説明

超小型電子デバイスにおけるコバルト無電解めっき

超小型電子デバイスの製造において金属基材の基板上にCoまたはCo合金を析出するための無電解めっきの方法および組成物であって、Coイオンの供給源、基板上へ析出イオンを金属に還元する還元剤、およびオキシム基剤の化合物安定剤を用いるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、超小型電子デバイス用途におけるCoおよびCo合金の無電解めっきに関する。
【0002】
発明の背景
Coの無電解析出は、超小型電子デバイスの製造において様々の用途で行われる。例えば、集積回路基板中に電子配線を形成するため用いられるダマシンCuメタライゼーションのキャッピングにCoが使用される。銅は、例えばSiO2または低k誘電体などのSi基板および誘電体皮膜中に速やかに拡散することができる。銅は、多層デバイス用基板の上部に作られたデバイス層中に拡散することもできる。そうした拡散は、デバイスに有害な場合があり、それは、そうした拡散が基板中に漏電を生じさせ、または2個の配線間に意図しない電気接続を形成し、その結果電気的短絡をもたらす場合があるからである。さらに、配線機構からのCu拡散は、電気の流れを阻害する場合がある。銅は、電流が使用中の機構を通過するときに配線機構から移動する傾向も有する。この移動は、近接する配線を損傷し、接合リークをもたらし、意図しない電気接続を形成し、かつ、金属がそこから移動する配線機構中の電子流を阻害する場合がある。コバルト・キャッピングは、このCuの拡散および移動を防止するために用いられる。
【0003】
従って、金属充填された内部配線機構からの金属の拡散およびエレクトロマイグレーションを最小限に抑えることは、集積回路デバイスの製造者が直面している課題の一つである。この課題は、デバイスがさらに小型化するにつれ、また機構がさらに小型化し緻密となるにつれて、より深刻となる。
【0004】
金属配線機構に関連するもう1つの課題は、金属配線機構を腐食から保護することである。一定の配線金属、特にCuは、より腐食しやすい。銅は、周囲条件下で容易に酸化する、かなり反応性が高い金属である。この反応性は、誘電体および薄膜への付着力を弱め、その結果、空隙および層間剥離をもたらす場合がある。従って、もう1つの課題は、酸化を阻止するよう努め、キャップとCuの間および構造層相互間の付着力を向上させることである。
【0005】
例えば、米国特許公報番号第2003/0207560号および米国特許出願番号第10/867,346号で論じられているように、産業界では、Cuおよびその他の金属配線機構上にCoを主材料とするキャップを析出してきた。
【0006】
Cuの移動を減少させ、腐食防止をもたらし、かつ誘電体とCuの間の付着力を向上させるため用いられる特定のCoを主材料とする金属キャッピング層は、Co、WおよびPを含む三元合金である。別の耐熱性金属をWの代わりとし、またはWに追加して使用することができ、Bは、しばしばPに代替し、またはPに追加して使用される。三元合金の各成分が保護層に利点をもたらす。
【0007】
無電解Coに関連する問題は、析出された合金からのこぶの成長および被覆される主表面以外の表面への意図しない析出である。障壁/Cuの界面における無電解析出のこぶ状の樹枝状結晶の成長(5乃至30ナノメートル)は、配線/キャッピング層の間にブリッジを形成する場合があり、漏電電流を増大させる場合があり、また極端な場合には結果的に電気的短絡さえもたらす場合がある。誘電体の表面上の小さな孤立した合金粒子の意図しない析出は同様に、結果として漏電電流さらには電気的短絡さえもたらす場合がある。
【0008】
無電解Coは、配線と配線がその中に形成される誘電体との間の障壁を形成する金属配線の下の障壁層としても論じられてきた。
【0009】
従って、実質的にこぶの成長がない無電解層および実質的に粒子のない誘電体を結果として生じることができる無電解析出方法およびめっき溶液が特に必要とされている。
【0010】
発明の要約
本発明の様々な側面の中には、平坦な析出を生じるCo無電解めっきのための方法および組成物を提供すること;ならびに、超小型電子デバイスにおけるキャッピング用途に使用するのに適したCo無電解めっきのための方法および組成物を提供すること;その他がある。
【0011】
従って簡単には、本発明は、Coイオンの供給源、還元剤、および各種のオキシムを主材料とする化合物から選択される安定剤を含む金属めっきのための組成物を指向する。
【0012】
