説明

超伝導磁石装置および磁気共鳴イメージング装置

【課題】液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、磁性体を強固に支持する。
【解決手段】超伝導磁石装置1は、撮像領域FOVを挟んで上下に対向配置され、磁場を発生する少なくとも一対のメインコイル11、およびメインコイル11と逆方向の磁場を発生する少なくとも一対のシールドコイル12と、メインコイル11およびシールドコイル12を液体ヘリウム中に収納する液体ヘリウム容器30と、液体ヘリウム容器30を内包して真空断熱する真空容器10A,10Bと、を有し、真空容器10A,10B内における液体ヘリウム容器30の外部に設けられた断熱材を介して、液体ヘリウム容器30に直接支持される磁性体を備え、磁性体の反撮像領域FOV側には、磁性体を所定の温度まで冷却するための冷却手段が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導コイルを用いた高磁場オープン型の超伝導磁石装置および磁気共鳴イメージング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超伝導コイルを用いて静磁場を生成する超伝導磁石装置を用いた磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置は、特に、医療診断の分野で広く利用されている。オープン型磁気共鳴イメージング装置では、被検体へのアクセスを容易にし、また、被検体のへ閉塞感を低減するために、被検体が仰臥するために十分なガントリーキャップを設けて、撮像領域(赤道面を含む領域)を挟んで上下に磁極が対局配置されている。
上下の各磁極には、超電導コイルを冷却するための液体ヘリウム容器が設置されており、超伝導コイルは、この液体ヘリウム容器内に充填された液体ヘリウムに浸されている。
液体ヘリウム容器の外側には、外部からの熱侵入を低減するための輻射シールドが設置され、さらにその外側には真空断熱層を挟んで真空容器が設置されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のMRI装置では、磁性体の磁化の温度変化を抑えるために、磁場均一度を調整するための磁性体を、液体窒素温度に冷却した輻射シールド内に設置し、これを輻射シールドから支持するものが開示されている。
しかしながら、輻射シールドには反射率の高いアルミ合金等が用いられており、アルミ合金は、ステンレス鋼に比べて強度が低いものであるため、結果的にシールド厚が分厚くなってしまい、内包される磁性体は、撮像領域から離れた位置に設置せざるを得ない。このため、撮像領域の磁場均一度が劣化するおそれがあった。また、磁性体を支持している輻射シールドと超電導コイルを内包する液体ヘリウム容器との間に、振動等に起因する相対変位が生じた場合にも、撮像領域の磁場均一度が劣化するおそれがあった。
【0004】
この点、特許文献2に記載のMRI装置では、磁性体を撮像領域に近付けるために、輻射シールドの外に磁性体が設置されたものが開示されている。また、コイルと補正鉄の相対変位を抑制するために、コイルボビンを接合した液体ヘリウム容器から、断熱材を用いた荷重支持体を介して磁性体が支持されたものが開示されている。
そして、このMRI装置では、磁性体を設置する位置を調整して磁性体に加わる電磁力を低減し、荷重支持体の断面積を低減することにより、室温にある磁性体から液体ヘリウム容器への熱侵入量を液体ヘリウム系の熱侵入量の許容値以下に制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−143853号公報
【特許文献2】特開2008−130707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、磁気共鳴イメージング装置では、より鮮明な画像を得るために装置の高磁場化が進んでいる。ここで、磁気共鳴イメージング装置を高磁場化するには、超電導コイルの起磁力を増加する手法と、磁性体を増加する手法との二通りの手法がある。
このうち、超電導コイルの起磁力を増加する手法では、コイルの線材長の増加によるコスト増加を招き、また、コイルの最大経験磁場が高くなることから、超電導コイルのクエンチが発生し易くなる。超電導コイルのクエンチは、高価な液体ヘリウムの消費量を増大させるだけでなく、医療機関における診療スケジュールの遅延を招来するため、極力発生させたくない。
そこで、コスト低減および超電導コイルのクエンチを低減するという観点からは、超電導コイルの起磁力の増加を必要最小限に抑えて、磁性体を増加させるようにすることが望ましい。
【0007】
