説明

走行車両のペダル構造

【課題】簡単で安価な構成、単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができる操作ペダルを備える走行車両のペダル構造を提供する。
【解決手段】操作ペダルを備える走行車両のペダル構造において、操作ペダルである前進ペダル21及び後進ペダル22の端部に、凹凸形状の端面60を有するとともに踏面21f・22f側に向けて折曲げ形成される屈曲部61を設けた。また、屈曲部61を各ペダル21・22の対向する両端部に設け、前進ペダル21と後進ペダル22とを、打ち抜き加工により設ける前進または後進を示す識別標識62を含み同一形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に用いて好適な走行車両のペダル構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタや乗用芝刈機などの作業車両においては、その運転部の操縦ステップに変速ペダルやブレーキペダル等の操作ペダルが配設されており、その構造に関しては種々の技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
また、油圧式無段変速装置(以下、「HST」(Hydro Static Transmission)とする。)を備える走行車両等においては、前後進操作手段として前進ペダルと後進ペダルとを別々に配設する構成のものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
また、前記のような操作ペダルにおいては、例えば、走行車両の左右の走行車輪に対する独立のブレーキペダル等にように、一本の棒状体が屈曲されて構成されるものがある。つまり、操作ペダルにおける踏部が、略水平方向に配される棒状に構成されるものである。
【0004】
一方、このような操作ペダルには、運転部の前下方(運転者の足元)において操縦ステップ等のプレート部材から延出されるロッド部(アーム部)を介して設けられる構造のものがある。このような構造においては、前記プレート部材に前記ロッド部の移動を許容する案内部(開口部)が形成される。
【特許文献1】特開平8−40102号公報
【特許文献2】特開2004−330900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の操作ペダルは、その踏面が略平面あるいは若干の湾曲面に形成されていることから、雨水や泥の付着により運転者の足が滑りやすくなる可能性があり、誤操作防止や安全性確保などのため滑り止めが構成されているものがある。このような滑り止めは、従来、操作ペダルにゴム等の滑り止め部材を被装もしくは貼設したり、鋳物で踏面に溝や凹凸を形成したりすることにより構成されていた。
このため、操作ペダルに滑り止めを構成するに際し、コスト高や製造工程の増加を招き、また、十分な滑り止め効果が得られない面もあった。特に、前述したような前進ペダルと後進ペダルとを別々に備える構成の場合、例えば特許文献1においても図示されているように、前進または後進を示す矢印などの識別標識が踏面に付されたりすると、各ペダルが異なる構成(形状)となり、部品管理の面からもコスト高を招くこととなる。
【0006】
また、前述したように、踏部が略水平方向に配される棒状に構成される操作ペダルにおいては、コンパクトなペダル構造や良好な操作性が得られる反面、運転者の靴底が接触する面積が小さいため、雨水や泥の付着により運転者の足が滑りやすくなる可能性が高い。例えば、このように棒状に構成される操作ペダルが前記のとおりブレーキペダルに用いられる場合、運転者の足が滑ることによる誤操作は、安全性確保の観点から極力避けるべきである。
【0007】
一方、前述したように、ロッド部を介して操作ペダルが設けられる構成においては、例えば走行車両のエンジンが運転部の前方に搭載される場合など、前記ロッド部を挿通させるプレート部材の案内部からエンジンの熱風が吹き込み運転者の足元に吹き付けることがある。こうしたエンジンの熱風の吹込みを防止するためには、従来、ロッド部の移動を許容する切込み等が形成されたゴム板や、蛇腹形状によりロッド部の移動に追従する蛇腹式の部材などが用いられ、前記案内部が塞がれていた。しかし、一般的に操作ペダルは運転者の足元に配設されるため、複雑な構造であるとゴミや泥が溜まり易く、清掃性に問題があるとともに、すぐ破損してしまうこととなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、簡単で安価な構成、単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができる操作ペダルを備える走行車両のペダル構造を提供することにある。また、単純かつ破損し難い構造により、操作ペダルが設けられるロッド部が挿通する案内部からエンジンの熱風が吹き込むことを防止することができる走行車両のペダル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、操作ペダルを備える走行車両のペダル構造において、該操作ペダルの端部に、凹凸形状の端面を有するとともに踏面側に向けて折曲げ形成される屈曲部を設けたものである。
【0011】
請求項2においては、前記屈曲部を形成する前記操作ペダルの折曲げを多段とし、該操作ペダルに平面部を設けたものである。
【0012】
請求項3においては、前記操作ペダルは、走行車両の前進ペダルと後進ペダルとを含み、これら前進ペダル及び後進ペダルそれぞれに、前進または後進を示す識別標識を打ち抜き加工により設けたものである。
【0013】
請求項4においては、前記屈曲部を前記操作ペダルの対向する両端部に設け、前記前進ペダルと前記後進ペダルとを、前記識別標識を含み同一形状としたものである。
【0014】
