説明

走査型顕微鏡

【課題】最適化された倍率で光を受光面に導いて、明るい画像が取得できる走査型顕微鏡を提供する。
【解決手段】走査型顕微鏡1を、照明光を射出する光源6と、この照明光を集光して試料Sに照射する対物レンズ32と、光源6と対物光学系3との間に配置され、照明光により試料Sの面を走査する走査装置2と、走査装置2と対物レンズ32との間に配置され、照明光及び試料Sからの観察光のいずれか一方を透過し、他方を反射する光分離部4と、受光面5aが対物レンズ32の射出瞳位置と略共役位置に配置され、光分離部4で透過若しくは反射した観察光を検出する検出部5と、光分離部4と検出部5との間に配置され、受光面5aと対物レンズ32の射出瞳との略共役関係を維持したまま、射出瞳の像の大きさを対物レンズ32に応じて変化させる倍率変更光学系7と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生物顕微鏡の分野では、非線形効果を用いた顕微鏡が注目を集めている。その中でも、多光子励起を使用した顕微鏡は蛍光の試料内の拡散に対して強く、試料の深部まで観察をすることができる。したがって、今まで観察し難かった、脳などの光の拡散が大きい試料の深部を観察することができるため、ユーザーからの需要がある。この需要に対応するため、多くの多光子励起顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、走査型顕微鏡では走査した光を非走査光に変え、ピンホールを通過させ共焦点効果を得ることにより光軸方向の分解能を得る。しかし、多光子励起顕微鏡では、対物レンズにより励起光がスポットを結ぶ位置のみが励起されるので、ピンホールを使用しなくとも光軸方向の分解能を得ることができる。
【0004】
したがって、ピンホールを使用しなくてよいのであれば、わざわざ試料からの観察光を非走査光に変える必要がなく、走査手段と対物レンズとの間に光束分離手段を挿入配置し、その先にディテクターを配置すればよい。このディテクターをNDD(Non Descanned Detector)と言う。ピンホールを使用する場合は、試料面のうち当該ピンホールと共役な位置から出射した観察光しか受光できないが、NDDであれば集光位置の周りに拡散した観察光であっても受光することができるため、明るい画像を得ることができる。このようなアイディアが、従来より提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
特に、脳などの試料を観察する場合は、拡散が大きいので深部まで観察するためには、少しでも明るく受光する必要がある。このように少しでも明るく受光するための光学的な手段としては、蛍光取得可能範囲は検出光学系の視野数/対物レンズの倍率で決まるので、試料の拡散した光を少しでも多く獲得するために検出光学系の視野数を大きくすることが考えられる。無限遠系対物レンズの場合、検出光学系の視野数を大きくすると対物レンズの射出瞳を出て行く平行光束が、より大きな角度で射出瞳から射出されることとなる。
【0006】
ところで、検出器がヘッドオン形状の光電子増倍管(以下、PMTと呼ぶ)の場合、その種類にもよるが、ユニフォーミティ(光電面での位置に対する光量ムラ)は悪くはないが、入射角度に対する光量ムラが多少残っているのに対し、アンギュラーレスポンス(光電面に入射する角度に対する光量ムラ)は非常に綺麗なカーブを描くPMTが存在する。後者のPMTを用いる場合には、光電面を対物レンズの射出瞳と共役に配置することにより、光量ムラを防ぐことができる。このような配置は、従来より提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、一般的に、対物レンズの射出瞳と共役関係にある受光面への縮小倍率は、想定されるどの対物レンズに交換した場合であっても、受光面への入射角度が許容最大入射角度までの範囲で瞳像の大きさが受光面の有効領域内になるように決定される。
【特許文献1】特許第2848952号公報
【特許文献2】特表2007−510176号公報
【非特許文献1】NATURE VOL385・9 JANUARY 1997 P161〜P165
