説明

起伏ゲート式防波堤

【課題】台風等の高波による衝撃的な荷重が扉体部の転倒方向に作用しても、基台の浮き上がりを防止する。
【解決手段】起伏ゲート式防波堤11である。基台14a上で、基端側の回転軸12aを支点として起伏動作する扉体12と、中間の連結部13aで折れ曲がり自在に構成され、一方端部13bは扉体12の頂部に、他方端部13cは扉体12の倒伏側の回転軸12aから所定距離離れた基台14a上の位置に、それぞれ回転自在に枢支されたテンションロッド13と、基台14a部に設けた部屋14abと、部屋14abの水が出入りする連通部14aaより離れて設けた開口部14acに中心部25aを回転自在に枢支し、テンションロッド13の他方端部13cに一方の外周端部25bを連結した扇形の錘25を備えた。
【効果】部屋の容積増加で部屋内の水が膨張して水圧が下がるのと同時に港外側から下向きの水圧で基礎が押さえられて基礎の浮き上がりが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば津波や高潮対策として港湾に設置される起伏ゲート式防波堤に関するもので、特に扉体を格納する基礎部の台風等の高波に対する安定性向上を図った起伏ゲート式防波堤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の起伏ゲート式防波堤として、浮力によって扉体の起伏を行うものがある(例えば特許文献1)。この起伏ゲート式防波堤は、扉体の空気室に給気しつつ、空気室内の海水を排水することで、扉体を浮上させるものである。
【0003】
この特許文献1で提案された起伏ゲート式防波堤の基礎部は、図12に示すように、捨石1aによって整地された地盤2上に基礎3を敷設し、基礎3の周辺部も捨石1bによって被覆する構造で、この基礎3の上に扉体4を設置していた。
【0004】
このような起伏ゲート式防波堤では、扉体4の浮上時は、図13に示すように、断面形状がL字型であるため、港外側の水位上昇時の水重量を基礎3部に鉛直下向きに作用する荷重(白抜き矢印)として利用でき、津波・高潮時には通常時よりも安定性が高くなる。
【0005】
しかしながら、段波津波や台風などの高波により、衝撃的な荷重が扉体4を転倒させる方向(図14に白抜き矢印で示す方向)に作用した場合には、図14に黒塗り矢印で示した方向に基礎3部が浮き上がる場合があった。
【0006】
この対策として、地盤に杭を打つなどして基礎部の安定性を向上させる工法が考えられるが、このような工法ではコストが大幅に上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−227125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、起伏ゲート式防波堤の従来の基礎部構造では、衝撃的な荷重が扉体部を転倒させる方向に作用した場合に、基礎部が浮き上がる場合があるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の起伏ゲート式防波堤は、
衝撃的な荷重が扉体部を転倒させる方向に作用した場合にも、基礎部が浮き上がることを防止するために、
扉体が浮上する起伏ゲート式防波堤であって、
基礎上で、基端側の回転軸を支点として起伏動作する扉体と、
中間の連結部で折れ曲がるように構成され、一方端部は前記扉体の頂部側に、他方端部は前記扉体が倒伏する側の前記回転軸から所定の距離だけ離れた基礎上の位置に、それぞれ回転自在に枢支されたテンションロッドを有し、
さらに、
1) 水の出入りが可能なように前記基礎部に設けられた部屋と、
前記部屋の前記水が出入りする連通部より離れた部分に設けた開口部に中心部を回転自在に枢支し、前記テンションロッドの他方端部に一方の外周端部を連結するか、または前記テンションロッドの連結部から連結部材を介して一方の外周端部と連結することで、前記扉体の浮上直前には部屋内に退入しており、前記扉体の浮上完了時には部屋から突出するように構成した扇形の錘を備えたことを、
または、
2)水の出入りが可能なように前記テンションロッドの他方端部近傍の基礎部に設けられた部屋と、
この部屋内を移動自在に設けられたピストン形の錘を備え、
前記錘に連結されたロッドの先端を前記テンションロッドの他方端部と回転自在に枢支することで、扉体の浮上直前には前記ロッドが部屋内に退入しており、扉体の浮上完了時には前記ロッドが部屋から突出するように構成したことを最も主要な特徴としている。
【0010】