請求項5においては、略水平方向に配される棒状の踏部を構成する操作ペダルを備える走行車両のペダル構造において、前記操作ペダルに、摩擦部を構成したものである。
【0015】
請求項6においては、走行車両の運転部とエンジン室とを隔てるプレート部材に設けられ開口により構成される案内部を介して、操作ペダルのロッド部が運転部に延出される走行車両のペダル構造において、前記案内部に、該案内部と前記ロッド部との間に形成される開口部を塞ぐとともに弾性変形により前記ロッド部の移動を許容する閉塞部と、前記プレート部材を挟持する挟持部とを備え、前記案内部と略同一幅を有するモール部材を装着したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、簡単で安価な構成、単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができる。
つまり、従来のように操作ペダルの踏面が略平面あるいは若干の湾曲面に形成されていた場合と比較して、板状のペダルの端部を折り曲げることで踏面から突出する部分となる屈曲部の折曲げ形状が運転者の靴底に当接作用して滑り止めとなる一方、ペダルの端面となる屈曲部の凹凸状の端面が運転者の靴底に摩擦作用して滑り止めとなるので、十分な滑り止め効果を得ることができる。また、板状の操作ペダルにおいて、凹凸状の端面や板の屈曲はプレス加工により形成することができるので、前記屈曲部は低コストで簡単に構成することができる。
【0018】
請求項2においては、踏力が大きい操作ペダルにおいて、凹凸状に形成される屈曲部の端面から靴底に対する圧力を低減することができるので、運転者の靴底の傷みを防止することができる。
【0019】
請求項3においては、プレス加工により設けることができる屈曲部とともに同一工程において識別標識を設けることができる。これにより、識別標識を設けるに際し工程が増えることなく、製造工程の簡略化及び低コスト化を図ることが可能となる。また、矢印などの識別標識を有するゴム板などを操作ペダルに貼設する場合などと比較しても、製造工程の簡略化や部品点数の削減が図れ低コスト化を図ることができる。
【0020】
請求項4においては、前進ペダルと後進ペダルとを兼用することが可能となる。これにより、前進ペダル及び後進ペダルの部品としての管理コストを削減することができ、部品管理の面からも低コスト化を図ることができる。
また、一つの操作ペダルにおいて屈曲部が二箇所設けられることとなるので、滑り止め効果を向上することができる。
【0021】
請求項5においては、棒状の操作ペダルに構成する摩擦部を、例えば、座金などの摩擦部材を用いることや、ネジ加工等の摩擦形状を施すこと等によって構成することができるので、既存の部材や工場などにおける既存設備を用いることにより、簡単かつ安価に棒状の操作ペダルにおける滑り止め効果を得ることができる。
【0022】
請求項6においては、単純かつ破損し難い構造により、エンジン室内と連通する案内部から運転部内にエンジンの熱風が吹き込み運転者の足元に吹き付けることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、以下の説明においては、走行車両の前進方向を前、その反対方向を後とし、前進方向における左右方向を左右とする。
図1は、本発明に係る走行車両に作業機を装着した作業車両の一例としてのトラクタバックホーローダ1の全体側面図を示すものであり、トラクタバックホーローダ1は、左右両輪の前輪3及び後輪4を有する走行車両2を本機としている。走行車両2は、その前側に積込み装置であるローダ5が装着されるとともに後側に掘削装置6が装着された状態で走行可能に構成されている。
走行車両2の車体フレーム7の前部であって前輪3の上方にはボンネット8が設けられており、該ボンネット8は、車体フレーム7上に搭載されるエンジン(図示略)を被装する。ボンネット8内にはエンジン室が構成され、エンジンとともにラジエータ、マフラ、エアクリーナ等のエンジンの付属機器も配設される。
【0024】
ボンネット8の後方には運転部(操縦部)9が構成されている。運転部9には、ステアリングハンドル10及び座席11が配設されており、座席11の近傍には、ローダ5や掘削装置6の操作装置などが配設されている。また、運転部9には、走行車両2の操作ペダルである前進ペダル21、後進ペダル22及びブレーキペダル(41・42・43)が配設されている(図2参照)。これにより、運転部9において、走行車両2の走行操作及びローダ5、掘削装置6の作業操作が可能となっている。
【0025】
図2に示すように、前記車体フレーム7には、運転者の足場となるステップ12が敷設されており、このステップ12の前方には、各種操作ペダルが配設されるプレート部材である配設プレート13が敷設されている。
前記ステップ12の後下方には、HST14が配置されている。このHST14の後方には、遊星歯車機構を内装するギアボックス15が配置されており、HST14とともにHMT(Hydro Mechanical Transmission)が構成されている。
【0026】
前記配設プレート13の右側には、変速操作装置20が配置されている。この変速操作装置20には、走行車両2の操作ペダルである前進ペダル21及び後進ペダル22が配設されている。
変速操作装置20の概略構成について説明すると、前進ペダル21及び後進ペダル22は、いずれも配設プレート13の裏側において支持される回動支持軸23により回動自在に支持されるロッド部である前進ペダルロッド21a及び後進ペダルロッド22aの先端部に固設されている。すなわち、回動支持軸23は、配設プレート13の裏側二箇所に突設されるステー13a・13bに左右方向に支持されており、この回動支持軸23に、前進ペダルロッド21aの基部を構成する前進ペダル回動筒21b、後進ペダルロッド22aの基部を構成する後進ペダル回動筒22bが、それぞれ回動自在に支持されている。