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の顕微鏡であれば、この顕微鏡を構成するレンズの位置は固定であり、一定の倍率で対物レンズの射出瞳を受光面に投影することとなり、対物レンズを交換した場合、受光面の有効領域が有効に活用されておらず、試料からの観察光を無駄にしていると言う課題があった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、対物レンズを交換した場合でも、最適化された倍率で光を受光面に導くことができ、明るい画像を取得することが可能な走査型顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る走査型顕微鏡は、照明光を射出する光源と、この照明光を集光して試料に照射する対物レンズと、光源と対物レンズとの間に配置され、照明光により試料の面を走査する走査装置と、走査装置と対物レンズとの間に配置され、照明光及び試料からの観察光のいずれか一方を透過し、他方を反射する光分離部と、受光面が対物レンズの射出瞳位置と略共役位置に配置され、光分離部で透過若しくは反射した観察光を検出する検出部と、光分離部と検出部との間に配置され、受光面と対物レンズの射出瞳との略共役関係を維持したまま、射出瞳の像の大きさを対物レンズに応じて変化させる倍率変更光学系と、を有する。
【0011】
このような走査型顕微鏡装置において、倍率変更光学系は、対物レンズに応じて、射出瞳の像が受光面の有効領域と略同一大きさになるように変倍することが好ましい。
【0012】
また、このような走査型顕微鏡装置において、倍率変更光学系は、試料側から順に、試料の像を結像する第1リレーレンズ群と、射出瞳の像を受光面上に結像する第2リレーレンズ群と、を有し、第1リレーレンズ群、及び、第2リレーレンズ群の少なくともいずれか一方を交換することにより、変倍することが好ましい。
【0013】
あるいは、倍率変更光学系は、試料側から順に、対物レンズから射出された光束の径を変倍する変倍レンズ群と、試料の像を結像する第1リレーレンズ群と、射出瞳の像を受光面上に結像する第2リレーレンズ群と、を有することが好ましい。
【0014】
あるいは、倍率変更光学系は、試料側から順に、試料の像を結像する第1リレーレンズ群と、射出瞳の像を受光面上に結像する第2リレーレンズ群と、を少なくとも有し、この倍率変更光学系を構成するレンズの少なくとも一部を光軸に沿って移動させて変倍することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る走査型顕微鏡を以上のように構成すると、対物レンズを交換した場合でも、最適化された倍率で光を受光面に導くことができ、明るい画像を取得することが可能な走査型顕微鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて本実施形態における走査型顕微鏡1の構成について説明する。この走査型顕微鏡1は、レーザー光を放射する光源6と、対物レンズ32とを有し、光源6から放射された照明光(レーザー光)をステージ8上に載置された試料Sに照射する機能を有する対物光学系3と、光源6と対物光学系3との間に配置され、試料Sからの観察光を取得するために、照明光により試料Sの面上を走査する走査装置2と、受光面5aが対物レンズ32の射出瞳位置と略共役位置に配置され、観察光を検出する検出部(PMT)5と、走査装置2と対物レンズ32との間に配置され、照明光及び観察光のいずれか一方を透過し、他方を反射する光分離部(ダイクロイックミラー)4と、光分離部4と検出部5との間に配置され、受光面5aと対物レンズ32の射出瞳位置との略共役関係を維持したまま、射出瞳の像の倍率を変化させる倍率変更光学系7と、を有して構成される。
【0017】
ここで、走査装置2は、ガルバノミラーを有して構成される走査機構22と、この走査機構22から出射した照明光を一旦結像する瞳投影レンズ23とを備えて構成される。また、対物光学系3は、瞳投影レンズ23で結像された照明光を略平行光に変換する第1集光レンズ31と、この略平行光を試料S上に集光して照射する上述の対物レンズ32とを備えて構成される。さらに、倍率変更光学系7は、試料Sからの観察光を集光して試料Sの像を結像する第1リレーレンズ群71と、対物レンズ32の射出瞳の像を検出部5の受光面5a上に結像させる第2リレーレンズ群72と、を備えて構成される。
【0018】
ここで、この走査型顕微鏡1は、試料Sに照明光(レーザー光)を照射することにより、この試料Sで発生する蛍光を用いた蛍光観察が可能な共焦点顕微鏡として使用することも可能であり、光源6と走査機構22との間の光路上に、レーザー光源6からのレーザー光を集光する第2集光レンズ21、レーザー光源6からのレーザー光を透過して試料Sからの蛍光を反射するダイクロイックミラー24、このダイクロイックミラー24で反射された蛍光を集光する第3集光レンズ25、この第3集光レンズ25の焦点近傍にピンホールが位置するように配置された遮光板26からなる共焦点光学系10、及び、このピンホールを通過した光を検出する光検出器9、を有して構成される。
