説明

起振機の位相差制御装置、および同制御方法

【課題】 公知発明(特開2002−66458号公報)に係る、揺動モータを設けた起振機の位相差制御技術を改良して、偏心重錘の回転速度と無関係に起振力を制御して、最大起振力を発生することもでき、起振力をゼロにすることもできるようにする。
【解決手段】 従来例の揺動モータは、出力軸16に1対のベーン17,17′が設けられるとともに、ハウジング14に1対のブロック15,15′が設けられていたが、本発明においては、1対のベーンの内の片方(17′)を削除して1個のベーン17のみを残すとともに、1対のブロックの内の片方(15′)を削除して1個のブロック15のみを残す。これにより、ハウジング14に対する出力軸16の相対的な回動のストロークが著しく増大する。空洞20および埋設された大比重金属21は、出力軸のバランスを調整するために、バランスウェイト19はハウジング14のバランスを調整するために設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏心重錘式の起振機に係り、固定偏心重錘に対する可動偏心重錘の回転位相差を増減制御することによって起振力を調節する装置、および同方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の調節装置を備えた起振機は振動杭打抜機に賞用されている。
その理由は、起振機の回転速度を変化させることなく起振力を増減調節できるからであり、詳しくは以下の通りである。
偏心重錘式の起振機は、偏心重錘を回転させることによって振動を発生させる機器であって、発生する振動の周波数は偏心重錘の回転速度と等しい。
このため、杭打抜作業時に起振機を始動させると、偏心重錘の回転速度が次第に上昇して定格回転速度に達するまでの間に、振動数が次第に増加する。
振動数が増加する途中で、杭打抜き作業現場付近の構造物や機械類(例えばクレーンのブーム)の固有振動数と一致したとき、共振現象を生じて公害事故や破損事故を招く虞れが有る。
【0003】
こうした不具合を防止するため、固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を180度にして、起振力ゼロの状態で始動し、回転速度が増加して付近構造物等の共振周波数区域を通過した後に、前記の位相差を減少させて起振力を発生させるという工法が広く行なわれており、この工法を実施するための装置も開発されている(例えば特開2002−66458号公報)。
図2は上記公知発明の1実施形態を描いた模式的な断面図であって、同公報の図2に対応する。ただし、構成部材に付記した符号数字およびアルファベットは修正してある。
【0004】
起振機ケース7を貫通して、内軸8aと外管8bとから成る2重管8が配設されている。
上記の内軸8は回転駆動機器(例えばオイルモータ)11によって回転駆動される。
固定偏心重錘9は、上記の内軸8aに対してキーkを介して固着され、該内軸8aと同一回転速度,同一回転位相で回転する。可動偏心重錘10は、上記の内軸8aにより、ベアリングBを介して相対的回動自在に支承されている。
上記の可動偏心重錘10は、外管8bを介して可逆回動機構12のボデー12aと一体的に結合されている。
そして、該可逆回動機構12の出力軸12bは、前記の内軸8aに対して同心に、一体的に結合されている。符号18を付して示したのは、可逆回動機構12に対して作動油を送給するためのスイベルジョイントである。
【0005】
本図2に示した位相差制御装置が記載されている文献(特開2002−66458号公報)によれば、前記の可逆回動機構は油圧モータであると説明されており、その他の記載内容から推察すると、詳しくは油圧式の揺動モータである。
油圧揺動モータの模式図を図3に示す。
円筒形のハウジング1と同心に出力軸2が配置され、該出力軸2に対して対称に1対のベーン4a,4bが固着されており、該ベーン4a,4bの先端はハウジング1の内周面と密に接している。符号Tvを付して示したのはベーンの厚さ寸法(回転円弧の接線方向寸法)である。
一方、ハウジング1の内周面には、1対のブロック3a,3bが固着されていて、前記の出力軸2に対して密に接している。符号Tbを付して示したのはブロックの厚さ寸法である。
【0006】
図3において、ハウジング1aに設けられた流出入孔1aから、矢印aのように圧力油を注入するとともに、流出入孔1bを大気圧に連通させると、符号5aを付して示した密閉室の圧力が上昇し、加圧室として作用する。
上記圧力室は連通孔2aを経て、符号5bを付した密閉室に流入し、この室も加圧室として作用する。
これにより、ベーン4a,4bは加圧室側の圧力油に押されて、図の左回り(反時計)方向に回動する。
解放室6b内の作動油はベーン4aに押され、連通孔2bを経て解放室6a内に流動し、該解放室内の作動油と一緒になって流出入孔1bから矢印bのように流出する。