一方、磁性体を増加させると、磁性体に加わる電磁力の増加を招く。このため、液体ヘリウム容器から磁性体を支持している荷重支持体の断面積を増加する必要がある。ところが、荷重支持体の断面積の増加は、液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くこととなるため、所定の時間内に装置の冷却を完了するためには、熱侵入量の増加に応じた液体ヘリウム用冷凍機の増強が必要となってくる。このため、コストが増加するという問題が生じる。
【0008】
ここで、前記特許文献2では、断熱材を用いた荷重支持体で液体ヘリウム容器から磁性体を支持している。しかしながら、磁性体は室温にあるたため、冷却時には、液体ヘリウム容器のみが熱収縮する。このため、特に径方向の荷重支持体に熱応力が発生し、この熱応力を緩和する構造が不可欠となる。
そこで、荷重支持体にばねをつけて熱応力を緩和することが考えられる。しかし、そのような構造にすると、ばね定数のバラツキにより磁性体が本来の位置から変位して、磁場均一度の劣化を生じるおそれがある。このような磁場均一度の劣化が生じるのを避けるためには、高品質のばねを高精度で加工して精度よく設置する必要があるが、製造コストの増加を招く。
【0009】
このような観点から、本発明は、液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、磁性体を強固に支持することができる超伝導磁石装置および磁気共鳴イメージング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するための手段として本発明の超伝導磁石装置は、撮像領域を挟んで上下に対向配置され、磁場を発生する少なくとも一対のメインコイル、および前記メインコイルと逆方向の磁場を発生する少なくとも一対のシールドコイルと、前記メインコイルおよび前記シールドコイルを液体ヘリウム中に収納する液体ヘリウム容器と、前記液体ヘリウム容器を内包して真空断熱する真空容器と、を有する超伝導磁石装置であって、前記真空容器内における前記液体ヘリウム容器の外部に設けられた断熱材を介して、前記液体ヘリウム容器に直接支持される磁性体を備え、前記磁性体の反撮像領域側には、前記磁性体を所定温度まで冷却するための冷却手段が設けられている構成とした。これにより、磁性体を所定温度(例えば、室温より低く液体ヘリウム温度より高い温度、略液体窒素温度等)まで冷却することができ、荷重支持体の断面積を増加させた場合においても、液体ヘリウム容器等の液体ヘリウム系への熱侵入量を許容値以下に抑制することができる。したがって、液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、磁性体を強固に支持することができる。また、冷却手段は、磁性体の反撮像領域側に設けられているので、磁性体を撮像領域側に近付けることができ、磁場均一度を向上させることが可能となる。
また、本発明の超伝導磁石装置を用いた磁気共鳴イメージング装置によれば、装置の高磁場化が可能となり、より鮮明な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、磁性体を強固に支持することができる超伝導磁石装置および磁気共鳴イメージング装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示した説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態の磁気共鳴イメージング装置に適用される超伝導磁石装置の構造を示した模式断面図である。
【図3】超伝導磁石装置の主たる構造を示した模式平面図である。
【図4】流路の変形例を示した模式断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の磁気共鳴イメージング装置に適用される超伝導磁石装置を示した模式断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の磁気共鳴イメージング装置に適用される超伝導磁石装置を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の超伝導磁石装置を用いた磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)の第1実施形態を図面を参照して詳細に説明する。MRI装置は、図1に示すように、超伝導磁石装置1と、被検体Hを乗せるベッド2と、このベッド2に乗せられた被検体Hを撮像領域FOV(Field of View)へ搬送する、図示しない駆動機構が設けられた搬送手段3と、この搬送手段3によって撮像領域FOVに搬送された被検体Hからの核磁気共鳴信号を解析するコンピュータ等の機器を含んだ解析手段4とから構成され、ベッド2に乗った被検体Hを通して断層撮影を行うものである。ここで、図2中符号Zを付して示した軸線は、超伝導磁石装置1の中心を通る中心軸であり、また、符号Xを付して示した軸線は、中心軸Zに交わるとともに撮像領域FOVの中心部を横切る水平軸(赤道面を通る軸)である。