【0027】
前進ペダル21及び後進ペダル22は、前記前進ペダル回動筒21b及び後進ペダル回動筒22bから延設されるアーム等により構成されるリンク機構(図示略)を介してリンク24と連動連結されており、このリンク24を介して斜板傾転角操作機構25に連結されている。ここで、リンク24は、前記リンク機構により、前進ペダル21が操作されると前方に移動され、後進ペダル22が操作されると後方に移動される構成となっており、これにより斜板傾転角操作機構25が連動して操作される。
すなわち、変速操作装置20は、斜板傾転角操作機構25を介してHST14の油圧モータ14m及び油圧ポンプ14pの各コントロールアーム30・31に連動連結されている。斜板傾転角操作機構25は、モータ制御リンク28を介して油圧モータ14mのコントロールアーム30に連動連結される第一アーム26と、ポンプ制御リンク29を介して油圧ポンプ14pのコントロールアーム31に連動連結される第二アーム27と備えている。第一・第二アーム26・27は、同一の回動支持軸32上に回動支持され、かつ互いに連係動作する構成となっている。
以上のような構成により、前進ペダル21または後進ペダル22の踏込みに連動して、第一アーム26及び第二アーム27が回動操作され、HST14の油圧モータ14m及び油圧ポンプ14pの斜板傾転角度が変更され、速度設定・前後進切換えが行われる。
【0028】
一方、配設プレート13の左側には、ブレーキ操作装置40が配置されている。このブレーキ操作装置40には、操作ペダルである左ブレーキペダル41、右ブレーキペダル42及び両ブレーキペダル41・42を同時に操作するためのマスターブレーキペダル43が設けられている。左右両ブレーキペダル41・42は、それぞれリンク45・46を介して図示せぬブレーキ装置に連結されている。
ブレーキ操作装置40の概略構成について図3〜5を加えて説明すると、前記配設プレート13の裏側には、その左右幅と略同一長さの回動支持軸47が左右方向に設けられている。回動支持軸47は、配設プレート13の裏側において突設されるステー13c及び前記ステー13bの間に架設されている。この回動支持軸47には、左ブレーキペダル41がロッド部41aを介して固設される左ブレーキ回動軸41b、右ブレーキペダル42がロッド部42aを介して固設される右ブレーキ回動筒42b、マスターブレーキペダル43がロッド部としてのペダルロッド43aを介して固設されるマスターブレーキ回動筒43bがそれぞれ回動自在に支持されている。
【0029】
図4に示す如く、左ブレーキ回動筒41b及び右ブレーキ回動筒42bには、それぞれ前方斜め下方に向けてアーム41c・42cがそれぞれ突設されており、各アーム42c・42cは、それぞれ戻しバネ41d・42dを介して配設プレート13に固設されるフック係止板44に係止されている。これら戻しバネ41d・42dによって各ブレーキ回動筒41b・42bは図5において反時計方向(上方)へ回動付勢されており、踏込み操作がなされない状態では各ブレーキペダル41・42は引き上げられてブレーキが効かないようになっている。
また、左ブレーキ回動筒41bの右側端部には、右側走行車輪のブレーキ装置と連結される連結体としての前記リンク45が前記アーム41cを介して連結されている。一方、右ブレーキ回動筒42bには、左側走行車輪のブレーキ装置と連結される同じく連結体としてのリンク46が、右ブレーキ回動筒42bに突設されるアーム42eを介して連結されている。これにより、左ブレーキペダル41、右ブレーキペダル42の操作に応じてリンク45・46が独立して操作され、左右の走行車輪が独立して制動可能に構成されている。
【0030】
左ブレーキペダル41は、前記ロッド部41aとともに一本の棒状体が屈曲されて構成されており、左ブレーキ回動筒41bから後方斜め上方へ傾斜して延出されるロッド部41aから、下方へ屈曲されて傾斜するとともに左方向へ屈曲されて略水平方向左向きに延設されている。
また、右ブレーキペダル42は、前記ロッド部42aとともに一本の棒状体が屈曲されて構成されており、右ブレーキ回動筒42bから後方斜め上方へ傾斜して延出されるロッド部42aから、下方へ屈曲されて傾斜するとともに右方向へ屈曲されて略水平方向右向きに延設されている。
【0031】
また、マスターブレーキペダル43は、前記左右のロッド部41a・42a間においてマスターブレーキ回動筒43bより後方斜め上方へ傾斜して延出されるロッド部としてのペダルロッド43aに付設される板状部材により構成されている。マスターブレーキペダル43は、左ブレーキペダル41のロッド部41a、及び右ブレーキペダル42のロッド部42aの上方に配置されている。つまり、マスターブレーキペダル43は、左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42間における略中央に配置され、前記左右のロッド部41a・42aに対して平面視で重なるように構成されており、マスターブレーキペダル43が踏込み操作されると、該マスターブレーキペダル43により各ロッド部41a・42aが押され、左右のブレーキペダル41・42が同時に操作される。
【0032】
以上のブレーキ操作装置40の構成により、左右のブレーキペダル41・42の操作によって左右の走行車輪が独立して制動可能に構成されるとともに、マスターブレーキペダル43の操作によって左右の走行車輪が同時に制動可能に構成されている。
【0033】
また、ブレーキ操作装置40においては、駐車の際、マスターブレーキペダル43を踏み込んで左右のブレーキを効かせた状態でロックするためのパーキングロック機構50が構成されている。パーキングロック機構50は、駐車の際に操作されるパーキングレバー51と、このパーキングレバー51の基端部が貫通固設される回動アーム52とを備えている。回動アーム52は、配設プレート13から突設されるステー13dに回動自在に支持されるとともに、マスターブレーキペダル43の踏み込まれた状態を保持するための係合部52aが形成されている。