本発明の起伏ゲート式防波堤は、扉体の浮上完了時には、基礎に設けた部屋から錘又はロッドが出て部屋の容積が増加するので、部屋内の水が膨張して水圧が下がるのと同時に港外側から下向きの水圧が作用して基礎が押さえられ、基礎の浮き上がりを防止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、扉体の浮上完了時に、基礎に設けた部屋から錘又はロッドが出ているようにすることで、部屋の容積増加により部屋内の水が膨張して水圧が下がるのと同時に港外側からの下向きの水圧により基礎が押さえられて基礎の浮き上がりが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の本発明の起伏ゲート式防波堤の概略構成図で、(a)は浮上直前の図、(b)は浮上完了時の図である。
【図2】図1に示した本発明の起伏ゲート式防波堤の平面図である。
【図3】本発明の起伏ゲート式防波堤のゲート係留部とフックの係合状態を示す概略側面図で、(a)倒伏時の図、(b)は倒伏する直前の図である。
【図4】図1に示した本発明の起伏ゲート式防波堤において、基礎を下向きに押さえ付ける荷重について説明する図である。
【図5】(a)は図1に示した本発明の起伏ゲート式防波堤において、基礎に設けた部屋の開口部に隙間が発生した場合の図、(b)(c)は突起を設けて隙間の発生を防止する例を説明する図である。
【図6】図1に示した本発明の起伏ゲート式防波堤において、部屋の圧力上昇の過程を説明する図で、(a)は浮上状態の図、(c)は錘が元の位置に戻った状態の図である。
【図7】図1に示した本発明の起伏ゲート式防波堤において、基礎下側の圧力上昇時に圧力差を解放するための開閉弁を説明する図である。
【図8】第2の本発明の起伏ゲート式防波堤の概略図で、(a)は浮上直前の図、(b)は浮上完了時の図である。
【図9】第2の本発明の起伏ゲート式防波堤に設ける開閉弁の概略図で、(a)は基礎に設ける場合、(b)は部屋に設ける場合の図である。
【図10】(a)は第3の本発明の起伏ゲート式防波堤の概略図、(b)は扉体の浮上直前の要部拡大図、(c)は扉体の浮上完了時に要部拡大図である。
【図11】第3の本発明の起伏ゲート式防波堤に設ける開閉弁の概略図で、(a)は基礎に設ける場合、(b)は部屋に設ける場合の図である。
【図12】特許文献1で提案された起伏ゲート式防波堤の基礎部の構造を示した図である。
【図13】図12で示した基礎部構造の場合に、港外側の水位が上昇することによって安定性が向上することを示した図である。
【図14】図12で示した基礎部構造の場合に、高波による衝撃的な荷重によって基礎部の安定性が低下することを示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、衝撃的な荷重が扉体部を転倒させる方向に作用した場合にも、基礎部が浮き上がることを防止するという目的を、扉体の浮上完了時には、基礎に設けた部屋から錘又はロッドが出て部屋の容積を増加させることで実現した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施するための各種の形態と共に最良の形態を、図1〜図11を用いて詳細に説明する。
図1は第1の本発明の起伏ゲート式防波堤を説明する概略構成図、図2は図1の平面図、図3は第1の本発明の起伏ゲート式防波堤のゲート係留部とフックの係合状態を示す概略側面図である。
【0015】
図1及び図2において、11は起伏ゲート式防波堤であり、例えば、扉体12と、この扉体12の浮上時に扉体12が転倒しないように、港湾Rの港外側に設けられた複数のテンションロッド13を備えた構成である。
【0016】
これら図1及び図2に示した例では、前記扉体12は、複数組の扉体ブロックBを幅方向に並設したもので、隣接した扉体ブロックB同士をロープで連結している。前記扉体12は、基端側の回転軸12aを、例えば港湾Rの底部に設けた収納部14の基台14aに、軸受15によって回転自在に枢支することで、前記回転軸12aを支点として扉体12が起伏するものを示している。
【0017】
また、前記テンションロッド13は、例えばその中間の連結部13aで二つに折れ曲がるように形成されている。そして、扉体12の浮上時に上端側に位置する一方端部13bは前記扉体12の頂部側に、前記浮上時に下端側に位置する他方端部13cは、扉体12が倒伏する側の前記回転軸12aから所定の距離だけ離れた位置に、それぞれ回転が自在なように枢支されている。
【0018】
