説明

走水防止型海底電力ケーブル

【課題】走水防止性能がよく、内部半導電層の押出加工性も良好な走水防止型海底電力ケーブルを提供する。
【解決手段】 素線2間に水密コンパウンド3を充填した導体1を円形に圧縮加工し、導体1表面に水密コンパウンド3がある状態で導体1上に半導電性吸水膨潤テープ4を巻いて導体1と吸水膨潤テープ4との間の隙間を水密コンパウンド3で埋める。半導電性吸水膨潤テープ4の上に半導電性バインダーテープ5を巻き、その上に内部半導電層6及び絶縁層7を押出被覆する。導体1と内部半導電層6の間の隙間はきわめて小さいので、この部分の走水は吸水膨潤テープ4で防止できる。半導電性吸水膨潤テープ上に直に内部半導電層を押出被覆すると、吸水膨潤テープ内の水分により内部半導電層が発泡する可能性があるが、半導電性バインダーテープ5を設けたことにより、内部半導電層の発泡を防止でき、内部半導電層の押出被覆を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底や川底などの水中に布設される走水防止型海底電力ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルの絶縁体として広く使われている架橋ポリエチレンは、絶縁体中に水分を含んでいると水トリーが発生しやすくなり、絶縁性能が著しく劣化する。例えば、布設された電力ケーブルで導体が露出するような事故が発生すると、露出部から雨水や地下水が導体内の隙間に浸入し、電力ケーブル長手方向に走って、絶縁体と接触するため、水トリーが発生する原因となる。したがって、走水を防止する必要のある電力ケーブルには、走水防止型導体が用いられている。
【0003】
陸上電力ケーブル用の走水防止型導体としては、導体素線間に吸水膨潤粉末、吸水膨潤テープ、吸水膨潤ポリマー等を配置し、水が浸入した際にその吸水膨潤物質が膨らんで隙間を埋めることで、走水を防止するものがある(特許文献1、2)。
【0004】
一方、海底電力ケーブルの場合は、水圧が高いため、吸水膨潤物質では走水を防止できない可能性があるので、ゴム系の水密コンパウンドを導体の素線間に充填し、その導体上に直に内部半導電層及び絶縁層を押出被覆して、走水防止構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−19914号公報
【特許文献2】実公平3−3935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸水膨潤粉末や吸水膨潤テープ等の吸水膨潤物質は純水では膨らむが、海水に対しては膨潤性能が落ちるため、導体素線間に吸水膨潤物質を配置した走水防止構造は、これを海底電力ケーブルに適用しても十分な走水防止性能を発揮できない。
【0007】
このため海底電力ケーブルでは、海水をシールするために素線間に水密コンパウンドを充填し、導体に密着するように内部半導電層を押出被覆しているが、このような構造でも、導体と内部半導電層の界面を水が走る可能性があり、水深の深い所に布設されたケーブルでは走水防止性能が落ちる場合がある。また、導体の表面に水密コンパウンドを塗布すると、走水防止性能が上がるが、内部半導電層の押出加工性がよくない。
【0008】
そこで本発明の目的は、高水圧下でも走水防止性能がよく、しかも内部半導電層の押出加工性も良好な走水防止型海底電力ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明に係る走水防止型海底電力ケーブルは、素線間に水密コンパウンドを充填した導体を断面円形に圧縮加工し、導体表面に水密コンパウンドがある状態で導体上に半導電性吸水膨潤テープを巻いて導体と半導電性吸水膨潤テープとの間の隙間を水密コンパウンドで埋め、半導電性吸水膨潤テープの上に半導電性バインダーテープを巻き、その上に内部半導電層及び絶縁層を押出被覆したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面に水密コンパウンドが付着した導体の上に半導電性吸水膨潤テープを巻いたので、導体と半導電性吸水膨潤テープとの間の隙間は水密コンパウンドで埋められ、かつ、半導電性吸水膨潤テープの上に半導電性バインダーテープを巻き、その上に内部半導電層を押出被覆しているので、吸水膨潤テープとバインダーテープ、バインダーテープと内部半導電層はよく密着する。このため導体と内部半導電層の間の水が走る隙間はきわめて狭く、この部分の走水は半導電性吸水膨潤テープの膨潤で確実に防止できる。
【0011】