【0034】
回動アーム52においては、前記のとおりパーキングレバー51の基端部が貫通固設され、該パーキングレバー51の動作に連動して回動アーム52が回動される構成となっている。このパーキングレバー51の回動アーム52から貫通して突出する部分には、配設プレート13から突設される係止部13eに一端側が係止される戻しバネ53の他端側が係止されている。これにより、回動アーム52は図5において反時計方向に回動付勢されている。
また、回動アーム52に形成される係合部52aは、ノコギリ状に形成されるとともにマスターブレーキペダル43のペダルロッド43aに固設される係合片43cに対向して配置されている。この回動アーム52の係合部52aのいずれかの谷間に係合片43cが係合する構成となっている。
【0035】
このような構成のブレーキ操作装置40においては、駐車の際、マスターブレーキペダル43の踏込み操作によりペダルロッド43aが図5において時計方向に回動される。一方、パーキングレバー51が同じく図5において時計方向に回動されることにより、回動アーム52が戻しバネ53の付勢力に抗して時計方向に回動され、その係合部52aにペダルロッド43aの係合片43cが係合した状態となる。これにより、回動アーム52の回動が規制され、マスターブレーキペダル43が踏み込まれた状態が維持される。
【0036】
また、ブレーキ操作装置40においては、係合片43c及び回動アーム52に接触してマスターブレーキペダル43及びパーキングレバー51の操作状態を検出するためのリミットスイッチ55が設けられている。リミットスイッチ55は、配設プレート13に固設されるステー55aに取り付けられて設けられている。このリミットスイッチ55により、マスターブレーキペダル43が踏み込まれていること及びパーキングレバー51が回動アーム52の係合部52aと係合片43cとの係合を解除する位置にあることが検知された場合のみ、エンジンの始動が可能となるように構成され、安全性の確保が図られている。
【0037】
以上のように、走行車両2において配設プレート13に配設される各操作ペダル、即ち、変速操作装置20における前進ペダル21及び後進ペダル22、ブレーキ操作装置40における左ブレーキペダル41、右ブレーキペダル42及びマスターブレーキペダル43の構成について、以下に説明する。
【0038】
まず、前進ペダル21及び後進ペダル22について説明する。
前進ペダル21及び後進ペダル22は、前記のとおり、ロッド部である前進ペダルロッド21a及び後進ペダルロッド22aの先端部にそれぞれ固設され、図6に示すように、略矩形板状に構成されている。そして、前進ペダル21及び後進ペダル22の端部に、凹凸状の端面60を有するとともに踏面21f・22fに向けて折曲げ形成される屈曲部61が設けられている。
すなわち、略矩形状の板状部材において、その端部(本実施例においては、前後端部)を歯型状に形成することにより端面を凹凸状に形成し、凹凸状とした端面60側の端部を踏面21f・22f側、つまり上方向に折り曲げることにより屈曲部61を構成する。
【0039】
このように、操作ペダルである前進ペダル21及び後進ペダル22にそれぞれ屈曲部61を設けることにより、簡単で安価な構成、単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができる。
つまり、従来のように操作ペダルの踏面が略平面あるいは若干の湾曲面に形成されていた場合と比較して、前後方向については、板状のペダルの端部を折り曲げることで踏面21f・22fから突出する部分となる屈曲部61の折曲げ形状が運転者の靴底に当接作用して滑り止めとなり、左右方向については、各ペダルの前後端面となる屈曲部61の凹凸状の端面60が運転者の靴底に摩擦作用して滑り止めとなり、前後左右方向について十分な滑り止め効果を得ることができる。また、板状の前進ペダル21及び後進ペダル22において、凹凸状の端面60や板の屈曲はプレス加工により形成することができるので、屈曲部61は低コストで簡単に構成することができる。さらに、プレス加工により屈曲部61などにバリが生じた場合であっても、そのバリを滑り止めとして利用することができるので、プレス加工によるバリの有効利用が可能であるとともにバリ取り加工を施すことなく製造工程の簡略化が図れる。
【0040】
なお、屈曲部61を設ける位置は、本実施例のように前後端部に限らず、左右端部であってもよい。この場合、前後方向については、屈曲部61の凹凸状の端面が摩擦作用し、左右方向については、各ペダル21・22における踏面21f・22fから突出する屈曲部61の折曲げ形状が当接作用することで滑り止め効果が得られる。また、屈曲部61を設けるに際し、該屈曲部61の踏面21f・22fに対する折曲げ角度は特に限定されないが、プレス加工による加工のし易さや操作ペダルとしての機能などを考慮すると鈍角であることが好ましい。
【0041】
また、前進ペダル21及び後進ペダル22の各ペダルには、前進または後進を示す識別標識62が打ち抜き加工により設けられている。
本実施例において前・後進を判別するための識別標識62は、板状のペダルにおいて矢印形状が打ち抜かれることにより設けられており、前進ペダル21においては前向きの矢印が、後進ペダルにおいて後向きの矢印がそれぞれ示されている。なお、識別標識62としては、図示のような矢印形状に限定されるものではなく、例えば、示す方向を頂点とする三角形状など、前・後進の判別が容易であり、かつ、打ち抜き加工しやすい形状のものであればよい。また、ペダルの強度を考慮して、識別標識62における打ち抜き箇所を複数に分けた形状であってもよい。
【0042】
