説明

走査装置

所定のボリューム中の所定の領域に放射線束(3)を合焦させるための走査装置は、放射線束(3)が最初に入り、少なくとも1つの第1の光学素子(11)を有する入力光学系(6)と、入力光学系(6)から出た放射線束(3)を合焦させ得る合焦光学系(8)と、第1の光学素子(11)と合焦光学系(8)の間に配置されており、第1の光学素子(11)を通過した後の放射線束(3)を、焦点の調整位置に応じて横方向に偏向させるための偏向機構(7)とを含み、放射線束(3)の焦点の放射線束方向における位置を調整するために、入力光学系(6)の少なくとも1つの光学素子(11)が、偏向機構(7)に対して移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のボリューム中の所定の領域に放射線束を合焦させるための走査装置、およびあるボリューム中の所定の領域に放射線束を合焦させるための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
あるボリューム中の所定の様々な領域に、つまり横方向または放射線束を横切る方向にも、また放射線束に沿った方向にも放射線束を合焦させることは、多くの光学装置または多くの光学的方法において重要なことである。以下においては、放射線束として特にレーザから放出されたレーザ光線も考えられる。
【0003】
例えば眼科においてレーザ光線は、ヒトの目の非正視を目の角膜のレーザ外科手術で矯正するために使用される。その際に、特に重要なのは、「レーシック(LASIK)」(Laser in situ Keratomileusisレーザ角膜曲率形成術)という名称で知られる方法であり、この方法では、パルスレーザ光線によって、角膜表面ではなく角膜内部の物質を焼灼つまり切除する。このために角膜の外側の表面に、「フラップ(Flap)」とも呼ばれる、角膜よりかなり薄い、垂れぶた状のフタを作る。本来の焼灼処置のためにこのフタを折り返し、その後すぐに、非正視を矯正するため、露出部分の表面からパルスレーザ光線で物質を切除する。その後、焼灼された表面の上にフタを戻す。
【0004】
角膜中に正確に規定された深さで、可能な限り痛めないように精密にフタを形成し得るために、フェムト秒レーザパルス、つまり10−12sより短いパルス幅のレーザパルスを用いることが提案されている。このようなパルスにより、局部に制限され、数マイクロメートルしか拡がらないオプティカル・ブレークダウン、いわゆる光切断を角膜に生じさせ得る。このようなオプティカル・ブレークダウンを正確に所定の位置で密に位置決めすることで、フタを非常に厳密に形成し得る。その際に、フタを正確に形成するための基本的な前提条件は、使用するパルスレーザ光線の焦点を、横方向にだけでなく、とりわけ角膜の深さ、したがってレーザ光線の伝播方向においても、厳密に位置決めすることである。
【0005】
米国特許出願公開第2003/0053219号明細書には、外科での利用を想定したズームレンズシステムが記載されている。様々な深さに、つまりレーザ光線の方向において合焦させるために、ズームレンズを移動させ、それによって合焦光学系の焦点距離を変化させる。焦点を深さにおいて必要な精度で位置決めできるには、ズームレンズは非常に高い精度で調節されなければならず、これには相応の高価な機械装置が必要である。
【0006】
米国特許出願公開第6751033号明細書には、レーザ源から放出されたレーザ光線を横方向に偏向させ、その後、可変の焦点距離を有する光学系を使用して所定の深さに合焦させる、眼科用のレーザシステムが示されている。このシステムでは、米国特許出願公開第2003/0053219号明細書のシステムと同様の欠点が予測され得る。
【0007】
上述の種類の走査装置の別の応用分野は、いわゆる共焦点レーザ走査顕微鏡であり、レーザ光線を、検査対象のあるボリューム中の所定の領域に合焦させる。この領域から出た光が検出器に結像され、この場合、中間像面に小さな絞り穴が配置されており、この絞り穴は、基本的に前記の領域もしくは焦点からの光のみを通過させるが、隣接する領域からの光は通過させない。これにより横方向においても深さにおいても問題が解決される。横方向およびレーザ光線方向への、試料と焦点の相対的移動によって、検査対象の3次元ボリュームを結像し得る。焦点をレーザ光線方向において対象物に対して位置決めするために、対象物を保持している試料台を移動させる。これは機械装置に費用がかかり、また試料台の質量が比較的重いことで、非常に迅速な位置調節が大きく制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、レーザ光線を、横方向およびレーザ光線方向において簡単かつ正確に、あるボリューム中の所定の様々な領域に合焦可能である、所定のボリューム中の所定の領域に放射線束を合焦させるための走査装置を提供すること、ならびに対応する方法を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、所定のボリューム中の所定の領域に放射線束を合焦させるための走査装置によって解決され、この走査装置は、放射線束が最初に入り、少なくとも1つの第1の光学素子を有する入力光学系と、入力光学系から出た放射線束を合焦可能な合焦光学系と、第1の光学素子と合焦光学系の間に配置されており、第1の光学素子を通過した後の放射線束を、焦点の調整位置に応じて横方向に偏向させるための偏向機構とを備えており、これらは通過、通り抜け、または反射を意味しており、また、放射線束の焦点の放射線束方向における位置を調整するために、入力光学系の少なくとも1つの光学素子が偏向機構に対して移動可能である。
【0010】