【0014】
本実施形態の超伝導磁石装置1は、撮像領域FOVを挟んで上下に配置された一対の真空容器10A,10Bが支柱10aにより連結されている。超伝導磁石装置1の起磁力は、図2に示すように、赤道面(水平軸X)に関して対向配置され、真空容器10A,10B内にそれぞれ配置されたメインコイル11、シールドコイル12、第1磁性体21、および第2磁性体22から構成されている。ここで、一対の真空容器10A,10Bは、同様の構成であるので、以下においては、主として上側の真空容器10Aの構成部材について説明し、適宜下側の真空容器10Bの構成部材について説明する。
【0015】
メインコイル11およびシールドコイル12は、液体ヘリウム容器30内に収納された共通のコイルボビン13に巻き付けられており、いずれも環状に形成されている。
メインコイル11は、図2中矢印Z1の向きの磁場を発生する超伝導コイルであり、また、シールドコイル12は、漏洩磁場を抑えるため、メインコイル11と逆向きに電流が流される超伝導コイルである。シールドコイル12は、超伝導磁石装置1の撮像領域FOVから最も遠い部位に位置しており、これによって、超伝導磁石装置1の側方へ漏れる漏洩磁場を抑制している。
ここで、メインコイル11およびシールドコイル12のコイル線材としては、例えば、NbTi線材が用いられる。
なお、コイルボビン13は、液体ヘリウム容器30の天板31に内側から直接接合されて固定されている。ここでは、コイルボビン13を利用して、メインコイル11およびシールドコイル12を設けたが、これに限られることはなく、図示しない超伝導補正コイル等をコイルボビン13に対して設けてもよい。また、コイルボビン13は、メインコイル11、シールドコイル12毎に液体ヘリウム容器30内に別々に設けられていてもよい。
【0016】
液体ヘリウム容器30は、密閉可能な容器であり、内部には、超伝導用冷媒として液体ヘリウムが充填されている。液体ヘリウム容器30内において、メインコイル11およびシールドコイル12は、充填された液体ヘリウムによって冷却されて、超電導状態を保持している。
液体ヘリウム容器30の外側には、液体ヘリウム容器30への熱侵入を抑制するための反射率の高いアルミ合金等からなる輻射シールド32が液体ヘリウム容器30の周囲を覆うように設置されている。輻射シールド32は、真空断熱層を挟んで真空容器10A内に設置されている。
なお、液体ヘリウム容器30には、この液体ヘリウム容器30の内部に液体ヘリウムを注入するための図示しない液体ヘリウム注液管が連結されており、また、液体ヘリウム容器30の内部の気相状態のヘリウムガスを排出するための図示しないヘリウムガス排出管等が連結されている。
【0017】
また、液体ヘリウム容器30を構成している天板31には、第1磁性体21を支持するための荷重支持体40と、第2磁性体22を支持するための荷重支持体41が設けられている。
荷重支持体40,41は、剛性を有するとともに断熱性を有する材料からなる柱状の部材である。このうち荷重支持体40は、第1磁性体21および第2磁性体22を鉛直方向(中心軸Zに沿う方向)に支持するために、液体ヘリウム容器30と第1磁性体21との間に設けられている。
【0018】
具体的に、荷重支持体40は、上側の真空容器10A内において、天板31の下面から下方へ垂設され、第1磁性体21の上面(反撮像領域FOV側となる面、冷却板50の上面)に接続されて第1磁性体21を支持している。
また、荷重支持体40は、下側の真空容器10B内において、天板31の上面から上方へ突設され、第1磁性体21の下面(反撮像領域FOV側となる面、冷却板50の下面)に接続されて第1磁性体21を支持している。
このような荷重支持体40は、図3に示すように、第1磁性体21の周方向に所定の間隔を空けて複数本設けられており、本実施形態では、計8本設けられている。
なお、荷重支持体40は、冷却板50に対してではなく、第1磁性体21に対して、直接接続されるように構成してもよい。
【0019】
一方、荷重支持体41は、第1磁性体21および第2磁性体22を水平方向(赤道面に沿う方向、水平軸Xに沿う方向)に支持するために、液体ヘリウム容器30と第2磁性体22との間に設けられている。
【0020】
具体的に、荷重支持体41は、上側の真空容器10A内において、天板31の上面に取付部材41aを介して一端(真空容器10Aの径方向外側端)が接続され、他端(真空容器10Aの径方向内側端)が取付部材41bを介して第2磁性体22の上面(反撮像領域FOV側となる面、冷却板55の上面)に接続されている。