また、上記と反対に、流出入孔1bから圧力油を注入するとともに流出入孔1aを大気圧に連通させると、前記と反対の作用によって出力軸2が右回り(時計)方向に回動する。
【0007】
前掲の図2に示した公知発明においては、技術的範囲を広く表現するため符号12の機器を「可逆回動機構」と表現し、詳細な説明には括弧書きで(例えば油圧モータ)と述べられている。
図2において「可逆回動機構」を「油圧揺動モータ」と読み換えると、
図2のボデー12aは図3のハウジング1に対応し、
図2の出力軸12bは図3の出力軸2に対応していることが理解される。
図2に描かれている位相差調整式起振機中の可逆回動機構12を油圧揺動モータで代替し、その要部を抽出して描いたイメージ図は図4のとおりである。符号Tbはブロック15の厚さ寸法(回転円弧の接線方向寸法)であり、Tvはベーン17の厚さ寸法である。
【0008】
図4において、内軸8aが図外の回転駆動機器によって矢印θ方向に回転しているものとする。説明の便宜上、この矢印θ方向を右回り方向と呼ぶ。
油圧揺動モータ13の出力軸16は、前記の内軸8aに結合されていて、右回り方向に回転せしめられる。
(注)油圧揺動モータが特殊な使い方をされているので、構成部材の一部は、その名称と作用とが一致しなくなっている。
例えば図4に示した内軸8bに直結された出力軸16は、被動軸(ドリブンシャフト)として機能する。
【0009】
その構造から明らかなように、ハウジング14と出力軸16とは相対的に連続回転することができない(180度よりも小さい角度範囲内で往復回動できるだけである)。
従って、内軸8bと共に出力軸16が矢印θ方向に連続的に回転すると、ハウジング1も矢印θ方向(右回り)に回転し、概要的に両者の回転速度が等しい。
これに伴って、ハウジング14と一体的に結合されている外管8bも右回り方向に同期回転し、該外管8bに嵌着されている可動偏心重錘10も右回り方向に同期回転する。
その結果、内軸8aに嵌着されている固定偏心重錘9と、外管8bに嵌着されている可動偏心重錘10とが、基本的には右回りに同期回転する。
【0010】
いま、本来の用法に従ってハウジング14を静止部材と考えると、出力軸16は右回り,左回り方向に往復回動せしめられる。
また、出力軸16を基準にして考えれば、ハウジング14が左回り,右回り方向に往復回動せしめられる。
本図4の用法(特開2002−66458号公報)においては出力軸16を基準として、ハウジング14が往復回動せしめられる。
図4に描かれている構成部分が組み立てられて運転されている状態を考えると、内軸8a、及び、これに固着された固定偏心重錘9が矢印θ方向に右回り回転している。この回転系を基準として位相差制御機能を考察すると次のとおりである。
【0011】
固定偏心重錘9に対し、内軸8aを介して固着されて回転(右回り)している出力軸16に対し、可動偏心重錘10と一体的に連結されているハウジング14が右回りに回動せしめられると、可動偏心重錘10が固定偏心重錘に対して相対的に右回りする。すなわち位相が進む。
これと反対に、出力軸16に対してハウジング14が左回りに回動せしめられると、固定偏心重錘9に対して可動偏心重錘10が相対的に左回りする。すなわち、位相が遅れる。
公知の位相差制御装置(特開2002−66458号公報)においては、上述のようにして、固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差が増減制御される。
ただし、固定偏心重錘と可動偏心重錘との間に本質的な差異は無く、どちらを基準として考えるかというだけの問題である。従って、両者を相互に置換して読み換えることもできる。ただし、局所的に任意に置換できるものではなく、置換する場合には、記述されている全ての「可動偏心重錘」と、全ての「固定偏心重錘」とを相互に置換しなければならない。
【特許文献1】 特開2002−66458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(図4参照)この図に描かれている構成部分全体は、矢印θ方向に右回りに回転している。そして、出力軸16に対してハウジング14が相対的に右回り(矢印θ方向)すると、可動偏心重錘10の位相が固定偏心重錘9に対して進む。
同様に、左回りすると位相が遅れる。
いま、内軸8aが矢印θ方向に一定速度で回転しているものとすると、固定偏心重錘9と可動偏心重錘10との位相差がゼロになったとき、起振力が最大になり、位相差が180度になったとき、起振力が最小になる(固定偏心重錘の変身モーメントが可動偏心重錘の偏心モーメントと等しければ起振力はゼロになる)。
【0013】
ところが、油圧揺動モータ13の構造を見て容易に理解されるように、ハウジング14と出力軸16との相対的な回動は『ベーン17とブロック15との干渉』により制限されていて、180度回動は不可能である。
