説明

走行する車両における横揺れ角を評価する方法

本発明は、次の段階により走行する車両(7)の横揺れ角を評価する方法に関する。段階a)において、カメラ(8)により車両周辺特に前にある車道(1)の画像列を記録する。カメラ画像から、車道表面の少なくとも1つの記号(S1〜S6)を抽出従って求めて追跡する。1つ又は複数の後続のカメラ画像における少なくとも1つの記号(S1〜S6)の変化する位置から、段階c)において、どの横揺れ方向にカメラ(8)が回転されているかを確かめる。段階d)において横揺れ角の値を評価する。このため車両速度(v)及びカメラ(8)の写像モデルを考慮して、段階d1)において、横揺れ角の値を直接評価するか、又は評価される段階d2)において、横揺れ角がカメラ(8)の回転を十分補償するまで、反復して所定の修正角だけ横揺れ角を増大するか又は減少する。これから評価される横揺れ角が全修正値として生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラにより走行する車両の横揺れ角を評価する方法に関し、例えば運転者援助機能を備えた車両において使用される。
【背景技術】
【0002】
運転者援助機能には、例えば交通標識の識別、自動光制御、車両及び歩行者の識別、夜間可視システム、間隔制御経済走行装置(ACC)、割込み補助装置又は自動割込み装置及び車線検出システムがあげられる。
【0003】
車線検出システムは、車線幅、車線ずれ及び片揺れ角を評価するために、車両にあるカメラの組込み位置を正確に知る必要がある。特にこれはカメラの高さ、横揺れ角、縦揺れ角及び片揺れ角であり、一般に費用のかかるテープ端部校正又はサービス校正によって求めねばならない。
【0004】
車線検出システムは縦揺れ角及び片揺れ角を評価できるが、横揺れ角がわかっている場合にのみ可能である。なぜならば、横揺れ角の誤差から、縦揺れ角及び片揺れ角の誤差が生じるからである。
【0005】
根本的な問題は、車両への組込み後カメラの組込み状態の慎重な校正の際にも、一方では、横揺れ角の小さい誤差が生じて引続き維持されることがあり、他方では、カメラの組込み状態の後になっての変化又は例えば車両の不等な負荷が横揺れ角を変化することがあることである。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006018978号明細書は、車両の片揺れ速度及び比横揺ればね強度を求める装置を使用して動的横揺れ角を求める方法を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここに紹介される発明の課題は、走行する車両において現在の正確な横揺れ角評価を可能にする、横揺れ角の評価方法を提示することである。
【課第を解決するための手段】
【0008】
本発明によればこの課題は、独立請求項に記載の方法によって解決される。有利な展開は従属請求項からわかる。
【0009】
走行する車両における横揺れ角を評価する方法は、次の段階で示される。まず段階a)において、カメラにより車両周辺特に前にある車両の画像列を記録する。段階b)において、カメラ画像から、車道表面の少なくとも1つの記号を抽出し、つまりその形状及び位置を求めて追跡する。記号は車道表面の構造例えば車道の標識の始端及び終端である。1つ又は複数の後続のカメラ画像における少なくとも1つの記号の変化する位置から、段階c)において、どの横揺れ方向にカメラが回転されているかを確かめる。横揺れ角の値を段階d)において評価する。このため段階d1)において、(自己の車両の)車両速度及びカメラの写像モデルを考慮して、横揺れ角の値を直接評価するか又は段階d2)において、横揺れ角がカメラの回転を補償するまで、横揺れ角を反復して修正角だけ大きくするか又は小さくする。横揺れ角の反復評価の際、方法の始めに横揺れ角をなるべく零に評価する。方法の過程中に、少なくとも1つの記号の変化される位置から、1つ又は複数の後続カメラ画像において、横揺れ角がカメラの回転を十分補償することが推論されるまで、段階c)において確認される回転方向に応じて、(現在評価される)横揺れ角を修正角だけ修正する。十分な補償は、修正される横揺れ角が角解像度の範囲で零とあまり相違していない(例えば0.1°又は0.5°より小さい相違)ことで判断することができる。行われる修正を所定の修正角と乗算することにより全修正値として、又は変化する修正角値の場合行われる修正の和として、完全に評価される横揺れ角が生じる。
【0010】
本発明の利点は、走行する車両における横揺れ角を正確に評価できることである。本発明による方法のために、片揺れ速度を求める装置は必要でない。試験走行の際、この方法により7°までの横揺れ角偏差を評価して補償することができた。
【0011】