つまり走査装置は、光線源、例えばレーザから放出され得る放射線束の方向に、順に、入力光学系と、その後ろに配置された偏向機構と、最後に配置された合焦光学系とを備えている。入力光学系と合焦光学系が協働して、放射線束の焦点位置を放射線束方向において調節することができ、そのために、特に入力光学系の第1の光学素子でもよい入力光学系の光学素子を、所望の焦点位置に応じて、放射線束方向において偏向機構または合焦光学系に対して移動させる。横方向、つまり放射線束方向を横切る方向における焦点移動は偏向機構によって行われ、この偏向機構は、例えば適切な制御装置を介して偏向機構に送られる制御信号により、焦点を、所望の、または制御信号によって与えられた位置へと横方向に移動できるように、制御可能である。
【0011】
好ましくは、ただし必須ではないが、放射線方向において入力光学系の最初の素子でよい第1の光学素子と合焦光学系の間に偏向機構を配置することによって、1つには、入力光学系を軸付近の束のためにのみ設計すればよいため、光学システム全体に対する要件が軽減される。このため補正が容易になり、素子の面積が低減される。もう1つには、合焦を入力光学系の光学素子の移動によって行うため、合焦光学系を比較的簡単な設計にし得る。
【0012】
全体として、これにより所定のボリューム中での3次元の迅速で簡単な焦点位置の調整を達成し得る。
偏向機構に対して移動可能な光学素子を偏向機構に対して移動させることにより、入力光学系から出る放射線束の発散を変更可能にすることが好ましい。入力光学系のこのような実施形態は、入力光学系を非常に簡単な構成にし得るという利点がある。次いで、合焦光学系を移動させる必要なしに、合焦光学系が、入力光学系から出る放射線束をその発散角に応じて様々な深さに、つまり放射線束方向における位置に合焦させる。したがって上記課題はさらに、それぞれの領域の位置に応じて放射線束の発散を変化させ、放射線束をその伝播方向を横切る方向に偏向させ、次いで合焦させるという、あるボリューム中の所定の領域に放射線束を合焦させるための方法によっても解決される。ここで、放射線束の発散を変化させるとは、放射線束の発散角または収束角を変化させるという意味である。この場合、走査装置に送られる放射線束は、収束性、発散性、または好ましくは平行でよい。発散を変化させた後、偏向機構の手前で、放射線束は、所望の焦点位置に応じて、発散性、平行であるか、または収束性でよい。入力光学系と合焦光学系は、焦点が所定のボリューム中の深さ領域のほぼ中心にあるときに、平行な放射線束を入力光学系で再度、平行な放射線束に変換するように設計され相互に配置されることが特に好ましい。これには、そのボリューム中における焦点の侵入深度が浅いときの結像誤差と、侵入深度が深いときの結像誤差の間を調整する、システムの補正が可能であるという利点がある。
【0013】
入力光学系の第1の光学素子は、例えばレンズ、あるいは反射性素子、例えばミラー、特に凸面ミラーまたは凹面ミラー、あるいは回折性の光学素子でよい。
偏向機構に対して移動可能な光学素子は、例えばレンズでよい。もう1つの好ましい実施形態では、偏向機構に対して移動可能な光学素子は、回折性の光学素子である。
【0014】
代替方法では、偏向機構に対して移動可能な光学素子は、反射性光学素子であることが好ましい。
原理的に、入力光学系は、第1の光学素子と共に、更なる光学素子を有し得る。入力光学系は、負の屈折力を有するレンズまたはレンズ群と、放射線束方向においてその後ろに配置された正の屈折力を有するレンズまたはレンズ群とを含むことが好ましい。このような配置は、有利なことに、特に構造がコンパクトであるという点で優れており、また正の屈折力を有する2つの素子を備えた拡大器とは違って、実像の中間像はない。そして入力光学系の第1の光学素子は、特に負の屈折力を有するレンズまたは負の屈折力を有するレンズ群の最初のレンズでよい。この場合、レンズまたはレンズ群を特に、入力光学系が、少なくとも偏向機構に対して移動可能な光学素子の場所に関して、入射する平行な放射線束の断面を変え、特に広げ得る、拡大器となるように配置し得る。このような配置は、有利なことに、特に構造がコンパクトであるという点で優れている。
【0015】
別の実施形態では、負の屈折力を有するレンズもしくはレンズ群および/または正の屈折力を有するレンズもしくはレンズ群の代わりに、相応に作用する回折性光学素子(DOE)もしくは回折性光学素子群、または相応に作用する反射性光学素子もしくは反射性光学素子群が使用できる。つまりレンズまたはレンズ群は、部分的または全体的に、回折性の光学素子またはミラーで置き換え得る。この場合、発散を変化させるという所望の機能は、別の素子で達成される。したがって一構成では、放射線方向において第1の回折性光学素子と、放射線方向において第1の素子の後ろに配置された第2の回折性光学素子とを備える入力光学系が使用できる。基本位置において、第1の回折性光学素子は平行な束を収束性の束に変換し、第2の回折性光学素子は収束性の束を再び平行な束に変換し、その際に、回折性の光学素子を相応に形成および配置することによって束が拡大する。入力光学系から出る束の発散を変化させるために、第1および第2の回折性の光学素子の間隔を変化させる。更なる構成として、2つの凹面ミラーを備えた入力光学系が挙げられる。放射線経路において第1の凹面ミラーは実像の中間像を生じさせ、この中間像は、放射線経路において第1の凹面ミラーの後ろに配置された第2の凹面ミラーによって無限遠に結像される。両方の凹面ミラーの間隔を変化させることによって発散が制御される。焦点距離の比によって、出射束の直径と入射束の直径の比が決まる。レンズと、回折性の光学素子と、ミラーとを組み合わせてもよい。
【0016】
偏向機構に対して移動可能な光学素子は、負の屈折力を有するレンズまたは負の屈折力を有するレンズ群の1つのレンズであることが好ましい。この場合、入力光学系は、有利なことに、特に僅かな数のコンポーネントしか必要としない。特に、入力光学系の第1の光学素子は、偏向機構に対して移動可能な光学素子であり得る。入力光学系のこのような構成は、1つには、負の屈折力を有するレンズを、したがって移動可能な光学素子を、非常に小型に設計することができ、その結果、質量が軽くなり、このため非常に迅速に移動させることが可能になる。もう1つには、負の屈折力を有するレンズの移動と、放射線束方向における焦点の対応する移動の間の変換比が特に有利であり、つまり入力光学系および合焦光学系が適切に設計されている場合、負の屈折力を有するレンズが所定の距離を移動すると、従来より、非常に僅かな、深さにおける対応する焦点移動が生じ、その結果、深さにおける焦点位置の調整に関する所定の精度を達成するために必要な、負の屈折力を有するレンズに対する駆動力の精度に対する要件が比較的低くなる。
