説明

超伝導ケーブルを有するシステム

【課題】電界にさらされる領域に、摩耗によって発生した金属粒子が入らないように構成された超伝導ケーブルシステムを提供する。
【解決手段】システムは、超伝導体の内側導体(1)と、スクリーン(S)と、両者の間に付けられた誘電体(3)と、からなる超伝導ケーブル(KA)を有する。スクリーンは、超伝導体部品(4)と、高導電性材料からなる部品(5)とから構成され、スクリーンは、液体冷媒を供給するために用いられる中間領域(9)とともに、互いに同心円状に延びた2つのステンレス鋼管(6、7)からなるクライオスタット(KR)で囲まれる。金属部品の摩耗から保護するために、スクリーンの表面、および/またはクライオスタットの内側表面のすべてにわたって、摩擦係数が鋼より低い耐摩耗性材料で作られたライナ層(10)が設けられ、ケーブルのスクリーンを囲むライナ層は冷媒に対して透過性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導体の内側導体と、内側導体と同心円上に配置されたスクリーンと、内側導体とスクリーンとの間に付けられた誘電体と、からなる超伝導ケーブルを有するシステムであって、スクリーンは、超伝導体部品と、超伝導体部品を囲む、高導電性材料からなる部品とから構成され、スクリーンは、液体冷媒を供給するために用いられる中間領域とともに、互いに同心円状に延びたステンレス鋼管であって、排気され超断熱材(superinsulation)を備えた中間領域によって互いに隔てられた、2つのステンレス鋼管からなるクライオスタットで囲まれた、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導ケーブルは、十分に低い温度で超伝導状態になる特殊な金属で作られた導体を有する。したがって、そのように作られた導体の電気抵抗は、ゼロに向かう傾向がある。好適な材料は、たとえば、YBCO(イットリウムバリウム銅酸化物)またはBiSCCO(ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物)である。そのような材料が超伝導状態になるための十分に低い温度は、たとえば、67K乃至110Kの範囲にある。好適な冷媒は、たとえば、それぞれ液体状態での、窒素、ヘリウム、ネオン、水素、またはこれらの物質の混合物である。
【0003】
特許文献1 は、冷媒を運ぶ中心管を有する超伝導ケーブルを開示している。その管の周囲に、2つの超伝導体、2つの静電スクリーン、および誘電体が配置される。外側にある超伝導体は、帰線(return conductor)として、冷媒を通さない、機械的保護として作用する層で囲まれる。ケーブルは、断熱材が間に挟まれた2つの同軸管からなるクライオスタットの中に配置される。ケーブルとクライオスタットとの間に、冷媒を運ぶキャビティがある。
【0004】
技術分野の項に記載したシステムは、超伝導ケーブルを備え、超伝導ケーブル内の冷媒がさらに、稼働中に含浸媒体として誘電体に浸透する。そのようなケーブルは、低温誘電体ケーブル(a cold-dielectric cable)と呼ばれる。特徴は、高電圧レンジにおいて非常に大きな電力を伝送できることである。そのようなケーブルは、内側導体と、内側導体と同心円上に配置されたスクリーンまたは外側導体とからなり、これらは互いに隔離され、誘電体(絶縁体)の分の距離だけ離れている。超伝導体は、たとえば、YBCOやBiSCCOのような超伝導材料のストリップからなり、これらのストリップは、長いピッチで、互いに緊密に支持物に巻きつけられる。内側導体の支持物は、高導電性材料で作られた管またはコードまたは撚り線であってよく、これらは、短絡が発生した場合には電流を運ぶようにも動作する。しかしながら、支持物は、短絡電流をこのエレメントで運ぶことが必要でないと考えられる場合には、低導電性金属または非導電性金属で作られてもよい。ケーブルのスクリーンは、超伝導体部品と、超伝導体部品を囲み、自身も高導電性材料からなる部品(以下では、簡単のために「導体」と称する)とから構成される。この導体は、短絡が発生した場合には、電流を運ぶよう動作する。スクリーンについては、誘電体が支持物として動作する。誘電体は、たとえば、紙および/または紙とポリプロピレンとの積層の、複数の層からなる。ケーブルのまわりに、熱断熱のためと、空隙を含めながらシステムを完結させるために、クライオスタットが配置される。クライオスタットは、一方が他方の内側にある2つのステンレス鋼管を含み、それらの鋼管の間に、いわゆる超断熱材とスペーサとが配置される。クライオスタットの2つの鋼管の間の空間は、真空である。