本発明の基礎になっている考察は、横揺れ角が零の場合、カメラにより記録されて車道の表面を表す画像の行内のすべての点が、世界座標において、車両縦方向の投影においてカメラに対して同じ距離を持っている、ということである。この考察は、道路が実質的に平らであるという仮定に基いている。これは道路に対する“フラットアースジオメトリー”仮定に相当する。この場合世界座標は、例えばカメラ画像の行及び列により与えられている画像座標とは異なり、実際の空間を意味する。カメラの写像モデルは、実際の空間における点が画像上にどのように写像されるかを示す(画像座標)。既知である画像座標を持つ点は、カメラの完全な写像モデルを知ると、世界座標における物点へ戻し投影することができる。定義による記号は車道表面上にあってもよく、車道表面が平らに延びていることが仮定されるので、世界座標における記号の位置を求めるために、簡単な逆投影で十分である。本発明の範囲内で、実際の空間にある車道表面上の点とカメラとの間隔の車両縦方向における成分に関心がある。
【0012】
零でない横揺れ角の結果、カメラにより記録される画像の1つの行内にあって車道の表面を表す点が、世界座標において増大又は減少する距離を車両縦方向の投影に持っていることになる。例えば画像において1つの行にある車道点が、実際の空間において左から右へますます大きく離れていると、カメラがその視方向に対して左へ回転されている。
【0013】
画素について車両縦方向の投影における距離を求めるために、特に画素の光束から、光束ベクトルの長さを分析することができる。例えば画像において1つの行にある車道点の光束ベクトルの垂直成分が、左から右へ増大していると、カメラは右方へ回転されている。
【0014】
本発明の有利な構成では、段階d1)においてカメラの写像モデルを考慮して、車両縦方向においてカメラに対する少なくとも1つの記号の間隔を求める。このためカメラ画像において求められる記号の表現が鳥瞰図において逆投影により行われ、車両縦方向における記号とカメラとの間隔がこの表現から求められる。
【0015】
(車両縦方向においてカメラに対して)記号の求められた間隔及び車両速度から、時間Δt後の記号の間隔を予測するのがよい。
【0016】
最初の画像の時間Δt後に記録された後続の画像から、車両縦方向においてカメラに対する同じ記号の間隔を逆投影により測定するのがよい。
【0017】
予測される間隔に対する測定された間隔の偏差から、カメラの写像モデルを考慮して横揺れ角を評価するのがよい。この場合予測が横揺れ角0により間隔を与え、偏差があると横揺れ角が直接求められ、この横揺れ角においてカメラにより、予測された間隔に相当する間隔が測定されることを仮定する。
【0018】
この場合車両速度の値における不確実さは、横揺れ角評価の際順序誤差を生じる可能性がある。従って本発明の好ましい実施形態では、車両速度における先の測定不確実さの意味で既知の誤差が、横揺れ角の評価の際考慮され、生じる横揺れ角誤差が特にカルマンフィルタにより評価される。
【0019】
本発明の有利な構成によれば、段階b)において、左の画像半分にある少なくとも1つの第1の記号を求めて追跡し、同じ又は後続の画像において右の画像半分にある第2の記号を求めて追跡する。更にカメラ画像の記録の時点に車両速度を記憶する。段階c)において、車両速度及びカメラの写像モデルを考慮して、各記号に対して別々に、記号間隔の予測を行う。後続の画像において記号間隔を測定する。第1の記号のための測定される記号間隔を持つ予測された信号間隔を、第2の記号の信号間隔のための偏差と比較することによって、どの方向にカメラ(横揺れ角)が回転されているかが確かめられる。
【0020】
段階d2)により横揺れ角が反復して評価される。この構成は、右の記号偏差と左の記号偏差との比較によって誤差を補償できるという利点を与える。それによりこの方法は高度の精度を与える。
【0021】
好ましい実施形態では、段階b)において、左の画像半分にある少なくとも1つの第1の記号を求めて追跡し、同じ又は後続の画像において右の画像半分にある第2の記号を求めて追跡し、更にカメラ画像の記録の時点に車両速度を記憶する。段階c)において、各記号に対して画像における垂直記号位置の変化を車両速度に関係させ、この関係を両方の画像半分について比較し、その際この関係が大きい方の画象半分の方へカメラが回転されていることを推論する。横揺れ角を段階d2)により反復して評価する。この方法は、誤差が絶対車両速度に現れない、という利点を与える。
【0022】
本発明の対象は、更にカメラ及び本発明により横揺れ角を評価する手段を持つ評価装置を含む、走行する車両において横揺れ角を評価する装置である。
【0023】
以下実施例により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 横揺れ角を評価する方法の流れ図を示す。
