説明

走行装置およびロボット

【課題】 砂地や泥濘地等の軟弱地面での走行性を高めた走行装置およびロボットを提供する。
【解決手段】
ロボットは、ボデイ1と、このボデイ1の左右に設けられた走行装置2を備えている。各走行装置2は、前後の車輪10と、これら車輪10に引っ張り状態で着脱可能に掛けられた弾性材料からなる無端状のカバーベルト20を有する。車輪10は、剛性の車輪本体11と、その外周に装着された弾性材料からなるタイヤ12を有する。タイヤ12の外周には多数の接地ラグ16が形成されている。カバーベルト20は、主部25と、主部25の両側縁部から内周側に突出する一対の係止部26とを有している。カバーベルト20の主部25が接地ラグ16の先端縁に接し、係止部26が接地ラグ16の側面に当たっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂地や泥濘地等の軟弱地面を走行するのに適した走行装置およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、海底等のように砂地や泥濘地等の軟弱地面での走行には接地圧を小さくするためクローラー(無限軌道)が多く使用されている。しかし、クローラーでは重量が大きく、ベルト(履帯)を駆動するために必要となる動力の負担が大きい欠点があり、ロボットのような小型走行装置には不向きである。また、クローラーが脱輪しないために張力を掛ける必要があり、張力付加装置を必要とする問題もある。
特許文献2、3に開示されている海底走行用ロボットは、クローラーの代わりに、前後に配置された車輪を備え、軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−296477号公報(図1、図5)
【特許文献2】特開昭59−18894号公報(図1)
【特許文献3】特開2002−254361号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2、3に開示されたロボットの車輪では、整地された路面を走行するのに適しているものの、海底等のように砂地や泥濘地等の軟弱地面で走行すると、次の不都合が生じる。第1に、車輪が砂や泥濘を掘り、深く入り込んで走行不能になってしまう。第2に、海底探査等を行う場合には、たとえ海底の砂地や泥地を走行可能であったとしても、走行の際に車輪が細かい砂や堆積物をまき上げてしまい、視界不良をきたすことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、前後に離間した第1、第2の車輪を備え、各車輪が、剛性の車輪本体と、その外周に装着された弾性材料からなるタイヤを有する走行装置において、上記第1、第2の車輪に、伸縮可能な無端状のカバーベルトが、自然長より伸びた状態で着脱可能に掛け渡されていることを特徴とする.
【0006】
上記構成によれば、以下の効果が得られる。
・走行装置が砂地等の軟弱な地面を走行する際に、車輪がカバーベルトで覆われているので地面を掘ることがなく、安定して走行することができる。
・海底探査等に用いる場合には、車輪が砂や堆積物をまき上げることがない。
・カバーベルトが軽量であるから、駆動源にかかる負荷はクローラー駆動より小さく、車輪駆動と同等とすることができる。
・硬い地面を走行するのに適した汎用性のある車輪付きの走行装置を基本構造として用いることができ、製造コストを低減できる。
・カバーベルトの収縮力により安定した装着状態が得られる。
・収縮力によるカバーベルトと車輪の摩擦により、カバーベルトを車輪の回転に良好に追随させることができ、駆動輪が前か後かの一方の場合には、従動輪に確実に回転を伝えることができる。
・カバーベルトを車輪に対して容易に装着したり外したりすることができ、カバーベルトに張力をかける装置を必要としない。
・万が一カバーベルトが破断した場合でも、走行不可能となるゴムクローラー等と異なり、タイヤ走行できるのでロボットの回収が容易である。
【0007】
好ましくは、上記車輪のタイヤの外周には多数の接地ラグが突出形成され、上記カバーベルトは、この接地ラグの先端縁に接するようにして掛け渡されている。
この構成によれば、接地ラグが地面を掘るのを防止でき、砂や堆積物を巻き上げるのも防止できる。また、走行装置が障害物に遭遇した時、カバーベルトが局所的に伸びるため支障とならずに接地ラグを障害物に引っ掛けることができ、これにより、障害物を乗り越えることができる。
【0008】
好ましくは、上記カバーベルトは、上記接地ラグの先端縁に接する主部と、この主部の幅方向両側縁部から内周側に突出するようにして全周にわたって設けられた一対の係止部とを有し、これら係止部が上記接地ラグの側面に当たる。