本発明は、超小型電子デバイスの製造における金属を主材料とする基板上にCoまたはCo合金を無電解析出する方法も指向する。その方法は、オキシムを主材料とする化合物安定剤およびCoイオンの供給源を含む無電解析出組成物に金属を主材料とする基板を接触させることを含む。
【0013】
本発明のその他の目的および特徴は、以下において、部分的に明らかであり、かつ部分的に指摘される。
【0014】
図の簡単な説明
図1Aおよび図1Bは、本発明のものではないCo合金拡散保護層のSEM写真である。図1Aは、80,000倍に拡大されている。図1Bは、40,000倍に拡大されている。
【0015】
図2Aおよび図2Bは、本発明のCo合金拡散保護層のSEM写真である。図2Aは、80,000倍に拡大されている。図2Bは、40,000倍に拡大されている。
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明に従って、CoおよびCo合金は、実質的にこぶの成長および誘電体上の孤立した合金粒子のない析出を生じる方法および組成物を使用して析出される。例えば、超小型電子デバイス中の配線機構上に、滑らかな無電解キャップを無電解析出することができる。本発明はここでは、Coを主材料とするキャップに関連して説明されるが、超小型電子製品産業における他の無電解Co用途にも適用することができる。
【0017】
本発明の無電解析出の方法および組成物は、約50乃至約200オングストロームの厚さを有する析出された層について、概ね約10オングストローム以下の表面粗さを有する析出を達成することが示されている。
【0018】
本発明は、一定のケトキシムまたはアルドキシムなど一定のオキシムを主材料とする化合物、例えばジメチルグリオキシムがCoを主材料とする無電解めっき溶液中で安定剤として作用するという発見に由来する。本発明のめっき溶液中で使用される典型的なオキシムを主材料とする化合物安定剤は、ケトキシムおよびアルドキシムを含む。ケトキシムは一般に、ケトンとヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン誘電体との間の縮合反応によって形成される。典型的なケトキシムは、ジメチルグリオキシムおよび1,2−シクロヘキサンジオン・ジオキシムを含む。アルドキシムは一般に、アルデヒドとヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン誘電体との間の縮合反応によって形成される。典型的なアルドキシムは、サリチルアルドキシムおよびsyn−2−ピリジンアルドキシムを含む。この説明に関連して、「オキシムを主材料とする」とは、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン誘電体とカルボニル基との間の縮合反応により形成される種類の官能基を含む化合物を指し、そのカルボニル基は、ケトンまたはアルデヒドのいずれでもよく;重要なのは反応機構ではなく官能基であるため、この縮合反応または何らかの他の機構により形成される化合物を含む。いくつかのオキシムを主材料とする化合物安定剤の構造を表Iに示す。
【表1】

【0019】
有益なことに、オキシムを主材料とする化合物をCoを主材料とする無電解めっき溶液に加えると、安定剤は、誘電体上へのCoまたはCo合金の浮遊析出を減少させ、析出されたキャップ中のCoを主材料とするこぶの形成を減少させる。オキシムは、主要なキレート化剤、例えばクエン酸よりも強く溶液中で金属イオンにキレート結合するため、特定の理論に拘束されることなく、これらの化合物の安定化能力がそのキレート力に関係している可能性があると予備的に考えられる。例えば、溶液の状態に応じて、ジメチルグリオキシムに対するCuの安定度定数 kの対数は、約9乃至約11でもよい。ジメチルグリオキシムに対するNiの対数kは、約12乃至約17でもよい。逆に、クエン酸に対するCuの対数kは、約4乃至約6でもよく、クエン酸に対するNiの対数kは、約4乃至約6でもよい。一方、Coは、主要なキレート化剤であるクエン酸により、なおキレート化される。ジメチルグリオキシムは、Ni、Cuなどといった金属不純物を優先的にキレート化し、それらの還元電位を移動させ、こうして局所的な核生成および粒子形成の傾向を予防する。ジメチルグリオキシムの超過量は、Coをさらにキレート化し、Co析出の開始および成長率に影響する可能性がある。しかしながら、強いキレート化効果により、めっき溶液は、濃度が200ppm以上に達したとき、完全に不活性化する。
【0020】