【0017】
偏向機構に対して移動可能な光学素子の制御された移動を可能にするために、光学素子を、特に放射線経路に対して平行に移動可能な、固定具中に保持することが好ましい。
走査装置はさらに、偏向機構に対して移動可能な光学素子を移動させるための駆動機構を含むことが好ましい。この駆動機構は、移動可能な光学素子を相応に位置決めすると共に、制御信号を対応する移動に変換するもう1つのアクチュエータを備え得る。アクチュエータとして、例えば圧電アクチュエータ、電気リニア・モータ、または回転運動を偏心駆動装置などの動力伝達装置を介して直線運動に変換する電気モータも使用できる。電気モータを使用する場合は、好ましくはステッピング・モータを使用し、これは、その移動が調整なしでも正確に制御可能であるという利点がある。そうでなければ、駆動機構は、制御ループを備えることが可能であり、この制御ループは、アクチュエータと共に、偏向機構に対して移動可能な光学素子の位置を検出するセンサと、センサによって検出された光学素子の位置に応じて、光学素子を所定の目標位置に移動させるようにアクチュエータを駆動する制御回路とを含んでいる。
【0018】
偏向機構は、原理的に、入力光学系の第1の光学素子と合焦光学系の間の任意の位置に配置し得る。しかし、偏向機構は、入力光学系と合焦光学系の間に配置されていることが好ましい。この配置では、偏向機構で放射線束を横方向に移動させる場合は、入力光学系では放射線束を横方向に移動させないので、入力光学系の構成を簡単にできるという利点がある。
【0019】
偏向機構は、原理的に、既知の方式および方法で構成し得る。例えば、偏向機構は、放射線束の放射に対して反射性の素子、例えばミラーを備えることができ、このミラーは2つの互いに異なる、好ましくは互いに直交する軸周りで傾動することができ、これに加えて偏向機構はさらに、制御信号に応じて反射性素子を両方の軸周りで傾動可能である少なくとも1つのアクチュエータを備えている。この実施形態には、反射性素子を1つしか必要としないという利点がある。
【0020】
しかしながら、偏向機構は、互いに離隔され、互いに、また合焦光学系に対して移動可能な2つの反射性素子を有していることが好ましい。このような構成では、有利なことに、簡単な手段によって、反射性素子の、したがって焦点位置の横方向つまりその焦点付近で放射線束を横切る方向における非常に正確な位置決めおよび調整が可能となる。この場合、偏向機構はさらに、所望の横方向の偏向または焦点位置に対応するそれぞれの制御信号をそれぞれの反射性素子の移動に変換する、2つのアクチュエータを備えることができる。放射線束の放射に対して反射性の素子は、互いに直交する軸周りで傾動可能であることが特に好ましい。反射性素子の少なくとも1つは、特にミラーとして形成され得る。
【0021】
反射性素子の間に、第1の反射性素子を第2の反射性素子上に結像する瞳光学系が配置されていることが好ましい。この配置では、特に、放射線束が最初に当たる反射性素子が瞳として働く場合、瞳の位置が一義的になるという利点を有している。要件の厳しい、つまり非常に精密に動作する光学システムでは、瞳の位置が一義的で固定されていることは、良好な補正のための前提条件である。
【0022】
深さ、つまり放射線束方向において焦点を調節するために、本発明によれば、偏向機構に対して移動可能な光学素子を移動させる。これは可変の焦点距離を有する合焦光学系を除外するということではない。とはいえ合焦光学系は焦点距離が固定されていることが好ましい。特に、これはズームレンズを含まない。本発明に基づく方法では、偏向させた放射線束を合焦させるために、焦点距離が固定した合焦光学系を使用することが好ましい。また合焦光学系が、偏向機構に対して固定して配置されていることがさらに好ましい。つまり、この実施形態では、焦点位置の調節は、合焦光学系を変化させずに行われ、これには合焦光学系を特に簡単に設計し得るという利点がある。
【0023】
偏向機構と、合焦光学系の少なくとも1つの出射レンズまたは出射レンズ群の間の放射線経路に、ビーム・スプリッタが配置されていることが好ましい。その際、合焦光学系の出射レンズまたは出射レンズ群とは、合焦光学系のうち、そこから合焦させるべきボリュームへと放射線束を出射させるレンズまたはレンズ群であると理解される。この場合、ビーム・スプリッタは、一方では、偏向機構から出た偏向された放射線束が、出射レンズまたは出射レンズ群に当たり、もう一方では、前述のボリュームからの観察用放射線束の少なくとも一部が、偏向機構と出射レンズまたは出射レンズ群の間の放射線経路から切り離されるように配置されていることが好ましい。ビーム・スプリッタは、走査装置で合焦させる放射線束の放射の波長に応じて、特に2色性に設計することができ、このためビーム・スプリッタは、放射線束と観察用放射線束に異なる影響を及ぼす。このような走査装置には、放射線束が差し込んでいる最中に、ボリュームからの観察用放射線束の少なくとも一部を使用して、ボリュームを容易に観察し得るという利点がある。特に、合焦光学系の焦点距離が固定されており、偏向機構に対して固定的に配置されている場合、放射線束の焦点位置に関係なく、固定的に調整した光学系またはカメラによってボリュームを観察し得る。
【0024】
出射レンズまたは出射レンズ群は、平行な放射線束を所定のボリューム中に合焦させるように形成されていることが好ましい。この場合、出射レンズまたは出射レンズ群は、対物レンズまたは対物レンズ群として理解し得る。その際、出射レンズまたは出射レンズ群は、ボリューム全体を基本的に鮮明に無限遠に結像し、したがって焦点深度は、同時観察のために、有利なことに、ボリューム全体を観察光学系の調節なしで鮮明に結像および観察し得る深さとなるように設計されていることが好ましい。