この構成によれば、カバーベルトが横ずれして車輪から外れるのを防止することができる。
【0009】
好ましくは、上記カバーベルトが、無端状のベルト部材と、このベルト部材の両側縁部に設けられた無端状の紐部材を有し、上記ベルト部材の少なくとも中央部が上記主部として提供され、上記紐部材が上記係止部の少なくとも一部として提供される。
この構成によれば、紐部材によりカバーベルトをしっかりと車輪に装着することができる。
【0010】
好ましくは、上記ベルト部材の幅が上記接地ラグの幅より大きく、上記カバーベルトの装着状態において、上記ベルト部材が断面U字形をなし、このベルト部材の側縁部と上記紐部材が上記係止部として提供される。
この構成によれば、係止部の幅を広く確保でき、カバーベルトをより一層しっかりと車輪に装着することができる。
【0011】
好ましくは、上記ベルト部材が細長いシート形状をなし、その両側縁部には多数の通し穴が周方向に間隔をおいて形成され、上記紐部材が上記ベルト部材と別体をなし、上記ベルト部材の通し穴を周方向に沿って順次通ることにより、上記ベルト部材に取り付けられている。
この構成によれば、簡単な構成でありながら、紐部材を接着等の手段を用いなくてもベルト部材に取り付けることができる。
【0012】
好ましくは、上記カバーベルトに多数の排出穴が形成され、これら排出穴を介して上記接地ラグ間の空間が外部に連なる。
この構成によれば、上記接地ラグ間の空間から上記排出穴を介して砂出しや泥出しを良好に行うことができる。
【0013】
本発明の他の態様は、ロボットにおいて、ボデイと、このボデイの左右に設けられた上記走行装置とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の走行装置によれば、砂地や泥濘地等の軟弱地面を安定して走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるロボットの平面図であり、ロボットの一方の走行装置をカバーベルト装着状態で示し、他方の走行装置をカバーベルト装着前の状態で示すとともに、当該他方の走行装置のカバーベルトを装着状態と同じ形状で断面にして示す。
【図2】同ロボットを、カバーベルトだけ分離して示す側面図であり、カバーベルトを装着状態と同じ形状で示す。
【図3】同ロボットを、カバーベルト装着状態で示す側面図である。
【図4】同カバーベルトの一部を、一平面上に広げた状態で示す平面図である。
【図5】同走行装置の車輪とカバーベルトの要部を分解した状態で拡大して示す正断面図である。
【図6】同走行装置の車輪とこの車輪に装着されたカバーベルトの要部を、拡大して示す正断面図である。
【図7】同ロボットが段差を乗り越えるときの状態を示す概略側面図であり、カバーベルトの外周面を走行装置の輪郭線として示す。
【図8】図7におけるA部の拡大断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係わるロボット平面図であり、ロボットの一方の走行装置をカバーベルト装着状態で示し、他方の走行装置をカバーベルト装着前の状態で示す。
【図10】同第2実施形態に係わるロボットをカバーベルト装着前の状態で示す側面図である。
【図11】同第3実施形態に係わるロボットを示す図9相当図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係わるロボットの側面図である。
【図13】同第4実施形態のロボットが段差を乗り越えるときの状態を示す側面図である。
【図14】同第1〜4実施形態で用いられるカバーベルトの変形例を示す図6相当図である。
【図15】同第1〜4実施形態で用いられるカバーベルトの更なる変形例を、周方向に沿って断面にした図である。
【図16】同第1〜4実施形態で用いられるカバーベルトの更なる変形例を、周方向に沿って断面にした図である。
【図17】同第1〜4実施形態で用いられるカバーベルトの更なる変形例を、周方向に沿って断面にした図である。
【図18】同第1〜4実施形態で用いられるカバーベルトの更なる変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態に係わる軽量小型のロボットについて、図1〜図8を参照しながら説明する。
最初にロボットの基本構成を図1〜図3を参照しながら説明する。図1には理解を容易にするために、前後左右を矢印で示す。このロボットは、前後方向に細長いボデイ1と、このボデイ1の左右に設けられた一対の走行装置2とを備えている。
【0017】