本発明の溶液中で、オキシムを主材料とする化合物安定剤の濃度は、約2ppm乃至約150ppmである。以下において、「ppm」の用語は、めっき溶液の質量単位あたりの添加物の質量単位による添加物の濃度を指すものとする。例えば、5ppmは、めっき溶液1キログラムあたりの添加物5mgを意味する。溶液の密度は概ね1kg/Lであるため、5ppmの濃度は、めっき溶液1リットルあたり概ね5mgである。そのような条件下で、オキシムを主材料とする化合物は、溶液安定剤および析出のレベラーとして作用する。
【0021】
従って、本発明のめっき溶液に従い、オキシムを主材料とする化合物は、約2ppm乃至約150ppm、好ましくは約5ppm乃至50ppm、さらに一層好ましくは約5ppm乃至約20ppmの濃度範囲で溶液に加えられる。
【0022】
金属充填された配線上への金属キャッピング層などにおけるCoまたはCo合金の無電解めっきのための無電解めっき溶液は、一般に、析出イオンの供給源、還元剤、錯化剤および/またはキレート化剤ならびに表面活性剤を含む。溶液は、一定のpH範囲内に緩衝剤処理される。選択的に、溶液は、耐熱性イオンの供給源も含んでよい。
【0023】
Coを主材料とする合金の析出のため、溶液は、Coイオンの供給源を含む。電気配線のキャッピングに関連して、それらは、いくつかの利点を提供する。それらは、Cuの導電率特性を著しく変更しない。コバルトは、Cuのための有益な障壁およびエレクトロマイグレーション保護を提供する。コバルトは、Cuと混合しないため重要部品中で選択され、組立て中に、または使用中の時間の経過とともに、Cuと合金になる傾向を有さない。Coイオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、その他の適切な無機塩などの無機Co塩、または酢酸Co、Coのクエン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、ヒドロキシ酢酸塩などの有機カルボン酸とのCo錯体として、溶液に注入される。Cl−またはその他のアニオンにより溶液の濃度を過剰に高くするのを避けることが望ましい場合、Co(OH)2を使用することができる。1つの実施形態においては、高いCo金属含有量のCoを主材料とする合金を生じるよう、約1g/L乃至約20g/LのCo2+を提供するためにCoの塩または錯体を加える。いくつかの用途においては、無電解溶液中のCo含有量は、例えば約0.1g/L乃至約1.0g/LのCo2+というように、非常に低い。
【0024】
析出機構および望まれる合金に応じて、リンを主材料とする還元剤またはホウ素を主材料とする還元剤のいずれかから、還元剤を選択する。還元剤については、以下においてより詳細に論じる。
【0025】
溶液はさらに、緩衝剤を含む。溶液は、典型的には、望ましい範囲にpHを安定させるためpH緩衝剤を含む。1つの実施形態において、望ましいpH範囲は、約7.5乃至約10.0である。1つの実施形態において、望ましいpH範囲は、8.2乃至約10、例えば8.7乃至9.3である。これらのpH範囲は、従来知られている高アルカリ溶液と反対に、弱アルカリ性の無電解溶液を提供する。典型的な緩衝剤は、例えば、ホウ酸塩、テトラホウ酸塩およびペントラホウ酸塩、リン酸塩、酢酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、アンモニアおよびピロリン酸塩を含む。pH緩衝剤の濃度は、概ね約4g/L乃至約50g/Lである。
【0026】
溶液中にCoイオンを保持するため、錯化剤および/またはキレート化剤を溶液に含める。典型的には約7.5乃至約10.0の弱アルカリ性のpHで溶液を処理するため、Co2+イオンは、溶液から水酸化物塩および沈澱物を形成する傾向を有する。溶液中で使用される錯化剤は、クエン酸、リンゴ酸、グリシン、プロピオン酸、コハク酸、乳酸、DEA、TEA、および塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウムなどのアンモニウム塩、ピロリン酸塩、ならびにそれらの混合物から選択される。シアン化物などのいくつかの錯化剤は、あまりにも強くCoイオンをキレート化し、析出を抑制し、かつ/または環境問題を引き起こすため避ける。錯化剤濃度は、一般的に、錯化剤とCoの間のモル比が約2:1乃至約10:1となるよう選択する。錯化剤の分子量に応じて、錯化剤の濃度は、概ね約10g/L乃至約120g/Lでもよい。
【0027】