また、荷重支持体41は、下側の真空容器10B内において、天板31の下面に取付部材41aを介して一端(真空容器10Bの径方向外側端)が接続され、他端(真空容器10Bの径方向内側端)が取付部材41bを介して第2磁性体22の下面(反撮像領域FOV側となる面、冷却板55の下面)に接続されている。
なお、荷重支持体41は、冷却板55に対してではなく、第2磁性体22に対して、直接接続されるように構成してもよい。
以上のような荷重支持体40,41は、輻射シールド32に形成された貫通孔32a,32bにそれぞれ挿通されて、輻射シールド32と非接触状態に挿通配置されている。
【0021】
第1磁性体21は、図3に示すように、環状を呈しており、液体ヘリウム容器30の内径よりも外径が小さくされて液体ヘリウム容器30を覆う輻射シールド32(図2参照)の径方向内側に配置されている。そして、第1磁性体21は、前記したように、荷重支持体40を介して真空容器10A内における液体ヘリウム容器30の天板31に直接支持されており、その図示しない中心軸は、メインコイル11(シールドコイル12)の中心軸Z(図2参照)に合致している。
このような第1磁性体21には、図2に示すように、反撮像領域FOV側となる面、つまり、上側の真空容器10A内においては第1磁性体21の上面、また、下側の真空容器10B内においては第1磁性体21の下面に、冷却手段として機能する冷却板50が設けられている。
また、第1磁性体21の上面(下側の真空容器10Bにあっては下面)を除く周面は、断熱膜(断熱材)25で覆われている。断熱膜25は、例えば、ポリエステルなどの合成繊維にアルミを蒸着した積層構造のスーパーインシュレータを用いることができる。
【0022】
冷却板50は、第1磁性体21の上面(下側の真空容器10B内においては下面)に取り付けられる円環板状の部材であり、熱伝導性に優れた材料、例えば、ステンレス合金、アルミニウム合金、銅合金等からなる。冷却板50の内部には、液体窒素が一方向に通流する流路51が設けられている。これにより冷却板50は、略液体窒素温度(所定の温度)まで冷却されることとなる。
【0023】
流路51は、図3に示すように、冷却板50の周方向に沿って冷却板50の周方向略全体に行き渡るように平面視で円弧状に配設されており、一端が上面縁部に設けられた導入口51aに接続され、他端が同じく導出口51bに接続されている。導入口51aおよび導出口51bには、超伝導磁石装置1の外部に設けられた図示しない窒素供給回収装置に設けられた供給管、回収管が接続されるようになっている。
【0024】
第2磁性体22は、図2に示すように、外面が段状とされた円柱状を呈しており、第1磁性体21の外径よりも外径がさらに小さくされて、第1磁性体21の径方向内側に配置されている(図3参照)。そして、第2磁性体22は、前記したように、荷重支持体41(取付部材41a,41bを介して真空容器10A内における液体ヘリウム容器30の天板31に水平方向に直接支持されており、その図示しない中心軸は、メインコイル11(シールドコイル12)の中心軸Z(図2参照)に合致している。
このような第2磁性体22には、図2に示すように、反撮像領域FOVとなる側、つまり、上側の真空容器10A内においては第2磁性体22の上面、また、下側の真空容器10B内においては第2磁性体22の下面に、冷却手段として機能する冷却板55が設けられている。
また、第2磁性体22の上面(下側の真空容器10Bにあっては下面)を除く周面は、スーパーインシュレータ等の断熱膜25で覆われている。
【0025】
冷却板55は、第2磁性体22の上面(下側の真空容器10B内においては下面)に取り付けられる円板状の部材であり、熱伝導性に優れた材料、例えば、ステンレス合金、アルミニウム合金、銅合金等からなる。冷却板55の内部には、液体窒素が一方向に通流する流路56が設けられている。これにより冷却板55は、略液体窒素温度(所定の温度)まで冷却されることとなる。
【0026】
流路56は、図3に示すように、冷却板55の周方向に沿って冷却板55の周方向略全体に行き渡るように平面視で略円形状に配設されており、一端が上面縁部に設けられた導入口55aに接続され、他端が同じく導出口55bに接続されている。導入口55aおよび導出口55bには、前記した冷却板50と同様に、超伝導磁石装置1の外部に設けられた図示しない窒素供給回収装置に設けられた供給管、回収管が接続されるようになっている。
なお、図3において、流路56は模式的に示しており、図示しない荷重支持体41が設けられる部分では、適宜これを迂回するように設けられている。また、図3において、荷重支持体40は、その水平断面を円形で示しているが、荷重支持体40,41の断面形状は円形に限らず、加工しやすいように適宜変更してもよい。さらに、軸方向に沿って断面積を変更することも可能である。
