説明

走行車及び走行車システム

【課題】走行領域の全域にわたって、走行車の現在位置の認識精度を高めることを可能とする走行車等を提供する。
【解決手段】全域にわたって複数のマークが配置された走行領域内を走行する走行車100であって、走行領域内における位置を示す位置情報をマークごとに格納するマーク座標テーブル111を保持するテーブル保持部110と、走行領域内の一部の領域であり、かつ、当該走行車と一定の位置関係にある領域を検出領域として、検出領域内に配置されたマークを検出するマーク検出部112と、マーク座標テーブル111に格納されたマークの中から、マーク検出部112が検出したマークの配置パターンと一致するマークを特定し、特定されたマークの位置情報と、当該走行車100と検出領域との位置関係とを用いて、走行領域内における当該走行車100の現在位置を算出する位置算出部113とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行領域内を走行する走行車等に関し、特に走行領域内における自車の現在位置を算出可能な走行車等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンピュータ制御によって無人で自動走行する走行車(AGV:Automated Guided Vehicle)は、床面に設けられた磁気テープ等により誘導が行われている。この磁気テープによる誘導では、走行車は、進路を知ることができても、現在位置を知ることはできない。
【0003】
そこで、従来、走行車の現在位置を知るための様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の走行車は、走行領域内の走行経路に沿って配置されたIDマークを撮像し、得られた画像からIDマークのID番号を読み取ることにより、現在位置を特定する。
【特許文献1】特開2001−134318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の走行車が現在位置を特定できるのは、個々に識別可能なIDマーク等が設置された場所に限定されるという問題があった。
【0005】
つまり、IDマーク等が設置されていない場所では、走行車は正確な現在位置を認識できない。そのため、IDマーク等が設置されていない場所において、タイヤがスリップするなどにより、走行車の現在位置が想定位置から大きく乖離した場合には、走行車は、目的の場所に到達することができなかった。
【0006】
また、走行領域外から走行領域内に走行車を持ち込む際に、IDマーク等が設置されていない場所から走行車を走行開始させる場合には、作業者は、手動で走行車の初期位置を登録する必要があった。そのため、誤った位置が初期位置として登録されることがあり、走行車が誤作動する原因となっていた。
【0007】
さらに、IDマーク等を設置したい場所にマンホールの蓋等の障害物がある場合には、その場所での正確な現在位置の認識はできないという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、走行領域の全域にわたって、走行車の現在位置の認識精度を高めることができる走行車等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る走行車は、走行領域内を走行する走行車であって、前記走行領域内には、前記走行領域内の全域にわたって、複数のマークが配置され、前記走行車は、前記走行領域内における位置を示す位置情報を前記マークごとに格納するマーク座標テーブルを保持するテーブル保持手段と、前記走行領域内の一部の領域であり、かつ、当該走行車と一定の位置関係にある領域を検出領域として、前記検出領域内に配置されたマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク座標テーブルに格納されたマークの中から、前記マーク検出手段が検出したマークの配置パターンと一致するマークを特定し、特定されたマークの前記位置情報と、当該走行車と前記検出領域との前記位置関係とを用いて、前記走行領域内における当該走行車の現在位置を算出する位置算出手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、走行領域内の全域にわたって配置された複数のマークの配置パターンを用いて、走行領域内における走行車の現在位置を特定することが可能となる。したがって、走行領域の全域にわたって、走行車の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0011】
また、走行領域内の全域にわたって走行車の現在位置を特定することができるので、走行領域外から走行領域内に走行車を持ち込む際に、走行車は自動で初期位置を登録することが可能となる。つまり、作業者が手動で初期位置を登録することが不要となるので、走行車の誤作動を低減させることが可能となる。
【0012】
また、前記複数のマークは、不規則な位置関係で配置され、前記マーク検出手段は、前記検出領域内に不規則な位置関係で配置されたマークを検出し、前記位置算出手段は、前記不規則な位置関係で配置されたマークの配置パターンと一致するマークを特定し、前記現在位置を算出することが好ましい。
【0013】