金属配線表面のぬれを促進し、キャッピング層の析出を向上させるため、表面活性剤を加えることができる。表面活性剤は、ある程度3次元の成長を抑制し、それにより皮膜のモフォロジおよびトポグラフィを改善することができる緩やかな析出防止剤として役立つようである。表面活性剤は、粒径を精密にするのにも役立ち、これにより、Cuの移動に対しより透過性の低い粒子境界を有するより均一な被覆が生じる。塗膜形成剤であるカチオン性表面活性剤は、本発明の組成物においては避ける。典型的なアニオン系表面活性剤は、ホスホン酸アルキル、アルキル・エーテル・ホスホン酸塩、硫酸アルキル、アルキル・エーテル硫酸塩、スルホン酸アルキル、アルキル・エーテル・スルホン酸塩、カルボン酸エーテル、カルボン酸エステル、アルキル・アリール・スルホン酸塩およびスルホコハク酸塩を含む。典型的な非イオン系表面活性剤は、グリコールおよびグリセロール・エステル、ポリエチレン・グリコールおよびポリプロピレン・グリコール/ポリエチレン・グリコールを含む。表面活性剤の濃度は、概ね約0.01g/L乃至約5g/Lである。
【0028】
望ましい場合、めっき溶液は、W、Mo、Reなどの耐熱性金属イオンも含み、これらは、熱安定性、耐食性および拡散抵抗を増大させる機能を果たす。Wイオンの典型的な供給源は、タングステン酸、りんタングステン酸塩、酸化タングステンおよびそれらの混合物である。例えば、1つの好ましい析出溶液は、約0.1g/L乃至約10g/Lのタングステン酸を含む。耐熱性金属のその他の供給源は、モリブデン酸アンモニウムまたは酸化モリブデンを含む。
【0029】
レベラー、速度促進剤、光沢剤など、当技術分野において従来知られているその他の添加物も加えることができる。米国特許出願番号第11/085,304号で開示されているように、ヒドラジンをレベラーとして低濃度で加えることができる。レベラーは、本発明のオキシム化合物安定剤との相乗効果により作用し、析出のモフォロジおよびトポグラフィをさらに向上させ、析出速度も制御する。
【0030】
いくつかの用途において、溶液は、実質的にアルカリ金属イオンを含まないものでなければならない。
【0031】
めっきは、典型的には、約50℃乃至約90℃の溶液温度で生じる。めっき温度が低過ぎる場合、還元速度が低過ぎ、また十分に低い温度では、Co還元が全く開始しない。高過ぎる温度では、めっき速度が増大し、溶液は、活性が高くなり過ぎる。例えば、Co還元の選択性が低くなり、Coめっきが、ウエハ基板のCu配線機構上だけでなく、誘電体材料上でも生じる可能性がある。さらに、非常に高い温度では、Co還元が、溶液内部とめっき槽の側壁上で自発的に生じる。
【0032】
析出機構および望まれる合金が、還元剤の選択を規定する。リンを含む合金を望む場合、次亜リン酸塩を選択する。ホウ素を含む合金を望む場合、ボランなどのホウ素を主材料とする還元剤を選択する。さらに、リン(III)を含みかつホウ素を主材料とする還元剤をめっき溶液に加えることができる。
【0033】
リンを主材料とする還元剤の中では、他の還元剤と比べた場合の低費用および扱いやすい性質により、次亜リン酸塩が、無電解めっき皮膜における好ましい還元剤である。次亜リン酸塩を還元剤として選択した場合、完成した合金は、リン元素を含む。知られているように、めっき溶液は、Co2+をCo合金中に還元するため余分のH2PO2−を要する。マロリーとハイドゥ(Mallory and Hajdu)62‐68頁で注記されているように、めっき溶液中の次亜リン酸塩に対するCoイオンのモル比は、0.25乃至0.60、好ましくは、例えば0.30乃至0.45である。速やかなめっきの開始およびめっきモフォロジの改善のため十分な濃度の次亜リン酸塩がめっき溶液中に確実に存在するよう、約2g/L乃至約30g/L、例えば約21g/Lの初期濃度で次亜リン酸塩を加える。
【0034】
次亜リン酸塩は、Co、Ni、PdおよびPtを含む限られた数の基板に対してのみ、金属イオンを自発的に還元する。Cuはその中に含まれていないが、Cuは、超小型電子デバイス中のビアやトレンチなどの配線機構を充填するのに使用する特に重要な金属である。Cu基板上の次亜リン酸塩の還元のため、例えば、析出される金属(すなわちCo)を用いたシーディングにより、もしくはPdなどの触媒により、またはDMABなどの強い還元剤を用いた表面処理により、最初にCu表面を活性化しなければならない。
【0035】
その他の好ましい還元剤は、ホウ化水素、ジメチル・アミン・ボラン(DMAB)、ジエチル・アミン・ボラン(DEAB)、ピリジン・ボラン、モルホリン・ボランなど、ホウ素を主材料とする還元剤を含む。ホウ素を主材料とする還元剤を選択する場合、元素ホウ素は、めっきされた合金の一部となる。知られているように、めっき溶液は、Co2+をCo合金中に還元するため、ほぼ等しいモル量のホウ素を主材料とする還元剤を要する。十分な濃度の還元剤がめっき溶液中に確実に存在するよう、約0.5g/L乃至約30g/L、例えば約10g/Lの初期濃度で、例えばジメチル・アミン・ボランを加える。
