説明

超砥粒砥石およびその製造方法

【課題】 砥石チップを構成する砥粒層と下地層が異種材料からなる2層によって構成されていても、研削時の衝撃的負荷が加わっても、界面部で剥離を防止できる超砥粒ビトリファイド砥石を提供する。
【解決手段】 超砥粒を含む砥粒層12と、超砥粒を含まない下地層13とからなる砥石チップをコアに貼着した砥石において、超粒層12と下地層13の界面部に凹凸43を形成して、砥粒層12と下地層13の密着性を向上し、界面部の強度を高めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントタイプの砥石チップからなる超砥粒砥石およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セグメントタイプの砥石チップからなるビトリファイドボンド超砥粒砥石は、超砥粒を含む砥粒層と、超砥粒を含まない下地層の2層構造からなっている。かかるビトリファイドボンド超砥粒砥石は、砥粒層用粉体と下地層用粉体をそれぞれプレスして砥石チップを成形し、しかる後、砥石チップを焼成して完成される。そして、これら砥石チップを円盤状のコアの外周に貼り付けて超砥粒砥石が製造される。この場合、砥粒層用粉体をプレスする金型の表面は平滑面であるため、砥粒層と下地層の界面も平滑な面に成形される。このようなビトリファイドボンド超砥粒砥石が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−300165(段落0021、0027、0028、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したビトリファイドボンド超砥粒砥石においては、砥粒層と下地層のそれぞれの組成が異なり、異種材料からなる2層によって構成されているので、界面部は砥粒層および下地層の強度よりも低くなり、衝撃的な負荷が加わると、界面部で剥離する現象が生ずる場合がある。
【0004】
本発明は、上記した従来の不具合を解消するためになされたもので、界面部の接触面積を増大させることにより、界面部の強度を向上させた超砥粒砥石およびその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る超砥粒砥石の構成上の特徴は、超砥粒を含む砥粒層と、超砥粒を含まない下地層からなる複数の砥石チップをコアに貼付した超砥粒砥石において、前記砥粒層と下地層の界面部に凹凸を少なくとも一方向に形成したことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明に係る超砥粒砥石の構成上の特徴は、請求項1において、前記砥粒層が超砥粒をビトリファイドボンドで結合して形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明に係る超砥粒砥石の構成上の特徴は、請求項1もしくは請求項3において、前記凹凸の深さを、前記超砥粒の粒径に対し、1〜5倍としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明に係る超砥粒砥石の構成上の特徴は、請求項1、請求項2もしくは請求項3において、前記凹凸を、前記砥粒層と下地層の界面部の全面に網目状に形成したことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項5に記載の発明に係る超砥粒砥石の製造方法の構成上の特徴は、 型内に超砥粒を含む砥粒層用粉体および超砥粒を含まない下地層用粉体のいずれか一方を充填し、該砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか一方を表面に突起を形成した押型によりプレス成形して表面に溝が形成されるように仮成形し、次いで仮成形された砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか一方の上側に前記砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか他方を充填し、その後上型により砥粒層用粉体と下地層用粉体とを同時にプレス成形して、砥粒層と下地層が突起と溝によって結合された砥石チップを形成し、該砥石チップをコアに貼付したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る超砥粒砥石によれば、砥粒層と下地層の界面部に凹凸を少なくとも一方向に形成したので、界面部の接触面積が増大され、砥粒層と下地層の密着性が向上し、界面部の強度を高めることができる効果がある。
【0011】
請求項2に係る超砥粒砥石によれば、前記砥粒層が超砥粒をビトリファイドボンドで結合して形成されているので、請求項1に記載の発明の効果に加え、切り屑排出性に優れて切れ味が良好であり、砥石摩耗量を少なくして良好な表面あらさに研削加工することができる効果がある。
【0012】
請求項3に係る超砥粒砥石によれば、前記凹凸の深さを、前記超砥粒の粒径に対し、1〜5倍としたので、請求項1に記載の発明の効果に加え、砥石寿命に大きな影響を与えることなく、砥粒層と下地層の密着性を向上できる効果がある。
【0013】
請求項4に係る超砥粒砥石によれば、前記凹凸を、前記砥粒層と下地層の界面部の全面に網目状に形成したので、請求項1に記載の発明の効果に加え、砥粒層と下地層の界面部の全面で密着性を向上でき、界面部の強度を一層高めることができる効果がある。