前記扉体12の例えば頂部側には空気室12bが設けられ、給気装置16であるレシーバタンク16aとコンプレッサ16bにより、前記空気室12bに給気することによって、扉体12の浮上に必要な浮力を得るように構成されている。なお、16cは給気管を示す。
【0019】
また、前記扉体12の裏面12cには、貫通孔部17aを設けたゲート係留部17を取り付けている。このゲート係留部17は、必ずしも全ての扉体ブロックBに取り付ける必要はない。
【0020】
一方、前記扉体12を水中で格納する収納部14における、格納状態にある扉体12の裏面12cと相対する部分には、図3に示すように、転向滑車18を設置している。
【0021】
また、前記収納部14における、前記扉体12の裏面に取り付けられたゲート係留部17と相対する位置には、フック19を設置している。このフック19は、中央部に回動支点19aを、上部側には前記ゲート係留部17に係合する2つの爪状突起19b,19cを有すると共に、下部側には錘19dを設けている。図示しないが、転向滑車18及びフック19の回動支点19aはそれぞれ収納部に設けられた取付け部材に回転が自在なように支持されている。
【0022】
そして、一端側を前記フック19の下部側の錘19dに取り付けた係留ロープ20の他端側を、前記転向滑車18を介して水面上に引き出し、固定装置21で固定している。
【0023】
図1〜図3の例では、引き波時に、浮上状態にある扉体12が所定の角度まで倒伏した場合に、扉体12を支持するストッパ装置22を設けている。このストッパ装置22は、前記テンションロッド13の他方端部13cより扉体12の若干回転軸12a側で、基端側が回転自在に枢支され、先端側はこの基端を中心として自身の浮力によって起立揺動する支持ロッド22aを有している。
【0024】
そして、支持ロッド22aがガイド22bによって位置決めされる位置まで浮上して起立する際は、浮上するのに従って、支持ロッド22aの中間に先端が枢支された固定ロッド22cの基端が支持ロッド22aの基端側に移動してくる。
【0025】
ガイド22bによる位置決め位置まで支持ロッド22aが浮上すると、固定ロッド22cの基端は、支持ロッド22aの浮上と共に、起立状態から倒伏してくる固定フック22dに係合して、支持ロッド22aの倒伏を防止する。
【0026】
なお、この固定フック22dは、支持ロッド22aの倒伏時には、起立して固定ロッド22cの基端の係合を解除するようになっている。この固定フック22dの起立動作と前記倒伏動作は、例えば一端側を支持ロッド22aに固定し、中間部を固定フック22dの基端側に捲き回した係留ロープ23aの他端を固定した動滑車に巻き回した係留ロープ23bを、支持ロッド22aの起伏動作に追従してウインチ24により繰り出しや巻き取ることにより行われる。
【0027】
本発明では、上記構成を有する起伏ゲート式防波堤11を取り付ける基礎すなわち基台14aに、基台14aの下部の捨石1a領域と連通する連通部14aaを介して水の出入りが可能な部屋14abを設けている。
【0028】
例えば図1に示した本発明の起伏ゲート式防波堤11では、基台14aのテンションロッド13の他方端部13c近傍に、前記部屋14abを設けている。そして、この部屋14abの前記連通部14aaより離れた部分に開口部14acを設けている。
【0029】
前記部屋14abの開口部14acには、その中心部25aを支点として回転が自在なように扇形の錘25を枢支し、部屋14abの開口部14acを塞いでいる。そして、この扇形の錘25の、部屋14abから外側に出ている一方の外周端部25bを前記テンションロッド13の他方端部13cに回転が自在なように連結している。
【0030】
このような構成とすることで、扉体12の浮上に伴って部屋14ab内にある錘25が部屋14abから突出した時に生じる部屋14abの容積増大(図1参照)に伴う圧力低下が、基台14aの下側の捨石1a領域に伝播して、基台14aの上下で圧力差が発生する。
【0031】
この圧力差により、扉体12の浮上完了時には、図4に示すように、基台14aを上から下向きに押え付ける方向の力が発生することになって、基台14aの安定性が高くなる。
【0032】
本発明においては、扉体12の浮上に伴い、前記錘25の回転が最大となった場合も、部屋14abの開口部14acに隙間ができないような中心角に扇形を形成することは言うまでもないことである。図5(a)に示すように、部屋14abの開口部14acに大きな隙間ができると、基台14aの上方に存在する水が部屋14abを通って地盤2に連通して安定性が悪くなるからである。