【0036】
次亜リン酸塩とは違い、ホウ素を主材料とする還元剤を含むめっき溶液は、銅表面活性化の段階を要しない。代わりに、還元剤は、自動触媒反応によるCu表面上への金属イオンの還元を引き起こす。
【0037】
還元剤の存在により、元素PまたはBは、ある程度Coと共析出することができる。析出におけるこれらの元素の効果は、粒経を減少させ、結晶構造の形成を抑制し、その非晶性を向上させることであり、これにより、Cuエレクトロマイグレーションに対して微細構造をより非浸透的とすることができる。例えば、高W含有量のCo−W−Bは、非晶相を有する。特定の理論に拘束されることなく、BおよびPを伴う耐熱性金属の存在は、析出の結晶構造の粒子境界を充填することにより、遮断性を改善すると考えられる。
【0038】
前記の溶液を用いて、各種の合金を析出することができる:例えば、拡散遮断層は、Co−W−P、Co−W−B、Co−W−B−P、Co−B−P、Co−B、Co−Mo−B、Co−W−Mo−B、Co−W−Mo−B−PおよびCo−Mo−Pを含む。
【0039】
無電解析出の実務に従い、例えば、Cuなどの金属層が既にビアまたはトレンチに充填されている、ビアおよびトレンチを有するパターン化されたケイ素基板への無電解めっき組成物の暴露により、CoまたはCo合金の層を析出することができる。暴露の方法が望まれる厚さおよび結合性を有する金属層を析出する目的を十分に達成することを条件として、この暴露は、浸漬、フラッド浸漬、噴霧、または析出溶液に基板を暴露するその他の方法を含んでもよい。
【0040】
本発明に従った無電解めっき組成物は、従来の連続モード析出法で使用することができる。連続モードにおいては、同一の溶液量を使用して多数の基板を処理する。このモードにおいては、反応体を定期的に補充しなければならず、また反応生成物が蓄積し、めっき溶液の定期的な濾過を必要とする。代替的に、本発明に従った無電解めっき組成物は、いわゆる「使用および処理(use−and−dispose)」析出法に適している。使用および処理モードにおいては、基板を処理するのにめっき組成物を使用し、その後溶液量は、廃棄物の流れに向けられる。この後者の方法はより多くの費用がかかるが、使用および処理モードは、計測を必要とせず、すなわち、溶液安定性を維持するための溶液組成物の測定および調整を要しない。
【0041】
無電解析出の自動触媒作用のために、アルキルアミン・ボラン還元剤、例えば、DMAB、DEAB、モルホリン・ボラン、それらの混合物、それらの次亜リン酸塩との混合物など、ホウ素を主材料とする還元剤を使用してもよい。ホウ素を主材料とする還元剤およびCoまたはCo合金析出イオンを伴う酸化/還元反応は、Cuが触媒作用を引き起こす。特に、例えばpHや温度などの一定のめっき条件においては、還元剤がCuの存在下で酸化され、それにより析出イオンを還元し、それがCu上に析出する。その方法は、本質的にCu配線上でのみ金属が析出されるという点で、実質的に自己整合的である。しかしながら、従来の無電解めっき溶液は、下にあるCu配線の粗さを増幅するCo合金を析出する。多くの場合において、遊離したCoが誘電体上に析出する。ジメチルグリオキシムがめっき溶液に加えられる場合、本発明におけるのと同様に、無電解めっき溶液は、誘電体上への遊離した析出なしに、滑らかで平坦なCoまたはCo合金のキャッピング層を析出する。
【0042】
代替的方法として、本発明の一定の実施形態は、Cuを金属析出の触媒とする還元剤を用いない無電解析出法を用いる。該方法のため、表面活性化工程が用いられ、続いて起きる無電解析出を促進する。現在好ましい表面活性化法は、Pd浸漬反応を利用する。他の既知の触媒が適切であり、これはRuおよびPtを含む。代替的に、例えば、電解析出、PVD、CVD、または当技術分野において知られているその他の技術により析出されるCoシーディングと同様のシーディングにより、無電解析出のために表面を整えてもよい。
【0043】
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0044】
以下の成分を含む第1の無電解めっき溶液を調整した:
3乃至7g/LのCoCl2・6H2O
10乃至40g/LのC6H8O7(クエン酸)
0乃至10g/LのH3BO3(ホウ酸)
3乃至10g/LのH3PO2(次亜リン酸)
0.2乃至0.6g/LのH2WO4(タングステン酸)
250mg/Lのカルファックス(Calfax)10LA−75(パイロット・ケミカル・カンパニー(Pilot Chemical Co.))