【0014】
また、請求項5に係る超砥粒砥石の製造方法によれば、砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか一方を仮成形する際に、表面に突起を形成した押型によりプレス成形して表面に溝が形成されるように砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか一方を仮成形し、次いで仮成形された一方の粉体の上側に他方の粉体を充填し、その後上型により両粉体を同時にプレス成形することにより、砥粒層と下地層が突起と溝によって結合された砥石チップを形成するようにしたので、砥粒層用粉体あるいは下地層用粉体を仮成形する押型の表面に突起を形成するだけで、砥粒層と下地層の密着性を高めるための特段の工程を不要にでき、界面部の強度を容易に高めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、セグメントタイプの砥石チップ11からなる超砥粒砥石10を示し、この超砥粒砥石10の砥石チップ11は、超砥粒をビトリファイドボンドで結合した砥粒層12が外周側に形成され、超砥粒を含まない下地層13が砥粒層12の内側に重ねて一体的に形成されている。これら砥粒層12と下地層13からなる複数の円弧状の砥石チップ11を、鉄またはアルミニウム等の金属、あるいは樹脂等で成形された円盤状コア21の外周面に並べ、下地層13の底面で接着剤により貼付して超砥粒砥石10を構成している。
【0016】
図2は、円弧状の砥石チップ11を示すもので、前記砥粒層12は、CBN、ダイヤモンド等の超砥粒14をビトリファイドボンド15で3〜5mmの厚さに結合したもので、ビトリファイドボンド15中には酸化アルミニウム(Al2O3)等の粒子16が骨材として混入されている場合もある。また、前記下地層13は、下地粒子19をビトリファイドボンド15で1〜3mmの厚さに結合したものである。ビトリファイドボンド15を採用すると、有気孔の特性から、切り屑の排出性に優れ、切れ味が良好となるため、砥石摩耗量を少なくして良好な表面あらさに研削加工することができる。しかしながら、結合剤としては、ビトリファイドボンド15の他に、レジンボンドまたはメタルボンド等を使用することもできる。
【0017】
次に、砥石チップ11を製造する装置及び方法を図3、図4に基づいて説明する。図3(a)に示すように、長方形状の外型31の内側底部に下型32が嵌合され、超砥粒砥石10の外径になる砥石チップ11の円弧面をプレス成形するための円弧状の凹型面32aが下型32の上面に形成されている。この下型32上に、砥粒層12を構成する超砥粒14、ビトリファイドボンド15及び骨材等を混合した砥粒層用粉体34が充填され、砥粒層用粉体34の厚さが均一になるようにレべリングされる(図4の工程46参照)。この状態で、図3(b)に示すように、第1上型35である押型が外型31の内面に沿って下降され、前記砥粒層用粉体34を仮プレスして砥粒層12を円弧状に仮成形する(図4の工程47参照)。
【0018】
この際、押型(第1上型)35の円弧状の押付け面35aの全面には、図5に示すように、突起41が編み目状に形成されている。従って、押型35により砥粒層用粉体34を仮プレスすると、砥粒層12の表面に、図6に示すような溝42が編み目状に形成されることになる。ここで、前記押型35の押付け面35aに形成された突起41は、好ましくは、溝42の深さが超砥粒14の粒径に対して1〜5倍程度となるように定められている。例えば、超砥粒14の粒度が♯120(粒径で0.125mm)の超砥粒砥石10においては、溝42の深さが0.125mm〜0.6mm程度に、また、配列ピッチが1mm程度に設定されている。
【0019】
続いて、図3(c)に示すように、下地粒子19を含む下地層用粉体36が、仮プレス成形された砥粒層12の上側に充填され、下地層用粉体36の厚さが均一になるようにレベリングされる(図4の工程48参照)。その状態で、図3(d)に示すように、第2上型37が外型31の内面に沿って下降され、下地層用粉体36と砥粒層用粉体34とを同時にプレスする。これにより、下地層13が砥粒層12の内側に重ねて一体的に成形され、円弧状の砥石チップ11がプレス成形される(工程49参照)。
【0020】
このようにして、下地層13が砥粒層12の内側に一体的に成形されると、図6に示すように、砥粒層12の表面に形成された溝42内に下地層13が食い込み、砥粒層12と下地層13の界面部は、凹凸43によって接触されるようになる。従って、砥粒層12と下地層13の接触面積が増大され、砥粒層12と下地層13の密着性を向上できるようになる。
【0021】
次いで、前記第2上型37が上昇され、砥石チップ11が外型31、下型32から離型される(図4の工程50参照)。その後、砥石チップ11を下地層13の底面の半径と同じ半径の台に載せて乾燥するとともに、焼成し(図4の工程51、52参照)、砥石チップ11の製造が完了する。
【0022】
本実施の形態によれば、砥石チップ11を構成する砥粒層12と下地層13の界面部が凹凸43によって接触され、両者の接触面積が増大されるので、砥粒層12と下地層13の密着性を向上でき、これらのアンカー効果によって界面部の強度を高めることができる。
