説明

超合金から形成される部品のレーザー溶接方法及び装置

本発明は、レーザー(12)の出力が溶融池の温度によって制御されることを特徴とする超合金のレーザー溶接方法と、レーザービーム源(12)、処理制御器(30)、温度記録ユニット(28)、および溶加材の供給装置(24)を備え、処理制御器(30)が、温度記録ユニット(28)およびレーザー源(12)に接続された調整装置(34)を備えることを特徴とする、超合金のレーザー溶接装置(10)と、に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超合金から形成される部品のレーザー溶接に関する方法と、該方法を実行するための装置に関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
超合金の溶接性は、しばしば問題を孕んでおり、そして乏しい。例えば固定ガスタービン又は航空機のエンジンにおけるタービンの分野では、それらの部品に要求される条件から、耐熱物質の使用は必要不可欠である。MCrAlY合金と称される、ガンマ相硬化(hardenable)超合金は、主にそのような部品を製造するための材料として用いられる。しかしながら、これらの超合金は、修理又は製造を行う中で、溶接性に関して問題を孕んでいる。例えば、稼働中の磨耗の原因となってしまうため、溶接層は、一定の間隔でタービンブレード及びコンプレッサーブレードのブレード先端の縁部に設けられなければならない。
【0003】
現在までのところ、超合金から成る部品を溶接する前に、溶接するには問題のある高温(例えば1000℃)で熱するのが慣例であった。この加熱は、Ni3Al面とNi3Ti面の金属間の分離による、クラック同様の凝固クラック及び分離クラックを防止するようになっている。例えば、溶接前に加工品の誘導予備加熱にさらされるレーザーパウダー肉盛溶接が米国特許第5,554,837号にて開示されている。従来技術による方法においては、この誘導加熱は、溶接処理中及びその後に継続することも可能である。所望の温度特性及び分離挙動はこのようにして達成される。特に、これらの材料は温度が上がっていくに従ってある程度の延性を示すようになる。
【0004】
このような方法の不利な点は、部品を1050℃まで加熱することの困難性にある。溶接領域又は溶接部の加熱影響をうけるゾーンは、冷間溶接と比較してより大きく、部品の外形を正確に形成することができず、薄肉部を含む場合は、溶接たるみが生じる危険性は避けがたい。さらには、更なる予備加熱によって、処理は高価且つ生産性の低いものとなってしまう。また、溶融池は誘導コイルによって悪影響がもたらされる。
【課題を解決するための方法】
【0005】
それゆえ、本発明の主たる目的は、超合金から成る部品をクラック形成のリスクを負うことなく溶接可能とする、方法及び装置を提供することにある。同時に、該方法は、実行が容易で且つ高い生産性を可能とするものである。
【0006】
本発明は、この目的をレーザー溶接の処理過程を監視、制御することで達成できるという認識に基づくものである。
【0007】
それゆえ、第一の実施形態によると、前記目的は、レーザー出力は溶融池の温度に応じて制御される、超合金のレーザー溶接方法によって達成される。
【0008】
溶融池の温度に基づいて出力を制御することによって、例えばタービンブレードなどの、特にニッケルとコバルトの超合金から成る加工品は、高品質でクラックの無い経済的な機械加工が可能となる。さらには、レーザー出力の処理制御によって溶接のたるみが生じることなく、更なる薄肉部の溶接が可能となる。本発明による、レーザー肉盛溶接の温度制御を用いることで、コバルト超合金同様に単結晶又は一方向凝固ニッケル超合金を溶接することが可能となる。溶融池温度の計測に基づいた出力の制御、及び温度変化の制御によって、溶融池の温度は、クラックを形成する偏析が全ての範囲又は少しの範囲でも起こらないように定められる。また温度に加えて、合金を特定の温度範囲内にどのくらいの時間保持するかということも、特定の相の形成に関連する。一定の偏析が形成される温度範囲を急速に抜けることで、例えば、偏析の量、形状、又は大きさに影響を与えることができる。これらの要因は、レーザー出力の設定に関連して考慮することが可能である。レーザー出力は、数値演算を用いた温度計測を基準として算出される。
【0009】
方法は、冷間の加工品に対して実行されることが好ましい。本発明によれば、冷間の加工品又は部品は、予備加熱されておらず、また原則的に周囲温度と同じである。本発明による温度制御によって実行可能とされた冷間の加工品が用いられる際、関連技術における方法では必要であるように部品を1050℃まで加熱しなくともよい。とりわけこの長所によって、予備加熱を省略することでより熱量を小さくでき、部品の外形を正確に修正することが可能である。後に見込まれる研磨段階のコストを大幅に減じることができる。