また、流路51や流路56に対して、他の冷却媒体を通流させて冷却板50および冷却板55を冷却するように構成してもよい。この場合、他の冷却媒体としては、第1磁性体21および第2磁性体22を室温より低く液体ヘリウム温度より高い温度(所定の温度)まで冷却することのできるものであることが望ましい。
【0027】
このような第1磁性体21と第2磁性体22とは、図2、図3に示すように、連結部材60で連結されている。連結部材60は、図2、図3に示すように、水平方向の荷重支持体41と同一の垂直面内に設置するほか、荷重支持体41とは中心軸から水平方向に角度をずらして設置することも可能である。
なお、連結部材60を伝熱材、例えば、アルミニウム合金、ステンレス合金等で構成して、第1磁性体21と第2磁性体22との間で連結部材60を介して伝熱作用が得られるように構成してもよい。
【0028】
以下では、本実施形態において得られる効果を説明する。
(1)真空容器10A(10B)内における液体ヘリウム容器30の外部に設けられた荷重支持体40,41を介して、第1磁性体21,第2磁性体22が液体ヘリウム容器30に直接支持されており、第1磁性体21および第2磁性体22の反撮像領域FOV側には、第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度までそれぞれ冷却するための冷却板50,55がそれぞれ設けられているので、第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度まで冷却することができる。したがって、荷重支持体40,41の断面積を増加させた場合においても、液体ヘリウム容器30を含む液体ヘリウム系への熱侵入量を可及的に小さな値にすることができ、熱侵入量を許容値以下に抑制することができる。
これによって、液体ヘリウム容器30を含む液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、第1磁性体21および第2磁性体22を強固に支持することができる。
例えば、特許文献2に記載されたもの(磁性体が室温であるもの)に比べて本実施形態では、第1磁性体21および第2磁性体22と、液体ヘリウム容器30との温度差を約1/4に低減することができる。
(2)冷却板50,55は、第1磁性体21の反撮像領域FOV側、第2磁性体22の反撮像領域FOV側にそれぞれ設けられているので、第1磁性体21および第2磁性体22自体を撮像領域FOV側に近付けることができるようになり、その結果、磁場均一度を向上させることが可能となる。
なお、図4に示すように、第1磁性体21および第2磁性体22の磁性体内に流路57をそれぞれ設け、この流路57に対して液体窒素が直接通流するように構成してもよい。なお、流路57は、蓋部材57aで閉じることで、密閉することができる。
このように構成することによって、冷却板50,55による冷却と流路57を通じて行われる冷却とによって、より一層好適に、第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度まで冷却することができる。
これによって、液体ヘリウム容器30を含む液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、第1磁性体21および第2磁性体22を強固に支持することができる。
また、液体ヘリウム系の冷凍機増設によるコストアップを防止することが可能となる。
(3)第1磁性体21および第2磁性体22は、外表面(冷却板50,55が設けられる面を除いた面)が断熱膜(断熱材)で覆われているので、第1磁性体21および第2磁性体22に対する外部からの熱侵入を抑制することができ、第1磁性体21および第2磁性体22が冷却板50,55で冷却されることとの相乗効果により、第1磁性体21および第2磁性体22が略液体窒素温度まで好適に冷却されることとなる。これによって、荷重支持体40,41に熱応力が生じるのを好適に抑制することができ、磁場均一度の劣化が生じるのを好適に防止することができる。
なお、第1磁性体21および第2磁性体22は、外表面の一部を断熱膜(断熱材)で覆うように構成してもよい。
また、断熱膜(断熱材)で覆う代わりに、または、断熱膜(断熱材)と併用して、第1磁性体21および第2磁性体22の表面に、輻射熱を反射することが可能な反射材を塗布してもよい。この場合においても、第1磁性体21および第2磁性体22に対する外部からの熱侵入を抑制することができ、第1磁性体21および第2磁性体22が冷却板50,55で冷却されることとの相乗効果により、第1磁性体21および第2磁性体22が略液体窒素温度まで好適に冷却されることとなる。
(4)荷重支持体40,41に熱応力を緩和するための高品質のばね等を設置する必要がなくなるので、第1磁性体21および第2磁性体22の組み付けや調整が簡単になり、その分、コストが増加するのを好適に防止することができる。