これにより、検出領域内にマークが存在すれば、走行車の現在位置を特定することができるので、検出領域の一部にマンホールの蓋等の障害物があっても、検出領域内の障害物がない領域に存在するマーク201を利用して、走行車の現在位置を特定することが可能となる。
【0014】
また、前記走行車は、さらに、当該走行車の前記走行領域内における現在位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段が検出した現在位置を用いて、前記マーク検出手段が検出したマークの前記位置情報を算出し、算出された前記位置情報を前記マーク座標テーブルに登録する登録手段とを備えることが好ましい。
【0015】
これにより、走行領域内の全域にわたって、不規則に配置されたマークの位置を、走行車が自動でテーブルに登録することができるので、作業者が手動でマークの位置を登録する場合に比べて、登録ミスを軽減し、登録時間を短縮することが可能となる。
【0016】
なお、複数台の走行車が走行領域内を走行する走行車システムの場合、少なくとも1台の走行車が、この登録手段を備えていればよい。
【0017】
また、前記複数のマークは、磁力の強さが異なる二種以上のマークからなり、前記マーク座標テーブルには、前記位置情報に関連付けて、さらに、磁力の強さを示す磁力情報が格納され、前記マーク検出手段は、前記走行車の底面に設けられた磁気センサからなり、前記マークの磁力を検知することにより、前記検出領域内に配置されたマークの配置及び磁力の強さを検出し、前記位置算出手段は、前記マーク座標テーブルに格納されたマークの中から、前記マーク検出手段が検出したマークの配置及び磁力のパターンに一致するマークを特定し、前記現在位置を算出することが好ましい。
【0018】
これにより、検出領域内において検出されるマークのパターンが、走行領域内の複数の場所で同一となる可能性を低減させることができるので、走行車の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0019】
また、前記マーク検出手段は、少なくとも三個以上の前記磁気センサからなり、少なくとも三個以上のマークを略同時に検出することができることが好ましい。
【0020】
これにより、走行車は、移動することなく、検出領域内のマークを検出することが可能となるので、走行車の初期位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0021】
また、前記位置算出手段は、さらに、特定されたマークの前記位置情報と、当該走行車と前記検出領域との前記位置関係とを用いて、当該走行車の向きを算出することが好ましい。
【0022】
これにより、走行領域内における走行車の向きを検出することが可能となるので、走行車の位置を高精度に制御することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る走行車システムは、走行領域内に配置された複数のマークと前記走行領域内を走行する走行車とからなる走行車システムであって、前記複数のマークは、前記走行領域内の全域にわたって配置され、前記走行車は、前記走行領域内における位置を示す位置情報を前記マークごとに格納するマーク座標テーブルを保持するテーブル保持手段と、前記走行領域内の領域であり、かつ、当該走行車と一定の位置関係にある領域を検出領域とした場合、前記検出領域内に配置されたマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク座標テーブルに格納されたマークの中から、前記マーク検出手段が検出したマークの配置パターンと一致するマークを特定し、特定されたマークの前記位置情報と、当該走行車と前記検出領域との前記位置関係とを用いて、前記走行領域内における当該走行車の現在位置を算出する位置算出手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
これにより、走行車システムは、上述の走行車と同一の効果を得ることができる。
【0025】
なお、本発明は、このような走行車又は走行車システムが備える特徴的な手段をステップとする走行車の位置算出方法として実現したり、そのような特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)等の記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、走行領域内を走行する走行車において、走行領域の全域にわたって、走行車の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る走行車について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る走行車100の斜視図である。
【0029】
走行車100は、走行領域200内をコンピュータ制御によって無人で自動走行するAGVであり、走行領域200内の全域にわたって、不規則な位置関係で配置されたマーク201に基づいて、走行領域200内における自車の現在位置を算出することができる点に特徴を有する。
【0030】
走行領域200は、走行車100が走行可能な床面上に設けられた領域であり、複数のマーク201が埋設されている。また、走行領域200は、例えば、図に示すような境界線220により、走行領域の内と外とが区画される。なお、境界線220は、説明の便宜のため設けたものであり、本発明において、必ずしも境界線220により、走行領域の内と外を区画する必要はない。
