説明

走行支援装置

【課題】自車両の進行方向が特定できない状態であっても、運転者を混乱させ、煩わしさを感じさせることなく、信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能な走行支援装置を提供する。
【解決手段】提供情報決定部53は、推測した自車両200が異なる経路の信号機S,Sそれぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合に自車両200の走行支援を行うため、自車両200が異なる経路の信号機S,Sそれぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合においては、自車両200の進行方向が特定できない状態であっても、運転者を混乱させて煩わしさを感じさせることなく、当該信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行支援装置に関し、特に、道路に設置した路側送信機から送信された信号機における信号の変遷に関する情報である信号サイクル情報を読取り、信号サイクル情報に基づいて車両の走行支援を行う走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に設置された光ビーコン等の路側送信機により、信号機における信号の変遷に関する情報を車両に対して提供することが行われている。例えば、特許文献1には、5叉路あるいは6叉路といった複雑な交差点を走行する際に、路側送信手段から、信号機の識別情報と該信号機の点灯表示情報を受信し、誘導経路設定手段の経路探索によって設定された誘導経路に応じて、受信した点灯表示情報に基づいて、車両が交差点を通過する方向に該当する信号機を選択し、この方向に応じた信号機情報を運転者に提供する車載端末装置が開示されており、複雑な交差点を走行する際に複数の信号機情報が運転者に提供されることにより該交差点に対する進行可否の判断に迷いが生じることを防止している。
【特許文献1】特開2006−285732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような技術では、異なる方向の道路に設置された複数の信号機に関する情報を取得した場合に、自車両の進行方向が特定できない状態では、運転者に対し、情報提供や警報等を行うことが不可能である。すなわち、自車両の進行方向が特定できない状態では、緊急度や優先度を考慮して一方の道路を自車両が走行した場合における当該信号機に関する情報提供や警報等を行った場合は、実際に自車両がその道路を走行しない場合、異なる信号機についての情報提供や警報に運転者が混乱し、煩わしさを感じる恐れがある。
【0004】
一方、自車両の走行方向が確定してから当該信号機の信号の情報提供や警報等を行った場合は、情報提供や警報が遅れ、運転者が当該情報提供や警報を有効に利用することができない恐れがある。
【0005】
この場合において、複数の方向の道路に設置された複数の信号機に関する情報の全てを運転者に提供した場合、運転者はどの情報に従えば良いのか判別できず、混乱する恐れがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車両の進行方向が特定できない状態であっても、運転者を混乱させて煩わしさを感じさせることなく、信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能な走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自車両が将来走行する可能性がある複数の異なる経路にそれぞれ設置された信号機の信号の変遷に関する情報である信号サイクル情報を、路側送信機から受信する信号サイクル受信手段と、信号サイクル受信手段が読取った信号サイクル情報に基づいて、自車両が経路それぞれを走行する場合に、自車両が信号機それぞれを通過する際の信号を推測する信号推測手段と、信号推測手段が推測した自車両が信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報によって、自車両の走行支援を行う走行支援手段と、を備え、走行支援手段は、信号推測手段が推測した自車両が信号機それぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合に自車両の走行支援を行う、走行支援装置である。
【0008】
この構成によれば、走行支援手段は、信号推測手段が推測した自車両が異なる経路の信号機それぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合に自車両の走行支援を行うため、自車両が異なる経路の信号機それぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合においては、自車両の進行方向が特定できない状態であっても、運転者を混乱させて煩わしさを感じさせることなく、当該信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能となる。