【0025】
合焦光学系は、部分光学系に分割し得る。合焦光学系は、放射線束を放出する放射源の実像中間像を発生させるために入射対物レンズを有していることが好ましい。そして合焦光学系は、中間像を無限遠に結像する鏡筒光学系をさらに有していることが好ましい。鏡筒光学系によって無限遠に結像された中間像はその後、出射レンズもしくは出射レンズ群または出射光学系によって目標のボリュームに合焦される。幾つかの部分から成るこの設計によって、合焦光学系は、従来より著しく簡単に補正できる。したがって合焦光学系、例えば入射対物レンズの様々な部分と鏡筒光学系の間の補償効果を活用することができる。部分光学系は、合焦光学系全体より大きな焦点距離を有し得る。これによって、例えば入射束の直径と、入射対物レンズの焦点距離の間の比を有利に形成することができ、それによって補正が容易になる。それだけでなく、鏡筒光学系と出射光学系の間の放射線経路が平行であることによって、同時観察のためのインターフェイスが生じる。特に、出射レンズまたは出射レンズ群の焦点距離は、同時観察が簡単に可能であるように選択し得る。
【0026】
本走査装置は、任意の光線源に使用できるが、レーザに使用することが好ましい。特にこの場合、放射線束を放出する放射源の全ての実像中間像が、気体、特に空気中、または真空中にあることが好ましい。これには、非常に強度の高いレーザ光線のために走査装置を使用する場合に、走査装置の光学的コンポーネント、例えばレンズまたはミラーにおいて、コンポーネントを破損させる可能性があるオプティカル・ブレークダウンが生じ得ないという利点がある。
【0027】
入力光学系および合焦光学系は、所定のフェムト秒パルスのスペクトル幅にわたって、光学系を通り抜けるフェムト秒パルスの、分散に基づく時間的拡張を30%未満に抑えて合焦させ得るように色補正されることが好ましい。走査装置の光学システム全体が相応に補正されることが好ましい。パルスがシステムに入射する前の適切な分散管理、および既に言及された光学システム全体の色補正により、焦点でのパルス長を、理論的に達成可能なパルス長より30%未満の拡張に抑えることが可能である。この色補正は1040nm付近の波長領域のフェムト秒パルス向けに設計されていることが好ましい。したがって、このような走査装置は特に、LASIK治療で角膜のフタを形成するためにフェムト秒パルスの使用が考えられるレーザ外科システムに適している。
【0028】
それだけでなく、光学システムは、回折が制限されるように補正されることが好ましく、それにより、例えば横方向における、光学系によって引き起こされる結像誤差がほぼ抑えられ、または最小限に低減される。
【0029】
合焦光学系はさらに、開口数が少なくとも0.35であることが好ましい。
特にレーザ外科の目的に走査装置を使用する場合、偏向機構に対して移動可能な光学素子は、放射線束の焦点が放射線方向に0.5mmより大きな範囲を移動し得るだけの距離を、偏向機構に対して移動可能であることが好ましい。このような構成は、LASIKによる治療に走査装置を使用する場合、走査装置に対して角膜を動かさずに、角膜のフタを簡単に作り得るという利点がある。
【0030】
同じ目的で、偏向機構は、放射線束の焦点が、所定のボリューム中で、横平面内で直径11mmの範囲で移動可能となるように形成されていることが好ましい。これにも、走査装置に対して角膜を動かさずに、LASIKによる治療に必要な角膜のフタを、角膜の移動なしで作り得るという利点がある。
【0031】
本走査装置は、任意の光線発生源と共に使用可能であるが、好ましくは放射線束に沿ってフェムト秒パルスを放出するためのフェムト秒レーザを備えており、その際、レーザ、入力光学系、および合焦光学系は、合焦された放射線束の焦点の直径が5μmより小さくなるように設計されている。このような走査装置は、特にLASIK治療において角膜のフタを非常に精密に作成するのに適している。
【0032】
しかし本走査装置は、別の目的にも使用可能である。照明用レーザ光線を放出するためのレーザを備えるレーザ走査顕微鏡は、照明用レーザ光線を合焦させるために、本発明に基づく走査装置を備えていることが好ましい。レーザ走査顕微鏡は特に、照明用レーザ光線の焦点が、横方向および深さにおいて走査しながら、所定の検査ボリューム中を導かれるように、走査装置を制御する制御機構を備え得る。その際、レーザ走査顕微鏡の試料ホルダと合焦光学系は、少なくとも試料の検査中は互いに対し固定して配置されていることが好ましい。このようなレーザ走査顕微鏡には、試料を移動させるために試料台の移動を必要とせず、それにより一方では構成がかなり簡単になり、他方では焦点位置のz方向でのより迅速な調節が可能になるという利点がある。
【0033】
以下に本発明を、図面を用いてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1において、ヒトの目1を治療するためのレーザ外科システムは、パルス放射線束3としてのパルスレーザ光線を放出するフェムト秒レーザである放射源2と、本発明の第1の好ましい実施形態に基づく走査装置4とを含んでおり、この走査装置によって、目1の角膜における3次元ボリューム中の所定の様々な領域に、放射線束3を合焦させ得る。目1の角膜上に凹形の接触面を有する接触ガラス5があり、この接触面に目1の角膜が接していることによって、レーザ光線による治療中の角膜の動きが可能な限り抑えられる。
【0035】
フェムト秒レーザである放射源2は、パルス幅が約200fsの範囲で、波長領域が1040nm付近のフェムト秒パルスを放出するように構成されており、また既知である。放射源は、特に本来のレーザだけでなく、パルスを発生させる機構も含み得る。
【0036】
