説明

超伝導単一光子検出器および超伝導単一光子検出器の実装方法

【課題】積層構造の受光素子のサイズに適合して高効率光結合を実現できる超伝導単一光子検出器を提供する。
【解決手段】超伝導単一光子検出器200は、酸化マグネシウムからなる基板10と、基板10の表面に形成された窒化ニオブ配線13と、窒化ニオブ配線13上に形成されたキャビティ層12と、キャビティ層12上に形成された反射層11と、基板10の裏面に形成された反射防止層14と、を有する超伝導単一光子検出素子100と、
光ファイバ72と、光ファイバ72の先端に調芯融着されたレンズ75と、を有する光伝送手段23と、を備える。そして、レンズ75からの出射光が、窒化ニオブ配線13において所定のビームウェスト直径2ωとなるよう、レンズ75の先端から窒化ニオブ配線13までの距離が調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導単一光子検出器(Superconducting Single Photon Detector;以下、「SSPD」と略す場合がある)およびSSPDの実装方法に関する。特に、本発明は、窒化ニオブ(NbN)からなる超伝導状態の窒化ニオブ配線(以下、「ナノワイヤ」と略す場合がある)を用いたSSPDの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
光子を1個ずつ検出できる超伝導単一光子検出素子を閉サイクル冷凍機に組み込み、SSPDシステムを構成すると、多チャンネル化(例えば、6個のSSPDによる6チャンネル化)、安定動作、連続動作を実現できる。
このため、このようなSSPDシステムについて、様々な応用分野への有用性が認知されつつある。例えば、盗聴を不可能にする量子暗号通信などの量子通信分野への利用が期待されている。
【0003】
そこで、超伝導単一光子検出素子の一例として、単一の窒化ニオブ層が酸化マグネシウム基板(以下、「MgO基板」という)上に形成された単層構造の検出素子(以下、「単層構造素子」と略す)がすでに開発されている。
【0004】
この単層構造出素子では、窒化ニオブ層からなるメアンダ状(蛇行形状)のナノワイヤが、MgO基板の表面に形成されている。
これにより、MgO基板の表面に向けて光を入射できる。よって、単層構造素子は、光ファイバから出射された光とナノワイヤ素子との高光カップリングを容易に実現でき、光子との光カップリング性に優れている。
【0005】
しかし、単層構造素子では、光吸収効率が、ナノワイヤでの光反射および光透過特性によって制約されるといった欠点がある。つまり、薄膜(厚み6nm程度)のナノワイヤにおいて光の反射や透過が生じて、ナノワイヤによる光吸収性が芳しくなく(光吸収効率が最大でも30%程度と予測される)、ひいては、単層構造素子を用いたSSPDのシステム検出効率の低下を招いている。
【0006】
なお、本明細書において、「システム検出効率」とは、SSPDのシステムとしての検出効率を指し、光子検出システムに単一光子を入れる際の、当該光子を検出できる確率を指す。具体的には、システム検出効率Rは、下記式(1)で表される。
【0007】

R=Pc×Pa×Pd・・・(1)

式(1)において、「Pc」は、光子がナノワイヤとカップリングできる割合に対応する光カップリング効率(光結合効率)である。「Pa」は、ナノワイヤでの光子吸収割合に対応する光吸収効率である。また、「Pd」は、光子が受光素子に入射した際に信号が発生する割合に対応する素子検出効率である。
【0008】
そこで、以上のシステム検出効率Rの改善を図る目的で、単層構造素子に代えて、積層構造(光キャビティ構造)の超伝導単一光子検出素子(以下、「従来の積層構造素子」と略す)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
この従来の積層構造素子では、サファイア基板の表面側に、窒化ニオブ層(後工程においてメアンダ状のナノワイヤに微細加工)、誘電体キャビティ層(例えば、水素シルセスキオキサン(HQS)からなるキャビティ層)および反射層(例えばAu(金)層)が配されている。
【0010】
以上の構成により、キャビティ層内に光子を閉じ込めることができるので、単層構造素子に比べて吸収効率Paが改善する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】23 January 2006/Vol.14, No 2/OPTICS EXPRESS 527-534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の積層構造素子では、受光素子を構成するナノワイヤが形成されたサファイア基板の表面と反対の裏面側から光を照射する必要がある。よって、受光面積の小さなナノワイヤ素子に入射光を集光させることが難しく、光子との光カップリング性において難点がある。
【0013】
このため、従来の積層構造素子では、光カップリング効率Pcが、単層構造素子に比べて悪化して、却って、システム検出効率Rの向上が図れないことがある。特に、素子の受光面積を小さくする程、素子検出効率Pdを改善できることが知られているにもかかわらず、従来の積層構造素子では、受光面積がファイバコアの面積よりも小さい場合、光カップリング性の悪化が避けられないという問題がある。