【0009】
この場合、信号推測手段は、自車両が経路それぞれを走行する場合において、自車両の車速が変動する場合における、自車両が信号機それぞれを通過する際の信号を推測することが好適である。
【0010】
この構成によれば、信号推測手段は、自車両が経路それぞれを走行する場合において、自車両の車速が変動する場合における、自車両が信号機それぞれを通過する際の信号を推測するため、信号推測手段は自車両の車速が変動する場合をも含めて信号機それぞれの信号を推測することになり、自車両の車速が変動した場合にも、運転者を混乱させて煩わしさを感じさせることなく、当該信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能となる。
【0011】
一方、自車両の運転者に情報を提供する運転者情報提供手段をさらに備え、走行支援手段は、運転者情報提供手段によって、自車両の運転者に、信号推測手段が推測した自車両が信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報を提供することにより、自車両の走行支援を行うものとできる。
【0012】
この構成によれば、走行支援手段は、運転者情報提供手段によって、自車両の運転者に、信号推測手段が推測した自車両が信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報を提供することにより、自車両の走行支援を行うため、運転者は、自車両の進行方向が特定できない状態であっても、混乱することなく当該提供された情報を利用して自車両の運転を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の走行支援装置によれば、自車両の進行方向が特定できない状態であっても、運転者を混乱させ煩わしさを感じさせることなく、信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る走行支援装置について添付図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る走行支援装置の機能ブロック図である。本実施形態の走行支援装置は、道路に設置した路側送信機から送信された信号機における信号の変遷に関する情報である信号サイクル情報を読取り、当該信号サイクル情報に基づいて車両の走行支援を行うためのものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の走行支援装置100は、自車両200に搭載され、路車間通信機51、車両状態センサ52、提供情報決定部53、及びドライバー情報提供部54を備える。
【0016】
路車間通信機51は、道路に設置した光ビーコン、電波ビーコン等のビーコン(路側送信機)Vから赤外線通信、電波通信等の形態で送信された路車間通信データを受信し、特に信号機における信号の変遷に関する情報である信号サイクル情報を読取るためのものである。また、路車間通信機51は、自車両200がビーコンVを通過したときの自車両200と、自車両200が走行し得る複数の経路それぞれに設置された信号機(交差点中央、交差点の交差道路の延長線上あるいは信号機に基づく停止位置)との距離に関する情報を読取るためのものである。路車間通信機51は、特許請求の範囲に記載の信号サイクル受信手段として機能する。
【0017】
車両状態センサ52は、具体的にはアクセル量検出センサ、車速センサ等であり、自車両200の速度、加速度を検出するためのものである。また、車両状態センサ52は、GPS(Global Positioning System)により、自車両200の現在位置を検出する。
【0018】
提供情報決定部53は、路車間通信機51及び車両状態センサ52からの情報に基づいて、自車両200の運転者に提供する情報を決定するためのものであり、具体的には、路車間通信機51が読取った信号サイクル情報に基づいて、自車両200が走行し得る経路それぞれを実際に走行した場合おいて、自車両200が信号機それぞれを通過する際の信号を推測する。また、提供情報決定部53は、推測した自車両200が走行し得る経路に設置された信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報によって、自車両200の走行支援を行う。提供情報決定部53は、特許請求の範囲に記載の信号推測手段及び走行支援手段として機能する。
【0019】
ドライバー情報提供部54は、自車両の運転者に情報を提供するためのものであり、具体的には、ナビゲーションシステムの液晶ディスプレイや音声スピーカであって、提供情報決定部53が決定した自車両200が走行し得る経路に設置された信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報を映像あるいは音声によって自車両200の運転者に提供するためのものである。ドライバー情報提供部54は、特許請求の範囲に記載の運転者情報提供手段として機能する。