5乃至20mg/Lのジメチルグリオキシム
pH調整用のTMAH
【0045】
この溶液2リットルを、2つの溶液、成分Aおよび成分Bを調製することにより、室温で調製した。以下の記録に従い、成分を加えた:
A.成分Aの調製
1.乃至14gのCoCl2・6H2Oを水に溶解する。
2.Co2+溶液に20乃至40グラムのクエン酸および0乃至20グラムのホウ酸を加える。
3.TMAHを使用してpHを約7.0に調整する。
4.前もってTMAH中に0.2乃至0.6グラムのタングステン酸を溶解し、溶液に加える。
5.250mgのカルファックス(Calfax)を加える。
6.TMAHを使用してpHを約9.0に調整する。
7.10乃至40mgのジメチルグリオキシムを加える。
8.TMAHを使用してpHを約9.0に再調整し、水で1Lに希釈する。
9.溶解していない固体を除去するため濾過(0.22μm)する。

B.成分Bの調製
1.6乃至20グラムの次亜リン酸を水に溶解する。
2.TMAHを使用してpHを約9.0に調整し、水で1Lに希釈する。
3.固体を除去するため濾過する。

C.ほぼ同量の成分Aと成分Bを混合することにより、無電解めっき溶液を調製する。
【0046】
比較のため、ジメチルグリオキシム安定剤を除き同じ成分を有する第2の無電解めっき溶液を同じ手順で調製した。溶液は、以下の成分を有していた:
3乃至7g/LのCoCl2・6H2O
10乃至40g/LのC6H8O7(クエン酸)
0乃至10g/LのH3BO3(ホウ酸)
3乃至10g/LのH3PO2(次亜リン酸)
0.2乃至0.6g/LのH2WO4(タングステン酸)
250mg/mLのカルファックス(Calfax)10LA−75
pH(ペーハー)調整用のTMAH
残りの1LまでのDI水
この溶液を室温で調製し、TMAHを用いて約9.0のpHに調整した。約55℃乃至約80℃の温度でめっきが生じた。
【実施例2】
【0047】
以下の成分を有する別の例示的な溶液を調整した:
3乃至7g/LのCoCl2・6H2O
10乃至30g/LのC6H8O7(クエン酸)
0乃至6g/LのH3BO3(ホウ酸)
0.2乃至0.6g/LのH2WO4(タングステン酸)
4乃至8g/LのH3PO2(次亜リン酸)
0.2乃至5g/Lの(CH3)2NHBH3(DMAB)
5乃至20mg/Lのジメチルグリオキシム
250mg/mLのカルファックス(Calfax)10LA−75
pH調整用のTMAH
残りの1LまでのDI水
【0048】
この溶液を室温で調製し、TMAHを用いて約8.0乃至約9.5のpHに調整した。約55℃乃至約80℃でめっきが生じた。
【実施例3】
【0049】
以下の成分を有する追加の溶液を調整した:
20乃至40g/LのCoCl2・6H2O
40乃至120g/LのC6H8O7(クエン酸)
0乃至60g/LのH3BO3(ホウ酸)
2乃至10g/LのH2WO4(タングステン酸)
5乃至30g/LのH3PO2(次亜リン酸)
0乃至10g/Lの(CH3)2NHBH3(DMAB)
5乃至100mg/Lのジメチルグリオキシム
pH調整用のTMAH
残りの1LまでのDI水
【0050】
この溶液を室温で調製し、TMAHを用いて約8.0乃至約9.5のpHに調整した。約55℃乃至約80℃でめっきが生じた。
【実施例4】
【0051】
実施例1の無電解めっき溶液から、Co−W−Pからなる三元合金を無電解析出した。開始する基板は、ケイ素を材料としていた。基板は、SiO2を主材料とする原料からなる層間誘電体(ILD)で囲まれたTa/TaNスタック障壁に埋め込まれた、露出しているパターン化されたCu配線を有していた。Cu配線は、概ね120nmの幅を有し、CMPの後で、Cu表面は、周囲の誘電体よりも低かった。表面粗さは、約6オングストロームであった。
【0052】
CMP後の防止剤残留物、酸化銅(II)層およびCMP後のスラリー粒子をILDから除去するため、パターン化されたCu基板を1%硫酸の事前洗浄溶液に暴露した。その後、そのCu基板を脱イオン化(DI)した水ですすぎ、次いでPdを用いて活性化した。
【0053】
合金をめっきするため、実施例1のCo−W−P無電解析出溶液に基板を浸漬した。溶液は、約9.0のpHで、75℃乃至85℃に保たれ、1分間めっきが生じた。
【0054】
実験条件下で、この溶液は、約8オングストロームの表面粗さで、銅基板上に、180オングストロームの厚さのCo−W−P合金層をめっきした。従って、下にある銅基板の表面粗さと比較すると、本発明の溶液でめっきされたCo−W−P合金層の表面粗さは、最小限に増加した。さらに、層は、層の端において、実質的にこぶの成長がなかった。