上記ボデイ1の前部にはビデオカメラ3が搭載され、後部にはグリップ4が固定されている。このグリップ4を掴んでロボットを持ち運びできるようになっている。
【0018】
上記ボデイ1にはさらに送受信機5が搭載されており、この送受信機5は、ロボットから離れた基地局(図示しない)の送受信機との間で送受信可能である。操作者はビデオカメラ3で撮影された映像を見ながら基地局のリモートコントローラの操作によりロボットの走行制御を行う。なお、海底探査等水中で使用する場合は、基地局が配置された母船とケーブルを介して送受信することで走行制御する。
なお、このボデイ1には、ロボットの求められる役割に応じて、ロボットアーム等の種々の付属器具やセンサーを搭載してもよい。
【0019】
上記走行装置2の各々は、ボデイ1の側板6(車輪支持体)の前後端部に回転可能に支持された第1、第2の車輪10と、これら車輪10間に掛け渡された弾性材料からなる無端状のカバーベルト20と、第1、第2の車輪10間において側板6に回転可能に支持された補助車輪30とを備えている。少なくとも前後いずれかの車輪10はボデイ1に内蔵されたモータ(図示しない)により駆動されるようになっている。
【0020】
図2に最も良く示されているように、車輪10は、ボデイ1から左右方向に延びる車軸(図示しない)に固定された金属製(剛性)の車輪本体11と、この車輪本体11の外周に固定されたゴム(弾性材料)製のタイヤ12とを備えている。
【0021】
上記タイヤ12は、円環状のタイヤ本体15と、その外周に突出形成された多数の接地ラグ16とを有している。これら接地ラグ16は厚さに比べて高さが大であるとともに同一高さを有し、タイヤ本体15の幅方向に延び、タイヤ本体15と同じ幅を有している。これら接地ラグ16は厚さ(周方向寸法)と形状により、第1接地ラグ16aと第2接地ラグ16bの2種類に分けられる。
【0022】
図2を参照しながら説明すると、上記タイヤ本体15の外周は、比較的短い第1ラグ形成領域と比較的長い第2ラグ形成領域を周方向に交互に有している。第1ラグ形成領域には、第1接地ラグ16aが所定数例えば2つずつ間隔をおいて配置されており、第2ラグ形成領域には、多数の第2接地ラグ16bが間隔をおいて配置されている。
第1接地ラグ16aは厚肉でカバーベルト周方向の曲げ剛性が高く、幅方向に真直ぐ延びている。第2接地ラグ16bは薄肉でカバーベルト周方向の曲げ剛性が低く、く字形に折れ曲がった平面形状を有している。
【0023】
上記カバーベルト20を装着していない状態でのロボットの作用について簡単に説明する。ボデイ10に内蔵されたモータ(図示しない)により、各走行装置2が駆動されると、ロボットは、前進、後退、左右旋回、信地旋回(中心軸廻りの旋回)を行う。本実施例では前輪か後輪の一方のみモータ駆動であるが、前後輪の全てをモータ駆動とすることで超信地旋回(その場旋回)も可能である。
走行する際、タイヤ12の接地ラグ16が地面に接地する。地面が整地、不整地のいずれであっても高い接地ラグ16のグリップ作用により良好に走行を行うことができる。
【0024】
上記ロボットは接地ラグ16が高いので、段差(障害物)を乗り越えることもできる。特に本実施形態では、ロボットが走行して段差に突き当たったときに、薄肉の曲げ剛性の低い第2接地ラグ16bが折れ曲がり、この状態で厚肉の曲げ剛性の高い第1接地ラグ16aが段差の段鼻に引っ掛かるので、段差が高くても乗り越えることができる。
【0025】
上記ロボットは、整地や不整地での走行や段差のある場所での走行には好適であるが、砂地や泥濘地等の軟弱地面には向かない。独立した車輪22が砂や泥濘を堀り、深く入り込んで走行不能になってしまうからである。特に本実施形態では、高い接地ラグ16が砂や泥濘を堀るため、より一層深く入り込んでしまう。
また、海底探査等を行う場合には、たとえ砂地からなる海底を走行可能であったとしても、走行の際に接地ラグ16付きの各車輪10が細かい砂や堆積物を掻いてまき上げてしまい、視界不良をきたす。
【0026】
ロボットを、砂地(軟弱地面)を走行するために用いる場合には、本発明の特徴部である無端状のカバーベルト20を車輪10に着脱可能に装着する。装着したカバーベルト20が地面の凹凸により凹まないようにするため、ボデイ1の側板6の下部側に補助車輪(転輪)30が回転可能に支持されている。本実施例では転輪は一つであるが、複数の小型の転輪を備える方が好ましい。
【0027】
上記カバーベルト20の構成について詳述する。図4に最も良く示されているように、カバーベルト20は、全周にわたって均一厚さの細長い無端状のシート(平ベルト)からなるベルト部材21と、このベルト部材21の幅方向両側縁部に設けられた無端状の一対のチューブ(紐部材)22とを有している。これらベルト部材21とチューブ22は、SBR等の弾性ゴム材料(伸縮可能で柔軟な弾性材料)により形成されている。