このように、前進ペダル21及び後進ペダル22の各ペダルにおいて、前・後進を示す識別標識62を打ち抜き加工により設けることにより、前記のとおりプレス加工により設けることができる屈曲部61とともに同一工程において識別標識62を設けることができる。これにより、識別標識62を設けるに際し工程が増えることなく、製造工程の簡略化及び低コスト化を図ることが可能となる。また、矢印などの識別標識を有するゴム板などを操作ペダルに貼設する場合などと比較しても、製造工程の簡略化や部品点数の削減が図れ低コスト化を図ることができる。
【0043】
さらに、前進ペダル21及び後進ペダル22に設けられる屈曲部61は、各ペダル21・22の対向する両端部に設け、前進ペダル21と後進ペダル22とを、前記識別標識62を含み同一形状とすることが好ましい。
すなわち、図6に示すように、各ペダル21・22の前後両端部に屈曲部61を設けるとともに、識別標識62を各ペダル21・22において一方向(前方または後方)を示す形状(矢印形状)とすることにより、各ペダル21・22全体として、識別標識62を含み同一形状としている。
【0044】
このように、屈曲部61を対向する両端部に設けて前進ペダル21及び後進ペダル22を同一形状とすることにより、前進ペダル21と後進ペダル22とを兼用することが可能となる。つまり、前進ペダルロッド21a及び後進ペダルロッド22aに対して前進ペダル21及び後進ペダル22を固設する際に、各ペダルを前後反対に向けることにより、各ペダルにおける識別標識62は前進または後進を示すとともに、各ペダル全体の形状としては同一の機能を果たすこととなる。
これにより、前進ペダル21及び後進ペダル22の部品としての管理コストを削減することができ、部品管理の面からも低コスト化を図ることができる。
また、一つの操作ペダルにおいて屈曲部61が二箇所設けられることとなるので、滑り止め効果を向上することができる。この際、二箇所の屈曲部61はプレス加工によって同一工程において設けることができるので、製造工程が増えることもなく簡単かつ安価な構成を維持することができる。
なお、前進ペダル21及び後進ペダル22において対向する両端部に屈曲部61を設けるに際しては、本実施例のように前後両端部に限らず、各ペダル21・22における左右両端部に設けてもよい。
【0045】
続いて、前進ペダル21及び後進ペダル22の別実施例について図7を用いて説明する。なお、前記実施例と重複する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例においては、各ペダルロッド21a・22aに固設される略矩形板状の各ペダル21・22が、左右略中央位置においてペダル全体として折り曲げられ左半部71Lと右半部71Rとが構成されている。また、左半部71L及び右半部71Rそれぞれの端面、即ち各ペダル21・22の左右端面が凹凸形状の端面70となっている。つまりこの場合、各ペダル21・22において、左半部71Lと右半部71Rが互いに屈曲部を構成していることとなる。
【0046】
そして、図7(b)に示すように、後進ペダル22の左側に位置する前進ペダル21は、その右半部71Rが前進ペダルロッド21aに対して固着されることにより該前進ペダルロッド21aに固設され、前進ペダル21の右側に位置する後進ペダル22は、その左半部71Lが後進ペダルロッド22aに対して固着されることにより該後進ペダルロッド22aに固設される。なお、図7(b)は、同図(a)におけるA矢視図を示している。
【0047】
このような構成とすることにより、前進ペダル21及び後進ペダル22について、簡単で安価な構成、単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができるとともに、安全性の向上を図ることができる。
すなわち、前記のとおり、左側に位置する前進ペダル21はその右半部71Rを、右側に位置する後進ペダル22はその左半部71Lを各ペダルロッド21a・22aに対して固着して設けることにより、前進ペダル21と後進ペダル22との左右方向の間隔を広げることができるので、運転者の靴が前進ペダル21と後進ペダル22との間に挟まるということを防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
また、前進ペダル21及び後進ペダル22を、凹凸形状の端面70を有する左半部71Lと右半部71Rからなる折曲げ形状とすることにより、前後方向については、各ペダル21・22の左右端面となる凹凸形状の端面70が運転者の靴底に摩擦作用して滑り止めとなり、左右方向については、左半部71Lと右半部71Rとからなる屈曲形状により滑り止めとなるので、前後左右方向について十分な滑り止め効果を得ることができる。また、板状の前進ペダル21及び後進ペダル22において、凹凸形状の端面70や板の屈曲はプレス加工により形成することができるので、低コストで簡単に構成することができる。
【0048】
次に、左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42について説明する。
左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42は、前述したように、それぞれのロッド部41a・42aとともに一本の棒状体が屈曲されて構成され、略水平方向に配される棒状の踏部を構成する。そして、左右のブレーキペダル41・42において、それぞれ摩擦部80が構成されている。
すなわち、図2から図5に示すように、摩擦部80として、棒状である左右のブレーキペダル41・42においてその先端部に拡径部81が形成されている。具体的には、拡径部81は、左右のブレーキペダル41・42に摩擦部材を固設することで摩擦形状とすることにより構成され、例えば、摩擦部材として座金を用い、これを左右のブレーキペダル41・42の先端面に溶接などにより固着することによって構成される。