(図4と図3とを併せて参照)いま仮に、ベーンの厚さ及びブロックの厚さがゼロであるならば、出力軸とハウジングとが相対的に180度を限度として回動できる。
しかし、実際にはベーンもブロックも、機械的強度を維持するための厚さが不可欠であるから(図3および図4参照)ベーンには厚さ寸法Tvが付されており、ブロックには厚さ寸法Tbが付されている。このため、ハウジングと出力軸とが相対的に180度回動することはできない。
一方、先に考察したように、固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を180度変えなければ、起振力を最大値と最小値とに変化させることができない。
【0014】
こうした事情が総合されて、従来技術においては、最小起振力をゼロならしめんとすると最大起振力を発揮することができず、
最大起振力を発生させようとすると、最小起振力がゼロにならなかった。
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、固定偏心重錘と可動偏心重錘との回転位相差を、180度若しくはそれ以上変化せしめ得る位相差制御技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために創作した請求項1の発明装置は、起振機に設けられている固定偏心重錘と可動偏心重錘との回転位相差を、油圧揺動モータによって増減制御する装置において、
油圧揺動モータの出力軸に設けられているベーンの個数が1個であり、
かつ、該油圧揺動モータのハウジング内周面に固着されて上記出力軸に接しているブロックの個数が1個であって、
ベーンを含む出力軸の総合重心が、該出力軸の回転中心線上に位置しているとともに、
ブロックを含むハウジングの総合重心が、該ハウジングの回転中心線上に位置していることを特徴とする。
ただし、前記の回動角度が180度であることは、180度の回動が可能であることを意味するものである。例えば外部にストッパを設けるなどして全回動ストロークを利用せず、180度未満で使用しても本発明の技術的範囲に属する。
【0016】
請求項2の発明装置の構成は、前記請求個1の発明の構成要件に加えて、
前記出力軸の中に空洞が形成され、
及び又は、出力軸の構成材料よりも比重の大きい部材が、該出力軸の中に埋設されていて、
ベーンを含む出力軸の総合重心が、該出力軸の回転中心線上に位置しており、
かつ、ハウジングに対してバランサが固着されていて、ブロックを含むハウジングの総合重心が、該ハウジングの回転中心線上に位置していることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明方法は、起振機に設けられている固定偏心重錘と可動偏心重錘との回転位相差を、油圧揺動モータによって増減制御する方法において、
油圧揺動モータの出力軸に対して、ベーンを1個のみ設けるとともに、
該油圧揺動モータのハウジング内周面に、上記出力軸に接するブロックを1個のみ設け、
かつ、ベーンを含む出力軸の総合重心を、該出力軸の回転中心線上に設定するとともに、ブロックを含むハウジングの総合重心を、該ハウジングの回転中心線上に設定することを特徴とする。
ただし、本発明においてベーンを1個のみ設けるとは、揺動モータのベーン(出力軸側の羽根)として機能する部材の設置個数が1個に限定される意であって、完全に機能しないベーン形状の部材は数えない。
同様に、ブロックを1個のみ設けるとは、揺動モータのブロック(ハウジング側の羽根ないし仕切り部材)として機能する部材の設置個数を1個に限定するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明装置を適用すると、揺動モータのベーンが1個であり、かつブロックが1個であるから、
ベーンを連設された出力軸と、ブロックを固着されたハウジングとが、相対的に略1回転することができる。詳しくは、ベーンの厚さ寸法とブロックの厚さ寸法との和に対応する寸法だけ、回動ストローク(周長)から差し引かれるので、360度ではなく、約300度であるが、起振機の位相差制御に必要な角度は180度であるから、300度のストローク全部は利用せず、略180度を利用することになる。
【0019】
揺動モータという機器における通常の使用形態は、ハウジングを静止状態に保って出力軸を往復回動(揺動)させる。しかし、この揺動モータによって起振機の位相差制御を行なう場合は(図5参照)ハウジングも出力軸も一緒に(同期して)高速で回転(例えば毎分1000回転)する。
このため、出力軸,ハウジングそれぞれに、偏心すること無くバランスしていることが必要である。
従来例の揺動モータは、2個のバランサ、及び2個のベーンが、それぞれ対称に設けられていたから、ハウジングや出力軸の重心は意識しなくても回転中心線上に位置していた。