【0020】
以下、本実施形態の走行支援装置の動作について説明する。図2は、実施形態に係る走行支援装置が適用される状況を示す平面図である。以下の説明では、簡略化のため、自車両200が2つの経路に分かれた分岐路に接近しており、各々の経路には信号機S,Sがそれぞれ設置されているものとする。図2において、dA1は、自車両200の現在位置Nから、信号機Sの停止線までの距離である。dB1は、自車両200の現在位置Nから、信号機Sの停止線までの距離である。dA2は、自車両200の現在位置Nから、自車両200が信号機S側の経路に進むことを判定することができる位置Rまでの距離である。dB2は、自車両200の現在位置Nから、自車両200が信号機S側の経路に進むことを判定することができる位置Rまでの距離である。
【0021】
図3は、実施形態に係る走行支援装置の動作を示すフロー図である。図3に示すように、路車間通信機51は、ビーコンV等の路側インフラから複数の信号機S,Sの信号に関する情報と、道路線形に関する情報とを取得する(S11)。図2に示す例においては、路車間通信機51は、図4に示すような信号機S,Sの信号サイクル情報を取得することができる。また、路車間通信機51は、道路線形情報から、自車両200の現在位置Nから信号機S,Sの停止線までの距離dA1,dB1を取得することができる。
【0022】
提供情報決定部53は、車両状態センサ52が検出した現車速vで、各信号機S,Sの停止線に到達するまでの時間を計算する(S12)。ここで、現車速vで信号機S到達までにかかる時間tA1は、tA1=dA1/vとして算出することができる。また、現車速vで信号機S到達までにかかる時間tB1は、tB1=dB1/vとして算出することができる。
【0023】
提供情報決定部53は、図4に示すように、S12で計算した現車速vで信号機S,S到達までにそれぞれかかる時間tA1,tB1が、信号機S,Sの信号サイクルにおいて、いずれも赤信号のタイミングと一致するか否か、すなわち、全ての信号機S,Sが赤信号の時に停止線を通過するか否かを比較する(S13)。もし、一致する場合は、提供情報決定部53は、情報提供や警報等による走行支援が可能であるとし、以降のステップに進む。一方、一致しなかった場合は、提供情報決定部53は、如何なる走行支援をも実施しない(S18)。なお、ここでの判定は、何らかの支援を実施可能であるということを判定するためのものであり、実際に、提供情報決定部53が情報提供や警報を行うか否かは、走行支援装置100の各機能の仕様によるものとする。
【0024】
ここで、自車両200が減速(または加速)した場合には、上記の計算した条件が成立しなくなる場合があり、その場合には、信号機S,Sの両方または一方の信号機の停止線に対して、赤信号のタイミングで進入しなくなることが考えられる。本実施形態では、このような状況を回避するために、以下のような処理を行う。
【0025】
提供情報決定部53は、自車両200が減速(加速)しながら自車両200の進行経路を特定可能な位置R,Rまでに到達する時間と、その時の速度とを計算する(S14)。ここで、自車両200の加速度(減速度を含む)は、一般的に考えられる加速度aを定数とする。この場合、現車速vかつ加速度aで位置R到達にかかる時間tA2については、dA2=vA2+(1/2)atA2が成り立つ。また、現車速vかつ加速度aで位置R到達にかかる時間tB2については、dB2=vB2+(1/2)atB2が成り立つ。従って、これらの式により、時間tA2,tB2を算出することができる。また、位置Rにおける車速vA1は、vA1=v+atA2として算出することができる。また、位置Rにおける車速vB1は、vB1=v+atB2として算出することができる。
【0026】
提供情報決定部53は、自車両200の進行経路を特定可能な位置R,Rにおける車速vA1,vB1により、位置R,Rから信号機S,Sの停止線までにそれぞれ到達するまでの時間tA3,tB3を計算する(S15)。ここで、位置Rから信号機Sの停止線まで到達するまでの時間tA3は、tA3=(dA1−dA2)/vA1として算出することができる。また、位置Rから信号機Sの停止線まで到達するまでの時間tB3は、tB3=(dB1−dB2)/vB1として算出することができる。
【0027】
提供情報決定部53は、図4に示すように、S14、S15で求めた時間tA2,tB2と時間tA3,tB3とから算出されるtA2+tA3,tB2+tB3の値が、信号機S,Sの信号サイクルにおいて、いずれも赤信号のタイミングと一致するか否か、すなわち、自車両200が減速(加速)しても、全ての信号機S,Sが赤信号の時に停止線を通過するか否かを比較する(S16)。
【0028】
もし、一致する場合は、提供情報決定部53は、情報提供や警報等による走行支援が可能であるとし、ドライバー情報提供部54により、自車両200の運転者に対する情報の提示及び警報等による走行支援を実施する(S17)。一方、一致しなかった場合は、提供情報決定部53は、如何なる走行支援をも実施しない(S18)。