【0019】
このような本実施の形態に係る走査型顕微鏡1において、上述の倍率変更光学系7は、対物レンズ32の倍率により変化する射出瞳の径に関わらず、この射出瞳の像の大きさを受光面5aの有効領域(光量を所定の精度で検出できる領域)と略同一の大きさになるように変倍するように構成されている。具体的には、例えば、倍率変更光学系7を構成する第1リレーレンズ群71及び第2リレーレンズ群72のうちのいずれか一方(図2に示す場合には、第2リレーレンズ群72の方)を、対物レンズ32の倍率に応じて交換することにより、このような変倍が可能となる。
【0020】
もちろん、この倍率変更光学系7の変倍方法は、他の方法であっても良く、例えば、正レンズ及び負レンズを組み合わせ、対物レンズ32から射出された光束の径を変倍する変倍レンズ群を、対物レンズ32と第1リレーレンズ群71との間の光路上に挿入するように構成しても良い。あるいは、第1リレーレンズ群71及び第2リレーレンズ群72を含むこの倍率変更光学系7を構成するレンズの少なくとも一部を光軸に沿って移動させて変倍するように構成しても良い(すなわち、この倍率変更光学系7をリレーズーム系として構成する)。
【0021】
ここで、図2を用いて、対物レンズ32の倍率に応じて変化する射出瞳の径の大きさに関わらず受光面5a上での射出瞳の像の大きさが略一定になるように、倍率変更光学系7を変倍することにより、より明るい画像が取得できる理由を説明する。
【0022】
第1リレーレンズ群71の焦点距離をf1、第2リレーレンズ群72の焦点距離をf2とし、f1=4f2の関係にあるとする。第1リレーレンズ群71と第2リレーレンズ群72(リレー光学系)を介して形成される対物レンズ32の瞳像の倍率(リレー倍率)は、f2/f1=f2/4f2=1/4(倍)である。
【0023】
ある低倍率の対物レンズ32の瞳の大きさ(径)をφとすると、受光面5a上に形成される瞳像の大きさは、φ×1/4=φ/4である(これは、受光面5aの有効領域に相当する大きさになっている)。
【0024】
また、受光面5aへの光の入射角度がα(最大入射角度に相当する角度になっている)とすると、受光面5aへの結像に寄与する光の対物レンズ32の瞳からの射出角度Xは、ヘルムホルツ−ラグランジの不変量より、φ×1/2×X=φ/4×1/2×αの関係から、X=α/4となる。
【0025】
このようなリレー光学系において、第1リレーレンズ群71により結像される試料Sの像面Fの大きさ(径)を視野数Aとする。次に、低倍率の対物レンズ32を高倍率の対物レンズ32に切り替えたとする。高倍率の対物レンズ32の瞳の大きさがφ/2であるとすると、リレー倍率が固定の場合は、受光面5a上に形成される瞳像の大きさは、φ/2×1/4=φ/8となる。
【0026】
受光面5aの有効領域を最大限に活用するために、瞳像の大きさが受光面5a上でφ/4になるように、第2リレーレンズ群72の焦点距離をf3(=2f2)に変更すると、リレー倍率は、f3/f1=2f2/4f2=1/2(倍)となる。
【0027】
これに伴って、対物レンズ32の瞳からの射出角度がα/4の光の受光面5aへの入射角度Yは、φ/2×1/2×α/4=φ/4×1/2×Yの関係から、Y=α/2となる。さらに、受光面5aへの光の最大入射角度はα(α/2の2倍)なので、受光面5aへの結像に寄与できる光の対物レンズ32の瞳からの出射角度はα/2(α/4の2倍)まで可能であり、結果的に視野数は約2Aとなる。
【0028】
リレー倍率が固定の場合は、試料Sから取得できる蛍光取得可能範囲はA(視野数)/対物レンズ32の倍率であるが、リレー光学系を変倍(1/4倍から1/2倍に変更)することにより、2A/対物レンズ32の倍率となり、約2倍に増加する。
【実施例】
【0029】
それでは、上述のような倍率変更光学系7を、試料Sの一次像を結像する第1リレーレンズ群71と、対物レンズ32の射出瞳の像を検出部5の受光面5a上に結像する第2リレーレンズ群72とを有する構成(図2の構成)とした場合についての実施例を以下に示す。
【0030】