【0031】
なお、図に示すように、走行領域200内の位置は、xy直交座標系により表される。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に係る走行車100を下側から見た平面図である。
【0033】
図に示すように、走行車100の底面には、複数の磁気センサ101が、格子状に配設されている。これらの磁気センサ101のそれぞれは、走行領域200内の床面に配置されたマーク201のうち、当該磁気センサ101の近傍にあるマーク201の磁力を検知することができる。つまり、走行車100は、移動することなく、走行車100の下方に存在するマーク201のすべてを、検出することができる。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態に係る走行車100の主要な機械的構成を示す図である。
【0035】
図に示すように、走行車100は、磁気センサ101、走行車輪102、ロータリーエンコーダ103、ステアリング104、駆動装置105、及び制御装置106等を備える。
【0036】
磁気センサ101のそれぞれは、例えばホール素子等からなり、マーク201が有する磁力を検知する。検知された磁力は、制御装置106に通知され、走行車100に対するマーク201の相対的な位置及び磁力レベルが検出される。
【0037】
走行車輪102は、例えば4本のゴムタイヤであり、駆動装置105から得られる動力により回転し、走行車100を走行させる。
【0038】
ロータリーエンコーダ103は、走行車輪102の回転数を検知し、検知した回転数を制御装置106に通知する。
【0039】
ステアリング104は、制御装置106からの指示に基づいて、走行車輪102の向き(操舵角)を変更する。これにより、走行車100は、進行方向を変更することが可能となる。また、ステアリング104は、操舵角を検知する舵角センサを有しており、検知された操舵角は、制御装置106に通知される。
【0040】
駆動装置105は、例えば電気モータ、蓄電池等からなり、走行車100を走行させるための動力を発生する。
【0041】
制御装置106は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等からなり、上記の機構部を制御する。また、制御装置106は、後述するように、各機構部より得られる情報に基づいて、走行領域200における走行車100の現在位置を算出する。
【0042】
図4は、走行領域200内のマーク201の配置を示す図である。
【0043】
マーク201は、例えば永久磁石等の磁力を有する部材であり、走行領域200の全域にわたって、不規則な位置関係で複数埋設されている。このマーク201は、個々に識別可能な特徴を有しない。つまり、マーク201は、個々に識別可能な文字、バーコード、RFID(Radio Frequency Identification)等を有しない。
【0044】
また、図に示すように、マーク201は、磁力の強さが異なる2種類のマークで構成される。複数のマーク201のうち、磁力の強いものが強磁力マーク202であり、磁力の弱いものが弱磁力マーク203である。
【0045】
検出領域210は、走行車100がマーク201を検出する領域であり、かつ、走行車100とともに移動する領域である。具体的には、走行車100の底面に設けられた磁気センサ101がマーク201を検出する領域である。
【0046】
なお、図に示すように、検出領域210内の位置、つまり走行車100からの相対的な位置は、uv直交座標系により表される。また、uv直交座標系における原点は、走行車100の底面の中心が床面に投影された位置とし、xy座標系における走行車100の現在位置を示すものとする。
【0047】
このように、マーク201を、走行領域200内の全域にわたって不規則に配置することにより、検出領域210内において検出されるマーク201の配置及び磁力のパターンが、走行領域200内の複数の場所で同一となる可能性を低減させることができる。その結果、走行車の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0048】
また、マーク201が、磁力の強さが異なる強磁力マーク202及び弱磁力マーク203で構成されることにより、さらに、検出領域210内において検出されるマーク201の配置及び磁力のパターンが、走行領域200内の複数の場所で同一となる可能性を低減させることができる。つまり、走行車の現在位置の認識精度を、さらに、高めることが可能となる。
【0049】
また、作業者は、マーク201を不規則に配置すればよいので、規則的に配置するよりも、マーク201の配置に要する労力を低減することができる。
【0050】
なお、説明の便宜のため、本実施の形態において、マーク201の種類は、強磁力マーク202及び弱磁力マーク203の2種類であるが、さらに多くの種類のマーク201であってもよい。これにより、走行車の現在位置の認識精度を、さらに、高めることが可能となる。
【0051】
図5は、本発明の実施の形態に係る走行車100の特徴的な機能を示すブロック図である。
【0052】