走査装置4は、レーザから出る放射線束3の方向に、順に、放射線束3がそれを通って走査装置4に入る入力光学系6と、入力光学系6から出た放射線束3を所定の制御信号に応じて横方向に、つまり偏向機構7に入射する放射線束方向を横切る方向に偏向させる偏向機構7と、偏向機構7に対して固定して配置されており、入力光学系6から出て偏向機構7によって偏向された放射線束3を合焦させるための合焦光学系8とを有しており、この合焦光学系が目1の角膜の領域に放射線束を合焦させる。
【0037】
概略的にのみ示された偏向機構7は、既知の方法で形成されており、放射線束3の放射に対して反射性の、ミラーの形態の2つの素子9および9’を有しており、これらの反射性素子は、図1に示されていない軸周りに傾動可能に支承されている。より単純な表現にするために、図1では、反射性素子9および9’は、概略的に互いに平行にのみ示されているが、実際には、傾動軸が互いに、また入力光学系6の光軸に対して直交しており、このため第1の反射性素子9が傾動することで、放射線束3はy方向、つまり図1では上または下へ、また第2の反射性素子9’が傾動することで、y方向および入力光学系の光軸に直交するx方向に、図1では図の平面中または平面外へと偏向可能である。反射性素子もしくはミラー9および9’は検流計方式で振られ、このためにアクチュエータ10または10’が設けられており、このアクチュエータは、図1で矢印によって示されている信号接続を介して制御機構と接続されている。制御機構は、放射線束3の焦点の、横方向、つまりxおよびy方向の所望の位置に応じてアクチュエータ10および10’に制御信号を発し、アクチュエータはそれに基づいて反射性素子もしくはミラー9および9’を既知の方法で傾動させる。
【0038】
入力光学系6は、第1の光学素子として、負の屈折力を有する第1のレンズ11、つまり発散レンズの形態の、偏向機構7に対して移動可能な光学素子と、収束レンズ12、つまり正の屈折力を有するレンズとを備えている。両方のレンズの光軸は同軸に延びている。第1のレンズ11はレンズ・ホルダ13内に保持されており、このレンズ・ホルダは、図1に示されていないガイド中で、第1のレンズ11の光軸と平行に直線的にずらすことができ、したがって第1のレンズ11は、入力光学系6の光学素子として、偏向機構7に対して移動可能である。レンズ・ホルダ13を、したがって第1のレンズ11を光軸と平行に移動させるために、図1には概略的にしか示されていないアクチュエータ、本例ではリニア駆動器14を使用し、このアクチュエータも、図示しない制御機構と接続されていることが矢印で示されている。制御機構は、第1のレンズ11を移動させるために、焦点範囲での放射線束3の方向に沿った焦点の所望位置に応じて、制御信号をリニア駆動器14に送信する。本例では、リニア駆動器14は、ステッピング・リニア・モータによって実現される。
【0039】
偏向機構7に対して移動可能な光学素子または第1のレンズ11が、収束レンズ12に対して、図1において実線で具体的に示された場所にあるとき、入力光学系6は、放射線束3の断面を拡大する拡大器として働き、その際、入力光学系6の手前の放射線束3が平行である場合、そこから出る放射線束3は再び平行である。
【0040】
合焦光学系8は、図1の例示的実施形態においては、偏向機構7に対して固定された収束レンズの形態での出射レンズ15または対物レンズとしてのみ示されており、この合焦光学系が、入力光学系6から出て、偏向機構7によって横方向に偏向された放射線束3を目1の角膜の領域に合焦させる。しかしながら出射レンズ15は、正の屈折力を有する複合的な構成の光学システムを概略的に示しているだけであり、この場合、この表現の枠内では構成は重要ではない。
【0041】
放射線束3に沿った方向における放射線束の焦点Fの位置は、入力光学系6と合焦光学系8によって決定される。放射線束の方向における焦点Fの位置は、第1のレンズ11をその光軸に沿って、偏向機構7および合焦光学系8に対して移動させることで調整される。第1のレンズ11と収束レンズ12との間隔を変化させると、レンズ11の手前で平行である放射線束3の発散が変化し、これは図1に例として破線で示されている。第1のレンズ11の位置に応じて、収束レンズ12から出る放射線束は、発散性、平行、または収束性であり得る。その後、放射線束の発散に応じて、固定されている合焦光学系8が、合焦光学系8または出射レンズ15から異なる距離に放射線束を合焦させる。
【0042】
本例においては、第1のレンズ11の直径が約6mmの場合、小型で軽量であるため、非常に簡単かつ迅速に移動させ得る。それだけでなく偏向機構7に対して移動可能な光学素子、つまり第1のレンズ11の移動に対する、放射線束3の方向における焦点Fの対応する移動の変換比は、本例では約20:1であり、これは、偏向機構の後ろに配置したズーム光学系を用いる場合よりかなり大きい。ズーム光学系の場合、一般的に非常に低い変換比が予想され、米国特許出願公開第2003/0053219号明細書の例では1:1である。
【0043】
図2は、本発明の第2の好ましい実施形態に基づく走査装置を備えたレーザ外科システムの一部を示している。この走査装置は、第1の走査装置4とは異なり、偏向機構7と、出射レンズ15として働く収束レンズを備えた合焦光学系8との間の放射線経路中にビーム・スプリッタ16が配置されており、このスプリッタによって、目1の角膜における点から出ており、出射レンズ15が目1の角膜に物点を結像する場合にほぼ無限遠となる観察用放射線束17を、偏向機構7と合焦光学系8の間の放射線経路から少なくとも部分的に、図に示されていない接眼レンズを備えた鏡筒、または図に示されていないカメラを備えた対物レンズの方向に偏向可能であり、したがって角膜上に放射線束3を放出している最中に、同時に角膜を観察することが可能である。少なくとも治療中は、合焦光学系8と目1の角膜の位置が互いに固定されており、また合焦光学系8の焦点が処置ボリューム中にあることによって、放射線束3の焦点を、深さ、つまり焦点付近での放射線束3の方向と平行な方向に動かす場合も、一定の鮮明さで同時観察が行われる。観察のための開口数を固定する場合、一方では高い解像度での十分に明るい画像が、もう一方では可能な限り深い焦点深度が達成し得るよう考慮することが好ましい。