【0028】
上記ベルト部材21の両側縁部には、周方向に間隔をおいて全周にわたり多数の通し穴21aが形成されている。他方、組み込み前のチューブ22は両端が離れている。このチューブ22の一端を上記通し穴21aに順に通し、最後にチューブ22の両端を短い棒状部材に嵌めて固定することにより、無端状にする。チューブ22は上記隣接する通し穴21a間の部位がベルト部材21の一方側と他方側に交互に配置されることになる。
【0029】
上記ベルト部材21の自然状態での周長は、前後の車輪10の多数の接地ラグ16の先端縁に外接する長円より短く、その線の長さの70〜90%程度である。上記チューブ22の自然長はベルト部材21の自然長よりもさらに短い。
【0030】
上記カバーベルト20を、例えば図4に示すように周方向、幅方向に伸ばし、上述した接地ラグ16の外接長円より周長を大きくした状態で、前後の車輪10を覆うように位置決めした後、人手による引っ張り状態を解除する。これにより、カバーベルト20は縮んで前後の車輪10間に掛け渡される。
【0031】
上記カバーベルト20の装着状態において、ベルト部材21の幅方向中央部は、前後の車輪20の接地ラグ16の先端縁に接し、これら接地ラグ16を覆う主部25となる。主部25は引張状態で接地ラグ16の先端縁に弾性力を持って接しているが、接地ラグ16と固着関係にないので、周方向に若干量の相対変位が可能である。
なお、上記カバーベルト20の主部25の内周は、補助車輪30の外周にも接する。
【0032】
上記ベルト部材21の両側縁部は、それより周長の短いチューブ22に引かれ、主部25に対して径方向内方向に折れ曲がる。その結果、ベルト部材21は断面U字形をなす。上記一対のチューブ22も装着状態で周方向に伸ばされているため、弾性をもって接地ラグ16の幅方向両側面に当たる。図6参照。上記ベルト部材21の各側縁部およびチューブ22は、接地ラグ16の側面に当たる係止部26として提供される。
なお、上記カバーベルト20の係止部26は補助車輪30の両側面にも当たる。
【0033】
上記のようにカバーベルト20を装着した状態でロボットが砂地ないしは泥濘地を走行する場合、車輪10がカバーベルト20で覆われ、さらに車輪10の接地ラグ16もカバーベルト20で覆われているので、砂地ないしは泥濘地を掘ることなく、安定して走行することができる。また、海底探査等に用いる場合、車輪10ないしは接地ラグ16が砂を掻かないので、微小の砂や堆積物が舞い上がり視界を遮るような不都合を防止できる。
【0034】
カバーベルト20を装着することによりクローラーと同等の機能が付加され、信地旋回のみでなく超信地旋回(その場旋回)も可能となる。
上述したように、一対の係止部26が接地ラグ16の両側面に当たっているので、カバーベルト20を車輪10に対して安定して掛け渡すことができ、例えば超信地旋回(その場旋回)時のようにカバーベルト20にねじれ力が付与されても、カバーベルト20が横ずれして車輪10から外れるのを防止できる。
【0035】
上記ベルト部材21には多数の排出穴21bが形成されており、カバーベルト20で覆われた接地ラグ16間の空間がこれら排出穴21bを介して外部に連なっている。そのため、これら空間に溜まった砂を外部に排出することができる。
【0036】
上記ロボットは、カバーベルト20の装着状態であっても、カバーベルト20が支障にならずに図7、図8に示すように高い段差102(障害物)を乗り越えることができる。なぜなら、カバーベルト20は伸縮性および柔軟性を有しており、第2接地ラグ16bが段差102に当たって折れ曲がる際にこれに倣って変形し、そのため、第1接地ラグ16aが段差102の段鼻102aにカバーベルト20を介して引っ掛かるからである。
【0037】
前述したようにロボットは、整地、不整地走行の際にはカバーベルト20無しで走行し、海底等の軟弱地面走行の際にはカバーベルト20を装着することにより、異なる地面状況での走行に兼用することができる。
なお、上記ロボットを、カバーベルト20装着状態のまま軟弱地面走行のためだけに用いてもよい。この場合、汎用の車輪付きロボットの基本構造をそのまま利用できるので、生産コストを低減することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。これら実施形態において先行する実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図9、図10に示す第2実施形態では、車輪10Aのタイヤ12Aが第1実施形態のような接地ラグを有さず、滑らかな外周面に溝(トレッド)19を形成してなる。本実施形態ではこの溝19はタイヤ12Aの幅方向に延びており、直線状をなすとともにその溝幅も比較的広いが、通常の車両用タイヤと同様に、この溝の延び方向、形状、溝幅は種々採用可能である。