図に示すように、走行車100は、テーブル保持部110、マーク検出部112、位置算出部113、位置検出部114、及び登録部115を備える。
【0053】
テーブル保持部110は、例えば制御装置106が有する不揮発性のメモリ等からなり、走行領域200内における位置を示す位置情報と、マーク201の磁力の強さを示す磁力情報とを、マーク201ごとに格納するマーク座標テーブル111を保持する。マーク座標テーブル111の詳細については、図6を用いて後述する。
【0054】
マーク検出部112は、複数の磁気センサ101等からなり、検出領域210内に配置されたマーク201のすべてを、略同時に検出する。
【0055】
具体的には、マーク検出部112は、マーク201の磁力を検知し、検知した磁力から、検出領域210内に存在するすべてのマーク201の配置と磁力とを検出する。
【0056】
位置算出部113は、制御装置106等からなり、マーク検出部112が検出したマーク201の配置及び磁力のパターンに基づいて、走行領域200内における自車の現在位置を算出する。
【0057】
具体的には、位置算出部113は、マーク座標テーブル111に格納されたマーク201の中から、マーク検出部112が検出したマーク201の配置及び磁力のパターンと一致するマーク201を特定する。そして、位置算出部113は、特定されたマーク201の位置情報と、当該走行車と検出領域210との位置関係とを用いて、走行領域200内における当該走行車の現在位置を算出する。
【0058】
位置検出部114は、ロータリーエンコーダ103、ステアリング104等からなり、走行領域200内における自車の現在位置を検出する。
【0059】
具体的には、位置検出部114は、ロータリーエンコーダ103から得られる回転数の時系列情報と、ステアリング104から得られる操舵角の時系列情報とから、走行車100の走行経路を特定し、走行領域200内における自車の現在位置を検出する。
【0060】
つまり、走行車100は、異なる方法により自車の現在位置を特定することができる2つの構成部(位置算出部113及び位置検出部114)を備える。
【0061】
登録部115は、制御装置等からなり、位置検出部114が検出した現在位置を用いて、マーク検出部112が検出したマーク201の位置情報を算出し、算出された位置情報とマーク検出部112が検出したマーク201の磁力情報とをマーク座標テーブル111に登録する。
【0062】
図6は、マーク座標テーブル111の一例を示す図である。
【0063】
図に示すように、マーク座標テーブル111は、マークID301、x座標302、y座標303、及び磁力レベル304を格納する。
【0064】
ここで、マークID301は、マーク201を特定するための識別番号である。また、x座標302及びy座標303は、走行領域200内における位置を示す位置情報である。また、磁力レベル304は、マーク201の磁力の強さを示す磁力情報であり、図3に示す強磁力マーク202をレベル1、弱磁力マーク203をレベル2とする。
【0065】
例えば、図に示すマーク座標テーブル111において、マークID301が「1」であるマーク201は、x座標302が「200」、y座標303が「1400」であり、磁力レベル304が「1」であることを示す。
【0066】
次に、以上のように構成された本実施の形態における走行車100の基本的な動作について説明する。
【0067】
図7は、走行領域200内における走行車100の現在位置の算出に関する処理手順を示したフローチャートである。
【0068】
まず、マーク検出部112は、検出領域210内に存在するマーク201の磁力を検知し、マーク201の座標(u,v)及び磁力レベルを検出する(ステップS101)。
【0069】
次に、位置算出部113は、マーク座標テーブル111の中から、マーク検出部112が検出したマーク201の配置及び磁力パターンと一致するマーク201を特定する(ステップS102)。
【0070】
次に、位置算出部113は、ステップS102において特定されたマーク201のx座標302及びy座標303から、uv直交座標系の原点に対応するx座標302及びy座標303を算出する。さらに、位置算出部113は、ステップS102において特定されたマーク201の配置に基づくu軸方向と、x軸方向とが成す角度を算出する(ステップS103)。ここで算出されたx座標302及びy座標303が、走行領域200内における自車の現在位置を示す。また、ここで算出された角度が、走行領域200内における自車の向きを示す。
【0071】
続いて、図8〜図10を用いて、図7に示した位置算出に関する処理の具体例を説明する。
【0072】
図8は、マーク検出部112により検出されたマーク201を説明するための図である。また、図9及び図10は、走行領域200内における走行車の現在位置を算出する処理を説明するための図である。
【0073】
ここで、図8には、uv直交座標系におけるマーク201の位置が丸印で示されている。また、図9及び図10には、xy直交座標系におけるマーク201の位置が丸印で示されている。なお、図9及び図10において、マーク201の近傍に表示されている数字は、図6に示すマーク座標テーブル111に格納されたマーク201のマークID301に対応する。
【0074】
図8に示すように、マーク検出部112は、検出領域210内に存在する3個のマーク(第一マーク211、第二マーク212、及び第三マーク213)を検出する。
