説明

超合金構成部材を改良することによって製造する方法及び超合金構成部材

本発明は、Hf、La及びYのグループから選択された少なくとも1つの添加剤によって超合金構成材(1)を改良する方法に関する。このような少なくとも1つの添加剤は、上述した構成材(1)の表面層(7)に導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超合金構成材を改良する方法及びその超合金構成材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高温かつ腐食性の燃焼ガスにさらされるガスタービン構成材のような、高温腐食ガスにさらされる構成材は、一般的に高い温度では高い強度を示す超合金から成る。通常、このような超合金は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)又は鉄(Fe)を基礎としている。しかしながら、このような超合金は1200℃以上までの温度では高い強度を示すが、酸化作用及び/又は腐食作用から保護されなければならない。一般的には、このような保護は、超合金構成材の表面に形成されるアルミナスケールによってか、又はいわゆるMCrAlYオーバレイコーティングによって提供される。ここでのMはニッケル、コバルト若しくは鉄を表しており、Yはイットリウム(Y)、ハフニウム(Hf)又はその他のレアアース元素を表している。上述したオーバレイコーティングを準備する間、アルミニウムは酸化され、ぴったりと付着するアルミナスケールを形成し、このアルミナスケールは構成材を酸化作用及び/又は腐食作用から保護する。上述したコーティングは、例えばEP0486489B1、EP0786017B1又はEP1306456A1から公知である。US4,615,864からは、ハフニウム、イットリウム又はランタン(La)をMCrAlYに添加することが有利であることが公知である。というのは、これらの物質の酸化物はアルミナスケールを固定するのを支援するからである。
【0003】
コーティングは、例えばガスタービンのタービン翼を熱絶縁する場合には遮熱コーティング(TBC)とも呼ばれている。
【0004】
上述した従来技術に対して、本発明の課題は、ガスタービン構成材のような超合金構成材を改良する方法と、そのように改良された超合金構成材とを提供することである。
【0005】
前記課題は、請求項1に記載されている、超合金構成材を改良する方法によって、並びに請求項14に記載されている超合金構成材によって解決される。さらに、従属請求項は本発明の発展形態を含んでいる。
【0006】
本発明の方法によれば、超合金構成材、とりわけニッケルベースの超合金構成材、コバルトベースの超合金構成材又は鉄ベースの超合金構成材は、Hf、La及びYのグループから選択された少なくとも1つの添加剤によって改良される。本発明によれば、このような少なくとも1つの添加剤は上述した構成材の表面層に導入される。この表面層の深さは、0.5mm以下、有利には0.25mm以下である。
【0007】
ハフニウム、ランタン及びイットリウムのグループから選択された少なくとも1つの添加剤を超合金構成材の表面層に導入することによって、この構成材は、MCrAlYコーティングを含む後で塗布される遮熱コーティング(TBC)が添加剤による、改善された耐酸化性を示す点で改良される。この改善された耐酸化性はコーティングの寿命を延ばす。さらに、MCrAlYコーティング内の保護酸化物スケールもより良好に固定され、これによっても、コーティングの寿命が延びる。添加剤を表面層にしか加えないことによって、添加剤は遮熱コーティングを塗布する場合の有利な効果を示すことができる箇所に存在するようになる。この場合、超合金構成材のバルクキャスト材料内に大量に添加剤を加える場合に生じる可能性のある問題が生じることはない。
【0008】
本発明の適用にはハフニウム、ランタン及びイットリウムのグループから選択された添加剤のうち1つのみが存在すればよいことを言及しておく。しかしながら、本発明の適用には、ハフニウム、ランタン及びイットリウムのグループから選択された添加剤が少なくとも2つの場合も含んでいるか、又は3つ全ての元素が存在している場合も含んでいてもよい。上述したグループから選択された添加剤が少なくとも2つである場合、添加剤は構成材の表面層内に逐次的に導入されてもよいし、同時に導入されてもよい。3つの元素全てが添加剤として存在する場合には、これら3つ全てを逐次的に導入してもよいし、同時に導入してもよい。更なる代替案は、添加剤におけるこれら3つの元素のうち2つを同時に導入し、残りの1つの元素を上述した2つの導入の前又は後に導入することである。
【0009】