【0029】
本実施形態によれば、提供情報決定部53は、推測した自車両200が異なる経路の信号機S,Sそれぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合に自車両200の走行支援を行うため、自車両200が異なる経路の信号機S,Sそれぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合においては、自車両200の進行方向が特定できない状態であっても、運転者を混乱させて煩わしさを感じさせることなく、当該信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能となる。
【0030】
また、本実施形態によれば、提供情報決定部53は、自車両200が経路それぞれを走行する場合において、自車両200の車速が変動する場合に、自車両200が信号機S,Sそれぞれを通過する際の信号を推測するため、提供情報決定部53は自車両200の車速が変動する場合をも含めて信号機S,Sそれぞれの信号を推測することになり、自車両200の車速が変動した場合にも、運転者を混乱させて煩わしさを感じさせることなく、当該信号サイクル情報に基づいて走行支援を行うことが可能となる。
【0031】
さらに、本実施形態によれば、提供情報決定部53は、ドライバー情報提供部54によって、自車両200の運転者に、提供情報決定部53が推測した自車両200が信号機S,Sそれぞれを通過する際の信号に関する情報を提供することにより、自車両200の走行支援を行うため、運転者は、自車両200の進行方向が特定できない状態であっても、混乱することなく当該提供された情報を利用して自車両200の運転を行うことができる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、自車両200の運転者に信号機を通過可能となる情報を提供することにより走行支援を行ったが、本発明は、自車両200の加速、制動、操舵等を自動的に制御する走行制御を行うことにより走行支援を行うものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係る走行支援装置の機能ブロック図である。
【図2】実施形態に係る走行支援装置が適用される状況を示す平面図である。
【図3】実施形態に係る走行支援装置の動作を示すフロー図である。
【図4】信号サイクルと自車両の各々の位置への到達時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
51…路車間通信機、52…車両状態センサ、53…提供情報決定部、54…ドライバー情報提供部、100…走行支援装置、200…自車両、V…ビーコン、S,S…信号機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が将来走行する可能性がある複数の異なる経路にそれぞれ設置された信号機の信号の変遷に関する情報である信号サイクル情報を、路側送信機から受信する信号サイクル受信手段と、
前記信号サイクル受信手段が読取った前記信号サイクル情報に基づいて、前記自車両が前記経路それぞれを走行する場合に、前記自車両が前記信号機それぞれを通過する際の信号を推測する信号推測手段と、
前記信号推測手段が推測した前記自車両が前記信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報によって、前記自車両の走行支援を行う走行支援手段と、
を備え、
前記走行支援手段は、前記信号推測手段が推測した前記自車両が前記信号機それぞれを通過する際の信号のそれぞれが全て同じ場合に前記自車両の走行支援を行う、走行支援装置。
【請求項2】
前記信号推測手段は、前記自車両が前記経路それぞれを走行する場合において、前記自車両の車速が変動する場合における、前記自車両が前記信号機それぞれを通過する際の信号を推測する、請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記自車両の運転者に情報を提供する運転者情報提供手段をさらに備え、
前記走行支援手段は、前記運転者情報提供手段によって、前記自車両の運転者に、前記信号推測手段が推測した前記自車両が前記信号機それぞれを通過する際の信号に関する情報を提供することにより、前記自車両の走行支援を行う、請求項1又は2に記載の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−176220(P2009−176220A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16446(P2008−16446)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】