【0014】
例えば、MgO基板の機械強度を考慮すると、MgO基板の研磨限界は、厚みで40μm〜50μm程度となると考えられる。よって、基板の厚みが50μmの場合、ファイバコア径が約9μmの光ファイバからの出射光の、基板表面でのスポット径は、ガウシアン近似により15μm程度と見積もれる。このため、このスポット径(15μm程度)よりも小さな積層構造の受光素子については、高効率光結合を実現できない。
【0015】
以上のとおり、単層構造素子および従来の積層構造素子の何れにも、システム検出効率Rの向上において一長一短があり、未だ、SSPDのシステム検出効率Rは改善の余地が充分にあると考えられる。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、積層構造の受光素子のサイズに適合して高効率光結合を実現できる超伝導単一光子検出器を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような超伝導単一光子検出器の実装方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、酸化マグネシウムからなる基板と、前記基板の表面に形成された窒化ニオブ配線と、前記窒化ニオブ配線上に形成されたキャビティ層と、前記キャビティ層上に形成された反射層と、前記基板の裏面に形成された反射防止層と、を有する超伝導単一光子検出素子と、
光ファイバと、前記光ファイバの先端に調芯融着されたレンズと、を有する光伝送手段と、
を備え、
前記窒化ニオブ配線は、所定のバイアス電流が流れるよう、伝送線路を介してバイアス源に接続されて、超伝導状態において使用され、
前記窒化ニオブ配線に光子が入射した際の前記窒化ニオブ配線の抵抗変化に基づいて、前記光子が、前記超伝導単一光子検出素子において1個ずつ検出され、
前記レンズからの出射光が、前記窒化ニオブ配線において所定のビームウェスト直径となるよう、前記レンズの先端から前記窒化ニオブ配線までの距離が調整されている、超伝導単一光子検出器を提供する。
【0018】
これにより、本発明の超伝導単一光子検出器では、受光素子のサイズに適合した高効率光結合を実現できる。このため、小面積(例えば、5×5μm角)から大面積(例えば、15×15μm角)に亘る様々なサイズの受光素子を用いても、超伝導単一光子検出器を、そのシステム検出効率が、従来の超伝導単一光子検出器のそれよりも向上するように構成できる。
【0019】
また、本発明の超伝導単一光子検出器では、前記距離の調整の一例として、前記基板の裏面を削るとよい。
【0020】
これにより、マザー基板の厚み(例えば、400μm)を容易に変更できるので、超伝導単一光子検出器の用途に合わせて、レンズの先端から受光素子までの距離を適宜、調整できる。
【0021】
また、本発明は、上記記載の超伝導単一光子検出素子と上記記載の光伝送手段とを、パーケージブロックに実装する超伝導単一光子検出器の実装方法であって、
前記パーケージブロックに形成された貫通孔にダミー基板を被せることにより、前記ダミー基板上に密着されたクリアランス調整部材を前記貫通孔内に配する工程と、
前記貫通孔内に前記光伝送手段を挿入することにより、前記光伝送手段のレンズの先端を前記クリアランス調整部材に当接させる工程と、
前記ダミー基板を除去して、前記超伝導単一光子検出素子の基板の反射防止層が前記レンズの先端と対置するよう、前記超伝導単一光子検出素子を前記貫通孔に被せる工程と、を含む超伝導単一光子検出器の実装方法を提供する。
【0022】
以上の超伝導単一光子検出器の実装方法により、光伝送手段の先端と超伝導単一光子検出素子の基板(反射防止層)との間の距離に相当するクリアランスが適量に調整でき、ひいては、レンズの先端から窒化ニオブ配線までの距離を適切に設定できる。
【0023】
また、以上のパッケージング方式の実装方法により、SSPDをコンパクトに構成できる。よって、このSSPDは、量子暗号通信などの量子通信分野への利用を考慮した場合の多チャンネル化においてコスト対応力に優れる。
【0024】
また、本発明の超伝導単一光子検出器の実装方法では、前記レンズの先端が前記クリアランス調整部材に当接した状態で、前記光伝送手段を前記パーケージブロックに樹脂材料を用いて固定する工程を更に含んでもよい。
【0025】
これにより、光伝送手段が適切に固定され、上記クリアランスが適量に維持される。
【0026】
また、本発明の超伝導単一光子検出器の実装方法では、前記超伝導単一光子検出素子を前記貫通孔に被せた後、前記超伝導単一光子検出素子を前記パーケージブロックに極低温用接着剤(例:エレクトロンワックス)を用いて固定する工程を更に含んでもよい。
【0027】
以上の極低温用接着剤(例:エレクトロンワックス)により、超伝導単一光子検出素子が、パーケージブロックに適切に固定され、上記クリアランスが適量に維持される。また、超伝導単一光子検出素子とパーケージブロックとの間の熱伝導性が極低温用接着剤(例:エレクトロンワックス)を用いて適切に向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、積層構造の受光素子のサイズに適合して高効率光結合を実現できる超伝導単一光子検出器が得られる。