【0055】
比較するため、比較のためのジメチルグリオキシム安定剤を含まない実施例1のCo−W−P無電解析出溶液に基板を浸漬した。
【実施例5】
【0056】
Co−W−Pキャッピング層の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、これを図1および図2に示す。図1および図2を参照することにより、ジメチルグリオキシム安定剤を含まないめっき溶液と比較すると、本発明に従った10ppmのジメチルグリオキシム安定剤を含む無電解めっき溶液から析出されたCo−W−P層に達成された誘電体上で、こぶの成長がなく孤立した合金析出が減っていることが認められる。図2Aおよび図2Bの滑らかな表面は、本発明すなわちジメチルグリオキシムを含む溶液に従って析出されたCo−W−P層を示す。図1Aおよび図1Bは、ジメチルグリオキシム安定剤を含まないめっき溶液が析出したCo−W−P層を示す。
【0057】
図2Aおよび図2Bに示す層の表面の滑らかさおよび平坦さを示すCo−W−Pキャッピング層は、析出したときにCu配線機構上で拡散遮断層として機能するのに十分に円滑であり、析出の直後または配線機構の使用期間中のいずれにおいても、電気的短絡の危険を実質的に減少させる。
【0058】
図1Aおよび図1BのCo−W−Pキャッピング層は、こぶの成長の危険性がより大きく、これが電気的短絡をもたらす可能性がある。
【0059】
上記を考慮すれば、本発明のいくつかの目的が達成され、その他の有利な結果が得られたことが認められるであろう。
【0060】
本発明の要素またはその好ましい実施形態を紹介するとき、冠詞「一つの(a,an)」、「その(the)」および「上記の(said)」は、1または複数の要素が存在することを意味するよう意図する。例えば、上記の説明および以下の請求項が「1つの(an)」の配線に言及することは、1または複数の当該配線が存在することを意味する。「からなる(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」の用語は、包含的であり、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するよう意図する。
【0061】
本発明の範囲から逸脱せずに上記に対し様々の変更を行うことができるため、上記の説明に含まれ添付された図面に示される全ての事項は、例証的であり限定的な意味でないと解釈されるよう意図する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1A】本発明のものではないCo合金拡散保護層のSEM写真であり、80,000倍に拡大されている。
【図1B】本発明のものではないCo合金拡散保護層のSEM写真であり、40,000倍に拡大されている。
【図2A】本発明のCo合金拡散保護層のSEM写真であり、80,000倍に拡大されている。
【図2B】本発明のCo合金拡散保護層のSEM写真であり、40,000倍に拡大されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超小型電子デバイスの製造において基板上へCoまたはCo合金を無電解析出する方法であって、その方法が以下からなるもの:
オキシムを主材料とする化合物安定剤、Coイオンの供給源および還元剤を含む無電解析出組成物に基板を接触させること。
【請求項2】
無電解析出組成物が約7.5乃至約10のpHを有する、請求項1の方法。
【請求項3】
オキシムを主材料とする化合物安定剤がアルドキシムである、請求項1または2の方法。
【請求項4】
オキシムを主材料とする化合物がサリチルアルドキシム、syn−2−ピリジンアルドキシムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または請求項2の方法。
【請求項5】
オキシムを主材料とする化合物安定剤がケトキシムである、請求項1または2の方法。
【請求項6】
オキシムを主材料とする化合物がジメチルグリオキシム、1,2−シクロヘキサンジオン・ジオキシムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2の方法。
【請求項7】
オキシムを主材料とする化合物安定剤が約2ppm乃至約150ppmの濃度で無電解析出組成物中に存在する、請求項1乃至6のいずれかの方法。
【請求項8】
オキシムを主材料とする化合物安定剤が約5ppm乃至約50ppmの濃度で無電解析出組成物中に存在する、請求項1乃至6のいずれかの方法。