【0075】
ここで、第一マーク211は、座標(u,v)が(0,0)であり、かつ、磁力レベルが「レベル1」である。また、第二マーク212は、座標(u,v)が(−400,0)であり、かつ、磁力レベルが「レベル1」である。また、第三マーク213は、座標(u,v)が(400,200)であり、かつ、磁力レベルが「レベル2」である。
【0076】
次に、位置算出部113は、図9に示すように、検出領域210に対応させる探索領域230の初期位置を設定する。この探索領域230の初期位置は、例えば、位置算出部113が前回算出した自車の現在位置、位置検出部114が検出した自車の現在位置等に基づいて設定される。
【0077】
そして、図8に示すように、位置算出部113は、探索領域230を様々な方向に移動及び回転させながら、図8に示すマークの配置及び磁力のパターンと一致するxy直交座標系におけるマーク201の組合せを探索する。
【0078】
例えば、3点のマークを結ぶ三角形のデータを保管し、この三角形が一致する組合せを探索してもよい。また、マーク検出部112が3点以上のマークを同時に検出する場合には、隣接する複数の三角形が一致する組合せを探索してもよい。ここで、三角形のデータは、3点を結ぶ距離のデータからなっている。また、三角形のデータは、2点とその間の角度としてもよい。
【0079】
その結果、位置算出部113は、図10に示すように、マーク201の組合せ(マークID301が「7」、「8」、「9」のマーク201)を特定する。このように特定されたマーク201の組合せから、位置算出部113は、uv直交座標系の原点に対応するxy直交座標系における座標(2600,1400)を算出する。ここで、算出された座標が、走行領域200内における自車の現在位置となる。
【0080】
また、位置算出部113は、特定されたマーク201の組合せから特定されるu軸方向とx軸方向との成す角度(30度)を算出する。ここで算出された角度が、走行領域200内における自車の向きとなる。
【0081】
以上の処理により、位置算出部113は、マーク検出部112が検出したマーク201の配置及び磁力のパターンに基づいて、走行領域200における走行車100の現在位置を算出することができる。
【0082】
このように、走行領域200内の全域にわたって不規則な位置関係で配置された複数のマーク201の配置及び磁力のパターンを用いて、走行領域200内における走行車100の現在位置を特定することが可能となる。したがって、走行領域200の全域にわたって、走行車100の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0083】
また、走行領域200内の全域にわたって走行車100の現在位置を特定することができるので、走行領域200外から走行領域200内に走行車を持ち込む際に、走行車100は自動で初期位置を登録することが可能となる。つまり、作業者が手動で初期位置を登録することが不要となるので、走行車100の誤作動を低減させることが可能となる。
【0084】
また、検出領域210内にマーク201が存在すれば、走行車100の現在位置を特定することができるので、検出領域210内の一部にマンホールの蓋等の障害物があっても、検出領域210内の障害物がない領域に存在するマーク201を利用して、走行車の現在位置を特定することが可能となる。
【0085】
また、磁力を有する永久磁石等をマーク201として埋設することにより、従来から走行車に使用される磁気センサを用いて、走行車の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0086】
また、磁力の強さが異なる複数種のマーク201を埋設することにより、検出領域210内において検出されるマーク201のパターンが、走行領域200内の複数の場所で同一となる可能性を低減させることができるので、走行車100の現在位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0087】
また、複数のマーク201を略同時に検出可能とすることにより、走行車100は、移動することなく、検出領域210内のマークを検出することが可能となるので、走行車100の初期位置の認識精度を高めることが可能となる。
【0088】
また、走行領域200内における走行車100の向きを検出することが可能となるので、走行車100の位置を高精度に制御することが可能となる。
【0089】
次に、マーク座標テーブル111へのマーク201の登録に関する処理の流れを説明する。
【0090】
図11は、マーク座標テーブル111へのマーク201の登録に関する処理手順を示したフローチャートである。
【0091】
まず、マーク検出部112は、検出領域210内に存在するマーク201を検出する(ステップS201)。例えば、マーク検出部112は、検出領域210内に存在するマーク201の座標(u,v)が(100,0)であり、磁力レベルが「1」であることを検出する。
【0092】
次に、位置検出部114は、走行領域200内における自車の現在位置(x座標及びy座標)を検出する(ステップS202)。
【0093】