【0029】
また、このような超伝導単一光子検出器の実装方法も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態のSSPDに用いる超伝導単一光子検出素子の一構成例を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施形態のSSPDに用いる超伝導単一光子検出素子による光子検出法を示した模式図である。
【図3】本発明の実施形態のSSPDに用いる超伝導単一光子検出素子の製造方法の各工程を示した断面図である。
【図4】本発明の実施形態のSSPDの構成の説明およびSSPDの実装方法の説明に用いる図である。
【図5】図4(d)の光伝送部品の先端部の構造を示した図である。
【図6】マイクロレンズから出射された光のビームウェスト距離と、出射光のビームウェスト直径との間の関係を表した計算結果(プロファイル)を示した図である。
【図7】マイクロレンズが融着されたSSPDおよびマイクロレンズが融着されなかったSSPDのそれぞれのシステム検出効率の測定値をプロットした図である。
【図8】受光素子が搭載されたMgO基板の研磨システムを示した図である。
【図9】光ファイバが光ファイバ保持用ブロックに実装された写真を掲載した図である。
【図10】受光素子が搭載されたMgO基板が素子保持用ブロックに実装された写真を掲載した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
なお、全ての図面を通じて、同一ないし相当する構成要素には同じ参照番号を付し、以下、このような構成要素の重複的記載を省略する場合がある。
【0033】
また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。つまり、以下の具体的な説明は、本発明の「超伝導単一光子検出器」の特徴を例示しているに過ぎない。よって、本発明の「超伝導単一光子検出器」を特定した構成要素に対応する用語に適宜の参照符号を付して以下の具体例を説明する場合、当該具体的な装置は、これに対応する本発明の「超伝導単一光子検出器」の構成要素の一例である。
【0034】
例えば、以下に述べる「屈折率分布型のマイクロレンズ75」は、本発明の構成要素である「レンズ」の一例に過ぎない。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態のSSPDに用いる超伝導単一光子検出素子の一構成例を模式的に示した図である。図1(a)は、超伝導単一光子検出素子の受光素子周辺を上方から平面視した図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B線に沿った部分の断面を示した断面図である。
【0035】
図1に示すように、超伝導単一光子検出素子100は、光子Pが酸化マグネシウム(MgO)単結晶基板10(以下、「MgO基板10」と略す)の裏面側から入射する裏面入射式の光キャビティ構造を備える。
【0036】
まず、超伝導単一光子検出素子100の受光素子Sの平面構造について述べる。
【0037】
超伝導単一光子検出素子100の受光素子Sは、平面視においては、図1(a)に示すように、メアンダ状(蛇行形状)のナノワイヤ13を備える。このナノワイヤ13は、例えば、数十〜数百ナノメートル線幅で所定のピッチに形成され、適宜の冷却手段(例えば、GM型冷凍機)を用いて超伝導状態で使用される。
ここで、受光素子Sを平面視したサイズは、超伝導単一光子検出素子100の使用目的に合わせて決めるとよい。例えば、素子検出効率Pdを上げるには、受光素子Sのサイズを小面積(例えば、5×5μm角)にするとよい。一方、受光素子Sのアレイ化によって受光素子Sに付加機構(例えば、光子Pの個数の識別機能)を追加するには、受光素子Sのサイズを大面積(例えば、15×15μm角)にするとよい。
そこで、本実施形態のSSPD200(図4(d)参照)は、小面積から大面積までの様々なサイズの受光素子Sに適合して高効率光結合を実現できることを特徴としているが、その詳細は後述する。
【0038】
なお、このナノワイヤ13は、数ナノメートル(ここでは、6nm)の厚みの窒化ニオブ層13Aを、電子線などを用いてパターニングすることにより製作することができる。
【0039】
また、ナノワイヤ13は、図1(a)および図1(b)に示すように、略U次状の伝送経路15(厚み:150nm)と矩形状の伝送経路15(厚み:150nm)とに接続されている。そして、ナノワイヤ13は、臨界電流を僅かに下回る所望のバイアス電流が流れるように、伝送経路15を介してバイアス源(図示せず)の出力端子に接続されている。このように、伝送経路15は、ナノワイヤ13にバイアス電流を流す経路として機能している。
【0040】
なお、この伝送経路15は、窒化ニオブ層13Aとの接触面で超伝導単一光子検出素子100が破壊され難くする目的で、窒化ニオブ層13Aと同じ材料により構成するとよい。
【0041】
次に、超伝導単一光子検出素子100の受光素子Sの積層構造について述べる。
【0042】