【0044】
図3は、本発明の第3の好ましい実施形態に基づく走査装置4’を備えたレーザ外科システムを部分的かつ概略的に示している。その際、第1のコンポーネントと一致するコンポーネントには同じ符号を付してあり、またこれらのコンポーネントに関する第1の例示的実施形態での実施が、ここでも相応に適用される。
【0045】
ここでは第1の例示的実施形態の偏向機構7が偏向機構7’で置き換えられており、この偏向機構7’は、反射性素子9および9’の間隔のみが偏向機構7と異なっている。反射性素子9の傾動軸は、放射線束3と直交しており、また少なくともほぼ入力光学系6の光軸を切断している。反射性素子9’および合焦光学系8’にも対応する構成が適用される。静止状態での反射性素子9および9’は、入力光学系6の光軸に沿って入射する放射線が、第2の反射性素子9’の傾動軸の領域に当たるように相互に方向付けられている。静止状態でのミラーは、入力光学系6または合焦光学系8’の光軸に対し約45°の角度に傾けられている。
【0046】
これに加えて、反射性素子9および9’の間の放射線経路中に瞳光学系18が配置されており、この瞳光学系は2つの収束レンズ19および19’を備えており、これらの収束レンズが、放射線束3が最初に当たる反射性素子9を、もう1つの反射性素子9’上に結像させ、その際に収束レンズ19および19’の間に生じる実像の中間像は空気中で発生するので、走査装置のコンポーネントでのオプティカル・ブレークダウンは回避される。この方法では、結果的に瞳の位置が固定され、それによって合焦光学系8’の好ましい設計が容易になる。それだけでなく、反射性素子9および9’が互いの中に結像することによって、反射性素子9’のサイズを小さく保つことが可能であり、ミラーは、例えば主軸および副軸の長さが約21mmと15mmの楕円である。
【0047】
合焦光学系8’は、合焦光学系8と幾つかの点で異なっている。この合焦光学系8’は複数の部分から構成されており、偏向機構7’から出て横方向に偏向された放射線束3が入射し、実像の中間像において合焦する入射対物レンズ20と、中間像をその位置に応じて無限遠に結像させる鏡筒レンズ21と、放射線経路中で鏡筒レンズ21の後ろに配置されており、放射線束3を出射レンズ15’上へと偏向させるビーム・スプリッタ16’と、その場所で平行、僅かに収束性、または僅かに発散性である放射線束3を、固定の焦点距離に対応して目1の角膜に合焦させ、それにより対物レンズとして機能する出射レンズ15’とを有している。
【0048】
横方向、ならびに焦点付近での放射線束3の方向における焦点位置の調節は、第1の例示的実施形態と同様に行われる。
ビーム・スプリッタ16’は、出射レンズ15’による目1の角膜における点の結像によって無限遠に発生する観察用放射線束17’が、ビーム・スプリッタ16’を通り抜けて、図3に示されていない接眼レンズを備えた鏡筒、または図3に示されていないカメラを備えた対物レンズに導かれ得るように構成されている。これは、第2の例示的実施形態と同様に、放射線束3による角膜の治療中の同時観察を可能にする。
【0049】
合焦光学系を、入射対物レンズ20と、鏡筒レンズ21と、出射レンズ15’または主対物レンズとに分割することは、同時観察のためのインターフェイスを可能にすると共に、合焦光学系の入口での束の直径を小さくし得るという利点を有している。例えば束の直径を15mmとすることができ、したがって作用直径が15mmの反射性素子9および9’を使用し得る。反射性素子9および9’のサイズが比較的小さいことは、速い走査速度を達成するために有利である。それだけでなく、合焦光学系を部分システムに分割すると、合焦光学系の回折を制限する補正が可能になる。部分システムの間の束は、補正されていなければならないわけではないので、補償効果が利用でき、それにより、必要なレンズ数が明らかに減少する。
【0050】
望ましくない相互作用を回避するために、この例示的実施形態での全ての光学的コンポーネントは、別の例示的実施形態と同様に、全ての実像中間像が空気中にあり、非常に強いレーザ光線でも光学的コンポーネントでのオプティカル・ブレークダウンに至り得ないように設計されている。
【0051】
ここまで説明した例示的実施形態では、走査装置の全ての光学システム、特に入力光学系および合焦光学系は、それぞれ使用するfsパルスのスペクトル幅に関して色補正がなされている。パルスのシステム入射前の適切な分散管理、および既に言及された光学システム全体の色補正により、焦点において、分散に基づく、つまり色収差によって条件付けられ、理論的に達成可能なパルス長より30%未満しか長くないパルス長が達成され得る。
【0052】
それだけでなく、偏向機構に対して移動可能な光学素子、つまりレンズ11は、放射線束の焦点が、放射方向において0.5mmより大きな範囲で移動可能であるような長い距離を、偏向機構に対して移動可能である。さらに偏向機構は、放射線束の焦点が、直径11mmの範囲で横平面内を移動可能であるように形成されている。
【0053】
レーザ、入力光学系、および合焦光学系は、合焦された放射線束の直径が、焦点で5マイクロメートルより小さくなるように設計されている。
本例示的実施形態における合焦光学系の開口数は0.35より大きいことが好ましい。
【0054】
したがって、このレーザ外科システムは特に、フェムト秒パルスを用いた光切断により、折り返すことが可能な角膜のフタを作成するのに適している。
図4は、本発明の好ましい一実施形態に基づく走査装置を備えたレーザ走査顕微鏡を示している。
【0055】
レーザなどの放射源22によって照明用放射線束3”が放出され、この照明用放射線束は、ビーム・スプリッタ23を通り抜け、次いで原理的に第1の例示的実施形態の走査装置4と類似の構成の走査装置4”に達する。ただし、この場合、使用するコンポーネントの寸法は、レーザ走査顕微鏡としての使用に適合されている。
【0056】