【0005】
システムの稼働中は、超伝導ケーブルが、室温から、たとえば、73Kの温度まで冷却される。そのとき、ケーブルは、約0.3%縮む。長さ600mのケーブルであれば、約1.8m縮むことになる。これに対し、クライオスタットは、その特殊な構造ゆえに、この冷却の間は、縮まないか、縮んでもごくわずかである。したがって、ケーブルを冷却したとき、ならびに冷却を「スイッチオフ」した後に再加熱したときに、クライオスタットとケーブルとの間に相対運動が発生する。ケーブルの外側の層(すなわち、導体)は、高導電性金属、たとえば、銅またはアルミニウムからなる。銅もアルミニウムも、摩耗強度が、クライオスタットの内側管より低い。したがって、前述の相対運動の間に、導体の表面から、金属粒子が削り落とされる。ケーブルまたはシステムが電界にさらされる領域、たとえば、終端部においては、これらの相対運動が、電気的絶縁破壊を起こすほどの重大な問題につながりかねない。電気的絶縁破壊が起これば、終端部は破壊されるであろう。この危険は、クライオスタットの内側管が長手方向に対して横断するように波形が付けられる場合には、さらに悪化する。これは、波形が付けられることによって摩耗が増えるためである。
【特許文献1】米国特許第2005/0056456A1号(US 2005/0056456A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、技術分野の項で述べたシステムの、電界にさらされる領域に、摩耗によって発生した金属粒子が入らないように、システムを構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、クライオスタットで囲まれたケーブルのスクリーンの表面、および/またはクライオスタットの内側表面のすべてにわたって、摩擦係数が鋼より低い耐摩耗性材料で作られたライナ層が設けられることと、ケーブルのスクリーンを囲む、対応するライナ層が、冷媒に対して透過性であることと、によって達成される。
【0008】
高導電性材料からなる、ケーブルの導体は、ライナ層によって、実質的に摩耗から保護される。したがって、ケーブルとクライオスタットとの間で相対運動が発生しても、クライオスタットから金属粒子が削り落とされない。同時に、ケーブルがクライオスタット内で縮むか延びる際の、ケーブルの運動は、その2つの部品の間の摩擦の低減によって容易になる。
【0009】
ライナ層の耐摩耗性材料としては、青銅を用いることが有利であり、ケーブルの導体に、隙間を空けて巻きつけるストリップの形で用いることが好ましい。
【0010】
本発明の対象物の例示的実施形態を図面に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および2に示されたシステムのそれぞれにおいて、低温誘電体超伝導ケーブルKAが、クライオスタットKR内に配置されている。ケーブルKAは、超伝導材料で作られた内側導体1を有し、内側導体1は、たとえば、銅などの高導電性金属で作られた金属芯2のまわりに配置される。芯2は、コードまたは撚り線であってよい。しかしながら、芯2は、システムの稼働中に冷媒を運ぶことが可能な管として構成されてもよい。内側導体1は、誘電体3で囲まれ、誘電体3は、紙および/または紙とポリプロピレンとの積層の、複数の層からなる。ケーブルKAのスクリーンSは、内側にある超伝導部品4と、超伝導部品4を囲み、高導電性金属からなる、外側にある部品5(以下では、「導体5」と称する)とからなり、誘電体3を覆って配置される。導体5は、銅からなることが好ましい。
【0012】
クライオスタットKRは、ステンレス鋼からなる2つの管6および7からなり、これらは、中間領域8によって互いに隔てられる。これらの管は、長手方向に対して横断するように波形が付けられると有利である場合があり、互いに同軸上にあるように配置されることが好ましい。中間領域8は、排気され、2つの管6および7の相互の位置関係を保持する超断熱材およびスペーサを備えられる。超断熱材は、それ自体既知の仕方で、アルミニウムを蒸着された多層のプラスチックフィルムから構成されてもよい。