超伝導単一光子検出素子100は、断面視においては、図1(b)に示すように、MgO基板10と、MgO基板10の表面に設けられた積層体101と、MgO基板10の裏面に形成された反射防止層14と、を備える。つまり、受光素子Sは、この積層体101によって構成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、MgO基板10の厚みL1は、例えば、400μm程度のマザー基板の裏面を研磨ことにより、MgO基板10の機械強度から導かれる研磨限界(例えば、40μm〜50μm)まで適宜、設定できる。MgO基板10を平面視したサイズは、例えば、3mm角程度にするとよい。
【0044】
積層体101は、図1(b)に示すように、MgO基板10上に堆積されたベタ状の窒化ニオブ層13Aがパターニングされてなるナノワイヤ13(窒化ニオブ配線)と、このナノワイヤ13を覆うように形成されたキャビティ層12と、キャビティ層12上に形成された反射層11と、を備える。
【0045】
積層体101の反射層11は、ここでは、厚みが約120nmの金属製(例えば、金(Au))の薄膜反射ミラーである。但し、反射層11として、反射率に優れた部材であれば、他の部材(例えば、銀(Ag)の薄膜反射ミラー)を用いてもよい。
【0046】
積層体101のキャビティ層12は、ここでは、一酸化珪素(SiO)からなり、厚みが約250nmに設定された光共振器として機能する層である。但し、キャビティ層12として、他の誘電体材料(例えば、二酸化珪素)を用いてもよい。
【0047】
以上の反射層11およびキャビティ層12によって、MgO基板10の裏面から受光素子Sに入射した光子Pはキャビティ層12内に適切に閉じ込められる。
【0048】
また、反射防止層14は、ここでは、アモルファスフッ素樹脂(旭硝子社製、製品名「サイトップ」(登録商標))からなり、厚みが約200〜300nmに設定され、受光素子S内に光子Pが入る際の反射を防止する無反射コート層である。
【0049】
次に、超伝導単一光子検出素子100の受光素子Sにおける光子Pの検出法について概説する。
【0050】
図2は、本発明の実施形態のSSPDに用いる超伝導単一光子検出素子による光子検出法を示した模式図である。
【0051】
図2に示すように、ナノワイヤ13に光子P(シングルフォトン)が入射すると、光子Pが入射した箇所ではキャップエネルギーを超えることになり、その結果、ホットスポットという常伝導領域A(高抵抗領域)が発生する。この場合、図2の拡大図に示すように、電流Cは、高抵抗の領域Aを迂回するように領域Aの両側のナノワイヤ13の部分に集中的に流れる。すると、領域Aの周囲を流れる電流Cは臨界電流を超え、領域Aの両側の部分も常伝導状態になり、常伝導状態の領域Aは、ナノワイヤ13の幅方向全域に亘るように一時的に広がる。このようにして、常伝導領域Aの発生および常伝導領域Aの超伝導状態への回復過程におけるナノワイヤ13の幅方向全域に亘る抵抗変化に基づいて、ナノワイヤ13に入った光子Pは、電圧信号として1個ずつ適切に検出され、この電圧信号が伝送経路15から外部に取り出される。
【0052】
なお、以上のナノワイヤ13を臨界電流近傍にバイアスすることにより、光子Pを1個ずつ検出できる超伝導単一光子検出素子の検出法自体は公知である(例えば、公知文献としての「IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY, VOL.11, NO.1, MARCH 2001 P574-577」参照)。よって、この検出法の詳細な説明は省略する。
【0053】
また、本実施形態の超伝導単一光子検出素子100では、ナノワイヤ13をメアンダ状に形成しているが、メアンダタイプのナノワイヤについても、上述の公知文献や上述の非特許文献1に記載されている。よって、メアンダ構造のナノワイヤの詳細な説明についても省略する。
【0054】
次に、本実施形態の超伝導単一光子検出素子100の製法について説明する。
【0055】
図3は、本発明の実施形態のSSPDに用いる超伝導単一光子検出素子の製造方法の各工程を示した断面図である。
【0056】
但し、図3では、超伝導単一光子検出素子100の構成要件の一部(例えば、伝送経路15や反射防止層14など)の図示が省略されている。
【0057】
まず、単結晶の酸化マグネシウム(MgO)からなり、厚みが約400μmのマザー基板10A(以下、「MgO基板10A」と略す)の表面(おもて面)上に、ベタ状の窒化ニオブ層13Aが、Nb(ニオブ)ターゲットを用いた直流反応性スパッタリングによりエピタキシャル成膜される。この場合、放電ガスにアルゴンガスを使用し、反応ガスに窒素ガスを使用するとよい。
【0058】
次に、窒化ニオブ層13Aを、電子線リソグラフィなどを活用した微細加工技術を用いてパターニングすると、図3(a)に示すように、ナノワイヤ13を形成することができる。
【0059】
次いで、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、キャビティ層12を堆積するための窓103が、フォトレジスト102に形成される。
【0060】
そして、図3(c)に示すように、一酸化珪素(SiO)からなる厚みが約250nmのキャビティ層12が、フォトレジスト102の窓103内において、ナノワイヤ13を覆うよう、真空蒸着によりMgO基板10A上に成膜される。
【0061】