【0023】
図7は、超砥粒14の粒度♯120、溝42の深さを0.4mm、ピッチを1mmの砥石チップ(A)を用いて、引張強度を測定したもので、界面部が平滑な従来の砥石チップ(B)のものと比較すると、約20%界面部の引張強度が増大した結果が得られた。
【0024】
なお、溝深さは、大きくすればそれだけアンカー効果が増大し、界面部の強度を高めることができるが、あまり溝深さを大きくすると、砥石寿命に影響を及ぼすため、上記したよう超砥粒14の粒径の5倍程度が限度であり、砥石寿命を重視すれば、超砥粒14の粒径の1〜3倍が最も好ましい。すなわち、図1に示す超砥粒砥石10によって工作物を研削加工すると、砥粒層12が徐々に磨耗し、最終的には砥粒層12がなくなって寿命となるが、溝深さを大きくすると、砥粒層12が未だ残存しているにも拘らず、下地層13が早く現れるようになり、砥石寿命を早めることになる。
【0025】
上記した実施の形態においては、砥粒層12と下地層13の界面部の全面に凹凸43を形成した例について述べたが、凹凸43は必ずしも全面に形成する必要はなく、超砥粒砥石10の円周方向、母線方向、あるいは螺旋方向に形成しても、全面に形成した場合に比べてアンカー効果は劣るが、上記した実施の形態で述べたと同様に、界面部の強度を高めることができるものである。従って、凹凸43は、砥粒層12と下地層13の界面部の少なくとも一方向に形成すれば足りるものである。
【0026】
また、上記した実施の形態においては、砥粒層用粉体34を仮成形した後に、下地層用粉体36を充填して本プレス成形する例について述べたが、凸状の下型と凹状の上型を用いて、充填順序を上記と逆にし、まず最初に、下地層用粉体を仮成形し、しかる後に、砥粒層用粉体を充填して本プレス成形することも可能である。なお、この場合には、下地層用粉体側に溝が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態を示すセグメントタイプの砥石チップからなる超砥粒砥石の全体図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す図である。
【図3】砥石チップをプレス成形する装置を示す図である。
【図4】砥石チップの製造工程を示す図である。
【図5】プレス成形に使用する押型を示す図である。
【図6】砥石チップの界面部を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における砥石チップの引張強度の従来との比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10・・・超砥粒砥石、11・・・砥石チップ、12・・・砥粒層、13・・・下地層、14・・・超砥粒、15・・・ビトリファイドボンド、31・・・外型、32・・・下型、34・・・砥粒層用粉体、35・・・第1上型(押型)、36・・・下地層用粉体、37・・・第2上型、41・・・突起、42・・・溝、43・・・凹凸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超砥粒を含む砥粒層と、超砥粒を含まない下地層からなる複数の砥石チップをコアに貼付した超砥粒砥石において、前記砥粒層と下地層の界面部に凹凸を少なくとも一方向に形成したことを特徴とする超砥粒砥石。
【請求項2】
前記砥粒層が超砥粒をビトリファイドボンドで結合して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超砥粒砥石。
【請求項3】
前記凹凸の深さを、前記超砥粒の粒径に対し、1〜5倍としたことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の超砥粒砥石。
【請求項4】
前記凹凸を、前記砥粒層と下地層の界面部の全面に網目状に形成したことを特徴とする請求項1、請求項2もしくは請求項3に記載の超砥粒砥石。
【請求項5】
型内に超砥粒を含む砥粒層用粉体および超砥粒を含まない下地層用粉体のいずれか一方を充填し、該砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか一方を表面に突起を形成した押型によりプレス成形して表面に溝が形成されるように仮成形し、次いで仮成形された砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか一方の上側に前記砥粒層用粉体および下地層用粉体のいずれか他方を充填し、その後上型により砥粒層用粉体と下地層用粉体とを同時にプレス成形して、砥粒層と下地層が突起と溝によって結合された砥石チップを形成し、該砥石チップをコアに貼付したことを特徴とする超砥粒砥石の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−142455(P2006−142455A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338513(P2004−338513)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(591043721)豊田バンモップス株式会社 (29)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】