本実施例に係る走査型顕微鏡1は、図1に示す構成で、その詳細は上述した説明の通りである。この走査型顕微鏡1では、16倍、20倍、及び60倍の対物レンズ32を使用し、これらを目的に応じて交換可能となっている。また、各対物レンズ32の倍率に対応して、倍率変更光学系7の第2リレーレンズ群72を交換するように構成されている。図2に、各対物レンズ32及び倍率変更光学系7の関係を示す。ここで、図2(a)は16倍、図2(b)は20倍、図2(c)は60倍の対物レンズ32を使用した場合における、各対物レンズ32と倍率変更光学系7との関係を示している。この図2に示すように、検出部5の受光面5aは、対物レンズ32の射出瞳位置Hの略共役位置に配置されている。また、試料Sの面上と、第1リレーレンズ群71により結像される試料Sの像面Fとは、略共役関係にある。
【0031】
次の表1に、本実施例で使用する各対物レンズ32毎に、対物レンズ32の倍率、対物レンズ32のNA、射出瞳直径、射出瞳から検出部5の受光面5aまでの倍率変更光学系7によるリレー倍率、視野数、及び、倍率変更光学系7中の第2リレーレンズ群72の焦点距離を示す。なお、受光面5aの面積を直径3mmとして計算した円の面積とし、この受光面5aが受光できる最大入射角を30°とし、第1集光レンズ31の焦点距離を200mmとしている。
【0032】
【表1】

【0033】
この表1に示す数値は、以下のような計算方法で導出した。本実施例における16倍の対物レンズ32での例を挙げる。16倍の対物レンズ32の焦点距離は、「第1集光レンズ31の焦点距離/対物レンズ32の倍率」で求められるので、200(mm)/16(倍)=12.5mmとなる。また、射出瞳の直径は、「2×対物レンズ32の焦点距離×対物レンズ32のNA」で求められるので、この射出瞳の直径=2×12.5(mm)×0.8=20mmとなる。
【0034】
直径20mmの射出瞳を直径3mmの受光面5aで受光できるように縮小投影するので、倍率変更光学系7によるリレー倍率は0.15倍となる。そのため、リレー倍率を0.15倍とすると、倍率変更光学系7中の第1リレーレンズ群71の焦点距離は、第1集光レンズ31の焦点距離と同じであるので、この倍率変更光学系7中の第2リレーレンズ群72の焦点距離は、200(mm)×0.15(倍)=30mmとなる。検出部(PMT)5への最大入射角は30度なので、視野数の大きさは「像高=焦点距離×tan(射出角)」で求められ、像高=30(mm)×tan(30度)=17.3mmとなる。また、視野数は直径で定義するので、像高を倍にすることにより視野数34.6が求められる。なお、他の倍率の対物レンズ32においても同様の方法により上記諸元を求めることができる。
【0035】
以上の表1及び図2から、本実施例の走査型顕微鏡1では、対物レンズ32を交換しても、最適化された倍率で光を受光面5aに導くことができ、高倍の対物レンズ32ほど、視野数が大きくなり、より広い部分において、試料面からの観察光を取得することができることがわかる。
【0036】
ところで、高倍の対物レンズ32ほど、大きな視野数で蛍光を取得すると有利になることが分かっている。その理由を、以下で説明する。
【0037】
多光子励起顕微鏡の主な使用法の1つに、試料Sとして脳の観察がある。脳は一般的に白く見えるが、これは脳が光を拡散し易いためである。この拡散のために多光子励起した脳の一カ所で光った蛍光は拡散されてしまう。この拡散光も含め、如何に多くの蛍光を取り込むことができるかが、明るさのポイントであり、また、明るければ明るいほど、試料のより深部が観察できることになる。ここで、何倍の対物レンズ32で励起しようとも、一カ所で光った蛍光の、脳内(試料S内)での拡散の度合いは変化しない。そのため、試料S上の如何に大きな部分を取り込むかで光の強度が変わることとなる。
【0038】
次の表2に、各種の対物レンズ32を使用した際の走査型顕微鏡1の試料S上の走査範囲の大きさと、各対物レンズ32の走査型顕微鏡1における試料S上での蛍光を取得できる範囲(蛍光取得可能範囲)との関係を示す。走査範囲は、走査型顕微鏡1の走査光学系の視野数(18と設定)/対物レンズ32の倍率であり、蛍光取得可能範囲は倍率変更光学系7の視野数/対物レンズ32の倍率である。また、走査範囲と、各対物レンズ32の試料S上での蛍光を取得できる範囲を示すとともに、この蛍光を取得できる範囲に対する走査範囲の関係を、各々の面積の割合で示す。また、図3に、各対物レンズ32における走査範囲(図3においてAで示される範囲)と、試料S上での蛍光を取得できる範囲(図3においてBで示される範囲)とを示す。なお、図3(a)は16倍、図3(b)は20倍、図3(c)は60倍の各対物レンズ32に対する走査範囲と蛍光を取得できる範囲を示す。また、表2中の走査範囲の値は、図3のAで示される正方形の対角線の長さ(mm)を示し、蛍光を取得できる範囲の値は、図3のBで示される円の直径(mm)を示す。この面積の割合の値が大きいほど、本発明の恩恵を効果的に受けていると考えることができる。