更に、図3(c)に示すように、金(Au)からなる厚みが約120nmの反射層11が、フォトレジスト102の窓103内において、真空蒸着によりMgO基板10Aのキャビティ層12上に成膜される。
【0062】
次いで、図3(d)に示すように、フォトレジスト102が除去されると、受光素子S(積層体101)が得られる。
【0063】
次いで、図示を省略しているが、MgO基板10Aの厚みの調整が必要となる場合には、MgO基板10Aの裏面を研磨することにより、MgO基板10Aの厚みの調整が行われる。なお、MgO基板10Aの研磨法の一例については、後述の実施例において述べる。一方、MgO基板10の厚みL1(図1参照)を、400μmのままにするときは、上述の研磨工程を省略するとよい。
【0064】
これにより、厚みL1が所望の値に設定されたMgO基板10(図1参照)が得られる。
【0065】
その後、MgO基板10の裏面に反射防止層14(図1参照)が形成される。
【0066】
このようにして、超伝導単一光子検出素子100(図1参照)を製造できる。
【0067】
次に、以上の超伝導単一光子検出素子100が実装されたSSPD200について図面を参照しながら説明する。
【0068】
図4は、本発明の実施形態のSSPDの構成の説明およびSSPDの実装方法の説明に用いる図である。
【0069】
なお、SSPD200の構成については、図4(d)に示されているが、ここでは、超伝導単一光子検出素子100の構成要素の一部(例えば、反射防止層14)の図示が省略されている。
【0070】
図4(d)に示すように、SSPD200の主要な部品(構成要素)として、銅製のパーケージブロック22と、光伝送部品23(光伝送手段)と、超伝導単一光子検出素子100と、がある。
【0071】
光伝送部品23は、ファイバコア径(直径)が9μm程度の光ファイバ心線23Aと、光ファイバ心線23Aを被覆するフェルール23B(光コネクタ)とを備える。
【0072】
また、パーケージブロック22は、超伝導単一光子検出素子100の保持に用いる素子保持用ブロック20と、光ファイバ23の保持に用いる光ファイバ保持用ブロック21とを備える。素子保持用ブロック20の両端面20A、20Bおよび光ファイバ保持用ブロック21の両端面21A、21Bでは、表面仕上げが施されており、平滑面となっている。
【0073】
更に、光伝送部品保持用ブロック21の中央部には、光伝送部品23のフェルール23Bを挿入できる程度の貫通孔21Cが形成されている。また、素子保持用ブロック20の中央部にも、厚みが20μm〜30μm程度のフィルム状のクリアランス調整部材25の外寸よりも大きく、かつ、ダミーのフラット基板26(ダミー基板)の外寸よりも小さい貫通孔20Cが形成されている。なお、貫通孔20Cの外寸は、貫通孔21Cの外寸よりも大きい。また、フラット基板26の外寸は、MgO基板10の外寸と同じ寸法になっている。
【0074】
次に、超伝導単一光子検出素子100と光伝送部品23とを、パッケージブロック22に実装するSSPD200の部品の実装方法について図4を参照しながら説明する。
【0075】
図4(a)および図4(b)に示すように、素子保持用ブロック20の端面20Bと光伝送部品保持用ブロック21の端面21Aとが互いに密着するよう、両者は固定ボルト(図示せず)によって締結され、これにより、パーケージブロック22が使用される。そして、この場合、光伝送部品保持用ブロック21の貫通孔21Cの中心軸と、素子保持用ブロック20の貫通孔20Cの中心軸と、がほぼ一致するよう、素子保持用ブロック20および光伝送部品保持用ブロック21は互いに固定される。よって、このような一対の貫通孔20C、21Cが、パーケージブロック22に形成された貫通孔として機能する。
【0076】
なお、素子保持用ブロック20は、図示しないボルト締結部の遊びにより、その端面20Aの面内方向に僅かに動かすこともできる。このため、図4(d)のSSPD200では、光伝送部品23から光を出射されることにより、受光素子Sの面内方向の光伝送部品23との間の位置を、当該出射光の目視により調整できる。
【0077】
以上のパーケージブロック22において、図4(b)に示すように、貫通孔20Cにフラット基板36を被せることにより、このフラット基板26の表面上に密着されたクリアランス調整部材25を貫通孔20C内に配置させる。
【0078】
次に、図4(b)に示すように、貫通孔21C、20C内に光伝送部品23のフェルール23Bを挿入することにより、フェルール23Bの先端(ファイバ端)をクリアランス調整部材25に当接させる。
【0079】
次いで、図4(c)に示すように、光伝送部品23のフェルール23Bの先端がクリアランス調整部材25に当接した状態で、フェルール23Bの後部を、光伝送部品保持用ブロック21にエポキシ樹脂24を用いて固定する。これにより、光伝送部品23が、光伝送部品保持用ブロック21に適切に固定され、クリアランスL2が適量に維持される。
【0080】
最後に、図4(d)に示すように、フラット基板26を除去して、超伝導単一光子検出素子100のMgO基板10に形成された反射防止層14(図4では図示省略)が光伝送部品23のフェルール23Bの先端と対置するよう、超伝導単一光子検出素子100を貫通孔20Cに被せる。
【0081】