【0039】
上記構成をなす前後の車輪10Aにも、第1実施形態と同様のカバーベルト20を掛け渡すことができる。この際、カバーベルト20の主部25がタイヤ10Aの外周面に接し、係止部26がタイヤ10Aの側面またはタイヤ10Aと車輪本体11の側面に接する。
【0040】
図11に示す第3実施形態では、車輪10Bのタイヤ10Bの外周面が、溝を有さず、全周にわたって滑らかになっている。他の構成は第2実施形態と同様である。
【0041】
次に、図12、図13を参照しながら、本発明の第4実施形態に係わるロボットについて説明する。このロボットは、ボデイ1Aの前端側に左右一対の走行装置2Aを設け、後端側にも左右一対の走行装置2Aを設けている。これら走行装置2Aはフリッパタイプのものであり、左右方向に水平に延びる回動軸線L1、L2を中心としてそれぞれ回動されるようになっている。
各走行装置2Aの基本構造は、第1実施形態の走行装置2と同様である。なお、本実施形態では、各走行装置2Aは左右の側板6A間にホイール10を挟んで支持するようになっており、ホイール10は側板6Aにより側面からは見えない。
【0042】
第4実施形態のロボットでは、図13に示すように走行装置2Aを回動させることにより、高い段差102(障害物)をより一層安定した状態で簡単に乗り越えることができる。
なお、第4実施形態に係わるロボットの走行装置として、図9〜図11に示す第2、第3実施形態の走行装置を用いてもよい。
【0043】
次に、カバーベルトの種々の変形例について説明する。各カバーベルトにおいて、先行して説明するカバーベルトと共通の構成については図中同番号を付して説明を省略する。
図14に示すカバーベルト20Bは、第1実施形態と同様の形状をなすベルト部材21Bと、その両側縁部の内周に接着されたチューブ(紐部材)22とを有している。
ベルト部材20Bの幅は第1実施形態のベルト部材20より小さく、チューブ22だけで係止部26が構成されている。
【0044】
図14のカバーベルト20Bでは、チューブ22の寸法(接地ラグ16の高さ方向の寸法)が、接地ラグ16の高さより小さいので、タイヤ本体15とチューブ22との間に間隙Dが形成され、この間隙Dを介して接地ラグ16間の空間が外部に連なっている。その結果、この空間から間隙Dを介しても砂出しを行うことができる。
なお、図14のカバーベルト20Bを第2、第3実施形態の車輪10A,10Bに装着してもよい。この場合、チューブ22がタイヤ12A,12Bの側面に接する。
【0045】
図15に示すカバーベルト20Cでは、主部25の内周面に多数の突起25xを略均等に散点状に設け、主部25の内周面とタイヤ12の接地ラグ16の先端面(またはタイヤ12A、12Bの外周面)との間に砂が逃げる隙間を確保し砂排出性を向上させている。
【0046】
図16に示すカバーベルト20Dでは、主部25の内周面に、カバーベルト20Dの周方向に連続した1つまたは複数の突起25yを設け、カバーベルト20Dの周方向への引っ張り力に対する強度アップと砂排出性向上を図っている。
【0047】
図17に示すカバーベルト20Eでは、主部25の内周面に、間隔をおいて幅方向に延びる突起25zを設け、図15、図16のカバーベルトと同様に砂排出性向上を図っている。
また、上記カバーベルト20Eを第1実施形態の車輪10又は第2実施形態の車輪10Aに用いれば、このカバーベルト20Eの突起25zが接地ラグ16又は溝19に引っ掛かることにより、カバーベルト20Eと車輪10との相対すべりを防ぎ、駆動力損失を低減するようにしている。
【0048】
図18に示すカバーベルト20Fでは、比較的太い繊維ないしは弾性材料からなるワイヤ29(線状体)を図示のように斜めに織ることにより、ベルト部材21Fが構成され、このベルト部材21Fの両側縁部の網目に弾性材料からなる紐部材(図示しない)をくぐらせるようになっている。
【0049】
上記ベルト部材21Fの幅方向中央部により主部25が構成され、その両側縁部と紐部材により係止部が構成される。繊維29間の隙間が、砂出し用の排出穴21bとして提供される。なお、図18では、理解を容易にするために繊維29の織りを実際より粗くして示す。
【0050】