【0033】
しかしながら、設計上、そのような扇形状とすることが難しい場合には、図5(b)(c)に示すように、錘25の回転位置近傍に突起14bを設けることで、錘25の回転が最大となった場合も、部屋14abの開口部14acに隙間ができないようにすればよい。
【0034】
上記構成の本発明においては、扉体12の起立時、台風等の高波による衝撃的な荷重が扉体12を転倒させる方向に作用した場合にも、基台14aが浮き上がることを効果的に防止することができる。
【0035】
しかしながら、扉体12の倒伏により部屋14abから引出された錘25が元の位置に戻る(部屋14ab内に退入する)際には、部屋14abの内部に存在する水が圧縮されることになる。この時、部屋14ab内の圧力が上昇し、前述の現象とは正反対の効果により基台14aの下側の圧力が上側と比較して高くなり、安定性が低下するという現象が起こり得る(図6参照)。
【0036】
このような状態の発生を防止するためには、基台14aの下側の圧力が上側に比べて高くなるときのみ、その圧力差を開放するための開閉弁14cを、例えば図7に示すように、前記部屋14abに設ければよい。なお、図示省略したが、開閉弁14cは基台14aに設けても良い。
【0037】
この開閉弁14cは機械的に制御するものではなく、自然の力で開閉するもので、圧力差が発生すれば、その圧力差によって一方の方向についてのみ自然に開放する仕組みになっている。この開閉弁14cは、扉体12の幅方向に対して等間隔に複数個、例えば10mに1〜2個設ける。
【0038】
なお、上記構成を有する本発明の起伏ゲート式防波堤11は、例えば地震が発生して津波警報が発令されたときには、以下の操作を行うことによって、津波が港湾Rの港内側に侵入するのを防止する。
【0039】
〔格納(係留)時〕
扉体12が収納部14の格納位置に着床した状態では、図3(a)に示すように、上側の前記爪状突起19bが前記ゲート係留部17の貫通孔部17aに係合している。短時間での浮上を可能とするために、この状態で、扉体12の浮上に必要な浮力を得るまで、扉体12の空気室12bに空気を供給しておく。なお、空気室12bへの圧縮空気の供給は、例えば空気室12bの開口部の直下に給気口がくるように配置された給気管16cを介して行う。
【0040】
また、前記係合状態が外れないように、係留ロープ20に張力をかけ、前記爪状突起19bが前記貫通孔部17aに係合する方向に回転力を付与する。この際、フック19の回動支点19aから扉体12の係留支持点までの距離aより、前記回動支点19aから係留ロープ20の支持点までの距離bを長くしておけば、係留ロープ20に作用する張力を低減することができる。この張力の低減により、使用する係留ロープ20や転向滑車18の小径化が可能になる。
【0041】
このとき、係留ロープ20に作用する張力を測定するロードセルをさらに設け、日常、前記張力を測定し、当該測定張力が一定となるように、空気室12bへの空気補給の調整を行えば、常に扉体12の起立準備が完了した状態を維持できる。この際、空気補給だけでは係留ロープ20の張力が回復しない場合は、浮上操作または浚渫などのメンテナンスを行う。
【0042】
なお、図1に示したストッパ装置22を設けている場合は、支持ロッド22aは扉体12によって倒伏状態に押さえ込まれており、この状態で、係留ロープ23bの巻き取り及び繰り出すウインチ24のブレーキを開放する。
【0043】
また、ストッパ装置22を設けている場合は、支持ロッド22aの傾斜を確認し、確認時に扉体12の裏面側のスペースを利用してストッパ装置22の動作確認を行う。
【0044】
〔扉体12の浮上(起立)操作時〕
例えば地震の発生により津波警報が発令されて浮上指令が出た時には、固定装置21を緩めて係留ロープ20の前記張力を開放する。この張力の解放により、錘19dの重力によりフック19が回転し、上側の爪状突起19bの貫通孔部17aへの係合が解除される。上側の爪状突起19bの貫通孔部17aへの係合が解除されると、予め供給されている圧縮空気による空気室12bの浮力により、通常水位まで扉体12が浮上する。そして、扉体12の浮上に伴って、部屋14ab内にある錘25が部屋14abから突出する。
【0045】
なお、図1に示したストッパ装置22を設けている場合は、扉体12の浮上に連動して係留ロープ23bが繰り出され、支持ロッド22aが浮上する。浮上した支持ロッド22aは、ガイド22bによって位置決めされ、固定フック22dによって倒れ込みが防止される。