以上のSSPD200の実装により、MgO基板10(反射防止層14)とフェルール23Bの先端(後述のマイクロレンズ75の先端)との間の距離に相当するクリアランスL2が、適量(例えば、20μm〜30μm程度)に調整されたSSPD200が得られる。
【0082】
そして、このようなパーケージング方式のSSPD200では、ナノステージ方式の実装(詳細な説明は省略)と比べて極めて高価なステージが不要となり、コンパクトに構成できる。よって、このSSPD200は、量子暗号通信などの量子通信分野への利用を考慮した場合の多チャンネル化においてコスト対応力に優れる。
【0083】
また、超伝導単一光子検出素子100を貫通孔20Cに被せた後、この超伝導単一光子検出素子100のMgO基板10を素子保持用ブロック20に、極低温用接着剤の一例であるエレクトロンワックス(詳細は後述)を用いて固定すると、両者間の熱伝導性を向上できるので都合がよい。よって、GM冷凍機(図示せず)を用いて、銅製のパーケージブロック22を極低温(4K程度)に冷却する場合に、超伝導単一光子検出素子100を効率的に超伝導状態にできる。
【0084】
ところで、本実施形態のSSPD200では、光伝送部品23の先端部T(図4(d)参照)の構造にも特徴がある。
【0085】
図5は、図4(d)の光伝送部品の先端部の構造を示した拡大図である。図5(a)には、光伝送部品23の先端部Tの断面が図示されている。図5(b)には、図5(a)のVB−VBでの光ファイバ72の先端が図示されている。図5(c)には、図5(a)のVC−VCでの屈折率分布型のマイクロレンズ75の先端が図示されている。
【0086】
図5(a)および図5(b)に示すように、光ファイバ72は、フェルール23Bの先端からマイクロレンズ75の長さ分だけ、後退している。つまり、フェルール23Bの先端と、マイクロレンズ75の先端と、が丁度一致するように、両者は配されている。なお、光ファイバ72は、ファイバコア径(直径)が約9μmのコア71とコア71を被覆するクラッド70と、を備える。
【0087】
一方、図5(a)および図5(c)に示すように、マイクロレンズ75は、低NAレンズ73と高NAレンズ74とからなる屈折率分布型となっており、これらのレンズ73、74が、光ファイバ72の先端に調芯融着されている。これにより、光ファイバ72のコア71によって伝送された光がマイクロレンズ75を用いて集光される。
【0088】
なお、以上の光伝送部品23として、例えば、東洋ガラス株式会社製のシリカグリンコンデンサ(登録商標)を用いることができる。よって、光伝送部品23の各構成要素の詳細な説明は、ここでは省略する。
【0089】
次に、光伝送部品23のマイクロレンズ75による光の集光性能について説明する。
【0090】
図6は、マイクロレンズから出射された光のビームウェスト距離と、出射光のビームウェスト直径との間の関係を表した計算結果(プロファイル)を示した図である。
図6では、低NAレンズ73のNAと、高NAレンズ74のNAと、が、それぞれパラメータに取られ、合計4つのプロファイルが示されている。なお、図6のプロファイルの計算では、光ファイバ伝送に最も適した通信波長1550nmの通信路用シングルモード光ファイバ(SMF)を用いている。また、コア径が9μmの光ファイバのファイバ端でのモードフィールド径(MFD)を、1550nmの通信路用シングルモード光ファイバ(SMF)の場合の光のクラッド領域への漏れ出しを考慮して、10.4μmとしている。また、マイクロレンズ75からの出射光が伝搬する雰囲気は空気としている。
【0091】
図6に示すように、何れのプロファイルも同じ傾向を持ち、出射光のビームウェスト距離「L」が約100μm付近では、出射光のビームウェスト直径「2ω」が4μm〜5μm程度にまで、スポット径を小さくできることが分かる。よって、この場合、受光素子Sのサイズを小面積(例えば、5×5μm角)にして、素子検出効率Pdを上げるとともに、受光素子Sの高効率光結合を実現するときに都合がよい。
【0092】
そして、出射光のビームウェスト距離「L」(約100μm付近)に、光伝送部品23の先端(マイクロレンズ75の先端)と受光素子Sとの間の距離(L1+L2)を合わせるには、MgO基板10の厚みL1の調整(例えば、MgO基板10の厚みL1を50μm程度まで研磨)、および、クリアランスL2の調整を行うとよい。MgO基板10の厚みL1の調整は、MgO基板10Aの研磨(後述)により適切に行える。また、クリアランスL2の調整は、図4に示した実装により適切に行える。
【0093】
また、図6に示すように、出射光のビームウェスト距離「L」が約430μm付近では、出射光のビームウェスト直径「2ω」が11μm〜12μm程度にまで、スポット径を大きくできることが分かる。よって、この場合、受光素子Sのサイズを大面積(例えば、15×15μm角)にして、受光素子Sのアレイ化によって受光素子Sに付加機構(例えば、光子Pの個数の識別機能)を追加するとともに、受光素子Sの高効率光結合を実現するときに都合がよい。
【0094】
そして、出射光のビームウェスト距離「L」(約430μm付近)に、光伝送部品23の先端(マイクロレンズ75の先端)と受光素子Sとの間の距離(L1+L2)を合わせるには、MgO基板10を研磨せずに、クリアランスL2の調整のみを行うとよい。クリアランスL2の調整は、図4に示した実装により適切に行える。