また、半導電性吸水膨潤テープ上に直に内部半導電層を押出被覆すると、吸水膨潤テープ内の水分により内部半導電層が発泡する可能性があるが、半導電性吸水膨潤テープの上に半導電性バインダーテープを設けたことにより内部半導電層の発泡を防止できるので、従来の海底電力ケーブルと同様に、内部半導電層及び絶縁層の押出被覆を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る走水防止型海底電力ケーブルの一実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
図1は本発明に係る走水防止型海底電力ケーブルの一実施例を示す。海底電力ケーブルの導体1は、素線2を複数層撚り合わせた後、断面円形に圧縮加工することにより製造される。素線2を撚り合わせるときに、素線2間に水密コンパウンド3を塗布または押出により充填する。圧縮加工により素線2間の隙間は水密コンパウンド3で満たされ、余分な水密コンパウンド3は隙間から導体1表面にはみ出し、導体1の表面に付着する。このとき、水密コンパウンド3のはみ出し量が少なく、導体1表面の水密コンパウンド3の量が少ない場合は、圧縮加工後に導体1表面に水密コンパウンド3を塗布又は押出により付着させてもよい。水密コンパウンド3としては従来の海底電力ケーブルに用いられているゴム系のコンパウンドを用いる。
【0014】
素線2間に水密コンパウンド3が充填され、表面に水密コンパウンド3が付着した導体1上に半導電性吸水膨潤テープ4をラップ巻きする。これにより、導体1と半導電性吸水膨潤テープ4の間の隙間は水密コンパウンド3で埋められる。ただし、導体1と半導電性吸水膨潤テープ4は直接接触し、電気的に導通した状態にある。さらに、半導電性吸水膨潤テープ4の上には、半導電性バインダーテープ5をラップ巻きした上で、内部半導電層6及び絶縁層7を押出被覆する。絶縁層7の外側の外部半導電層、遮蔽層等は従来と同じであるので、図示、説明を省略する。
【0015】
半導電性吸水膨潤テープ4としては、例えば、ポリエステル系の不織布を基材とし、その両面に導電性を有するカーボンブラック及び吸水膨潤性粉末などをバインダーとともに塗布したものを用いることができる。
【0016】
また、半導電性バインダーテープ5としては、織布等からなる基材の両面に半導電性の合成樹脂又はゴムが積層されたもの、例えば加硫ブチルゴム引き半導電性ナイロンクロス を用いることができる。
【0017】
このようにして製造された海底電力ケーブルは、表面に水密コンパウンド3が付着した導体1の上に半導電性吸水膨潤テープ4を巻いてあるので、導体1と半導電性吸水膨潤テープ4の間の隙間は水密コンパウンド4で埋められ、かつ、半導電性吸水膨潤テープ4の上に半導電性バインダーテープ5を巻き、その上に内部半導電層6を押出被覆しているので、吸水膨潤テープ4とバインダーテープ5、バインダーテープ5と内部半導電層6はよく密着する。このため導体1と内部半導電層6の間の水が走る隙間はきわめて狭く、この部分の走水は半導電性吸水膨潤テープ4の膨潤で確実に防止できる。
【0018】
また、半導電性吸水膨潤テープ4上に半導電性バインダーテープ5を巻いた上で内部半導電層6を押出被覆しているので、内部半導電層6を押出被覆するときに、内部半導電層6が、半導電性吸水膨潤テープ4内の水分が熱で気化することにより、発泡するのを防止できる。このため内部半導電層6及び絶縁層7の押出被覆を支障なく容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
1:導体
2:素線
3:水密コンパウンド
4:半導電性吸水膨潤テープ
5:半導電性バインダーテープ
6:内部半導電層
7:絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素線間に水密コンパウンドを充填した導体を断面円形に圧縮加工し、導体表面に水密コンパウンドがある状態で導体上に半導電性吸水膨潤テープを巻いて導体と半導電性吸水膨潤テープとの間の隙間を水密コンパウンドで埋め、半導電性吸水膨潤テープの上に半導電性バインダーテープを巻き、その上に内部半導電層及び絶縁層を押出被覆したことを特徴とする走水防止型海底電力ケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−4232(P2013−4232A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132220(P2011−132220)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】