(5)本実施形態の超伝導磁石装置1を用いた磁気共鳴イメージング装置によれば、装置の高磁場化が可能となり、より鮮明な画像を得ることができる。
【0029】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、真空容器10Aに冷凍機70を設置して、この冷凍機70により第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度まで冷却するように構成した点である。
【0030】
冷凍機70は、真空容器10Aの上部中央に設けられた凹部1a内に設置されて、第2磁性体22の反撮像領域FOV側に配置されている。冷凍機70には、図示しない冷却ヘッドを備えており、この冷却ヘッドに伝熱材71が接続されている。伝熱材71は、真空容器10Aに設けられた貫通孔1bを通じて真空容器10A内に挿通され、第2磁性体22の上面(反撮像領域FOV側の面)に接続されている。つまり、第2磁性体22は冷凍機70に接続された伝熱材71によって直接的に略液体窒素温度まで冷却されるようになっている。
【0031】
第2磁性体22と第1磁性体21との間には、板状の伝熱材65が介設されており、冷凍機70により冷却された第2磁性体22により伝熱材65が冷却され、この冷却された伝熱材65を通じて第1磁性体21が冷却されるように構成されている。なお、伝熱材65は、前記した連結部材60とともに設けてもよいし、膜状や網状とされていてもよい。
【0032】
本実施形態によっても第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度まで冷却することができる。したがって、荷重支持体40,41の断面積を増加させた場合においても、液体ヘリウム容器30を含む液体ヘリウム系への熱侵入量を可及的に小さな値にすることができ、熱侵入量を許容値以下に抑制することができる。
これによって、液体ヘリウム容器30を含む液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、第1磁性体21および第2磁性体22を強固に支持することができる。
【0033】
また、冷却板50,55を設ける必要がないので、その分、構造が簡素になり、コストの低減を図ることも可能となる。
また、液体窒素の補充が不要となるので、メンテナンスに要する手間が省けコストを低減することができる。
なお、本実施形態では、冷凍機70を用いているが、特許文献2で示した装置において液体ヘリウム側に冷凍機を増設する場合に比べて、到達温度が液体窒素温度であり、かつ、断熱材ではなく伝熱材を介して冷却するため、運転開始時に所定の冷却時間で熱平衡に到達し、冷凍機70に求められる冷却能力を低減することが可能である。したがって、冷凍機70に要するコストを低減することができる。
【0034】
また、本実施形態の超伝導磁石装置1を用いた磁気共鳴イメージング装置によれば、装置の高磁場化が可能となり、より鮮明な画像を得ることができる。
【0035】
(第3実施形態)
図6に示すように、本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、冷凍機70と輻射シールド32の間に伝熱材72を設置し、この冷凍機70により輻射シールド32を冷却して、輻射シールド32から第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度まで冷却するように構成した点である。
【0036】
冷凍機70は、第1磁性体21および第2磁性体22の反撮像領域FOV側となる、真空容器10Aにおける輻射シールド32の上方に設置されており、真空容器10Aの外側から輻射シールド32まで貫通するように設置した伝熱材72を有している。
伝熱材72は、輻射シールド32を略液体窒素温度まで冷却可能である。
【0037】
輻射シールド32と第1磁性体21との間には、伝熱材66が介設されており、また、輻射シールド32と第2磁性体22との間には、伝熱材67が介設されており、これらの間が熱的に接続されている。
つまり、冷凍機70によって輻射シールド32が冷却されると、輻射シールド32から伝熱材66,67を介して、第1磁性体21および第2磁性体22が略液体窒素温度まで冷却されることとなる。
【0038】
本実施形態によっても第1磁性体21および第2磁性体22を略液体窒素温度まで冷却することができ、荷重支持体40,41の断面積を増加させた場合においても、液体ヘリウム容器30への熱侵入量を可及的に小さな値にすることができ、熱侵入量を許容値以下に抑制することができる。
これによって、液体ヘリウム容器30を含む液体ヘリウム系への熱侵入量の増加を招くことなく、第1磁性体21および第2磁性体22を強固に支持することができる。