【0095】
以上により、MgO基板10を研磨せずに済むので、SSPD200の製造プロセスの簡素化およびMgO基板10の機械強度の充分な確保が可能になる。
【0096】
なお、ここでは、MgO基板10の厚みL1が両極端の場合(L1=50μm、L1=400μmの場合)を例示したが、これに限らない。本実施形態のSSPD200では、受光素子Sの面積に応じた、MgO基板10の厚みとマイクロレンズ75のレンズ設計との間の好適な組合せにより、SSPD75の機械強度および製造プロセスの最適化を図ることができる。
【0097】
次に、SSPD200のシステム検出効率Rの、マイクロレンズ75の有無による依存性について実験検証した結果の一例を述べる。
【0098】
図7は、マイクロレンズが融着されたSSPD(「レンズ付きSSPD」という)およびマイクロレンズが融着されなかったSSPD(「レンズなしSSPD」という)のそれぞれのシステム検出効率の測定値をプロットした図である。
【0099】
図7の横軸には、システムの雑音に相当する暗計数(c/s;カウント/秒)が取られ、図8の縦軸には、システム検出効率R(%)が取られている。
【0100】
本検証実験では、光ファイバ伝送に最も適した通信波長1550nmの通信路用シングルモード光ファイバ(SMF)が用いられ、15×15μm角の受光素子Sが用いられている。また、MgO基板10の裏面を研磨せずに、その厚みL1は、400μm程度となっている。また、クリアランスL2は、約30μm程度となっている。
【0101】
なお、光ファイバのコア径は約9μmであるが、上述のとおり、1550nmの通信路用シングルモード光ファイバ(SMF)の場合、光のクラッド領域への漏れ出しにより、MFDは、10.4μm程度となる。
【0102】
図7に示すように、所望の暗計数(10c/s)において、レンズなしSSPDのプロット(図7の黒丸)のシステム検出効率Rが約2.5%であったのに対し、レンズ付きSSPDのプロット(図7の白丸)のシステム検出効率Rが約20%であった。また、図7から容易に理解できるとおり、全ての暗計数に亘って、レンズ付きSSPDのシステム検出効率Rが、レンズなしSSPDのそれよりも高くなっている。
【0103】
よって、SSPD200の高効率光結合を図るときのマイクロレンズ75の有用性を検証できた。
【0104】
以上のとおり、本実施形態のSSPD200では、マイクロレンズ75からの出射光が、窒化ニオブ配線13が形成された受光素子Sにおいて所定のビームウェスト直径「2ω」となるよう、マイクロレンズ75の先端から受光素子Sまでの距離が調整されている。
【0105】
また、本実施形態のSSPD200では、上記距離の調整の一例として、MgO基板10Aの裏面を削っている。
【0106】
これにより、MgO基板10Aの厚み(例えば、400μm)を容易に変更できるので、SSPD200の用途に合わせて、マイクロレンズ75の先端から受光素子Sまでの距離を適宜、調整できる。
【0107】
つまり、本実施形態のSSPD200では、受光素子Sのサイズに適合した高効率光結合を実現できる。このため、小面積(例えば、5×5μm角)から大面積(例えば、15×15μm角)に亘る様々なサイズの受光素子Sを用いても、SSPD200を、そのシステム検出効率Rが、従来のSSPDのそれよりも向上するように構成できる。
【0108】
なお、本明細書においては、本実施形態のSSPD200の用途として、量子通信分野を述べたが、これはあくまで一例に過ぎない。SSPD200は、量子通信分野への利用の他、テラヘルツ(THz)エレクトロニクス技術、X線観測技術、質量分析技術などの様々なエネルギー粒子検出分野に応用できる。
【実施例】
【0109】
以下、MgO基板10Aの裏面の研磨法の一例および本実施形態のSSPD200の実装例について述べる。
(MgO基板10Aの裏面の研磨法)
図8は、受光素子が搭載されたMgO基板の研磨システムを示した図である。
【0110】
図8に示すように、受講素子S(図8では図示せず)が搭載されたMgO基板10Aが、台座61にセットされている。そして、この台座61上のMgO基板10Aの裏面が、研磨シート60によって機械的に研磨され、MgO基板10Aの研磨量がマイクロメータ62によってリアルタイムにモニターされている。
【0111】
なお、ここでの研磨システムの詳細は、以下のとおりである。
【0112】
研磨機: ALLIED社製 MULTI PREPTM(商標)システム
研磨シート60:ALLIED社製 DIAMOND LAPPING FILM(8インチDISK)
研磨シート60中のダイヤモンド粒径:3μm、または、5μm
ステージ回転速度:120rpm
研磨レート:3μm/分(5μmの研磨シート60の使用時)
:1μm/分(3μmの研磨シート60の使用時)
以上のMgO基板10Aの裏面の研磨法によれば、MgO基板10Aの厚みをリアルタイムにモニターしながらMgO基板10Aの裏面を研磨できるので、MgO基板10Aを所望の厚さに容易に制御できる。
(SSPD200の実装例)
図9では、光伝送部品23が光伝送部品保持用ブロック21に実装された写真が掲載されている。
【0113】
また、図10では、受光素子Sが搭載されたMgO基板10が、素子保持用ブロック20に実装された写真が掲載されている。