【0049】
このように、棒状である左右のブレーキペダル41・42において、その先端部に摩擦部80として拡径部81を形成することにより、簡単かつ安価な構成によって滑り止め効果を得ることができる。つまり、各ブレーキペダル41・42に形成される拡径部81が、運転者の靴底に対して摩擦作用して各ブレーキペダル41・42における左右方向に対する滑り止めとなり、また、座金などを溶接することにより拡径部81を形成することができるので、既存の部材を用いることができて簡単かつ安価に摩擦部80を構成することができる。
【0050】
また、左右のブレーキペダル41・42において設けられる摩擦部80としては、次のような構成とすることもできる。摩擦部80の別実施例について図8を用いて説明する。なお、左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42は左右略対称な形状であることから、図8においては、左ブレーキペダル41についてのみ図示している。
【0051】
図8(a)に示すように、左右のブレーキペダル41・42に摩擦部材として合成ゴム等の弾性素材からなるホース部材82を装着することにより摩擦部80を構成する。つまり、棒状である左右のブレーキペダル41・42に対して筒状のホース部材82を装着することにより、それぞれの表面を各ブレーキペダル41・42を構成する金属などと比較して摩擦係数の高い弾性素材で被装することで摩擦部80を構成する。
このように、摩擦部材として弾性素材からなるホース部材82を用いることによっても、簡単かつ安価な構成によって滑り止め効果を得ることができる。
【0052】
また、図8(b)及び(c)に示すように、左右のブレーキペダル41・42自体に摩擦形状を施すことによって摩擦部80を構成することもできる。
すなわち、図8(b)に示すように、左右のブレーキペダル41・42にネジ加工を施してネジ部83を形成することにより摩擦形状を施し、摩擦部80を構成する。また、同図(c)に示すように、左右のブレーキペダル41・42にローレット加工を施してローレット部84を形成することにより摩擦形状を施し、摩擦部80を構成する。
【0053】
このように、左右のブレーキペダル41・42自体に、ネジ形状やローレット形状などの摩擦形状を施すことによって摩擦部80を構成することによっても、簡単かつ安価な構成によって滑り止め効果を得ることができる。つまり、左右のブレーキペダル41・42にネジ部83やローレット部84を形成して摩擦形状を施すことにより、各ブレーキペダル41・42の表面に多数の凹凸が形成されて引っかかり易くなり、運転者の靴底に対する摩擦作用を増加することができるので、滑り止め効果が得られる。また、ネジ部83を形成するためのネジ加工やローレット部84を形成するためのローレット加工は、工場などにおける既存設備を用いることによって設けることができるので、摩擦部80を簡単かつ安価に構成することができる。
【0054】
続いて、マスターブレーキペダル43について説明する。
マスターブレーキペダル43は、前述したように、ペダルロッド43aに付設される板状部材により構成されている。図3、図5及び図9等に示すように、マスターブレーキペダル43には、前進ペダル21及び後進ペダル22と同様に、凹凸形状の端面92を有するとともに踏面43f側に向けて折曲げ形成される屈曲部91が設けられている。
そして、マスターブレーキペダル43においては、屈曲部91が形成されるマスターブレーキペダル43の折曲げが多段とされ、平面部90が設けられている。
【0055】
すなわち、平面部90は略矩形状に形成される平板部であり、該平面部90の後側から後下方に傾斜する斜面部90aが折曲げ形成されており、該斜面部90aの後側から屈曲部91が折曲げ形成されている。つまり、一枚の板状部材により構成されるマスターブレーキペダル43において、その後側が側面視逆へ字状となるように多段に折曲げられるとともに、その端面が凹凸形状に形成されることにより、平面部90及び該平面部90に対して斜面部90aを介して設けられる屈曲部91が構成されている。
そして、平面部90の左右略中央位置においてペダルロッド43aが固着されることによりマスターブレーキペダル43がペダルロッド43aに固設される。マスターブレーキペダル43が踏込み操作されると、この平面部90が左右のロッド部41a・42aを押すこととなる。
【0056】
このように、操作ペダルとしてのマスターブレーキペダル43に屈曲部91とともに平面部90を設けることにより、踏力が大きい操作ペダルにおいて、凹凸状に形成される屈曲部91の端面92から靴底に対する圧力を低減することができるので、運転者の靴底の傷みを防止することができる。なお、平面部90を設けた場合の屈曲部91による滑り止め効果は、屈曲部91の端面92の凹凸形状により確保することができる。
【0057】
また、マスターブレーキペダル43において、その平面部90と斜面部90aとの折り目部分に一または複数(図示においては三箇所)の孔部94が穿設されている。つまり、平面部90の後側から後下方に向けて屈曲される部分に孔部94を設けることにより、平面部90と斜面部90aとの折り目部分が凹凸状とされる。
【0058】
以上のようにマスターブレーキペダル43を構成することにより、簡単で安価な構成、単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができる。
つまり、前後方向については、平面部90に対して折曲げ形成される屈曲部91の折曲げ形状により滑り止めとなり、左右方向については、屈曲部91の凹凸状の端面92及び孔部94を設けることによる平面部90と斜面部90aとの折り目部分の凹凸形状が運転者の靴底に摩擦作用して滑り止めとなり、前後左右方向について十分な滑り止め効果を得ることができる。