【図2】 記号を持つ車道のカメラ画像を示す。
【図3】 カメラ画像により再現される光景を鳥瞰図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1の流れ図は横揺れ角を評価する方法の実施例を示す。走行する車両において、段階a)でカメラ8により、前にある車道を含む、車両周辺の画像が記録される。段階b)でカメラ画像から、車道表面の記号S1〜S6が求められ、画像におけるその位置が求められる。記号S1〜S6は車道表面の構造例えば車道の標識の始端S2,S4又は終端S3である。次の段階a)で別の画像が記録され、この画像から画像における記号S1〜S6の現在の位置が求められる。少なくとも1つの記号S1〜S6の変化した位置から、段階c)において、横揺れ角に関してカメラ8がどの方向に回転されているかが求められる。カメラ8が回転されていると、横揺れ角が段階d)で修正される。横揺れ角の評価は段階d)において修正の和から生じる。
【0026】
図2は、段階a)において記録されるような車両周辺のカメラ画像を示す。車両は左の連続する車道標識2及び右の連続する車道標識3により区画されている車道1上を走行する。車道1の中央は、中断される中央縞により示されている。車道表面には多数の記号が認められる。記号S1〜S6が図に示されている。記号S1〜S6の検出は段階b)で行われる。記号S1は車道左側の付加的な標識である。記号S2及びS4又はS3は中央縞標識の始端又は終端である。記号S5は車道路面の亀裂であり、記号S6は右の連続する車道標識上の構造、例えばその汚れ又は穴である。補助線4及び5は水平な画像中央及び垂直な画像中央を示す。画像の行及び列は補助線5及び4に対して平行に延びている。補助線4が水平に延びていないという事実は、観察者に対して、横揺れ角がこの画像の下で零とは相違して記録されたこと、及びカメラ8が左方へ回転されていることを示唆する。
【0027】
カメラ画像により鳥瞰図で再現される光景の表現が図3に示されている。世界座標において標識及び記号S1〜S6により、鳥瞰図においてカメラ画像により再現される光景のこの表現の作成は、例えば5cmの段階幅を持つ画像座標から、現在評価される横揺れ角を考慮してカメラ8の写像モデルから求められた逆投影によって行うことができる。車道表面の記号S1〜S6はこの表現から抽出される。世界座標において車両縦軸線の方向におけるカメラ8に対する記号S1〜S6の間隔dは、これから求められる。世界座標におけるこれらの記号S1〜S6の位置は、遅い時点のために、車両の自己速度vを考慮して予測される。その際遅い時点Δtは、この遅い時点Δtに後続の画像がカメラにより記録されるように、選ばれる。従って遅い時点Δtは、画信号周波数の逆数の倍数だけ、第1の画像(図2)の記録の時点t=0より遅い(例えば40ms)。遅い時点Δtに記録される画像は表示されない。世界座標において時点t=0にカメラ8に対して間隔d_0を持つ記号S1〜S6のための時点Δtにおける予測は、例えば次式から生じる。
d_est=d_0−v・Δt
ここでvは時点t=0に求められた車両の速度である。世界座標におけるこの記号S1〜S6の実際の間隔は、遅い時点dtに記録された画像の適当な表現から測定される。測定される信号間隔と予測される信号間隔との比が求められる。即ちd_meas/d_est。
【0028】
このように別の実施形態によれば、左の画像半分(N_links>N)及び右の画像半分(N_rechts>N)のためにそれぞれ2つの順次に続く画像の間の記号間隔変化の十分な数Nの予測及び測定(例えばN=10又はN=50)が行われるまで、左の画像半分(S1〜S3)及び右の画像半分(S4〜S6)における長い記号を分析することができる。予測される記号間隔と測定される記号間隔との比が、左の画像半分(d_meas_links/d_est)及び右の画像半分(d_meas_rechts/d_est)のために求められる。それから評価される横揺れ角値の実現を次のように行うことができる。
d_meas_links/d_est>d_meas_rechts/d_estの場合、横揺れ角を修正角だけ増大する。
d_meas_links/d_est<d_meas_rechts/d_estの場合、横揺れ角だけ減少する。
他の場合、横揺れ角を維持する。
【0029】
修正角が横揺れ角評価の解像度を決定する所定の一定値(例えば0.05°又は0.1°)をとるか、又は修正角が(d_meas_links/d_est−d_meas_rechts/d_estの値に比例する値をとることができる。測定される記号間隔(d_meas)と予測される記号間隔(d_est)との比の形成により、車両の速度変化の影響が考慮される。
【符号の説明】
【0030】
1 車道
2 左の連続する車道標識
3 右の連続する車道標識
4 水平な画像中央