【0114】
図10に示すように、SSPD200(図4参照)は、パーケージング方式の実装を用いてコンパクトに構成されている。よって、このSSPD200は、量子暗号通信などの量子通信分野への利用を考慮した場合の多チャンネル化においてコスト対応力に優れる。
【0115】
また、図10に示すように、素子保持用ブロック20の表面には、MgO基板10の外寸と同寸法の凹部が形成され、凹部の近傍に同軸コネクタ51が配されている。
【0116】
そして、この凹部内にMgO基板10が嵌め込まれ、MgO基板10の四隅と素子保持用ブロック20の表面とを跨ぐように、極低温用接着剤(本例ではエレクトロンワックス)50が配されている。このエレクトロンワックス50により、MgO基板10が、素子保持用ブロック20に適切に固定され、クリアランスL2が適量に維持される。また、MgO基板10と素子保持用ブロック20との間の熱伝導性がエレクトロンワックス50を用いて適切に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、積層構造の受光素子のサイズに適合して高効率光結合を実現できる超伝導単一光子検出器が得られる。
【0118】
よって、本発明は、光ファイバ伝送に最も適した通信波長でのシステム検出効率の向上を図れ、例えば、量子暗号通信などの量子通信分野の検出素子にとして利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
10、10A MgO基板
11 反射層
12 キャビティ層
13 ナノワイヤ
13A 窒化ニオブ層
14 反射防止層
15 伝送経路
20 素子保持用ブロック
21 光伝送部品保持用ブロック
22 パーケージブロック
23 光伝送部品
23A 光ファイバ心線
23B フェルール
24 エポキシ樹脂
25 クリアランス調整部材
26 フラット基板
50 極低温用接着剤(エレクトロンワックス)
51 同軸コネクタ
60 研磨シート
61 台座
62 マイクロメータ
70 クラッド
71 コア
72 光ファイバ
73 低NAレンズ
74 高NAレンズ
75 マイクロレンズ
101 積層体
102 フォトレジスト
103 フォトレジストの窓
100 超伝導単一光子検出素子
200 超伝導単一光子検出器(SSPD)
L1 MgO基板の厚み
L2 クリアランス
S 受光素子
P 光子
Pc 光カップリング効率
Pa 光吸収効率
Pd 素子検出効率
R システム検出効率
T 光伝送部品の先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウムからなる基板と、前記基板の表面に形成された窒化ニオブ配線と、前記窒化ニオブ配線上に形成されたキャビティ層と、前記キャビティ層上に形成された反射層と、前記基板の裏面に形成された反射防止層と、を有する超伝導単一光子検出素子と、
光ファイバと、前記光ファイバの先端に調芯融着されたレンズと、を有する光伝送手段と、
を備え、
前記窒化ニオブ配線は、所定のバイアス電流が流れるよう、伝送線路を介してバイアス源に接続されて、超伝導状態において使用され、
前記窒化ニオブ配線に光子が入射した際の前記窒化ニオブ配線の抵抗変化に基づいて、前記光子が、前記超伝導単一光子検出素子において1個ずつ検出され、
前記レンズからの出射光が、前記窒化ニオブ配線において所定のビームウェスト直径となるよう、前記レンズの先端から前記窒化ニオブ配線までの距離が調整されている、超伝導単一光子検出器。
【請求項2】
前記距離の調整は、前記基板の裏面を削ることにより行われる請求項1に記載の超伝導単一光子検出器。
【請求項3】
請求項1に記載の超伝導単一光子検出素子と請求項1に記載の光伝送手段とを、パーケージブロックに実装する超伝導単一光子検出器の実装方法であって、
前記パーケージブロックに形成された貫通孔にダミー基板を被せることにより、前記ダミー基板上に密着されたクリアランス調整部材を前記貫通孔内に配する工程と、
前記貫通孔内に前記光伝送手段を挿入することにより、前記光伝送手段のレンズの先端を前記クリアランス調整部材に当接させる工程と、
前記ダミー基板を除去して、前記超伝導単一光子検出素子の基板の反射防止層が前記レンズの先端と対置するよう、前記超伝導単一光子検出素子を前記貫通孔に被せる工程と、
を含む超伝導単一光子検出器の実装方法。
【請求項4】
前記レンズの先端が前記クリアランス調整部材に当接した状態で、前記光伝送手段を前記パーケージブロックに樹脂材料を用いて固定する工程を更に含む請求項3に記載の超伝導単一光子検出器の実装方法。
【請求項5】
前記超伝導単一光子検出素子を前記貫通孔に被せた後、前記超伝導単一光子検出素子を前記パーケージブロックに極低温用接着剤を用いて固定する工程を更に含む請求項3または4に記載の超伝導単一光子検出器の実装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−176159(P2011−176159A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39628(P2010−39628)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】