このような一般的情況の下でベーンの個数やブロックの個数を1個にすると、出力軸やハウジングに偏心を生じる。そこで請求項2の発明を適用することによって、出力軸およびハウジングそれぞれの総合重心が回転中心線上に位置せしめられ、高速回転しても異常振動を発生しない。
上述の構成,作用から明らかなように、請求項2の本質的部分は、出力軸やハウジングの重心位置を回転中心線上に設定することである。
従って、外見的に認識し得るバランサが設けられていなくても、1個のみのブロックを含めたハウジングの総合重心が回転中心線上に位置していれば本発明と均等であって、その技術的範囲に属する。
同様に、外見的に認識し得る空洞や埋設部材が無くても、1個のみのベーンを含めた出力軸の総合重心が回転中心線上に位置していれば本発明と均等であって、その技術的範囲に属する。
【0020】
請求項3の発明方法を偏心重錘式の起振機に適用すると、有害な異常振動を生じる虞れ無く、固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を180度変化させて、起振力を最大値からゼロまでの間で任意に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図5は本発明の1実施形態の概要を模式的に描いた分解斜視図であって、前掲の図4(公知発明・特開2002−66458号公報)に本発明を適用して改良した状態の概要を表している。
図5(実施形態)が図4(公知発明)に比して異なる点、すなわち本発明を適用して改良した事項は次のとおりである。
図4の出力軸16には2個のベーン17が設けられているが、図5の出力軸16にはベーン17が1個だけ設けられており、
図4のハウジング14には2個のブロック15が設けられているが、図5のハウジング14にはブロック15が1個だけ設けられている。
【0022】
図4の従来例(公知発明)においては、ハウジング14と出力軸16とが相対的に回動し得る角度は、
180度−「厚さ寸法Tb+厚さ寸法Tvに対応する角度」
であった。これに対し、図5においてハウジング14と出力軸16とが相対的に回動し得る角度は、
360度−(厚さ寸法Tb+厚さ寸法Tvに対応する角度)
である。ただし、上記の「対応する角度」とは、回転中心を基準とした「見込む角度」である。説明の便宜上、この角度を角φと名付ける。
【0023】
(図5参照)固定偏心重錘9は内軸8aを介して出力軸16に直結されており、可動偏心重錘10は外管8bを介してハウジング14に直結されている。
このため、前述のごとくハウジング14と出力軸16とが相対的に360度−角φだけ回動できることは、固定偏心重錘と可動偏心重錘とが相対的に360度−角φだけ回動し得ることを意味する。
前記ベーンの厚さ寸法Tvおよびブロックの厚さ寸法Tbは、それぞれ設計的考慮に基づいて設定される。従って、前記の角φも一定置ではない。
しかし、通常の設計条件において角φは90度未満であり、360度−角φの値を180度以上ならしめることは極めて容易である。
【0024】
本発明が目的とするところの「起振力を最大値とゼロとの間で調節する」という機能を得るために「可動偏心重錘と固定偏心重錘とを相対的に180度変化させること」すなわち「可動偏心重錘と固定偏心重錘との位相差を180度変化させること」を必要とするが、180度以上の変化は必要としない(いま仮に、180度を超えて変化し得るとしても、実際に構成する起振力制御装置は、その機能の全部を利用せず、180度の回動ストローク部分だけを使用することになる)。
図5を参照して以上に述べたところにより、本実施形態においては「起振力を最大値とゼロとの間で調節する」という発明目的が達成されていることが分かる。
【0025】
前述のごとく、揺動モータのベーン設置個数およびブロック設置個数を減らして1個としたために派生する問題、および、その対処について以下に説明する。
図1(A)は、本発明の1実施形態の断面を実線で描くとともに、従来例の構成部材を仮想線で付記してある。出力軸16と同心の中心孔は、内軸8a(図5参照)を嵌着するためのものである。
同様に図1(B)は、上記と異なる実施形態の断面を実線で描くとともに、従来例の構成部材を仮想線で付記してある。
(A),(B)両図に共通して、従来例の揺動モータには1対のベーン17,17′が設けられていたが、本発明を適用してベーン17′を削除し、ベーン17の1個のみを残した。このため、ベーンを含む出力軸の重心位置が、該出力軸の回転中心線上から変位して偏心する。
同様に、1対のブロック15,15′の内の片方(15′)を削除して、1個のブロック15のみを残したので、ブロックを含むハウジングの重心位置が偏心する。
【0026】
揺動モータの通例的な使用の形態においては、ハウジングが静止部材であり、出力軸は低速で往復回動するだけであるから、これらの部材の重心位置について別段の配慮を必要としなかった。
