された観察光を第2受光面36Aで受光する。
【0028】
ここで、非共焦点光学系受光部43における観察光とフレア光との受光量について図4及び図5を用いて説明する。
図4において符号44は相対位置が集光位置と一致しているときの観察光の光束を示し、符号45は相対距離が集光位置とずれているときの観察光の光束を示し、符号46はフレア光の光束を示している。ここで、相対距離が集光位置とずれている場合であっても開口絞り41の開口を通過した光束が第2受光面36Aで受光されるので、その分の焦点深度を有する観察画像を得ることができる。
【0029】
図5に開口絞り41を設けた場合と設けない場合との各場合におけるIZカーブ及び出力信号に含まれるフレア光の成分を示す。図5において、符号47Aは開口絞り41を設けない場合のIZカーブを示し、符号47Bはそのときのフレア光の成分を示している。また、符号48Aは開口絞り41を設けた場合のIZカーブを示し、符号48Bはそのときのフレア光の成分を示している。
非共焦点光学系受光部43で得られる観察画像のS/N比は、相対距離が集光位置と一致したときに開口絞り41が設けられていない場合で(a+d)/(c+d)となり、開口絞り41が設けられている場合でa/cとなる。開口絞り41によってフレア光が除去されることで、より急峻なIZカーブを描くことができ、非共焦点光学系で得られる観察画像のS/N比が向上する。
したがって、開口絞り41の開口径を調節することによって、フレア光を除去できる量が変わり、図5のdの量が変わるため、観察画像のS/N比を適宜設定することができる。
【0030】
以上のように構成された走査型レーザ顕微鏡40によれば、第2受光面36Aの前に開口絞り41が配置することによって、非共焦点光学系受光部43におけるフレア光が除去される。これにより、第2受光素子36からの出力信号に含まれるフレア光の成分が減少し、より急峻なIZカーブが求められることで、非共焦点光学系で得られる観察像のS/N比が向上し、高画質の観察画像が得られる。
【0031】
次に、本発明の第3の実施形態について図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、第3の実施形態における走査型レーザ顕微鏡50には第2受光面36Aの近傍にフレア光を除去する開口絞り41が配置されていることである。
すなわち、走査型レーザ顕微鏡50は、共焦点光学系受光部21と、第2受光素子36と第2光拡散用光学素子37と開口絞り41とを有する非共焦点光学系受光部51とを備えている。
【0032】
以上のように構成された走査型レーザ顕微鏡50によれば、上述した第1の実施形態と同様に、受光面の各部位における検出感度の不均一性や検出効率の線形性の劣化の影響を受けずに正確なIZカーブを描くことができると共に、上述した第2の実施形態と同様に、非共焦点光学系受光部51におけるフレア光が除去される。
したがって、ピントがあったときの観察画像の明度と、非共焦点光学系で得られる観察像のS/N比が向上するので、より高画質な観察画像が得られる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
第1の実施形態において、走査型レーザ顕微鏡が共焦点光学系受光部と非共焦点光学系受光部との2つの受光部を備えているが、非共焦点光学系受光部及びハーフミラーを設けず、共焦点光学系のみを備える構造であってもよい。
また、第1及び第3の実施形態において、光拡散用光学素子が各受光素子の受光面と隣接するように配置されたが、光拡散用光学素子が各受光素子の受光面に接着されてもよい。
【0034】
また、第2及び第3の実施形態において、走査型レーザ顕微鏡が共焦点光学系受光部と非共焦点光学系受光部との2つの受光部を備えているが、共焦点光学系受光部及びハーフミラーを設けずに、非共焦点光学系のみを備える構造であってもよい。
また、開口絞りは、フレア光を引き起こさない程度に遮光された部材であればよく、例えば金属を加工したものであっても黒塗り処理を施したものや、遮光布、黒い紙を用いてもよい。さらに、開口絞りが円形の開口を有しているが、開口形状は任意であり、多角形やスリット状などであってもよい。
そして、開口絞りが配置される位置は、光学系で発生したフレア光を除去することができればよく、例えば図3における第2結像レンズの直後である点P1や、PBSの直後である点P2や、PBSの直前である点P3であってもよい。また、開口絞りが光軸に沿って移動可能であってもよい。
さらに、開口絞りの開口形状が可変であってもよい。このようにすることで、観察者が、非共焦点光学系受光部による観察画像の焦点深度や、観察画像のS/N比を適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態における走査型レーザ顕微鏡を示す該略図である。
【図2】図1の各受光素子におけるIZカーブを示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施形態における走査型レーザ顕微鏡を示す該略図である。
【図4】図3の非共焦点光学系受光部における光束を示す該略図である。
【図5】図3の第2受光素子におけるIZカーブを示すグラフである。
【図6】本発明の第3の実施形態における走査型レーザ顕微鏡を示す該略図である。
【図7】従来の走査型レーザ顕微鏡を示す該略図である。
【図8】図7の受光素子におけるIZカーブを示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1、40、50 走査型レーザ顕微鏡
11 レーザ光源
13 2次元走査機構
31 第1受光素子
31A 第1受光面
32 第1光拡散用光学素子
36 第2受光素子
36A 第2受光面
37 第2光拡散用光学素子
41 開口絞り(絞り装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
該レーザ光源から出射されたレーザ光を2次元走査する2次元走査機構と、
2次元走査されたレーザ光を観察試料に集光する対物レンズと、
前記観察試料からの反射光あるいは蛍光を受光する第1受光素子とを有する走査型レーザ顕微鏡において、
前記第1受光素子の受光面近傍に、前記反射光あるいは蛍光を拡散させる光拡散用光学素子が配置されていることを特徴とする走査型レーザ顕微鏡。
【請求項2】
第2受光素子を有する非共焦点光学系を備え、
該非共焦点光学系の光路上に、フレア光を除去する絞り装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の走査型レーザ顕微鏡。
【請求項3】
レーザ光源と、
該レーザ光源から出射されたレーザ光を2次元走査する2次元走査機構と、
2次元走査されたレーザ光を観察試料に集光する対物レンズと、
前記観察試料からの反射光あるいは蛍光を受光する第1受光素子を有する走査型レーザ顕微鏡において、
第2受光素子を有する非共焦点光学系を備え、
該非共焦点光学系の光路上に、フレア光を除去する絞り装置が設けられていることを特徴とする走査型レーザ顕微鏡。
【請求項4】
受光面で光を受光する受光素子であって、
前記受光面近傍に、受光する光を拡散させる光拡散用光学素子が配置されていることを特徴とする受光素子。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−23371(P2006−23371A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199318(P2004−199318)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】