ハフニウムを添加剤として用いた場合、ハフニウムは表面層の材料組成の重量の5%の量、有利には1%の量まで表面層に導入される。イットリウムを添加剤として用いた場合、イットリウムは表面層の材料組成の重量の0.2%の量、有利には0.05%の量まで表面層に導入される。ランタンを添加剤として用いた場合、ランタンは表面層の材料組成の重量の0.2%の量、有利には0.05%の量まで表面層に導入される。
【0010】
上述した少なくとも1つの添加剤は、この少なくとも1つの添加剤を表面に溶け込ませることによって表面層に導入される。代替的には、上述した少なくとも1つの添加剤は、この少なくとも1つの添加剤を表面に拡散させることによって表面層に導入してもよい。
【0011】
添加剤を表面層に溶け込ませることは、例えばレーザを用いて表面を加熱することによって、とりわけ局部加熱することによって実現される。表面を局部加熱することによって、表面を溶融させてから一方向に配向するように溶融物を凝固させることを可能にする。したがって、単結晶超合金構成材又は一方向凝固超合金構成材に本発明の方法を実施する場合に、添加剤を導入する上記の方法は有効である。このような局部加熱法では、表面は、例えば上述したレーザなどの加熱手段によってスキャンされる。
【0012】
添加剤を超合金構成材の表面に拡散させる場合、当業者に公知である一般的な加熱処理によってこの拡散を実現してもよい。
【0013】
溶融プロセス又は拡散プロセスを実現するために、少なくとも1つの添加剤が添加された懸濁液マトリクスを表面上に塗布することができる。それから、この表面を、その上に塗布された懸濁液と共に局所的に又は全体的に加熱する。有利には、このような懸濁液マトリクスは超合金のベース材料、例えばニッケルベースの超合金の場合にはニッケル、コバルトベースの超合金の場合にはコバルトそして鉄ベースの超合金の場合には鉄と、有機バインダとを含む。有機バインダは、とりわけクロム酸塩とリン酸塩とから成る有機バインダであってもよい。
【0014】
本発明による方法の更なる発展形態によれば、酸化作用及び/又は腐食作用に対する耐性を有するコーティング、例えば遮熱コーティングの形態のコーティングが添加剤を超合金構成材の表面層に導入した後で構成材の表面上に塗布される。有利には、このような遮熱コーティングは、超合金構成材の表面層に導入される添加剤によるアルミナスケールの固定が補助されるという上述した利点を実現するためにMCrAlYコーティングを含んでいる。
【0015】
本発明の超合金構成材は、ハフニウム、ランタン及びイットリウムのグループから選択された添加剤を含む表面層を有している。この表面層は、0.5mm以下、有利には0.25mm以下の深さを有している。このような超合金構成材によって実現される利点は、本発明による方法に関して既に論じられている。それ故、本発明の超合金構成材により実現される利点に関しては、本発明による方法に関する明細書の部分を参照されたい。
【0016】
超合金構成材は、酸化作用及び/又は腐食作用に対する耐性を有するコーティングを表面層上に有することができる。このコーティングは、とりわけMCrAlYコーティングを含む遮熱コーティングである。
【0017】
さらに、本発明の超合金構成材は、とりわけ単結晶材料又は一方向凝固材料といった超合金材料から成る。
【0018】
本発明のさらなる特徴、性質及び利点は、添付図面と共に以下の発明を実施する形態の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による超合金構成材を改良する方法の1つの実施形態を概略的に示した図
【図2】本発明の超合金構成材の1つの実施形態を示した図
【0020】
図1を参照して、ハフニウム、ランタン及びイットリウムのグループから選択された少なくとも1つの添加剤によって超合金構成材を改良する本発明の方法の実施形態を説明する。本発明の方法によれば、このような少なくとも1つの添加剤は、例えばタービン翼又はブレード又はガスタービン内の高温ガス路のライナー部材のようなガスタービン構成材である構成材1の表面層に導入される。図1の実施形態によれば、添加剤は、添加剤を含む懸濁液3によって超合金構成材1の表面層に導入される。懸濁液3は構成材1の表面上に塗布され、それから、懸濁液3は構成材の表面層7内に添加剤を溶け込ませるために加熱される。この実施例によれば、この加熱は、局部加熱の位置を表面上で移動させる局部加熱プロセスによって行われる。
【0021】
本発明の方法の実施形態の第1ステップでは、固形分と有機バインダとを含む懸濁液が形成される。この固形分は、例えば粉体、フレークなどの形態の、超合金構成材のベース材料と、所定量のハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムとを含んでいる。例えば、超合金構成材がニッケルベースの超合金から成る場合には、固形分の大部分はニッケルである。有機バインダは、例えばクロム酸塩とリン酸塩とから成る有機バインダであってもよい。このような有機バインダは、懸濁液の重量の40%〜70%の量を占める可能性がある。
【0022】