【0010】
好適な具体的実施形態によると、溶融池の温度は放射温度計(pyrometrically)にて検出される。溶融池は、レーザービームによる出力によって材料から形成される。電磁波は、レーザービーム・マテリアル相互作用ゾーンから放出される。この放射は、放射温度計(pyrometer)によって検知でき、温度測定として利用される。この溶融池の非接触測定は、加工品及び溶融池に対して好適な位置に測定装置の設置することを可能とする。これは、本発明による温度に基づいた出力制御のための入力変数として用いられる温度の、確実な設定を可能とする。
【0011】
温度は、レーザー合焦光学器械を用いて計測することができる。例えば、温度は、レーザービームを反射するために提供された半透鏡とレンズを用いることで計測できる。このことは、温度が常に材料とレーザービームとの間の有効なゾーンの領域において検出されることを確実にする。しかし、レーザー合焦光学器械の側方で温度検出も可能となる。この場合、計測装置は、溶融池の温度を常に検出するため適切に調整される。
【0012】
本発明による方法は、特にCNC(コンピュータ数値制御)機器での自動化された形で実行されることが好ましい。方法の自動化によって、供給比率、すなわち特に加工品とレーザービーム間の相対運動は、正確かつ再現可能な方法で、予め定義可能なデータに基づいて設定することが可能である。また温度制御方法に加えて、部品の所望する外形と、部品の実際の外形と、溶接線の形状用データと、パラメーター関連データは、自動化のために用いられる。例えば、ある点におけるレーザービームの滞留時間は、加工品の供給比率を好適に定めることによって正確に設定可能である。本発明によるレーザー出力の制御と付加的な温度計測とによって、温度時間管理(temperature-time regimes)の正確な順守を確保し、クラックが生じない超合金の肉盛溶接が実施可能となる。
【0013】
特にガンマ相硬化型超合金(Gamma-phase hardenable super alloys)は、本発明による方法を用いて処理可能な超合金として好適なものである。これらの合金は、ガンマ相の偏析によって硬化を達成するものであり、単結晶、または一方向に(directionally)固化された合金にもなりえる。
【0014】
レーザー出力は、ガンマ相の形成における温度変化が、ガンマ相の偏析を通じてクラックのおそれがない範囲となるように好適に設定される、すなわち溶接中の溶融池温度に基づいて制御される。
【0015】
本発明による方法は、例えばタービンブレードの先端を機械加工するために用いられる、レーザー肉盛溶接であることが好ましい。しかしながら、本発明による方法は、ガスタービン又は超合金から成る航空機エンジン用の部品などの他の溶接加工にも適用可能である。溶加材は、パウダーの形態又はワイヤーの形態で、レーザービームに対して同軸的に又はレーザービームに対して側方から加えることができる。
【0016】
具体的実施形態によれば、本発明による方法は、次の:加工品の位置決めをするステップ、加工品外形の検出をするステップ、NCコードの生成をするステップ、不活性ガスチャンバーへの部品の移動をするステップ、温度制御されたレーザー肉盛溶接をするステップ、及び加工品の除去をするステップを含む。方法の結果の再現性は、これらのステップの全て又は一部分の自動化によって確実化することができる。
【0017】
もう一つの面によれば、本発明は、レーザービーム源、処理制御ユニット、温度検知器、及び溶加材の付加装置を含む、超合金のレーザー溶接装置に関する。この装置は、処理制御ユニットが、温度検知器とレーザー源とに接続された制御器を備える、ということを特徴とするものである。特に、制御器は、レーザー出力の設定を行うレーザー源の制御ユニットに接続されている。設定出力は、温度検出器によって確認された温度変化に基づいて制御器より得られる。温度検知器によって検出されたデータの処理及び伝達用の付加的なユニットは、温度検知器と制御器の間の接続部として設けられる。この処理及び伝達ユニットは、温度検出器に組み込むことも可能である。
【0018】
温度検出器は、溶融池の温度を検出するように好適に設計される。
【0019】
ある具体的実施形態では、付加装置は、レーザービームに対して同軸的な溶加材の供給を可能とする。しかしながら、レーザービームに対して側方から溶加材を供給することも可能である。溶加材は、パウダー又はワイヤーの形状で供給することができる。