図18の変形例において、上記紐部材をゴム等の弾性材料で形成し、上記繊維29は弾性材料ではなく、通常の高強度の合成繊維で形成してもよい。この場合、繊維29の織り方により、カバーベルトは周方向に弾性的に伸縮可能とすることができ、前述した他のカバーベルトと同様の機能を発揮することができる。
図18の変形例において、繊維29を編むことによりベルト部材を周方向に弾性的に伸縮可能に構成してもよい。
上記繊維29と紐部材を、ともに樹脂等の非弾性材料で形成してもよい。この場合、紐部材は装着前は無端状ではなく、両端を有している。そして、周方向に弾性的に伸縮可能なベルト部材21Fを被せた後に、紐部材の両端を結ぶ。
【0051】
本発明は、上記実施例に制約されず、種々の態様を採用することができる。例えば、第1実施形態において、車輪の接地ラグは幅方向に分割されていてもよい。また、接地ラグは全て同形状であってもよい。
主部と係止部を有する断面U字形のカバーベルトを一体成形してもよい。例えば、ベルト部材と紐部材を一体成形していてもよい。
紐部材は中実であってもよい。
紐部材は、車輪装着状態において自然状態とほぼ同じ長さであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の走行装置およびロボットは、砂地等の軟弱地面の走行のために用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1A ボデイ
2,2A 走行装置
10,10A、10B 車輪
11 車輪本体
12,12A、12B タイヤ
16,16a,16b 接地ラグ
20,20B,20C,20D,20E,20F カバーベルト
21,21B,21F ベルト部材
21a 通し穴
21b 排出穴
22 チューブ(紐部材)
25 主部
26 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に離間した第1、第2の車輪を備え、各車輪が、剛性の車輪本体と、その外周に装着された弾性材料からなるタイヤを有する走行装置において、
上記第1、第2の車輪に、伸縮可能な無端状のカバーベルトが、自然長より伸びた状態で着脱可能に掛け渡されていることを特徴とする走行装置。
【請求項2】
上記車輪のタイヤの外周には多数の接地ラグが突出形成され、
上記カバーベルトは、この接地ラグの先端縁に接するようにして掛け渡されていることを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
上記カバーベルトは、上記接地ラグの先端縁に接する主部と、この主部の幅方向両側縁部から内周側に突出するようにして全周にわたって設けられた一対の係止部とを有し、これら係止部が上記接地ラグの側面に当たることを特徴とする請求項2に記載の走行装置。
【請求項4】
上記カバーベルトが、無端状のベルト部材と、このベルト部材の両側縁部に設けられた無端状の紐部材を有し、
上記ベルト部材の少なくとも中央部が上記主部として提供され、上記紐部材が上記係止部の少なくとも一部として提供されることを特徴とする請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
上記ベルト部材の幅が上記接地ラグの幅より大きく、
上記カバーベルトの装着状態において、上記ベルト部材が断面U字形をなし、このベルト部材の側縁部と上記紐部材が上記係止部として提供されることを特徴とする請求項4に記載の走行装置。
【請求項6】
上記ベルト部材が細長いシート形状をなし、その両側縁部には多数の通し穴が周方向に間隔をおいて形成され、
上記紐部材が上記ベルト部材と別体をなし、上記ベルト部材の通し穴を周方向に沿って順次通ることにより、上記ベルト部材に取り付けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の走行装置。
【請求項7】
上記カバーベルトに多数の排出穴が形成され、これら排出穴を介して上記接地ラグ間の空間が外部に連なることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の走行装置。
【請求項8】
ボデイと、このボデイの左右に設けられた請求項1〜7のいずれかに記載の走行装置とを備えたロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−235800(P2011−235800A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110005(P2010−110005)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】