ハフニウムの量は、懸濁液の重量の0〜2.5%、有利には懸濁液の0〜1%とすることができる。イットリウムの量は、懸濁液の重量の0〜0.1%、有利には懸濁液の0〜0.05%とすることができる。ランタンの量は、懸濁液の重量の0〜0.1%、有利には懸濁液の0〜0.05%とすることができる。懸濁液の残りの成分は、実質的に超合金のベース材料となる。固形分を有機バインダに入れて、続いて完全に混合することにより懸濁液の調製が行われることによって、均一な懸濁液が形成される。
【0023】
懸濁液の形成後、図1に示されているように、この懸濁液を超合金構成材1の表面上に塗布することによって懸濁液層3が形成される。超合金構成材1の表面上に懸濁液を塗布することは、任意の好適な方法によって、例えば構成材1の表面上に懸濁液を噴霧し、その後懸濁液を硬化させるために懸濁液の塗布された構成材を、300〜400℃、例えば約350℃の温度で熱処理にさらすことによって行うことができる。
【0024】
熱処理により超合金構成材1の表面上に形成された懸濁液層3が硬化した後に、その表面はレーザビーム5によってスキャンされ、懸濁液の固形分と超合金構成材1の表面層7とが局所的に溶け合う。
【0025】
この実施形態によれば、超合金構成材1は、結晶粒が共通の選択方向に沿って伸びている一方向凝固構成材である。しかしながら、超合金構成材1は所定に選択される結晶方向を持たない構成材又は単結晶構成材であってもよい。
【0026】
加熱プロセスでは、レーザビーム5は、超合金材料中の粒子の伸びる選択方向によって定められている方向に沿って超合金構成材1の表面に亘って移動させられる。レーザビーム5の移動は図1の矢印によって概略的に示されている。表面領域の加熱スポット毎に移動方向及びレーザビーム5の出力を注意深く選択することによって、次のことを実現することができる。すなわち、レーザビーム5により生じた溶融物によって、凝固の間、ベースとなる固体結晶の結晶構造及び配向を適合させ、超合金構成材1のバルク状の一方向凝固構造を適合させることができるのである。
【0027】
この実施形態の超合金構成材1は一方向凝固構成材であるが、単結晶構成材であってもよいということを言及しておく。というのは、単結晶の超合金構成材表面を局部加熱するのも、超合金構成材1のバルク物質の結晶構造を保ちつつ溶融物を凝固させる上述したやり方を用いることができるためである。これによって、凝固後、表面層7は構成材1のバルク単結晶を形成する。付加的には、記載した手順は原理的に、一方向凝固構造又は単結晶構造ではない超合金構成材1に用いてもよいことを注意すべきである。
【0028】
超合金構成材1の懸濁液と表面層7との溶融した固形分が再凝固する間、ハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムは表面層7に導入される。
【0029】
レーザビーム5による加熱の間、懸濁液の有機成分は揮発するか、又は揮発しない場合には脆くなっており、例えば表面に弱く送風することによって有機成分は表面から除去される。
【0030】
本発明の方法の上述した実施形態によれば、添加剤つまりハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムは超合金構成材の表面層7に溶け込まされる。しかしながら、拡散プロセスによって添加剤を表面層7に導入することもできる。この場合、表面上に硬化した懸濁液層3を有する超合金構成材1は、その表面層7に添加剤が拡散するように選択された温度で加熱処理される。表面層7に添加剤を導入する方法がとりわけ有効であるのは、一方向凝固構造又は単結晶構造を有する表面層7が必要ない場合である。
【0031】
ハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムが超合金構成材1の表面層7に導入された後で、セラミックコーティング11を含む遮熱コーティング9が構成材表面上に塗布される。この遮熱コーティングは、例えば、イットリウムによって少なくとも部分的に安定化された結晶構造を有する酸化ジルコニウム層11と、酸化ジルコニウム層11と超合金構成材1の表面層7との間に配置されたMCrAlY層13とである。MCrAlYコーティングと、イットリウムによって安定化された酸化ジルコニウムコーティングと、これらのコーティングを塗布する方法とは従来技術から公知であるため、それ故ここでは説明しない。MCrAlYコーティング13を塗布する間、超合金構成材1の表面に固定される保護的なアルミナスケールが形成される。ハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムは保護スケールを固定するのを支援する。
【0032】