【0020】
装置は、加工品を受け入れ、固定するための加工品固定具を含むのが好ましく、加工品固定具は、制御ユニットに接続され、制御ユニットによって制御される。これは、レーザービームに向かう、加工品の所望する相対的動作と、温度時間管理(temperature-time regimes)の維持を達成させることが可能となる。しかし、分離した制御ユニットによって加工品固定具を制御することも可能である。この場合、分離した制御ユニットにおいて所定の温度時間管理を維持できるように、制御器で使用される温度制御方法を考慮するのが好ましい。
【0021】
本発明による方法に関して記述される利点及び特徴は、適用可能な限りは、本発明による装置に対して同様に効果的であり、また逆も真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、添付の図面を参照し、以下より詳細に記述される。
【0023】
図示される具体的実施形態においては、本発明による装置10は、接続された制御ユニットを備えるレーザービーム源12と、レーザービームをレーザーヘッド18に誘導するビームガイド又は光波ガイド16を包含している。レーザーヘッド内には、半透鏡22同様に処理光学レンズ20を備える。また、装置10は溶加材の供給器24を包含する。図1の具体的実施形態においては、この供給器はレーザービーム26の側方に位置されており、図2の具体的実施形態においてはレーザービーム26と同軸に位置されている。
【0024】
図1から明らかであるように、本発明による装置10には、温度を検出するためにレーザーヘッド18上に位置する放射温度計28が備えられている。
【0025】
放射温度計28の測定データ用の処理兼伝達ユニット32と、制御器34を備える処理制御ユニット30は、装置10におけるレーザービーム源12の制御ユニット14と放射温度計28に接続されている。
【0026】
不活性ガスチャンバー36内には、図2においてのみ示されるように、加工品又は部品38は、急動クランプ装置として図示される加工品固定器40で支持することができる。
【0027】
本発明による方法の、実施し得る具体的形態を以下に詳述する。
【0028】
図2で示される部品38は、タービンブレードであることが可能であり、例えば、急動クランプ装置40を用いることで高い再現精度をもって位置されることが可能である。急動クランプ装置40は、不活性ガスチャンバー36内におけるガスの流れを妨げぬよう空気力学的に有利な設計であることが好ましい。
【0029】
部品が固定された後、部品の外形は、CNC軸42によって部品38上に位置されたレーザースキャナ(図示せず)を用いて検出される。部品38の実際の外形は、ソフトウェア(図示せず)を用いた計測データから確認される。パスデータ(path date)を含む全てのパラメーター関連データを備え、温度制御方法を備える個体NCコード、部品38の目的とする外形を用いて算出される。不活性ガスチャンバー36は、CNC軸42によって加工品38上に位置され、層流ガス流44によって不活性ガスを充填され、そして、レーザーヘッド24は部品38上に位置される。
【0030】
溶融池の温度は、図1に図示されたシステム技術を用いて測定される。溶融池はレーザービーム26によって処理ゾーン46に形成される。ビーム・材料の相互作用ゾーン46から放射される電磁波は、処理光学器械20と半透鏡22を経て、放射温度計28を用いて計測される。計測されたデータは、処理制御ユニットの検出器32に収集される。そして、所望するレーザー出力は制御器34によってレーザー制御装置14に伝達される。レーザービーム源12は、Nd.YAG(ネオジム添加イットリウムアルミニウムガーネット)レーザービーム源を用いることができ、ビームガイド(光波ガイド)16と処理光学器械20を通じた出力で加工品38に作用する。溶接部48は、図1において矢印を用いて示される方向にずらすことによって、または、レーザーヘッド18を適切に動かすことによって生じる。
【0031】
溶加材は、任意に、レーザーヘッド18に対して同軸に、又はレーザービーム28に対して側方から、パウダー供給器又はワイヤー供給器24によって供給される。
【0032】
レーザー溶接処理は、CNC制御器によって自動的に実行され、部品はシステムから取り外すことができるよう装填位置と非装填位置に移動させられる。
【0033】
本発明による方法によって定められる時間温度管理は、加工品の形状ならびに材質に依存する。本発明によるレーザー出力の制御は、クラックのない溶接ラインにする上での効果的な方法であり、制御システムにおける推移関数によって、温度に基づいて行われる。また、加工品の形状は、自動処理を考慮していることが好ましい。