【0046】
浮力によって通常水位まで浮上した扉体12は、港湾Rの港外側から津波がきた場合には、津波の押波の力によって、図1(a)に示すように、扉体12は垂直に起立し、津波が港湾Rの港内側に侵入するのを防止する。また、台風等の高波による衝撃的な荷重が扉体12を転倒させる方向に作用した場合にも、基台14aが浮き上がるのを防止する。扉体12の起立時、台風等の高波による衝撃的な荷重が扉体12を転倒させる方向に作用するに伴い、錘25の回転が最大になっても、部屋14abの開口部14acに隙間ができないようにしているので、基台14aが浮き上がることはない。
【0047】
一方、引き波がきて扉体12が倒伏しようとしても、図1に示したストッパ装置22を設けている場合は、扉体12が所定の角度まで倒伏すると、支持ロッド22aによって支持される。
【0048】
〔扉体12の倒伏操作時〕
扉体12の上端部に設けた排気弁(図示せず)を開放して、空気室12b内の空気を排気しつつ、空気室12b内に海水を入れて扉体12を倒伏させる。なお、図1に示したストッパ装置22を設けている場合は、この扉体12の倒伏に連動してウインチ24を作動して係留ロープ23bを巻き取り、支持ロッド22aを倒伏させる。
【0049】
この扉体12の倒伏により、図3(b)のようにゲート係留部17の下端が下側の爪状突起19cを押してフック19を回転させ、上側の爪状突起19bをゲート係留部17の貫通孔部17aに係合させる(図3(a)の状態)。
【0050】
その後は、前記係留ロープ20に張力をかけ、空気室12b内の海水を排水してから排気弁を閉める。続いて給気管及び給気口を介して空気室12bに空気を供給して、扉体12の倒伏状態を保持する。作業完了後は、前記の格納時の作業に戻る。
【0051】
以上、説明したように、本発明の起伏ゲート式防波堤11では、ゲート係留部17に係合させたフック19の係合を解除するだけで、扉体12を浮上させることができるので、扉体12を短時間で浮上させることができる。
【0052】
そして、扉体12の浮上時、台風等の高波による衝撃的な荷重が扉体12を転倒させる方向に作用した場合にも、基台14aを上から下向きに押え付ける方向の力が発生して、基台14aが浮き上がることを防止することができる。
【0053】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0054】
例えば、前記部屋14abの設置位置は、テンションロッド13の他方端部13c近傍でなくても良い。図8に示すように、前記部屋14abをテンションロッド13の他方端部13cと扉体12の回転軸12aの中間部に設けても良い。この場合、扇形の錘25の一方の外周端部25bは、ワイヤロープ26(或いはチェーン)により前記テンションロッド13の連結部13aに連結する。
【0055】
ワイヤロープ26(或いはチェーン)は、扉体12の浮上直前に錘25を持ち上げ始め(図8(a))、扉体12の浮上が完了した時点(図8(b))で錘25を完全に持ち上げるような長さとしておく。
【0056】
この図8に示す場合も、錘25の持ち上げにより、基台14aの下側の圧力を低下させることができ、基台14aには下向きの荷重が作用して基台14aの安定化が図れる。この場合も、扉体12の倒伏に伴って錘25が部屋14ab内に入ると基台14aの下側の圧力が上昇することになるので、上昇した圧力を開放する開閉弁14cを設けることが望ましい。この開閉弁14cは、図9(a)のように基台14aに設けても、また、図9(b)のように部屋14abに設けても良い。
【0057】
また、扇形の錘25に換えて、図10に示すようなピストン形の錘27を設けても良い。この場合、テンションロッド13の他方端部13c近傍の基台14a部に設けた部屋14ab内に前記錘27を移動自在に内装し、この錘27に連結されたロッド27aの先端をテンションロッド13の他方端部13cと回転自在に枢支する。
【0058】
このようにすることで、前記ロッド27aが部屋内に退入した扉体12の浮上直前(図10(b))から、扉体12の浮上完了時(図10(a))に至った時には、前記ロッド27aは部屋14abから突出する。このロッド27aの突出に伴い、ロッド27aが突出する方向に部屋14ab内を錘27が移動して(図10(c))部屋14ab内の圧力が低下し、基台14aの下側の圧力を低下させる。従って、基台14aには下向きの荷重が作用して基台14aの安定化が図れる。
【0059】