【0013】
ケーブルKAは、クライオスタットKRの中に配置され、特に、システムの稼働中に、たとえば、窒素などの加圧された冷媒がその中を通って運ばれる、中間領域9が空けてある。要件によれば、冷媒の圧力は、3乃至20バールの範囲にある。図1に示された例示的実施形態では、ケーブルKAの導体5は、摩擦係数が鋼より低い耐摩耗性材料で作られたライナ層10で囲まれ、ライナ層10は導体5に直接当たっている。冷媒が含浸媒体として誘電体3に浸透することが可能であるよう、ライナ層10は冷媒に対して透過性である。ライナ層10の厚さは、0.1乃至0.2mmが有利である。
【0014】
ライナ層10の好適な材料は、たとえば、ポリテトラフルオロエチレンおよび硫酸モリブデンである。しかしながら、青銅をライナ層10に用いることが特に有利である。ライナ層10がケーブルKAに付けられている場合、ライナ層10は、隙間を空けて導体5に巻きつけられた青銅ストリップからなることが有利である。
【0015】
ライナ層10は、図2に示されるように、クライオスタットKRの内側管7の内側表面に付けられることも可能である。ライナ層10を、ケーブルKAのまわりと内側管7との両方に設けることも可能である。
【0016】
システムを稼動状態にしたときの、それに対応する冷却が行われる間、および故障時またはメンテナンス時にシステムをオフにしたときの、それに対応する加熱が行われる間、ケーブルKAは、クライオスタットKR内で動く。ケーブルKAとクライオスタットKRとの間にライナ層10を使用したところ、かなりの回数の上記のような冷却および加熱のサイクルの後でも、摩耗は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】低温誘電体超伝導ケーブルを有する、本発明によるシステムの断面図である。
【図2】図1に対して変更が加えられたシステムの実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1・・・内側導体、2・・・芯、3・・・誘電体、4・・・超伝導体部品、5・・・導体、6、7・・・ステンレス鋼管、10・・・ライナ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導体の内側導体と、前記内側導体と同心円上に配置されたスクリーンと、前記内側導体と前記スクリーンとの間に付けられた誘電体と、からなる超伝導ケーブルを有するシステムであって、前記スクリーンは、超伝導体部品と、前記超伝導体部品を囲む、高導電性材料からなる部品とから構成され、前記スクリーンは、液体冷媒を供給するために用いられる中間領域とともに、互いに同心円状に延びた2つのステンレス鋼管であって、排気され超断熱材を与えられた中間領域によって互いに隔てられた、2つのステンレス鋼管からなるクライオスタットで囲まれ、
前記クライオスタット(KR)で囲まれた前記超伝導ケーブル(KA)の前記スクリーン(S)の表面、および/または前記クライオスタット(KR)の内側表面のすべてにわたって、摩擦係数が鋼より低い耐摩耗性材料で作られたライナ層(10)が設けられ、
前記超伝導ケーブル(KA)の前記スクリーン(S)を囲む、対応するライナ層(10)が、前記冷媒に対して透過性である、システム。
【請求項2】
前記ライナ層(10)が青銅からなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記超伝導ケーブル(KA)の前記スクリーン(S)を囲む前記ライナ層(10)が、隙間を空けて前記スクリーン(S)に巻きつけられた青銅ストリップからなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記超伝導ケーブル(KA)の前記スクリーン(S)と相対する、前記クライオスタット(KR)の少なくとも内側管(7)が、長手方向に対して横断するように波形を付けられた、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−41661(P2008−41661A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195376(P2007−195376)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】