例えば、位置検出部114は、ロータリーエンコーダ103から得られる走行車輪102の回転数の時系列情報と、ステアリング104から得られる操舵角の時系列情報とから、自車の走行経路を特定する。そして、位置検出部114は、特定した走行経路より、走行領域200内における自車の現在位置を示す座標(x,y)が、(1000,1000)であることを検出する。
【0094】
次に、登録部115は、ステップS201で検出されたマーク201の中から、まだ以下のステップS203〜ステップS205までの処理が実行されていないマーク201を選択する(ステップS203)。
【0095】
次に、登録部115は、ステップS202で検出された自車の現在位置に基づいて、ステップS203で選択されたマーク201の、走行領域200内における位置(x座標及びy座標)を算出する(ステップS204)。
【0096】
例えば、登録部115が、ステップS203において、uv座標(100,0)のマーク201を選択していたとする。この場合、登録部115は、ステップS202において検出されたxy座標(1000,1000)と、選択されたマーク201のuv座標(100,0)とから、走行領域200内におけるマーク201のxy座標(1100,1000)を算出する。
【0097】
次に、登録部115は、ステップS204において算出されたx座標302及びy座標303と、ステップS201において検出された磁力レベル304とを、既に登録されているマークの配置及び磁力のパターンと重複しないことを確認しながら登録する(ステップS205)。なお、既に登録されているマークの配置及び磁力のパターンと重複する場合、登録部115は、エラーを出して、マークの追加を促す。
【0098】
次に、登録部115は、ステップS201において検出されたマーク201のすべてが、ステップS203において選択されたか否かを判定する(ステップS206)。ここで、検出されたマーク201のすべてが選択されていない場合(ステップS206でNo)、再度ステップS203からの処理を繰り返す。一方、検出されたマーク201のすべてが選択されている場合(ステップS206でYes)、処理を終了する。
【0099】
このように、走行領域200内の全域にわたって、不規則な位置関係で配置されたマーク201の位置を、走行車100が自動でマーク座標テーブル111に登録することができるので、作業者が手動でマーク201の位置を登録する場合に比べて、登録ミスを軽減し、登録時間を短縮することが可能となる。
【0100】
以上、本発明に係る走行車について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0101】
例えば、上記実施の形態において、走行領域内に不規則な位置関係で配置されるマークは磁力を備えていたが、マークは、磁力を備えない幾何学的形状であってもよい。この場合、マーク検出手段は、磁気センサではなく、カメラ等の撮像装置で構成され、撮像された画像からマークを検出することとなる。
【0102】
さらに、マークに幾何学的形状を用いる場合には、マークの階調、形状、大きさ、向き、又は色彩が異なる複数種のマークを用いてもよい。これにより、上記実施の形態において、磁力が異なるマークを複数種用いるのと同様の効果を得ることができる。
【0103】
また、上記実施の形態において、マークは、走行領域内の床面に配置されていたが、走行領域内の天井、壁等に配置されてもよい。つまり、走行車が備えるマーク検知部が検知可能な位置に配置されればどこでもよい。
【0104】
また、上記実施の形態において、マーク検出部は、検出領域内に存在するマークのすべてを略同時に検出できたが、走行車が移動することにより、検出領域内に存在するマークのすべてを検出できようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態において、位置検出部は、ロータリーエンコーダ、舵角センサ等により、走行領域内における自車の現在位置を検出していたが、他の方法、例えばGPS(Global Positioning System)等により自車の現在位置を検出してもよい。
【0106】
また、本発明は、上記実施の形態に示した走行車とマークとからなる走行車システムとして実現することもできる。
【0107】
さらに、本発明は、上記実施の形態に示した走行車と、ネットワークを介して走行車と接続されたコンピュータとからなる走行車システムとして実現することもできる。この場合、図5に示すテーブル保持部110、位置算出部113、及び登録部115は、当該コンピュータが備えることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明に係る走行車等は、自車の現在位置を認識可能な走行車等として、例えば、物品を無人で搬送するAGV等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態に係る走行車の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る走行車を下側からみた平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る走行車の主要な機械的構成を示す図である。
【図4】走行領域内のマークの配置を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る走行車の特徴的な機能を示すブロック図である。
【図6】マーク座標テーブルの一例を示す図である。