また、平面部90及び屈曲部91を有する板状のマスターブレーキペダル43において、凹凸状の端面92や屈曲形状や孔部94はプレス加工により形成することができるので、低コストで簡単に構成することができる。
また、マスターブレーキペダル43の下面側に端面が形成されないこととなるので、運転者の靴がマスターブレーキペダル43の下側に入り込んだ場合であっても、靴が傷ついたり引っかかったりすることを防止することができる。
【0059】
また、マスターブレーキペダル43は、図10に示すような構成とすることもできる。なお、重複する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、図10に示すように、マスターブレーキペダル43において、その平面部90に対して、該平面部90の後側から後下方に向けて屈曲される傾斜部93を設けるとともに、平面部90と傾斜部93との折り目部分に一または複数(図示においては三箇所)の孔部94を穿設する。つまり、図10(c)に示すように、マスターブレーキペダル43において前記実施例における屈曲部91を省略し、平面部90と傾斜部93とで側面視略へ字状を構成するとともに、同図(a)、(b)に示すように、孔部94を設けることにより、平面部90と傾斜部93との折り目部分を凹凸状とする。
【0060】
このような構成においても、マスターブレーキペダル43について、簡単で安価な構成、より単純な形状により、十分な滑り止め効果を得ることができる。
つまり、マスターブレーキペダル43を平面部90と傾斜部93とで略へ字状に構成することにより、平面部90と傾斜部93との折り目部分が運転者の靴底が当たりやすい部分となり、この部分に孔部94を設けることによって凹凸状が形成されるので、前後左右方向についてより単純な形状により滑り止め効果を得ることができる。さらに、マスターブレーキペダル43を製造するに際し、裏面側から踏面43f側に向けて打ち抜き加工を行うことにより、傾斜部93の端面にバリによる小さな凹凸形状が踏面43f側に向けて形成されることとなる。この製造過程において形成される凹凸形状によっても滑り止め効果を得ることができる。
また、この場合のマスターブレーキペダル43においても、傾斜部93及び孔部94はプレス加工により形成することができ、しかもより単純な形状であることから、より低コストで簡単に構成することができる。
【0061】
ところで、ブレーキ操作装置40においては、操作ペダルである左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42は、前記運転部9内に延出されるロッド部41a・42aを介して設けられている。これらブレーキペダル41・42が配設されるプレート部材としての配設プレート13は、前記ロッド部41a・42aを挿通させその移動を許容するとともに走行車両2のエンジン室内(ボンネット8内)と連通する案内部13gを有している(図12参照)。つまり、走行車両2における運転部9とエンジン室とを隔てる配設プレート13に設けられ開口により構成される案内部13gを介して、左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42の各ロッド部41a・42aが運転部9に延出されている。
このようなペダル構造において、前記案内部13gに該案内部13gの一部を塞ぐためのモール部材100が装着されている。
【0062】
図11に示すように、モール部材100は、案内部13gと前記ロッド部41a・42aとの間に形成される開口部を塞ぐとともに弾性変形によりロッド部41a・42aの移動を許容する閉塞部101と、配設プレート13を挟持する挟持部102とを備え、案内部13gと略同一幅を有する。
モール部材100は、合成ゴムや合成樹脂材料製などの弾性変形可能な素材で構成され、その弾性変形により、ロッド部41a・42aの移動を許容するとともに配設プレート13に対して装着される。すなわち、モール部材100において、閉塞部101は、パイプ状に形成されて弾性変形により押し潰されてロッド部41a・42aの移動を許容する。また、挟持部102は、側面視略U字状に形成されて板状の配設プレート13が内挿される溝部を構成するとともに弾性変形して案内部13gにおいて配設プレート13を挟持するための挟持片104を有している。そして、これら閉塞部101と挟持部102とが接続部103により接続されている。
【0063】
このように構成されるモール部材100が、配設プレート13における案内部13gにおいて、それぞれロッド部41a・42aの下方に装着される(図5及び図12参照)。
つまり、前述したように、左右のブレーキ回動筒41b・42bを介して回動支持軸47に対して回動支持されるとともに戻しバネ41d・42dにより上方に回動付勢される各ロッド部41a・42aは、左ブレーキペダル41及び右ブレーキペダル42の踏込み操作がなされない状態がその上端位置(以下、「通常位置」という。)であり、この状態でロッド部41a・42aは案内部13gにおける上端部に位置し、各案内部13gにおいては、ロッド部41a・42aの下方にその移動範囲である開口部が形成されることとなる。この案内部13gにおけるロッド部41a・42aの下方の開口部にモール部材100が装着される。
【0064】
配設プレート13の案内部13gにモール部材100を装着した状態においては、次のような態様となる。すなわち、ロッド部41a・42aを挿通させる案内部13gは略矩形状に形成され、その左右幅はロッド部41a・42aの移動の妨げとならない程度に各ロッド部41a・42aの径よりも若干大きく形成されるとともに、上下(前後)長さはロッド部41a・42aの移動範囲を含む長さとなる。そして、前記のとおり、ロッド部41a・42aは、その通常位置で案内部13gにおける上端部に位置することとなるので、各案内部13gにおけるロッド部41a・42aの下方にモール部材100が装着されることにより、ロッド部41a・42aが通常位置にある状態での下方の開口部が塞がれることとなる。