【0034】
従って本発明は、次述する効果を達成することを可能とする:
クラックが生じやすい超合金において、クラックのない肉盛溶接を予備加熱なしに実行できる。形状のゆがみを、制御されたレーザー出力によって減じる。溶接の質を処理制御によって改善し、たるみ無く薄肉部の溶接を可能とする。溶接処理用のパラメーターを設定することで再現性を得ることができ、最終的には、外形の正確な溶接によって、部品の経済的機械加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1は、本発明による装置の具体的実施形態におけるシステム技術の略ブロック図を示している。
【0036】
図2は、本発明による装置の具体的実施形態における他の概略図を示している。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー(12)の出力が溶融池温度に応じて制御される、ことを特徴とする超合金のレーザー溶接方法。
【請求項2】
前記方法が冷間の加工品(38)に対して実施される、ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶融池温度(46)が放射温度計によって検知される、ことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記温度が、前記レーザーを合焦させる光学器械(20,22)を通じて検知される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、自動化された方法、特にCNCシステムを用いた方法によって実施される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記超合金として、ガンマ相硬化型超合金が用いられる、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザー出力(12)は、ガンマ相の形成における温度変化が、ガンマ相の偏析を通じてクラックのおそれがない範囲となるように制御される、ことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記方法がレーザー肉盛溶接方法である、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、加工品(38)の位置合わせをするステップと、前記加工品の外形の検知をするステップと、CNコードの生成をするステップと、部品(38)の不活性ガスチャンバー(36)内への移動をするステップと、温度制御されたレーザー肉盛溶接をするステップと、加工品(38)の除去をするステップとを含む、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
レーザービーム源(12)と、処理制御ユニット(30)と、温度検知器(28)と、溶加材の付加装置(24)とを備えており、
前記処理制御ユニット(30)が、温度検知器(28)及びレーザービーム源(12)に接続された制御器(34)を含む、ことを特徴とする超合金のレーザー溶接装置(10)。
【請求項11】
前記温度検知器は溶融池温度(46)を検知するよう設計されている、ことを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記付加装置(24)は、レーザービームに対して同軸的な供給が可能である、ことを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、加工品(38)を固定するための加工品固定具(40)を含み、前記加工品固定具は制御ユニット(30)に接続されており、前記加工品固定具(40)は制御ユニットによって制御される、ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の装置。

【公表番号】特表2007−532314(P2007−532314A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507661(P2007−507661)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000663
【国際公開番号】WO2005/099958
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505323725)エムティーユー エアロ エンジンズ ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】