つまり、ここでも走査装置4”は、ビーム・スプリッタ23から出る放射線束3”の発散を、レーザ走査顕微鏡の図4に示されていない制御機構の制御信号に応じて変化させる入力光学系6”と、入力光学系6”から出る放射線束3”を、レーザ走査顕微鏡の制御機構の制御信号に応じて横方向に偏向させる偏向機構7”と、偏向機構7”に対して固定して配置されており、偏向機構7”によって偏向された放射線束3”を検査試料24上に合焦させる合焦光学系8”とを含む。光学素子およびそれらの間隔に関する設計に至るまで、入力光学系6”、偏向機構7”、および合焦光学系8”は、入力光学系6、偏向機構7、および合焦光学系8に対応しており、したがって図4では、これらのコンポーネントに同じ符号を使用しており、またそれらに関する説明が、ここでも対応して適用される。
【0057】
試料24からの放射は、再び合焦光学系8”を通り、偏向機構7”、入力光学系6”を通り抜けた後、ビーム・スプリッタ23によって偏向されてから、収束光学系25で合焦される。焦点は、試料24における放射線束3”の焦点と共役である。細い絞り穴もしくはピンホール絞り26は、既知の方式で、基本的に放射線束3”の焦点からの光だけを通すことによって深さの判別に役立つ。ピンホール絞り26を通過した光線は、検出機構27によって検出される。
【0058】
像を作成するために、図に示されていない制御機構は、放射線束3”の焦点を、放射線束3”の方向を横切る方向にも平行にも走査し、その際、所定の位置でそれぞれの信号が検出機構27で検出される。このため制御機構は、焦点のそれぞれの所望の位置に対応する制御信号を、偏向機構7”およびリニア駆動器14に放出する。
【0059】
ここでもレンズ11を相応に設計することによって、移動する光学素子を小型軽量に保つことが可能であり、したがって放射線束3の焦点を試料24に対して迅速に移動させることが可能となり、その結果、試料24を保持する図4に示されていない試料台を移動させる必要がなくなる。
【0060】
更なる例示的実施形態は、入力光学系の構成の点で第2の例示的実施形態と異なっている。ここではレンズまたはレンズ群が、回折性の光学素子で置き換えられている。入力光学系は、第1および第2の回折性光学素子を含む。第1の回折性光学素子は、基本位置において平行な束を収束性の束に変換するように形成され配置されている。放射線経路において第1の回折性の光学素子の後ろに配置された第2の回折性光学素子は、収束性の束を再び平行な束に変換するように形成され配置されている。そして、これらは全体として束を拡大させる。入力光学系から出る束の発散を変化させるために、第1および第2の回折性光学素子の間隔を変化させる。
【0061】
別の例示的実施形態では、前出の例示的実施形態の入力光学系とは異なり、入力光学系が2つの凹面ミラーを有しており、それらがレーザと偏向機構の間に、2重に折りたたまれたほぼz字形の光線経路を形成するように配置されている。第1の凹面ミラーは実像の中間像を発生させ、この中間像は、放射線経路中で適切な基本距離を隔てて第1の凹面ミラーの後ろに配置された第2の凹面ミラーによって無限遠に結像される。凹面ミラーの間隔を変えることによって発散が制御される。焦点距離の比により、入力光学系から出る束の直径または開口角と、入力光学系に入る束の直径または開口角の比が決まる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態に基づく走査装置を備えた目のレーザ外科治療用システムの簡略的概略図。
【図2】本発明の第2の好ましい実施形態に基づくレーザ外科治療システムの部分概略図。
【図3】本発明の第3の好ましい実施形態に基づく走査装置を備えた目のレーザ外科治療用システムの概略図。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に基づくレーザ走査顕微鏡の概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…目、2…放射源、3、3”…放射線束、4、4’、4”…走査装置、5…接触ガラス、6、6”…入力光学系、7、7’、7”…偏向機構、8、8’、8”…合焦光学系、9、9’…反射性素子、10、10’…アクチュエータ、11…第1のレンズ、12…収束レンズ、13…レンズ・ホルダ、14…リニア駆動器、15、15’…出射レンズ、16、16’…ビーム・スプリッタ、17、17’…観察用放射線束、18…瞳光学系、19、19’…収束レンズ、20…入射対物レンズ、21…鏡筒レンズ、22…放射源、23…ビーム・スプリッタ、24…試料、25…収束光学系、26…ピンホール絞り、27…検出機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のボリューム中の所定の領域に放射線束(3、3”)を合焦させるための走査装置において、該放射線束(3、3”)が最初に入り、かつ少なくとも1つの第1の光学素子(11)を有する入力光学系(6、6”)と、該入力光学系(6、6”)から出た該放射線束(3、3”)を合焦可能な合焦光学系(8、8’、8”)と、該第1の光学素子(11)と該合焦光学系(8、8’、8”)の間に配置されており、該第1の光学素子(11)を通過した後の該放射線束(3、3”)を、焦点の調整位置に応じて横方向に偏向させるための偏向機構(7、7’、7”)とを備え、該放射線束(3、3”)の焦点の該放射線束方向における位置を調整するために、該入力光学系(6、6”)の少なくとも1つの光学素子(11)が、該偏向機構(7、7’、7”)に対して移動可能である、走査装置。
【請求項2】
前記偏向機構(7、7’、7”)に対して移動可能な前記光学素子(11)を、前記偏向機構(7、7’、7”)に対して移動させることにより、前記入力光学系(6、6”)から出る前記放射線束(3、3”)の発散が変更可能である、請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記入力光学系(6、6”)が、第1の光学素子(11)としての負の屈折力を有するレンズまたはレンズ群と、前記放射線束(3、3”)の方向において該レンズまたは該レンズ群の後ろに配置された正の屈折力を有する収束レンズ(12)またはレンズ群とを含む、請求項1または2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記偏向機構(7、7’、7”)に対して移動可能な前記光学素子が、前記第1の光学素子(11)、負の屈折力を有する前記レンズ、または負の屈折力を有する前記レンズ群のうちの1つである、請求項3に記載の走査装置。