5 垂直な画像中央
6 水平線
7 車両
8 カメラ
S1〜S6 記号1〜6
d 世界座標において車両縦軸線の方向における記号とカメラとの間隔
v 車両速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(8)により走行する車両(7)の横揺れ角を評価する方法であって、次の段階
a) カメラ(8)により車両周辺の画像列を記録し、
b) カメラ画像から、車道表面の少なくとも1つの記号(S1〜S6)を求めて追跡し、
c) 1つ又は複数の後続のカメラ画像における少なくとも1つの記号(S1〜S6)の 変化する位置から、どの横揺れ方向にカメラ(8)が回転されているかを確かめ、
d1)横揺れ角の値を、
車両速度(v)及びカメラ(8)の写像モデルを考慮して、横揺れ角の値を直接評 価するか、又は
d2)評価される横揺れ角がカメラ(8)の回転を十分補償するまで、反復して修正角だ け横揺れ角の値を修正する
方法。
【請求項2】
段階d1)においてカメラ(8)の写像モデルを考慮して、車両縦方向においてカメラ(8)に対する少なくとも1つの記号(S1〜S6)の間隔(d)を求める、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記号(S1〜S6)の求められる間隔(d)及び車両速度(v)から、時間Δt後の記号(S1〜S6)の間隔(d_est)を予測する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
最初の画像の時間Δt後に記録された後続の画像から、車両縦方向においてカメラ(8)に対する同じ記号(S1〜S6)の間隔(d_meas)を逆投影により測定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
予測される間隔(d_est)に対する測定された間隔(d_meas)の偏差から、カメラ(8)の写像モデルを考慮して横揺れ角を評価する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階b)において、左の画像半分にある少なくとも1つの第1の記号(S1〜S3)を求めて追跡し、同じ又は後続の画像において右の画像半分にある第2の記号(S4〜S6)を求めて追跡し、更にカメラ画像の記録の時点に車両速度(v)を記憶し、
段階c)において、車両速度(v)及びカメラ(8)の写像モデルを考慮して、各記号(S1〜S6)に対して別々に、記号間隔(d_est)の予測を行い、後続の画像において記号間隔(d_meas)を測定し、予測される記号間隔(d_est)の偏差を、現在評価される横揺れ角を考慮して測定される記号間隔(d_meas)と両方の画像半分において比較することによって、どの方向にカメラ(8)が回転されているかを確かめ、段階d2)により横揺れ角を反復して評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
段階b)において、左の画像半分にある少なくとも1つの第1の記号(S1〜S3)を求めて追跡し、同じ又は後続の画像において右の画像半分にある第2の記号(S4〜S6)を求めて追跡し、更にカメラ画像の記録の時点に車両速度(v)を記憶し、
段階c)において、各記号(S1〜S6)に対して画像における記号位置の変化を車両速度(v)に関係させ、この関係を両方の画像半分について比較し、その際この関係が大きい方の画象半分の方へカメラ(8)が回転されていることを推論し、横揺れ角を段階d2)により反復して評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カメラ(8)及び請求項1〜7の1つに記載の横揺れ角を評価する手段を持つ評価装置を含む、走行する車両(7)において横揺れ角を評価する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512150(P2013−512150A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541317(P2012−541317)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001332
【国際公開番号】WO2011/063785
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503355292)コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (79)
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D−90411 Nuernberg, Germany
【Fターム(参考)】