また、液体窒素の補充が不要となるので、メンテナンスに要する手間が省けコストを低減することができる。
そして、本実施形態の超伝導磁石装置1を用いた磁気共鳴イメージング装置によれば、装置の高磁場化が可能となり、より鮮明な画像を得ることができる。
【0039】
なお、前記第1実施形態で説明した冷却板50,55は、第1磁性体21、第2磁性体22の上面(下側の真空容器10Bにおいては下面)の全体を覆うように構成したが、これに限られることはなく、上面(下面)の一部を覆うように構成してもよく、上面(下面)において周方向に所定の間隔を空けて所々に設置してもよい。また、上面から周面に亘って設けてもよい。
また、流路51の数や延設長さ等は、第1磁性体21や第2磁性体22の形状、大きさ等に対応して種々設定することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 超伝導磁石装置
2 ベッド
3 搬送手段
4 解析手段
10A 真空容器
10B 真空容器
11 メインコイル
12 シールドコイル
21 第1磁性体(磁性体)
22 第2磁性体(磁性体)
25 断熱膜
30 液体ヘリウム容器
31 天板
32 輻射シールド
40,41 荷重支持体
50 冷却板(冷却手段)
55 冷却板(冷却手段)
65 伝熱材(冷却手段)
66 伝熱材(冷却手段)
67 伝熱材(冷却手段)
70 冷凍機(冷却手段)
71 伝熱材(冷却手段)
72 伝熱材(冷却手段)
FOV 撮像領域
H 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像領域を挟んで上下に対向配置され、磁場を発生する少なくとも一対のメインコイル、および前記メインコイルと逆方向の磁場を発生する少なくとも一対のシールドコイルと、
前記メインコイルおよび前記シールドコイルを液体ヘリウム中に収納する液体ヘリウム容器と、
前記液体ヘリウム容器を内包して真空断熱する真空容器と、を有する超伝導磁石装置であって、
前記真空容器内における前記液体ヘリウム容器の外部に設けられた断熱材を介して、前記液体ヘリウム容器に直接支持される磁性体を備え、
前記磁性体の反撮像領域側には、前記磁性体を所定の温度まで冷却するための冷却手段が設けられていることを特徴とする超伝導磁石装置。
【請求項2】
前記所定の温度は略液体窒素温度であることを特徴とする請求項1に記載の超伝導磁石装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、液体窒素が通流する流路が設けられた冷却板であり、
前記冷却板は、前記磁性体の反撮像領域側において前記磁性体に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超伝導磁石装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、冷凍機と、この冷凍機に一端が接続された伝熱材とを備えており、
前記伝熱材は、前記磁性体の反撮像領域側において前記磁性体に他端が接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超伝導磁石装置。
【請求項5】
前記液体ヘリウム容器には、外部からの熱侵入を抑制するための輻射シールドが設けられており、
前記冷却手段は、前記輻射シールドに一端が接続された伝熱材であり、
前記伝熱材は、前記磁性体の反撮像領域側において前記磁性体に他端が接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超伝導磁石装置。
【請求項6】
前記磁性体は、外表面の少なくとも一部が断熱材で覆われるか、または、外表面の少なくとも一部が輻射熱を反射する部材を塗布されてなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超伝導磁石装置。
【請求項7】
前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超伝導磁石装置を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
被検体を乗せるベッドと、このベッドに乗せられた前記被検体を前記撮像領域へ搬送する搬送手段と、この搬送手段によって前記撮像領域に搬送された前記被検体からの核磁気共鳴信号を解析する解析手段とを備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194136(P2011−194136A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66369(P2010−66369)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】