上述した実施形態による本発明の方法の結果、図2に示されているように、本発明による超合金構成材1が形成される。図2には、ハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムを含む表面層7と、表面層7の上に塗布された遮熱コーティング9とを有する超合金構成材1が示されている。しかしながら、本発明による超合金構成材は上述した遮熱コーティングを備えなければならないということではなく、又は酸化作用及び/又は腐食作用に対する耐性を有する異なる種類のコーティング系を形成するアルミナスケールを備えていてもよい。
【0033】
本発明によれば、超合金構成材は、その表面層にハフニウム及び/又はランタン及び/又はイットリウムを導入することによって改良される。特に、本発明は、このような改良される超合金構成材上に塗布される、酸化作用及び/又は腐食作用に対する耐性を有するコーティングの特性を改善することを可能にしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金構成材(1)を改良する方法であって、
Hf、La及びYのグループから選択された少なくとも1つの添加剤を、前記構成材の表面層(7)に導入する、
ことを特徴とする超合金構成材(1)を改良する方法。
【請求項2】
Hf、La及びYのグループから選択された少なくとも2つの前記添加剤を、前記構成材(1)の表面層(7)に導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの添加剤を、前記構成材(1)の表面層(7)に逐次的に導入する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの添加剤を、前記構成材(1)の表面層(7)に同時に導入する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの添加剤を、0.5mm以下の深さを有する前記表面層(7)に導入する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
Hfを添加剤として用い、該Hfを前記表面層(7)の材料組成の重量の5%の量まで前記表面層(7)に導入する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
La及び/又はYを添加剤として用い、該La及び/又はYを、前記表面層(7)の材料組成の重量の0.2%の量まで前記表面層(7)に導入する、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの添加剤を前記表面層(7)に導入することを、前記少なくとも1つの添加剤を前記表面に溶け込ませることによって行う、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの添加剤を前記表面に溶け込ませることを、前記表面を局部加熱することによって行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの添加剤を前記表面層(7)に導入することを、前記少なくとも1つの添加剤を前記表面に拡散することによって行う、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
溶け込ませること又は拡散することを、前記少なくとも1つの添加剤が添加された懸濁液マトリクスを表面上に塗布し、その上に塗布された懸濁液と共に該表面を加熱することによって行う、請求項8から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液マトリクスは超合金のベース材料及び有機バインダを含んでいる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記添加剤を前記超合金構成材(1)の表面層(7)に導入した後で、酸化作用及び/又は腐食作用に対する耐性を有するコーティング(13)を前記構成材(1)の表面上に塗布する、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
Hf、La及びYのグループから選択された添加剤を含む表面層(7)を有する、
ことを特徴とする超合金構成材(1)。
【請求項15】
前記表面層は0.5mm以下の深さを有する、請求項14記載の超合金構成材(1)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523495(P2012−523495A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503937(P2012−503937)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052016
【国際公開番号】WO2010/115653
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】