つまり、モール部材100は全体として略同一幅Wを有し、その幅Wが、略矩形状である案内部13gの幅と略同一となるように形成され、ロッド部41a・42aが通常位置にある状態で、モール部材100はその閉塞部101の上端がロッド部41a・42aに略当接した状態となるように案内部13gに装着される。これにより、案内部13gのロッド部41a・42aの下方の開口部が塞がれることとなる。
この状態から、各ブレーキペダル41・42が踏込み操作されると、モール部材100は、その閉塞部101が潰される弾性変形によってロッド部41a・42aの移動を許容するとともにその移動に追従し、案内部13gにおけるロッド部41a・42aの下方の開口部を塞いだ状態を保つ。また、ブレーキペダル41・42の踏込みが解除されると、モール部材100は、その閉塞部101の弾性変形により各ロッド部41a・42aの通常位置への移動に追従して開口部を塞いだ状態を保ちつつ元の形状に復帰する。
【0065】
このようにして、配設プレート13におけるロッド部41a・42aの案内部13gに前記のようなモール部材100を装着することで、単純かつ破損し難い構造により、エンジン室内と連通する案内部13gから運転部9内にエンジンの熱風が吹き込み運転者の足元に吹き付けることを防止することができる。
なお、ロッド部41a・42aがその通常位置にある場合に、案内部13gにおいてロッド部41a・42bの上方にも開口部が形成される場合は、各ロッド部41a・42aの上下にモール部材100を装着することができる。さらに、ロッド部41a・42aが左右方向などに移動可能な構成であっても、案内部13gとロッド部41a・42aとの間に形成される開口部を塞ぐようにモール部材100を装着することができる。また、前進ペダル21やマスターブレーキペダル43等の他の操作ペダルが設けられるロッド部(ペダルロッド)が挿通される案内部であってもモール部材100は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る走行車両に作業機を装着した作業車両の一例としてのトラクタバックホーローダを示す全体側面図。
【図2】配設プレートからHSTまでの装置構成を示す平面図。
【図3】ブレーキ操作装置の構成を示す斜視図。
【図4】同じく配設プレートの裏側を示す斜視図。
【図5】同じく側面図。
【図6】前進ペダル及び後進ペダルを示す図。(a)は斜視図。(b)は側面図。
【図7】同じく別実施例を示す図。(a)は斜視図。(b)は(a)におけるA矢視図。
【図8】ブレーキペダルの摩擦部の構成例を示す斜視図。
【図9】マスターブレーキペダルを示す図。(a)は斜視図。(b)は平面図。(c)は側面図。
【図10】マスターブレーキペダルの別実施例を示す図。(a)は斜視図。(b)は平面図。(c)は側面図。
【図11】モール部材を示す斜視図。
【図12】モール部材の装着状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0067】
2 走行車両
8 ボンネット
9 運転部
13 配設プレート
13g 案内部
21 前進ペダル
21a 前進ペダルロッド
21f 踏面
22 後進ペダル
22a 後進ペダルロッド
22f 踏面
41 左ブレーキペダル
41a ロッド部
42 右ブレーキペダル
42a ロッド部
43 マスターブレーキペダル
43a ペダルロッド
43f 踏面
60 端面
61 屈曲部
62 識別標識
63 平面部
90 平面部
91 屈曲部
92 端面
100 モール部材
101 閉塞部
102 挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ペダルを備える走行車両のペダル構造において、
該操作ペダルの端部に、凹凸形状の端面を有するとともに踏面側に向けて折曲げ形成される屈曲部を設けたことを特徴とする走行車両のペダル構造。
【請求項2】
前記屈曲部を形成する前記操作ペダルの折曲げを多段とし、該操作ペダルに平面部を設けたことを特徴とする請求項1記載の走行車両のペダル構造。
【請求項3】
前記操作ペダルは、走行車両の前進ペダルと後進ペダルとを含み、これら前進ペダル及び後進ペダルそれぞれに、前進または後進を示す識別標識を打ち抜き加工により設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の走行車両のペダル構造。
【請求項4】
前記屈曲部を前記操作ペダルの対向する両端部に設け、前記前進ペダルと前記後進ペダルとを、前記識別標識を含み同一形状としたことを特徴とする請求項3記載の走行車両のペダル構造。
【請求項5】
略水平方向に配される棒状の踏部を構成する操作ペダルを備える走行車両のペダル構造において、
前記操作ペダルに、摩擦部を構成したことを特徴とする走行車両のペダル構造。
【請求項6】
走行車両の運転部とエンジン室とを隔てるプレート部材に設けられ開口により構成される案内部を介して、操作ペダルのロッド部が運転部に延出される走行車両のペダル構造において、
前記案内部に、該案内部と前記ロッド部との間に形成される開口部を塞ぐとともに弾性変形により前記ロッド部の移動を許容する閉塞部と、前記プレート部材を挟持する挟持部とを備え、前記案内部と略同一幅を有するモール部材を装着したことを特徴とする走行車両のペダル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−72556(P2007−72556A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256187(P2005−256187)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】