【請求項9】
オキシムを主材料とする化合物安定剤が約5ppm乃至約20ppmの濃度で無電解析出組成物中に存在する、請求項1乃至6のいずれかの方法。
【請求項10】
超小型電子デバイス中の金属充填された配線上に金属キャッピング層をめっきするための無電解めっき溶液であって、その溶液が以下を含むもの:
Coイオンの供給源;
還元剤;および
オキシムを主材料とする化合物安定剤。
【請求項11】
溶液が約7.5乃至約10のpHを有する、請求項10の無電解めっき溶液。
【請求項12】
オキシムを主材料とする化合物安定剤がアルドキシムである、請求項10または11の無電解めっき溶液。
【請求項13】
オキシムを主材料とする化合物がサリチルアルドキシム、syn−2−ピリジンアルドキシムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10または11の無電解めっき溶液。
【請求項14】
オキシムを主材料とする化合物安定剤がケトキシムである、請求項10の無電解めっき溶液。
【請求項15】
オキシムを主材料とする化合物がジメチルグリオキシム、1,2−シクロヘキサンジオン・ジオキシムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10または11の無電解めっき溶液。
【請求項16】
オキシムを主材料とする化合物安定剤が約2ppm乃至約150ppmの濃度で存在する、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項17】
オキシムを主材料とする化合物安定剤が約5ppm乃至約50ppmの濃度で存在する、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項18】
オキシムを主材料とする化合物安定剤が約5ppm乃至約20ppmの濃度で存在する、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項19】
Coイオンの濃度が約1g/L乃至約20g/LであるようにCoイオンの供給源が存在する、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項20】
Coイオンの濃度が約0.1g/l乃至約1.0g/LであるようにCoイオンの供給源が存在する、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項21】
還元剤が次亜リン酸塩の供給源である、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項22】
還元剤がホウ素を主材料とする還元剤である、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液。
【請求項23】
さらに以下を含む、請求項10乃至15のいずれかの無電解めっき溶液:
耐熱性金属イオンの供給源;
有機錯化剤;および
表面活性剤。
【請求項24】
超小型電子デバイス中の金属充填された配線上に金属キャッピング層をめっきするための無電解めっき溶液であって、その溶液が:
Coイオンの濃度が約1g/L乃至約20g/Lであるように存在するCoイオンの供給源;
約2g/L乃至約30g/Lの濃度の次亜リン酸塩の供給源;
約2ppm乃至約150ppmの濃度のオキシムを主材料とする化合物安定剤;
耐熱性金属イオンの供給源;
有機錯化剤;および
表面活性剤を含み;
ここで、前記溶液が弱アルカリ性であるもの。
【請求項25】
溶液がアルカリ金属イオンを実質的に含まない、請求項24の無電解めっき溶液。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate


【公表番号】特表2008−544078(P2008−544078A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515972(P2008−515972)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022493
【国際公開番号】WO2006/135752
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(501407311)エントン インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】