【図7】走行領域内における走行車の現在位置の算出に関する処理手順を示したフローチャートである。
【図8】マーク検出部により検出されたマークを説明するための図である。
【図9】走行領域内における走行車の現在位置を算出する処理を説明するための図である。
【図10】走行領域内における走行車の現在位置を算出する処理を説明するための図である。
【図11】マーク座標テーブルへのマークの登録に関する処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
100 走行車
101 磁気センサ
102 走行車輪
103 ロータリーエンコーダ
104 ステアリング
105 駆動装置
106 制御装置
110 テーブル保持部
111 マーク座標テーブル
112 マーク検出部
113 位置算出部
114 位置検出部
115 登録部
200 走行領域
201 マーク
202 強磁力マーク
203 弱磁力マーク
210 検出領域
211 第一マーク
212 第二マーク
213 第三マーク
220 境界線
230 探索領域
301 マークID
302 x座標
303 y座標
304 磁力レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域内を走行する走行車であって、
前記走行領域内には、前記走行領域内の全域にわたって、複数のマークが配置され、
前記走行車は、
前記走行領域内における位置を示す位置情報を前記マークごとに格納するマーク座標テーブルを保持するテーブル保持手段と、
前記走行領域内の一部の領域であり、かつ、当該走行車と一定の位置関係にある領域を検出領域として、前記検出領域内に配置されたマークを検出するマーク検出手段と、
前記マーク座標テーブルに格納されたマークの中から、前記マーク検出手段が検出したマークの配置パターンと一致するマークを特定し、特定されたマークの前記位置情報と、当該走行車と前記検出領域との前記位置関係とを用いて、前記走行領域内における当該走行車の現在位置を算出する位置算出手段とを備える
ことを特徴とする走行車。
【請求項2】
前記複数のマークは、不規則な位置関係で配置され、
前記マーク検出手段は、前記検出領域内に不規則な位置関係で配置されたマークを検出し、
前記位置算出手段は、前記不規則な位置関係で配置されたマークの配置パターンと一致するマークを特定し、前記現在位置を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行車。
【請求項3】
前記走行車は、さらに、
当該走行車の前記走行領域内における現在位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段が検出した現在位置を用いて、前記マーク検出手段が検出したマークの前記位置情報を算出し、算出された前記位置情報を前記マーク座標テーブルに登録する登録手段とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の走行車。
【請求項4】
前記複数のマークは、磁力の強さが異なる二種以上のマークからなり、
前記マーク座標テーブルには、前記位置情報に関連付けて、さらに、磁力の強さを示す磁力情報が格納され、
前記マーク検出手段は、前記走行車の底面に設けられた磁気センサからなり、前記マークの磁力を検知することにより、前記検出領域内に配置されたマークの配置及び磁力の強さを検出し、
前記位置算出手段は、前記マーク座標テーブルに格納されたマークの中から、前記マーク検出手段が検出したマークの配置及び磁力のパターンに一致するマークを特定し、前記現在位置を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行車。
【請求項5】
前記マーク検出手段は、少なくとも三個以上の前記磁気センサからなり、少なくとも三個以上のマークを略同時に検出することができる
ことを特徴とする請求項4に記載の走行車。
【請求項6】
前記位置算出手段は、さらに、特定されたマークの前記位置情報と、当該走行車と前記検出領域との前記位置関係とを用いて、当該走行車の向きを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行車。
【請求項7】
走行領域内に配置された複数のマークと前記走行領域内を走行する走行車とからなる走行車システムであって、
前記複数のマークは、前記走行領域内の全域にわたって配置され、
前記走行車は、
前記走行領域内における位置を示す位置情報を前記マークごとに格納するマーク座標テーブルを保持するテーブル保持手段と、
前記走行領域内の領域であり、かつ、当該走行車と一定の位置関係にある領域を検出領域とした場合、前記検出領域内に配置されたマークを検出するマーク検出手段と、
前記マーク座標テーブルに格納されたマークの中から、前記マーク検出手段が検出したマークの配置パターンと一致するマークを特定し、特定されたマークの前記位置情報と、当該走行車と前記検出領域との前記位置関係とを用いて、前記走行領域内における当該走行車の現在位置を算出する位置算出手段とを備える
ことを特徴とする走行車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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