【0039】
【表2】

【0040】
前述の理由、及び、表2の結果からわかるように、本実施例では、対物レンズ32の倍率に対応して、倍率変更光学系7(中の第2リレーレンズ群72)を交換し、リレー倍率を変化させることで、より明るい画像を効果的に取得することができる。
【0041】
なお、本実施例の走査型顕微鏡1では、第2リレーレンズ群72を交換し、焦点距離を変えることによりリレー倍率を変更させているが、上述のように、他の異なる実施例として、リレーズーム系として構成したり、変倍レンズ群を中間に挿入することにより変倍しても、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、この倍率変更光学系7を、リレーズーム系で構成すると、対物レンズ32の倍率に関わらず最適化が図られるので、何種類もの交換レンズ(例えば、第2リレーレンズ群72)を用意する必要がない分、よりコンパクトな製品を得ることができる。また、このような倍率の変化を自動化することにより、ユーザーが複雑な調整を行わなくても、常に明るい画像を快適に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例に係る走査型顕微鏡の構成を示すレンズ構成図であり、(a)は16倍、(b)は30倍、(c)は60倍の対物レンズをそれぞれ用いた場合のレンズ構成図である。
【図3】第1実施例に係る走査型顕微鏡の対物レンズにおける走査範囲の実視野と蛍光を取得できる範囲とを示す概略図で、(a)は16倍、(b)は20倍、(c)は60倍の各対物レンズに対する走査範囲の実視野と蛍光を取得できる範囲とを示す。
【符号の説明】
【0044】
1 走査型顕微鏡 2 走査装置 3 対物光学系 4 光分離部
5 検出部 6 光源 7 倍率変更光学系 32 対物レンズ
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出する光源と、
前記照明光を集光して試料に照射する対物レンズと、
前記光源と前記対物レンズとの間に配置され、前記照明光により前記試料の面を走査する走査装置と、
前記走査装置と前記対物レンズとの間に配置され、前記照明光及び前記試料からの観察光のいずれか一方を透過し、他方を反射する光分離部と、
受光面が前記対物レンズの射出瞳位置と略共役位置に配置され、前記光分離部で透過若しくは反射した前記観察光を検出する検出部と、
前記光分離部と前記検出部との間に配置され、前記受光面と前記対物レンズの射出瞳との略共役関係を維持したまま、前記射出瞳の像の大きさを前記対物レンズに応じて変化させる倍率変更光学系と、を有する走査型顕微鏡。
【請求項2】
前記倍率変更光学系は、前記対物レンズに応じて、前記射出瞳の像が前記受光面の有効領域と略同一大きさになるように変倍する請求項1に記載の走査型顕微鏡。
【請求項3】
前記倍率変更光学系は、前記試料側から順に、
前記試料の像を結像する第1リレーレンズ群と、
前記射出瞳の像を前記受光面上に結像する第2リレーレンズ群と、を有し、
前記第1リレーレンズ群、及び、前記第2リレーレンズ群の少なくともいずれか一方を交換することにより、変倍する請求項1または2に記載の走査型顕微鏡。
【請求項4】
前記倍率変更光学系は、前記試料側から順に、
前記対物レンズから射出された光束の径を変倍する変倍レンズ群と、
前記試料の像を結像する第1リレーレンズ群と、
前記射出瞳の像を前記受光面上に結像する第2リレーレンズ群と、
を有する請求項1または2に記載の走査型顕微鏡。
【請求項5】
前記倍率変更光学系は、前記試料側から順に、
前記試料の像を結像する第1リレーレンズ群と、
前記射出瞳の像を前記受光面上に結像する第2リレーレンズ群と、を少なくとも有し、
当該倍率変更光学系を構成するレンズの少なくとも一部を光軸に沿って移動させて変倍する請求項1または2に記載の走査型顕微鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−91694(P2010−91694A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260248(P2008−260248)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】