ところで、扉体12の倒伏時にロッド27aが退入する方向に部屋14ab内を錘27がスムーズに移動しないと、部屋14abを損傷してしまうおそれがある。そこで、扉体12の倒伏に伴って錘27が部屋14ab内をスムーズに移動できるように、部屋14ab内における錘27のロッド27a側にばね28を設けることが望ましい。但し、錘27の重量だけで元の位置に復帰する場合は、ばね28を設けなくても良いことは言うまでもない。
【0060】
このピストン形の錘27を設けた場合も、扉体12の倒伏に伴ってロッド27aが部屋14ab内に退入すると、基台14aの下側の圧力が上昇するので、図11(a)(b)に示すように、上昇した圧力を開放する開閉弁14cを、基台14a又は部屋14abに設けることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、高波対策として港湾に設置するだけでなく、河川に設置することも可能である。また、船舶が航行する河川や港では、水深が浅くなるのを防止するためにピットを設け、このピットに基台を配置することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
11 起伏ゲート式防波堤
12 扉体
12a 回転軸
14a 基台
14aa 連通部
14ab 部屋
14ac 開口部
14c 開閉弁
15 軸受
25 扇形の錘
25a 中心部
25b 一方の外周端部
27 ピストン形の錘
27a ロッド
28 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体が浮上する起伏ゲート式防波堤であって、
基礎上で、基端側の回転軸を支点として起伏動作する扉体と、
中間の連結部で折れ曲がるように構成され、一方端部は前記扉体の頂部側に、他方端部は前記扉体が倒伏する側の前記回転軸から所定の距離だけ離れた基礎上の位置に、それぞれ回転自在に枢支されたテンションロッドと、
水の出入りが可能なように前記基礎部に設けられた部屋と、
前記部屋の前記水が出入りする連通部より離れた部分に設けた開口部に中心部を回転自在に枢支し、前記テンションロッドの他方端部に一方の外周端部を連結するか、または前記テンションロッドの連結部から連結部材を介して一方の外周端部と連結することで、前記扉体の浮上直前には部屋内に退入しており、前記扉体の浮上完了時には部屋から突出するように構成した扇形の錘と、
を備えたことを特徴とする起伏ゲート式防波堤。
【請求項2】
前記部屋を港外側に設けたことを特徴とする請求項1に記載の起伏ゲート式防波堤。
【請求項3】
前記部屋をテンションロッドの他方端部に設け、扇形の錘の一方の外周端部と前記テンションロッドの他方端部を枢支したことを特徴とする請求項1又は2に記載の起伏ゲート式防波堤。
【請求項4】
前記部屋をテンションロッドの他方端部と扉体の回転軸の中間部に設け、扇形の錘の一方の外周端部と前記テンションロッドの連結部を連結部材で連結したことを特徴とする請求項1又は2に記載の起伏ゲート式防波堤。
【請求項5】
扉体が浮上する起伏ゲート式防波堤であって、
基礎上で、基端側の回転軸を支点として起伏動作する扉体と、
中間の連結部で折れ曲がるように構成され、一方端部は前記扉体の頂部側に、他方端部は前記扉体が倒伏する側の前記回転軸から所定の距離だけ離れた基礎上の位置に、それぞれ回転自在に枢支されたテンションロッドと、
水の出入りが可能なように前記テンションロッドの他方端部近傍の基礎部に設けられた部屋と、
この部屋内を移動自在に設けられたピストン形の錘と、を備え、
前記錘に連結されたロッドの先端を前記テンションロッドの他方端部と回転自在に枢支することで、扉体の浮上直前には前記ロッドが部屋内に退入しており、扉体の浮上完了時には前記ロッドが部屋から突出するように構成したことを特徴とする起伏ゲート式防波堤。
【請求項6】
前記部屋内における前記錘のロッド側にばねを設けたことを特徴とする請求項5に記載の起伏ゲート式防波堤。
【請求項7】
前記基礎に開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の起伏ゲート式防波堤。
【請求項8】
前記部屋に開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の起伏ゲート式防波堤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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