【請求項5】
前記偏向機構に対して移動可能な前記光学素子が、回折性光学素子である、請求項2に記載の走査装置。
【請求項6】
前記偏向機構に対して移動可能な前記光学素子が、反射性光学素子である、請求項2に記載の走査装置。
【請求項7】
前記偏向機構(7、7’、7”)に対して移動可能な前記光学素子(11)を移動させるために、好ましくはリニア駆動器(14)として実施された駆動機構を備えている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項8】
前記偏向機構(7、7’、7”)が、前記入力光学系(6、6”)と前記合焦光学系(8、8’、8”)との間に配置されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項9】
前記偏向機構(7、7’、7”)が、互いに離隔され、互いに、かつ前記合焦光学系(8、8’、8”)に対して移動可能な、2つの反射性素子(9、9’)を有している、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項10】
前記反射性素子(9、9’)の間に、好ましくは収束レンズ(19)として形成され、かつ前記第1の反射性素子(9)を前記第2の反射性素子(9’)上に結像させる、瞳光学系が配置されている、請求項9に記載の走査装置。
【請求項11】
前記合焦光学系(8、8’、8”)が、固定した焦点距離を有する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項12】
前記偏向機構(7、7’)と、前記合焦光学系(8、8’)の出射レンズ(15、15’)または出射レンズ群の間の放射線経路中にビーム・スプリッタ(16、16’)が配置されている、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項13】
前記出射レンズ(15、15’)または前記出射レンズ群が、平行な放射線束(3)を所定の前記ボリューム中に合焦させる、請求項12に記載の走査装置。
【請求項14】
前記合焦光学系(8’)が、前記放射線束(3)を放出する放射源(2)の実像中間像を発生させるために、入射対物レンズ(20)を有している、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項15】
前記放射線束(3、3”)を放出する放射源(2、22)の全ての実像中間像が、気体、特に空気中または真空中にある、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項16】
前記入力光学系および前記合焦光学系(6、6”、8、8’、8”)は、所定のフェムト秒パルスのスペクトル幅にわたって、前記光学系を通り抜けるfsパルスが、分散に基づく時間的拡張を30%未満に抑えて合焦され得るように、色補正される、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項17】
前記偏向機構(7、7’)に対して移動可能な前記光学素子(11)は、前記放射線束(3)の焦点が放射線方向において0.5mmより大きな範囲で移動可能となるような距離だけ、前記偏向機構(7、7’)に対して移動可能である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項18】
前記偏向機構(7、7’)は、前記放射線束(3)の焦点が、所定の前記ボリューム中で、横平面内を直径11mmの範囲で移動可能となるように構成されている、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項19】
前記放射線束(3)に沿ってフェムト秒レーザ光線パルスを放出するために、フェムト秒レーザとして構成された放射源(2)を備えており、前記放射源(2)、前記入力光学系(6)、および前記合焦光学系(8、8’)は、合焦された前記放射線束(3)が焦点において5マイクロメートル未満の直径を有するように設計されている、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の走査装置。
【請求項20】
レーザ走査顕微鏡であって、照明用レーザ光線(3”)を放出するための放射源(22)と、該照明用レーザ光線(3”)を合焦させるための請求項1乃至18のいずれか1項に記載の走査装置(4”)とを備えるレーザ走査顕微鏡。
【請求項21】
所定のボリューム中の所定の領域に放射線束(3、3”)を合焦させる方法において、前記それぞれの領域の位置に応じて、該放射線束(3、3”)の発散を変化させ、該放射線束(3、3”)をその伝播方向を横切る方向に偏向し、次いで合焦する方法。
【請求項22】
偏向された前記放射線束(3、3”)を合焦させるために、固定した焦点距離の合焦光学系(8、8’、8”)が使用される、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−534993(P2008−534993A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502278(P2008−502278)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002150
【国際公開番号】WO2006/102971
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【Fターム(参考)】