しかし、前記の公知発明(図2)および、これを改良した本発明においては、可逆回動機構である揺動モータのアッセンブリを高速(例えば1000rpm)で回転させるので、構成部材が偏心していると、不慮の不都合(例えば異常振動の発生)を招く虞れが有る。
【0027】
上述の偏心を防止するため、図1(A)の実施形態においては、1個のベーン17の根本付近に位置せしめて、出力軸16の中に空洞20を設け、ベーンを含む出力軸の総合重心が回転中心Oと一致するようにバランス調整する。
図1(B)の実施形態においては、前記の空洞20の形成区域をベーン17の内部まで延伸するとともに、
回転中心Oに関してベーン17と反対側に、鉛の小塊21を埋設した。具体的には、該部に穿った穴の中へ鉛の小片を挿入し、圧力または打撃を与えて塑性変形させることによって穴を埋めた。
本発明を実施する際、溶融した鉛を注入して固化させても良いが、前述のように組成変形を利用した方が重量制御が正確であるから望ましい。
本発明を実施する際、埋設する部材の材質は鉛に限定されない。要するに出力軸を構成している材料よりも比重の大きい物質であれば良い。
【0028】
ベーンに関する対策と同様に、回転中心Oに関してブロック15と反対側にバランスウェイト19を配置し、ハウジング14の外周面に固着する。これにより、ブロック15を含むハウジング14の総合重心が回転中心Oと一致する。
これにより、揺動モータをアッセンブリで回転させても、該揺動モータから異常振動を発生するなどの、回転部材の偏心に因る不具合を生じる虞れが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 本発明に係る位相差制御装置の1実施形態における要部を模式的に描いた部分断面図であり、(A),(B)はそれぞれ互いに異なる実施形態である。
【図2】 公知発明(特開2002−66458号公報)に係る位相差制御装置の実施形態を描いた断面図である。
【図3】 公知の油圧式揺動モータの構造機能を説明するために示した模式的な断面図である。
【図4】 前掲の図2に示した公知発明に係る位相差制御装置の要部を抽出して描いた分解斜視図である。
【図5】 前掲の図4の公知発明に対して本発明を適用して改良した状態を描いた分解斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
8…2重管
8a…内軸
8b…外管
9…固定偏心重錘
10…可動偏心重錘
13…油圧揺動モータ
14…ハウジング
15…ブロック
15′…本発明を適用して削除したブロックの旧位置
16…出力軸
17…ベーン
17′…本発明を適用して削除したベーンの旧位置
18…スイベルジョイント
19…バランスウェイト
20…空洞
21…埋設された大比重部材としての埋設鉛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起振機に設けられている固定偏心重錘と可動偏心重錘との回転位相差を、油圧揺動モータによって増減制御する装置において、
油圧揺動モータの出力軸に設けられているベーンの個数が1個であり、
かつ、該油圧揺動モータのハウジング内周面に固着されて上記出力軸に接しているブロックの個数が1個であって、
ベーンを含む出力軸の総合重心が、該出力軸の回転中心線上に位置しているとともに、
ブロックを含むハウジングの総合重心が、該ハウジングの回転中心線上に位置していることを特徴とする、起振機の位相差制御装置。
【請求項2】
前記出力軸の中に空洞が形成され、
及び又は、出力軸の構成材料よりも比重の大きい部材が埋設されていて、
ベーンを含む出力軸の総合重心が、該出力軸の回転中心線上に位置しており、
かつ、ハウジングに対してバランサが固着されていて、ブロックを含むハウジングの総合重心が、該ハウジングの回転中心線上に位置していることを特徴とする、請求項1に記載した起振機の位相差制御装置。
【請求項3】
起振機に設けられている固定偏心重錘と可動偏心重錘との回転位相差を、油圧揺動モータによって増減制御する方法において、
油圧揺動モータの出力軸に対して、ベーンを1個のみ設けるとともに、
該油圧揺動モータのハウジング内周面に、上記出力軸に接するブロックを1個のみ設け、
かつ、ベーンを含む出力軸の総合重心を、該出力軸の回転中心線上に設定するとともに、
ブロックを含むハウジングの総合重心を、該ハウジングの回転中心線上に設定することを特徴とする、起振機の位相差制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−5605(P2010−5605A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191453(P2008−191453)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(391002122)調和工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】